(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】記録装置、記録装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20240708BHJP
B65H 3/52 20060101ALI20240708BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20240708BHJP
B41J 11/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B65H3/06 350A
B65H3/52 330B
B65H5/00 B
B41J11/00 A
(21)【出願番号】P 2020026170
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 範之
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-010266(JP,A)
【文献】特開2017-214182(JP,A)
【文献】特開2009-040574(JP,A)
【文献】特開2007-276966(JP,A)
【文献】特開2007-331889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0041331(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1488562(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/06
B65H 3/52
B65H 5/00
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラに圧接する位置で、前記給送ローラによって搬送された複数の記録媒体を1枚ずつ分離する分離力が発生した状態と、該分離力が発生しない状態とを選択的に取ることが可能な分離ローラと、
前記分離力が発生せず、かつ、前記給送ローラと前記分離ローラが当接した状態で、前記給送ローラの駆動源と前記給送ローラとの駆動力の伝達が遮断されている待機状態にする制御を行う制御手段と、
を有
し、
前記制御手段は、前記待機状態とは異なる別の待機状態として、前記給送ローラと前記分離ローラとが当接した状態であって、前記分離力が発生し、かつ、前記駆動源と前記給送ローラとの駆動力の伝達が遮断されている状態にする制御を行う、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
水拭きなしの自動クリーニングと、水拭きありの手動クリーニングとの何れを実施するかをユーザに選択させるためのGUIを操作パネルに表示させる表示制御手段を更に有することを特徴とする
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記別の待機状態を前記待機状態に切り替える処理が行われたか否かを示すフラグ値を記憶する記憶手段を更に有し、
ユーザによって前記手動クリーニングが選択された場合に、該手動クリーニングの前処理として、前記制御手段による前記待機状態にする制御と、前記フラグ値の更新とが行われることを特徴とする
請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記制御手段による前記待機状態にする制御が行われた後、電源OFF処理を行い、
前記電源OFF処理を行った後、ユーザが手動で該給送ローラの回転軸を回転させた場合、前記給送ローラと共に前記分離ローラも回転することを特徴とする
請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
電源ON時に前記フラグ値がONか判定する判定手段を更に有し、
前記判定手段の判定結果が真の場合、該判定結果が偽の場合には実施される処理の一部が省略される
ことを特徴とする
請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記判定手段の判定結果が真のとき前記手動クリーニングの後に実施されるクリーニング処理において前記給送ローラを回転する回転数は、該判定結果が偽のときに実施されるクリーニング処理において前記給送ローラを回転する回転数より少ない
ことを特徴とする
請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記駆動源から該給送ローラへの駆動力の伝達を遮断する遮断構成を更に有することを特徴とする
請求項1乃至6の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記遮断構成は、逆転遊星ギアと、給送ローラギアとを含み、
前記逆転遊星ギアが前記給送ローラギアから離間することで、前記駆動源から前記給送ローラへの駆動力の伝達を遮断する
ことを特徴とする
請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記遮断構成は、第1傾斜面を有する給送ローラ軸と、第2傾斜面を有するセレートとを含み、
記録媒体が搬送方向に進む向きに前記給送ローラ軸を回転させたときに、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との係合が外れることで、前記駆動源から前記給送ローラへの駆動力の伝達を遮断する
ことを特徴とする
請求項7に記載の記録装置。
【請求項10】
1または複数の記録媒体を積載する積載部と、
記録媒体の搬送方向において前記分離ローラの下流側に設けられる、記録媒体に対して記録を行う記録ヘッドと、
を更に有することを特徴とする
請求項1乃至9の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
記録媒体を給送する給送ローラと、
前記給送ローラに圧接する位置で、前記給送ローラによって搬送された複数の記録媒体を1枚ずつ分離する分離力が発生した状態と、該分離力が発生しない状態とを選択的に取ることが可能な分離ローラと、
を有する記録装置の制御方法であって、
前記分離力が発生せず、かつ、前記給送ローラと前記分離ローラが当接した状態で、前記給送ローラの駆動源と前記給送ローラとの駆動力の伝達が遮断されている待機状態にする
制御を行う制御ステップ
を有
し、
前記制御ステップにおいて、前記待機状態とは異なる別の待機状態として、前記給送ローラと前記分離ローラとが当接した状態であって、前記分離力が発生し、かつ、前記駆動源と前記給送ローラとの駆動力の伝達が遮断されている状態にする制御を行う、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータに
請求項11に記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドによって記録媒体に記録を行う記録装置に関し、詳細には、複数枚積載されたシートから1枚ずつシート状の記録媒体を分離して給送する給送装置を有する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、シート積載部に複数のシート材を積載可能な分離給紙機構の待機状態において、給送ローラに分離力が発生可能な状態の分離ローラが圧接された状態で停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、分離給紙機構の待機状態において、給送ローラを手動で回転させることができず、水分を含んだ布等を用いて給送ローラおよび分離ローラの表面を清掃することが困難であった。
【0005】
そこで本発明の一実施形態は、上記の課題に鑑み、水分を含んだ布等を用いて給送ローラおよび分離ローラの表面を容易に清掃可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、記録媒体を給送する給送ローラと、前記給送ローラに圧接する位置で、前記給送ローラによって搬送された複数の記録媒体を1枚ずつ分離する分離力が発生した状態と、該分離力が発生しない状態とを選択的に取ることが可能な分離ローラと、前記分離力が発生せず、かつ、前記給送ローラと前記分離ローラが当接した状態で、前記給送ローラの駆動源と前記給送ローラとの駆動力の伝達が遮断されている待機状態にする制御を行う制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記待機状態とは異なる別の待機状態として、前記給送ローラと前記分離ローラとが当接した状態であって、前記分離力が発生し、かつ、前記駆動源と前記給送ローラとの駆動力の伝達が遮断されている状態にする制御を行う、
ことを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、水分を含んだ布等を用いて給送ローラおよび分離ローラの表面を容易に清掃可能な記録装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態の記録装置における分離ローラの構造を示す分解斜視図。
【
図3】第1の実施形態の記録装置における分離ローラの構造を示す正面図および断面図。
【
図4】第1の実施形態の記録装置における給送部の動作を説明するタイミングチャート。
【
図5】第1の実施形態の記録装置における給送部の動作を説明する図。
【
図6】第1の実施形態の記録装置における駆動機構を示す斜視図。
【
図7】第1の実施形態の記録装置における駆動機構を示す平面図。
【
図8】第1の実施形態の記録装置における駆動機構を示す側面図。
【
図9】
図4中の状態P1における駆動機構の動作状態を説明する断面図。
【
図10】
図4中の状態P2における駆動機構の動作状態を説明する断面図。
【
図11】第1の実施形態の記録装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【
図12】第1の実施形態におけるローラクリーニング処理のフローチャート。
【
図13】第1の実施形態における第2の待機状態にするための処理(前処理)のフローチャート。
【
図14】第1の実施形態におけるローラクリーニング後に実施される処理(後処理)のフローチャート。
【
図15】第1の実施形態におけるGUIの変化を示す図。
【
図16】第3の実施形態における給送ローラ部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1に示すように、記録装置1は、記録部3と、搬送部5と、シート積載部6と、給送部4とを有する。記録部3は、シート状の記録媒体(シート材2とする、
図5参照)に文字や画像等を記録するための部材である。搬送部5は、記録部3にシート材2を搬送するための部材である。シート積載部6には、1または複数枚のシート材2が積載される。給送部4は、シート積載部6からシート材2を搬送部5に給送するための部材である。
【0011】
給送部4は、給送ローラ11、分離ローラ12(
図2、
図5参照)等により構成される。給送ローラ11は、シート積載部6に積載された最上位のシート材2に当接してこのシート材2をピックアップするためのローラである。給送ローラ11は、搬送モータ61の駆動により回転する。分離ローラ12は、給送ローラ11とシート材2を挟持し、シート材2を1枚ずつに分離するためのローラであり、給送ローラ11とシート材2が最初に接する点より搬送方向下流側に配置される。分離されたシート材2は、分離ローラ12の搬送方向下流側に配置された搬送部5に給送される。
【0012】
記録部3は、記録ヘッド81、プラテン14、キャリッジ82等により構成される。記録ヘッド81は、シート材2に対して記録を行う。尚、本実施形態では、記録ヘッド81が、インクを吐出してシート材2に記録を行うインクジェット記録ヘッドであるとして説明する。プラテン14は、記録ヘッド81と対向する位置でシート材2の裏面を支持する。キャリッジ82には記録ヘッド81が搭載され、キャリッジ82は、シート材2の搬送方向と交差する方向(図中X方向)ヘキャリッジモータ60の駆動により移動する。
【0013】
搬送部5は、搬送ローラ30、従動ローラ29等により構成される。搬送ローラ30は、搬送モータ61の駆動により回転する。従動ローラ29は、搬送ローラ30の従動ローラである。従動ローラ29は搬送ローラ30に付勢され、搬送ローラ30とシート材2を挟持して、シート材2を記録ヘッド81と対向する位置へ搬送する。
【0014】
排出ローラ31は、搬送モータ61の駆動により回転する。拍車32は排出ローラ31に付勢され、記録ヘッド81によって記録が行われたシート材2の記録面と接触して回転し、排出ローラ31とシート材2を挟持して、該シート材2を記録装置1の外部に排出する。
【0015】
【0016】
図5に示すように、分離給送機構7は、給送ローラ11、分離ローラ12、戻しレバー13、前段規制部22a等で構成される。給送ローラ11が回転することで、シート材積載部6に積載されたシート材2は送り出される。分離ローラ12は、給送ローラ11により送り出されたシート材2に当接してシート材2を1枚ずつ分離するためのローラである。戻しレバー13は、シート材2をシート材積載部6に押し戻すためのレバーである。前段規制部22aは、分離部へのシート材2の到達枚数を規制するための部材である。
【0017】
給送ローラ11は、圧板16によって付勢されたシート束に圧接されて回転駆動されることにより、シート束の最上位シート材2を摩擦力によって給送する。
【0018】
給送ローラ11が取り付けられた給送軸10は、軸受27(
図1参照)に回動自在に軸支されて、一端に給送ローラギア19が設けられており、搬送モータ61から駆動力が伝達される。また、
図6に示すように、給送ローラギア19には、後述する制御ギア24が噛み合わされている。制御ギア24と同軸上に制御カム34が設けられており、制御カム34は、制御ギア24と同位相で回転する。
【0019】
また、分離ローラ12は、
図2に示すように、クラッチ筒12aに固定して取り付けられており、クラッチ筒12a内にクラッチ軸12bが回転可能に収納されている。また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、クラッチ軸12bには、クラッチばね12cが巻きつけられており、クラッチばね12cの巻端の一方がクラッチ筒12aに係合されている。クラッチばね12cは、金属製のコイルばねによって形成されている。また、クラッチ軸12bは、モールド部品で構成されており、クラッチ軸12bの一端にギア部12dが一体的に形成されている。
【0020】
分離ローラ12は、クラッチ筒12aおよびクラッチ軸12bを介して、分離手段保持部材である分離ローラホルダ21(
図5参照)に回転可能に支持されており、分離ローラばね26で給送ローラ11に対して押圧されている。分離ローラホルダ21には、分離ローラ12およびロックレバー23が取り付けられており、回転中心21aを中心として回動するようベース15に取り付けられている。
【0021】
上述した構成で、クラッチ軸12bを固定して分離ローラ12およびクラッチ筒12aを
図3(a)中の矢印方向に回転させた場合、クラッチ軸12bに巻き付けられたクラッチばね12cは、クラッチ軸12bから解かれる。分離ローラ12およびクラッチ筒12aが所定の角度だけ回転した場合に、クラッチ軸12bおよびクラッチばね12cが相対的に滑ることによって、所定のトルクを維持するように構成されている。また、本実施形態では、クラッチ軸12bの固定およびその固定を解除することにより、トルクリミッタのオンオフ制御を可能としている。さらに、分離ローラ12の分離力が発生している状態と、分離ローラ12の分離力が発生していない解除状態とを切り替えるための状態切り替え手段として、リリースカム28およびロックレバー23を備えている。
【0022】
図5に示すように、リリースカム28は、前段規制ホルダ作用部28aと、分離ローラホルダ作用部28bと、ロックレバー作用部28cとを有し、それぞれの作用部で、前段規制ホルダ22、分離ローラホルダ21、およびロックレバー23を回動させる。また、リリースカム28は、制御カム作用部28dを有し、制御カム34の回動により、制御カム34の後述するカム面に従って回動する(
図9(b)、
図10(b)参照)。
【0023】
このように構成された分離給送機構7によれば、
図5(a)に示すように、給送ローラ11と分離ローラ12の間にシート材2が進入していない場合は、給送ローラ11の回転に伴って分離ローラ12が従動的に回転する。
【0024】
図5(b)に示すように、給送ローラ11と分離ローラ12の間に1枚のシート材2が進入した場合は、給送ローラ11とシート材2との間の摩擦力の方が、所定トルクで従動する分離ローラ12とシート材2との間の摩擦力よりも大きい。このため、分離ローラ12が従動されながら、シート材2が搬送される。
【0025】
しかし、2枚のシート材2が給送ローラ11と分離ローラ12との間に進入した場合は、給送ローラ11と給送ローラ11側に隣接するシート材2との間の摩擦力が、シート材2 間の摩擦力に比べて大きくなる。また、トルクリミッタ側に隣接するシート材2と分離ローラ12との間の摩擦力が、シート材2間の摩擦力に比べて大きくなるため、シート材2間で滑りが生じる。その結果、
図5(c)および
図5(d)に示すように、給送ローラ11側に位置するシート材2のみが搬送され、分離ローラ12側に位置するシート材2は、分離ローラ12の回転停止に伴ってその位置に停止して搬送されない。
【0026】
このため、分離給送機構7には、分離ローラ12に加えて、シート材2の重送を防止するための戻しレバー13が設けられている。即ち、2枚程度のシート材2が、給送ローラ11と分離ローラ12のニップ部内に進入した場合であれば、分離ローラ12によって分離することが可能である。しかし、2枚を超える枚数のシート材2が進入した場合、または、2枚のシート材2が進入して給送ローラ11側のシート材2のみが搬送された後にニップ部付近にシート材2を残したまま連続して次のシート材2を給送しようとした場合に問題が生じる虞がある。具体的には、これらの場合には、複数枚のシート材2が同時に給送される、いわゆる重送が発生する可能性がある。この重送を防止するために、戻しレバー13が設けられている。
【0027】
本実施形態における記録装置1では、シート材2のセット時または記録待機時には、シート材2の搬送経路内に、戻しレバー13を進入させることにより、搬送経路の奥までシート材2の前端が不用意に入り込んでしまうことが防止されている。戻しレバー13は、給送動作の開始後に開放されて回動されることによって、シート材2の搬送経路から退避するように構成されているため、シート材2の給送中に戻しレバー13がシート材2の進行を妨げることはない。
【0028】
分離動作が終了した場合、戻しレバー13は、ニップ部内に位置する次位以降のシート材2を押し戻す戻し動作に移行する。そして、戻し動作が終了した後、戻しレバー13は、シート材2の搬送経路から一旦退避する位置まで回動される。その後、給送したシート材2の後端が記録装置1から排出されたことが確認された場合に、再び、戻しレバー13は給送部4の第1の待機状態の位置に復帰するように構成されている。尚、給送部4の第1の待機状態について、詳細は後述する(
図9参照)。
【0029】
図5(b)に示すように、前段規制部22aは、分離部の上流側において給送ローラ11との間に隙間を形成し、分離部内に入り込むシート材2の枚数を数枚程度に規制するための部材である。前段規制部22aは、前段規制ホルダ22に設けられている。前段規制ホルダ22は、ベース15に分離ローラホルダ21と同じ回転中心21aを中心として回動可能に取り付けられている。前段規制ホルダ22は、前段規制ホルダばね33によって付勢され、一部がベース15に突き当てられて位置決めされている。
【0030】
以上のように構成された給送部4の状態変化について、
図9、
図10を参照して説明する。
図9、
図10中の各図は、
図7における各部位の断面図を示しており、各図中(a)がA-A断面を、(b)がB-B断面を、(c)がC-C断面を、(d)、(d-1)、(d-2)がD-D断面を、(e)がE-E断面をそれぞれ示している。また、
図9、
図10は、制御カム34の回転角度に応じた
図4中の状態P1、状態P2にそれぞれ対応している。
【0031】
図9(a)~(d)に、
図4における状態P1に対応する、給送部4の第1の待機状態を示す。
【0032】
図9(a)に示すように、制御カム34の第1のカム面34aには第1の凹部53aが設けられており、第1の待機状態で、圧板ボス16aが第1の凹部53aに係合されている。つまり、圧板16は、制御カム34の第1のカム面34aによって第1の待機状態に保持されていると同時に、圧板バネ17の弾性力によって制御カム34側に付勢されている。このため、制御カム34の第1の凹部53aに係合された圧板ボス16aによって保持力が働き、制御カム34の回転が拘束される。
【0033】
図9(b)に、制御カム34の第2のカム面34b及び第3のカム面34cを示す。
図9(b)に示すように、リリースカム28の制御カム作用部28dは、制御カム34の第2のカム面34bに含まれる制御カム面54aの一端に係合されている。また、戻しレバー13の突起部13aは、第3のカム面34cに含まれる制御カム面55aに係合されている。
【0034】
図9(c)に、状態P1時の分離給送機構7の状態を示す。
図9(c)に示すように、圧板16は、断面形状が円形に形成された給送ローラ11から離間された位置に保持されており、給送ローラ11と圧板16との間に、複数のシート材2を積載するための十分な空間が確保されている。また、戻しレバー13は、シート材2の搬送経路に進入しており、圧板16上に積載されたシート材2の前端が分離ローラ12側に落ち込むことを防止している。
【0035】
また、
図9(d)に示すように、制御ギア24の第1のギア部24aには、第1の欠歯部51が設けられており、第1の待機状態でこの第1の欠歯部51が正転遊星ギア35 に対向する位置で、かつ、制御ギア24から離間した状態で停止している。また、逆転遊星ギア36も、給送ローラギア19から離間した状態で停止している。この時、ストッパ41に振り子39の突起部39eが当接しているため、太陽ギア37が
図9(d)中の矢印J2方向に回転しても、振り子39は
図9(d)中の矢印M2方向には回動しない。従って、第1の待機状態では、搬送モータ61からの駆動連結は、制御ギア24との間で切断された状態になっている。
【0036】
この時、リリースカム28の前段規制ホルダ作用部28aは、分離ローラホルダ21から離間した位置にあるため、分離ローラ12は、給送ローラ11に圧接された状態にある。また、ロックレバー23の突起部23aが、クラッチ軸12b端部のギア部12dに係合されていることから、分離ローラ12のトルクが発生可能な状態になっている。また、シート材積載部6に積載されたシート材2は、前端がシート材前端基準部15aに支持され、裏面が圧板16に支持された状態になる。
【0037】
また、分離給送機構7は、後述する駆動機構8の駆動により、第1の待機状態から、給送ローラ11を1回転させることで、
図4に示す状態変化を行い、再度、第1の待機状態に戻る。
【0038】
図10(a)~(e)に、
図4における状態P2に対応する、給送部4の状態を示す。
【0039】
図10(a)に示すように、制御カム34の第1のカム面34aには第2の凹部53fが設けられており、圧板ボス16aが第2の凹部53fに係合されている。つまり、圧板16は、
図4に示す状態P2で停止する場合には、制御カム34の第1のカム面34aによって
図10(a)の状態に保持されている。また、それと同時に、圧板16は、圧板バネ17の弾性力によって制御カム34側に付勢されている。このため、制御カム34の第2の凹部53fに係合された圧板ボス16aによって保持力が働き、制御カム34の回転が拘束される。
【0040】
図10(b)に、制御カム34の第2のカム面34b及び第3のカム面34cを示す。
図10(b)に示すように、リリースカム28の制御カム作用部28dは、制御カム34の第2のカム面34bに含まれる制御カム面54aより径の大きい制御カム面54bに係合されている。このため、
図9(b)の状態から、
図9(b)中の矢印M2方向にリリースカム28が回動し、リリースカム28のロックレバー作用部28cがロックレバー23のカム面23bを
図9(c)中の矢印M2方向に押し上げ、
図10(c)に示す状態になる。
【0041】
また、戻しレバー13の突起部13aは、第3のカム面34cに含まれる制御力ム面55aより径の大きい制御カム面55bに係合されている。このため、戻しレバー13が、
図9(c)の状態から
図9(c)中の矢印L1方向に回動し、
図10(c)の状態になる。
【0042】
図10(c)に、状態P2時の分離給紙機構7の状態を示す。
図10(c)が示すように、圧板16は、断面形状が円形に形成された給送ローラ11から離間された位置に保持されており、給送ローラ11と圧板16との間に、複数のシート材2を積載するための十分な空間が確保されている。但し、
図9(c)と異なり、戻しレバー13が回動され、戻しレバー13の給送ローラ11面側に、シート材2の搬送経路が若干形成されている。
【0043】
図10(e)に、給送ローラギア19と制御ギア24の状態を示す。
図10(e)に示すように、給送ローラギア19の対向部には、制御ギア24の第3の欠歯部52bが位置している状態になっているため、給送ローラギア19が制御ギア24に噛み合わず、制御ギア24は回転されない状態になっている。
【0044】
この状態においても、リリースカム28の前段規制ホルダ作用部28aは、分離ローラホルダ21から離間した位置にあるため、分離ローラ12は、給送ローラ11に圧接された状態にある。また、ロックレバー23の突起部23aがクラッチ軸12のギア部12dから外れて、クラッチ軸12bがフリーとなるため、分離ローラ12のトルクが発生しない状態になっている。つまり、分離ローラ12は、給送ローラ11のいわゆる従動ローラになっている。また、制御ギア24は、第3の欠歯ギア部52bによって、給送ローラギア19による駆動力の伝達が遮断されているため、給送ローラギア19が回転しても、制御ギア24および制御カム34がこの状態で保持される。そして、シート材積載部6に積載されたシート材2は、前端がシート材前端基準部15aに支持され、裏面が圧板16に支持された状態になる。
【0045】
この時、第2の待機状態として給送ローラ11の駆動を停止させる場合には、
図10(d-1)に示した状態から、搬送モータ61を駆動して太陽ギア37を
図10(d-1)中の矢印J2方向に回転し、振り子39を
図10(d-1)中の矢印M2方向に回動する。そして、ストッパ41に振り子39の突起部39eが当接した状態で搬送モータ61の駆動を停止する。これにより、正転遊星ギア35は制御ギア24から、逆転遊星ギア36は給送ローラギア19から共に離間した状態、即ち、搬送モータ61からの駆動連結が、制御ギア24および給送ローラギア19との間で切断された状態になる。
【0046】
次に、給送部4を駆動するための駆動機構8について、
図6~8を用いて説明する。
図6は駆動機構8の斜視図であり、
図7は駆動機構8の平面図であり、
図8は駆動機構8の側面図である。
【0047】
給送部4が有する駆動機構8は、支持ベースに各部品が取り付けられ構成されており、
図6~
図8に示すように、駆動機構8は、給送ローラ11を回転駆動するための給送ローラギア19、ならびに、一体的に回転駆動する制御ギア24および制御カム34を有する。また、駆動機構8は、正転遊星ギア35および逆転遊星ギア36と、給送ローラギア19と制御ギア24とに駆動力を振り分けるための太陽ギア37と、正転遊星ギア35および逆転遊星ギア36を揺動させる振り子39とを有する。更に、駆動機構8は、搬送部5に駆動力を伝達するためのアイドラギア40と、振り子39の揺動を規制するためのストッパ41とを有する。
【0048】
給送ローラギア19は、前述したように給送軸10の一端に設けられており、給送ローラギア19が回転することによって給送軸10および給送ローラ11を回転させる。
【0049】
制御ギア24は、正転遊星ギア35に噛み合わされる第1のギア部24aと、給送ローラギア19に噛み合わされる第2のギア部24bとを有する。
【0050】
制御カム34は、制御ギア24と同軸上に設けられており、制御ギア24と同位相で回転する。前述したように、制御カム34は、圧板16の圧板ボス16aに係合される第1のカム面34aと、リリースカム28のボス28dに係合される第2のカム面34bと、戻しレバー13の突起部13aに係合される第3のカム面34cとを有する。
【0051】
太陽ギア37は、正転遊星ギア35に噛み合わされる第1のギア部37aと、逆転遊星ギア36に噛み合わされる第2のギア部37bとを有する。
【0052】
振り子39には、太陽ギア37を、回転軸を介して支持する軸受け部39aと、正転遊星ギア35の回転軸を介して支持する軸受け部39bと、逆転遊星ギア36の回転軸を介して支持する軸受け部39cとがそれぞれ一体に形成されている。
【0053】
太陽ギア37と振り子39との間には、摩擦バネ(不図示)が設けられており、この摩擦バネの摩擦によって太陽ギア37の回転と共に振り子39も同一方向に揺動される。即ち、太陽ギア37が
図8中の矢印J1方向に回転した時は、振り子39も同様にM1方向に揺動され、逆転遊星ギア36が給送ローラギア19に噛み合わされる。逆に、太陽ギア37が
図8中の矢印J2方向に回転した時は、振り子39も同様にM2方向に揺動され、正転遊星ギア35が制御ギア24の第1のギア部24aに噛み合わされる。
【0054】
アイドラギア40は、出力ギア18に噛合される第1のギア部40aと、太陽ギア37 の第2のギア部37bに噛合される第2のギア部40bとを有し、出力ギア18 の駆動力を太陽ギア37に伝達する。ストッパ41は、振り子39に隣接する位置に、回動可能に設けられている。
【0055】
図11は、本実施形態における記録装置のハードウェア構成を示すブロック図である。MPU201は、各部動作やデータの処理などを制御する。尚、MPU201は、後述するように、分離給送機構7の待機状態を切り替える、切り替え制御手段としても機能する。ROM202には、MPU201によって実行されるプログラムやデータ等が記憶される。RAM203には、MPU201によって実行される処理用のデータ、ホストコンピュータ214から受信したデータ等が一時的に記憶される。操作パネル215は、ユーザがそれを介して記録装置に動作内容を指示するための、または、それを介して記録装置の状況等の情報を表示しユーザに提示するためのユニットである。
【0056】
図12は、本実施形態における給送ローラ11のクリーニング処理、具体的には、水拭きでないクリーニング処理のフローチャートである。
図13は、本実施形態における給送ローラ11の水拭きクリーニング処理前に実施される処理(水拭きクリーニングの前処理、前処理、等と呼ぶ)のフローチャートである。
図14は、本実施形態における、水拭きクリーニングを含む給送ローラ11のクリーニング処理の後に実施される処理(本明細書では、単純に後処理等と呼ぶ)のフローチャートである。
図15は、ユーザが操作パネル215を介して水拭きクリーニング処理等を指示する際に操作パネル215に表示されるGUI画面の変化を示す図である。操作パネル215を介して選択的に指示された内容に基づいて、MPU201が分離給送機構7の駆動処理を実施する。
【0057】
図4および
図9(a)~(d)に示した、分離給送機構7の第1の待機状態に給送部4がある場合に、操作パネル215に表示されるGUI画面OP1で「メンテナンス」ボタンを押下すると、GUI画面OP1に替えてGUI画面OP2が表示される。GUI画面OP2は、各種メンテナンス項目を選択するための画面である。尚、以下では、指示アイテムとしてボタンを採用したケースを説明するが、ボタン以外の任意の指示アイテムを採用してよい。
【0058】
ユーザがGUI画面OP2上で「給送ローラクリーニング」を選択すると、GUI画面OP2に替えてGUI画面OP3が表示される。GUI画面OP3は、給送ローラクリーニングを実施するか否かをユーザに確認させ、マニュアルを参照するように誘導するための画面である。ユーザがGUI画面OP3上で「はい」を選択すると、GUI画面OP3に替えてGUI画面OP4が表示される。一方、ユーザがGUI画面OP3上で「いいえ」を選択すると、GUI画面OP3に替えてGUI画面OP1が再び表示され、初期状態に戻る。
【0059】
GUI画面OP4は、給送ローラ11のクリーニングを水拭きなしで実施するか、水拭きありで実施するかをユーザに選択させるための画面である。ユーザは、水拭きなしの自動クリーニングを実施したい場合、GUI画面OP4上で「水拭きなし」の指示アイテムを選択する一方、水拭きありの手動クリーニングを実施したい場合、GUI画面OP4上で「水拭きあり」の指示アイテムを選択する。
【0060】
まず、GUI画面OP4上で「水拭きなし」の指示アイテムを選択した場合について、
図12、
図14、
図15を用いて説明する。
【0061】
ユーザによりGUI画面OP4上の「水拭きなし」の指示アイテムが選択された場合、GUI画面OP4に替えてGUI画面OP5が表示される。GUI画面OP5は、シート材積載部6に積載してあるシート材2をすべて取り除いてOKボタンを押下するよう誘導するメッセージと、OKボタンとを有する。ユーザによりGUI画面OP5上のOKボタンが押下された場合、GUI画面OP5に替えてGUI画面OP6が表示され、
図12に示す、水拭きなしの給送ローラ11のクリーニング処理(水拭きなしローラクリーニング処理等と呼ぶ)が開始される。
【0062】
GUI画面OP6は、給送ローラ11をクリーニング中である旨のメッセージを有し、GUI画面OP6の表示は、
図12に示す一連の処理が終了するまで継続される。
図12のステップS1において、MPU201は、給送ローラ11を水拭きクリーニングするための
図13に示す処理が前もって実施されたか否かを判定する。具体的には、MPU201は、
図13に示す処理が実施されたか否かを示すSNCLEANフラグの値がON(実施を示す)か判定する。本ステップの判定結果が真(つまり、SNCLEANフラグ値がON)の場合、S7に進む。一方、本ステップの判定結果が偽(つまり、SNCLEANフラグ値がOFF)の場合、S2に進む。尚、以降では「ステップS~」を「S~」と略記する。
【0063】
S2において、MPU201は、給送ローラ11を10回転駆動した回数を記憶するCountUPカウンターの値を0にセットする。また、次のS3において、MPU201は、給送ローラ11を1回転駆動した回数を記憶するiカウンターの値も0にセットする。
【0064】
S4において、MPU201は、給送ローラ11の1回転駆動を行う。具体的には、MPU201はまず、搬送モータ61を駆動する。搬送モータ61の駆動力は、搬送モータ61に固定した搬送モータギア63から搬送ローラ30の一端に固定した搬送ローラギア62に駆動を伝達され、搬送ローラ30の他端に固定した出力ギア18を
図9(c)中の矢印J1方向に回転させる。これにより、出力ギア18からアイドラギア40、太陽ギア37に駆動力が伝達され、太陽ギア37が
図9(d)中の矢印J1方向に回転するため、振り子39が矢印M1方向に回転する。そして、矢印J2方向に回転している逆転遊星ギア36が給送ローラギア19と噛み合い、給送ローラギア19は矢印J1方向に回転し、制御ギア24はJ2方向に回転する。この時、給送ローラ11は、給送ローラギア19と同一のJ1方向に回転する。また、
図4に示したように、給送ローラ11は、分離ローラ12および圧板16への当接、解除を行いながら回転するため、給送ローラ11の表画がクリーニングされる。そして、S4における給送ローラ11の1回転駆動が終了すると、S5に進む。
【0065】
S5において、MPU201は、iカウンターの値に1を加算し、加算後の値が10未満か(つまり、給送ローラ11の駆動が10回転に達していないか)判定する。本ステップの判定結果が偽の場合、給送ローラ11の駆動が10回転に達したとみなし、S6に進む。一方、本ステップの判定結果が真の場合、給送ローラ11の駆動が10回転に達していないとみなしてS4に戻り、給送ローラ11の回転が10回転に達するまで、S4~S5の処理を繰り返し行う。
【0066】
S6において、MPU201は、CountUPカウンターの値に1を加算し、加算後の値が3未満か(つまり、給送ローラ11の駆動が30回転に達していないか)判定する。本ステップの判定結果が偽の場合、給送ローラ11の駆動が30回転に達したとみなし、S9に進む。一方、本ステップの判定結果が真の場合、給送ローラ11の駆動が30回転に達していないとみなしてS3に戻り、給送ローラ11の回転が30回転に達するまで、S3~S6の処理を繰り返し行う。
【0067】
S6でCountUPカウンターの値が3未満でないと判定された場合(S6でNo、つまり給送ローラ11の駆動が30回転に達した場合)、S9において、MPU201は、SNCLEANフラグの値をOFFにセットする。本ステップの処理は、後述する
図13に示す処理が実施された結果、SNCLEANフラグの値がONにセットされている状態を考慮して実施している。
【0068】
S10において、MPU201は、給送部4への駆動力の伝達を切断する。また、MPU201は、駆動機構8を第1の待機状態にするために、搬送モータ61を駆動して、搬送モータ61に固定した搬送モータギア63から搬送ローラ30の一端に固定した搬送ローラギア62に駆動力を伝達する。そして、MPU201は、搬送ローラ30の他端に固定した出力ギア18を、
図9(c)中矢印J2方向に回転させる。この時、
図10(d-1)に示すように、逆転遊星ギア36と給送ローラギア19とは噛み合った状態にある。この状態から、前述した出力ギア18が矢印J2方向に回転することにより、出力ギア18からアイドラギア40、太陽ギア37に駆動力が伝達され、太陽ギア37が
図10(d-1)中の矢印J2方向に回転する。このため、振り子39が矢印M2方向に回転し、逆転遊星ギア36が給送ローラギア19と噛み合った状態から解除される。そして、ストッパ41に振り子39の突起部39eが当接した状態で搬送モータ61を停止させ、
図9(d)に示す第1の待機状態にする。この際、
図9(d)に示すように、逆転遊星ギア36は給送ローラギア19から離間した状態で、正転遊星ギア35は制御ギア24から離間した状態で停止する。つまり、搬送モータ61からの駆動連結が、給送ローラギア19および制御ギア24との間で切断された状態(第1の待機状態)になる。
【0069】
図12に示す一連の処理が終了した後、記録装置1は、給送ローラクリーニング後に実施すべき後処理の開始指示を待つ待機状態になり、この待機状態では、GUI画面OP7が操作パネル215に表示されている。
【0070】
GUI画面OP7は、シート材2を3枚以上シート積載部6に積載した上でOKボタンを押下するよう誘導するメッセージと、OKボタンとを有する。ユーザによりGUI画面OP7上のOKボタンが押下された場合、GUI画面OP7に替えて、後処理中である旨のメッセージを含むGUI画面OP8が表示される。GUI画面OP8の表示は、
図14に示す一連の処理が終了するまで継続される。
【0071】
図14に示す後処理が開始されると、S14において、MPU201は、給送ローラ11の1回転駆動を行う。具体的にはまず、MPU201は、搬送モータ61を駆動する。搬送モータ61の駆動力は、搬送モータ61に固定した搬送モータギア63から搬送ローラ30の一端に固定した搬送ローラギア62に駆動を伝達され、搬送ローラ30の他端に固定した出力ギア18を
図9(c)中の矢印J1方向に回転させる。これにより、出力ギア18からアイドラギア40、太陽ギア37に駆動力が伝達され、太陽ギア37が
図9(d)中の矢印J1方向に回転するため、振り子39が矢印M1方向に回転する。そして、矢印J2方向に回転している逆転遊星ギア36が給送ローラギア19と噛み合い、給送ローラギア19は矢印J1方向に回転し、制御ギア24はJ2方向に回転する。この時、給送ローラ11は給送ローラギア19と同一の矢印J1方向に回転する。
【0072】
そして、給送ローラ11によるシート材2の搬送量制御を、シート材2の先端位置を検知する不図示のPEセンサー信号を用いて行い、シート材2の先端が搬送ローラ30に当接後、更に3mm搬送されるまで駆動を行う。この時、搬送ローラ30は、出力ギア18と共に
図9(c)中の矢印J1方向に回転している為、シート材2は搬送ローラ30と従動ローラ29とのニップ部を通過することなく、シート材2は該ニップ部に押し込まれた状態になる。このため、シート材2の先端が、搬送ローラ30に達した状態になり、シート材2のいわゆるレジ取りが実施される。この状態は、
図4に示すP2近傍の状態である。
【0073】
この状態から、搬送モータ61の駆動をこれまでとは逆方向に行い、搬送ローラ30を
図10(c)中の矢印J2方向に回転させると共に、不図示の移動手段によって、ストッパ41を移動させて振り子39の回動規制を解除する。これにより、
図10(d-1)の状態からストッパ41が退避する。また、太陽ギア37が
図10(d-1)中の矢印J2方向に回転するため、振り子39が矢印M2方向に回転する。そして、
図10(d-2)中の矢印J1方向に回転している正転遊星ギア35が制御ギア24と噛み合い、制御ギア24はJ2方向に回転を始める。また、給送ローラギア19は、
図10(d-2)中の矢印J1方向の回転を行い、これにより、給送ローラ11もJ1方向の回転を行う。
【0074】
この時、シート材2の先端が搬送ローラ30と従動ローラ29とのニップ部の位置まで到達しているため、搬送ローラ30の
図10(c)中の矢印J2方向の回転と共に、シート材2の搬送が実施される。この時、太陽ギア37は
図10(d-2)中の矢印J2方向に回転しているため、振り子39が矢印M2方向に回転する。そして、
図10(d-2)中の矢印J1方向に回転している正転遊星ギア35が制御ギア24と噛み合い、制御ギア24は制御カム34と共に、矢印J2方向に回転する。これにより、給送ローラギア19は、給送ローラ11と共に、矢印J1方向に回転する。この時、制御ギア24および制御カム34は、正転遊星ギア35が制御ギア24の第1の欠歯部51に達するまで駆動される。また、制御ギア24および制御カム34の駆動停止と共に、給送ローラギア19および給送ローラ11の駆動も停止し、給送部4の状態は、ストッパ41および振り子39を除いて、第1の待機状態と同様の状態になる。尚、この時、ストッパ41および振り子39を第1の待機状態と同様の状態にする駆動は、次のシート材2の給送指示をMPU201が認識している場合には実施しない。
【0075】
S14の後のS15において、MPU201は、搬送モータ61の駆動を更に継続し、
図9(c)中の矢印J2方向に搬送ローラ30を駆動する。これにより、排出ローラ31も同一方向の駆動を行うため、シート材2の搬送および排出が実施される。シート材2の排出に伴い、給送ローラ11および分離ローラ12の表面からシート材2に付着するようなゴミおよび汚れは、排出したシート材2と共に除去される。また、後述する水拭きによる給送ローラ11を実施した後は、給送ローラ11および分離ローラ12に付着した水分もシート材2と共に除去されることになる。
【0076】
S16において、MPU201は、シート積載部6からシート材2が給送されなくなったか判定する。尚、本実施形態では、前述したように、後処理用にシート積載部6にシート材2を3枚セットするので、本ステップでは、シート材2の給送から排出動作が3枚分実施されたかの判定を実施することになる。本ステップの判定結果が真の場合、後処理は終了する。一方、本ステップの判定結果が偽の場合、S14に戻り、シート積載部6からシート材2の給送がなくなるまで、S14~S16の処理を繰り返し行う。
【0077】
図14に示す後処理が終了した場合、GUI画面OP8に替えて、GUI画面OP9が表示される。GUI画面OP9は、後処理を含む給送ローラ11のクリーニング処理が全て終了したためOKボタンを押下するよう促す旨のメッセージと、OKボタンとを有する。ユーザがGUI画面OP9上でOKボタンを押下すると、GUI画面OP9に替えてGUI画面OP1が再び表示される。
【0078】
次に、GUI画面OP4上で「水拭きあり」の指示アイテムを選択した場合(つまり、水拭きクリーニングを実施する場合)について、
図13~
図15を用いて説明する。ユーザによりGUI画面OP4上の「水拭きあり」の指示アイテムが選択された場合、GUI画面OP4に替えてGUI画面OP5が表示される。GUI画面OP5は、シート材積載部6に積載してあるシート材2をすべて取り除いてOKボタンを押下するよう誘導するメッセージと、OKボタンとを有する。ユーザによりGUI画面OP5上のOKボタンが押下された場合、GUI画面OP5に替えてGUI画面OP10が表示される。ユーザによりGUI画面OP10上のOKボタンが押下された場合、
図13に示す、給送ローラ11の水拭きクリーニング前に実施する処理(本明細書では、単純に前処理等と呼ぶ)が開始される。
【0079】
GUI画面OP10は、記録装置1の電源を切った上で(記録装置1を電源OFF状態にした上で)、給送ローラ11の水拭きを行うよう誘導するメッセージと、OKボタンとを有する。ユーザによりGUI画面OP10上のOKボタンが押下された場合、GUI画面OP10に替えてGUI画面OP11が表示され、記録装置1は、電源OFF処理を待っている状態になり、
図13に示す前処理が開始される。この前処理は、分離給送機構7の待機状態を切り替えるための処理(本明細書では、待機状態切り替え換え処理、切り替え処理等と呼ぶ)である。
【0080】
S11において、MPU201は、搬送モータ61を駆動する。搬送モータ61の駆動力は、搬送モータ61に固定した搬送モータギア63から搬送ローラ30の一端に固定した搬送ローラギア62に駆動を伝達され、搬送ローラ30の他端に固定した出力ギア18を
図9(c)中矢印J1方向に回転させる。これにより、出力ギア18からアイドラギア40、太陽ギア37に駆動力が伝達され、太陽ギア37が
図9(d)中の矢印J1方向に回転するため、振り子39が矢印M1方向に回転する。そして、矢印J2方向に回転している逆転遊星ギア36が給送ローラギア19と噛み合い、給送ローラギア19は矢印J1方向に回転し、制御ギア24はJ2方向に回転する。その後、給送ローラ11は、給送ローラギア19と共に、矢印J1方向に駆動し、MPU201は、
図10(d-1)に示す状態で、搬送モータ61の駆動を停止する。
【0081】
この状態においては、
図10(e)に示すように、給送ローラギア19の対向部には、制御ギア24の第3の欠歯部52bが位置している状態になっている。従って、給送ローラギア19が制御ギア24に噛み合わず、給送ローラギア19と制御ギア24との間で駆動力の伝達が遮断された状態になっている。
【0082】
S12において、MPU201は、RAM203に記憶されるSNCLEANフラグの値を更新、具体的にはONにセットする。ここで、RAM203に記憶されるSNCLEANフラグの値は、記録装置1本体の電源をOFFしても消去されないよう設定されている。本ステップの処理は、分離機構7の待機状態を切り替える処理を実行したか否かを示す経歴に関する情報を保持するために行われる。尚、SNCLEANフラグの値をROM202に記憶してもよい。
【0083】
S13において、MPU201は、給送ローラ11の駆動を停止して、第2の待機状態にする。具体的には、MPU201は、
図10(d-1)に示す状態から、搬送モータ61を駆動して太陽ギア37を
図10(d-1)中の矢印J2方向に回転し、ストッパ41に振り子39の突起部39eが当接した状態で停止させる。これにより、逆転遊星ギア36は給送ローラギア19から離間した状態、かつ正転遊星ギア35は制御ギア24から離間した状態で停止する。つまり、分離ローラ12の分離力が発生せず、給送ローラ11と分離ローラ12とが当接し、かつ駆動連結(つまり、駆動源である搬送モータ61と給送ローラ11との間の駆動力の伝達)が、給送ローラギア19と制御ギア24との間で遮断された状態になる。このような状態を、本明細書では第2の待機状態と呼ぶ。
【0084】
この時、
図10(e)に示すように、給送ローラギア19の対向部には、制御ギア24の第3の欠歯部52bが位置している状態になっている。従って、給送ローラギア19が制御ギア24に噛み合わず、制御ギア24は回転されない状態になっている。更に、分離ローラ12は、給送ローラ11に圧接された状態にあり、ロックレバー23の突起部23aがクラッチ軸12のギア部12dから外れて、クラッチ軸12bがフリー状態となり、分離ローラ12のトルクが発生しない状態になっている。このため、分離ローラ12は給送ローラ11のいわゆる従動ローラになっていると共に、給送ローラギア19への駆動力が遮断された状態にあるため、給送ローラ11の給送軸10を、ユーザは手動で容易に回転させることが可能になっている。また、給送軸10を回転させることで、給送ローラ11の従動ローラとなっている分離ローラ12も、給送ローラ11に追従させて、容易に回転させることができる状態になっている。
【0085】
S13の処理が終了して前処理が終了した場合、記録装置1本体の電源がOFFになり、
図15の符号OP12に示すように、操作パネル215に何も表示されなくなる。
【0086】
この状態において、ユーザが給送ローラ11の表面に水分を含ませた布等を押し当てながら給送軸10を回転させる。すると、水分を含んだ給送ローラ11の表面で分離ローラ12の表面も水拭きされる。そして、給送ローラ11で拭き取った分離ローラ12の汚れは、再び布等で水拭きされる。従って、ユーザは、給送ローラ11および分離ローラ12を清掃することができる。
【0087】
給送ローラ11および分離ローラ12の水拭きによる清掃が終了した場合、ユーザに記録装置1本体の電源をONにしてもらう。これにより、記録装置1は、GUI画面OP1が操作パネル215に表示された状態になる。この時、給送部4は第1の待機状態でないため、MPU201は、
図4中のP1の状態になるまで搬送モータ61を駆動する。また、水拭きクリーニングの後処理のために、MPU201は表示制御手段として機能し、GUI画面OP1~OP3を操作パネル215に表示する。GUI画面OP1~OP3を見たユーザは、マニュアル指示に従って、給送ローラ11をクリーニングするための、前述の処理と同様の処理を実施することになる。
【0088】
その後、GUI画面OP3の次に表示されるGUI画面OP4上の「水拭きなし」の指示アイテムがユーザにより選択された場合、GUI画面OP4に替えて、GUI画面OP5が表示される。GUI画面OP5を見たユーザは、前述のケースと同様に、シート材積載部6に積載してあるシート材2をすべて取り除いてOKボタンを押下する。
【0089】
ユーザによりGUI画面OP5上のOKボタンが押下された場合、GUI画面OP5に替えてGUI画面OP6が表示され、
図12に示す、水拭きなしの給送ローラ11のクリーニング処理(水拭きなしローラクリーニング処理等と呼ぶ)が開始される。GUI画面OP6の表示は、
図12に示す一連の処理が終了するまで継続される。
図12のS1において、MPU201は、SNCLEANフラグの値がONか判定する。今回のケースでは、前処理を実施しておりSNCLANフラグ値がON(
図13のS12)であるため、S1の判定結果が真となる。従って、S1後、S7に進む。
【0090】
S7において、MPU201は、CountUPカウンターの値を2にセットする。また、次のS8において、MPU201は、iカウンターの値を5にセットする。このようにカウンターの値をセットする理由は、水拭きを伴うローラクリーニングの後処理として、
図12に示すローラクリーニング処理を実施するため、給紙ローラ11の回転回数を、水拭きを実施しなかった場合と比べて少なくするためである。
【0091】
S8の後、前述のケースと同様に、S4において、MPU201は、給送ローラ11の1回転駆動を行い、S5において、iカウンターの値に1を加算し、加算後の値が10未満か判定する。但し、今回のケースでは、S8でiカウンターの値を5にセットしているため、給送ローラ11の1回転駆動を1回実施した後は、iカウンターの値が6になる。また、S5の判定で、iカウンターの値が10になるまでは、S4~S5の処理を繰り返すことから、給送ローラ11の回転数が5に達した場合に、S5の判定結果が偽となって、S6に移行することになる。
【0092】
S6において、MPU201は、CountUPカウンターの値に1を加算し、加算後の値が3未満か判定する。尚、今回のケースでは、S7でCountUPカウンターの値を2にセットしているため、給送ローラ11の回転数が5に達した場合に、CountUPカウンターの値が3になり、S6の判定結果が偽となって、S9に進むことになる。そして、前述のケース同様に、S9~S10及びS14~S16の処理が実施されると共に、GUI画面OP7~OP9が順に表示され、給送ローラのクリーニング処理が全て終了する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態では、給送部4の待機状態として、第1の待機状態と、第2の待機状態を設けている。これにより、給送ローラ軸10を容易に手で回転させることができる状態にすることができ、給送ローラ11および分離ローラ12の水拭きクリーニングを容易に実施することが可能となった。
【0094】
また、本実施形態では、SNCLEANフラグを設け、給送部4を第2の待機状態にしたことを記憶する制御を実施している。これにより、給送ローラ11の水拭きクリーニングを実施した後に特有な後処理を実施することが可能となり、水拭きなしクリーニングの回数を減らすことが可能となる。よって、ユーザビリティが向上する。
【0095】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、給送ローラ11のクリーニング後の後処理として、電源ON後、水拭きなしのクリーニング処理における給送ローラ11の回転回数を変更した動作を実施した後、水拭きありと水拭きなしとで共通の処理を実施した(
図12、
図14参照)。
【0096】
本実施形態では、MPU201は、電源ON時にSNCLANフラグ値を取得し、SNCLANフラグ値がONか判定する。そして、この判定結果が真の場合には、GUI画面OP1~OP4の表示処理を省略し、GUI画面OP5(
図15参照)が表示された状態から、前述した水拭き後の後処理と同様の処理を実施するようにしてもよい。或いは、水拭きによる給送ローラ11のクリーニング後は、記録装置の給送ローラ11のゴムの性能に合わせ、水拭きなしのクリーニングによる給送ローラ11の回転を実施せずに、電源ON後に、GUI画面OP7が表示された状態から開始してもよい。
【0097】
[第3の実施形態]
第1の実施形態では、給送ローラ軸10を回転させたときに制御ギア24へ伝わる駆動力を遮断するための構成として、制御ギア24における第3の欠歯部52bを備えた。また、駆動源である搬送モータ61からの駆動力を遮断するための構成として、逆転遊星ギア36を給送ローラギア19から離間させる構成を示した。
【0098】
以下、本実施形態における、給送ローラ軸を回転させた時に給送ローラ軸上で駆動力を遮断する遮断構成について、
図16を用いて説明する。
【0099】
図16(a)に示すように、本実施形態における給送ローラ部は、給送ローラ111と、給送ローラ軸110と、給送ローラギア119と、セレート120と、セレートばね121とを有する。
【0100】
図16(b)に示すように、給送ローラ軸110の一端には、略垂直面110aが設けられている。この略垂直面110aは、給送ローラギア119を図中矢印J1方向に回転させた時に、セレート120の略垂直面120aの回転力を伝達するための面である。また、給送ローラ軸110の一端には、傾斜面110bが設けられている。この傾斜面110bは、給送ローラ軸110を図中矢印J1方向に回転させた時に、セレート120の傾斜面120bに回転力を伝達するための面である。
【0101】
セレート120は、セレートばね121によって、給送ローラ軸110に付勢されている。また、給送ローラギア119には突起部119aが設けられ、セレートギア120の凹部120cに入り、給送ローラギア119の作用面119bが、セレートギア120の被作用面120dを押す。これにより、セレートギア120は、給送ローラギア119と同一方向に回転する。この時、セレートギア120の被作用面120bは傾斜しており、給送ローラギア120の
図16(c)中矢印J1方向の力を受けると、
図16(a)中矢印B方向への移動力を受ける構成になっている。
【0102】
また、セレート120と給送ローラギア119との間には、空間122を設けている。この空間122は、給送ローラ軸110を
図16(a)中矢印J1方向に回転させた時、セレート120が
図16(a)中矢印A方向に移動し、給送ローラ軸110の傾斜面110bと、セレート120の傾斜面120bとの係合が外れるための空間である。
【0103】
本実施形態における給送ローラ111は、以上のような構成を有する。従って、給送ローラ軸110を図中矢印J1方向に回転させた場合、セレート120が矢印A方向に移動し、給送ローラ軸110の傾斜面110bと、セレート120の傾斜面120bとの係合が外れる。この結果、給送ローラ軸110における駆動力の伝達は、給送ローラ軸110上で遮断されることになる。この時、第2の待機位置では、分離ローラ12は、給送ローラ111に圧接された状態にあり、ロックレバー23の突起部23aがクラッチ軸12のギア部12dから外れて、クラッチ軸12bがフリー状態となり、分離ローラ12のトルクが発生しない状態にある。
【0104】
以上説明したように、本実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
[その他の実施形態]
尚、前述の実施形態では、搬送ローラ30と給送ローラ11との駆動源が同一のケースについて示したが、駆動源が異なる場合でも、前述した第2の待機状態と同様の待機状態を設けることで、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
本発明は、前述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 記録装置
2 シート材
11 給送ローラ
12 分離ローラ
201 MPU