IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-浴槽用枕、浴槽装置 図1
  • 特許-浴槽用枕、浴槽装置 図2
  • 特許-浴槽用枕、浴槽装置 図3
  • 特許-浴槽用枕、浴槽装置 図4
  • 特許-浴槽用枕、浴槽装置 図5
  • 特許-浴槽用枕、浴槽装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-03
(45)【発行日】2024-07-11
(54)【発明の名称】浴槽用枕、浴槽装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20240704BHJP
   A47K 3/20 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A47K3/00 Z
A47K3/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020154990
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048915
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】今村 竜太
(72)【発明者】
【氏名】西澤 研一
(72)【発明者】
【氏名】堀江 直也
(72)【発明者】
【氏名】出口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 洋子
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳彦
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-096984(JP,U)
【文献】特開2019-055235(JP,A)
【文献】実開平06-034587(JP,U)
【文献】実開平06-013671(JP,U)
【文献】特開2003-275120(JP,A)
【文献】特開2019-037522(JP,A)
【文献】特開2020-110644(JP,A)
【文献】特開2019-170463(JP,A)
【文献】実開平02-141284(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00 - 4/00
A61H 33/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体の上縁面に配置され、使用者の頭部を載せることが可能な枕部本体と、
前記枕部本体の内部に配置される内部機構と、を備え、
前記内部機構は、湯水を吐水可能な第1吐水口及び前記第1吐水口とは異なる位置に形成され、湯水を吐水可能な第2吐水口を有し、
前記枕部本体は、前記浴槽本体の形状に沿って形成され、前記枕部本体の端部側が、中央部側よりも前記浴槽本体の内壁面に向かってせり出す枕せり出し部を有し、
前記内部機構は、前記枕部本体における前記内壁面側に配置される前壁部を有し、
前記前壁部は、前記上縁面を覆うように前記内壁面側へ突出し、平面視で前記内壁面の上縁の延びる方向に沿って横長に形成され、前記前壁部における中央部側よりも端部側が前記内壁面に向かってせり出す前壁部せり出し部を有する、浴槽用枕。
【請求項2】
前記枕せり出し部の端部は、前記前壁部せり出し部の端部よりも前記上縁面における前記内壁面側に位置し、
前記枕せり出し部の端部は、前記内壁面の上端から離れて位置する、請求項に記載の浴槽用枕。
【請求項3】
前記第2吐水口は、前記前壁部における中央部側に配置される、請求項又はに記載の浴槽用枕。
【請求項4】
前記前壁部せり出し部は、前記前壁部における中央部側から端部側に向かうにしたがって徐々に前記内壁面に向かってせり出している、請求項のいずれか1項に記載の浴槽用枕。
【請求項5】
前記前壁部せり出し部は、上部より下部側が前記内壁面に近くなるように傾斜している、請求項のいずれか1項に記載の浴槽用枕。
【請求項6】
前記内部機構は、照明部を有し、
前記前壁部せり出し部は、表面に凹凸を形成したシボ加工がなされている、請求項のいずれか1項に記載の浴槽用枕。
【請求項7】
前記第1吐水口は、前記前壁部の上側で略直線状に形成され、
前記第2吐水口は、前記第1吐水口の下方に配置される、請求項のいずれか1項に記載の浴槽用枕。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の浴槽用枕と、
前記浴槽本体と、
を備える浴槽装置。
【請求項9】
前記浴槽本体は、前記内壁面の上端が平面視で前記浴槽本体の外側に膨出するように湾曲している、請求項に記載の浴槽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴槽用枕、浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽本体の上縁面に吐水口を有する機構を設け、使用者に対して吐水可能な浴槽装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。吐水口は、浴槽本体の縁に沿って一つ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-226628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐水する機構に使用者が頭部を載せる枕部を設けて、枕部の内部に吐水口を二以上設けると、吐水量は一つの場合よりも多くなる。複数の吐水口から吐水されると吐水される水の量が多くなって飛び散りやすくなり、吐水された水が浴槽本体の上縁面に溜まりやすくなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、浴槽本体の上縁面に配置され、使用者の頭部を載せることが可能な枕部本体と、前記枕部本体の内部に配置される内部機構と、を備え、前記内部機構は、湯水を吐水可能な第1吐水口及び前記第1吐水口とは異なる位置に形成され、湯水を吐水可能な第2吐水口を有し、前記枕部本体は、前記浴槽本体の形状に沿って形成され、前記枕部本体の端部側が、中央部側よりも前記浴槽本体の内壁面に向かってせり出す枕せり出し部を有する、浴槽用枕に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態の吐水装置が設けられた浴槽装置を示す斜視図である。
図2】本実施形態の浴槽装置を図1のA-A線で切断した部分縦断面図である。
図3】本実施形態の浴槽装置を図1のB-B線で切断した部分縦断面図である。
図4】本実施形態の吐水装置の分解斜視図である。
図5】本実施形態の浴槽装置の部分平面図である。
図6】本実施形態の浴槽装置を図1のA-A線で切断した部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、浴槽装置100は、浴槽本体110及び浴槽用枕1を有し、入浴中に使用者の首や肩等に吐水を行うことが可能な装置である。
【0008】
浴槽本体110は、上部が開口した略直方体の形状を有し、湯水を貯水可能に形成される。浴槽本体110は、底面部111と、側壁部112と、背もたれ部115と、上縁面120と、を有する。底面部111は、略長方形で四隅が湾曲している。底面部111には、排水口(図示省略)が形成される。
【0009】
側壁部112は、底面部111の四周から上方に延び、所定の厚みを有する。側壁部112のうち、浴槽本体110の一対の短手方向の側縁で、浴槽用枕1が設けられる側を背側側壁部112aと言う。本明細書の説明において、浴槽装置100の短手方向から浴槽用枕1を見た方向を正面とし、正面視の左右を結ぶ方向を浴槽用枕1の幅方向とする。さらに、幅方向に直交し、浴槽本体110の内側と外側とを結ぶ方向を浴槽用枕1の前後方向と言う。上下方向とは、浴槽装置100の設置される面と天井側とを結ぶ方向を言う。
【0010】
側壁部112における浴槽本体110の内側の面は、内壁面1120である。図1及び図5に示すように、内壁面1120における短辺及び長辺それぞれの延びる方向の中央側は浴槽本体110の外側へ緩く膨出するように緩く湾曲している。少なくとも背側側壁部112aにおける内壁面1120の上端は、平面視で湾曲している。
【0011】
背もたれ部115は、背側側壁部112aの内壁面1120の上部に形成される。背もたれ部115は、背側側壁部112aの内壁面1120が、底面部111から所定高さ上方に延びた位置から後方側の浴槽用枕1に向けて傾斜することで形成される。図2に示すように、背もたれ部115は、水平方向に対して45度以90度未満の角度θ1で傾斜する。
【0012】
上縁面120は、浴槽本体110の上端から四周の外側へ延出する部分である。上縁面120は、概ね平坦に形成され、外側から浴槽本体110側に向かって排水勾配が形成されている。
【0013】
浴槽用枕1は、入浴中に使用者が頭部を載せた状態で、使用者に吐水する装置である。浴槽用枕1は、浴槽装置100の上縁面120に配置される。詳細には、浴槽用枕1は、背側側壁部112a側の上部に形成される上縁面120の上に配置される。浴槽用枕1は、枕部本体2と、内部機構としての本体部3(図4参照)と、ベースプレート4(図4参照)と、給水機構5(図2図4等参照)と、を有する。
【0014】
本体部3は、図4に示すように、枕部本体2の下方内部に配置され、浴槽本体110に湯水を吐水する機構を備える。本体部3は、幅方向に延びる横長の形状を有する。本体部3は、第1吐水口31と、一対の第2吐水口32と、上ケース33と、下ケース34と、照明部としての照明装置35と、整流こま36と、フロントカバー37と、を有する。
【0015】
下ケース34は、上縁面120の上に固定され、本体部3の土台となる部分である。下ケース34は、上縁面120から上方に所定高さを有し、例えば本体部3の半分程度の高さを有する。図4に示すように、下ケース34は、凹部341と、前壁部342と、を有する。
【0016】
凹部341は、長円を半分に割ったような形状に形成され、下ケース34の上面で周囲よりも所定高さ低く形成された面である。凹部341の底面には、さらに高さの異なる段差が形成されている。凹部341は、傾斜部341aと、整流こま設置部341bと、給水機構接続部341cと、を有する。
【0017】
傾斜部341aは、凹部341の前方側が、凹部341の前後方向の略中央部から前端部まで上方に向かって傾斜する部分である。すなわち、凹部341の前方側は、下方から上方へ向かって傾斜する平坦な面に形成される。傾斜部341aは、後述する上ケース33の支持部332の下面に隙間を空けて対向して配置される。
【0018】
整流こま設置部341bは、凹部341の後方側に配置される。整流こま設置部341bは、凹部341の底面から突出するリブ341dによって凹部341の他の部分と区切られる部分であり、後述する整流こま36がリブ341dの後方に固定される。
【0019】
給水機構接続部341cは、凹部341の幅方向中央かつ後方側に形成される。給水機構接続部341cは、凹部341の底面の他の部分よりもより低く窪んでおり、概ね上部が開口した直方体状に窪んでいる。給水機構接続部341cの幅方向中央側には、後述する給水機構5の第1給水ホース51を接続可能な円筒状の突起が下方に向かって突出している。
【0020】
前壁部342は、下ケース34の前壁を形成する部分であり、後述する枕部本体2の前側、すなわち浴槽本体110の内壁面1120側に配置される。前壁部342は、凹部341の底面から下方に延び、上縁面120を覆うように浴槽本体110の内壁面1120側へ突出する。前壁部342は、平面視で内壁面1120の上縁の延びる方向、すなわち本実施形態では浴槽本体110の短手方向に沿って、下ケース34の幅方向の一方から他方まで延びる横長の形状を有する。前壁部342は、浴槽本体110の内壁面1120の湾曲形状に沿って湾曲している。前壁部342は、前壁部せり出し部3421と、立面部3422と、を有する。
【0021】
前壁部せり出し部3421は、前壁部342の中央部側よりも端部側が内壁面1120に向かってせり出して形成されている。言い換えれば、図4に示すように、前壁部せり出し部3421は、端部側の方が中央部側よりも平面視で内壁面1120側に突出しており、突出する内壁面1120側の面が、中央部側から連続的に湾曲し、中央部側から端部側に向かうにしたがって徐々に内壁面1120に向かってせり出している。図6に示すように、前壁部せり出し部3421は、上部側より下部側が前方の内壁面1120側へ近くなるように傾斜している。側面視で、前壁部せり出し部3421は概ね三角形のようであり、前面が緩く外側に凸となるように湾曲している。前壁部せり出し部3421には、表面に凹凸を形成したシボ加工がなされている。前壁部せり出し部3421は、ざらざらとした表面を有し、表面に形成された凹部と凸部の高低差が低い。これにより、後述する照明装置35から光が照射されても、反射によって眩しくなることを防止することができる。
【0022】
立面部3422は、前壁部せり出し部3421の上端から上下方向に延びる部分である。立面部3422は、前壁部せり出し部3421の上端と後述する第1吐水口31の下端との間で少なくとも1mm以上の長さ上方に起立する背の低い壁状の部分である。
【0023】
整流こま36は、凹部341の上に取り付けられる。整流こま36は、下ケース34に沿って横長に形成され、凹部341側に向かって開口するとともに上面が閉じた蓋のような縦断面視略コの字形状を有する。整流こま36は、整流部361と、接続蓋部362と、水抜き孔363と、を有する。
【0024】
整流部361は、縦断面視略コの字状の横長の部分が、本体部3の幅方向に沿って、二つ並んで配置される。凹部341に接する整流部361のそれぞれは、一対の側壁部361aと、上面部361bと、開口部361cと、を有する。一対の側壁部361aは、凹部341から上方へ起立し、整流こま36の前側と後側で互いに向き合うように配置される。前側と後側のそれぞれの側壁部361aは、整流こま36の幅方向の端部側で近づき、接続される。上面部361bは、一対の側壁部361a同士を接続し、上部に広がる平坦な面である。開口部361cは、上面部361bに形成される貫通孔であり、整流こま36の幅方向に沿って複数並んで形成される。
【0025】
接続蓋部362は、下ケース34の凹部341に設けられた給水機構接続部341cを覆うように蓋状に形成されるとともに、蓋状に形成された部分の後側の幅方向の中央部が後方に突出し、二つ並んだ整流部361を凹部341の底面側で接続する。二つ並んだ整流部361と接続蓋部362は、一体に形成されている。
【0026】
水抜き孔363は、二つ並ぶ整流部361同士の間で、接続蓋部362の後方に突出する部分に形成された貫通孔である。水抜き孔363は、接続蓋部362を貫通して形成され、下ケース34の凹部341の給水機構接続部341cの上方に位置する。水抜き孔363は、水を給水機構接続部341cへ通過させることができる。
【0027】
上ケース33は、下ケース34の上部に配置されるとともに、下ケース34の後部を覆うように取り付けられる。上ケース33は、カバー面331と、支持部332と、中空部333と、を有する。
【0028】
カバー面331は、本体部3の後方から、前後方向における中央部からやや手前まで延び、本体部3を覆う部分である。カバー面331は、本体部3の前端まで至らない。
【0029】
支持部332は、カバー面331の前端から下方に延び、屈曲して前方側へ突出する。支持部332は、本体部3の幅方向に沿って形成される。支持部332には、後述する照明装置35が取り付けられる。支持部332は、下ケース34の幅方向の一方から他方まで略直線状に延びる形状を有する。
【0030】
中空部333は、図2及び図3に示すように、上ケース33のカバー面331と下ケース34との間に形成される空間である。中空部333は、整流こま36の開口部361cを通って給水された湯水が流通する流路を構成する。
【0031】
照明装置35は、上ケース33の前方にスペーサー38を介して取り付けられる。照明装置35は、本体部3に沿う横長の形状を有し、浴槽用枕1の幅方向の一方から他方まで略直線状に延びる形状を有する。照明装置35は樹脂製のケースの内部に光源が配置されて形成され、第1吐水口31から吐水される湯水を照らすように配置される。
【0032】
フロントカバー37は、上ケース33の前端に上ケース33から連続するように取り付けられ、照明装置35の上部を覆う。フロントカバー37は、本体部3に沿う横長の形状を有し、浴槽用枕1の幅方向の一方から他方まで略直線状に延びる形状を有する。フロントカバー37は、本体部3の上部全面に、本体部3の幅方向に沿って取り付けられる。
【0033】
第1吐水口31は、図示しない給水源から湯水を供給され、浴槽本体110の内部へ吐水可能な開口である。第1吐水口31は、図2に示すように、上ケース33の支持部332の下面と、下ケース34の上面、すなわち凹部341の傾斜部341aとの間の細い溝により構成される。第1吐水口31は、上ケース33の支持部332が略直線状に形成されていることから、前壁部342の上方で浴槽用枕1の幅方向の一方から他方まで略直線状に形成されている。第1吐水口31から吐水される湯水の吐水角度θ2は、第1吐水口31の上下方向の中心を通る上縁面120と平行な仮想線i1に対して-30度から+30度の範囲である。第1吐水口31から吐水される湯水の吐水速度は、0.5~5m/sである。第1吐水口31は、薄い膜状の湯水を使用者の方に向けて吐水する。
【0034】
図6に示すように、第1吐水口31の下端よりも下方に前壁部せり出し部3421の上端が位置している。第1吐水口31の下端と、前壁部せり出し部3421の上端との間は、1mm以上の高さH、上下方向に離れている。詳細には、前壁部せり出し部3421の上端から上方に立面部3422が形成されているので、この立面部の高さによって、第1吐水口31の下端と、前壁部せり出し部3421の上端とが1mm以上離されている。このため、第1吐水口31から吐水された湯水が前壁部せり出し部3421に誘引されずに、前方の浴槽本体110の内壁面1120へ吐水される。
【0035】
側面視で、前壁部せり出し部3421の表面と、前壁部せり出し部3421の上端から第1吐水口31の下端を結ぶ仮想線i3との間に形成される角度θ4は、90度以上である。立面部3422は、前壁部せり出し部3421の上端から第1吐水口31の下端を結ぶ仮想線i3上に沿うように形成されているため、前壁部せり出し部3421の表面と、立面部3422との間に形成される角度は、90度以上である。図4及び図5に示されるように、前壁部せり出し部3421は湾曲しているため、前壁部せり出し部3421が内壁面1120側へ突出する度合いは、前壁部せり出し部3421の中央部側と端部側で異なっている。しかし、前壁部せり出し部3421のいずれの位置においても、前壁部せり出し部3421の表面と立面部3422との角度は90度以上である。
【0036】
第2吐水口32は、第1吐水口31とは異なる位置に形成され、浴槽本体110の内部に湯水を吐水可能な開口である。第2吐水口32は、第1吐水口31の下方に配置され、図4に示すように、本体部3における下ケース34の前壁部342に形成される。第2吐水口32は、第1吐水口31の下方で、前壁部342の幅方向中央側に、間を空けて二つ配置されている。第2吐水口32は、使用者の首に向けて吐水する吐水口である。第2吐水口32の内側には、第2吐水口32から吐出される水を波打つように発射するための首湯ユニット320が配置されている。首湯ユニット320は、下ケース34に取り付けられる。首湯ユニット320の前方の開口から吐出された湯水は、前壁部342に形成された開口である第2吐水口32を通って吐出されるように構成される。図2は、図1における第2吐水口32の幅方向の中心を通るA-A線で切断した部分縦断面図である。図2に示すように、第2吐水口32の上下方向の中心は、上縁面120から5mm~50mmの高さの範囲RH2内に位置する。第2吐水口32から吐水される湯水の吐水角度θ3は、第2吐水口32の上下方向の中心を通る上縁面120と平行な仮想線i2に対して-30度から+30度の範囲である。
【0037】
枕部本体2は、使用者の頭部を載せることが可能な高さを有し、浴槽本体110の上縁面120に、上縁面120から凸となるように配置される。枕部本体2は、浴槽用枕1の外形を規定する部分であり、浴槽用枕1の他の要素を覆うように配置される。図1に示すように、枕部本体2は、浴槽用枕1の幅方向に沿う横長の形状である。枕部本体2は、浴槽本体110の内壁面1120の湾曲した形状に沿って湾曲して形成される。すなわち、図5に示すように、枕部本体2は、平面視で前方側から後方側へ向かって弧を形成するように湾曲する。さらに、枕部本体2は、正面視で上縁面120から上方に向かって弧を形成するように湾曲する。図2等に示すように、枕部本体2は、浴槽装置100の側面から視た縦断面視では、上縁面120から後方に向かってなだらかに湾曲しながら延び、枕部本体2の前後方向の中心よりも後方側で最高点に達する。枕部本体2は、最高点から上縁面120の後方に向かって湾曲しながら下り傾斜する。枕部本体2の前方側の方が、後方側よりも傾斜が緩やかであり、この緩やかな傾斜面に頭部が載せられる。
【0038】
図3は、浴槽用枕1の幅方向の中心を通るB-B線で切断した部分縦断面図である。図3に示すように、枕部本体2の高さの最高点は、枕部本体2の幅方向の中央部21で、浴槽装置100の上縁面120から当該上縁面に対して直交する方向に30mm~150mmの高さの範囲RH1内の任意の位置にある。好ましくは、高さの範囲RH1は、上縁面120から50mm~100mmの範囲RH1であってよい。枕部本体2の最高点は、枕部本体2の前後方向の位置に関して、浴槽本体110の側壁部112における内壁面1120の上端と上縁面120との交点Pから、水平方向かつ枕部本体2の幅方向に直交する方向へ向かって30mm~250mmの距離の範囲RD内の任意の位置にある。距離は、交点Pから好ましくは50mm~150mmの範囲RDであってよい。枕部本体2の中央部21とは、図5に示すように、幅方向の中心から一対の第2吐水口32までの部分を指す。中央部21は、枕部本体2のうちで高さが最も高くなるように形成されている。中央部21に使用者の頭部が載せることで、首の付け根から頭部の背面を枕に載せやすくなる。そして、使用者の頭部の位置が上記の範囲に規定されることにより、肩や首等の適切な位置に吐水を行うことができる。使用者が背中を起こして入浴する場合と、枕部本体2から背もたれ部115にもたれて入浴する場合を考慮すると、枕部の最高点の高さ及び交点Pからの距離は、上記の範囲が好ましい。
【0039】
枕部本体2は、幅方向の端部に枕部せり出し部22を有する。枕部せり出し部22は、中央部側よりも端部側が内壁面1120に向かってせり出すように突出して形成される。言い換えれば、図5に示すように、枕部せり出し部22は、幅方向の端部側の方が中央部側よりも平面視で内壁面1120側に突出している。枕部せり出し部22の前方側の端部は、前壁部せり出し部3421の前方側の端部よりも内壁面1120に近い前方側に位置している。枕せり出し部22の前方端部は、内壁面1120の上端から離れて上縁面120の後方側に位置している。
【0040】
ベースプレート4は、図4に示すように、本体部3の下面と浴槽装置100の上縁面120との間に配置され、本体部3を固定するための板状の部材である。
【0041】
給水機構5は、外部の給水源から本体部3に接続される第1給水ホース51、第2給水ホース52、ポンプ及び弁等(図示省略)を有する。第1給水ホース51は、上縁面120の裏側を介して本体部3の下方に接続され、第1吐水口31から吐水される湯水を供給される。第2給水ホースは、同様に本体部3の下方に接続される。第2給水ホース52は、首湯ユニット320に接続され、第2吐水口32から吐水される湯水を供給する。
【0042】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。浴槽用枕1を、浴槽本体110の上縁面120に配置され、使用者の頭部を載せることが可能な枕部本体2と、枕部本体2の内部に配置される本体部3と、を含んで構成した。本体部3を、湯水を吐水可能な第1吐水口31及び第1吐水口31とは異なる位置に形成され、湯水を吐水可能な第2吐水口32を含んで構成した。枕部本体2を、浴槽本体110の形状に沿って形成し、枕部本体2の端部側が、中央部側よりも浴槽本体110の内壁面1120に向かってせり出す枕せり出し部22を含んで構成した。本体部3には、第1吐水口31及び第2吐水口32が設けられて湯水が吐水される。吐水口が複数、異なる位置に形成されているので、吐水される水量が増加する。仮に、枕部本体2が直線的で浴槽本体110の内壁面1120が湾曲している場合、枕部本体2の端部側と浴槽本体110の内壁面1120との間が、枕部本体2の中央側よりも離れることとなり、この場合、枕部本体2の端部側に、浴槽本体110内へ流れ切らない水が滞留することも考えられる。しかし、枕部本体2が、浴槽本体110の形状に沿っているので、枕せり出し部22と浴槽本体110の内壁面1120との距離が一定になる。そして、枕せり出し部22の端部側が中央部側よりも内壁面1120側へせり出している。これらにより、枕部本体2の内部から吐水される水量が多くなっても、枕せり出し部22に促されて上縁面120上を水が流れ、上縁面に水が滞留しにくくなる。さらに、枕部本体2が浴槽本体110の形状に沿っていることで、浴槽本体110と枕部本体2との一体感が醸成される。
【0043】
本体部3を、枕部本体2における内壁面1120側に配置される前壁部342を含んで構成した。前壁部342を、上縁面120を覆うように内壁面1120側へ突出させ、平面視で内壁面1120の上縁の延びる方向に沿って横長に形成した。前壁部342を、前壁部342における中央部側よりも端部側が内壁面1120に向かってせり出す前壁部せり出し部3421を含んで構成した。本体部3には、第1吐水口31及び第2吐水口32が設けられて湯水が吐水される。吐水口が複数、異なる位置に形成されているので、吐水される水量が増加する。前壁部せり出し部が、前壁部342における中央側よりも端部側が内壁面1120に向かってせり出して形成されることにより、吐水された湯水が浴槽本体110側へ促される。仮に、前壁部342が直線的で浴槽本体110の内壁面1120が湾曲している場合、前壁部342の端部側と浴槽本体110の内壁面1120との間が、中央側よりも離れることとなる。しかし、前壁部せり出し部3421が前壁部342の中央側よりも端部側でせり出していることで、前壁部せり出し部3421と浴槽本体110の内壁面1120との距離が一定になる。これらにより、浴槽本体110の上縁面120上で、浴槽用枕1の前方に吐水した湯水が溜まってしまうことを防止され、浴槽本体110側へ流れやすくなる。したがって、吐水された湯水が前壁部342と上縁面120とが接する境界付近に留まることが防止され、清掃性が向上する。
【0044】
本実施形態によれば、枕せり出し部22の端部を、前壁部せり出し部3421の端部よりも上縁面120における内壁面1120側に位置させた。枕せり出し部22の端部を、内壁面1120の上端から離れて位置させた。これにより、浴槽用枕1に頭部を載せた状態の使用者に、浴槽用枕1の内側から好適に湯水を吐水することができる。入浴していない間、浴槽本体110に蓋を被せる場合は、枕せり出し部3421と内壁面1120の上端との間の上縁面120上に蓋を載せることが可能である。
【0045】
本実施形態によれば、第2吐水口32を、前壁部342における中央部側に配置させた。これにより、浴槽用枕1に頭部を載せた使用者の首の後ろに、好適に湯水を吐水することができる。
【0046】
本実施形態によれば、前壁部せり出し部3421を、前壁部342における中央部側から端部側に向かうにしたがって徐々に内壁面1120に向かってせり出させた。中央部側から端部側に連続的にせり出すように形成することで、水の流れを堰き止めることなくスムーズに浴槽本体110側へ促すことができる。
【0047】
本実施形態によれば、前壁部せり出し部3421を、上部より下部側が内壁面1120に近くなるように傾斜させた。吐水された湯水は重力により下方に落ちる。前壁部せり出し部3421の下部側が内壁面1120に近くなるように傾斜することで、前壁部せり出し部3421に落ちた湯水が傾斜を滑り落ちて浴槽本体110の内壁面1120側へ流れるので、前壁部342と上縁面120の間で湯水が滞留することを一層抑制することができる。
【0048】
本実施形態によれば、本体部3を、照明装置35を含んで構成し、前壁部せり出し部3421に、表面に凹凸を形成したシボ加工を施した。前壁部せり出し部3421にシボ加工されていることで、照明装置35から照射された光が前壁部せり出し部3421に当たっても反射しにくく、反射しても使用者の目に届くほど反射光が届かない。これにより、浴槽用枕1に頭部を載せた状態で、快適に吐水を受けることができる。
【0049】
本実施形態によれば、第1吐水口31を、前壁部342の上側で略直線状に形成し、第2吐水口32を、第1吐水口31の下方に配置させた。第1吐水口31が前壁部342の上方で略直線状に形成されていることで、使用者の肩に薄い膜状に吐水することができる。使用者が浴槽用枕1に頭を載せた状態で、第1吐水口31の下方に位置する第2吐水口32から、使用者の首にも吐水できるので、より快適な使用感の浴槽装置100を提供することができる。
【0050】
本実施形態によれば、浴槽装置100を、上述の浴槽用枕1及び浴槽本体110を含んで構成した。これにより、使用者の首や肩等の複数の部位に吐水できる浴槽用枕1から吐水された水を、浴槽本体110の上縁面120に滞留させずに浴槽本体110へ流すことの可能な浴槽装置100が提供される。
【0051】
本実施形態によれば、浴槽本体110を、内壁面1120の上端が平面視で浴槽本体110の外側に膨出するように湾曲させた。これにより、使用者が内壁面1120にもたれやすくなる。浴槽用枕1が浴槽本体110の形状に沿っているので、浴槽本体110が湾曲していても、上縁面120に水が滞留しにくい。
【0052】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。上記実施形態では、前壁部せり出し部3421は、前壁部342の中央部側から端部側に向かって徐々にせり出し、湾曲して形成されている。しかし、前壁部せり出し部3421は、湾曲していなくてもよい。前壁部せり出し部は、中央部側から端部側まで直線的に、浅いV字状に形成されてもよい。前壁部せり出し部は、徐々にせり出さなくてもよく、端部側だけ突出するように形成されてもよい。さらに、前壁部せり出し部は、枕部本体2と別体の部品でなくてもよく、枕部本体2と一体に形成されていてもよく、浴槽用枕1全体が一つの部材であってよい。反対に、前壁部せり出し部は、取付部品であってもよい。すなわち、前壁部せり出し部は、前壁部を構成する部品の端部の前方側に凸となる別の部品を取り付けて構成してもよい。
【0053】
前壁部せり出し部3421の上端は、吐水された水が表面張力で前壁部せり出し部3421側へ引っ張られることを防止可能な程度に第1吐水口31の下端よりも下方に位置していればよく、前壁部せり出し部3421の上端と第1吐水口31の下端との間の寸法は限定されない。
【0054】
枕部本体2の最高点や、第2吐水口32の上縁面120からの高さ、背もたれ部115の傾斜の角度θ1は上記の範囲内で適宜設定されてよい。
【0055】
浴槽装置100は、上部が開口した略直方体の形状を有するものを例に説明した。浴槽の形状は、使用者が湯船につかるように湯水を貯水することができれば、開口部の形状は長円形や円形、正方形、その他の自由な形状を有していてよい。
【符号の説明】
【0056】
1 浴槽用枕、 3 本体部(内部機構)、 22 枕せり出し部、 31 第1吐水口、 32 第2吐水口、 35 照明装置(照明部)、 100 浴槽装置、 110 浴槽本体、 1120 内壁面、 342 前壁部、 1120 内壁面、 3421 前壁部せり出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6