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  • 特許-インクジェット記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240705BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240705BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240705BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B41J2/175 153
B41J2/01 451
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020040561
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021142449
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135448
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 和博
(72)【発明者】
【氏名】達川 淳平
(72)【発明者】
【氏名】田之上 勝也
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-179225(JP,A)
【文献】特開2016-131914(JP,A)
【文献】特開2009-195776(JP,A)
【文献】特開2016-150495(JP,A)
【文献】特開2015-157362(JP,A)
【文献】特開2011-245731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00-21/00
B41J2/01
2/165-2/20
2/21-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを含むインクジェットヘッドと、
内部に前記インクを貯留する貯留室と、前記貯留室と前記インクジェットヘッドとを接続し、前記インクが流れるインク流路と、前記貯留室と前記インクジェットヘッドとの間で前記インクを循環させるポンプと、を含むインク経路と、
前記貯留室内の気圧を調整する調整機構と、
前記インク経路内の前記インクの液圧を検出する第一検出器と、を備え
前記インク流路は、
前記貯留室と前記インクジェットヘッドとを接続し、前記貯留室から流出し且つ前記インクジェットヘッドに流入する前記インクが流れる第一インク流路と、
前記インクジェットヘッドと前記貯留室とを接続し、前記インクジェットヘッドから流出し且つ前記貯留室に流入する前記インクが流れる第二インク流路と、を含み、
前記第一検出器は、前記第一インク流路に設けられ、前記第一インク流路内の前記インクの液圧を検出し、
前記ポンプは、
前記第一インク流路には設けられずに前記第二インク流路に設けられ、
前記インクジェットヘッドから前記貯留室に前記インクを流す、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドの鉛直な第一方向の位置を移動させ、前記第一検出器の前記第一方向の位置を移動させる移動機構を備え、
前記移動機構は、前記インクジェットヘッドと共に前記第一検出器を前記インクジェットヘッドと同一方向に移動させる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記インクジェットヘッドの水平な第二方向の位置を移動させ、前記第一検出器の前記第二方向の位置を移動させる、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記移動機構は、前記インクジェットヘッドの前記第二方向に直交する水平な第三方向の位置を移動させ、前記第一検出器の前記第三方向の位置を移動させる、請求項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インクジェット記録装置の設置位置の大気圧を検出する第二検出器を備え
前記調整機構は、前記貯留室内の気圧を調整し、前記第一検出器によって検出される前記インクの液圧と、前記第二検出器によって検出される大気圧と、の圧力差を一定とする、請求項1から請求項の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記調整機構は、
前記貯留室に繋がるエア流路と、
前記エア流路に設けられ、前記エア流路を開閉する電磁弁と、
前記エア流路の前記貯留室とは反対側に繋がり、前記エア流路を介して前記貯留室内と通じ合い、前記貯留室内に負圧を発生させる負圧源と、を含み、
前記電磁弁は、前記エア流路の開度を全閉と全開との間で比例制御する、請求項1から請求項の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記エア流路は、
一端で前記貯留室と繋がり、他端で前記負圧源と繋がり、前記貯留室と前記負圧源とを接続する第一エア流路と、
一端で前記貯留室と繋がり、他端が大気に開放される第二エア流路と、を含み、
前記電磁弁は、
前記第一エア流路に設けられ、前記第一エア流路を開閉する第一電磁弁と、
前記第二エア流路に設けられ、前記第二エア流路を開閉する第二電磁弁と、を含む、請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インクジェット装置を開示する。インクジェット装置では、インクジェット吐出ユニットが多軸型ロボットの先端部に取り付けられる。インクジェット吐出ユニットは、プッシュ式インクジェットヘッドと、インクタンクと、圧力制御部とを有する。プッシュ式インクジェットヘッドは、インクジェット吐出ユニットの先端に取り付けられ、インクをワークに吐出する。インクタンクは、プッシュ式インクジェットヘッドに接続され、プッシュ式インクジェットにインクを供給する。圧力制御部は、インクタンクに接続され、多軸型ロボットの動作状態に合わせてインクタンクにかけるガス圧を調整する。プッシュ式インクジェットヘッドは、吐出状態がインクの供給圧力に大きく影響を受ける。インクの供給圧力は、インクタンク内の液面とプッシュ式インクジェットヘッドのノズルとの高さの差によって影響を受ける。この高さの差は、インクジェット吐出ユニットの傾斜に対して変化する。圧力制御部は、多軸型ロボットの動作状態から割り出したインクジェット吐出ユニットの傾斜量に対し、インクタンクに供給するガス圧を制御する。プッシュ式インクジェットヘッドでは、インクジェット吐出ユニットの傾斜によらず、安定してインク吐出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-131914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出し、記録媒体に柄を記録する。吐出不良が発生することで、柄の記録品質が低下する。吐出不良の原因の一つとして、ノズルにインクのメニスカスが安定して形成されないことが挙げられる。
【0005】
本発明は、インクの吐出を安定させることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、インクを吐出するノズルを含むインクジェットヘッドと、内部に前記インクを貯留する貯留室と、前記貯留室と前記インクジェットヘッドとを接続し、前記インクが流れるインク流路と、前記貯留室と前記インクジェットヘッドとの間で前記インクを循環させるポンプと、を含むインク経路と、前記貯留室内の気圧を調整する調整機構と、前記インク経路内の前記インクの液圧を検出する第一検出器と、を備え、前記インク流路は、前記貯留室と前記インクジェットヘッドとを接続し、前記貯留室から流出し且つ前記インクジェットヘッドに流入する前記インクが流れる第一インク流路と、前記インクジェットヘッドと前記貯留室とを接続し、前記インクジェットヘッドから流出し且つ前記貯留室に流入する前記インクが流れる第二インク流路と、を含み、前記第一検出器は、前記第一インク流路に設けられ、前記第一インク流路内の前記インクの液圧を検出し、前記ポンプは、前記第一インク流路には設けられずに前記第二インク流路に設けられ、前記インクジェットヘッドから前記貯留室に前記インクを流す、インクジェット記録装置である。
【0007】
このインクジェット記録装置によれば、第一インク路内のインクの液圧の変動を直接検出することができる。ノズルに形成されるメニスカスを安定させることができる。
【0008】
インクジェット記録装置は、前記インクジェットヘッドの鉛直な第一方向の位置を移動させ、前記第一検出器の前記第一方向の位置を移動させる移動機構を備え、前記移動機構は、前記インクジェットヘッドと共に前記第一検出器を前記インクジェットヘッドと同一方向に移動させる、ようにしてもよい。この構成によれば、インクジェットヘッドの第一方向の位置が変化することでインクの液圧が変動する場合、この変動するインクの液圧を、次の比較例と比較して迅速且つ正確に検出することができる。比較例は、貯留室内の気圧を検出する態様である。
【0009】
前記移動機構は、前記インクジェットヘッドの水平な第二方向の位置を移動させ、前記第一検出器の前記第二方向の位置を移動させる、ようにしてもよい。更に、前記移動機構は、前記インクジェットヘッドの前記第二方向に直交する水平な第三方向の位置を移動させ、前記第一検出器の前記第三方向の位置を移動させる、ようにしてもよい。
【0010】
これらの構成によれば、インクが揺れ又は波立つことでインクの液圧が変動する場合、この変動するインクの液圧を、比較例と比較して迅速且つ正確に検出することができる。比較例は、上述した通りである。インクジェットヘッドの水平面内の位置を移動させることで、インクには、次の力が作用する。前述の力の例としては、慣性力及び遠心力が挙げられる。インクは、この力によって揺れ又は波立つ。
【0011】
インクジェット記録装置は、前記インクジェット記録装置の設置位置の大気圧を検出する第二検出器を備え、前記調整機構は、前記貯留室内の気圧を調整し、前記第一検出器によって検出される前記インクの液圧と、前記第二検出器によって検出される大気圧と、の圧力差を一定とする、ようにしてもよい。この構成によれば、貯留室内の気圧を大気圧に応じて調整することができる。
【0012】
前記調整機構は、前記貯留室に繋がるエア流路と、前記エア流路に設けられ、前記エア流路を開閉する電磁弁と、前記エア流路の前記貯留室とは反対側に繋がり、前記エア流路を介して前記貯留室内と通じ合い、前記貯留室内に負圧を発生させる負圧源と、を含み、前記電磁弁は、前記エア流路の開度を全閉と全開との間で比例制御する、ようにしてもよい。前記エア流路は、一端で前記貯留室と繋がり、他端で前記負圧源と繋がり、前記貯留室と前記負圧源とを接続する第一エア流路と、一端で前記貯留室と繋がり、他端が大気に開放される第二エア流路と、を含み、前記電磁弁は、前記第一エア流路に設けられ、前記第一エア流路を開閉する第一電磁弁と、前記第二エア流路に設けられ、前記第二エア流路を開閉する第二電磁弁と、を含む、ようにしてもよい。この構成によれば、貯留室内の気圧を低下させる場合の低下速度(減圧速度)と、貯留室内の気圧を上昇させる場合の上昇速度(加圧速度)とを適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インクの吐出を安定させることができるインクジェット記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図2】インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す断面図である。図1のインクジェット記録装置に対応する。移動機構の図示を省略する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成に置換してもよい。本発明は、他の構成を含んでもよい。図面は、所定の構成を模式的に示す。ハッチングは、切断面を示す。一点鎖線は、回転中心軸を示す。
【0016】
<インクジェット記録装置10>
インクジェット記録装置10について、図1,2を参照して説明する。実施形態では、インクジェット記録装置10を特定するための方向を、第一方向、第二方向及び第三方向という。第二方向及び第三方向は、第一方向に直交する。第一方向を鉛直とし、第二方向及び第三方向を水平とする。第三方向は、第二方向に直交する。第一方向に関し、鉛直上側を第一側とし、鉛直下側を第二側とする。
【0017】
インクジェット記録装置10は、記録媒体90の表面91に柄を記録する(図1参照)。実施形態では、記録媒体90は、三次元形状の表面91を有する。図1,2の記録媒体90に基づけば、表面91の三次元形状は、水平な頂面と、第二方向にこの頂面を挟んだ2個の傾斜面とを含み、全体として凸状の形状を有する。但し、例えば、インクジェット記録装置10は、平面のような二次元形状の表面91に柄を記録することもできる。即ち、インクジェット記録装置10は、各種形状の表面91に柄を記録することができる。
【0018】
柄の記録に複数色のインクを用いることで、インクジェット記録装置10は、記録媒体90の表面91にフルカラーの柄を記録することができる。インク色の例としては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックが挙げられる。但し、柄の記録には、これらとは異なる色のインクを用いてもよい。インク色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。実施形態は、インク色を区別することなく説明する。
【0019】
インクジェット記録装置10は、載置台15と、第一支持具16と、インクジェットヘッド20と、インク経路30と、調整機構50と、第一検出器60と、移動機構70と、第二検出器80とを備える(図1,2参照)。
【0020】
載置台15には、記録媒体90が載せ置かれる(図1,2参照)。載置台15は、表面91への柄の記録時、記録媒体90を支持する。インクジェット記録装置10は、記録媒体90が載置台15に載せ置かれた状態で、載置台15に接していない表面91の領域に柄を記録することができる。第一支持具16には、インクジェットヘッド20が搭載される。即ち、第一支持具16は、インクジェットヘッド20を支持する。
【0021】
インクジェットヘッド20は、ノズル21と、第一接続口22と、第二接続口23と、内部流路24とを含む(図2参照)。ノズル21は、インクを吐出する。インクジェットヘッド20には、複数のノズル21が設けられる。実施形態では、インクジェットヘッド20は、8個のノズル21を含む。但し、このようなノズル21の数は例示である。インクジェットヘッド20に設けるノズル21の数は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0022】
第一接続口22は、インクジェットヘッド20に供給されるインクの流入口である。第二接続口23は、インクジェットヘッド20から回収されるインクの流出口である。第一接続口22には、第一インク流路35が接続される。第二接続口23には、第二インク流路38が接続される。第一インク流路35及び第二インク流路38については後述する。
【0023】
内部流路24は、インクジェットヘッド20の内部に設けられる。内部流路24は、本流部25と、複数の支流部26とを含む。本流部25は、第一接続口22と第二接続口23とを繋ぐ。支流部26は、本流部25から分岐し、ノズル21に繋がる。内部流路24は、ノズル21と同数の支流部26を含む。インクは、第一接続口22を通ってインクジェットヘッド20に流入した後、本流部25を第二接続口23の側に流れる。その後、インクは、第二接続口23を通ってインクジェットヘッド20から流出する。本流部25を流れるインクの一部は、複数の支流部26に流入し、複数のノズル21の側に流れる。
【0024】
インク経路30は、貯留室31と、インク流路34とを含む(図1,2参照)。貯留室31は、内部にインクを貯留する(図2参照)。貯留室31内には、インクが貯留された状態で気液界面が形成される。インクジェット記録装置10は、貯留室31として、容器を採用する。この場合、貯留室31は、サブタンクと称されることもある。但し、貯留室31は、管であってもよい(不図示)。この場合、貯留室31としての管は、螺旋状としてもよい。貯留室31を螺旋状の管とすることで貯留室31の内容積を大きくし、貯留室31内に貯留可能なインク量を多くすることができる。
【0025】
インク流路34は、貯留室31とインクジェットヘッド20とを接続する(図2参照)。インク流路34は、インクの通路を形成する。インクは、インク流路34を流れる。インク流路34は、第一インク流路35と、第二インク流路38とを含む(図1,2参照)。
【0026】
第一インク流路35は、貯留室31とインクジェットヘッド20とを接続する(図2参照)。第一インク流路35の一端は、貯留室31に接続される。第一インク流路35は、他端に第一継手36を含む。第一継手36は、インク経路30をインクジェットヘッド20に接続する。即ち、第一インク流路35の他端は、第一継手36を介してインクジェットヘッド20(第一接続口22)に接続される。第一インク流路35は、一端で貯留室31内と通じ合い、他端で内部流路24と通じ合う。
【0027】
第二インク流路38は、インクジェットヘッド20と貯留室31とを接続する(図2参照)。第二インク流路38は、一端に第二継手39を含む。第二継手39は、インク経路30をインクジェットヘッド20に接続する。即ち、第二インク流路38の一端は、第二継手39を介してインクジェットヘッド20(第二接続口23)に接続される。第二インク流路38の他端は、貯留室31に接続される。第二インク流路38は、一端で内部流路24と通じ合い、他端で貯留室31内と通じ合う。
【0028】
貯留室31が容器である場合、貯留室31には、第三接続口32及び第四接続口33が設けられる(図2参照)。第三接続口32には、第一インク流路35の一端が接続され、第四接続口33には、第二インク流路38の他端(他端側)が接続される。これらの接続には、公知の継手を用いてもよい。この場合、第一インク流路35は、一端に継手を含んでもよく、第二インク流路38は、他端(他端側)に継手を含んでもよい。但し、図1,2では、前述の継手の図示を省略する。
【0029】
インクは、貯留室31内から第一インク流路35に流出する。更に、インクは、第一インク流路35を流れ、第一継手36内を通って第一接続口22からインクジェットヘッド20内に流入する。その後、インクは、本流部25を流れ、第二接続口23からインクジェットヘッド20外に流出する。更に、第二継手39内を通って第二インク流路38を流れ、貯留室31内に流入する。インクは、貯留室31とインクジェットヘッド20との間で循環する。換言すれば、インクは、インクジェットヘッド20を介してインク経路30を循環する。図2でインク流路34の近傍に示す矢印は、その部分をインクが流れる方向を示す。
【0030】
第二インク流路38には、ポンプ42が設けられる(図1,2参照)。実施形態では、第二インク流路38の次の部分を「第三流路部40」及び「第四流路部41」という。第三流路部40は、インクジェットヘッド20とポンプ42とを接続する。第四流路部41は、ポンプ42と貯留室31とを接続する。ポンプ42は、第二インク流路38にインクを流す。
【0031】
第二インク流路38には、補給流路が接続されてもよい。第二インク流路38での補給流路の接続位置は、第三流路部40としてもよく、又は第四流路部41としてもよい。補給流路は、メインタンクと第二インク流路38とを接続する。メインタンクは、インクを貯留する。インク経路30内のインクは、ノズル21から吐出されることで減少する。貯留室31内のインク量の下限値が設定されているとする。この場合、貯留室31内のインク量が下限値未満又は以下となった場合、メインタンクに貯留されたインクが補給流路を介してインク経路30に補給される。図1,2では、補給流路及びメインタンクの図示を省略する。
【0032】
調整機構50は、貯留室31内の気圧を調整する。即ち、調整機構50は、貯留室31内の気圧を負圧とし、貯留室31内の気圧を大気圧とする。負圧は、大気圧より低い圧力である。調整機構50は、エア流路51と、電磁弁54と、負圧源57とを含む(図1,2参照)。但し、このような調整機構50は例示である。調整機構50は、これとは異なっていてもよい。調整機構50の構成は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0033】
エア流路51は、貯留室31に繋がる。調整機構50は、エア流路51として、第一エア流路52と、第二エア流路53とを含む。第一エア流路52及び第二エア流路53は、貯留室31に繋がる。実施形態では、第一エア流路52と第二エア流路53とを区別しない場合、又はこれらを総称する場合、エア流路51という。
【0034】
電磁弁54は、エア流路51に設けられ、エア流路51を開閉する。調整機構50は、電磁弁54として、第一電磁弁55と、第二電磁弁56とを含む。第一電磁弁55は、第一エア流路52に設けられ、第一エア流路52を開閉する。第二電磁弁56は、第二エア流路53に設けられ、第二エア流路53を開閉する。実施形態では、第一電磁弁55と第二電磁弁56とを区別しない場合、又はこれらを総称する場合、電磁弁54という。
【0035】
調整機構50は、電磁弁54として、公知の比例制御弁を採用する。電磁弁54は、エア流路51の開度を全閉と全開との間で比例制御する。全開は、開度100%を意味し、全閉は、開度0%を意味する。従って、実施形態では、第一電磁弁55及び第二電磁弁56は、比例制御弁である。第一電磁弁55は、第一エア流路52の開度を全閉と全開との間(0%≦開度≦100%)で比例制御する。第二電磁弁56は、第二エア流路53の開度を全閉と全開との間(0%≦開度≦100%)で比例制御する。
【0036】
負圧源57は、エア流路51の貯留室31とは反対側に繋がり、エア流路51を介して貯留室31内と通じ合う(図2参照)。負圧源57は、貯留室31内のエアを吸い込む。これに伴い、負圧源57は、貯留室31内に負圧を発生させる。調整機構50では、第一エア流路52は、貯留室31と負圧源57とを接続する。従って、実施形態では、負圧源57は、第一エア流路52の貯留室31とは反対側に繋がり、第一エア流路52を介して貯留室31内と通じ合い、貯留室31内に負圧を発生させる。負圧源57の例としては、真空ポンプが挙げられる。
【0037】
第一電磁弁55の開度が全閉でない場合(開度>0%)、負圧源57は、貯留室31内のエアを吸い込む。貯留室31内の気圧は、第一電磁弁55を開くことで(開度>0%)、開く前の圧力から低下する。調整機構50は、第一電磁弁55の開度の設定によって貯留室31内から流出するエア量を可変する。調整機構50は、貯留室31内の気圧の低下速度(減圧速度)を制御する。
【0038】
第二エア流路53の貯留室31とは反対側は、大気に開放される(図1,2参照)。第二電磁弁56の開度が全閉でない場合(開度>0%)、負圧の貯留室31内には、第二エア流路53を介してエアが流入する。負圧の貯留室31内の気圧は、第二電磁弁56を開くことで(開度>0%)、開く前の圧力から大気圧以下の圧力へと上昇する。
【0039】
但し、貯留室31内の気圧を大気圧とした場合、ノズル21からインクが垂れ落ちることがある。そのため、柄の記録時、貯留室31内の気圧は、大気圧未満の所定の負圧とすることが好ましい。貯留室31内の気圧は、ノズル21でのメニスカスの形成に影響を与える。調整機構50は、ノズル21にメニスカスを安定して形成することができるよう貯留室31内の気圧を調整する。
【0040】
調整機構50は、第二電磁弁56の開度の設定によって貯留室31内に流入するエア量を可変する。調整機構50は、貯留室31内の気圧の上昇速度(加圧速度)を制御する。調整機構50では、第二電磁弁56は、貯留室31内の気圧を上昇させる加圧源としての機能を有する。
【0041】
第一検出器60は、インクの液圧を検出する。第一検出器60は、インク経路30に設けることが好ましい。この場合、第一検出器60は、インク経路30内のインクの液圧を検出する。第一検出器60は、インク流路34に設けることがより好ましく、第一インク流路35に設けることが更に好ましい。第一検出器60は、第一インク流路35のうちインクジェットヘッド20により近い位置に設けることがより更に好ましい。実施形態では、第一検出器60は、第一継手36に設けられる(図1,2参照)。この場合、第一継手36は、第一検出器60用の固定具としての機能を有する。
【0042】
第一継手36には、取付孔37が設けられる(図2参照)。第一検出器60は、取付孔37に挿入される。第一継手36は、取付孔37に封止構造を採用する。封止構造は、第一検出器60が挿入された取付孔37を封止し、取付孔37からのインク漏れを抑制する。封止構造には、公知の封止材が用いられる。例えば、封止構造には、Oリングが用いられる。封止構造は、諸条件を考慮して適宜決定される。図2では、封止材の図示を省略する。但し、このような第一検出器60の設置構造は例示である。インク経路30に対する第一検出器60の設置構造は、諸条件を考慮して適宜決定される。第一検出器60の設置構造の他の例については後述する。
【0043】
移動機構70は、インクジェットヘッド20の第一方向の位置を移動させ、第一検出器60の第一方向の位置を移動させる。移動機構70は、インクジェットヘッド20の第二方向の位置を移動させ、第一検出器60の第二方向の位置を移動させる。移動機構70は、インクジェットヘッド20の第三方向の位置を移動させ、第一検出器60の第三方向の位置を移動させる。
【0044】
インクジェット記録装置10は、移動機構70として、垂直多関節ロボットを採用する(図1参照)。移動機構70の軸数は、第一軸L1、第二軸L2、第三軸L3、第四軸L4、第五軸L5及び第六軸L6の6軸である。垂直多関節ロボットは、既に実用化され公知である。従って、移動機構70の構造に関する説明は省略する。
【0045】
移動機構70には、第一支持具16が設けられる(図1参照)。移動機構70が垂直多関節ロボットである場合、第一支持具16は、ロボットアームの先端に取り付けられる。従って、上述したインクジェットヘッド20及び第一検出器60の第一方向、第二方向及び第三方向の位置の移動は、移動機構70が第一支持具16を第一方向、第二方向及び第三方向に移動させることで行われる。更に、この位置の移動は、第一支持具16を第一軸L1を中心に回動させることで行われる。この他、この位置の移動は、第一支持具16を第四軸L4及び第六軸L6の一方又は両方を中心に回転させることで行われる。移動機構70は、インクジェットヘッド20と共に第一検出器60をインクジェットヘッド20と同一方向に移動する。
【0046】
上記では説明を省略したが、インクジェット記録装置10では、インク流路34は、次の態様を有する。即ち、インク流路34は、移動機構70によるインクジェットヘッド20(第一支持具16)の第一方向、第二方向及び第三方向の位置の移動に対応することができる。
【0047】
第二検出器80は、インクジェット記録装置10の設置位置の大気圧を検出する。実施形態では、第二検出器80は、移動機構70に設けられる(図1参照)。但し、このような第二検出器80の配置は例示である。第二検出器80の配置は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0048】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0049】
(1)インクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド20と、インク経路30と、調整機構50と、第一検出器60とを備える(図1,2参照)。インクジェットヘッド20は、インクを吐出するノズル21を含む。インク経路30は、貯留室31と、インク流路34とを含む。貯留室31は、内部にインクを貯留する(図2参照)。インク流路34は、貯留室31とインクジェットヘッド20とを接続する。インク流路34には、インクが流れる。調整機構50は、貯留室31内の気圧を調整する。第一検出器60は、インク経路30内のインクの液圧を検出する。
【0050】
インクジェット記録装置10によれば、インク経路30内のインクの液圧の変動を直接検出することができる。ノズル21に形成されるメニスカスを安定させることができる。インクの吐出を安定させることができる。
【0051】
(2)第一検出器60は、インク流路34内のインクの液圧を検出する。この構成によれば、インク流路34内のインクの液圧の変動を直接検出することができる。
【0052】
(3)インクジェット記録装置10は、移動機構70を備える(図1参照)。移動機構70は、インクジェットヘッド20の鉛直な第一方向の位置を移動させ、第一検出器60の第一方向の位置を移動させる。移動機構70は、インクジェットヘッド20と共に第一検出器60をインクジェットヘッド20と同一方向に移動させる。
【0053】
この構成によれば、インクジェットヘッド20の第一方向の位置が変化することでインクの液圧が変動する場合、この変動するインクの液圧を、次の比較例と比較して迅速且つ正確に検出することができる。比較例は、貯留室31内の気圧を検出する態様である。例えば、移動機構70によってインクジェットヘッド20の第一方向の位置を移動させる場合、インクの液圧は、この移動の加減速に伴いインクジェットヘッド20に次の力が作用することで変動することがある。前述の力の例としては、慣性力が挙げられる。
【0054】
インクジェット記録装置10では、移動機構70は、インクジェットヘッド20の水平な第二方向の位置を移動させ、第一検出器60の第二方向の位置を移動させる。更に、移動機構70は、インクジェットヘッド20の水平な第三方向の位置を移動させ、第一検出器60の第三方向の位置を移動させる。第三方向は、第二方向に直交する。
【0055】
これらの構成によれば、インクが揺れ又は波立つことでインクの液圧が変動する場合、この変動するインクの液圧を、比較例と比較して迅速且つ正確に検出することができる。比較例は、上述した通りである。インクジェットヘッド20の水平面内の位置を移動させることで、インクには、次の力が作用する。前述の力の例としては、慣性力及び遠心力が挙げられる。インクは、この力によって揺れ又は波立つ。
【0056】
インクジェット記録装置10は、移動機構70を備え、インクジェットヘッド20の第一方向、第二方向及び第三方向の位置を移動する。これに伴い、次の第一方向の位置に関係する水頭差に変化が生じる。前述の第一方向の位置は、次の第一液面の第一方向の位置と、第一検出器60の第一方向の位置と、次の第二液面の第一方向の位置とである。第一液面は、貯留室31内のインクの液面である。第二液面は、ノズル21内のインクの液面である。第二液面は、複数のノズル21のうちの所定のノズル21を基準とし、この基準とするノズル21内のインクの液面としてもよい。
【0057】
この水頭差に関し、第一液面の第一方向の位置と第一検出器60の第一方向の位置との第一差は、第一検出器60によって検出されるインクの液圧に相当し、第一検出器60の第一方向の位置と第二液面の第一方向の位置との第二差は、移動機構70の第一軸L1、第二軸L2、第三軸L3、第四軸L4、第五軸L5及び第六軸L6の各軸回りの回転量に応じて演算される。第二差の演算に関し、インクジェットヘッド20の吐出面の所定の位置を第二液面の第一方向の位置とみなしてもよい。吐出面は、複数のノズル21が開口するインクジェットヘッド20の面である。図2に基づけば、吐出面は、インクジェットヘッド20の第一方向の第二側となる。前述の所定の位置の例としては、吐出面の中心位置及び吐出面で上述した基準とするノズル21が開口する位置が挙げられる。インクジェット記録装置10では、第一差と第二差とを併せて第一検出器60により検出されるインクの液圧が目標圧力値となるよう、調整機構50が貯留室31内の気圧を調整する。インクジェット記録装置10は、第二差を考慮して目標圧力値を決定する。
【0058】
(4)インクジェット記録装置10は、第二検出器80を備える(図2参照)。第二検出器80は、インクジェット記録装置10の設置位置の大気圧を検出する。この構成によれば、貯留室31内の気圧を大気圧に応じて調整することができる。例えば、調整機構50は、次の圧力差が一定となるよう、貯留室31内の気圧を調整してもよい。前述の2つの圧力は、第一検出器60によって検出されるインクの液圧と、第二検出器80によって検出される大気圧とである。これにより、ノズル21内のインクの液圧と大気圧との圧力差を一定に保つことができる。
【0059】
(5)調整機構50は、エア流路51と、電磁弁54と、負圧源57とを含む(図1,2参照)。エア流路51は、貯留室31に繋がる。電磁弁54は、エア流路51に設けられ、エア流路51を開閉する。負圧源57は、エア流路51の貯留室31とは反対側に繋がる。負圧源57は、エア流路51を介して貯留室31内と通じ合う。負圧源57は、貯留室31内に負圧を発生させる。電磁弁54は、エア流路51の開度を全閉と全開との間で比例制御する。
【0060】
インクジェット記録装置10では、調整機構50は、エア流路51として、第一エア流路52及び第二エア流路53を含み、電磁弁54として、第一電磁弁55及び第二電磁弁56を含む。第一エア流路52及び第二エア流路53は、貯留室31に繋がる。第一電磁弁55は、第一エア流路52に設けられ、第二電磁弁56は、第二エア流路53に設けられる。負圧源57は、第一エア流路52の貯留室31とは反対側に繋がる。
【0061】
この構成によれば、貯留室31内の気圧を低下させる場合の低下速度(減圧速度)と、貯留室31内の気圧を上昇させる場合の上昇速度(加圧速度)とを適宜調整することができる。
【0062】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では、上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は適宜省略する。
【0063】
(1)第一検出器60は、第一インク流路35に設けられ、第一インク流路35内のインクの液圧を検出する(図1,2参照)。第一検出器60は、第二インク流路38の第三流路部40に設けてもよい。この場合、第一検出器60は、インクがポンプ42に吸い込まれる前に、第二インク流路38の第三流路部40内のインクの液圧を検出する。第一検出器60の第一方向の位置は、第一液面より下側とすることが好ましい。第一液面は、上述した通りである。第一検出器60は、貯留室31内のインクの液圧を検出してもよい。
【0064】
この他、第一検出器60は、インクジェットヘッド20の内部流路24内のインクの液圧を検出してもよい。但し、第一検出器60は、インク経路30内のインクの液圧を検出することが好ましい。インクジェットヘッド20の構造及び第一検出器60の構造を簡略化することができる。例えば、内部流路24内に第一検出器60を設ける場合、より小型の第一検出器60が必要になると想定される。
【0065】
第一インク流路は、第一流路部と、第二流路部とを含んでもよい。第一流路部は、図1,2の第一インク流路35と同様、他端でインクジェットヘッド20に繋がる。第一流路部の他端は、第一流路部と第二流路部との分岐位置の側となる第一流路部の一端とは反対側である。第一インク流路が第一流路部と第二流路部とを含む場合、第一検出器60は、第二流路部に設けてもよい。例えば、第一検出器60は、第二流路部の端部に設けることができる。第一流路部は、貯留室31とインクジェットヘッド20とを繋ぐ本流として機能し、第二流路部は、第一流路部から分岐し、第一検出器60へと続く支流として機能する。移動機構70は、インクジェットヘッド20と共に第一検出器60をインクジェットヘッド20と同一方向に移動させる。従って、第一検出器60は、インクジェットヘッド20と共に第一支持具16に搭載することが好ましい。第二流路部内には、インクが充填される。第一検出器60は、第二流路部内のインクの液圧を検出する。インクジェットヘッド20へのインクの供給をスムーズに行うことができる。
【0066】
(2)移動機構70として、6軸の垂直多関節ロボットを例示した(図1参照)。移動機構は、6軸の垂直多関節ロボットとは異なる型式としてもよい。例えば、移動機構の型式及び軸数は、記録媒体90の表面91の形状に応じて適宜決定される。
【0067】
移動機構は、直交座標型ロボットとしてもよい。この場合、移動機構は、第一直動機構と、第二直動機構と、第三直動機構とを含む。第一直動機構は、第一方向に沿って設けられ、インクジェットヘッド20及び第一検出器60の第一方向の位置を移動する。第二直動機構は、第二方向に沿って設けられ、インクジェットヘッド20及び第一検出器60の第二方向の位置を移動する。第三直動機構は、第三方向に沿って設けられ、インクジェットヘッド20及び第一検出器60の第三方向の位置を移動する。
【0068】
例えば、第一直動機構、第二直動機構及び第三直動機構は、駆動装置と、ガイドとを含む。駆動装置の例としては、電動アクチュエータが挙げられる。電動アクチュエータの例としては、ボールねじとモータとの組み合わせ、及びリニアモータが挙げられる。ガイドの例としては、ボールブッシュとシャフトとの組み合わせ、及びリニアガイドが挙げられる。第一直動機構、第二直動機構及び第三直動機構は、このような公知の駆動装置とガイドとの組み合わせとすることができる。
【0069】
この他、記録媒体90が二次元形状の表面91を有するとする。この場合、移動機構は、インクジェットヘッド20及び第一検出器60の第一方向の位置を移動せず、これらの第二方向の位置又は第三方向の位置を移動する型式であってもよい。このような移動機構を備えるインクジェット記録装置は、シリアル型と称される。移動機構は、インクジェットヘッド20及び第一検出器60を搭載する第一支持具16を第二方向又は第三方向に往復移動する。第一支持具16は、所謂、キャリッジに相当する。シリアル型のインクジェット記録装置は、既に実用化され公知である。従って、シリアル型のインクジェット記録装置に関するこの他の説明は省略する。
【0070】
(3)調整機構50では、第二電磁弁56は、加圧源としての機能を有する。第二電磁弁56は、開くことで(開度>0%)、負圧の貯留室31内の気圧を大気圧以下の圧力へと上昇させる。調整機構50は、貯留室31内の気圧を正圧としてもよい。正圧は、大気圧より高い圧力である。この場合、調整機構50は、貯留室31内の気圧を正圧とする次の加圧源を含む。前述の加圧源の例としては、圧縮機が挙げられる。貯留室31内の気圧を大気圧より高い圧力とする加圧源の利用方法の例としては、次のような方法が挙げられる。インクジェットヘッド20では、ノズル21が詰まることがある。この場合、貯留室31内の気圧を正圧とし、ノズル21からインクを強制的に排出することがある。これにより、ノズル21の詰まりを解消することができる。
【0071】
(4)上記では説明を省略したが、貯留室31が容器である場合、インクジェット記録装置10は、第二支持具17を備えてもよい(図1,2参照)。この貯留室31は、第二支持具17に搭載される。即ち、第二支持具17は、貯留室31を支持する。この場合、ポンプ42は、第二支持具17に搭載されてもよい(図1,2参照)。但し、このような貯留室31及びポンプ42の設置構造は例示である。貯留室31及びポンプ42の設置構造は、諸条件を考慮して適宜決定される。図1,2では、第二支持具17は、一部を省略し、貯留室31及びポンプ42を搭載する部分を示す。
【0072】
インクジェット記録装置10が第二支持具17を備え、移動機構70が垂直多関節ロボットであるとする(図1参照)。この場合、第二支持具17は、ロボットアームの次の部分に取り付けてもよい。前述の部分は、ロボットアームの先端より第一軸L1側である。第二支持具17をロボットアームに取り付けた場合、貯留室31内のインクは、ロボットアームの動作に伴い揺れ又は波打つ。インクの液圧は、これによっても変動する。但し、インクジェット記録装置10では、上述した通り、第一検出器60をインク経路30に設けることで、インクの液圧の変動を迅速且つ正確に検出することができる。
【0073】
インクジェット記録装置10では、エア流路51は、次の態様を有する。即ち、エア流路51は、移動機構70による貯留室31(第二支持具17)の第一方向、第二方向及び第三方向の位置の移動に対応することができる。
【0074】
(5)インクジェット記録装置10は、第二検出器80を備える(図1,2参照)。第二検出器80は、省略してもよい。この場合、インクジェット記録装置は、次の設定装置を備えてもよい。設定装置は、大気圧の入力を受け付け、インクジェット記録装置の設置位置の大気圧として、受け付けられた大気圧を設定する。例えば、設定装置は、操作装置を含む。操作装置は、大気圧の入力を受け付ける。例えば、作業者は、操作装置を操作して大気圧を入力する。設定装置は、操作装置で受け付けられた大気圧を記憶する。調整機構50は、上記同様、次の圧力差が一定となるよう、貯留室31内の気圧を調整する。但し、前述の圧力差は、第一検出器60によって検出されるインクの液圧と、設定装置で取得された大気圧との差である。これにより、ノズル21内のインクの液圧と大気圧との圧力差を一定に保つことができる。
【0075】
(6)インク経路30は、貯留室31と、インク流路34とを含み、インク流路34は、第一インク流路35と、第二インク流路38とを含む(図1,2参照)。インクジェット記録装置10は、第二インク流路38にポンプ42を備える(図1,2参照)。インクは、インクジェットヘッド20を介してインク経路30を循環する(図2参照)。インクの循環は、上述したインクジェット記録装置10とは異なる方式としてもよい。インクの循環方式は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0076】
例えば、インクの循環は、次の方式にて実施してもよい。即ち、インク経路は、貯留室31とは異なる貯留室を含む。この説明では、貯留室31に対応する貯留室を「第一貯留室」といい、貯留室31とは異なる貯留室を「第二貯留室」という。この場合、第二インク流路では、ポンプ42が省略される。第一貯留室は、インクジェットヘッド20に供給されるインクを貯留し、第二貯留室は、インクジェットヘッド20から回収されるインクを貯留する。第二インク流路の一端は、第二継手39を介してインクジェットヘッド20に接続され、第二インク流路の他端は、第二貯留室に接続される。第二貯留室内の気圧は、第一貯留室内の気圧よりも低く設定される。第一貯留室と第二貯留室との間にこのような圧力差を設けることで、第一貯留室に貯留されたインクは、第一インク流路35、インクジェットヘッド20の内部流路24の本流部25及び第二インク流路を流れて第二貯留室に流入する。
【0077】
インクジェット記録装置が第一貯留室及び第二貯留室を含む場合、インク経路は、更に、連結流路を備えてもよい。連結流路は、第二貯留室と第一貯留室とを接続する。連結流路には、ポンプを設けてもよい。このポンプは、連結流路にインクを流す。即ち、第二貯留室内のインクは、第二貯留室内から連結流路に流出する。更に、インクは、連結流路を流れ、第一貯留室内に流入する。
【符号の説明】
【0078】
10 インクジェット記録装置、 15 載置台、 16 第一支持具
17 第二支持具、 20 インクジェットヘッド、 21 ノズル
22 第一接続口、 23 第二接続口、 24 内部流路、 25 本流部
26 支流部、 30 インク経路、 31 貯留室、 32 第三接続口
33 第四接続口、 34 インク流路、 35 第一インク流路
36 第一継手、 37 取付孔、 38 第二インク流路、 39 第二継手
40 第三流路部、 41 第四流路部、 42 ポンプ、 50 調整機構
51 エア流路、 52 第一エア流路、 53 第二エア流路、 54 電磁弁
55 第一電磁弁、 56 第二電磁弁、 57 負圧源、 60 第一検出器
70 移動機構、 80 第二検出器、 90 記録媒体、 91 表面
L1 第一軸、 L2 第二軸、 L3 第三軸、 L4 第四軸、 L5 第五軸
L6 第六軸
図1
図2