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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】吐出装置、及びインプリント装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240708BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240708BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
H01L21/30 502D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020028557
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2020196001
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019099327
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】九里 真弘
(72)【発明者】
【氏名】勝田 健
(72)【発明者】
【氏名】酒井 啓太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬恭
(72)【発明者】
【氏名】難波 永
(72)【発明者】
【氏名】川原 信途
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙一
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00 - 5/04
B05C 7/00 -21/00
H01L21/30
B41J 2/165- 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の吐出材を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに連通し、内部に前記吐出材を収容する収容容器と、
前記収容容器の内部の圧力を制御するための圧力制御手段と、
を備えた吐出装置であって、
前記圧力制御手段は、
前記吐出口内に前記吐出材のメニスカスを形成することが可能な第1の圧力を前記収容容器の内部に発生させる第1の圧力制御手段と、
前記第1の圧力より低い第2の圧力を前記収容容器の内部に発生させることが可能であって、前記第1の圧力制御手段とは異なる第2の圧力制御手段と、
を有し、
通常動作時には、前記第1の圧力制御手段を用いて、前記吐出口内に前記吐出材のメニスカスを形成することが可能な第1の圧力を前記収容容器の内部に発生させ、
前記収容容器内の圧力が前記第1の圧力よりも高い所定の圧力になった場合には、前記第2の圧力制御手段を用いて、前記収容容器内の圧力を少なくとも前記第1の圧力まで低下させることを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記所定の圧力は、前記第1の圧力よりも高く、前記吐出口から前記吐出材が漏出する圧力よりも低い圧力である、請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記圧力制御手段は、記吐出口から前記吐出材が漏出する異常が発生した際に、前記第2の圧力制御手段を用いて、前記収容容器内の圧力を前記第2の圧力に低下させる、請求項1又は2に記載の吐出装置。
【請求項4】
前記吐出口から前記吐出材が漏出する異常が発生した際に、前記第2の圧力制御手段による前記第2の圧力の発生によって、前記吐出材の被吐出物に漏出した前記吐出材を引回収することが可能な吸引手段をさらに備える、請求項3に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記吸引手段は、前記被吐出物に対して相対的に移動し、前記被吐出物に漏出された前記吐出材を吸引する、請求項4に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記吸引手段は、前記吐出ヘッドにより構成され、
前記吐出ヘッドは、前記収容容器の内部に印加された前記第2の圧力によって前記被吐出物に漏出された前記吐出材を前記吐出口から吸引する、請求項4または5に記載の吐出装置。
【請求項7】
前記被吐出物に漏出された前記吐出材を前記吸引手段が吸引した後、前記吸引手段と前記被吐出物との距離を広げる機構をさらに備える、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項8】
前記吐出口から被吐出物に漏出された前記吐出材を検知する漏出検知手段をさらに備える、請求項3ないし7のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項9】
前記漏出検知手段は、前記吐出口から前記被吐出物に漏出された前記吐出材の位置を特定し、
前記被吐出物に漏出された前記吐出材を吸引回収する吸引手段が、前記漏出検知手段によって特定された位置と対向する位置へと移動した後、前記第2の圧力制御手段による記第2の圧力の発生によって当該吐出材を吸引する、請求項8に記載の吐出装置。
【請求項10】
前記漏出検知手段は、漏出センサ、カメラ、前記吐出ヘッドに組み込まれた圧電素子の逆起電力信号を検出する信号検出手段、及び吐出装置に設けた圧力センサの少なくとも1つである、請求項8または9に記載の吐出装置。
【請求項11】
前記圧力制御手段は、電源の異常が発生した際に、前記第2の圧力制御手段を用いて、前記収容容器内の圧力を前記第2の圧力に低下させる、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項12】
前記第1の圧力制御手段は、大気に連通すると共に前記収容容器に連結された貯留部と、前記収容容器内の圧力が前記所定の圧力になった際に前記貯留部と前記収容容器との連通を遮断する第1の弁とを含み、前記貯留部と前記収容容器とを前記第1の弁によって連通させることにより前記貯留部に貯留された液体の液面と前記吐出口との水頭差によって前記収容容器の内部に前記第1の圧力を発生させる、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項13】
前記第2の圧力制御手段は、前記第2の圧力を発生する負圧発生手段と、前記負圧発生手段と前記収容容器とを連通するか遮断するかを切り換える第2の弁とを有し、
前記第2の弁は、前記貯留部と前記収容容器との連通が遮断されたとき前記負圧発生手段と前記貯留部とを連通させて前記収容容器の内部に前記第2の圧力を発生させる、請求項12に記載の吐出装置。
【請求項14】
前記第2の圧力制御手段は、大気に連通すると共に前記収容容器に連結された第2の貯留部と、前記第2の貯留部と前記収容容器とを連通するか遮断するかを切り換える第2の弁とを有し、
前記第2の弁は、前記第1の弁により前記貯留部と前記収容容器とが連通するとき前記第2の貯留部と前記収容容器との連通を遮断し、前記貯留部と前記収容容器との連通が前記第1の弁により遮断されたとき前記第2の貯留部と前記収容容器とを連通させて前記第2の貯留部に貯留された液体の液面と前記吐出口との水頭差によって前記収容容器の内部に前記第2の圧力を発生させる、請求項12に記載の吐出装置。
【請求項15】
前記第2の圧力制御手段は、前記収容容器に連結された第2の貯留部と、前記第2の貯留部と前記収容容器との間に設けた第2の弁と、前記第2の貯留部に前記第2の圧力を発生させる負圧発生手段とを有し、
前記第2の弁は、前記貯留部と前記収容容器とが前記第1の弁により連通するとき前記第2の貯留部と前記収容容器との連通を遮断し、前記貯留部と前記収容容器との連通が前記第1の弁により遮断されたとき前記第2の貯留部と前記収容容器とを連通させて前記負圧発生手段により前記第2の貯留部に発生させた前記第2の圧力を前記収容容器に印加する、請求項12に記載の吐出装置。
【請求項16】
前記第2の圧力制御手段は、前記貯留部に連結された第2の貯留部と、前記第2の貯留部と前記貯留部との間に設けた第2の弁と、前記第2の貯留部に前記第2の圧力を発生させる負圧発生手段とを有し、
前記第2の弁は、前記貯留部と前記収容容器とが前記第1の弁により連通するとき前記第2の貯留部と前記貯留部との連通を遮断し、前記貯留部と前記収容容器との連通が前記第1の弁により遮断されたとき前記第2の貯留部と前記貯留部とを連通させて前記負圧発生手段により前記第2の貯留部に発生させた前記第2の圧力を前記貯留部に印加することにより前記収容容器の内部に前記第2の圧力を発生させる、請求項12に記載の吐出装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか1項に記載の吐出装置と、パターンを形成するためのモールドと、を有し、
前記吐出装置によって被吐出物に吐出された吐出材に前記モールドを押し付けて硬化させることにより前記吐出材にパターンを形成するインプリント装置。
【請求項18】
前記吐出材は、インプリント処理に用いられるレジストである、請求項17に記載のインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ヘッドから液状の吐出材を吐出する吐出装置、及び吐出装置を備えたインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収容容器に収容された液体または液状の吐出材を吐出ヘッドの吐出口から吐出する吐出装置として、特許文献1には、収容容器内の圧力を制御する圧力制御手段を備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-0902549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の吐出装置は、吐出口からの吐出材の漏出に対する処理について考慮されていない。このため、吐出口から漏出した吐出材によって基板や装置内が汚染される虞があった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、吐出ヘッドの吐出口から漏出した吐出材による汚染を抑制することが可能な吐出装置、及びインプリント装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液状の吐出材を吐出する吐出口を有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに連通し、内部に前記吐出材を収容する収容容器と、前記収容容器の内部の圧力を制御するための圧力制御手段と、を備えた吐出装置であって、前記圧力制御手段は、前記吐出口内に前記吐出材のメニスカスを形成することが可能な第1の圧力を前記収容容器の内部に発生させる第1の圧力制御手段と、前記第1の圧力より低い第2の圧力を前記収容容器の内部に発生させることが可能であって、前記第1の圧力制御手段とは異なる第2の圧力制御手段と、を有し、通常動作時には、前記第1の圧力制御手段を用いて、前記吐出口内に前記吐出材のメニスカスを形成することが可能な第1の圧力を前記収容容器の内部に発生させ、前記収容容器内の圧力が前記第1の圧力よりも高い所定の圧力になった場合には、前記第2の圧力制御手段を用いて、前記収容容器内の圧力を少なくとも前記第1の圧力まで低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出ヘッドの吐出口から漏出した吐出材による汚染を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インプリント装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図3】吐出ヘッドにおける吐出口の近傍の部分拡大図である。
図4】吐出装置において吐出ヘッドから吐出材が漏出した状態を示す図である。
図5】吐出ヘッドから漏出した吐出材の回収状態を示す模式図である。
図6】吐出材の回収処理を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図8】第3実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図9】第4実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図10】第5実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図11】第6実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図12】第7実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
図13】第8実施形態における吐出装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、同一もしくは相当部分の構成については、同一の符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状などは、あくまで例示である。
【0010】
<<第1実施形態>>
第1実施形態では、本実施形態にインプリント装置及びインプリント装置に適用可能な吐出装置を説明する。
【0011】
<インプリント装置>
図1は、本実施形態に適用可能なインプリント装置101の概略構成を示す図である。インプリント装置101は、半導体デバイスなどの各種のデバイスの製造に使用される。インプリント装置101は、吐出装置10を備える。吐出装置10は、吐出材L1(レジスト)を基板111上に吐出する。吐出材L1は、紫外線108等を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性の樹脂である。吐出材L1は、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。光硬化性の材料の他に、例えば熱硬化性のレジストである吐出材を用いてもよい。また、インプリント装置は、熱でレジストを硬化させてインプリント処理を行う装置でもよい。インプリント装置においては、吐出材L1はインプリント材となる。
【0012】
インプリント装置101は、次の一連の処理を含むインプリント処理を行う。すなわち、インプリント装置101は、吐出装置10によって吐出材L1を基板111上に吐出する。そして、基板111上に吐出された吐出材L1に、成型用のパターンを有するモールド107を押し付け、その状態において、光(紫外線)の照射によって吐出材L1を硬化させる。その後、硬化後の吐出材L1からモールド107を引き離すことによって、モールド107の成型パターンを基板111上に転写する。
【0013】
インプリント装置101は、光照射部102と、モールド保持機構103と、基板ステージ104と、吐出装置10と、制御部16と、計測部122と、筐体123と、を有する。
【0014】
光照射部102は、光源109と、光源109から照射された紫外線108を補正するための光学素子110とを有する。光源109は、例えばi線またはg線を発生するハロゲンランプである。紫外線108は、モールド(型)107を介して吐出材L1に照射される。紫外線108の波長は、硬化させる吐出材L1に応じた波長である。なお、レジストとして熱硬化性レジストを用いるインプリント装置の場合は、光照射部102に代えて、熱硬化性レジストを硬化させるための熱源部が設置される。
【0015】
モールド保持機構103は、モールドチャック115と、モールド駆動機構116とを有する。モールド保持機構103によって保持されるモールド107は、外周形状が矩形であり、基板111に対向する面には転写すべき回路パターンなどの凹凸パターンが3次元で形成されたパターン部107aを有する。本実施形態におけるモールド107の材質は、紫外線108が透過することができる材質であり、例えば石英が用いられる。
【0016】
モールドチャック115は、真空吸着または静電力によりモールド107を保持する。モールド駆動機構116は、モールドチャック115を保持して移動することによりモールド107を移動させる。モールド駆動機構116は、モールド107を-Z方向(下方)に移動させてモールド107を吐出材L1に押し付けることができる。また、モールド駆動機構116は、モールド107を十Z方向(上方)に移動させてモールド107を吐出材L1から引き離すことができる。なお、モールド107を吐出材L1に押し付ける動作、または吐出材L1からモールド107を引き離す動作は、基板ステージ104が十Z方向に移動することで実現してもよい。または、モールド107および基板ステージ104の双方が相対的に移動動することで実現してもよい。
【0017】
基板ステージ104は、基板チャック119と、基板ステージ筐体120と、ステージ基準マーク121とを有し、X方向及びY方向へと移動する。基板ステージに保持される基板111は、単結晶シリコン基板またはSOI(Silicon on lnsulator)基板である。基板111の被処理面の所定の箇所には、吐出装置10から吐出された吐出材L1によってパターン(吐出材パターン)が形成される。
【0018】
基板チャック119は、基板111を真空吸着等により保持する。基板ステージ筐体120は、基板チャック119を機械的手段により保持しながらX方向およびY方向に移動することで基板111を移動させる。ステージ基準マーク121は、基板111とモールド107とのアライメントにおいて、基板111の基準位置を設定するために使用される。基板ステージ筐体120のアクチュエータには、例えばリニアモータが用いられる。他にも、基板ステージ筐体120のアクチュエータは、粗動駆動系または微動駆動系などの複数の駆動系を含む構成でもよい。
【0019】
吐出装置10は、吐出カートリッジ100と、吐出カートリッジ100の収容容器13内の圧力を制御する後述の圧力制御手段とを有する。吐出カートリッジ100は、吐出材を収容する収容容器13(図2参照)と、収容容器13に装着される吐出ヘッド14(図2参照)と、を備える。吐出装置10の構成の詳細については後述する。
【0020】
計測部122は、アライメント計測器127と、観察用計測器128と、を有する。アライメント計測器127は、基板111上に形成されたアライメントマークと、モールド107に形成されたアライメントマークとのX方向およびY方向の位置ずれを計測する。観察用計測器128は、例えばCCDカメラなどの撮像装置であり、基板111に吐出された吐出材L1のパターン(吐出材パターン)を撮像して、画像情報として制御部16に出力する。
【0021】
制御部16は、インプリント装置101の各構成要素の動作などを制御する。制御部16は、例えば、CPU、ROM、およびRAMを有するコンピュータで構成される。制御部16は、インプリント装置101の各構成要素に回線を介して接続され、CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに従って各構成要素の駆動を制御する。制御部16は、計測部122の計測情報を基に、モールド保持機構103、基板ステージ104、および吐出装置10の各部の動作を制御する。なお、制御部16は、インプリント装置101の他の部分と一体で構成してもよいし、インプリント装置とは別の他の装置として実現されてもよい。また、制御部16は、1台のコンピュータではなく複数台のコンピュータで構成されていてもよい。
【0022】
筐体123は、基板ステージ104を載置するベース定盤124と、モールド保持機構103を固定するブリッジ定盤125と、ベース定盤124に立設されブリッジ定盤125を支持する支柱126と、を備える。また、インプリント装置101は、モールド107を装置外部からモールド保持機構103へ搬送するモールド搬送機構(不図示)と、基板111を装置外部から基板ステージ104へ搬送する基板搬送機構(不図示)と、を備える。
【0023】
<吐出装置の構成>
図2は、インプリント装置101に設けられる吐出装置10の構成を示す図である。吐出装置10は、吐出カートリッジ100と、吐出カートリッジ100の内圧を制御する圧力制御手段とを有する。吐出カートリッジ100は、筐体11と筐体12とを有する収容容器13と、吐出ヘッド14とを含み構成されている。
【0024】
収容容器13は、筐体11と筐体12とにより外殻が形成されている。筐体11と、筐体12には、それぞれ相対向する位置に開口部が形成されている。筐体11の開口部はフィルム1によって密封され、第1の液室5が形成されている。第1の液室5には、基板111上に吐出する液状の吐出材L1が充填されている。また、第1の液室5は、吐出ヘッド14を介して外部空間と連通している。
【0025】
一方、筐体12の開口部はフィルム2によって密封され、第2の液室6が形成されている。第2の液室6には、作動液L2が充填されている。第2の液室6は、供給管23及び連通管24を介して圧力制御手段に含まれるサブタンク(貯留部)26に連結されている。作動液は、気体に比べて、外的な温度および圧力による密度(体積)の変化が無視できるほど小さい物質である。そのため、吐出装置10の周辺の気温または気圧が変化しても、作動液3の体積はほとんど変化しない。作動液3として、例えば、水のような液体またはゲル状物質から選択される物質を用いることができる。通常、吐出材の密度と作動液の密度との差は、吐出材の密度と気体の密度との差に比べて小さい。
【0026】
このように、収容容器13の内部空間は、可撓性隔壁を構成するフィルム1とフィルム2により、第1の液室5と第2の液室6とに分割されている。また、フィルム1の周縁部とフィルム2の周縁部との間には、環状のフィルム間プレート7がスペーサとして設けられており、このプレートによってフィルム1とフィルム2との間には、液体及び空気が流通可能なフィルム間空間4が形成されている。フィルム1及びフィルム2は10~100マイクロメートルの厚さの薄膜である。フィルム1及びフィルム2の材質としては、可撓性を有し、かつ吐出材及び作動液に対して耐性のある材質であればよい。例えば、PTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)のような材質を用いることが可能である。また、本実施形態では、2枚のフィルム1及びフィルム2を使用しているが、1枚の可撓性フィルムを可撓性隔壁として用い、収容容器の内部空間を分割することも可能である。
【0027】
一方、吐出ヘッド14は、上述の収容容器13の底部に設けられ、第1の液室5に連通している。図3に、吐出ヘッド14における吐出口15の近傍を拡大した部分断面を示す。吐出ヘッド14には、1インチ当たり500から1000個の密度で吐出口15が形成されている。それぞれの吐出口15に対応して設けられた圧力室19内には、吐出機構(不図示)が実装されている。吐出機構は、例えばピエソ素子または発熱素子(不図示)等により構成され、圧力室19内に供給されている吐出材L1に圧力、振動、または熱などのエネルギを加えることで、吐出口15から吐出材L1を吐出することができる。吐出機構は、吐出材L1を微細液滴、例えば1pL等の液滴として吐出可能なエネルギを発生することができるものであればよい。
【0028】
各圧力室19は、共通液室20と連通し、その共通液室20は、収容容器13の第1の液室5と連通している。吐出口15から吐出される吐出材L1は、収容容器13から共通液室20を経て圧力室19に供給される。吐出ヘッド14は、第1の液室5との間に吐出材L1の流通を制御する制御弁を持たない。そのため、収容容器13の内部の圧力は、吐出口15の外部の大気圧(大気圧)よりも低い圧力(負圧)になるように制御される。この負圧制御により、吐出口内の吐出材は、吐出口15の最下端部(吐出口15の開口部近傍)でメニスカス17を形成して吐出に適した状態となり、意図しないタイミングで吐出材L1が吐出口15から漏出(滴下)するのを抑制することができる。本実施形態では、収容容器13の内圧は、大気圧よりも0.3~0.5kPaだけ低い圧力(負圧)になるように制御される。なお、吐出ヘッド14は、吐出口15の開口部が形成される吐出口面15aと被吐出物である基板111との鉛直方向における距離が500um以下となる位置に配置される。
【0029】
以上の構成により、第1の液室5と第2の液室6との内圧に差が生じると、可撓性を有するフィルム1とフィルム2は同時に圧力の低い側へと移動し、内圧差がなくなった時点で移動を停止する。この動きを内圧の差が生じる毎に繰り返す。そのため、第1の液室5と第2の液室6とは、常に内圧が等しい状態に保つことができる。
【0030】
より具体的に説明する。吐出ヘッド14から吐出材L1が吐出されると、第1の液室5内の容積が減少し、その減少した容積分だけ第1の液室5の内圧が低下する。このとき、仮にフィルム2が移動しないとすると、第2の液室6の内の容積は変化せず、第2の液室6の内圧は第1の液室5の内圧よりも高くなる。しかし、本実施形態ではフィルム1とフィルム2がいずれも可撓性を有するため、第2の液室6の容積が減少すると、その減少した容積分だけフィルム1と共にフィルム2が第1の液室5側へ移動する。また、これと同時にサブタンク26からは連通管24を介して作動液L2が第2の液室6内に吸い上げられる。その結果、第1の液室5と第2の液室6の内圧は、再び等しくなって平衡状態となる。なお、本実施形態では、フィルム1とフィルム2の同時移動をスムーズに行うため、フィルム1とフィルム2とが溶着などによって部分的に連結されている。
【0031】
また、フィルム1とフィルム2には前述のようにポリテトラフルオロエチレン系の材質を用いることも可能であるが、他の材質で形成することも可能である。ポリテトラフルオロエチレン系のフィルムは硬度が高く、薄く形成することも技術的に難しい。そこで、フィルム1は吐出材L1に対して耐性のあるPTFEのような材質を使用し、フィルム2は作動液L2に対して耐性のある材質、例えばナイロン系の柔らかい材質を使用してもよい。さらに、フィルム1を薄くし、フィルム1より厚いフィルム2を使用してもよい。このように、2枚のフィルム1、2に異なる材質や異なる厚みのフィルムを使用することで、フィルム全体の剛性を下げ、吐出材L1の吐出による、フィルム1及びフィルム2の移動をよりスムーズに行うことが可能になる。この他、吐出材L1を保護する目的で、フィルム1の厚さを、フィルム2の厚さよりも厚くしてもよい。これによれば、吐出材L1をより確実に保護しつつ、フィルム1及びフィルム2の移動をスムーズに行うことが可能になる。
【0032】
次に、収容容器13の内圧を制御する圧力制御手段について説明する。圧力制御手段は、サブタンク26、連通管24、供給管23、第1~第4の制御弁73、21、72、31、送液ポンプ22、32、メインタンク34、第1の排出管70、第1の排出ポンプ(負圧発生手段)71等を含み構成されている。サブタンク26は、作動液L2を貯留可能に構成され、連通管24及び供給管23を介して第2の液室6に接続されている。連通管24の途中には第2の液室6とサブタンク26とを連通するか遮断するかを切り換える開閉可能な第1の制御弁(第1の弁)73が設けられている。
【0033】
供給管23には、送液ポンプ22が設けられると共に、送液ポンプ22と第2の液室とを連通するか遮断するかを切り換える開閉可能な制御弁21が設けられている。また、供給管23において、第2の制御弁21と第2の液室6との間には、第1の排出管70の一端部が連結されている。第1の排出管70の他端部は、第1の廃液容器69に連結されている。第1の排出管70には、第1の排出ポンプ71と第3の制御弁(第2の弁)72が設けられている。第3の制御弁72は、供給管23と第1の排出ポンプ71とを連通するか遮断するかを切り換える開閉可能な弁により構成されている。本実施形態における圧力制御手段における第1~第4の制御弁73、21、72、31、送液ポンプ22、32、第1、第2の排出ポンプ9、71等の駆動は、制御部16(図1)によって制御される。
【0034】
本実施形態では、吐出口15内に吐出に適したメニスカスを形成するための負圧(第1の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第1の圧力制御手段は、サブタンク26と、連通管24と、第1の制御弁(第1の弁)73と、を含み構成されている。また、第1の圧力より低い圧力(第2の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第2の圧力制御手段は、第1の排出ポンプ71と、第1の排出管70と、第3の制御弁(第2の弁)72とを含み構成されている。
【0035】
また、吐出装置10には、収容容器13に設けられた前述のフィルム1またはフィルム2の一部が破損し、破損した箇所からフィルム間空間4に吐出材L1または作動液L2が漏出した場合に、これを検知する破損検知機構(破損検知手段)が設けられている。破損検知機構は、収容容器13のフィルム間空間4に一端部が連結された第2の排出管8と、第2の排出管8に設けられた第2の排出ポンプ9と漏出センサ3と、第2の廃液容器30とを含み構成されている。
【0036】
第2の排出ポンプ9は、吐出装置10による吐出動作期間中に、常時作動しており、フィルム間空間4の空気を吸引している。このため、フィルム1またはフィルム2が破損してフィルム間空間4に吐出材L1や作動液L2が漏出した場合、その漏出した液体は第2の排出管8へと吸引される。漏出センサ3は、この吸引された吐出材L1と作動液L2の双方を検知することが可能であり、これによってフィルム1及びフィルム2の破損を検知することができる。なお、フィルム1または2の破損が検知された場合には、吐出装置10及びインプリント装置101の動作は停止する。
【0037】
また、吐出装置10には、基板111の上面を撮像するカメラ74が設けられている。このカメラ74によって基板111上に付与されている吐出材L1の位置の特定、及び状態の確認を行うことができる。また、カメラ74の撮像結果に基づき、いずれの吐出口15から吐出材L1が漏出したかを検知することも可能である。さらに、吐出装置10には、サブタンク26に供給される作動液L2がサブタンク26の収容容積を越えて吸気管25から漏出したことを検知する満水センサ28が設けられている。また、サブタンク26には、内部に貯留されている作動液L2の液面の位置を検知する液面センサ41が設けられている。なお、制御部16のCPUは、液面センサ41、満水センサ28、漏出センサ3、及びカメラ74などの出力結果に基づいて各部の駆動を制御する。
【0038】
<吐出装置の動作>
上記のように構成された吐出装置10において、サブタンク26は図2に示すように、大気連通管である吸気管25を通じて大気に連通しているため、その内圧は大気と等しい。吐出口15からの吐出材L1の漏出が検知されない通常動作においては、第1の制御弁73は開いた状態にある。このため、サブタンク26と第2の液室6とを連通する連通管24には作動液L2が充填され、且つ、サブタンク26には作動液L2が貯留されている。
【0039】
サブタンク26内の作動液Lの鉛直方向における液面位置(以下、「液面高さ」ともいう)は、吐出ヘッド14の吐出口15よりも△Hだけ低い位置に定められている。この△H(水頭差)の値は、吐出材L1のメニスカス17が吐出口内の吐出に適した位置に維持されるように設定する。つまり、吐出口15から外部に吐出材L1が漏出または滴下したり、メニスカス17が過度に奥部(例えば、共通液室近傍)に引き込まれたりしないように、水頭差△Hの値が設定されている。具体的には、第1の液室6の内圧が大気圧に対して0.40±0.04kPaだけ低くなるように、水頭差△Hの値を40±4mmに定めている。但し、この値は一例であり、水頭差△Hの値は、吐出口15の直径や吐出材の物性(例えば、密度、粘度など)に応じて適宜設定することが必要である。
【0040】
本実施形態における吐出装置10は、吐出ヘッド14の各吐出口15から、1回の吐出動作によって1pL(ピコリットル)程度、もしくは、それ未満の液量を吐出可能とするインプリント装置に適用する吐出装置を想定している。吐出材L1はインプリント材料であり、水とほぼ等しい密度を有するものとなっている。また、吐出口15の直径は直径10μm(ミクロン)程度となっている。このような条件を考慮して、水頭差△Hの値は40mm±4mmに設定されている。
【0041】
しかし、吐出ヘッドによっては、吐出口の直径が数十μm程度である、解像度の粗いものもあり、種々の物性を有する吐出材が存在する。よって、水頭差△Hの数値は、吐出装置の適用対象によって変更することが必要である。
【0042】
サブタンク26の側面に設けられた液面センサ41によって検知された液面の高さが、基準となる水面高さ(吐出口15より40mm低い高さ)に対して±4mmの範囲を超えると、サブタンク26内の作動液L2を補正するシーケンスが行われる。例えば、吐出装置10が吐出動作を行い、吐出カートリッジ100内の吐出材L1が消費されると、消費された体積分だけ、サブタンク26から作動液3が汲み上げられ、サブタンク26内の液面は下降する。サブタンク26の液面が下降すると水頭差△Hが大きくなる。このとき水頭差△Hが過大になると、収容容器13の負圧が過大になり、吐出口15から外気が吸引される虞がある。
【0043】
そのため、図2に示す吐出装置10では、サブタンク26内の液面をサブタンク26の側面に設けられた液面センサ41で計測し、液面が所定範囲(ここでは4mm)を超えて低下した場合には、サブタンク26に作動液L2を供給するシーケンスが行われる。具体的には、液送ポンプ32と第4の制御弁31を駆動して、メインタンク34からサブタンク26へ向けて作動液L2を供給する。また、サブタンク26内の液面が所定の範囲を超えて上昇した場合には、サブタンク26からメインタンク34へ向けて作動液L2を戻す。これにより、サブタンク26内の液面は、所望の範囲内に制御(所謂、「液面調整機能」)される。
【0044】
さらに漏出(漏液)が検知されない通常動作においては、第3の制御弁72を閉鎖し、かつ第2の制御弁21を開放して送液ポンプ22を動作させる。これによりサブタンク26内の作動液L2が第2の制御弁21を通過して第2の液室6に供給される一方、第2の液室6内の作動液L2は、第1の制御弁73を通過してサブタンク26に供給される。つまり、送液ポンプ22を動作させることによって、サブタンク26と第2の液室6との間で作動液L2を循環させることができる。この循環動作によって、第2の液室6、連通管24、及び供給管23に混入している空気を、サブタンク26へと排出することができる。
【0045】
前述のように、図1に示す吐出装置10では、可撓性を有する2枚のフィルム1、2によって、第1の液室5と第2の液室6とが分離されている。仮にフィルム1とフィルム2とがそれぞれ独立して変形可能であれば、サブタンク26の液面高さを調整しようとしても、吐出ヘッド14内の圧力を制御することはできない。例えばサブタンク26の液面を吐出口15よりも低い高さに制御しようとしても、液室6の内圧が大気圧に等しくなるまで、フィルム2だけが図2に示す+X方向に移動してしまう。このため、第2の液室6からサブタンク26へ多くの作動液L2が流出し、サブタンク26の吸気管25から作動液L2が溢れ出す。あるいは、サブタンク26の液面調整機能によってサブタンク26に戻された分の作動液L2がメインタンク34に送られる。いずれの場合も、最終的には第2の液室6から作動液がなくなって、フィルム2が筐体12の壁面に張りついた状態になる。
【0046】
これに対し、本実施形態では、フィルム1とフィルム2とが同時に移動して、第1の液室5と第2の液室6の内圧が等しい状態に保たれる。従って、第2の液室6の圧力を制御することによって、第1の液室5及びこれに連通する吐出口15の圧力を適正な圧力に制御することができる。すなわち、サブタンク26内の作動液L2の液面と吐出口15との間に水頭差△Hを設けることによって、吐出口内に、吐出に適したメニスカス17を形成することが可能になる。
【0047】
しかしながら、収容容器13には、連通管24や供給管23を収容容器13に連結する際に空気が混入することがある。また、経年変化などにより、収容容器13と各管との連結部分に生じた微小な隙間から第2の液室6内に空気が浸入することもある。このように、第2の液室6への空気の侵入によって作動液L2内に気泡が発生した場合、第1の液室5の圧力を正常に制御できない場合がある。例えば、第1の液室5への空気の侵入によって第1の液室5や第2の液室6の内圧が負圧から正圧へと変化し、吐出口15から吐出材L1が漏出することがある。
【0048】
図4は、本実施形態の吐出装置において、吐出口15から液体が漏出した場合の吐出装置10の状態を示す図である。前述のように、通常の吐出動作では、第1の液室5の内圧を大気圧に対して0.40±0.04kPaだけ低い値とするため、吐出口15とサブタンク26との間の水頭差△Hが40±4mmとなるように制御している。
【0049】
しかし、連通管24や供給管23、あるいは第2の液室6に気泡が混入した場合、吐出口15に形成されていたメニスカス17が崩壊し、図4に示すように吐出口15から基板111上へ吐出材L1が漏出することがある。
【0050】
そこで、本実施形態では、吐出ヘッド14に隣接して設けられたカメラ74によって基板111上を撮像し、吐出口15から基板111上に吐出材L1が漏出したかどうかを検知する。ここでは、吐出材L1の漏出検知手段としてカメラ74を用いる例を示しているが、他のセンサを用いて吐出材L1が漏出した状態を検知することも可能である。例えば、吐出ヘッド14の表面に設けられた漏出(漏液)センサ、あるいは吐出ヘッド14に組み込まれた圧電素子の逆起電力信号を検出する信号検出手段を用いて漏出を検知することも可能である。また、筐体12内に設けられた圧力センサなどで漏出(漏液)を検知してもよい。吐出装置10には、以上の漏出検知手段のうち、いずれか一つを備えればよい。
【0051】
以下、吐出材L1の漏出を検知した場合に実行される処理を説明する。カメラ74等の漏出検知センサによって吐出口15からの吐出材L1の漏出(漏液)を検知した場合、第1の制御弁73を開状態から閉状態に切り換え、サブタンク26から第2の液室6への作動液L2の供給を停止させる処理を行う。
【0052】
その後、第2の制御弁21を開状態から閉状態へと切り換えると共に、第3の制御弁72を閉状態から開状態へと切り換え、第1の排出ポンプ71を駆動させる。第1の排出ポンプ71は、供給管23との連結部から第1の廃液容器69へと作動液L2を吸引し、第2の液室6の内圧の制御を行う。具体的には大気圧に対して-0.40kPa未満-3kPa以上の圧力に制御する。-0.40kPa未満の圧力は、通常の吐出動作において、サブタンク26内の液面と吐出口15との水頭差△Hにより第1、第2の液室5、6内に発生させている圧力(負圧)より低い圧力(大きい負圧)である。換言すると、大気圧に対して-0.40kPa未満の圧力とは、吐出口15内に吐出に適したメニスカス17を形成、維持する圧力(負圧)より低い圧力(大きな負圧)を意味する。さらに、大気圧よりも-3kPa以上である圧力とは、吐出口15から空気を取り込まない圧力を意味する。
【0053】
第1の液室5の内圧を上記のような圧力とする制御を行うことにより、図5に示すように、基板111上に漏出(漏液)した吐出材L1を吐出口15から吸引回収することが可能である。吐出材L1の回収動作中は、基板111上に漏出した吐出材L1が不要な箇所に付着するのを避けるため、吐出装置10及び基板搬送部62の動きを停止させることが好ましい。
【0054】
なお、ここでは、基板111上に漏出した吐出材L1を吸引回収する吸引手段として、吐出ヘッド14を用いる例を示したが、吐出ヘッド14とは別の吸引ノズル(不図示)を吐出ヘッド14の近傍に設け、これによって吐出材L1を吸引回収してもよい。さらに、漏出(漏液)を検知した際には、吐出装置10の周囲に備えられている熱排気機構(不図示)からの熱排気を、吐出装置の周囲に備えられている有機排気機構(不図示)からの有機排気に切り換えることが好ましい。これにより、周囲に漏出(漏液)の臭気が拡散することを防ぐことができ、吐出装置10の周囲の作業環境を向上させることが可能になる。
【0055】
基板111上に漏出した吐出材L1を吐出口15から吸引回収した後、不図示の昇降機構によって吐出カートリッジ100の位置を鉛直方向上方(十Z方向)へと移動させ、吐出ヘッド14の吐出口面と基板111との距離を広げる処理を行う。この処理により、基板111と吐出ヘッド14の吐出口面との隙間に残留している吐出材L1が、毛管力によって基板111上で濡れ広がるのを回避することが可能になる。なお、吸引回収後に吐出ヘッド14の吐出口面と基板111との距離を広げる方法としては、基板ステージ104を鉛直方向下方(-Z方向)へ移動させる方法を採ることも可能である。
【0056】
このようにして、吐出ヘッド14との対向位置に漏出した吐出材L1の吸引回収が終了すると、さらに、カメラ74等の漏出検知手段によって、基板111上の他の場所に漏出している吐出材L1の検知を行う。ここで吐出材L1の漏出が検知された場合には、漏出した吐出材L1の真上に吐出口15が位置するように、吐出ヘッド14を移動させる。この移動は、基板111に対してカートリッジ13を移動させることによって行う。また、基板ステージ104と共に基板111を移動させることによって行うことも可能である。
【0057】
その後、基板111と吐出口15を近づける。基板111と吐出口15の距離は500um以下が好ましい。このようにすることで基板111に漏出(漏液)した液体を吸引回収することが可能になる。
【0058】
なお、ここではカメラ74により漏出(漏液)した場所を特定する例について説明したが、必ずしも場所を特定する必要はなく、吐出口15が基板111の全面を移動し、漏出した吐出材L1を、逐次、吸引回収するようにしてもよい。また、カメラ74を異なる場所に移動させて基板111全体を観察した後、漏出した吐出材L1を回収してもよい。
【0059】
次に、吐出装置10の制御部16によって実行される吐出材L1の回収処理の手順を、図6に示すフローチャートに基づき説明する。なお、フローチャートの各工程番号に付されているSはステップを意味している。
【0060】
上記のように、本実施形態における吐出装置10は、吐出材L1の吐出機能と、漏出した液体の回収機能とを備える。吐出材L1の吐出動作時には、第1の制御弁73及び第2の制御弁21が開状態、第3の制御弁72が閉状態となっている(S1)。また、吐出材L1の吐出動作中、カメラ74等の漏出検知手段は、吐出口15からの吐出材L1の漏出を検知している(S2)。ここで、吐出材L1の漏出が検知されない場合、第1、第2の制御弁73、21は開状態、第3の制御弁72は閉状態に維持され、その状態で吐出動作が継続される(S3)。
【0061】
吐出材L1の漏出が検知されると、インプリント装置101に設けられた不図示の表示部にはエラーが表示される(S4)。また、第1の制御弁73及び第2の制御弁21は閉状態に、第3の制御弁72は開状態にそれぞれ切換えられ(S5)、第2の液室6は第1の排出ポンプ71と連通する。
【0062】
第1の排出ポンプ71は、吐出装置10の駆動中に第3の制御弁72と第1の排出ポンプ71との間に負圧を発生させた状態にあるため、この負圧が第2の液室6に印加される。第1の排出ポンプ71によって印加される負圧は、大気圧に対して第1の制御弁73及び第2の制御弁21を開状態から閉状態へと切り換え、第3の制御弁72を閉状態から開状態へと切り換える。これにより、第2の液室6は、第1の排出ポンプ71に連通する。第1の排出ポンプ71の圧力は、大気圧に対して-0.40kPa未満、且つ-3kPa以上の値に制御されている。この負圧が第2の液室6に印加されることにより、第1の液室5にも同様の負圧が発生する。その結果、基板111上に漏出した吐出材L1は、第1の液室5に生じた負圧によって吐出口15から吸引回収される。
【0063】
漏出した吐出材L1を吸引回収した後、吐出口15と基板111とを+Z方向に離間させる処理を行う(S7)。これは、カートリッジ13の位置制御機構(不図示)によってカートリッジ13を+Z方向(上方)に上昇させるか、あるいは基板ステージ104に設けられた不図示のバネ等により基板ステージ104を-Z方向に下げることによって行なう。吐出口15を基板111から離間させることにより、吐出口15の面と基板111の隙間に残留している液体が毛管力により濡れ広がることを防ぐことができる。
【0064】
その後、カメラ74等の漏出検知手段によって、基板111上に他の位置の場所を撮像し、吐出材L1の漏出が検知されると、その場所に吐出口15を移動させて吐出材L1の吸引回収を行う。この回収動作を逐次実行し、基板に漏出している全ての吐出材L1を回収する(S7)。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、吐出ヘッド14の吐出口15から漏出した吐出材L1を吸引回収することが可能であるため、漏出した吐出材L1が基板や装置などに付着することによる汚染を低減することができる。
尚、吐出口15から吐出材L1が漏出してから、第2の圧力に制御する形態について説明したが、本発明はこの形態に限られない。即ち、吐出口15から吐出材L1が漏出していなくても、漏出しそうになる前に負圧を高めて第2の圧力に制御することによって、吐出材L1の漏出を防ぐことができる。また、実際に吐出材の漏出を検知していなくても、吐出材の漏出を検知したであろう、または吐出材が漏出しそうであることを、収容容器内の圧力によって判断し、この圧力の結果に基づいて圧力制御を行ってもよい。即ち、収容容器内の圧力が第1の圧力を超えて所定の圧力になった場合に、収容容器内の圧力を所定の圧力から第2の圧力になるように制御してもよい。
【0066】
<<第2実施形態>>
次に、図7に基づき第2の実施形態を説明する。第1実施形態では第2の排出管8に第2の排出ポンプ9と第2の廃液容器30が連結されている例を示した。これに対し、第2実施形態では第2の排出管8と第1の排出管70とを合流させ、合流した流路に第1の排出ポンプ71を連結している。このため、第1の排出ポンプ71のみによって、第1の排出管8と第2の排出管70に負圧を発生させることができる。排出ポンプ71は-0.4kPa未満、かつ-3kPa以上の圧力を発生するように制御されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。このような構成をとることにより、漏出センサ(漏液センサ)による漏出(漏液)の検知と、吐出口15から漏出した吐出材L1の回収とを、第1の排出ポンプ71のみによって行うことが可能になり、吐出装置の小型化を実現することができる。
【0067】
<<第3実施形態>>
次に、図8を用いて第3実施形態を説明する。上述の第2実施形態では、供給管23の途中に第1の排出管70の一端部が連結され、第1の排出管70の他端部が第3の制御弁72を介して第2の排出管8に連結されている。これに対し、第3実施形態では、第1の排出管70の一端部がサブタンク(貯留部)26に連結され、第1の排出管70の他端部は、第2の排出管8に連結されている。第2の排出管8には制御弁77が連結されている。また、第1の排出管70の途中には、第3の制御弁72が連結されている。さらに、第1の排出管70において、サブタンク26と第3の制御弁72の間には吸気管25が連結されている。吸気管25は第5の制御弁76を介して大気に連通している。その他の構成は第2実施形態と同様である。
【0068】
漏出(漏液)を検知しない通常動作の場合、第1の制御弁73、第2の制御弁21、及び第5の制御弁76を開状態とし、第3の制御弁72を閉状態とする。これにより、サブタンク26は吸気管25を通じて大気に連通する。従って、通常動作時には、サブタンク26内の作動液L2の液面と吐出口15のメニスカス17との水頭差によって、吐出ヘッド14内には、吐出材L1の吐出に適した負圧を発生させることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、吐出口15内に吐出に適したメニスカスを形成するための負圧(第1の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第1の圧力制御手段は、サブタンク26と、連通管24と、吸気管25と、第5の制御弁(第1の弁)76とを含み構成されている。また、第1の圧力より低い圧力(第2の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第2の圧力制御手段は、次の構成要素を含み構成されている。すなわち、第2の圧力制御手段は、第1の排出ポンプ(負圧発生手段)71と、第1の排出管70と、第3の制御弁(第2の弁)72と、サブタンク26と、連通管24と、を含み構成されている。
【0070】
一方、吐出材L1の漏出が検出された場合には、第2の制御弁21及び第5の制御弁76を閉状態とし、第1、第3の制御弁73、72を開状態とする。これにより、第1の排出ポンプ(第2の圧力制御手段)71で発生させた、通常の吐出動作時よりも大きな負圧(-0.4kPa未満、かつ-3kPa以上の負圧)が、第1、第2の液室5、6及び吐出口15に印加される。この負圧により、基板111上に漏出した吐出材L1は、吐出口15から吸引され、回収される。なお、本実施形態では、第1の制御弁73は常に開状態に保たれている。このため、第1の制御弁73を省略することも可能である。
【0071】
<<第4実施形態>>
次に、図9に基づいて第4実施形態を説明する。第4実施形態は、電源の異常や停電等により、吐出装置に対して主電源からの電力供給が遮断された状態を想定した構成を備える。一般に、電源からの電力供給が遮断された場合、カートリッジ13内の負圧を制御する制御弁等を正常に動作させることはできない。加えて、漏出センサ(漏液センサ)3、満水センサ28、液面センサ41などのセンサ類が動作しなくなるため、カートリッジ13内の圧力状態を把握することは困難になる。
【0072】
通常、カートリッジ13の内圧は大気圧に対して-0.4kPa近傍の微負圧に保たれているため、電源の異常などに伴い、カートリッジ13の内圧(第1、第2の液室5、6の内圧)が正圧になる可能性がある。カートリッジ13の内圧が正圧になると、吐出口15から吐出材L1が漏出して、基板111や基板ステージ104、ベース定盤124に付着し、装置内を汚染するため、装置の復旧に多くの時間を要する。
【0073】
そこで、本実施形態の吐出装置10は、停電や電源異常が起きた際に、カートリッジ13の内圧を通常より低圧にして(より大きな負圧にして)、吐出口15からの吐出材L1の漏出を抑制するように構成されている。
【0074】
本実施形態の吐出装置10には、カートリッジ13の内圧を制御するための流路内に、次の2種類の電磁弁が配置されている。すなわち、通電時に開状態となり、非通電時に閉状態となるノーマルクローズの電磁弁と、通電時に閉状態となり、非通電時に開状態となるノーマルオープンの電磁弁とが流路内に配置されている。
【0075】
図9において、吐出装置10のサブタンク(貯留部)26には、第1実施形態と同様に吸気管25が設けられている。吸気管25にはノーマルクローズの電磁弁である第1の弁81が設けられている。さらに、吸気管25において、サブタンク26との連結部と第1の弁81との間には配管80が連結されている。配管80にはノーマルオープンの電磁弁である第2の弁82が設けられている。また、排出管8には、ノーマルクローズの電磁弁である第3の弁83が設けられている。
【0076】
配管80及び排出管8は、真空発生源84と連通している。真空発生源84は、例えば、排気設備のように、吐出装置を設置している施設に設けられている。真空発生源84の電源は、吐出装置10とは別の経路を介して、施設に設けられている給電装置(蓄電池あるいは発電機)から供給されている。なお、真空発生源84の圧力は、-0.4kPa未満、且つ-3kPa以上に制御されている。真空発生源84は、サブタンク26によって発生させる微負圧、すなわち吐出口15の適正位置にメニスカス17が形成される第1の圧力より低い圧力(第2の圧力)を発生させる。
【0077】
なお、本実施形態では、第1の圧力を収容容器13の内部に発生させるための第1の圧力制御手段は、サブタンク26と、連通管24と、第1の弁81と、を含み構成されている。また、第2の圧力を収容容器13の内部に発生させるための第2の圧力制御手段は、配管80と、第2の弁82と、真空発生源84と、を含み構成されている。
【0078】
吐出装置10に対して正常に電力が供給されている通常動作時には、第1の弁81及び第3の弁83は開状態にあり、第2の弁82は閉状態にある。このため、サブタンク26は、開状態にある第1の弁81を介して大気に連通する一方、真空発生源84との連通は第2の弁82によって遮断される。このとき、カートリッジ13の内圧は、大気圧に対して-0.40kPaであり、微負圧の状態を維持している。また、第2の弁82が閉状態であり、且つ第3の弁83が開状態であるため、真空発生源84は、フィルム間空間4と連通する。これによりフィルム間空間4の内圧は-0.4kPa未満、且つ-3kPa以上の負圧に保たれる。
【0079】
吐出装置10の電源に異常が生じた場合、吐出装置10は次のような状態となる。電源の異常により吐出装置10への通電が停止すると、ノーマルオープンの電磁弁である第1の弁81は開状態に、ノーマルクローズの電磁弁である第2の弁82及び第3の弁83は閉状態にそれぞれ自動的に切り換る。このとき、サブタンク26は、閉状態にある第1の弁81によって大気との連通は遮断される。また、第2の弁82が開状態となり、且つ第3の弁83が閉状態となるため、サブタンク26は真空発生源84と連通し、カートリッジ13の内圧は、通常動作時の圧力(-0.40kPa)から、-0.4kPa未満、且つ-3kPa以上の圧力に切り換る。つまり、通常動作時の圧力より低い圧力(大きな負圧)に切り換わる。
【0080】
このように、本実施形態によれば、電源に異常が生じた場合に、カートリッジ13の内圧を微負圧から、さらに低い圧力(さらに大きな負圧)へと自動的に切り換るため、吐出口15から吐出材L1が漏出するリスクを低減することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、第1~第3の弁81~83を電磁弁によって構成している例を示したが、その他の弁を代用することもできる。例えば、コンデンサへの蓄電により開閉するコンデンサ型の弁を吐出装置10の流路内に用いることも可能であり、同様の効果を期待できる。
【0082】
また、本実施形態の構成を用いて、基板111上に漏出した吐出材L1を吸引回収させることも可能である。すなわち、カメラ74によって基板111上に液体の漏出が検知された場合には、第2の弁を閉状態から開状態へと切り換え、真空発生源84によってさらに低い負圧をサブタンク26に付与するようにする。これによれば、前述の第1~第3の実施形態と同様に、基板111上に漏出した吐出材L1を吸引回収することが可能になる。
【0083】
また逆に、前述の第1~第3の実施形態の構成において、本実施形態のような2種類の電磁弁を適宜配置することにより、電源等の異常時に、自動的により低い圧力がカートリッジ13内に印加されるように構成することも可能である。
【0084】
さらに、本実施形態では、電源の異常時を想定した例を示したが、これに限らず、吐出装置10が吐出動作を行わない状態、例えば吐出待ちの待機状態などにおいても、吐出口15から吐出材L1が漏出するリスクを低減することができる。
【0085】
<<第5実施形態>>
次に、図10に基づいて第5実施形態を説明する。ここでは、先に述べた他の実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態では、サブタンク(貯留部)26によってカートリッジ13内に印加する負圧よりも大きな負圧を、カートリッジ13内に印加することが可能な第2の圧力制御手段を備える。第2の圧力制御手段は、連結管90と、連結管90によって収容容器13の第2の液室6に連結された第2のサブタンク85と、連結管90の途中に設けられた第2の弁92とを含み構成されている。連結管90には作動液L2が充填されている。第2のサブタンク85には連結管90の下端部より鉛直方向上方の位置まで作動液L2が貯留されている。第2のサブタンク85は大気に連通している。
【0086】
第2のサブタンク26内の作動液L2の液面とサブタンク26内の作動液L2との水頭差はΔH1となっており、第2のサブタンク85内の作動液L2の液面は、常にサブタンク26内の作動液L2の液面より重力方向下方に位置している。従って、第2のサブタンク26内の作動液L2の液面と吐出口15との水頭差は、(ΔH+ΔH1)となる。このため、第2の圧力制御手段によれば、サブタンク26内の作動液L2と吐出口15との水頭差ΔHによって発生する負圧より大きな負圧(低い圧力)を発生させることができる。
【0087】
サブタンク26と第2の液室6とを連結する連通管24には、第1の弁91が設けられている。また、サブタンク26と第2の液室6とを連結する供給管23には、他の実施形態と同様に送液ポンプ22、第2の制御弁21が設けられている。さらに供給管23において、第2の制御弁21と第2の液室6との間には、第3の弁93が設けられている。第1の弁91と第3の弁93は、いずれもノーマルクローズの電磁弁であり、第2の弁92はノーマルオープンの電磁弁である。
【0088】
吐出装置10に対して正常に電力が供給されている通常の動作時には、第1の弁91及び第3の弁93は開状態にあり、第2の弁92は閉状態にある。このとき、サブタンク26は、開状態にある第1の弁91及び第3の弁93を介して第2の液室6と連通している。このため、カートリッジ13内には、サブタンク26内の液面と吐出口15との水頭差ΔHによって発生する負圧が印加される。この負圧は、前述のように大気圧に対して-0.40kPaの負圧であり、カートリッジ13内は微負圧の状態を維持している。
【0089】
ここで、吐出装置10の電源に異常が生じた場合、第1の弁91ないし第3の弁93に対する通電は停止するため、第1の弁91及び第3の弁93はそれぞれ自動的に閉状態に切り換る。これにより、サブタンク26と第2の液室6との連通は遮断される。
【0090】
一方、第2の弁92は開状態に切り換るため、第2のサブタンク85は、第2の液室6と連通する。その結果、第2のサブタンク85内の液面と吐出口15との水頭差により、カートリッジ13の内部には、通常の動作時より大きな負圧(低い圧力)が印加される。これにより、吐出口15から吐出材L1が漏出するリスクを低減することができる。
【0091】
<<第6実施形態>>
次に、図11に基づいて第6実施形態を説明する。本実施形態は、前述の第5実施形態の一部を変更した構成を有する。このため、第5実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。本実施形態では、吐出口15内に吐出材L1の吐出に適したメニスカスを形成するための負圧(第1の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第1の圧力制御手段は、サブタンク26と、連通管24と、第1の弁91と、を含み構成されている。また、第1の圧力より低い圧力(第2の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第2の圧力制御手段は、次のような構成要素を含み構成されている。すなわち、第2の圧力制御手段は、第2のサブタンク(第2の貯留部)85と、連結管90と、第2の制御弁(第2の弁)92と、第2の排出ポンプ(負圧発生手段)86と、ポンプ用配管87と、第4の弁81と、を含み構成されている。
【0092】
ここで、第2の排出ポンプ86は連結管90を介して収容容器13の第2の液室6に連通している。連結管90の途中には、第2のサブタンク85と第2の液室6とを連通するか遮断するかを切り換える第2の弁92が設けられている。第2の排出ポンプ86はサブタンク26を用いて発生させる第1の圧力(-0.40kPa)よりも低い圧力(第2の圧力)を発生させることが可能である。
【0093】
また、第2の排出ポンプ86は、ポンプ用配管87を介して第2のサブタンク85に連結されている。ポンプ用配管87の途中には、第4の弁81が設けられている。この第4の弁81は、第2のサブタンク85と第2の排出ポンプ86とを連通するか遮断するかの切り換えを行う。
【0094】
連通管24に連結されている第1の弁91、供給管23に設けられている第3の弁21、及び第4の弁81は、ノーマルクローズの電磁弁である。また、連結管90に設けられている第2の弁92はノーマルオープンの電磁弁である。
【0095】
吐出装置10に対して正常に電力が供給されている通常動作時には、第1の弁91、第3の弁21及び第4の弁81は開状態にあり、第2の弁92は閉状態にある。従って、サブタンク26は、連通管24及び供給管23を介して第2の液室6と連通した状態にある。このため、サブタンク26内の液面と吐出口15との水頭差ΔHによる負圧が、第2の液室6に印加される。この負圧は-0.40kPaであり、収容容器13の内圧は微負圧に保たれる。また、このとき第4の弁81は開状態にあり、第2のサブタンク85は第2の排出ポンプ86と連通している。このため、通常動作時には、第2の排出ポンプ86によって、第2のサブタンク85の内圧は、排出ポンプ86と同等の負圧、すなわち、-0.40kPaよりも低い圧力(第2の圧力)に保たれる。
【0096】
ここで、吐出装置10の電源に異常が生じた場合、第1の弁91ないし第4の弁94に対する通電は停止するため、第1の弁91、第3の弁21及び第4の弁81はそれぞれ自動的に閉状態に切り換る。これにより、サブタンク26と第2の液室6との連通は遮断される。また、第2の排出ポンプ86と第2のサブタンク85との連通も遮断される。
【0097】
一方、第2の弁92は、通電停止によって自動的に開状態に切り換るため、第2のサブタンク85と第2の液室6は互いに連通する。その結果、電源が正常な状態にあるときに、第2の排出ポンプ86によって第2のサブタンク85内に保持されていた負圧は、連結管90を介して収容容器13に印加される。この収容容器13に印加される負圧は、通常動作時において、サブタンク26内の液面と吐出口15との水頭差とによって収容容器13内に発生する負圧より大きな負圧(低い圧力)である。従って、本実施形態においても、電源異常により吐出口15から吐出材L1が漏出するリスクは低減される。
【0098】
<<第7実施形態>>
次に、図12に基づいて第7実施形態を説明する。本実施形態は、前述の第6実施形態の一部を変更した構成を有する。このため、第6実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。本実施形態においても、サブタンク(貯留部)26を用いてカートリッジ13内に発生させる負圧(第1の圧力)より大きな負圧(第2の圧力)をカートリッジ13内に印加することが可能な第2の圧力制御手段を備える。但し、本実施形態では、第2のサブタンク85に連結される連結管90の一端部90aが、第2の液室6ではなく、サブタンク26内に連結されている。連結管90の一端部90aはサブタンク26内に貯留されている作動液L2内に深く差し込んであり、サブタンク26内の作動液L2の液面変動によって、連結管90の一端部90aが作動液L2から離れないように構成されている。
【0099】
また、第6実施形態の連通管24に設けられていた第1の弁91は、本実施形態では省略されており、サブタンク26と第2の液室6とは、連通管24によって常に連通状態にある。
【0100】
本実施形態では、吐出口15内に吐出材L1の吐出に適したメニスカスを形成するための負圧(第1の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第1の圧力制御手段は、サブタンク26と、連通管24とを含み構成されている。また、第1の圧力より低い圧力(第2の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第2の圧力制御手段は、次の構成要素を含み構成されている。すなわち、第2の圧力制御手段は、第2のサブタンク85と、連結管90と、第2の制御弁(第2の弁)92と、第2の排出ポンプ(負圧発生手段)86と、ポンプ用配管87と、第4の弁94と、サブタンク26と、連通管24とを含み構成されている。
【0101】
吐出装置10に対して正常に電力が供給されている通常動作時には、第2の弁92は、閉状態にあり、第4の弁94は開状態にある。サブタンク26は連通管24を介して第2の液室6と連通した状態にあり、カートリッジ13の内圧は、サブタンク26内の液面と吐出口15との水頭差ΔHによって微負圧(-0.40kPa)に保たれる。また、第4の弁94は開状態にあるため、第2のサブタンク85の内圧は、排出ポンプ86によって-0.40kPaより低い圧力(大きな負圧)に維持される。
【0102】
吐出装置10の電源に異常が生じた場合、第2の弁92及び第4の弁94に対する通電が停止するため、第2の弁92は開状態に、第4の弁94は閉状態にそれぞれ自動的に切り換る。これにより、第2の排出ポンプ86と第2のサブタンク85との連通は遮断される。従って、電源の異常によって第2の排出ポンプ86が停止したとしても、第2の排出ポンプ86と第2のサブタンク85との連通が遮断されるため、第2のサブタンク85の内圧は通電動作時と同様の負圧に保たれる。
【0103】
一方、サブタンク26と第2のサブタンク85は、開状態となった第2の弁92を介して互いに連通し、サブタンク26には、第2のサブタンク85に維持されていた通電時動作の負圧が印加される。その結果、サブタンク26及びこれに連通するカートリッジ13の内圧は、通常動作時の負圧より大きな負圧(低い圧力)となり、吐出口15から吐出材L1が漏出するリスクは低減される。
【0104】
<<第8実施形態>>
次に、図13に基づき第8実施形態を説明する。なお、上述の実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明の詳細は省く。上述の実施形態では、通常動作時にカートリッジ13内に発生させた負圧より低い負圧を、ポンプ等の駆動力によって発生させる例を示した。これに対し本実施形態の吐出装置10は、電源の異常が発生した際に、サブタンク(貯留部)26内の作動液L2をサブタンク26より下方に配置した第2のサブタンク95へ移動させ、カートリッジ13の内圧を通常動作時より低い圧力に保つように構成されている。
【0105】
より具体的に説明する。サブタンク26の鉛直方向下方には、第2のサブタンク(第2の貯留部)95が設けられている。第2のサブタンク95の上部は、配管96を介してサブタンク26の底部に連結されている。配管96の途中にはノーマルオープンの電磁弁である第2の弁97Aが設けられている。第2のサブタンク95の上部には通気管98が設けられている。通気管98は、サブタンク26に貯留されている作動液L2の液面より鉛直方向上方まで延出しており、その先端には大気連通口98aが形成されている。
【0106】
第2のサブタンク95の鉛直方向下方には、排水部99が設けられている。排水部99の上面部は、排水管99aを介して第2のサブタンク95の底部に連結されている。排水管99aの途中には、ノーマルクローズの電磁弁である第1の弁97Bが設けられている。
【0107】
以上のように、本実施形態では、吐出口15内に吐出材L1の吐出に適したメニスカスを形成するための負圧(第1の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第1の圧力制御手段は、サブタンク26と、連通管24とを含み構成されている。また、第1の圧力より低い圧力(第2の圧力)を収容容器13の内部に発生させるための第2の圧力制御手段は、次の構成要素を含み構成されている。すなわち、第2の圧力制御手段は、第2のサブタンク95と、配管96と、第2の弁97Aと、サブタンク26と、連通管24とを含み構成されている。
【0108】
吐出装置10に対して正常に電力が供給されている通常の動作時には、第2の弁97Aは閉状態にあり、第1の弁97Bは開状態にある。このため、サブタンク26と第2のサブタンク95との連通は遮断され、第2の液室6と排水部99とは連通している。このときカートリッジ13には、サブタンク26内の作動液L2の液面と吐出口15との水頭差ΔHによる負圧(-0.40kPa)が印加され、サブタンク26の内圧は微負圧に保たれている。
【0109】
ここで、吐出装置10の電源に異常が発生した場合、第1の弁97B及び第2の弁97Aに対する通電は停止する。そのため、第1の弁97Bは閉状態、第2の弁97Aは開状態へとそれぞれ自動的に切り換る。その結果、サブタンク26に貯留されていた作動液L2が第2のサブタンク95へ流れる。第1の弁97Bは閉状態となっているため、第2のサブタンク95に流入した吐出材L1は、第2のサブタンク95内に貯留される。
【0110】
第2のサブタンク95へ流入した吐出材L1は、通気管98の内部へと浸入し、最終的に、サブタンク26内の液面と通気管98内の液面は同一の高さになる。このときの作動液L2の液面の高さ(鉛直方向における位置)は、通常動作時においてサブタンク26内に貯留されている作動液L2の液面の位置より低下する。つまり、通常動作時のサブタンク26における液面と電源異常時におけるサブタンク26内の液面との間には水頭差ΔH2が生じる。この水頭差ΔH2分だけカートリッジ13の内圧は低下する(負圧が増大する)。カートリッジ13内の負圧が増大することにより、通電が遮断された状況下においても、吐出口15からの吐出材L1の漏出を抑制することができる。なお、吐出装置10の電源が復旧した場合には、第2の弁97Aが閉状態、第1の弁97Bが開状態となり、第2のサブタンク95に貯留された吐出材L1は排水部99に排出され、廃棄される。
尚、第1の実施形態から、第1の圧力制御手段によって収容容器の内部に第1の圧力を発生させ、次に第2の圧力制御手段によって収容容器の内部に第1の圧力より低い第2の圧力を発生させる形態について説明した。本発明においては、収容容器の内部に第1の圧力を発生させた後、収容容器の内部の圧力が第1の圧力を超えて高まる(負圧が低下する)と、収容容器内の圧力を少なくとも第1の圧力に低下させるように制御する形態であってもよい。即ち、収容容器の内部の圧力が第1の圧力を超えた状態の圧力を所定の圧力(第3の圧力)とすると、第1の圧力、所定の圧力(第3の圧力)、第1の圧力の順に制御することになる。このような形態であっても、吐出ヘッドの吐出口から漏出した吐出材による汚染を抑制することができる。また、少なくとも第1の圧力まで低下させればよいのであって、最終的に第1の圧力で停止する必要はなく、第1の圧力よりも低い圧力(例えば第2の圧力)にまで制御してもよい。即ち、これまでの実施形態で説明したように、第1の圧力、所定の圧力(第3の圧力)、第1の圧力、第2の圧力、の順に制御してもよい。
【0111】
<<他の実施形態>>
以上の実施形態においては、吐出装置に設けられる収容容器の内部空間が可撓性隔壁によって第1の液室と第2の液室とに分割されている例を示した。しかし、収容容器の内部空間が3つ以上に分割されている構成、あるいは収容容器の内部空間が分割されていない構成についても本発明は適用可能である。例えば、内部空間が分割されていない収容容器に収容された吐出材を吐出ヘッドから吐出させる吐出装置にも本発明は適用可能である。
【0112】
また、以上の実施形態では、インプリント装置101に設けられた吐出装置10を示したが、本発明に係る吐出装置はインプリント以外の装置にも適用可能である。例えば、導電性材料を含む液体を吐出ヘッドから吐出させることにより、基板上に配線パターンを形成する装置にも本発明は適用可能である。さらに、画像記録用の紫外線硬化性液体や画像記録用の溶剤と色剤とからなる液体(インク)などを吐出材として用い、画像を描画する描画装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 吐出装置
13 収容容器
14 吐出ヘッド
15 吐出口
26 サブタンク(第1の圧力制御手段)
71 第1の排出ポンプ(第2の圧力制御手段)
L1 吐出材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13