(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H01M 50/202 20210101AFI20240708BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240708BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240708BHJP
H01M 50/11 20210101ALI20240708BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240708BHJP
H01M 10/623 20140101ALI20240708BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M50/202 301
H01M4/133
H01M10/0562
H01M50/11
H01M50/202 401H
H01M10/617
H01M10/623
H01M10/6554
(21)【出願番号】P 2020026154
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 貴文
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-008604(JP,A)
【文献】特開2008-192968(JP,A)
【文献】特開2006-245025(JP,A)
【文献】特開2014-086226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/20-50/298
H01M 10/617
H01M 10/623
H01M 10/6554
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板に実装された発熱する電子部品と、
前記電子部品に熱伝導部材を介して接触する全固体電池と、を有し、
前記全固体電池は、前記全固体電池の負極集電体層が前記熱伝導部材を向くように配置され
、
前記全固体電池は炭素材料を含む負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は、前記熱伝導部材の側とは反対側に前記負極集電体層に積層されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記熱伝導部材は、前記全固体電池の側面に当接する延伸した複数の腕部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記全固体電池を実装する第2の基板を更に有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記熱伝導部材は、前記第1の基板であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記全固体電池は、前記第1の基板に実装されていることを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記電子部品および前記全固体電池は、前記第1の基板の同一面上に実装されていることを特徴とする請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記電子部品および前記全固体電池は互いに隣接して前記第1の基板に実装されていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記電子部品は前記第1の基板の一方の面に実装されており、
前記全固体電池は前記第1の基板の他方の面に実装されていることを特徴とする請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項9】
前記電子部品および前記全固体電池は互いに対向して前記第1の基板に実装されていることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に全固体電池を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置のような電子機器は、近年、動画撮影可能なものが主流となっており、内部回路基板上に実装される電子部品の温度上昇が非常に大きくなってきている。電子部品の温度上昇は電子部品の誤動作の原因につながるばかりでなく、電子機器本体の高温化につながり、使用者に不快感を与えてしまうことが懸念される。そこで、効率よく熱を移動、拡散させるために、熱対策として、部品を追加しているものもある。また、電子機器内に配置したリチウムイオン二次電池に関して、例えば複数の電池を配置した場合、発熱する電子部品に近いほうが発熱部品からの熱により温度が上昇し、電池寿命が短くなる等の課題があった。そこで、発熱電子部品、第1のリチウムイオン二次電池、第2のリチウムイオン二次電池を直線上に配置しているものがある。さらに発熱電子部品と第2のリチウムイオン二次電池を熱的に接続し、間にある第1のリチウムイオン二次電池には断熱層を設けたシートを配置してリチウムイオン二次電池の劣化を防止しているものもある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、リチウムイオン二次電池に熱を移動させているため、電池自体の温度が上昇することになり、結果的には、熱接続したリチウムイオン二次電池は劣化することになる。さらには、リチウムイオン二次電池に熱を逃がす構成であり、リチウムイオン二次電池自体の温度上昇もあり、電子機器全体のさらなる高温化につながる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明では、電子部品から発生する熱を効率よく移動させることが可能であり、別の熱対策部品を追加することなく、機器全体の高温化を防ぐことができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の基板と、前記第1の基板に実装された発熱する電子部品と、前記電子部品に熱伝導部材を介して接触する全固体電池と、を有し、前記全固体電池は、前記全固体電池の負極集電体層が前記熱伝導部材を向くように配置され、前記全固体電池は炭素材料を含む負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、前記熱伝導部材の側とは反対側に前記負極集電体層に積層されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子部品から発生する熱を効率よく移動させることが可能であり、別の熱対策部品を追加することなく、機器全体の高温化を防ぐことができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に関わる電子機器外観斜視図
【
図2】本発明の実施形態に関わる電子機器の分解斜視図
【
図3】本発明の実施例1に関わる全固体電池図と断面図
【
図4】本発明の実施例1に関わるメイン基板と全固体電池基板分解斜視図
【
図5】本発明の実施例1に関わるメイン基板と全固体電池基板断面図
【
図6】本発明の実施例2に関わるメイン基板に全固体電池を実装した図
【
図7】本発明の実施例3に関わるメイン基板に全固体電池を実装した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施形態である電子機器100の正面外観斜視図である。電子機器100は、上面に電子機器100の電源のON、OFF機能を持つ電源ボタン110、そして、撮影準備及び撮影開始を指示するレリーズボタン120を備えている。さらに、電子機器100は、撮像素子130を備え、不図示のレンズが装着されると撮影が可能となる。
【0012】
図2は、本発明の電子機器100の分解斜視図である。外装カバーである前カバー140、後カバー901、右カバー301、左カバー401により電子機器本体201およびシャーシユニット801を保持している。さらに、電子機器100は、内部に撮像素子ユニット501および電子部品を実装している第1の基板であるメイン基板601と、全固体電池を実装している第2の基板である電池回路基板701を有している。メイン基板601は電子機器100の制御に関する電子部品などを実装しており、動画撮影時に発熱する電子部品も搭載している。電池回路基板701はメイン基板601と不図示のコネクタで電気的に接続され、電子機器100の駆動のための電力を供給している。
【0013】
図3(a)を用いて、全固体電池710について説明する。
図3(a)は、
図2で示した電池回路基板701をメイン基板601の側から示した図である。
図3(b)は、電池回路基板701の断面図である。全固体電池710は、固体電解質を含む二次電池であり、正極端子711と負極端子712を両端に有する。正極端子711と負極端子712は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)などの金属めっきで形成され、リフロー方式などにより、はんだ付けが可能である。また、外装材がセラミックスや樹脂などの材料で形成されている。
図3(b)に示すとおり、全固体電池710は積層構造である。
図3(b)において、713は酸化物ガラスや酸化物ガラスセラミックスなどのリチウムイオン導電体からなる固体電解質で形成される固体電解質層である。714は黒鉛などの炭素材料と、リチウムイオン導電体からなる負極活物質とで形成される負極活物質層である。715はリチウム化合物と、リチウムイオン導電体からなる正極活物質とで形成される正極活物質層である。716はアルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属あるいはそれらの金属を含む合金からなる集電体で形成される負極集電体層である。717はアルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの金属あるいはそれらの金属を含む合金からなる集電体で形成される正極集電体層である。そして、718が端子電極を有する全固体電池の外装である。全固体電池710は、従来のリチウムイオン2次電池では液体電解質層である部分を固体電解質層に置き換えることで構成される電池であり、回路基板などにリフロー方式などにより、はんだ付けが可能である。そのため、熱に強く、液漏れや発火の危険性がないため、安全性や信頼性が非常に高いことで知られている。
【0014】
次に
図4において、メイン基板601と電池回路基板701の構成について説明する。
図4は、メイン基板601と電池回路基板701の付近の分解斜視図である。メイン基板601と電池回路基板701は互いに対向して配置されている。電池回路基板701のメイン基板601の側の面に全固体電池710が実装されており、さらに全固体電池710の対向側のメイン基板601の側には発熱する電子部品611がメイン基板601に実装されている。全固体電池710と電子部品611の間には、熱伝導部材721が、双方に接触(当接)するように配置されている。さらに、電池回路基板701と熱伝導部材721をメイン基板601に保持するための保持部材726が配置されている。保持部材726は、固定ねじ731、732で電池回路基板701に固定され、固定ねじ621でメイン基板601に固定される。
【0015】
図5(a)は、メイン基板601と電池回路基板701の組立図である。
図5(b)は、
図5(a)のA-A断面図である。
図5(b)において、全固体電池710と発熱する電子部品611の間には、熱伝導部材721が双方に当接するように配置されている。ここで、全固体電池710は、電池回路基板701側から順に正極集電体層717、正極活物質層715、固体電解質層713、負極活物質層714、負極集電体層716の層構成である。熱伝導部材721の側、つまり、発熱する電子部品611の側に、負極活物質層714、負極集電体層716を配置している。負極活物質層714は前述のとおり、炭素を材料とした固体電解質である。炭素は熱伝導率が高いため、負極活物質層714を発熱する電子部品611のより近傍に配置することで、電子部品611から発せられた熱を全固体電池710に効率よく移動させることができる。つまり、全固体電池710自体を、熱容量の大きい部品のように扱うことができ、別の熱対策部品を追加することなく、電子機器全体の高温化を抑制することが可能となる。さらに、熱伝導部材721は、
図4に示すとおり、全固体電池710の四方に向けて延伸する複数の腕部722、723、724、725を有している。腕部722、723、724、725は、組立時には曲がり、全固体電池710のそれぞれの側面に当接し、保持部材726で保持される。全固体電池710の、発熱する電子部品611の側と対向する面だけに、熱伝導部品721を当接させるだけでなく、側面まで熱伝導部品721を当接させることで、より多くの熱を移動させることが可能となる。さらに、保持部材726の材質を金属材料で構成することで、さらに熱容量をもった別部品(不図示)に当接させて、より熱拡散することができ、電子機器全体の高温化を一層抑制することが可能となる。
【実施例2】
【0016】
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例1では、発熱する電子部品611を実装したメイン基板601とは別の電池回路基板701に全固体電池710を実装した構成について説明した。ここでは、発熱する電子部品611を実装したメイン基板602と同一基板の同一面上に全固体電池740を実装した場合について説明する。つまり、実施例2では、メイン基板602が実施例1における熱伝導部材721の役割を兼ねることとなる。
図6(a)は、電子機器100のメイン基板602を示している。
図6(a)において、発熱する電子部品611が実装されている基板と同一基板の同一面上に、全固体電池740が電子部品611と互いに隣接して実装されている。ここで、全固体電池740と電子部品611は、互いに隣接して実装されていると述べたが、全固体電池740は、全固体電池740に熱が効率的に移動できる程度に電子部品611に対して配置されていればよい。
【0017】
図6(b)は、
図6(a)のB-B断面図である。ここで、全固体電池740の負極集電体層716、負極活物質層714がメイン基板602の側となるように配置されている。メイン基板602では一般的に、配線層の材質として金や銅が使用されており、もともと熱伝導率が高い。さらに、前述のとおり、負極活物質層714は炭素を材料とした固体電解質である。炭素は熱伝導率が高い。そのため、発熱する電子部品611と同一基板上に全固体電池740を実装した場合は、上述のような構成とすることで、電子部品611から発せられた熱を、メイン基板602を介して、全固体電池740に効率よく移動させることができる。つまり、実施例1と同様に、全固体電池740を熱容量の多い部品のように扱うことで、別の熱対策部品を追加することなく、電子機器全体の高温化を抑制することが可能となる。
【実施例3】
【0018】
次に、本発明の実施例3について説明する。
図7(a)は、電子機器100の別の構成のメイン基板603を示している。実施例3では、メイン基板603が、実施例2と同様、実施例1における熱伝導部材721の役割を兼ねることとなる。
図7(a)のC-C断面図が
図7(b)である。
図7(b)において、メイン基板603の一方の面に発熱する電子部品611が実装され、他方の面の同一位置で互いに対向するように、全固体電池750が実装されている。この場合も前述と同じように、メイン基板603の側に全固体電池750の負極集電体層716、負極活物質層714を配置することで、より全固体電池750に熱を効率よく移動させることができる。つまり、前述と同じように、全固体電池750を熱容量が大きい部品のように扱うことで、別の熱対策部品を追加することなく、電子機器全体の高温化を抑制することが可能となる。ここで、全固体電池750と電子部品611は、同一位置で互いに対向するように実装されていると述べたが、全固体電池750は、全固体電池750に熱が効率的に移動できる程度に電子部品611に対して対向して配置されていればよい。
【0019】
以上のような構成によれば、発熱する電子部品から効率よく熱を移動させることが可能となり、さらに電子機器全体の高温化を防ぐことができる。
【0020】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0021】
100 電子機器
601 実施例1のメイン基板(第1の基板)
611 電子部品
710 全固体電池