(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240716BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H04N1/04 D
H04N1/028 C
(21)【出願番号】P 2020018310
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】大木 健次
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/088955(WO,A1)
【文献】特開2003-274115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/028
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の搬送手段を有し、
前記搬送手段により搬送される前記原稿の画像をセンサを用いて読み取る読取手段を有し、前記センサは、
第1色を受光するとともに第1方向に配置された複数の受光素子を備える第1受光素子列と、
第2色を受光するとともに前記第1方向に配置された複数の受光素子を備える第2受光素子列とを有し、前記第1受光素子列及び前記第2受光素子列は、前記第1方向と直交する第2方向に配置され、
前記読取手段により読み取られた前記画像に基づいて、前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か又は無彩色の原稿かを判定するように設定可能である制御手段を有し、
前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定しないように前記制御手段が設定されていて、かつ、出力解像度が第1解像度に設定されている場合には、前記搬送手段は前記原稿を第1速度で搬送し、かつ、前記制御手段は、前記読取手段により前記第1解像度で読み取られた前記画像を出力し、
前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定しないように前記制御手段が設定されていて、かつ、前記出力解像度が前記第1解像度よりも高い第2解像度に設定されている場合には、前記搬送手段は前記原稿を前記第1速度よりも低速の第2速度で搬送し、かつ、前記制御手段は、前記読取手段により前記第2解像度で読み取られた前記画像を出力し、
前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定するように前記制御手段が設定されていて、かつ、前記出力解像度が前記第1解像度に設定されている場合には、前記制御手段は、前記搬送手段により前記第2速度で搬送されて前記原稿を前記読取手段で読み取ることで得られるとともに前記第2解像度を有する画像を、前記第1解像度を有する画像に変換して、前記第1解像度を有する画像を出力し、
前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定するように前記制御手段が設定されていて、かつ、前記出力解像度が前記第2解像度に設定されている場合には、前記制御手段は、前記搬送手段により前記第2速度で搬送される前記原稿を前記読取手段で読み取ることで得られるとともに前記第2解像度を有する画像を出力することを特徴とする、
画像読取装置。
【請求項2】
前記第1受光素子列および前記第2受光素子列は、前記第1受光素子列および前記第2受光素子列の位置が、前記第1解像度で前記第2方向に互いに0.5ラインずつずれて配置されるように、前記第2方向に配置されていることを特徴とする、
請求項
1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1受光素子列および前記第2受光素子列は、前記第1受光素子列および前記第2受光素子列の位置が、前記第2解像度で前記第2方向に互いに1ラインずつずれて配置されるように、前記第2方向に配置されていることを特徴とする、
請求項
1に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取手段は、CMOSにより構成されることを特徴とする、
請求項
1~3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記読取手段は、CISにより構成されることを特徴とする、
請求項
1~4のいずれかに記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置として、原稿台ガラス上に載置された原稿を圧板で押さえ、該原稿の画像をイメージセンサにより1ラインずつ読み取るスキャン動作を行うものが知られている。このように原稿台ガラス上に原稿を載置して行うスキャン動作を、以降、「圧板読み」という。圧板読みでは、イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)をガイド部材に沿って移動させながら原稿の画像を読み取る。イメージセンサの移動方向は、イメージセンサスキャンを行う方向(主走査方向)に対して直交する方向(副走査方向)である。
【0003】
自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備える画像読取装置は、原稿を一枚ずつ搬送しながら所定の位置(以下、「流し読み位置」という。)に固定したCISにより該原稿の画像を読み取るスキャン動作を行う。このように原稿を搬送しながら行うスキャン動作を、以降、「流し読み」という。流し読みでは、複数枚の原稿がADFの原稿トレイから連続して給送される。イメージセンサは、複数枚の原稿の画像を連続して読み取ることが可能である。
【0004】
複写機やスキャナ等の画像読取装置において、画像が無彩色の画像であるか有彩色の画像であるかを読み取った画像に基づいて判定する構成が知られている。このような画像読取装置では、その判定結果に基づいて、カラー画像を出力するか白黒(モノクロ)画像を出力するかを自動的に選択している。以下、このような無彩色か有彩色かを判定し、判定結果に基づいてカラー画像を出力するか白黒画像を出力するかを選択する処理を、自動カラー選択(ACS:Auto Color Selection)と記載する。特許文献1では、このような自動カラー選択技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原稿の画像の読み取りに用いられるCISは、副走査方向に並べられた赤色(R)の光を受光するラインセンサ、緑色(G)の光を受光するラインセンサ及び青色(B)の光を受光するラインセンサによって構成されている。副走査方向において、Rのラインセンサが読み取る原稿の位置とGのラインセンサが読み取る原稿の位置とBのラインセンサが読み取る原稿の位置とが同じ位置でない場合、以下の問題が生じる可能性がある。具体的には、画像読取装置は、原稿の画像における黒線のエッジ部を有彩色と検出する場合がある。このように黒線のエッジ部が有彩色と検出されると、誤判定に繋がってしまう。
ACSの誤判定により、白黒原稿であってもカラーとして画像形成をするので、コピー動作の所要時間やランニングコストの増大に繋がってしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像読取装置において原稿の画像が無彩色の画像であるか有彩色の画像であるかの判定を誤ってしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置は、原稿の搬送手段を有し、前記搬送手段により搬送される前記原稿の画像をセンサを用いて読み取る読取手段を有し、前記センサは、第1色を受光するとともに第1方向に配置された複数の受光素子を備える第1受光素子列と、第2色を受光するとともに前記第1方向に配置された複数の受光素子を備える第2受光素子列とを有し、前記第1受光素子列及び前記第2受光素子列は、前記第1方向と直交する第2方向に配置され、前記読取手段により読み取られた前記画像に基づいて、前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か又は無彩色の原稿かを判定するように設定可能である制御手段を有し、前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定しないように前記制御手段が設定されていて、かつ、出力解像度が第1解像度に設定されている場合には、前記搬送手段は前記原稿を第1速度で搬送し、かつ、前記制御手段は、前記読取手段により前記第1解像度で読み取られた前記画像を出力し、前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定しないように前記制御手段が設定されていて、かつ、前記出力解像度が前記第1解像度よりも高い第2解像度に設定されている場合には、前記搬送手段は前記原稿を前記第1速度よりも低速の第2速度で搬送し、かつ、前記制御手段は、前記読取手段により前記第2解像度で読み取られた前記画像を出力し、前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か無彩色の原稿かを判定するように前記制御手段が設定されている場合、前記搬送手段は、前記出力解像度が前記第1解像度及び前記第2解像度のどちらに設定されているかにかかわらず、前記原稿を前記第2速度で搬送し、かつ、前記制御手段は、前記読取手段により読み取られた前記画像に基づいて、前記読取手段により読み取られた前記画像が有彩色の原稿か又は無彩色の原稿かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像読取装置において原稿の画像が無彩色の画像であるか有彩色の画像であるかの判定を誤ってしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】(a)、(b)は、CMOSのラインセンサ配置の説明図。
【
図5】(a)、(b)は、CISのラインセンサ配置の説明図。
【
図8】読取解像度と、操作部選択で入力される指定解像度と、ユーザーにより選択されるACS設定との説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態における画像読取装置の構成例について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の画像読取装置10の一例を示す斜視図である。また、
図2は、本実施形態の画像読取装置10の一例を示す断面図である。本実施形態では、画像読取装置10は、原稿画像(画像情報)を読み取る画像読取部100と、画像読取部100へ向けて原稿を搬送する自動原稿搬送装置200(以下ADF200)とを有する。
【0012】
図1には示されていないが、画像読取装置10には、後述する
図3に示される制御部120が設けられる。制御部120は、画像読取部100またはADF200に設けられてもよく、あるいは画像形成装置等の図示されていない外部装置に設けられた制御部120に画像読取装置が接続されるものとしてもよい。ADF200は、画像読取部100に対して、画像読取部100の上面奥側に設けられた開閉ヒンジ110a,110bにより、開閉自在となるように接続されている。
【0013】
<画像読取部の構成例>
画像読取装置10について、
図1、2を参照しながら説明する。
【0014】
図1を参照すると、画像読取装置10は、原稿台ガラス101、表面流し読みガラス102、基準対向部材としての白基準部材103を有する。表面流し読みガラス102は、白基準部材103と一体になっている。ADF200は、画像読取装置10の上面奥側に設けられた開閉ヒンジ110a、110bにより開閉自在となるように画像読取装置10に接続されている。ADF200は、1枚以上の原稿シートが含まれる原稿束が積載される原稿トレイ201、白基準部材211、裏面流し読みガラス217、及び圧板白板221を有する。なお、白基準部材211は、裏面流し読みガラス217と一体とされている。
【0015】
図2を参照すると、画像読取装置10には、表面読取部104が内蔵され、ADF200には、裏面読取部212が内蔵されている。ADF200により表面流し読みガラス102上に搬送されてきた原稿の表面の原稿画像は、表面読取部104により読み取られる。また、原稿の裏面の原稿画像は、裏面読取部212により読み取られる。画像読取部100は、原稿台ガラス101と、表面読取部104、図示しない駆動部、読取移動ガイド109、及び白基準部材103とを有する。
【0016】
画像読取部100は、図示しない駆動部を用いて、表面読取部104を読取移動ガイドに沿って移動させながら、原稿台ガラス101上に載置された原稿表面を一ラインずつ読み取ることで原稿表面画像の読み取りを行う。なお、読取移動ガイドは、
図2において読取移動ガイド109として示される。原稿台ガラス101上に載置された原稿は、ADF200が閉じられると圧板白板221によって押さえられて固定される。
【0017】
<ADF200の構成例>
ADF200について、
図2を参照しながら説明する。ADF200は、1枚以上の原稿シートで構成される原稿束を積載する原稿トレイ201と、分離機構とを有する。分離機構は、原稿の搬送開始前に原稿束が原稿トレイ201より突出して下流へ進出するのを規制する分離ローラ対206a、206bとピックアップローラ204とを有する。原稿トレイ201には、原稿の有無を検知する原稿有無センサ205を有する。また、原稿トレイ201には、トレイ幅ガイド板202が設けられている。ピックアップローラ204を、原稿トレイ201に積載された原稿束S最上面に落下させて回転させることにより、原稿束の最上面の原稿が搬送される。ピックアップローラ204によって搬送された原稿は、分離ローラ対206a、206bの作用によって最上面の一枚が分離・搬送される。この分離は公知の分離技術によって実現されている。
【0018】
ピックアップローラ204と分離ローラ対206a、206bとの間には原稿有無センサ205が設けられ、これにより載置された原稿の有無を検知できる。分離ローラ対206a、206bによって分離された原稿は、レジローラ対208a、208bへと搬送されてレジローラ対208a、208bに突き当てられる。突き当てられた原稿の先端部分がループ状に形成され、これにより原稿搬送における斜行が解消される。
【0019】
レジローラ対208a、208bの下流側には、レジローラ対208a、208bを通過した原稿を表面流し読みガラス102方向へ搬送する搬送路が配置されている。搬送路に送られた原稿は、リード上流ローラ対209によって両面読取位置に搬送される。分離ローラ対206a、206bと、レジローラ対208a、208bと、の間には、給紙センサ207が設けられている。また、リード上流ローラ対209a、209b付近には、リードセンサ210が接続されている。給紙センサ207及びリードセンサ210により、紙搬送路上の原稿端部を検知する。なお、ADF200には、圧板白板221も設けられている。
【0020】
表面読取の場合、表面流し読みガラス102と裏面流し読みガラス217との間を通過する原稿は、裏面流し読みガラス217と一体となった白基準部材211の下を通過する際、表面ガラスの下から表面LED105、106により照射される。その反射光は、表面レンズアレイ107を通して表面ラインセンサ108で読み取られ、原稿の表面画像が読み取られる。
【0021】
両面読取の場合、表面は前述したように裏面読取部212で読み取りを行う。裏面については、表面流し読みガラス102と一体となった白基準部材103上を通過する際に、裏面LED213、214により照射される。その反射光は、裏面レンズアレイ215を通して裏面ラインセンサ216で読み取られ、原稿の裏面画像が読み取られる。
リード下流ローラ対218a、218bにより搬送された原稿は、排紙ローラ対219a、219bによって排紙トレイ220上に排出される。表面読取部104及び裏面読取部212には、
図2に示すようなCIS以外にも、表面レンズアレイ107やミラーを用いた縮小光学系で構成されるCCDなどを用いてもよい。
【0022】
<画像読取読取装置の制御部の構成>
図3は、ADF200を備えた画像読取装置10の制御部120の構成例を示す機能ブロック図である。制御部120は、リーダコントローラ300及びシステムコントローラ310を有する。リーダコントローラ300は、中央演算処理装置であるリーダCPU301、リードオンリーメモリであるROM-A302、ランダムアクセスメモリであるRAM-A303を備えている。ROM-A302には、制御プログラムが格納されており、RAM-A303には、入力データや作業用データが格納される。リーダCPU301は、後述する
図5のフローチャートに従って制御プログラムを実行する。
【0023】
リーダCPU301には、原稿搬送機能を実現するために、搬送用の各ローラを駆動させる搬送モータ306が接続されている。ローラによっては、例えば、分離ローラ対206a、206bやレジローラ対208a、208bなどは駆動及び停止を切り替えるクラッチを介して搬送モータ306と接続されている。さらに、原稿トレイ201に積載された原稿を検知する原稿有無センサ205、紙搬送路上の原稿端部を検知する給紙センサ207、リードセンサ210が接続されている。本実施形態での搬送モータ306はパルスモータであり、リーダCPU301は駆動パルス数を制御している。パルス数は搬送中の原稿の搬送距離に変換することができ、リーダCPU301はモータパルスから算出した搬送距離を基に、各負荷などを制御し原稿の搬送を行っている。
【0024】
リーダCPU301には、原稿画像を読み取る機能を実現するために、表面LED105、106及び表面ラインセンサ108が接続される。リーダCPU301は、表面ラインセンサ108によって読み取られた画像データを増幅器(AMP)・A/D変換器223によって増幅し、デジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、1画素を8ビットで表現する画像データに変換される。この場合、デジタル値は黒色を“0”、白色を“255”として表現し、0から255の256段階の輝度データ(濃度)となる。
【0025】
リーダCPU301は、リーダコントローラ300の画像処理部304に設けられたACS判定装置350で画像データのACS判定(色の判定)を行った結果を画像処理部304に送る。リーダCPU301は、画像処理部304により画像データに対して各種画像処理を実行する。各種画像処理が実行された画像データは、画像データバス322を介して、後述するシステムコントローラ310内の画像処理部314へ送られ、所定の画像処理を施された後に画像メモリ315に格納される。
【0026】
さらに、リーダCPU301は、原稿画像データにおける原稿先端の基準となる垂直同期信号及び1ラインの画素先端の基準となる水平同期信号を原稿読み取りタイミングに合わせて、コントローラIFを通してシステムコントローラ310へ通知する。
【0027】
システムコントローラ310は、システムCPU311、ROM-B312、RAM-B313、画像処理部314、画像メモリ315、操作部316を有する。ROM-A302には、制御プログラムが格納されており、RAM-A303には、入力データや作業用データが格納される。システムCPU311は、コマンドデータバス321を通じてリーダCPU301と原稿読取制御に関するデータの授受を行う。システムCPU311は、画像処理部314により、画像処理部304から得られた画像データに対する画像処理を行い、画像処理後の画像データを画像メモリ315に格納する。ユーザーとのインターフェース制御は操作表示部を介してシステムCPU311によって行われる。
【0028】
以下、
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)、及び
図5(b)を参照して、ACS、つまり自動カラー選択処理における色ずれと誤判定との関係を説明する。なお、
図4(a)、
図4(b)、
図5(a)及び
図5(b)において、図中の上側方向はスキャン方向(副走査方向)、図中の左右方向はセンサの幅方向(主走査方向)を示す。なお、以下の説明において、副走査方向における読み取り解像度が600dpiである場合における原稿の搬送速度は、副走査方向における読み取り解像度が300dpiである場合における原稿の搬送速度の2倍である。
【0029】
図4(a)は、表面読取部104として副走査方向の解像度600(dpi)のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)を使用した場合のR、G、Bのラインセンサ配置を示す。この場合、R、G、Bの各ラインセンサは、(600(dpi)での)1ラインの間隔を空けて配置されている。従って、副走査方向の解像度が600(dpi)の場合、各色のラインセンサが2ラインずつずれた位置を読むので、各センサから得られた画像をデジタル的に2ラインあるいは4ラインずらすことでカラー画像が形成される。例えばGのラインセンサについては、得られた画像をデジタル的に2ラインずらすことでカラー画像が形成される。これにより、RのラインセンサとGのラインセンサとの原稿の読取位置は同じ位置となる。更に、Bのラインセンサについては、得られた画像をデジタル的に4ラインずらすことでカラー画像が形成される。これにより、R、G、Bの各ラインセンサの原稿の読取位置を同じ位置とすることができる。
【0030】
図4(b)は、表面読取部104として副走査方向の解像度300(dpi)のCMOSを使用した場合のR、G、Bのラインセンサの配置を示す。この場合、R、G、Bの各ラインセンサは、ライン間隔がない状態で配置されて1ラインずつずれた位置を読むことになるので、各センサから得られた画像をデジタル的に1ラインまたは2ラインずつずらすことでカラー画像が形成される。例えばGのラインセンサについては、得られた画像をデジタル的に1ラインずらすことでカラー画像が形成される。これにより、RのラインセンサとGのラインセンサとの原稿の読取位置は同じ位置となる。更に、Bのラインセンサについては、得られた画像をデジタル的に2ラインずらすことでカラー画像が形成される。これにより、R、G、Bの各ラインセンサの原稿の読取位置を同じ位置とすることができる。
【0031】
図5(a)は、表面読取部104として副走査方向の解像度600(dpi)のCISを使用した場合のR、G、Bのラインセンサの配置を示す。CISでは、通常、コストダウンや装置の縮小化を目的として、ラインセンサ間の隙間がない構成で配置されている。この場合、R、G、Bの各ラインセンサは、ライン間隔がない状態で配置されて1ラインずつずれた位置を読むことになるので、各センサから得られた画像をデジタル的に1ラインまたは2ラインずつずらすことでカラー画像が形成される。例えばGのラインセンサについては、得られた画像をデジタル的に1ラインずらすことでカラー画像が形成される。これにより、RのラインセンサとGのラインセンサとの原稿の読取位置は同じ位置となる。更に、Bのラインセンサについては、得られた画像をデジタル的に2ラインずらすことでカラー画像が形成される。これにより、R、G、Bのラインセンサの原稿の読取位置を同じ位置とすることができる。
【0032】
図5(b)は、表面読取部104として副走査方向の解像度300(dpi)のCISを使用した場合のR、G、Bのラインセンサの配置を示す。
図5(a)とは異なり、解像度が300(dpi)である場合には、副走査方向(SCAN方向)において、各色のラインセンサが0.5ラインずつずれた原稿の位置を読んでいる。各ラインセンサのずれは整数ではなく、各センサから得られた画像をデジタル的にずらしても、0.5ライン単位でのずれを修正することはできない。従って、R、G、Bのラインセンサの原稿の読取位置が同じ位置とはならない。この結果、例えば、原稿の黒線が読み取られた場合に、黒線のエッジ部分が有彩色として判定されてしまう。即ち、ACS判定装置350が実行する自動カラー選択において誤判定が生じてしまう。なお、上記説明では表面読取部104について説明を行ったが、裏面読取部212についても同様である。
【0033】
<ACSにおける読取解像度切り替え制御>
図6及び
図7は、ACSにおける画像読取装置10での読取解像度切り替えを行う読取制御処理を示すフローチャートである。ACSは、リーダCPU301がROM302に格納されたプログラムをRAM303に読み出してACS判定装置350を構築して実行することにより実現される。
図6及び
図7に示す処理で用いられる各パラメータは、その処理開始前に、CPU301によりRAM303等の記憶領域に確保される。
【0034】
また、
図8(a)、(b)は、圧板読み、流し読みのそれぞれについて、実際に読取を行う場合に設定される読取解像度、操作部316を通じてユーザーが選択した解像度、及びユーザーから入力されたACS設定を示す説明図である。操作部316は、画像読取における解像度を受け付ける解像度受け付け手段としての機能を有する。読取解像度は、「主走査方向の解像度(dpi)x副走査方向の解像度(dpi)として表されている。例えば、圧板読みにおける読取解像度(300×600)は、主走査方向が300(dpi)、副走査方向が600(dpi)であることを表す。また、主走査方向、副走査方向ともに、選択できる解像度は300(dpi)又は600(dpi)である。
【0035】
<ACSの説明>
以下、副走査方向における読取解像度切り替えを行う場合に画像読取装置で実行される処理を説明する。また、以下の説明では、CISを用いて原稿画像を読み取る場合について説明を行う。本実施形態では、表面読取部104及び裏面読取部212共にCISを用いているので、表面読取部104について説明するが、本発明はCISに限定されるものではない。
【0036】
図8を参照すると、ユーザーがカラー選択において操作部316を通じてACSを選択した場合、ACS設定はON、選択しない場合(この場合はユーザーがカラーまたは白黒を選択する)はACS設定がOFFとなる。なお、本実施形態では、ACS設定はユーザーにより設定されるものとしたが、例えば定期的にACS設定をONにする等、ユーザーからの設定ではなく自動的にACS設定を行うようにしてもよい。リーダCPU301は、ACS設定がOFFで、ユーザーから操作部316を通じて原稿画像がカラー又は白黒であると指定されている場合には、原稿画像の読取解像度を、操作部316で選択された解像度と同じ解像度とする。
【0037】
一方、ACS設定がONで操作部316を通じてユーザーが入力した出力解像度が300x300(dpi)の場合、リーダCPU301は、読取部での読取解像度(dpi)を300x600とする。そして、リーダCPU301は、リーダコントローラ300からシステムコントローラ310へ出力する出力解像度(dpi)を300x600とし、システムコントローラ310は副走査方向の解像度を600(dpi)から300(dpi)へ変換する。
図8における流し読み時においても同様である。
【0038】
図6及び
図7を参照してACSを説明する。特に記載がない限り、ACSはリーダCPU301の制御の下に実行される。ユーザーから操作部316を通じて読取動作開始が指示されると、リーダCPU301は、システムコントローラ310から通知された読取モードに応じて、副走査方向の解像度を600(dpi)か300(dpi)のいずれかに設定する。読取モードとしては、ACS、カラーまたは白黒が用意されている。そのために、リーダCPU301は、ユーザーによってACSがONに設定されているか否かを判定する(S101)。ACSがONに設定されている場合(S101:Y)、リーダCPU301は、副走査方向の解像度を600(dpi)に設定する(S102)。
【0039】
次に、リーダCPU301は、原稿画像を読み取る前に、表面ラインセンサ108の出力信号を一様にするため、黒シェーディング補正を行う。黒シェーディング補正では、表面LED105、106が消灯し(S105)、この状態で原稿台ガラス101の端部に設けられた白基準部材103を読み取った時の黒レベル出力信号(輝度:低)を用いて、各主走査方向の各画素の黒レベルの歪みを補正する。リーダCPU301は、ランプ(表面LED105、106)をONにし(S106)、その後、表面LED105、106の露光量を一定に保つために光量調整(S107)を行う。光量調整では、表面LED105、106の露光量を一定に保ち、かつ増幅させるようにAMP・A/D変換器を用いて表面LED105、106の出力信号を調整する。
【0040】
リーダCPU301は、表面読取部104(CIS)を移動させる(S108)。その後、リーダCPU301は、原稿台ガラス101の端部に設けられた白基準部材103を読み取った時の白レベル出力信号(輝度:高)を用いて各主走査方向の各画素の白レベルの歪みを補正するために白シェーディング補正を行う(S109)。
【0041】
その後、リーダCPU301は、読取処理を実行する(S110)。読取処理の詳細を
図7に示す。読み取り処理では、リーダCPU301は、表面読取部104が所定の位置に移動完了したかを判定する(S201)。移動完了していない場合(S201:N)、再度S201を実行する。表面読取部104が移動完了した場合(S201:Y)、リーダCPU301は、原稿画像の読取を開始し(S202)、読取が終了したかを判定する(S203)。読取が終了していない場合(S203:N)、再度S203を実行する。
【0042】
ACS判定装置350は、このように読み取られた原稿画像に対してACSを行うことで、原稿画像が有彩色(本実施形態ではカラー)であるか無彩色(本実施形態では白黒)であるかを判定する。そして、S111移行の処理では、リーダCPU301は、その判定結果を用いて、カラーまたは白黒モードで原稿画像を読み取る。
【0043】
読取が終了した場合(S203:Y)、
図6に戻り、リーダCPU301は、ACSがONであるか否かを判定する(S111)。ACSがONである場合(S111:Y)、操作部316でユーザーが選択した解像度が300x300(dpi)であるかを判定する(S119)。300x300(dpi)である場合(S119:Y)、リーダCPU301は、その結果をシステムコントローラ310のシステムCPU311に通知する。システムコントローラは、画像処理部314での副走査解像度を300(dpi)に変更する(S112)。その後、リーダCPU301は、圧板読みが選択されているか否かを判定する(S113)。なお、S111において判定結果がNであった場合(S111:N)及びS119において判定結果がNであった場合(S119:N)は、S113を実行する。
【0044】
圧板読みが選択されている場合(S113:Y)、圧板読みを実行して原稿台ガラス101上に置かれた原稿の原稿画像を読み取り、表面読取部104を待機位置(白基準部材103下の位置)へと移動させる(S115)。一方、S113で圧板読みが選択されていない場合(S113:N)、ADFに原稿があるかを判定する(S114)。ADFに原稿がある場合には(S114:Y)、リーダCPU301は、原稿トレイ201上に置かれた原稿をADF200によって分離・給紙して1枚毎に搬送して表面読取部104で表面を読み取る。また、ユーザーによって操作部316を通じて両面読取が選択されている場合には、裏面読取部212での読み取りをも行う。その後、リーダCPU301は、S110を再度実行する。ADFに原稿がない場合(S114:N)、リーダCPU301は、S115を実行する。
【0045】
リーダCPU301は、S115を実行した後に、表面読取部104の待機位置への移動が完了したかを判定する(S116)。完了していない場合には、リーダCPU301は、再度S116を実行し、完了した場合には(S116:Y)、ランプをOFFにして(S117)処理を終了する。
【0046】
次に、
図8を参照して、S101でACSがONではない場合(S101:N)の処理を説明する。この場合は、ユーザーがACSを選択せずにカラーまたは白黒を選択しており、ACS設定がOFFとなっている。また、ACS設定がOFFである場合、読取解像度と出力解像度とは等しくなる。
図8においても、操作部選択の出力解像度が300x300(dpi)及び600x600(dpi)の場合のいずれにおいても、読取解像度と出力解像度とは等しくなっている。
【0047】
読取動作を開始する際に、リーダCPU301は、システムコントローラ310から通知される、ユーザーが選択した読取モードに応じて、副走査方向の解像度を600(dpi)か300(dpi)のどちらで読み取るかを選択する。そのために、リーダCPU301は、白黒読取モードが選択されているかを判定し(S103)、白黒読取モードが選択されている場合(S103:Y)にはS102に進んで副走査解像度を600(dpi)に設定してS105移行を実行する。
【0048】
白黒読取モードが選択されていない場合(S103:N)、カラー読取モードが選択されている。この場合、リーダCPU301は、操作部316で選択された解像度が300x300(dpi)であるかを判定する(S118)。300x300(dpi)である場合(S118:Y)、リーダCPU301は、副走査方向の解像度を300(dpi)に設定(S104)し、S105移行を実行する。
【0049】
一方、操作部316で選択された解像度が300x300ではなく、600x600(dpi)である場合(S118:N)、副走査方向解像度を600(dpi)に設定し(S102)、S105移行を実行する。なお、S105移行の処理は、S101の判定結果がYである場合と同じである。なお、S110での読取処理が終了した後にACSがOFFである(S111:N)場合、副走査解像度の変更は行われない。
【0050】
以上のように、本実施形態では、ACSが実行される場合、ユーザーにより選択された副走査方向の解像度が300(dpi)であっても、600(dpi)の解像度で画像読取を行い、各色の読取位置が同じとしている。従って、線を読んだ際に色ずれが起こることを抑制することができ、ACSでの誤判定を抑制することができる。また、画像読取装置において原稿画像が無彩色の画像であるか有彩色の画像であるかの判定が誤ってしまうことを抑制することが可能となる。
【0051】
以上の説明では、画像読取装置10の表面読取部104、裏面読取部212ともにCISを用いるものとした。また、
図6~
図8を参照して説明したACSにおける読取解像度切り替え制御を表面読取部104、裏面読取部212のそれぞれに共通して適用するものとした。
【0052】
しかしながら、例えば表面読取部104と裏面読取部212との一方にCISを用い、他方にCMOS(あるいはCIS以外のタイプのラインセンサ)を用いるものとしてもよい。この場合には、リーダCPU301は、例えば画像読取処理の開始時に、画像の読み取りにCISが用いられるか否かを判定し、CISが用いられる場合には
図6~
図8を参照して説明したACSにおける読取解像度切り替え制御を実行する。一方、CISが用いられない場合には、操作部316を通じてユーザーが入力した解像度を、そのままでACSにおける読み取り解像度とする。
【0053】
また、本発明は、CISの解像度として300(dpi)と600(dpi)とを説明したが、解像度はこれらに限られるものではない。更には、本発明は、CISに限らず、読み取り時の解像度によって、R、G、Bの各ラインセンサにおける原稿の読取位置が同じ位置とはならない場合があるラインセンサに対して適用可能である。
【0054】
更に、本実施形態ではカラー原稿と白黒原稿について説明したが、本発明は、有彩色原稿と無彩色原稿とについても適用可能である。