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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】通信装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/15 20180101AFI20240716BHJP
   H04W 76/34 20180101ALI20240716BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20240716BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240716BHJP
【FI】
H04W76/15
H04W76/34
H04W16/14
H04W84/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020002436
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021111870
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093289(JP,A)
【文献】特開2016-019192(JP,A)
【文献】特開2017-163236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0158413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0219581(US,A1)
【文献】Taewon Song (LG Electronics),Multi-link Management,IEEE 802.11-19/1943r0,米国,IEEE mentor,2019年11月13日
【文献】Hanseul Hong (Yonsei Univ.),Multi-link setup procedure,IEEE 802.11-19/1614r0,米国,IEEE mentor,2019年09月18日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手装置との間でそれぞれ異なる周波数チャネルを介した第1の無線リンクと第2の無線リンクとを含む複数の無線リンクを確立可能な通信装置であって、
前記第1の無線リンクにおいて前記相手装置との通信を行う第1の通信手段と、
前記第2の無線リンクにおいて前記相手装置との通信を行う第2の通信手段と、
前記第1の無線リンクにおける前記相手装置とのAssociationフレームの通信に基づいて、前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを含む前記複数の無線リンクを前記相手装置との間に確立する確立手段と、
前記複数の無線リンクを介し前記相手装置と無線通信制御を行う通信制御手段と、
所定のレーダーの電波を検出する検出手段と、
前記相手装置との間に前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを確立している場合に、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルにおいて前記所定のレーダーの電波が検出された場合、前記第1の無線リンクを切断する切断手段と、を有し、
前記検出手段が前記第1の無線リンクにおいて前記所定のレーダーを検出した場合、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルとは異なる第2の周波数チャネルへの切り替えを示す無線フレームを前記第1の通信手段が前記相手装置へ通知することなしに、前記切断手段は前記第1の無線リンクの切断を行い、
前記第1の無線リンクを切断した後、前記通信制御手段は、前記第2の無線リンクを用いて前記第1の無線リンクで行っていた前記相手装置との通信を継続するよう通信を制御する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記相手装置との間に前記第1の無線リンクのみを確立している場合に、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルにおいて前記所定のレーダーの電波が検出された場合、前記通信制御手段は、前記第1の無線リンクにおける前記周波数チャネルを第2の周波数チャネルに切り替え、前記第1の無線リンクで行っていた前記相手装置との通信を継続するように通信を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記相手装置との間に前記第1の無線リンクのみを確立している場合に、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルにおいて前記所定のレーダーの電波が検出された場合、前記確立手段は前記相手装置との間に第2の周波数チャネルを用いた前記第2の無線リンクを確立し、前記通信制御手段は、前記第1の無線リンクで行っていた前記相手装置との通信を前記第2の無線リンクを用いて継続するように通信を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記相手装置との間に前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを確立している場合、前記切断手段は、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルを切り替えるための処理なしに、前記第1の無線リンクを切断する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記通信制御手段は、Dynamic Frequency Selectionの対象でない周波数チャネルを前記第2の周波数チャネルとして選択することを特徴とする請求項またはに記載の通信装置。
【請求項6】
前記相手装置との間に前記第1の無線リンクのみを確立している場合に、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルにおいて前記所定のレーダーの電波が検出された場合、前記通信制御手段は、前記第2の周波数チャネルへの切り替えを示す無線フレームを前記相手装置へ送信するよう通信を制御することを特徴とする請求項またはまたはのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記無線フレームは、IEEE802.11規格シリーズに準拠したChannel switch announcement elementを含む無線フレームであることを特徴とする請求項またはに記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信制御手段は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した通信を行うよう通信を制御し、
前記通信制御手段は、前記第2の無線リンクでのみマネジメントフレームを送信するよう通信を制御する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
相手装置との間でそれぞれ異なる周波数チャネルを介した第1の無線リンクと第2の無線リンクとを含む複数の無線リンクを確立可能な通信装置の制御方法であって、
前記第1の無線リンクにおいて前記相手装置との通信を行う第1の通信工程と、
前記第2の無線リンクにおいて前記相手装置との通信を行う第2の通信工程と、
前記第1の無線リンクにおける前記相手装置とのAssociationフレームの通信に基づいて、前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを含む前記複数の無線リンクを前記相手装置との間に確立する確立工程と、
前記複数の無線リンクを介し前記相手装置と無線通信制御を行う通信制御工程と、
所定のレーダーの電波を検出する検出工程と、
前記相手装置との間に前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを確立している場合に、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルにおいて前記所定のレーダーの電波が検出された場合、前記第1の無線リンクを切断する切断工程と、を有し、
前記検出工程において、前記第1の無線リンクにおいて前記所定のレーダーを検出した場合、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルとは異なる第2の周波数チャネルへの切り替えを示す無線フレームを前記相手装置へ通知することなしに、前記切断工程において前記第1の無線リンクの切断を行い、
前記通信装置は、前記切断工程における前記第1の無線リンクの切断後、前記第2の無線リンクを用いて前記第1の無線リンクで行っていた通信を継続することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
コンピュータを請求項1からのいずれか1項に記載の通信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信されるデータ量の増加に伴い、無線LAN(Local Area Network)等の通信技術の開発が進められている。無線LANの主要な通信規格として、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格シリーズが知られている。IEEE802.11規格シリーズには、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格が含まれる。例えば、最新規格のIEEE802.11axでは、OFDMA(直交周波数多元接続)を用いて、最大9.6ギガビット毎秒(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度を向上させる技術が規格化されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、さらなるスループット向上、周波数利用効率の改善、通信のレイテンシの改善等のために、IEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11beと呼ばれる規格のためのTask Groupが結成されている。IEEE802.11beでは、AP(アクセスポイント)等の通信機器が、2.4GHz、5GHz、6GHz帯の周波数帯を同時に利用して、単一のSTA(ステーション)へ無線信号を送信する技術が検討されている。これにより、従来規格に従って単一の周波数帯を使用する場合と比べてスループットを向上させることができる。また、複数の周波数帯から例えば混雑していない一部の周波数帯を選択的に使用することにより、レイテンシの短縮を果たすことができる。また、複数の周波数帯を並行して用いることにより、1つの周波数帯で帯域幅を増やすより効率的に無線周波数空間を活用することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-050133号公報
【文献】特開2019-036776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数の周波数帯を並行して使用する場合、また、より一般的には1つ以上の周波数帯における複数の周波数チャネルを並行して使用する場合の、使用チャネル設定制御を効率的に実行するための手法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一様態に係る通信装置は、相手装置との間でそれぞれ異なる周波数チャネルを介した第1の無線リンクと第2の無線リンクとを含む複数の無線リンクを確立可能な通信装置であって、前記第1の無線リンクにおいて前記相手通信装置との通信を行う第1の通信手段と、前記第2の無線リンクにおいて前記相手通信装置との通信を行う第2の通信手段と、前記第1の無線リンクにおける前記相手装置とのAssociationフレームの通信に基づいて、前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを含む前記複数の無線リンクを前記相手装置との間に確立する確立手段と、前記複数の無線リンクを介し前記相手装置と無線通信制御を行う通信制御手段と、所定のレーダーの電波を検出する検出手段と、前記相手装置との間に前記第1の無線リンクと前記第2の無線リンクとを確立している場合に、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルにおいて前記所定のレーダーの電波が検出された場合、前記第1の無線リンクを切断する切断手段と、を有し、前記検出手段が前記第1の無線リンクにおいて前記所定のレーダーを検出した場合、前記第1の無線リンクを介した通信に用いる周波数チャネルとは異なる第2の周波数チャネルへの切り替えを示す無線フレームを前記第1の通信手段が前記相手装置へ通知することなしに、前記切断手段は前記第1の無線リンクの切断を行い、前記第1のリンクを切断した後、前記通信制御手段は、前記第2の無線リンクを用いて前記第1の無線リンクで行っていた前記相手装置との通信を継続するよう通信を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1つ以上の周波数帯における複数の周波数チャネルを並行して使用する場合に、効率的に使用チャネル設定制御を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ネットワーク構成例を示す図である。
図2】AP及びSTAの機能構成例を示す図である。
図3】AP及びSTAのハードウェア構成例を示す図である。
図4】通信開始時に実行される処理の流れの例を示す図である。
図5】通信の流れの例を示す図である。
図6】Multi-band elementフォーマットの例を示す図である。
図7】Band ID fieldの例を示す図である。
図8】通信開始後に実行される処理の流れの第1の例を示す図である。
図9】Channel switch announcement elementフォーマットの例を示す図である。
図10】BSSIDを含む、無線周波数変更通知フォーマットの例を示す図である。
図11】通信開始後に実行される処理の流れの第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(ネットワーク構成)
図1に、本実施形態の無線通信ネットワークの構成例を示す。本無線通信ネットワークは、アクセスポイント(AP102)と端末(STA103)とを含んで構成される。これらの通信装置は、いずれもIEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行可能な通信装置であり、IEEE802.11be規格以前に策定された規格に準拠した無線通信をも実行可能に構成されうる。図1では、AP102は、自装置を中心とした略円状の領域101の範囲内に存在しているSTA103を相手装置として、このSTA103との間で接続を確立して無線通信(無線信号の送受信)を行うことができる。AP102は、例えば、この領域101の範囲内で無線通信ネットワークを形成することができる。なお、この領域101は、より広い範囲をカバーしてもよいし、より狭い範囲のみをカバーしてもよい。なお、図1では、一例として1台のAPと1台のSTAとを含んだ無線通信ネットワークを示しているが、これらの通信装置の台数は、2台以上であってもよい。また、例えば、IEEE802.11be規格より以前の規格にのみ準拠するSTAなどがネットワーク内に存在して、AP102と接続して通信してもよい。なお、AP102及びSTA103は、複数の無線周波数帯を並行して用いて、又はこれらの複数の無線周波数帯のうちの一部を選択的に用いて、相手装置と通信を行うことができる。なお、2つ以上の無線周波数帯が並行して用いられる場合、AP102とSTA103との間に、複数の無線リンクが確立されて通信が行われうる。
【0011】
(AP及びSTAの構成)
図2は、AP102及びSTA103の機能構成例を示す図である。AP102及びSTA103は、例えば、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯の3つの周波数帯のそれぞれにおける無線LAN通信の制御を行う、第1無線LAN制御部201、第2無線LAN制御部206、及び第3無線LAN制御部207を有する。ただし、これらは一例であり、例えば、共通の無線LAN制御部によって、複数の周波数帯に関する無線LANの制御が実行されてもよく、2つ以下の無線LAN制御部が用意されてもよい。また、さらなる周波数帯への対応のため、又は、1つの周波数帯における通信制御をより分散して行うことなどのために、4つ以上の無線LAN制御部が用意されてもよい。これらの無線LAN制御部は、IEEE802.11規格シリーズに規定された各種手順に従って、無線LANの通信制御を実行する。なお、本実施形態では、これらの無線LAN制御部は、IEEE802.11be規格に準拠しているものとする。無線LAN制御部は、他の無線LAN通信機能を有する通信装置との間で無線信号の送受信を行うためのアンテナや回路、それらを制御するプログラム等によって実現されうる。
【0012】
AP102及びSTA103は、さらに、フレーム生成部202、フレーム解析部203、UI制御部204、及び記憶部205を有する。
【0013】
フレーム生成部202は、上述の各無線LAN制御部によって送信されるべき無線フレームを生成する。無線フレームは、例えば、ユーザデータを含むか否かによらず、所定の制御情報を含んで構成される。フレーム生成部202によって生成される制御情報の内容は、記憶部205に保存されている設定によって制約が課されてもよい。またUI制御部204からのユーザ設定によって、制御情報の内容が変更されてもよい。フレーム解析部203は、無線LAN制御部によって受信されたフレームを解釈し、フレーム内に含まれるデータを抽出する。受信されたフレーム内に無線LANの制御に関する内容が含まれている場合は、その内容を各無線LAN制御部に反映させる。いずれかの無線LAN制御部によって受信されたフレームに含まれる制御情報が、フレーム解析部203によって抽出されることによって、そのフレームを受信していない他の無線LAN制御部においても、その制御情報に基づく制御を行うことが可能となる。
【0014】
UI制御部204は、AP102及びSTA103に対するユーザ操作を受け付けるためのタッチパネルやボタン等のユーザインタフェースに関するハードウェアおよびそれらを制御するプログラム等によって実現される。なお、UI制御部204は、例えば画像等の表示、または音声出力等の情報をユーザに提示するための機能をも有する。記憶部205は、APが動作するプログラムおよびデータを保存するROMとRAM等によって実現されうる記憶装置である。
【0015】
図3は、AP102及びSTA103のハードウェア構成を示す図である。AP102及びSTA103は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部301、制御部302、機能部303、入力部304、出力部305、通信部306および無線アンテナ307~アンテナ309を有する。
【0016】
記憶部301は、ROM、RAMの両方、または、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ここで、ROMはRead Only Memoryの、RAMはRandom Access Memoryの、頭字語である。なお、記憶部301として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0017】
制御部302は、例えば、CPUやMPU等の1つ以上のプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの頭字語である。制御部302は、記憶部301に記憶されたプログラムを実行することによりAP102やSTA103等の装置の全体を制御する。なお、制御部302は、記憶部301に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働によりAP103全体を制御するようにしてもよい。
【0018】
また、制御部302は、機能部303を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部303は、AP102/STA103が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、AP102/STA103がカメラである場合、機能部303は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、AP102/STA103がプリンタである場合、機能部303は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、AP102/STA103がプロジェクタである場合、機能部303は投影部であり、投影処理を行う。機能部303が処理するデータは、記憶部301に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部306を介して他のAPや他のSTAと通信したデータであってもよい。
【0019】
入力部304は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部305は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部305による出力とは、例えば、画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部304と出力部305の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。また、入力部304および出力部305は、それぞれ、AP102/STA103に内蔵されてもよいし、外付けされるように構成されてもよい。
【0020】
通信部306は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。通信部306は、いわゆる無線チップであり、それ自体が1つ以上のプロセッサやメモリを含んでいてもよい。本実施形態では、通信部306は、少なくともIEEE802.11be規格に準拠した処理を実行することができる。また、通信部306はアンテナ307~アンテナ309を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。AP102/STA103は、通信部306を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。アンテナ307~アンテナ309は、例えば、それぞれ2.4GHz帯、5GHz帯、および6GHz帯のいずれかにおいて無線信号を送受信可能となるように形成されたアンテナである。なお、アンテナ307~アンテナ309によって対応可能な周波数帯(及びその組み合わせ)については特に限定されない。アンテナ307~アンテナ309は、それぞれが1本のアンテナであってもよいし、MIMO(Multi-Input and Multi-Output)送受信を行うために、それぞれ2本以上のアンテナを含んで構成されてもよい。なお、図3では、少なくとも3本のアンテナ307~アンテナ309が図示されているが、これに限られない。例えば、上述の複数の周波数帯域の2つ以上をサポートするマルチバンドアンテナが用いられることにより、AP102/STA103は1本又は2本のアンテナのみを有してもよい。また、AP102/STA103は、より多くのアンテナを有してもよい。
【0021】
(処理の流れ)
本実施形態では、AP102とSTA103とが、2.4GHz帯、5GHz帯、及び、6GHz帯のそれぞれで接続可能であり、これらの周波数帯の少なくともいずれかを用いて無線通信を実行する。このとき、干渉が検知された周波数帯が存在する場合には、その周波数帯での、AP102とSTA103との間の通信が制限されるようにする。例えば、AP102は、所定の周波数帯での干渉の発生が検知された場合に、その所定の周波数帯での通信を他の周波数帯での通信に移行させる。以下では、この処理について説明する。
【0022】
図4は、本実施形態において、AP102(場合によってはSTA103)によって実行される、通信開始時の処理の流れの例を示している。図4の処理は、例えば、AP102(場合によってはSTA103)の制御部302が、記憶部301に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。なお、図4の処理を実現する専用のハードウェアが用意されてもよいし、例えばAP102(場合によってはSTA103)の通信部306が、通信部306の内部に備えられたチップ等によって図4の処理を実行してもよい。また、図5は、本実施形態にかかるAP102とSTA103との通信の流れの例を示している。なお、接続処理用の信号等のマネジメントフレームは、2.4GHz帯においてのみ送受信されるものとする。すなわち、2.4GHz帯の制御フレームにより、他の周波数帯での接続切断が制御されるものとする。これにより、各周波数帯で制御フレームが不必要に送受信されることがなくなるため、無線リソースを有効活用することが可能となる。なお、これは一例であり、5GHz帯や6GHz帯において、制御フレームの送受信が行われてもよい。例えば、2.4GHz帯を利用可能でないような状況においては、5GHz帯や6GHz帯で制御フレームの送受信が行われうる。いずれの場合も、例えば一部の周波数帯の通信制御が他の周波数帯で送受信された制御フレームによって制御されることにより、無線リソースの有効活用を図ることができる。
【0023】
まず、AP102は、どの周波数帯を利用可能とするかを決定する(S401)。AP102は、一例において、周囲の無線環境の混雑度等によって利用可能な周波数帯を決定しうる。AP102は、例えば、混雑度が所定値以上の周波数帯については利用可能でないと判定し、混雑度が所定値を下回る周波数帯を利用可能であると判定しうる。このとき、AP102は、例えば、各周波数帯において送信されたProbe Requestのうち応答のあるものの数を集計することにより、それらの周波数帯の混雑度を推定することができる。また、AP102は、各周波数帯において一定期間に観測されたBeaconの数を集計することにより、それらの周波数帯の混雑度を推定してもよい。また、AP102は、一定期間のキャリアセンスの回数の集計や、他のAPとの情報交換等により、各周波数帯の混雑度を推定するようにしてもよい。また、AP102は、周波数帯の混雑度と異なる指標に基づいて、利用可能とする周波数帯の決定をしてもよい。例えば、信号がない状態での雑音レベルが所定レベルより低い周波数帯を利用可能とする等によって、利用可能な周波数帯の決定がなされてもよい。なお、以下では、AP102が、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯のいずれもが利用可能であると決定したものとする。
【0024】
AP102は、利用可能とする周波数帯を決定した後、利用可能周波数帯情報を、例えばBeaconフレームを用いて送信する(S402、S501)。ここでは、例えば、Beaconフレーム中のMulti-band elementにあるBand IDに、利用可能周波数帯情報が付与されて送信される。なお、AP102は、利用可能周波数帯の中の1つの周波数帯において、Beacon Intervalに従って、周期的にBeaconフレームを送信する。Beacon Intervalは一般的に100ミリ秒であるが、これに限定されない。利用可能周波数帯情報は、Beaconフレームが送信される周波数帯を示す情報を含んでもよいし、この周波数帯の情報を含まなくてもよい。例えば、2.4GHz帯で送信されるBeaconには、利用可能周波数帯情報として5GHzと6GHzを示す情報が含められる。同様に、5GHzで送信されるBeaconには、利用可能周波数帯情報として2.4GHzと6GHzを示す情報が含められ、6GHzで送信されるBeaconには、利用可能周波数帯情報として2.4GHzと5GHzを示す情報が含められうる。
【0025】
なお、利用可能周波数帯情報は、Beaconフレームと異なるフレームに含められてもよい。例えば、AP102が送信するProbe Response、Authentication Response、Association Response、Reassociation Responseに利用可能周波数帯情報が含められうる。また、STA103も、自装置の利用可能周波数情報をProbe Request、Authentication Request、Association Request、Reassociation Requestに含めてAP102に送信しうる。
【0026】
利用可能周波数帯情報は、図6に示すような、Multi-band elementフォーマットによって表現されうる。ここで、本実施形態に関連する部分は、Band ID604である。なお、他の部分については、従来規格の通りであるため、ここでの説明については省略する。本実施形態では、Band ID604に格納される値に、利用可能周波数帯の組み合わせの情報を示す値を新たに定義する。例えば、図7に示すように、Band ID604に格納される値「8」を、2.4GHzと5GHzとの組み合わせを示す数値として定義する。また、値「9」を、2.4GHzと6GHz帯の組み合わせを示す数値として、値「10」を5GHzと6GHz帯の組み合わせを示す数値として、値「11」を2.4GHzと5GHzと6GHz帯の組み合わせを示す数値として定義する。なお、これは一例に過ぎず、例えば、利用可能周波数帯と対応付けられて規定される任意の値や情報フィールドが用いられうる。例えば、Beaconに、複数のMulti-band elementが付与されてもよい。例えば、2.4GHz帯と5GHz帯と6GHz帯とが利用可能周波数帯として決定された場合には、値「2」「4」「7」がそれぞれ格納された3つのBand ID604を含んだMulti-band elementがBeaconに付与される。
【0027】
複数のMulti-band elementをBeaconに付与する場合、AP102は、Operating Class605とChannel Number606の組み合わせによって動作可能な無線周波数の情報を格納することもできる。例えば、欧州においてchannel=5、channel=36、channel=220でAP102が使用される場合に、次のようにOperating Class605とChannel Number606が設定されうる。まず、2.4GHz帯で動くことを示すMulti-band elementでは、Band ID604の値が「2」とされ、Operating Class605の値が「30」とされ、Channel Number606の値が「5」とされる。また、5GHz帯で動くことを示すMulti-band elementでは、Band ID604の値が「5」とされ、Operating Class605の値が「5」とされ、Channel Number606の値が「36」とされる。また、6GHzで動くことを示すMulti-band elementでは、Band ID604の値が「7」とされ、Operating Class605の値が「19」とされ、Channel Number606の値が「220」とされる。これにより、例えば、AP102が、同じ周波数帯のそれぞれ異なる無線周波数チャネルを使用する場合についても表現することが可能となる。例えば、それぞれchannel=5、channel=36、channel=136が使用されるときに、複数のMulti-band elementを用意することにより、利用可能周波数チャネルの情報を表現することができる。なお、以下では、特定の無線周波数チャネルの番号を指定する際に「ch」との標記を用いる場合がある。例えば、channel=36の無線周波数チャネルのことを、以下では、特段の断りなく「36ch」のように表現しうる。
【0028】
AP102は、送信した利用可能周波数帯情報に基づいて、STA103との間で接続を確立する(S403)。例えば、STA103は、自装置が利用可能な周波数帯のうちの1つを用いてProbe Requestを送信して、スキャン動作を開始する(S502)。なお、本実施形態では、STA103が、2.4GHz帯で、Probe Requestを送信するものとする。そして、STA103は、Probe Requestへの返答として、Probe Requestを送信した周波数帯で、Probe ResponseをAP102から受信する(S503)。STA103は、一例において、このProbe Responseに含まれるBand IDの値に基づいて、AP102が対応する周波数およびその周波数で動作する無線周波数チャネルを検知することができる。この後、STA103は、Authentication RequestをAP102へ送信し(S504)、AP102からAuthentication Responseを受信する(S505)。その後に、STA103が、Association RequestをAP102へ送信し(S506)、AP102からAssociation Responseを受信して(S507)、AP102とSTA103との間で接続が確立される。なお、本実施形態では暗号化が行われない接続が確立される場合について説明するが、これに限定されない。AP102及びSTA103の間で暗号化を用いたセキュアな接続を確立する場合は、この後に不図示のWPA(Wi-Fi Protected Access)、WPA2などの通信処理が行われうる。また、WPA3の処理を行うため、Authentication Requestの送受信時に、SAE Commit、SAE Confirmが送受信されてもよい。この場合、Association Request及びAssociation Responseの送受信の後に4way handshakeが実行されうる。STA103は、利用可能な2つ以上の周波数帯で接続を確立しうる。例えば3つの利用可能な周波数帯がある場合、そのうち2つまたは全部を利用して接続を確立してもよい。例えば、STA103は、Probe Requestを、2.4GHz帯のみならず5GHz帯や6GHz帯でも送信してもよい。
【0029】
AP102及びSTA103は、接続が確立された後に送受信パラメータを決定しうる(S404、S508)。送受信パラメータは、複数の接続が確立された場合に、それぞれの接続に対してどのように送受信のデータを分配するかを決定するための情報である。例えば、各周波数帯で利用できる最大スループットに応じて、又は、実際に試験パケットを送受信することにより現在のスループットを計算することで、データの分配量が決定されうる。また、この値は随時変更されてもよい。例えば、一定期間データの送受信が行われた後に、実際に送受信できたデータ量から、次の一定期間のデータの分配量が決定されうる。また、制御用パケットとデータパケットとが送受信される周波数帯域が分離されてもよい。例えば、制御用のマネジメントフレームは2.4GHz帯で送受信され、データフレームは5GHzおよび6GHzで送受信されるように設定されうる。また、例えば、Mixed RealityやAugmented Reality等のアプリケーションのための通信においては、そのアプリケーションの制御用の情報が送受信される周波数帯と、その他の情報とが送受信される周波数帯とが分離されうる。例えば、位置情報や姿勢情報、遅延制御情報が2.4GHz帯で送受信され、コンテンツ情報や見えるものを遮るオクルージョン情報が5GHz帯や6GHz帯で送受信されうる。また、カメラ画像の送受信の場合に、日付データや写真パラメータなどのメタ情報が2.4GHz帯で送受信され、画素情報が5GHz帯と6GHz帯で送受信されうる。また、送受信パラメータの決定処理は行われなくてもよい。例えば、それぞれの周波数帯に対応する接続において、別々のストリームが独立して送受信されうる。
【0030】
その後、AP102とSTA103は、決定した送信パラメータを用いてデータの送受信を行う(S405、S511、S512、S521、S522、S531、S532)。ここで、データ送受信できるようになった状態を、無線リンクが確立された状態と呼ぶ。今回は、2.4GHzの5ch、5GHzの36ch、6GHzの220chで無線リンクが確立されたものとする。
【0031】
ここで、5GHz帯では、この周波数帯が気象観測レーダーや軍用レーダーとして使用されることが想定されているため、これらとの干渉を抑制する必要がある。このため、従来のIEEE802.11規格シリーズでは、5GHz帯の通信時に、DFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ばれる干渉回避技術が用いられることが規定されている(特許文献2参照)。DFSによれば、気象観測レーダー等の他の特定の電波の用途との干渉を防ぐことが可能となる。同様に、5GHz帯以外の周波数帯においても、干渉の発生を回避すべき用途で電波が使用されることが想定されうる。一例において、優先度の高い所定の通信が行われる場合、その所定の通信への干渉が回避されるべきことが想定される。この場合に、以下のような処理が実行されうる。優先度の高い通信は、例えば緊急呼などの所定のアプリケーションのための通信であり、AP102やSTA103は、無線フレームのヘッダ等を解析することにより、そのような通信が行われていることを認識することができる。そして、これらの周波数においても、DFSによる干渉回避を行うことができる。しかしながら、DFSによる周波数チャネルの切り替えでは、切り替え後の周波数チャネルにおいて、60秒に渡って、干渉が発生しないことを確認する必要があり、通信が再開されるまでの時間が長くなってしまう。
【0032】
本実施形態では、AP102(場合によってはSTA103)が、複数の周波数帯(又は1つ以上の周波数帯における複数の周波数チャネル)で複数の無線リンクを確立可能な場合に、効率的に干渉を回避しながら通信を継続するための処理を実行する。すなわち、利用可能な複数の周波数帯のいずれかにおいて、特定の用途の電波が検出されるなどにより、干渉が発生すると判定された場合、他の周波数帯で通信が継続されるようにする。例えば、AP102(場合によってはSTA103)は、利用可能な周波数帯の設定を切り替えることなく、干渉の発生する周波数帯と異なる周波数帯を利用するような処理を行う。
【0033】
図8に、通信の開始後に各無線リンクにおいて実行される処理の流れの例を示す。図8の処理は、例えば、AP102(場合によってはSTA103)の制御部302が、記憶部301に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。なお、図8の処理を実現する専用のハードウェアが用意されてもよいし、例えばAP102(場合によってはSTA103)の通信部306が、通信部306の内部に備えられたチップ等によって図8の処理を実行してもよい。ここでは、5GHz帯の36chの無線リンクにおける処理の例を説明するが、これは一例に過ぎず、2.4GHz帯や6GHz帯においても同様の処理が実行されうる。なお、この処理は、リンク単位で実行される。すなわち、例えば5GHz帯の異なる周波数チャネルにおいて複数の無線リンクが確立されている場合に、それらの無線リンクについて、並行して図8の処理が実行される。
【0034】
AP102は、まず、36chにおいて、他の特定の電波(特定の無線システムの電波)と干渉するか否かの判定を行う(S801)。AP102は、例えば、DFS機能のように特定のレーダーの検知処理を実行することにより、この判定を実行する。AP102は、36chにおいて特定の電波と干渉すると判定した場合(S801でYES)、処理をS802へ進める。一方、AP102は、36chにおいて特定の電波との干渉があると判定しなかった場合(S801でNO)は、そのまま干渉が発生するか否かの監視を継続する。
【0035】
S802において、AP102は、自装置がマルチリンクでの通信が可能であるか否かを判定する。そして、AP102は、自装置がマルチリンクでの通信が可能である場合(S802でYES)は処理をS804へ進め、自装置がマルチリンクでの通信が可能でない場合(S802でNO)は処理をS803へ進める。S802の判定は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの少なくともいずれかについて、マルチリンク通信を可能とする構成をAP102が有しているか否かの判定によって行われうる。例えば、AP102に備えられた無線アンテナが単一の周波数帯についてのみ対応しているなど、複数のリンクを使用することが物理的にできない場合、AP102は、マルチリンク通信を行うことができないと判定する(S802でNO)。また、AP102は、自装置のRAMの空き領域に余裕がなく複数リンクを実現できない場合にも、マルチリンク通信を行うことができないと判定する(S802でNO)。なお、アンテナの性能やRAM等の基準は一例に過ぎず、これら以外の基準が用いられてもよい。例えば、AP102が接続している相手装置(STA103)がマルチリンク通信の機能を有しない場合には、その相手装置との間ではマルチリンク通信を行うことができないと判定してもよい。この場合、AP102が接続している相手装置(STA103)がマルチリンク通信の機能を有する場合には、その相手装置との間ではマルチリンク通信を行うことができると判定する。このような判定基準を用いた場合には、AP102は、相手装置ごとに異なる処理(後述するS803とS804のいずれか)を行うようにしてもよい。また、相手装置によって異なる結果となる場合には、AP102はS803とS804のいずれの処理も行うようにしてもよい。なお、接続している相手装置(STA103)がマルチリンク通信の機能を有するか否かは、相手装置から、例えば接続時に送信される装置機能情報(Capability Information)から取得されうる。また、相手装置が特定の規格(例えば、IEEE802.11be規格など)に対応した通信が可能か否かによって、この機能の有無が判定されてもよい。
【0036】
また、アンテナ等の要因でマルチリンク通信を実行不能と常に判定される場合や、アンテナやRAM等の資源が十分に用意されておりマルチリンク通信を実行可能と常に判定される場合等、判定結果が状況によらず一定の場合は、S802の判定は省略されうる。この場合、マルチリンク通信を実行不能と常に判定される状況においては、S803の処理が実行され、S804の処理は実行されない。また、マルチリンク通信を実行可能と常に判定される状況においては、S804の処理が実行され、S803の処理は実行されない。なお、本実施形態では、AP102は、STA103との間で、2.4GHz帯、5GHz帯、および6GHz帯で、それぞれ無線リンクを確立しており、S802では、マルチリンク通信が可能であると判定する。
【0037】
S803は、AP102がマルチリンク通信を実行可能でない場合に実行される処理である。この場合、AP102は、STA103との間で、5GHz帯の36chのみで接続されているため、この周波数チャネルから別の周波数チャネルへ使用する周波数チャネルを変更する必要がある。このため、AP102は、使用する無線周波数を変更するための無線周波数変更通知をSTA103へ送信する。例えば、AP102は、IEEE802.11規格シリーズで定義されている、Channel Switch Announcementと呼ばれるelementを含んだ無線フレームを送信する。このelementの構造を、図9に示す。図9の各フィールドのうち、New channel number904には、変更後に使用すべき無線周波数チャネルの番号を示す値が格納される。これにより、AP102とSTA103は、使用周波数チャネルを、New channel number904に格納された値によって示される周波数チャネルに変更した後に、通信を継続する。なお、ここでは、Channel Switch Announcement elementによって無線周波数の変更を通知する例を示したが、他のelementによってこの通知が行われてもよい。例えば、Extended Channel Switch Announcement elementが、無線周波数の変更の通知に用いられてもよい。
【0038】
S804は、AP102がマルチリンク通信を実行可能である場合に実行される処理である。この場合、AP102は、5GHz帯の36ch以外の周波数チャネルでSTA103との間で無線リンクを確立することができる。このため、AP102は、利用可能周波数のうち通信品質の良い無線周波数で動作しているBSS(Basic Service Set)のネットワーク識別子であるBSSIDを、STA103へ送信し、そのBSSでの通信を行うようにする。例えば、AP102は、利用可能周波数のうちの通信品質が最良の無線周波数に対応するBSSIDをSTA103へ通知しうる。また、AP102は、利用可能周波数のうちの通信品質が所定値を超える無線周波数を特定し、その無線周波数の中で最も周波数の低いなどの特定の基準を満たす又はランダムに選択された無線周波数に対応するBSSIDをSTA103へ通知してもよい。また、ここでの通信品質の良い無線周波数は、SNR(信号対雑音比)やRSSI(受信信号強度インジケータ)等の無線品質を直接的に示す値に基づいて特定されうるが、これに限られず、通信品質が良いと推定される状態を有する無線周波数であってもよい。例えば、確立されている接続の数が少ないほど、実行される通信数が少ないほど、また、干渉の発生頻度が低いほど、通信品質の良い無線周波数であると推定される。このため、これらの状態に基づいて、無線周波数の選択が行われてもよい。一例において、確立されている接続の数がゼロの無線周波数が選択されうる。また、DFS非対象の無線周波数が選択されてもよい。また、これらの組み合わせによって、無線周波数が選択されてもよい。
【0039】
AP102は、例えば、図10のようなChannel Switch Announcement elementにさらにBSSIDの情報を追加したelementを含んだ無線フレームをSTA103へ送信することにより、この通知を実行しうる。また、AP102は、他の既存のelementにBSSIDを追加して送信することにより、または、現在は定義されていないelementにBSSIDを含めて送信することにより、この通知を実行してもよい。なお、本実施形態では、無線周波数に対応するBSSIDが通知される例を示しているが、これに限られず、AP102が通信を実行可能な無線周波数をSTA103が特定可能な任意の情報がSTA103へ通知されてもよい。例えば、ESSID(Extended Service Set ID)や、MAC(Medium Access Control)アドレスなどがSTA103へ通知されてもよい。このようにして、AP102は、STA103に対して、5GHz帯の36chでの通信を他の周波数チャネルでの無線リンクで行うように通知することができる。なお、S804では、AP102とSTA103との間で無線リンクが確立されていない周波数チャネルを示す情報が通知されてもよい。この場合、STA103は、受信したBSSID等の情報によって、現在確立されている無線リンクに加えて新たに無線リンクを確立して、その新たに確立された無線リンクに通信を移行させうる。
【0040】
このように、複数の無線周波数での複数の無線リンクが使用可能な環境において、所定の周波数帯で特定の電波との干渉が発生する場合に、その複数の無線周波数のうちの通信品質の高い無線周波数を特定する情報がAP102からSTA103へ送信される。その特定された無線周波数で通信が継続されることにより、AP102での無線周波数の変更処理を行わずに、通信中の無線リンクにおいて干渉が発生するのを防ぎながら、通信を継続させることができる。すなわち、利用可能とした複数の周波数帯のうちの一部の周波数帯の通信について干渉が発生する場合に、その複数の周波数帯のうちの別の周波数帯での通信が行われるようにすることで、干渉の発生を防ぎながら、通信を容易に継続させることができる。また、利用可能と決定された複数の周波数帯の中で使用する周波数帯を切り替えることにより、通信が継続されるまでの時間を短縮することができる。例えば、従来のDFSでは、干渉の検知に応じて無線周波数が切り替えられた後、切り替え先の無線周波数が干渉を起こさないことを60秒間にわたってスキャンして確かめる必要がある。これに対して、本実施形態では、利用可能な他の周波数帯においても予め干渉の検知が繰り返し実行されるため、切り替え後のスキャンが行われる必要がなく、利用可能な周波数帯において通信を継続することが可能となる。
【0041】
なお、上述の処理では、干渉が発生する周波数帯において、他の利用可能な周波数帯を特定するための情報がAP102からSTA103へ通知される例を示した。これに対して、複数の周波数帯で複数の無線リンクが確立されている場合、干渉が発生する無線リンクを切断してしまうことにより、干渉の発生を防ぎながら、切断されずに維持されている他の周波数帯の無線リンクで通信を継続することが可能となる。この処理の流れについて、図11を用いて説明する。なお、図11の処理は、例えば、AP102(場合によってはSTA103)の制御部302が、記憶部301に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。また、図11の処理を実現する専用のハードウェアが用意されてもよいし、例えばAP102(場合によってはSTA103)の通信部306が、通信部306の内部に備えられたチップ等によって図11の処理を実行してもよい。
【0042】
S801~S803は図8の処理と同様であるため、説明を省略する。AP102は、本処理の対象の無線リンク以外にSTA103との間で確立している無線リンクが存在するか否かを判定する(S1101)。例えば、AP102は、例えば5GHz帯の36ch以外の周波数チャネルでSTA103と接続しているか否かを判定する。本実施形態では、AP102は、2.4GHz帯の5chや6GHz帯の220chにおいて、STA103と接続を確立している。このため、AP102は、5GHz帯の36chのための処理において、処理対象の無線リンク以外にSTA103との間で確立している無線リンクが存在すると判定する(S1101でYES)。この場合、AP102は、変更後の無線リンクの情報をSTA103へ通知することなく、5GHz帯の36chの無線リンクを切断する(S1102)。このとき、他の無線リンクは切断されずに維持される。これにより、この無線リンクが切断されても、AP102とSTA103との間では別の無線リンクが確立されているため、通信を継続することが可能となる。なお、処理対象の無線リンクにおいて通信中のデータが存在する場合に、そのデータは破棄されてもよいし、他の無線リンクを介して送受信されてもよい。一方、AP102は、5GHz帯の36chのための処理において、その36chでの無線リンク以外に、STA103との間で接続を確立していない場合には(S1101でNO)、処理をS803へ移し、使用する無線周波数の切り替えを実行する。この場合、例えば、DFSに従う場合は、切り替え後の周波数チャネルで特定の電波との干渉がないかを判定するための所定の期間が発生する。なお、この場合、図8の例でのS804のように、BSSIDを送信することによって新たな通信リンクが確立されてもよい。このように、AP102とSTA103は、複数の周波数帯(又は複数の無線チャネル)で複数の無線リンクが確立されている場合、特定の用途の電波との干渉が発生する周波数チャネルでの通信を切断することにより、容易に干渉を防ぐことができる。また、このときに、接続中の他の周波数チャネルを用いて通信を継続することができ、チャネルの切り替えのための処理が行われる必要がなく、効率的に通信を継続することが可能となる。
【0043】
なお、上述の処理について、AP102が実行するとして説明したが、STA103が処理を実行してもよい。すなわち、AP102において特定の用途の電波との干渉が発生すると判定した場合にAP102が実行する処理を、STA103が実行してもよい。これによれば、AP102において干渉を検出できないが、STA103において干渉が検出されるような状況において、適切に干渉抑制のために使用周波数帯を変更しながら、通信を継続することが可能となる。また、上述の処理において、例えば、5GHz帯の36chで干渉が発生する状況となったことに応じて2.4GHz帯や6GHz帯で通信を継続することとなった場合に、5GHz帯を使用しなくなる。このときに、5GHz帯の別の周波数チャネルの利用可能性を判定するようにしてもよい。そして、例えば5GHz帯の36ch以外の周波数チャネルを利用可能と判定したことに応じて、その周波数チャネルで無線リンクを確立するようにしうる。これにより、例えばその後に2.4GHz帯や6GHz帯で、特定の電波との干渉が発生する状況となった場合に、5GHz帯を利用可能な周波数帯の候補として使用することが可能となる。また、例えば、5GHz帯の36chでの通信が行われなくなった期間において干渉の有無を評価し続け、その評価の結果に応じて、利用可能な周波数帯として5GHz帯の36chを残すか否かが判定されてもよい。
【0044】
上述のように、AP102(又はSTA103)は、通信中の第1の無線リンクにおいて干渉が発生すると判定した場合に、自装置がマルチリンク通信に対応している場合にBSSIDの通知や第1の無線リンクの切断などの第1の処理を実行する。一方で、AP102(又はSTA103)は、自装置がマルチリンク通信に対応していない場合には、Channel switch announcement elementを含んだ無線フレームの送信などの第2の処理を実行する。第1の処理が実行される場合も、第2の処理が実行される場合も、いずれも、第1の無線リンクにおいて実行されていた通信が、第1の無線リンクと異なる周波数帯(周波数チャネル)の第2の無線リンクを用いて継続されるようになる。これにより、複数の無線リンクを確立する能力を有するAP102/STA103は、その複数の無線リンクを有効活用して、利用可能な周波数帯の設定の変更を行うことなく、迅速に通信を継続することができる。一方、複数の無線リンクを確立する能力を有しないAP102/STA103は、使用する周波数チャネルの切り替えを行うことにより、チャネルの切り替えに相対的に長い時間を要するものの、通信を継続することができる。
【0045】
なお、上述の実施形態について、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信が行われることを前提として説明したが、これに限られない。すなわち、異なる周波数帯(周波数チャネル)を並行して利用して、相手装置との間で複数の無線リンクを確立可能な無線通信装置において、上述の技術を適用することができる。例えば、通信装置は、干渉が発生すると判定した際に、複数の無線リンクを確立して通信する機能を有する場合は、複数の無線リンクのうちの通信の継続に使用する無線リンクを特定して、そのネットワーク識別子などの情報を相手装置へ通知する。一方で、通信装置は、複数の無線リンクを確立して通信する機能を有しない場合は、変更後の周波数チャネルを指定した情報を相手装置へ通知する。これにより、複数の無線リンクを用いることができる場合には、その複数の無線リンクを有効活用して、干渉を回避しながら、迅速に通信を継続することが可能となる。
【0046】
また、上述の実施形態では、干渉の発生に基づいて、周波数チャネルを変更して通信を継続する例について説明したが、これに限られない。例えば、通信中の無線リンクの品質劣化等に応じて、上述の処理が実行されてもよい。すなわち、通信中の無線リンクを変更すべき任意の状況において、上述の処理が実行されうる。このときに、複数の無線リンクを確立可能な場合にはその能力を活用するように、従来のチャネルスイッチとは異なる処理(例えばBSSIDの通知等の処理)が行われるようにする。これにより、マルチリンク機能を利用可能な通信装置(AP102/STA103)が、通信中の無線リンクの切り替えが必要となる様々な状況において、効率的に通信を継続することができるようになる。
【0047】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0048】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0049】
102:AP、103:STA、201:第1無線LAN制御部、206:第1無線LAN制御部、207:第1無線LAN制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11