(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B41J2/175 307
B41J2/175 121
B41J2/175 119
B41J2/175 141
(21)【出願番号】P 2020067322
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰史
(72)【発明者】
【氏名】越川 浩志
(72)【発明者】
【氏名】林 弘毅
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028466(JP,A)
【文献】特開2018-122516(JP,A)
【文献】特開2001-310481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留する貯留室と、
前記貯留室に着脱可能であって、前記貯留室に貯留する液体を収納する収納部材と、
前記貯留室において、貯留される液体に浸漬され、該液体の量に応じて回動可能な回動部材と、
前記回動部材を用いて前記貯留室に貯留された液体の量を検知する検知手段と、
を備え、前記収納部材が前記貯留室に装着されると、前記貯留室に設けられた開口部を介して、前記収納部材に収納された液体が前記貯留室に流入する液体吐出装置であって、
前記回動部材は、前記開口部から流入する液体を受けて回動可能な位置に配されている
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記開口部から前記貯留室内部に延在するように設けられ、前記開口部よりも開口面積が小さいノズル口を有するノズル部をさらに有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
一方の端部が前記開口部を形成する筒形状であり、
かつ、前記収納部材が接続されると前記収納部材に収納された
液体を前記貯留室へ誘導可能な接続部材を
、前記貯留室が備え、
前記接続部材は、内径が他方の端部から前記一方の端部に向かって連続的に小さく形成される請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記開口部は、幅方向の中心位置が、前記回動部材において流入する液体を受ける面の幅方向における中心位置に対応した位置である請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記開口部は、高さ方向の中心位置が、前記回動部材において流入する液体を受ける面の高さ方向における中心位置よりも上方側であり、かつ、該面の上辺よりも下方側に位置する請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記回動部材は、前記貯留室に貯留される液体よりも比重が小さく、支持部材を介して前記貯留室の底面に回動可能に支持される四角柱形状のフロートを備え、
前記フロートは、高さ方向および幅方向
の双方と交差する
第1の方向に延在し、前記フロートの重心よりも、
前記第1の方向に
おける一方の端面に近い側で前記支持部材により支持され、
前記第1の方向に
おける他方の端面において流入する液体を受ける請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記他方の端面は、前記一方の端面よりも面積が大きい請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記回動部材は、前記フロートの前記他方の端面側が、前記貯留室の前記底面と当接した状態のときに、前記他方の端面と前記底面とのなす角度は鋭角になる請求項6または7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記他方の端面は谷形状である請求項8に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット方式によりインクを吐出可能な記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置などの液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを貯留する貯留室内に、インクよりも比重の小さいフロートを備えた部材を回動可能に備え、この部材の位置をセンサによって検知することで、貯留室内のインクの残量を検知する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に開示の技術では、回動部材における被検知部をセンサにより検知することで、貯留室内のインクの液面が所定高さ以上であるか否かを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、貯留室の底部近傍に設けられた回動軸を中心に、回動部材が回動可能に設けられている。このため、貯留室内のインクが使い切られる直前では、インクの液面が回動軸上に位置する。また、貯留室内のインクが使い切られる直前では、回動部材は、自重によって回動軸から離れた端部側が貯留室の底面に当接している。従って、貯留室内のインクが使い切られる直前の状態で長時間放置されてしまうと、回動軸周りのインクや貯留室の底面と回動部材とが当接した位置にあるインクが、増粘または固化して、回動部材が回動し難くなり、インク残量の検知機能が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、貯留室内に残留したインクに増粘または固化が生じても、インクの残量の検知機能の低下を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、供給される液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留する貯留室と、前記貯留室に着脱可能であって、前記貯留室に貯留する液体を収納する収納部材と、前記貯留室において、貯留される液体に浸漬され、該液体の量に応じて回動可能な回動部材と、前記回動部材を用いて前記貯留室に貯留された液体の量を検知する検知手段と、を備え、前記収納部材が前記貯留室に装着されると、前記貯留室に設けられた開口部を介して、前記収納部材に収納された液体が前記貯留室に流入する液体吐出装置であって、前記回動部材は、前記開口部から流入する液体を受けて回動可能な位置に配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、貯留室内に残留した液体に増粘または固化が生じても、液体の残量の検知機能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による液体吐出装置の一例である記録装置の構成の概略を説明する図。
【
図2】インク貯留室へインクが供給されたときの回動部材の動きを示す図。
【
図3】インク貯留室において貯留されたインクが減ったときの回動部材の動きを示す図。
【
図4】第1実施形態による記録装置における回動部材と開口部との位置関係を説明する図。
【
図5】回動部材と開口部との位置関係の変形例を示す図。
【
図6】第2実施形態による記録装置における開口部近傍の構成を説明する図。
【
図7】第3実施形態による記録装置における回動部材の構成を説明する図。
【
図8】第4実施形態による記録装置における回動部材の構成を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による液体吐出装置の一例を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、本実施形態に記載されている構成要素の相対位置、形状などは、特に限定していない限り、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(第1実施形態)
まず、
図1乃至
図5を参照しながら、第1実施形態による液体吐出装置について説明する。なお、本願明細書では、液体吐出装置として、記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録装置を例として説明することとする。
図1は、実施形態による記録装置の概略を説明するための図であり、(a)は斜視図であり、(b)は記録部の構成を説明するための図である。なお、
図1の記録装置については、本実施形態を適用可能な記録装置の一例であって、本実施形態を適用可能な記録装置は、記録装置10に限定されるものではない。
【0011】
図1に示す記録装置10は、原稿台にセットされた原稿を読み取り可能な読取部12と、読取部12で読み取った情報あるいは外部装置から入力された情報などに基づいて、記録媒体に対して記録する記録部14とを備えた、所謂、複合機である。
【0012】
読取部12は、記録装置10の上部に位置し、記録部14は、記録装置10の下部に位置している。記録部14は、記録媒体Mを収容する収容トレイ16と、収容トレイ16に収容された記録媒体Mを給送する給送ローラ18と、給送される記録媒体Mを記録ヘッド26(後述する)による記録位置までガイドするガイド部20とを備えている。また、記録部14は、ガイド部20を介して給送された記録媒体Mを搬送する搬送ローラ22と、搬送ローラ22により搬送される記録媒体Mを支持するプラテン24と、プラテン24に支持される記録媒体Mにインクを吐出する記録ヘッド26とを備えている。さらに、記録部14は、記録された記録媒体Mを排出トレイ28に排出する排出ローラ30と、チューブ(不図示)を介して記録ヘッド26に供給するインクを貯留するインク貯留部32とを備えている。
【0013】
記録ヘッド26は、複数色のインクを吐出可能であってもよいし、単色のインクのみを吐出可能であってもよい。また、記録後の画像に所定の効果を付与するための処理液を吐出可能な構成であってもよい。複数種類のインク(処理液を含む)を吐出する場合には、それぞれ異なる種類のインクを貯留するインク貯留部32が複数設けられることとなる。また、記録ヘッド26はキャリッジ34に搭載されている。キャリッジ34は、X方向に往復移動可能に構成されている。収容トレイ16に収容された記録媒体Mは、給送ローラ18により-Y方向に搬送され、ガイド部20によってUターンして、搬送ローラ22により+Y方向に搬送される。
【0014】
記録装置10では、記録ヘッド26がキャリッジ34を介してX方向に移動する際に、プラテン24に支持された記録媒体Mに対してインクを吐出して、記録媒体M上に1走査分の記録を行う記録動作を行う。次に、記録媒体を+Y方向に所定量だけ搬送し、記録媒体Mにおける記録ヘッド26と対向する位置に、まだ何も記録されていない領域を位置させる搬送動作を行う。その後、再度記録動作を行う。このようにして、記録装置10では、記録動作と搬送動作とを繰り返し実行することで、記録媒体Mに対して所定の画像を記録することとなる。
【0015】
インク貯留部32は、インクが収納されたインク収納部材36と、インク収納部材36に収納されたインクを貯留するインク貯留室38とを備えている。ここで、
図2(a)(b)および
図3(a)(b)を参照しながら、インク貯留部32の構成について説明する。
図2は、インク貯留室38へのインクの供給を説明する図であり、(a)はインク収納部材36がインク貯留室38から取り外された状態を示しており、(b)は、インク収納部材36がインク貯留室38に装着された状態を示している。
図3は、インクの消費によるインク貯留室38でのインク量の減少に伴う回動部材の動作を説明する図であり、(a)は、インクの液面が所定位置以上のときの回動部材48を示す図であり、(b)は、当該液面が所定位置未満のときの回動部材48を示す図である。
【0016】
インク貯留部32は、記録ヘッド26から吐出するインクの種類ごとに設けられている。なお、インク貯留部32は、インクの種類によらず同じ構成となっている。インク貯留部32では、インク貯留室38に貯留されたインクが、チューブ(不図示)を介して記録ヘッド26に供給される。インク貯留室38から記録ヘッド26へインクが供給されてインク貯留室38のインク量が減ると、接続されたインク収納部材36からインク貯留室38にインクが供給される。
【0017】
インク収納部材36は、本体部40と蓋部42とを備えている。本体部40の内部にはインクが収納される。また、本体部40の底部には、インク貯留室38における接続部材47(後述する)と接続されて、本体部40に収納されたインクをインク貯留室38に供給可能な供給部44が設けられている。即ち、本実施形態では、インク収納部材36は、供給部44を介してインク貯留室38と着脱可能な構成となっている。供給部44は、弁バネ構造などの逆止弁を備えている。蓋部42にはインク収納部材36の内部と外部とを連通する大気連通口46が形成されている。
【0018】
インク貯留室38は、供給部44を介してインク収納部材36と接続する接続部材47を備えている。接続部材47は、内部にインク流路が形成された筒形状であって、供給部44を介してインク収納部材36が接続されると、供給部44を介して流入するインクを、インク貯留室38の内部に誘導可能となっている。インク貯留室38内の底面38aには、回動部材48が設けられている。回動部材48は、底面38aにおいて支持部材50により回動可能に支持されている。従って、回動部材48は、インク貯留室38に液体が供給されると、当該液体に浸漬された状態となる。また、インク貯留室38内には、回動部材48の上方側に、回動部材48の回動を検知可能なセンサ52が設けられている。インク貯留室38には、貯留されるインクの液面が到達しない位置に、インク貯留室38の内部と外部とを連通する大気連通口54が形成されている。
【0019】
回動部材48は、Y方向に延在するフロート56と、フロート56から上方側(略Z方向)に延在するアーム部58と、アーム部58の先端に位置する被検知部60とを備えている。フロート56は、インク収納部材36に収納されるインクよりも比重の小さい材料によって形成されている。また、フロート56は、Y方向に延在する四角柱形状であって、Y方向における一方側、つまり、フロート56の重心よりも端面56bに近い側の下端部において、支持部材50にてX方向に延在する軸62に回動可能に支持されている。ここでの四角柱形状とは、実質的に四角柱形状という意味である。被検知部60は、アーム部58を介してフロート56の上方側に位置している。従って、被検知部60は、フロート56の回動に応じて移動可能な構成となっている。被検知部60については、センサ52において検知可能な材料によって形成される。なお、後述するように、本実施形態ではセンサ52は、発光部と受光部とを備えた光学センサであるため、被検知部60は、発光部からの光を遮光または減衰する材料によって形成される。
【0020】
センサ52は、回動部材48の回動を検知することによって、インク貯留室38内に貯留されたインクの液面の高さが所定位置以上になったことを光学的に検知する、検知手段である。より詳細には、センサ52は、発光部(不図示)および受光部(不図示)を備えている。発光部および受光部は、
図2、3では、X方向に間隔を空けて対抗するように配置されている。なお、回動部材48が回動する際には、発光部と受光部との間を、被検知部60が通過することとなる。そして、センサ52では、発光部から出力された光の受光部における受光に応じて、異なる検知信号を出力する。
【0021】
具体的には、例えば、センサ52は、発光部から出力された光が受光部で受光できない、つまり、受光強度が所定強度未満であると、信号レベルが閾値レベル未満の信号であることを表すローレベル信号を出力する。出力されたローレベル信号は、メイン基板(不図示)に実装された制御部(不図示)で受け付けられる。ローレベル信号を受け付けた制御部では、インクの液面の高さが所定位置以上であることを検知する。
【0022】
一方、センサ52は、発光部から出力された光が受光部で受光できる、つまり、受光強度が所定強度以上であると、信号レベルが閾値レベル以上の信号であることを表すハイレベル信号を出力する。出力されたハイレベル信号は、制御部で受け付けられ、制御部ではインクの液面の高さが所定位置未満であることを検知する。
【0023】
インクが貯留されていない状態のインク貯留室38(
図2(a)参照)の接続部材47に、供給部44を介してインク収納部材36が接続されると、インク収納部材36内のインクが供給部44、接続部材47を介してインク貯留室38内部に流入する。インク貯留室38に一定量のインクが貯留されると、インクより比重の小さいフロート56に受ける浮力が重力に勝り、回動部材48(フロート56)が矢印A方向に回動する。この回動部材48の矢印A方向への回動によって、被検知部60は矢印B方向に移動する。
【0024】
そして、インクの更なる流入により、インク貯留室38においてインクの液面の高さが所定位置以上となると、被検知部60は、矢印B方向への移動によって、センサ52の発光部と受光部との間に位置するようになる。インク貯留室38においてインクの液面の高さが所定位置以上となるとは、換言すると、インク貯留室38に所定量以上のインクが貯留されることである。なお、インクの液面の高さが所定位置以上となっている間は、被検知部60は発光部と受光部との間に留まっている(
図2(b)参照)。このように、インクの液面の高さが所定位置以上であると、被検知部60によって発光部から出力された光が受光部で受光されない(または減衰されて受光部に到達する)ため、センサ52はローレベル信号を制御部へ出力する。これにより、制御部では、インクの液面の高さが所定位置以上の高さであることを検知する。
【0025】
また、インク貯留室38から記録ヘッド26へインクが供給されることで、インク貯留室38およびインク収納部材36内のインクが減り、インク貯留室38におけるインクの液面が低下する(
図3(a)参照)。インク貯留室38におけるインク量が減少し、貯留インクが一定量未満となると、フロート56に作用する浮力より重力が勝るようになる。これにより、回動部材48(フロート56)が矢印C方向に回動する。この回動部材48の矢印C方向への回動によって、被検知部60は矢印D方向に移動する。
【0026】
そして、記録ヘッド26へのインクの更なる供給によって、インク貯留室38のインクの液面の高さが所定位置よりも低くなると、被検知部60は、矢印D方向への移動によって、センサ52の発光部と受光部との間から退避した位置へ移動する。なお、インクの液面の高さが所定位置より低くなっている間は、被検知部60は発光部と受光部との間から退避した位置にある(
図3(b)参照)。このように、インクの液面の高さが所定位置未満であると、被検知部60によって発光部から出力された光を受光部で受光できる(または減衰されずに受光部に到達する)ため、センサ52はハイレベル信号を制御部へ出力する。これにより、制御部では、インクの液面の高さが所定位置未満であることを検知する。
【0027】
ここで、記録装置10では、インクの液面の高さが所定位置より低くなったことを検知した時点で、例えば、記録装置10に設けられた表示部17(
図1(a)参照)に、ユーザに対してインク収納部材36の交換を促す通知がなされる。ユーザは通常、表示部17に表示された通知を確認して、インク収納部材36の交換を行うこととなる。しかしながら、使用状況によっては、インク収納部材36の交換を促す通知後も、新たなインク収納部材36への交換がなされずに、インクの液面の高さが所定位置より低くなったままで放置される場合がある。
【0028】
特に、インクの液面が軸62の高さまで低下している場合(
図3(b)参照)、軸62の一部が大気に暴露された状態となる。また、支持部材50により支持されていない回動部材48におけるフロート56の他方側の端部が、インク貯留室38の底面38aと接触した状態となる。この状態で長時間放置されると、軸62周りのインクやフロート56の他方側の端部周りのインクが増粘し、最終的に固化してしまう。これにより、回動部材48の回動が阻害され、インクの液面の高さが所定位置以上であるか否か、つまり、インク貯留室38におけるインク残量が所定量未満か否かを正確に検知できなくなる虞がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、接続部材47を介してインク貯留室38内に流入するインクを、フロート56の端面56aで受けるような構成とした。これにより、流入時に生じるインク流の力によって、端面56aを押圧して、回動部材48を回動させるようにした。
【0030】
図4は、インク貯留室38の壁面に形成された接続部材47の開口部47aと、回動部材48との位置関係を説明する図である。
図4(a)は、回動部材48を備えたインク貯留室38の側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb-IVb線断面図である。
図5は、開口部47aと回動部材48との位置関係の変形例を示す、
図4(b)に対応する断面図である。
【0031】
インク貯留室38の壁面に形成された、接続部材47の一方の端部に位置する開口部47aは、Y方向に延在するフロート56の端面56aと対向する位置に形成される。フロート56の端面56aは、フロート56において、Y方向と交差する面であり、かつ、支持部材50における軸62に回動可能に支持された、Y方向における他方側の端部に位置する端面56bと対向する面である。
【0032】
より詳細には、開口部47aは、Z方向(高さ方向)において、開口部47aから流出するインクが端面56aにあたる位置であればよい。開口部47aのZ方向の位置は、貯留されるインクの液面高さが所定位置未満のときに、開口部47aのZ方向の中心位置Ozが端面56aのZ方向の中心位置より上方側、かつ、端面56aの上辺56aaより下方側に位置することが好ましい(
図4(a)参照)。
【0033】
また、開口部47aは、X方向(幅方向)において、端面56aのX方向における中心位置と、開口部47aのX方向における中心位置Oxとが、対応する位置、より具体的には一致する位置にあることが好ましい(
図4(b)参照)。なお、開口部47aから流出するインクが端面56aにあたる位置であれば、
図5のように、端面56aのX方向における中心位置と、開口部47aのX方向における中心位置Oxとは、X方向でずれていてもよい。
【0034】
さらに、開口部47aは、Y方向において、開口部47aから流入するインクが端面56aにあたる位置とする。即ち、開口部47aから流入するインクを、端面56aで受けることができるように、インク貯留室38における開口部47aおよび回動部材48の位置が決定される。開口部47aと端面56aとのY方向における距離が短いほど、開口部47aから流入するインクをより強く端面56aにあてることができる。
【0035】
なお、開口部47aの、端面56aに対するX方向、Y方向、およびZ方向における具体的な位置については、例えば、貯留するインクの粘度などの特性に応じて決定される。即ち、インク貯留室38で貯留するインクを端面56aで受けた際に、回動部材48を確実に回動可能な開口部47aと端面56aとの相対的な位置関係を、例えば、実験的に取得する。
【0036】
以上の構成において、表示部17へのインク収納部材36の交換を促す通知を行った後に、インク収納部材36が交換されると、新たなインク収納部材36に収納されたインクが開口部47aを介してインク貯留室38に流入する。開口部47aから流入したインクは、フロート56の端面56aにあたる。即ち、開口部47aから噴流したインクによって端面56aは押圧されることとなる。この開口部47aからのインクの噴流力による端面56aへの押圧力によって、インクの増粘などによって回動が阻害された回動部材48は、矢印A方向(
図2(a)参照)に回動させられる。なお、インク収納部材36を交換する際には、センサ52から制御部へ信号を送信しない、あるいは、センサ52からの信号を制御部で受信しないようにする。
【0037】
本実施形態では、例えば、開口部47aと端面56aとのX方向で位置関係を、端面56aの中心位置と、開口部47aの中心位置Oxとを一致させる。また、開口部47aと端面56aとのZ方向の位置関係を、開口部47aの中心位置Ozが、端面56aの中心位置よりも上方側で、かつ、端面56aの上辺56aaよりも下方側に位置させる。これにより、開口部47aからのインクの噴流力が、回動部材48を回動させるための押圧力として効率的に作用する。このため、この場合には、インクの増粘が進んでいても、回動部材48を確実に回動することができるようになる。
【0038】
以上において説明したように、第1実施形態による記録装置10では、インク貯留室38における接続部材47の開口部47aから流入するインクが、回動部材48のフロート56の端面56aにあたるようにした。これにより、インク収納部材36を交換する際に、開口部47aから流入するインクの噴流力によって、回動部材48を、端面56aを介して押圧することとなり、回動部材48を回動させることができる。このため、回動部材48を回動可能に支持する軸62周り、回動部材48とインク貯留室38の底面38aとの当接部分の周りなどに生じた増粘インクを拡散することができるようになる。こうした増粘インクの拡散によって、軸62周りや上記当接部分の周りには固着インクが生じ難くなる。従って、軸62周りや上記当接部分に生じた増粘インクや固着インクにより回動部材48の回動が阻害されることを抑制することができる。このように、記録装置10では、回動部材48の回動を阻害するような増粘インクや固着インクの発生によって、インク残量の検知機能が低下することを抑制することができるようになる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、
図6を参照しながら、第2実施形態による液体吐出装置について説明する。なお、以下の説明においては、上記第1実施形態と同様に、記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録装置を例として説明する。また、上記第1実施形態による記録装置と同一または相当する構成については、同一の符号を用いることにより、その詳細な説明は適宜に省略する。
【0040】
第2実施形態による記録装置10は、インク貯留室38内に流入する際のインクの噴流力を増大させるようにした点において、上記実施形態による記録装置と異なっている。
図6は、第2実施形態による記録装置におけるインク貯留室38の、
図4(b)に対応する図である。
図6(a)は、開口部47aから流入するインクの噴流力を増大させる構成の一例を示す図であり、
図6(b)は、当該構成の他の例を示す図である。
【0041】
具体的には、第2実施形態による記録装置10は、開口部47aからインク貯留室内部に延在するように設けられたノズル部70を有している。ノズル部70は、フロート56の端面56aに向かって断面積が連続的に小さくなっている(
図6(a)参照)。即ち、ノズル部70は、インクが噴出するノズル口70aが端面56aと対向するテーパ形状となっている。ノズル口70aは、開口部47aの開口面積よりも小さい。これにより、ノズル部70のノズル口70aからインク貯留室38内に流入するインクは、開口部47aからインク貯留室38内に流入するインクに比べて、流入時の流速が大きくなり、インクの噴流力が増大する。そして、この増大した噴流力によって、端面56aへの押圧力が増大し、回動部材48をより確実に矢印A方向に回動させることができるようになる。
【0042】
また、第2実施形態による記録装置10では、接続部材47の内径が、インク収納部材36における供給部44に挿入される他方の端部から、開口部47aが位置する一方の端部に向かって、連続的に小さくなるようにしてもよい(
図6(b)参照)。なお、他方の端部から所定位置まで同程度の内径とし、所定位置から一方の端部に向かって連続的に内径が小さくなるようにしてもよい。これにより、開口部47aから流入するインクの噴流力は、接続部材47の内径が一方の端部から他方の端部まで変化しない場合よりも大きくなる。このため、端面56aへの押圧力が増大し、回動部材48をより確実に矢印A方向(
図2(a)参照)に回動させることができるようになる。
【0043】
以上において説明したように、第2実施形態による記録装置10では、インク貯留室38内に流入するインクの噴流力を増大させるようにした。具体的には、開口部47aにおいて、端面56aに向かって断面積が小さくなるテーパ形状のノズル部70を備えるようにした。また、筒形状の接続部材47の内径(内部のインク流路の直径)を、インク収納部材36に接続される側の他方の端部から、開口部47aが位置する一方の端部に向かって、連続的に小さくなるようにした。これにより、上記第1実施形態による記録装置よりも、より確実に回動部材48を回動することができるようになり、インク残量の検知機能の低下をより確実に抑制することができるようになる。
【0044】
(第3実施形態)
次に、
図7を参照しながら、第3実施形態による液体吐出装置について説明する。なお、以下の説明においては、上記第1実施形態と同様に、記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録装置を例として説明する。また、上記第1実施形態による記録装置と同一または相当する構成については、同一の符号を用いることにより、その詳細な説明は適宜に省略する。
【0045】
図7は、第3実施形態による記録装置におけるインク貯留室38の、
図4(b)に対応する図である。第3実施形態による記録装置10は、
図7のように、フロート56の端面56aの面積を大きくした点において上記実施形態による記録装置と異なっている。
【0046】
具体的には、第3実施形態による記録装置10では、フロート56の端面56aの面積を、フロート56において端面56aと対向する端面56bよりも大きくする(
図7において、フロート56のZ方向の形状は同じである)。より詳細には、端面56aは、
図7のように、端面56bから端面56aに向かって連続的に断面積が大きくなるなっている。端面56aは、少なくとも端面56bよりもX方向の長さが長くなっている。なお、X方向だけでなくZ方向についても端面56aの方が端面56bより長くなるようにしてもよい。これにより、開口部47aから流入したインクを確実に端面56aで受けるようになり、当該インクの噴流力の大部分を端面56で受け止めることができるようになる。このため、確保できる端面56aへの押圧力が大きくなり、回動部材48をより確実に矢印A方向(
図2(a)参照)に回動させることができるようになる。
【0047】
以上において説明したように、第3実施形態による記録装置10では、端面56aの面積を大きくして、開口部47aからのインクの噴流力をより確実に受けることができるようにした。これにより、フロート56の端面56aと端面56bとの面積が同等の場合よりも、より確実に回動部材48を回動することができるようになり、インク残量の検知機能の低下をより確実に抑制することができるようになる。
【0048】
(第4実施形態)
次に、
図8を参照しながら、第4実施形態による液体吐出装置について説明する。なお、以下の説明においては、上記第1実施形態と同様に、記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録装置を例として説明する。また、上記第1実施形態による記録装置と同一または相当する構成については、同一の符号を用いることにより、その詳細な説明は適宜に省略する。
【0049】
図8は、第4実施形態による記録装置におけるインク貯留室38の回動部材48を示す図である。第4実施形態による記録装置10は、
図8のように、端面56aについて、その上方側が、下方側よりもより開口部47aが位置する壁面に近くなるように傾斜して形成されるようにした点において、上記実施形態による記録装置と異なっている。
【0050】
具体的には、第4実施形態による記録装置10において、インク貯留室38におけるインクの液面の高さが所定位置よりも低いとする。このとき、フロート56の端面側(端面56a)は、インク貯留室38の底面38aと当接した状態になっている。このときに、端面56aが、上方側が下方側よりも、より開口部47aが位置するインク貯留室38の壁面に近くなるように傾斜している。即ち、インク貯留室38におけるインクの液面の高さが所定位置よりも低いときには、端面56aと底面38aとのなす角度θは、鋭角になるよう設計されている。なお、角度θについては、例えば、フロート56を形成する材料の特性、貯留するインクの特性などに応じて設定される。
【0051】
これにより、開口部47aから流入したインクによる噴流力が傾斜した端面56aを伝わり、フロート56を上方側に持ち上げる力が生じる。このため、回動部材48を確実に矢印A方向(
図2(a)参照)に回動させることができるようになる。なお、この場合、例えば、端面56aを、X方向において両端部から中心に向かって端面56b側に凹んだ略V字状の谷形状としてもよい。これにより、インクの噴流量をX方向の中心部分に集めて、より効果的に上流側に生じる力を得ることができるようになる。
【0052】
以上において説明したように、第4実施形態による記録装置10では、端面56aを、インクの液面の高さが所定位置よりも低いときに、端面56aと底面38aとのなす角度θが鋭角となるようにした。これにより、開口部47aからのインクの噴流力によりフロート56を持ち上げる力が生じ、回動部材48を回動し易くなり、インク残量の検知機能の低下をより確実に抑制することができるようになる。
【0053】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下(1)乃至(4)に示すように変形してもよい。
【0054】
(1)上記実施形態では、回動部材48とセンサ52とによって、インク貯留室38に貯留されたインクの液面の高さが所定位置以上であるか否かを判定するようにしたが、インク貯留室38におけるインク残量を検知する構成は、これに限定されるものではない。即ち、基準位置からの回動部材48の回動角度を検知可能なセンサを設け、回動部材48の回動角度に基づいてインク貯留室38に貯留されたインクの残量を、段階的または連続的に検知する構成としてもよい。
【0055】
(2)本発明は、インクを吐出して記録媒体に記録する記録装置のみに適用されるものではなく、液体吐出ヘッドから種々の液体を吐出する液体吐出装置として広く適用可能である。また、上記実施形態では、記録装置10を、Y方向に搬送される記録媒体に対して、X方向に移動する記録ヘッドからインクを吐出する、所謂、シリアルスキャンタイプの記録装置としたが、これに限定されるものではない。即ち、記録媒体における記録領域の幅方向全域に亘る長尺な記録ヘッドを用いる、所謂、フルラインタイプの記録ヘッドとしてもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、フロート56の端面56aにおいて、開口部47aから流入するインクを受けるようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、開口部47aから流入するインクの噴流力によって、回動部材48を回動可能であれば、アーム部58や被検知部60などの端面56a以外の所定面において、開口部47から流入するインクを受けるようにしてもよい。
【0057】
(4)上記実施形態および上記(1)乃至(3)に示す各種の形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 記録装置
26 記録ヘッド
36 インク収納部材
38 インク貯留室
47a 開口部
48 回動部材
52 センサ