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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-11
(45)【発行日】2024-07-22
(54)【発明の名称】植物栽培設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20240712BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20240712BHJP
【FI】
A01G31/04 A
A01G31/00 601B
A01G31/00 612
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021082992
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022176513
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2011/125965(JP,A1)
【文献】特開2018-126069(JP,A)
【文献】特開昭63-74429(JP,A)
【文献】特開昭61-268111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0237386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/04
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が1株ずつ収容された複数の容器を搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアによって搬送された容器の少なくとも一部が浸漬される養液を貯留する複数の水槽であって、少なくとも一部の水槽が互いに栽培環境を異にする複数の水槽と、
各植物の状態を判定する判定装置とを備え、
前記搬送コンベアは、前記水槽を介して、植物が収容された容器を循環させることが可能な循環ラインを構成し、
前記判定装置の判定結果に基づき、前記循環ラインによって、植物が収容された各容器を、いずれかの前記水槽に搬送するように構成されたことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
前記搬送コンベアは、さらに、前記循環ラインから分岐して出荷部へ容器を搬送する出荷ラインと、植物が収容された新たな容器を前記循環ラインに搬入する搬入ラインを構成することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項3】
水槽ごとに照明装置が設けられており、前記照明装置の少なくとも一部が互いに光量または光の波長を異にすることを特徴とする請求項1または2に記載の植物栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1株1株の植物をそれぞれ、最適に栽培することができる植物栽培設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、植物を栽培する栽培室の中を複数の栽培エリアに区画し、栽培エリアごとに設けられた給液バルブ(エリア別給液バルブ98)を開いて、各栽培エリアに設けられた多数の栽培ベッドのそれぞれに養液を供給できるように構成された植物栽培設備が開示されている。この植物栽培設備においては、各給液バルブを独立して開閉することによって、栽培エリアごとの養液の供給量および供給時間を管理することができる。
【0003】
一方、特許文献2には、栽培室内の栽培ベッドが日陰に入る時間帯に、植物に日が当たるように、スライドレールを用いて栽培ベッドを移動可能に構成された植物栽培設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-10374号公報
【文献】特開2015-142534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された植物栽培設備においては、養液を供給する給液バルブが栽培エリアごとに設けられているため、栽培ベッド上の個々の植物への養液の供給に過不足が発生し、生長にムラが生じたり、病害が発生するなどの栽培管理上の問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載された植物栽培設備においては、栽培ベッドを日の当たる場所に移動させることができるが、各栽培ベッド上の個々の植物(1株1株の植物)の光合成量を適切に管理することが難しいという問題があった。
【0007】
すなわち、特許文献1および2に記載のいずれの植物栽培設備においても、1株1株の植物を適切に栽培管理することが困難であった。
【0008】
したがって、本発明は、1株1株の植物を適切に栽培管理することができる植物栽培設備を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、
植物が1株ずつ収容された複数の容器を搬送する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアによって搬送された容器の少なくとも一部が浸漬される養液を貯留する複数の水槽であって、少なくとも一部の水槽が互いに栽培環境を異にする複数の水槽と、
各植物の状態を判定する判定装置とを備え、
前記搬送コンベアは、前記水槽を介して、植物が収容された容器を循環させることが可能な循環ラインを構成し、
前記判定装置の判定結果に基づき、前記循環ラインによって、植物が収容された各容器を、いずれかの前記水槽に搬送するように構成されたことを特徴とする植物栽培設備によって達成される。
【0010】
本発明によれば、1株ずつ容器に収容された各植物を、その状態の判定結果に基づき、互いに栽培環境が異なるいずれかの水槽に搬送するように構成されているから、1株1株の植物を適切に栽培管理することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様においては、
前記搬送コンベアは、さらに、前記循環ラインから分岐して出荷部へ容器を搬送する出荷ラインと、植物が収容された新たな容器を前記循環ラインに搬入する搬入ラインを構成している。
【0012】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、循環ラインから分岐した出荷ラインによって、出荷部へ植物を搬送することができるから、出荷までを自動化することができる。
【0013】
また、本発明のこの好ましい実施態様によれば、植物栽培設備が、植物が収容された新たな容器を循環ラインに搬入する搬入ラインを備えているから、出荷され、在庫が少なくなった植物の苗を循環ライン上に補充することができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、水槽ごとに照明装置が設けられており、前記照明装置は少なくとも一部が互いに光量または光の波長を異にしている。
【0015】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、少なくとも一部の水槽の照明装置の光量または波長が互いに異なるように構成されているから、各植物に、その状態に適した人工光を照射することができ、1株1株の植物を適切に栽培管理することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1株1株の植物を適切に栽培管理することができる植物栽培設備を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる植物栽培設備を示す模式図である。
図2図2は、図1に示された矢印αの方向から見た水槽ラインの近傍の模式図である。
図3図3は、図1に示された植物栽培設備の制御系、検出系、および駆動系のブロックダイアグラムである。
図4図4は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる植物栽培設備の水槽の近傍の模式的背面図である。
図5図5(a)は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる植物栽培設備の略側面図であり、図5(b)は、図5(a)に示された実施態様にかかる搬送コンベアの流れを示す略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる植物栽培設備1を示す模式図である。
【0020】
本実施態様にかかる植物栽培設備1は、多数の植物2を一株ごとに容器7に収容し、栽培することができるように構成されている。本実施態様においては、植物2はリーフレタスである。
【0021】
図1に示されるように、植物栽培設備1は、個々の容器7に植物2の種を1つずつ播き、所定の期間にわたって植物2(稚苗)を栽培する育苗装置16と、育苗装置16から搬送された植物2に供給する養液が貯留された5つの水槽21ないし25と、水槽21ないし25を介して、植物2が収容された容器7を循環させるように構成された循環ライン3と、育苗装置16内で栽培された植物2を循環ライン3に搬入する搬入ライン6と、循環ライン3上を搬送される植物2の状態を判定し、診断する診断装置11と、出荷可能な大きさに育った植物2を出荷する出荷部(図示せず)と、循環ライン3と出荷部とを結ぶ出荷ライン4と、植物栽培設備1で栽培される植物2のうち、商品として不適格なもの(以下、「廃棄植物」という。)を廃棄する廃棄部(図示せず)と、循環ライン3から廃棄部に廃棄植物を搬送する搬出ライン5と、植物栽培設備1全体を制御するコントローラ12を備えている。搬入ライン6、循環ライン3、出荷ライン4および搬出ライン5はそれぞれ、搬送コンベアによって構成されている。
【0022】
なお、本実施態様においては、植物2の状態は、外観、内部品質、および病気の有無を指し、診断装置11は、外観として、植物2の葉の色や生長度合いを、内部品質として、植物2の糖度を判定し、さらに、植物2の葉の色に基づいて、病気の有無などを診断するように構成されている。診断装置11は本発明の「判定装置」に相当するものである。
【0023】
本実施態様においては、植物2は、容器7に収容された状態で、5つの水槽21ないし25のうちのいずれかにおいて栽培されるが、1日に1回、所定の時刻に、以下のようにして、循環ライン3上を搬送され、診断装置11によってその状態を判定および診断されて、その結果に基づき、出荷され、もしくは廃棄され、または5つの水槽21ないし25のいずれかに戻されて栽培が継続されるように構成されている。
【0024】
5つの水槽21ないし25は、左右方向に延びる不透明なパネル(図示せず)によって互いに仕切られており、各水槽21ないし25の上方にはそれぞれ、互いに光量または波長を異にする3種類のLED照明31,32および35(図3参照)のうちの一つが設けられている。すなわち、本実施態様においては、LED照明31,32および35から各水槽21ないし25に照射される光の量または波長の違いによって、3種類の異なる栽培環境が形成されている。3種類のLED照明31,32および35は、本発明の「照明装置」に相当するものである。
【0025】
循環ライン3は、図1に示されるように、左右方向に延びる5つの水槽ライン10と、出庫ライン8と、第一の仕分けライン9および第二の仕分けライン19を備え、出庫ライン8は、搬入ライン6と第一の仕分けライン9とを繋ぐとともに、各水槽ライン10と第一の仕分けライン9とを繋いでいる。
【0026】
図2は、図1に示された矢印αの方向から見た水槽ライン10の近傍の模式図である。
【0027】
5つの水槽ライン10は、前後方向(図1参照)に略平行に並んで設けられており、それぞれ、図2に示されるように、5つの水槽21ないし25のいずれかを通過する単一の槽内コンベア14と、その右方(上流側)に位置し、植物2が収容された容器7同士の間隔を調整した上で、左方に位置する槽内コンベア14上に容器7を一斉に搬送する単一のアキュムレーションコンベア13を備えている。
【0028】
本実施態様においては、槽内コンベア14はベルトコンベアによって、出庫ライン8、仕分けライン9,19およびアキュムレーションコンベア13はローラーコンベアによって、それぞれ構成されている。
【0029】
5つの槽内コンベア14は、通過する水槽21ないし25を異にする点を除き、互いに同一に構成されており、それぞれ、図2に示されるように、植物2を容器7ごとに支持し、搬送するベルト40と、ベルト40を回転させる駆動プーリー37および従動プーリー38と、ベルト40にテンションを与え、かつ、各水槽21ないし25内に収容されている養液内にベルト40の一部を浸すテンションプーリー39を備えている。
【0030】
容器7に収容された各植物2は、1日に1回、循環ライン3上を搬送される以外は、テンションプーリー39によって各水槽21ないし25の養液に浸されたベルト40上に保持され、栽培される(図2参照)。
【0031】
ここに、植物2が収容された各容器7の底部には、複数の孔(図示せず)が形成されており、図2に示されるように、ベルト40に載置された各容器7の下部が養液に浸されるまで、駆動プーリー37が回転されると、養液がこれらの孔から容器7内に浸入するため、植物2は、根から養液を吸収することができる。なお、テンションプーリー39は、図1に示されるように、各水槽21ないし25内を通過するベルト40(槽内コンベア14)の前後方向中央部には延びておらず、したがって、ベルト40の前後方向中央部を右方から左方へ搬送される容器7および植物2の搬送を妨げない。
【0032】
1日に1回、所定の時刻になると、コントローラ12は、循環ライン3の駆動を開始する。その結果、各水槽ライン10の槽内コンベア14上の各植物2は、容器7に収容された状態で、槽内コンベア14によって出庫ライン8へ、出庫ライン8から第一の仕分けライン9へと順次に搬送され、第一の仕分けライン9上を搬送される間に、診断装置11によって、その状態、すなわち、植物2の葉の色や成長度合いなどの外観、植物2の糖度などの内部品質が判定され、植物2の葉の色に基づいて、植物2の病気の有無などが診断される。
【0033】
各容器7の側面には、その識別番号がエンコードされた二次元バーコードが記載されており、診断装置11は、二次元バーコードを読取り、識別番号のデータを、各容器7に収容された植物2の状態に関するデータ(すなわち、植物2の葉の色、生長度合い、糖度および病気の有無のデータ)とともに、コントローラ12に出力するように構成されている。
【0034】
診断装置11による判定と診断の結果、病気がなく、所定以上の生長度合いが確認された植物2が収容された容器7は、出荷可能として(換言すれば、コントローラ12によって出荷可能と判定されて)、コントローラ12の出力信号に基づき、伸長されるエアシリンダ33(図1参照)によって、出荷ライン4へ押し出される。本実施態様においては、植物2を出荷する出荷部にて、出荷ライン4上を搬送された植物2を、作業者が容器7から取り出し、袋詰めし、出荷するように構成されているが、植物2の容器7からの取り出しと、袋詰めとをそれぞれ、機械によって自動的に行うように構成してもよい。
【0035】
一方、診断装置11による診断で、病気に罹患していると診断された植物2のうち、最初に病気の診断がなされた日から所定の日数が経過している植物については、廃棄植物として、コントローラ12からの出力信号に基づき、エアシリンダ33の伸長によって出荷ライン4へ押し出された後に、さらに、エアシリンダ34の伸長によって、搬出ライン5上へ押し出され、搬出される。なお、本実施態様においては、図1に示されるように、エアシリンダ34の近傍に、出荷ライン4上を搬送される容器7に記載された二次元バーコードを読み取る読取装置18が設けられており、コントローラ12は、読取装置18から出力された識別番号のデータに基づき、より一層正確なタイミングで、エアシリンダ34を伸長させることができる。
【0036】
その他の植物2、すなわち、診断装置11による診断の結果、病気に罹患していると診断された植物2のうち、最初に病気の診断が下された日から所定の日数が経過していない植物と、診断装置11による判定の結果、病気はないものの、生長度合いが所定未満と判定された植物2については、栽培を継続する植物として、第二の仕分けライン19へ搬送される。
【0037】
本実施態様においては、出荷ライン4へ搬送され、または搬出ライン5から搬出された植物2の個数は、コントローラ12によって自動的にカウントされている。そして、コントローラ12の出力信号に基づき、その個数と同じ個数の植物2が、新たに、育苗装置16から、搬入ライン6に送られるように構成されている。これらの植物2(稚苗)は、循環ライン3へ搬送され、診断装置11による判定および診断を受けた後に、栽培を継続する他の植物2とともに、第二の仕分けライン19上で、適切な水槽ライン10に仕分けされる。
【0038】
図1に示される水槽22ないし24はそれぞれ、赤色、青色および白色の発光素子を所定の割合で備えたLED照明32(図3参照)が上方に設けられた標準水槽として構成されており、槽内コンベア14上での栽培が開始された日から起算した栽培日数に比して生長度合いが良好で、かつ、病気に罹患していない植物2は、エアシリンダ27ないし29のいずれかによって左方へ押し出され、アキュムレーションコンベア13を介して水槽22ないし24のいずれかに入庫される。
【0039】
また、5つの水槽のうち、最後部に位置する水槽25は、水槽22ないし24の上方に設けられたLED照明32よりも照射する光量の多いLED照明35(図3参照)が上方に設けられた生長促進水槽として構成されており、病気に罹患しておらず、かつ、槽内コンベア14上での栽培が開始された日から起算した栽培日数に比して生長度合いの不良な植物2は、エアシリンダ30によって左方へ押し出され、アキュムレーションコンベア13を介して水槽25に入庫される。
【0040】
このように、生長度合いの不良な植物2には、水槽22ないし24に入庫された植物2に比して、より多くの光が照射されるため、光合成が促進され、出荷日を早めることができる。なお、本実施態様においては、LED照明35は、赤色、青色および白色の発光素子を、水槽22ないし24の上方に設けられたLED照明32と同一の割合で備えている。
【0041】
一方、5つの水槽のうち、最前部に位置する水槽21は、紫外線を照射する紫外線LED照明31(図3参照)が上方に設けられた養生水槽として構成されており、第二の仕分けライン19上に搬送された植物2のうち、病気に罹患していると診断された植物2は、エアシリンダ26によって左方へ押し出され、アキュムレーションコンベア13を介して水槽21に入庫される。
【0042】
ここに、図1に示されるように、第二の仕分けライン19の前部には、殺菌投薬装置17が設けられており、第二の仕分けライン19まで搬送された植物2のうち、診断装置11によって病気に罹患していると診断された植物2は、コントローラ12の出力信号に基づき、第二の仕分けライン19上を搬送される間に、殺菌投薬装置17によって、殺菌や消毒などの最適な処方を施された後に、エアシリンダ26の伸長によって、左方へスライドされ、最前部に位置するアキュムレーションコンベア13を介して、水槽21に入庫されるように構成されている。
【0043】
このように、診断装置11によって病気に罹患していると診断された植物2は、搬出ライン5へ搬送されるもの(廃棄植物)を除き、殺菌投薬装置17によって最適な処方を施された後に、槽内コンベア14上で、紫外線を照射されるように構成されているから、罹患した植物2を自動的に治療することができ、人手を省力化することができる。
【0044】
なお、本実施態様においては、図1に示されるように、エアシリンダ30の近傍(後方)に、第二の仕分けライン19上を搬送される容器7に記載された二次元バーコードを読み取る読取装置20が設けられており、コントローラ12は、読取装置20からの出力信号に基づき、より一層正確なタイミングで、エアシリンダ34を伸長させることができる。
【0045】
一方、各水槽21ないし25の右方に設けられた5つのアキュムレーションコンベア13は、互いに同一に構成されており、それぞれ、図2に示されるように、回転可能に構成された多数のローラー45と、ローラー45間に等間隔に設けられた多数のシャッター板44を備えている。
【0046】
多数のシャッター板44はそれぞれ、互いに独立して上下方向にスライド可能に構成され、容器7が第二の仕分けライン19からアキュムレーションコンベア13上に搬送される度に、左側に位置するシャッター板44から順次に上方にスライドされることによって、搬送される各容器7が、各シャッター板44に接触して停止し、アキュムレーションコンベア13上に貯留されるように構成されている。
【0047】
本実施態様においては、各アキュムレーションコンベア13上に貯留された容器7の数が所定の数に達するか、又はその日に槽内コンベア14上から出庫されたすべての容器7が、出荷され、廃棄され、またはいずれかの水槽ライン10上に搬送された時点で、各アキュムレーションコンベア13のシャッター板44が同時に下方にスライドされるように構成されている。その結果、アキュムレーションコンベア13上に貯留された容器7が、一斉に左方の槽内コンベア14上に入庫(搬送)され、容器7の底部が養液に浸される。
【0048】
すなわち、本実施態様においては、各水槽21ないし25に入庫されるすべての容器7(および植物2)は、アキュムレーションコンベア13上で、多数のシャッター板44によって左右方向に等間隔に並べられた後に、一斉に槽内コンベア14上に入庫される。
【0049】
ここに、各槽内コンベア14の左側のテンションプーリー39の右側近傍には光電センサ42(図3参照)が設けられており、光電センサが、槽内コンベア14上を搬送される容器7のうち、先頭(左側)に位置する容器7を検知すると、コントローラ12の出力信号に基づき、その槽内コンベア14の駆動が停止されるように構成されている。このように構成することによって、槽内コンベア14上(水槽上)に入庫された先頭の容器7が、養液に浸される部分から逸脱してしまう(水槽に貯留された養液に浸される場所よりも左方に搬送されてしまう)事態を防止することができる。
【0050】
図3は、図1に示された植物栽培設備1の制御系、検出系、および駆動系のブロックダイアグラムである。
【0051】
図3に示されるように、植物栽培設備1の制御系は、植物栽培設備1全体の動作を制御するコントローラ12を備えている。
【0052】
コントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部50と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を有する記憶部51を備え、記憶部51には、植物栽培設備1を制御する種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0053】
図3に示されるように、植物栽培設備1の検出系は、第一の仕分けライン9上を搬送される容器7に記載された二次元バーコードを読み取り、かつ、容器7に収容された植物2の状態を判定および診断する診断装置11と、第二の仕分けライン19の後部(図1参照)に設けられ、第二の仕分けライン19上を搬送される容器7に記載された二次元バーコードを読み取る読取装置20と、出荷ライン4上を搬送される容器7に記載された二次元バーコードを読み取る読取装置18と、槽内コンベア14上を搬送される容器7を検知する光電センサ42を備えている。
【0054】
図3に示されるように、植物栽培設備1の駆動系は、水槽22ないし24(標準水槽)の上方に設けられたLED照明32の発光素子を駆動させる駆動回路47と、水槽25の上方に設けられたLED照明35の発光素子を駆動させる駆動回路48と、水槽21の上方に設けられた紫外線LED照明31の発光素子を駆動させる駆動回路49と、搬入ライン6を駆動するモータ53と、出庫ライン8を駆動するモータ54と、第一の仕分けライン9を駆動するモータ55と、第二の仕分けライン19を駆動するモータ56と、各アキュムレーションコンベア13を駆動する各モータ57と、各槽内コンベアの駆動プーリー37を回転駆動する各モータ58と、出荷ライン4を駆動するモータ59と、搬出ライン5を駆動するモータ60と、エアシリンダ26を伸縮させる電磁弁61と、エアシリンダ27を伸縮させる電磁弁62と、エアシリンダ28を伸縮させる電磁弁63と、エアシリンダ29を伸縮させる電磁弁64と、エアシリンダ30を伸縮させる電磁弁65と、エアシリンダ33を伸縮させる電磁弁66と、エアシリンダ34を伸縮させる電磁弁67と、育苗装置16から搬入ラインへ植物2を搬入する搬入用モータ68と、殺菌投薬装置17の投薬用電磁弁52と、アキュムレーションコンベア13のシャッター板44を上下動させる各モータ46を備えている。
【0055】
本実施態様によれば、光量または波長の異なる3種類のLED照明31,32または35によって、5つの水槽が3種類の異なる栽培環境下にあり、1株ずつ容器7に収容された各植物2が、それぞれの状態の判定結果に基づき、循環ライン3によって、栽培環境が異なるいずれかの水槽21ないし25に搬送されるように構成されているから、1株1株の植物2を適切に栽培管理することができる。
【0056】
また、本実施態様によれば、図1に示されるように、循環ライン3から分岐した出荷ライン4によって、出荷部へ植物2を搬送することができるから、栽培から出荷までを自動化することができる。
【0057】
さらに、本実施態様によれば、植物栽培設備1が、植物2が収容された新たな容器7を育苗装置16から循環ライン3に搬入する搬入ライン6を備えているから、出荷ライン4から出荷され、搬出ライン5から搬出されて減少した分の植物2の苗を、循環ライン3上に補充することができる。
【0058】
また、本実施態様によれば、水槽21と、水槽22ないし24と、水槽25との間で、上方に設けられたLED照明から照射される光の光量または波長を異にしているから、その状態に応じて仕分けされた各植物2に適切な人工光を照射することができ、したがって、1株1株の植物2を適切に栽培管理することができる。
【0059】
一方、図4は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる植物栽培設備1の水槽71の近傍の模式的背面図である。
【0060】
本実施態様においては、水槽ライン10は、ローラー73を有するローラーコンベアによって構成されており、ローラー73上に位置するトレイ72と、ローラー73の下方に位置し、植物2の根を囲うセル70とが連結された状態で、水槽ライン10によって各植物2を搬送できるように構成されている。
【0061】
図4に示されるように、植物2は、セル70が水槽71に収容された養液に部分的に浸漬された状態で栽培される。そして、収穫期を迎える際には、水槽ライン10、トレイ72およびセル70が水槽71から引き上げられ、水槽ライン10の駆動によって左方に搬送された後に、セル70の底部が自動的に開かれることによって、植物2がトレイ72およびセル70から落下し、その下方に設けられた自動袋詰め機(図示せず)によって、自動的に袋詰めされ、出荷されるように構成されている。このように構成することによって、植物2の栽培から収穫までを一連の制御で行うことができる。
【0062】
図5(a)は、本発明のさらに他の好ましい実施態様にかかる植物栽培設備1の略側面図であり、図5(b)は、図5(a)に示された実施態様にかかる搬送コンベアの流れを示す略平面図である。
【0063】
本実施態様にかかる植物栽培設備1においては、断熱パネル81によって囲われた養生室82内において、植物2の挿し穂を定植したポット87を、搬送コンベア83によって定期的に循環可能に構成されている。本実施態様においては、植物2はパッションフルーツである。
【0064】
従来、パッションフルーツの挿し穂の発根能力にはバラつきがあり、多数のパッションフルーツを適切に栽培管理したいという需要があった。
【0065】
このような状況に鑑みて、本実施態様においては、図5(b)に示されるように、各ポット87にバーコード94を記載して管理可能とするとともに、搬送コンベア83の一部が、搬送される各ポット87の重量を計測するロードセル80として構成されており、循環される際に、ロードセル80上で計測された各ポット87の重量が、栽培が開始されたときの重量に比して、何%減少しているかを算出し、算出された割合に応じて、各ポット87を、エアシリンダを用いていずれかのストックコンベア88ないし93に戻し、または育苗の工程に移行させるように構成されている(図5(b)参照)。
【0066】
各ポット87の重量は、その植物2の発根が進むほど、蒸散によって減少するため、たとえば、重量が0~1%減っているポット87の植物2は、未発根の状態であり、重量が1~20%減っているポット87の植物2は、発根中の状態であり、重量が20%以上減っているポット87の植物2は、発根量が充分な状態であると推定することができる。
【0067】
すなわち、本実施態様においては、図5(b)に示されるように、重量が0~1%減少し、ストックコンベア88ないし90に自動的に戻された植物2は未発根の状態であり、重量が1~20%減少し、ストックコンベア91ないし93に戻された植物2は発根中の状態であり、重量が20%以上減少した結果、育苗室へ搬送された植物2は発根量が充分な状態であることが推定される。このように、本実施態様においては、各植物2を、その発根状態に基づき、自動的にストックコンベア88ないし93に再整列させ、または次の工程である育苗の工程に払い出すことができるから、栽培管理を適切に行うことができる。
【0068】
なお、養生室82内には、図5(a)に示されるように、LED照明84、エアコン86および加湿器85が設けられている。このように、本実施態様においては、エアコン86および加湿器85によって、恒温と恒湿の環境が整えられており、植物2の発根を促進することができる。
【0069】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0070】
例えば、図1ないし図3に示された実施態様においては、上方に設けられたLED照明31,32または35から照射される光の光量または波長が異なることによって、互いに栽培環境を異にする3種類の水槽、すなわち、標準水槽(水槽22ないし24)、生長促進水槽(水槽25)および養生水槽(水槽21)が設けられているが、栽培環境の違いは照明の光量や波長に限られず、たとえば、各水槽ごとに炭酸ガス濃度を異にし、または各水槽に貯留された養液の成分を異にすることによって、互いに栽培環境の異なる複数の水槽を形成してもよい。
【0071】
さらに、図1ないし図3に示された実施態様においては、互いに栽培環境を異にする複数の水槽、すなわち、標準水槽、生長促進水槽および養生水槽が設けられ、標準水槽として、同一の水槽22ないし24が設けられているが、標準水槽同士についても、水質やガス濃度などの違いにより、互いに栽培環境を異にするように構成してもよい。
【0072】
また、図1ないし図3に示された実施態様においては、複数の水槽21ないし25が用いられているが、単一の水槽を、パネルなどによって複数の室に分け、各室の栽培環境を互いに異にするように構成してもよい。
【0073】
さらに、図1ないし図3に示された実施態様においては、診断装置11によって、植物2の状態として、外観、内部品質および病気の有無のすべてを判定し、診断するように構成されているが、循環ライン上に、植物の外観を検査する外観検査装置と、植物の内部品質を検査する内部品質検査装置と、植物の病気の有無などの生育診断を行う植物生育診断装置とをそれぞれ、別々に設けてもよい。
【0074】
加えて、図1ないし図3に示された実施態様においては、診断装置11が、植物2の状態として、外観、内部品質および病気の有無を判定し、コントローラ12の出力信号に基づき、各植物2を適切な場所に搬送するように構成されているが、診断装置が判定する植物2の状態は、外観、内部品質および病気の有無に限定されるものではない。
【0075】
また、図1ないし図3に示された実施態様においては、診断装置11によって判定された植物2の状態に関するデータ、すなわち、葉の色、生長度合い、糖度および病気の有無のデータに基づき、コントローラ12が、各植物2を、出荷ライン4、搬出ライン5、または各水槽21ないし25のいずれに搬送するかの判定を行い、制御信号を出力するように構成されているが、診断装置11において、各植物2をいずれに搬送するかの判定し、さらに、その判定結果に基づき、搬送先についてのデータを診断装置11からコントローラ12に出力し、コントローラ12から搬送先にかかるエアシリンダの電磁弁に制御信号を出力するように構成してもよい。
【0076】
さらに、図1ないし図3に示された実施態様においては、診断装置11によって、当日に病気の診断がなされた植物2のうち、最初に病気の診断がなされた日から所定の日数が経過している植物については、廃棄植物として搬出し、廃棄するように構成されているが、最初に病気の診断がなされた日から所定の日数が経過した植物に加えて、生長が期待できない(栽培日数に比して生長が不良の)植物2についても廃棄するように構成してもよい。
【0077】
また、図1ないし図3に示された実施態様においては、植物2が収容される容器7の底部に、養液を内部に通す孔を形成し、水槽において、容器7の一部を養液に浸すように構成されているが、搬送コンベアによって構成されたライン上で、各容器に養液を潅水するように構成してもよく、この場合には、各植物に潅水(供給)する養液の濃度や量を、その状態に応じて自動的に変更するように構成してもよい。
【0078】
さらに、図1ないし図3に示された実施態様においては、各水槽21ないし25の上方に設けられたLED照明はそれぞれ、照射する光量が一定となるように構成されているが、照射する光量を自動的にコントロール可能に構成してもよい。
【0079】
加えて、図1ないし図3に示された実施態様においては、廃棄植物は、出荷ライン4を介して、搬出ライン5上を搬送されるように構成されているが、出荷ライン4と同様に、搬出ライン5についても、直接、第一の仕分けライン9から分岐するように構成してもよい。
【0080】
また、図1ないし図3に示された実施態様においては、槽内コンベア14はローラーコンベアによって、出庫ライン8、仕分けライン9,19およびアキュムレーションコンベア13はベルトコンベアによって、それぞれ構成されているが、搬送コンベアの種類はとくに限定されない。加えて、アキュムレーションコンベア13を用いることは必ずしも必要でない。
【符号の説明】
【0081】
1 植物栽培設備
2 植物
3 循環ライン
4 出荷ライン
5 搬出ライン
6 搬入ライン
7 容器
8 出庫ライン
9 第一の仕分けライン
10 水槽ライン
11 診断装置
12 コントローラ
13 アキュムレーションコンベア
14 槽内コンベア
15 植物
16 育苗装置
17 殺菌投薬装置
18 読取装置
19 第二の仕分けライン
20 読取装置
21 水槽
22 水槽
23 水槽
24 水槽
25 水槽
26 エアシリンダ
27 エアシリンダ
28 エアシリンダ
29 エアシリンダ
30 エアシリンダ
31 紫外線LED照明
32 LED照明
33 エアシリンダ
34 エアシリンダ
35 LED照明
37 駆動プーリー
38 従動プーリー
39 テンションプーリー
40 ベルト
41 モータ
42 光電センサ
44 シャッター板
45 ローラー
46 モータ
47 駆動回路
48 駆動回路
49 駆動回路
50 処理部
51 記憶部
52 投薬用電磁弁
53 モータ
54 モータ
55 モータ
56 モータ
57 モータ
58 モータ
59 モータ
60 モータ
61 電磁弁
62 電磁弁
63 電磁弁
64 電磁弁
65 電磁弁
66 電磁弁
67 電磁弁
68 搬入用モータ
70 セル
71 水槽
72 トレイ
73 ローラー
80 ロードセル
81 断熱パネル
82 養生室
83 搬送コンベア
84 LED照明
85 加湿器
86 エアコン
87 ポット
88 ストックコンベア
89 ストックコンベア
90 ストックコンベア
91 ストックコンベア
92 ストックコンベア
93 ストックコンベア
94 バーコード
図1
図2
図3
図4
図5