(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-08
(45)【発行日】2024-07-17
(54)【発明の名称】冷却装置、冷却装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 37/15 20060101AFI20240709BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240709BHJP
H01M 10/613 20140101ALN20240709BHJP
H01M 10/6567 20140101ALN20240709BHJP
H01M 10/6556 20140101ALN20240709BHJP
【FI】
B21C37/15 C
B23K26/21 N
H01M10/613
H01M10/6567
H01M10/6556
(21)【出願番号】P 2020073087
(22)【出願日】2020-04-15
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-106633(JP,A)
【文献】特開2001-272188(JP,A)
【文献】特表2020-510534(JP,A)
【文献】特開2008-207190(JP,A)
【文献】特開2001-062575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/15
B23K 26/21
H01M 10/613
H01M 10/6567
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の第1部と、
前記第1部と所定距離以上隔てて対向し、当該第1部との間に流体が流通する流路を形成する平板状の第2部と、
前記第1部における前記第2部側の面から当該第2部側に突出して当該第2部における当該第1部側の面に繋がるように当該第1部と当該第2部との間に設けられて、当該第1部と当該第2部との間の前記流路を区画する複数の区画壁と、
前記複数の区画壁にて区画された前記流路を連通する連通部と、
を有し、
前記第1部と前記第2部とは、互いの距離が前記所定距離未満である平坦部を有し、
前記平坦部は、前記第1部または前記第2部のいずれか一方を貫通するとともに他方に至る溶接部を有
し、
前記平坦部は、前記第1部と前記第2部における、前記区画壁による流通方向の端部に設けられ、
前記溶接部は、前記複数の区画壁の並び方向に延び、前記流通方向には延びていない
冷却装置。
【請求項2】
前記複数の区画壁の内の、当該複数の区画壁の並び方向における端部に設けられた区画壁の流通方向の端部は、中央部に設けられた区画壁の当該流通方向の端部よりも前記平坦部に近い
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1部には、外部と前記連通部とを連通するように前記流路における前記流体の流通方向と交差する方向の連通孔が形成されている
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1部に重ね合わされて前記連通孔の開口部を覆うカバーを有し、
前記平坦部は、前記第1部を貫通するとともに前記第2部に至る溶接部を有し、
前記第1部と前記カバーとの重ね合わせ部は、前記カバーを貫通するとともに前記第1部に至る溶接部を有する
請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
平板状の第1部と、当該第1部と対向する第2部との間である内部に区画壁にて区画された複数の流路を形成するように押出加工を施す押出工程と、
前記押出工程にて成形された押出材における前記区画壁の一部を取り除く工程と、
前記押出材の押出方向における端部を潰す工程と、
前記潰す工程にて潰された部位を溶接する溶接工程と、
を備え、
前記潰す工程は、前記第1部と前記第2部との距離が近接する平坦部を形成し、
前記溶接工程は、前記平坦部における前記第1部または前記第2部のいずれか一方の面に対して、当該一方の面に直交する方向または当該直交する方向に対して傾斜した方向にレーザ光を照射
しながら、レーザヘッドを前記複数の流路の並び方向に移動させる
冷却装置の製造方法。
【請求項6】
前記取り除く工程は、前記端部の外部から、前記押出方向に切削工具を移動させることで前記区画壁を削る
請求項5に記載の冷却装置の製造方法。
【請求項7】
前記取り除く工程は、前記押出方向に交差する方向に切削工具を移動させることで前記区画壁を削る
請求項5に記載の冷却装置の製造方法。
【請求項8】
前記取り除く工程にて形成された、外部と前記流路とを連通する連通孔を覆うカバーを、前記押出材に重ね合わせた状態で、前記カバーに対してレーザ光を照射することでレーザ溶接にて接合する工程を有し、
前記平坦部および前記カバーに対して同じ方向からレーザ光を照射する
請求項7に記載の冷却装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、押出加工品、冷却装置の製造方法、および、押出加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された冷却装置は、以下のように構成されている。すなわち、冷却装置は、長方形の扁平板状であり、かつ水平状態に配置される冷却液流通体と、冷却液流通体の長手方向の一端に幅方向に並んだ入口ヘッダおよび出口ヘッダと、冷却液流通体の長手方向の他端に全幅にわたって接合された中間ヘッダと、を備えている。冷却液流通体はアルミニウム押出形材製であり、冷却液流通体には、長手方向にのびかつ両端が開口した複数の冷却液通路が、仕切壁を介して並列状に形成されている。全冷却液通路のうち冷却液流通体の片側に連続して並んで形成された複数の通路が流入側通路となるとともに、冷却液流通体の他側に連続して並んで形成された複数の残りの通路が流出側通路となっている。中間ヘッダは、アルミニウム製であり、空隙部が全流入側通路および全流出側通路に通じるようにろう付されており、中間ヘッダの空隙部によって流入側通路と流出側通路とが連通させられている。そして、冷却液流通体と中間ヘッダとはろう材により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
組立工数の減少、部品管理の容易化の観点からは、冷却装置を構成する部品の数は少ない方が望ましい。
本発明は、部品の数を少なくすることができる冷却装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、平板状の第1部と、前記第1部と所定距離以上隔てて対向し、当該第1部との間に流体が流通する流路を形成する平板状の第2部と、を有し、前記第1部と前記第2部とは、互いの距離が前記所定距離未満である近接部位を有し、当該近接部位に溶接が施されることにより固着している冷却装置である。
ここで、前記第1部および前記第2部の少なくともいずれかに対して、プレス加工が施されることで前記近接部位が成形されても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、押出加工が施されることにより押出方向の複数の貫通孔を有する直方体状に形成された後に、当該複数の貫通孔間に設けられて当該貫通孔を区画する区画壁の一部が取り除かれて当該複数の貫通孔に連通する連通部が形成されるとともに、当該押出方向における端部が潰された後に、潰された部位に溶接が施されることにより固着している押出加工品である。
ここで、前記区画壁は、前記端部が潰される前に、前記押出方向と同じ方向から切削されることにより取り除かれていても良い。
また、前記区画壁は、前記押出方向に交差する方向から切削されることにより取り除かれていても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、押出加工が施されることにより押出方向に貫通孔が形成された後、当該貫通孔の開口部が塞がれるように当該押出方向における端部が潰された後に、潰された部位に溶接が施されることにより固着している押出加工品である。
また、前記端部は、プレス加工が施されることで潰されても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、押出加工が施されることにより押出方向の複数の貫通孔を有する直方体状に形成された後に、当該複数の貫通孔間に設けられて当該貫通孔を区画する区画壁の一部が取り除かれて当該複数の貫通孔に連通する連通部が形成されるとともに、当該押出方向における端部が潰された後に、潰された部位に溶接が施されることにより固着しており、かつ、当該連通部と外部とを連通するように当該押出方向と交差する方向の連通孔が形成された冷却部材と、前記冷却部材に対して溶接にて接合されることにより前記連通孔の開口部を覆う被接合部材と、を備える冷却装置である。
ここで、前記潰された部位に施される溶接および前記被接合部材に施される溶接は、レーザ溶接であり、当該潰された部位および当該被接合部材に対して同じ方向からレーザ光が照射されても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、内部に区画壁にて区画された複数の流路を形成するように押出加工を施す押出工程と、前記押出工程にて成形された押出材における前記区画壁の一部を取り除く工程と、前記押出材の押出方向における端部を潰す工程と、前記潰す工程にて潰された部位を溶接する溶接工程と、を備える冷却装置の製造方法である。
ここで、前記取り除く工程は、前記端部の外部から、前記押出方向に切削工具を移動させることで前記区画壁を削っても良い。
あるいは、前記取り除く工程は、前記押出方向に交差する方向に切削工具を移動させることで前記区画壁を削っても良い。
また、前記取り除く工程にて形成された、外部と前記流路とを連通する連通孔を覆うカバーを、前記押出材にレーザ溶接にて接合する工程を有し、前記潰された部位に施される溶接は、レーザ溶接であり、当該潰された部位および前記カバーに対して同じ方向からレーザ光を照射しても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、貫通孔を形成するように押し出し加工を施す押出工程と、前記押出工程にて成形された押出材における前記貫通孔を塞ぐように当該押出材における押出方向の端部を潰す工程と、前記潰す工程にて潰された部位を溶接する工程と、を備える押出加工品の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、部品の数を少なくすることができる冷却装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る液冷式冷却装置の斜視図である。
【
図2】液冷式冷却装置を構成する部品を分解した図である。
【
図5】装置本体を製造する方法の一例を示す図である。
【
図6】装置本体を製造する方法の一例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る装置本体を製造する方法の一例を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る液冷式冷却装置を構成する部品を分解した図である。
【
図9】第2の実施形態に係る液冷式冷却装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る液冷式冷却装置1の斜視図である。
図2は、液冷式冷却装置1を構成する部品を分解した図である。
図3は、
図1のIII-III部の断面図である。
図4は、
図1のIV-IV部の断面図である。
第1の実施形態に係る液冷式冷却装置1は、内部に冷却液が流通する装置本体10と、装置本体10の外部から内部に冷却液を流入させる入口ジョイント30と、装置本体10の内部から外部に冷却液を流出させる出口ジョイント40と、を備えている。
【0009】
(装置本体10)
装置本体10は、概形が直方体の部材である。装置本体10は、押出加工にて成形された、JIS A6063合金の押出材を用いて成形されており、押出方向が長手方向となるように成形されている。また、
図1に示すように、装置本体10の長手方向および短手方向の長さは、上下方向の長さよりも大きい。なお、JIS A6063合金の質別は、T0又はT6であることを例示することができる。また、その他の質別であっても良いが、装置本体10の硬さが、42(HV(ビッカース硬さ))以上であることが望ましい。
【0010】
装置本体10の内部には、長手方向に延びて冷却液が流通する複数の流路11と、長手方向における一方の端部および他方の端部それぞれにおいて、複数の流路11を互いに連通させる連通部15と、が形成されている。
流路11は、
図4に示すように、短手方向の中央部よりも手前側と、中央部よりも奥側とに、それぞれ6個形成されている。
【0011】
手前側の6個の流路11は、入口ジョイント30を介して流入し、連通部15に至る前の冷却液が流通する流入側流路111として機能する。隣り合う流入側流路111は、流入側壁111aにより仕切られている。6個の流入側流路111の内の4個の流入側流路111は、平板状の上壁13、平板状の下壁14、および、隣り合う2つの流入側壁111aにより区画されている。
【0012】
他方、奥側の6個の流路11は、連通部15を通過後に流入し、出口ジョイント40に至る前の冷却液が流通する流出側流路112として機能する。隣接する流出側流路112は、流出側壁112aにより仕切られている。6個の流出側流路112の内の4個の流出側流路112は、上壁13、下壁14、および、隣り合う2つの流出側壁112aにより区画されている。
連通部15は、押出加工にて成形された押出材にあった流入側壁111aおよび流出側壁112aが除去されることで形成された空間である。除去方法については後で詳述する。
【0013】
また、装置本体10には、長手方向における中央部に、上面から凹んだ空間12が2つ形成されている。2つの空間12の内の一つは、流入側流路111と連通するように形成された流入側空間121であり、他方は、流出側流路112と連通するように形成された流出側空間122である。
流入側空間121は、押出加工にて成形された押出材にあった上壁13および流入側壁111aの一部が例えば切削加工にて上壁13が貫通された貫通孔121aと、流入側壁111aが除去された下部空間121bとにより形成される。なお、
図2に示した例では、流入側壁111aは、上側から下側にかけて全て除去されているが、上側の一部が除去され、下側の部分が残っていても良い。
流出側空間122は、上壁13および流出側壁112aが例えば切削加工にて除去されることで形成された空間であり、上壁13が貫通された貫通孔122aと、流出側壁112aが除去された下部空間122bとにより形成される。なお、
図2に示した例では、流出側壁112aは、上側から下側にかけて全て除去されているが、上側の一部が除去され、下側の部分が残っていても良い。
【0014】
また、装置本体10は、長手方向の両端部それぞれに、上壁13および下壁14の少なくともいずれかが潰されることにより形成された平坦部17が設けられている。平坦部17の形成方法については後で詳述する。
【0015】
(入口ジョイント30)
入口ジョイント30は、円筒状であり中心線方向が上下方向となるように配置される入口パイプ31と、入口パイプ31を保持する保持部材32とを有している。
【0016】
入口パイプ31は、上端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した上端側突出部311と、下端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した下端側突出部312とを有している。
入口パイプ31における、下端側突出部312よりも下端側の部分が、保持部材32に形成された後述する貫通孔321に挿入されている。
保持部材32は、概形が板状の直方体の部材であり、中央部に円形の貫通孔321が形成されている。保持部材32は、JIS A3003合金の板材を用いて成形されている。なお、JIS A3003合金の質別は、質別H12又は質別H18であることを例示することができる。また、その他の質別であっても良いが、保持部材32の硬さが、35(HV)以上であることが望ましい。
【0017】
入口パイプ31は、下端側突出部312よりも下端側の部分が、保持部材32に形成された貫通孔321に挿入された状態でろう付されている。下端側突出部312における最外径部と保持部材32との間には、溶融したろう材からなるフィレット33が形成されている。
【0018】
そして、入口ジョイント30は、入口パイプ31の下端部が装置本体10の流入側空間121に挿入され、保持部材32の下端面が装置本体10の上面に載せられた状態(保持部材32と装置本体10とを重ね合わせた状態)で、レーザ溶接が施されることにより接合されている。
【0019】
(出口ジョイント40)
出口ジョイント40は、入口ジョイント30と同様の部材であり、円筒状であり中心線方向が上下方向となるように配置される出口パイプ41と、出口パイプ41を保持する保持部材42とを有している。
【0020】
出口パイプ41は、上端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した上端側突出部411と、下端寄りの部分に設けられた、径方向外側に全周に亘って突出した下端側突出部412とを有している。
出口パイプ41における、下端側突出部412よりも下端側の部分が、保持部材42に形成された後述する貫通孔(不図示)に挿入されている。
保持部材42は、概形が板状の直方体の部材であり、中央部に円形の貫通孔(不図示)が形成されている。保持部材42は、保持部材32と同様に、JIS A3003合金の板材を用いて成形されている。なお、JIS A3003合金の質別は、質別H12又は質別H18であることを例示することができる。また、その他の質別であっても良いが、保持部材42の硬さが、35(HV)以上であることが望ましい。
【0021】
出口パイプ41は、下端側突出部412よりも下端側の部分が、保持部材42に形成された貫通孔(不図示)に挿入された状態でろう付されている。下端側突出部412における最外径部と保持部材42との間には、溶融したろう材からなるフィレット43が形成されている。
【0022】
そして、出口ジョイント40は、出口パイプ41の下端部が装置本体10の流出側空間122に挿入され、保持部材42の下端面が装置本体10の上面に載せられた状態(保持部材42と装置本体10とを重ね合わせた状態)で、レーザ溶接が施されることにより接合されている。
【0023】
(液冷式冷却装置1の作用)
以上のように構成された液冷式冷却装置1には、装置本体10の上面であって、入口ジョイント30および出口ジョイント40が設けられた部位よりも長手方向の外側に、この液冷式冷却装置1により冷却される被冷却物が載せられる。被冷却物は、複数の直方体状の単電池51からなる組電池50であることを例示することができる。
【0024】
そして、液冷式冷却装置1においては、入口ジョイント30の入口パイプ31から装置本体10の流入側空間121内に流入した冷却液が、流入側流路111を通って連通部15に至る。連通部15に至った冷却液は、その後、流出側流路112を通って流出側空間122に至り、出口ジョイント40の出口パイプ41から流出する。このようにして、冷却液が、装置本体10の流入側流路111および流出側流路112を流通する間に、装置本体10の上面に載せられた組電池50を冷却する。
【0025】
(液冷式冷却装置1の製造方法)
以上のように構成された液冷式冷却装置1は、以下のようにして製造される。
先ず、装置本体10を製造する方法について説明する。
図5、
図6は、装置本体10を製造する方法の一例を示す図である。
図5(a)は、押出工程の一例を示す図である。
先ず、
図5(a)に示すように、押出加工を施すことにより押出方向の複数の貫通孔160を有する押出材150を成形する。以下、この工程を、押出工程と称する場合がある。
図5(b)は、押出材150における、長手方向および短手方向に平行な平面で切断した断面図の一例である。
【0026】
押出材150は、押出方向が長手方向となる直方体であり、平板状の第1部151と、第1部151と所定距離以上隔てて対向する平板状の第2部152とを有する。第1部151と第2部152との間には、短手方向の中央に中央壁170が形成されている。また、押出材150には、中央壁170よりも手前側(
図5では下側)に6個の貫通孔160が形成され、中央壁170よりも奥側(
図5では上側)に6個の貫通孔160が形成されている。そして、互いに隣り合う貫通孔160間には区画壁161が形成されている。
【0027】
図5(c)は、除去工程の一例を示す図である。
図5(d)は、押出材150における、長手方向および短手方向に平行な平面で切断した断面図の一例である。
押出工程の後に、
図5(c)に示すように、円板状で外周部に歯が形成された切削工具195を回転させながら長手方向に移動させることで、押出材150に形成された中央壁170および区画壁161の一部を除去する。以下、この工程を、除去工程と称する場合がある。切削工具195の厚さ(上下方向(
図5では紙面に直交する方向)の大きさ)は、第1部151と第2部152との間の距離である所定距離よりも小さい。
【0028】
除去工程を行うことにより、
図5(d)に示すように、押出材150の長手方向における両端部それぞれに設けられていた中央壁170および区画壁161であって、切削工具195の歯が接触した部分が除去される。中央壁170および区画壁161の長手方向における端部が除去されることで、押出材150内に、12個の貫通孔160を連通する連通部180が形成される。
なお、
図5(d)に示した例では、中央壁170および区画壁161は、上下方向において、第1部151と第2部152との間の全てが除去されているが、特にかかる態様に限定されない。12個の貫通孔160を連通する空間が形成されるのであれば、中央壁170および区画壁161は、上下方向の一部が残っていても良い。
【0029】
図6(a)は、プレス工程の一例を示す図である。
図6(b)は、プレス工程が施された後の押出材150の形状を示す図である。
図6(a)、
図6(b)は、押出材150を、短手方向に見た図である。
除去工程の後、
図6(a)に示すように、押出材150における長手方向の端部に対して、上方向および下方向から力を加えることにより、端部を潰して平坦部190を形成する。以下、この工程を、プレス工程と称する場合がある。なお、
図6(a)には、上方向および下方向から力を加える態様を例示しているが、特にかかる態様に限定されない。例えば、上方向または下方向のいずれか一方から力を加えることで押出材150の端部を潰しても良い。
【0030】
図6(c)は、溶接工程の一例を示す図である。
図6(c)は、押出材150を、短手方向に見た図である。
プレス工程の後、
図6(c)に示すように、プレス工程にて形成された平坦部190に対してレーザ光Lを照射することでレーザ溶接を行う。レーザ溶接を行う際、レーザ光Lを照射しながら、レーザヘッド196を短手方向に移動させることで連続的に照射する。これにより、第1部151と第2部152とが固着する。
【0031】
なお、レーザ装置のレーザ源は特に限定されない。YAGレーザ、CO2レーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ、半導体レーザであることを例示することができる。また、レーザ光Lの照射方向は、平坦部190の面に対して直交する方向でも良いし、直交方向に対して傾斜した方向であっても良い。
また、溶接工程にて溶接する手法は、レーザ溶接に限定されない。アーク溶接、ガス溶接等の他の溶接手法を用いても良い。
【0032】
押出加工にて成形された押出材150に対して、除去工程、プレス工程、溶接工程が施されるとともに、例えば切削加工を施すことで2つの空間12が形成されることにより装置本体10が製造される。
つまり、除去工程、プレス工程、溶接工程が施されるとともに、2つの空間12が形成された後の押出材150が装置本体10に相当する。そして、第1部151、第2部152が、それぞれ、上壁13、下壁14に相当する。また、貫通孔160が、流入側流路111、流出側流路112に相当し、区画壁161が、流入側壁111a、流出側壁112aに相当する。また、連通部180が連通部15に相当し、平坦部190が平坦部17に相当する。
【0033】
2つの空間12を形成する工程は、例えば円柱状の切削工具を、上下方向、長手方向および短手方向に移動させて、第1部151および区画壁161の一部を除去する工程であることを例示することができる。この2つの空間12を形成する工程は、上述した除去工程の前であっても良いし、溶接工程の後であっても良い。また、2つの空間12を形成する工程は、上述した除去工程とプレス工程との間であっても良い。
【0034】
以上のようにして装置本体10を製造した後、装置本体10の流入側空間121に、入口ジョイント30の入口パイプ31の下端部を挿入し、入口ジョイント30の保持部材32の下端面を装置本体10の上面に載せる(保持部材32と装置本体10とを重ね合わせる)。そして、保持部材32と装置本体10とを重ね合わせた状態で、保持部材32に対してレーザ光を照射し、入口パイプ31の周囲にレーザ光を連続的に照射していく。このようにして、装置本体10における中央部に、入口ジョイント30を、レーザ溶接にて接合する。
【0035】
同様に、装置本体10の流出側空間122に、出口ジョイント40の出口パイプ41の下端部を挿入し、出口ジョイント40の保持部材42の下端面を装置本体10の上面に載せる(保持部材42と装置本体10とを重ね合わせる)。そして、保持部材42と装置本体10とを重ね合わせた状態で、保持部材42に対してレーザ光を照射し、出口パイプ41の周囲にレーザ光を連続的に照射していく。このようにして、装置本体10における中央部に、出口ジョイント40を、レーザ溶接にて接合する。
【0036】
なお、装置本体10を完成させるにあたって、平坦部190へレーザ光Lを照射するために押出材150を固定した状態で、平坦部190をレーザ溶接するとともに、入口ジョイント30と、出口ジョイント40とをレーザ溶接にて接合しても良い。これにより、液冷式冷却装置1を製造するのに要する時間を短くすることができる。
【0037】
以上、説明したように、液冷式冷却装置1の装置本体10は、平板状の上壁13(第1部151)と、上壁13と所定距離以上隔てて対向し、上壁13との間に流体が流通する流路11を形成する平板状の下壁14(第2部152)と、を有する。そして、上壁13と下壁14とは、互いの距離が所定距離未満である近接部位の一例としての平坦部17(平坦部190)を有し、平坦部17に溶接が施されることにより固着している。これにより、例えば、流路11の開口部を塞ぐために他の部品を用いる場合よりも、部品の数を少なくすることができる。また、平坦部17に溶接を施すことにより固着するので、例えば流路11の開口部を塞ぐための他の部品を溶接する際に、異なる2面に合わせて溶接ヘッドを回転させる等を行わなければならない構成よりも、簡易に溶接することができる。また、溶接品質も安定する。また、溶接の熱影響部を小さくすることができるので、溶接による強度低下を少なくすることができる。
【0038】
また、液冷式冷却装置1の装置本体10の製造方法は、内部に区画壁161にて区画された複数の貫通孔160(流路11)を形成するように押出加工を施す押出工程と、押出工程にて成形された押出材150における区画壁161の一部を取り除く工程と、押出材150の押出方向における端部を潰す工程の一例としてのプレス工程と、プレス工程にて潰された部位の一例としての平坦部190を溶接する溶接工程と、を備える。かかる製造方法により、例えば、押出工程にて成形された押出材150の複数の貫通孔160(装置本体10の流路11)を互いに連通させるための部品を別途必要としないので、液冷式冷却装置1を構成する部品の数を少なくすることができる。また、たとえ、上壁13(第1部151)と下壁14(第2部152)との間の距離のバラツキが大きくても、プレス工程にて両者のクリアランスが小さくなるため、両者を確度高く固着することができる。また、溶接品質が安定する。また、平坦部190を溶接するため、溶接距離も短くすることが可能となる。
【0039】
また、上述した装置本体10は、押出加工が施されることにより押出方向の複数の貫通孔160を有する直方体状に形成された後に、複数の貫通孔160間に設けられて貫通孔160を区画する区画壁161の一部が取り除かれて複数の貫通孔160に連通する連通部180が形成されるとともに、押出方向における端部が潰された後に、潰された部位である平坦部190に溶接が施されることにより固着している押出加工品の一例である。この押出加工品を用いることにより、例えば、複数の貫通孔160を連通するために他の部品を用いる場合よりも、部品の数を少なくすることができる。
【0040】
また、上述した装置本体10は、押出加工が施されることにより押出方向に貫通孔160が形成された後、貫通孔160の開口部が塞がれるように当該押出方向における端部が潰された後に、潰された部位である平坦部190に溶接が施されることにより固着している押出加工品の一例である。この押出加工品を用いることにより、例えば、貫通孔160の開口部を塞ぐために他の部品を用いる場合よりも、部品の数を少なくすることができる。なお、貫通孔160が1つである場合であっても良く、例えば、箱形の押出加工品であっても良い。
【0041】
なお、上述した第1の実施形態に係る液冷式冷却装置1においては、流入側空間121および流出側空間122が、装置本体10の長手方向における中央部に形成され、入口ジョイント30および出口ジョイント40が、装置本体10の長手方向における中央部に設けられているが、特にかかる態様に限定されない。流入側空間121および流出側空間122は、装置本体10の長手方向における、一方の端部または他方の端部に形成され、入口ジョイント30および出口ジョイント40は、装置本体10の長手方向における、一方の端部または他方の端部に設けられていても良い。例えば、流入側空間121および流出側空間122は、それぞれ、一方の端部または他方の端部に形成された連通部15よりも、中央部側に形成されていても良い。また、装置本体10の長手方向における一方の端部または他方の端部のいずれかの端部にのみ連通部15を形成し、連通部15を形成しないもう一つの端部に流入側空間121および流出側空間122を形成しても良い。
【0042】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る液冷式冷却装置2は、第1の実施形態に係る液冷式冷却装置1に対して、装置本体10に相当する装置本体210の形状が異なる。以下、第1の実施形態と異なる点について説明する。第1の実施形態と第2の実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図7は、第2の実施形態に係る装置本体210を製造する方法の一例を示す図である。
第2の実施形態に係る装置本体210の製造方法は、中央壁170および区画壁161を除去して、12個の貫通孔160を連通する連通部280を形成する手法が、第1の実施形態に係る装置本体10の製造方法と異なる。
【0044】
図7(a)は、第2の実施形態に係る除去工程が施された後の、押出材150における、長手方向および短手方向に平行な平面で切断した断面図の一例である。
第2の実施形態に係る除去工程においては、
図5(a)を用いて説明したようにして成形された押出材150に対して、例えば円柱状の切削工具を、上下方向、長手方向および短手方向に移動させて、第1部151、中央壁170および区画壁161の一部を除去して、連通部280を形成する。その際、第1部151に、外部と連通部280とを連通する上下方向の連通孔281(
図7(b)参照)が形成される。
【0045】
図7(b)は、第2の実施形態に係るプレス工程の一例を示す図である。
図7(c)は、プレス工程が施された後の押出材150の形状を示す図である。
図7(b)、
図7(c)は、押出材150を、短手方向に見た図である。
除去工程の後、第1の実施形態と同様に、プレス工程を行う。つまり、
図7(b)に示すように、押出材150における長手方向の端部に対して、上方向および下方向から力を加えることにより、端部を潰して平坦部290(
図7(c)参照)を形成する。
そして、第1の実施形態と同様に、プレス工程の後、平坦部290に対してレーザ光Lを照射することでレーザ溶接を行い、第1部151と第2部152とを固着する。
【0046】
以上、説明したように、押出加工にて成形された押出材150に対して、除去工程、プレス工程、溶接工程が施されるとともに2つの空間12が形成されることにより装置本体210が製造される。そして、装置本体210が上述のように製造されることで、装置本体210には、外部と連通部280とを連通する連通孔281が形成される。
【0047】
なお、2つの空間12を形成する工程は、上述した除去工程の前であっても良いし、溶接工程の後であっても良い。また、2つの空間12を形成する工程は、上述した除去工程とプレス工程との間であっても良い。ただし、第2の実施形態に係る製造方法においては、
図7(c)を用いて説明した除去工程を行う際の、押出材150を固定した状態のままで、2つの空間12を形成することで、製造するのに要する時間を短くすることができる。また、押出材150を固定した状態で、押出材150の長手方向の一方の端部に連通部280および連通孔281を形成した後、例えば切削工具を長手方向の中央部に移動させて、2つの空間12を形成した後、さらに例えば切削工具を長手方向の他方の端部に移動させて、他方の端部の連通部280および連通孔281を形成しても良い。
【0048】
図8は、第2の実施形態に係る液冷式冷却装置2を構成する部品を分解した図である。
図9は、第2の実施形態に係る液冷式冷却装置2の断面図である。
液冷式冷却装置2は、装置本体210に形成された連通孔281を覆うカバー250を、装置本体210の長手方向における両端部それぞれに有する。
カバー250は、装置本体210にレーザ溶接にて接合することを例示することができる。例えば、カバー250を装置本体210の上面に載せた状態で、言い換えれば、カバー250と装置本体210とを重ね合わせた状態で、連通孔281の周囲の、カバー250と上壁13とが重なり合っている部分にレーザ光を連続的に照射することで、カバー250と装置本体210とを接合する。
【0049】
また、第2の実施形態に係る液冷式冷却装置2を製造する際には、装置本体210を固定した状態のままで、2つのカバー250と、入口ジョイント30と、出口ジョイント40とをレーザ溶接にて接合することが可能である。これにより、液冷式冷却装置2を製造するのに要する時間を短くすることができる。
また、装置本体210を完成させるにあたって、平坦部290へレーザ光Lを照射するために押出材150を固定した状態で、平坦部290をレーザ溶接するとともに、2つのカバー250と、入口ジョイント30と、出口ジョイント40とをレーザ溶接にて接合しても良い。このとき、平坦部290へのレーザ光Lの照射、カバー250へのレーザ光Lの照射、入口ジョイント30へのレーザ光Lの照射、出口ジョイント40へのレーザ光Lの照射を、同じ方向から行うことができる。これにより、液冷式冷却装置2を製造するのに要する時間をさらに短くすることができる。
【0050】
なお、上述した第2の実施形態に係る液冷式冷却装置2においては、流入側空間121および流出側空間122が、装置本体210の長手方向における中央部に形成され、入口ジョイント30および出口ジョイント40が、装置本体10の長手方向における中央部に設けられているが、特にかかる態様に限定されない。流入側空間121および流出側空間122は、装置本体210の長手方向における、一方の端部または他方の端部に形成され、入口ジョイント30および出口ジョイント40は、装置本体10の長手方向における、一方の端部または他方の端部に設けられていても良い。例えば、流入側空間121および流出側空間122は、それぞれ、一方の端部または他方の端部に形成された連通部280よりも、中央部側に形成されていても良い。また、装置本体210の長手方向における一方の端部または他方の端部のいずれかの端部にのみ連通部280を形成し、連通部280を形成しないもう一つの端部に流入側空間121および流出側空間122を形成しても良い。
【符号の説明】
【0051】
1,2…液冷式冷却装置、10,210…装置本体、11…流路、15…連通部、17,190,290…平坦部、30…入口ジョイント、31…入口パイプ、32…保持部材、40…出口ジョイント、41…出口パイプ、42…保持部材、150…押出材、151…第1部、152…第2部、160…貫通孔、161…区画壁、170…中央壁、180,250…カバー、280…連通部、281…連通孔