(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/191 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
H04N1/191
(21)【出願番号】P 2020052425
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 真一
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-046289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/191
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段に読み取られる基準白色部材であって、前記読取手段が前記基準白色部材を読み取った結果が、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を前記読取手段により読み取った結果に対するシェーディング補正に用いられる基準白色部材と、を備え、
複数枚のシートの画像を読み取
る第1期間
において、
前記読取手段は前記基準白色部材
の読み取りを第1時間間隔で
行い、
前記第1期間に続き、複数枚のシートの画像を読み取
る第2期間
において、
前記読取手段は前記基準白色部材
の読み取りを第2時間間隔で
行い、
前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が所定回数より少ない場合、前記第1期間を継続し、前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が前記所定回数以上となった場合、前記第1期間から前記第2期間に切り替わり、
前記第1時間間隔は、前記第2時間間隔よりも短いことを特徴とする、
画像読取装置。
【請求項2】
シェーディング補正値を格納する格納手段をさらに備えており、
新たなシェーディング補正値の生成時には、前記格納手段に格納された前記シェーディング補正値が更新されることを特徴とする、
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記読取手段は、所定の方向に移動可能であり、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を、前記所定の方向における第1位置で読み取り、
前記基準白色部材は、前記所定の方向における前記第1位置とは異なる第2位置に配置され、
前記読取手段は、前記所定の方向における前記第2位置で前記基準白色部材を読み取ることを特徴とする、
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項4】
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段に読み取られる基準白色部材であって、前記読取手段が前記基準白色部材を読み取った結果が、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を前記読取手段により読み取った結果に対するシェーディング補正に用いられる基準白色部材と、を備え、
複数枚のシートの画像を読み取
る第1期間
において、前記
読取手段は複数枚のシートに含まれる第1枚数のシートを読み取る毎に前記基準白色部材
の読み取り
を行い、
前記
第1期間に続き、複数枚のシートの画像を読み取
る第2期間
において、前記
読取手段は複数枚のシートに含まれる第2枚数のシートを読み取る毎に前記基準白色部材
の読み取り
を行い、
前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が所定回数より少ない場合、前記第1期間を継続し、前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が前記所定回数以上となった場合、前記第1期間から前記第2期間に切り替わり、
前記第1枚数は前記第2枚数より少ないことを特徴とする、
画像読取装置。
【請求項5】
シェーディング補正値を格納する格納手段をさらに備えており、
新たなシェーディング補正値の生成時には、前記格納手段に格納された前記シェーディング補正値が更新されることを特徴とする、
請求項4記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記読取手段は、所定の方向に移動可能であり、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を、前記所定の方向における第1位置で読み取り、
前記基準白色部材は、前記所定の方向における前記第1位置とは異なる第2位置に配置され、
前記読取手段は、前記所定の方向における前記第2位置で前記基準白色部材を読み取ることを特徴とする、
請求項4記載の画像読取装置。
【請求項7】
シートを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段に読み取られる基準白色部材であって、前記読取手段が前記基準白色部材を読み取った結果が、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を前記読取手段により読み取った結果に対するシェーディング補正に用いられる基準白色部材と、を備え、
複数枚のシートの画像を読み取
る第1期間
において、
前記読取手段は第1ページ数の
画像を読み取る毎に前記基準白色部材
の読み取り
を行い、
前記
第1期間に続き、複数枚のシートの画像を読み取
る第2期間
において、
前記読取手段は第2ページ数の
画像を読み取る毎に前記基準白色部材
の読み取り
を行い、
前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が所定回数より少ない場合、前記第1期間を継続し、前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が前記所定回数以上となった場合、前記第1期間から前記第2期間に切り替わり、
前記第1ページ数は前記第2ページ数より少ないことを特徴とする、
画像読取装置。
【請求項8】
シェーディング補正値を格納する格納手段をさらに備えており、
新たなシェーディング補正値の生成時には、前記格納手段に格納された前記シェーディング補正値が更新されることを特徴とする、
請求項7記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記読取手段は、所定の方向に移動可能であり、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を、前記所定の方向における第1位置で読み取り、
前記基準白色部材は、前記所定の方向における前記第1位置とは異なる第2位置に配置され、
前記読取手段は、前記所定の方向における前記第2位置で前記基準白色部材を読み取ることを特徴とする、
請求項7記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに形成された画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置は、原稿に形成された画像を読み取る画像読取装置を備える。画像読取装置では、画像が形成された読取面を下向きにして原稿が原稿台ガラス上に載置される。画像読取装置は、読取ユニットを備えており、原稿台ガラスに載置された原稿の画像を読み取る。読取ユニットは、光を原稿の読取面に照射する光源と、読取面による反射光を受光し、受光した反射光を光電変換して原稿の画像を表す電気信号を生成する読取センサと、を備える。画像読取装置は、電気信号に基づいて原稿の画像を表す画像データを生成する。
【0003】
複写処理の場合、画像形成装置は、画像読取装置により生成された画像データに基づいて、原稿の画像をシートに印刷する。画像形成装置は、シートに印刷された画像の品質を確認するために、該シートを画像読取装置により読み取り、その読取結果から印字位置や倍率、歪み、色再現性等を検出する。画像形成装置は、検出結果に応じて印刷条件等を調整することで、画質を維持する。
【0004】
画質の維持のために、画像読取装置は、読取ユニットの光源や読取センサが原因で発生する各画素の輝度の主走査方向における不均一さを調整するためのシェーディング補正を行う。シェーディング補正は、基準の白色となる板(基準白色板)の読取結果に基づいて、明輝度レベル(白)、暗輝度レベル(黒)の校正を行う処理である。シェーディング補正は、カラーモードと白黒モードとでそれぞれ行われる。シェーディング補正を行うことで、画像読取装置により読み取られた読取画像の主走査方向における明るさが平均的に一様な明るさとなるように補正される。具体的には、画像読取装置は、光源を消灯させた状態で基準白色板の読み取りを行い黒レベルのシェーディング補正値を取得し、光源を点灯させた状態で基準白色板の読み取りを行い白レベルのシェーディング補正値を生成する。画像読取装置は、画像読取時に、白レベル、黒レベルの2つのシェーディング補正値を用いて、読取画像の画像データの白黒レベルを補正するシェーディング補正を行う。
【0005】
各画素の輝度の主走査方向における不均一さは、読取センサや光源等の読取ユニットの温度変化により変動する。即ち、シェーディング補正における適切なシェーディング補正値は読取ユニットの温度によって異なる。この結果、読取センサや光源等の読取ユニットの温度変化により、シェーディング補正を高精度に行うことができなくなる。そこで、特許文献1には、読取ユニットの温度変化量を検出し、検出した温度変化量に応じてシェーディング補正を行う画像読取装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1における画像読取装置は、読取ユニットの温度変化量を検出するためのセンサが必要になる。また、前記特許文献1における画像読取装置は、読取ユニットの温度特性に応じたシェーディング補正値を保持するメモリが必要になる。これらのセンサやメモリは、画像読取装置のコストアップの原因となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、画像読取装置のコストの増大を抑制しつつ、シェーディング補正を高精度に行うことを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像読取装置は、シートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を読み取る読取手段と、前記読取手段に読み取られる基準白色部材であって、前記読取手段が前記基準白色部材を読み取った結果が、前記搬送手段により搬送される前記シートの画像を前記読取手段により読み取った結果に対するシェーディング補正に用いられる基準白色部材と、を備え、複数枚のシートの画像を読み取る第1期間において、前記読取手段は前記基準白色部材の読み取りを第1時間間隔で行い、前記第1期間に続き、複数枚のシートの画像を読み取る第2期間において、前記読取手段は前記基準白色部材の読み取りを第2時間間隔で行い、前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が所定回数より少ない場合、前記第1期間を継続し、前記第1期間において、前記基準白色部材を読み取った実行回数が前記所定回数以上となった場合、前記第1期間から前記第2期間に切り替わり、前記第1時間間隔は、前記第2時間間隔よりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像読取装置のコストの増大を抑制しつつ、シェーディング補正を高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】撮像部が実際に読み取りを行う位置と読取位置とのズレ量の時間変化を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0013】
(画像読取装置の構成)
図1は、本実施形態の画像読取装置の構成図である。本実施形態の画像読取装置1は、読取ユニットとしてのCIS(Contact Image Sensor)ユニット13と、原稿台ガラス14と、自動原稿搬送装置(以下、「ADF」という。)220と、を備える。画像読取装置1は、CISユニット13により、原稿台ガラス14に載置された原稿、或いはADF220により搬送される原稿から、画像を読み取る。原稿は、画像が形成された読取面を原稿台ガラス14側に向けて原稿台ガラス14上に載置される。ADF220は、原稿を1枚ずつCISユニット13の読取位置を通過させる。ADF220は、原稿台ガラス14に対して開閉可能に設けられており、原稿台ガラス14に載置された原稿を抑えるプラテンカバーとしても機能する。
【0014】
CISユニット13は、光を原稿に照射し、照射した光の原稿による反射光を受光する。CISユニット13は、受光した反射光を光電変換して電気信号を生成する。画像読取装置1は、CISユニット13で生成された電気信号に基づいて、原稿の画像を表す画像データを生成することで、原稿の画像を読み取る。
【0015】
CISユニット13は、原稿台ガラス14の原稿が載置される面とは反対側に、原稿台ガラス14に密着するように配置される。CISユニット13は、光源である照明部131、光学レンズ133、及び読取センサである撮像部134を備える。照明部131は、赤色LED(Light Emitting Diode)、緑色LED、及び青色LEDを備えた白色タイプの導光管を含み、原稿台ガラス14に対して所定角度傾斜する方向から原稿に光を照射する。光学レンズ133は、セルフォック(登録商標)レンズ等から構成される。光学レンズ133は、照明部131から照射され読取面により反射された光(反射光)を、撮像部134の受光面に結像させる。撮像部134は、原稿からの反射光を等倍で読み取る。
【0016】
撮像部134は、複数の光電変換素子等から構成され、光学レンズ133により受光面に結像された反射光により原稿の画像を撮像する。本実施形態では、撮像部134がCMOSセンサの場合について説明するが、CCDセンサであってもよい。撮像部134は、反射光を光電変換した電気信号を出力する。複数の光電変換素子は、
図1の奥行き方向に配列される。そのために、CISユニット13は、
図1の奥行き方向を主走査方向として、1ラインずつ原稿の画像を読み取ることになる。
【0017】
CISユニット13は、ガイドレール17上に配置され、駆動ベルト16に装着される。駆動ベルト16には、スキャナモータ18が接続される。スキャナモータ18の駆動力は、駆動ベルト16に伝達される。駆動ベルト16は、スキャナモータ18からの駆動力に応じて、CISユニット13をガイドレール17に沿って、主走査方向に直交する副走査方向(矢印F)に移動させることができる。原稿台ガラス14に載置された原稿の画像を読み取る場合、CISユニット13は、副走査方向に移動しながら1ラインずつ画像読取処理を行う。一般的に、スキャナモータ18にはステッピングモータやDCモータ等が用いられる。
【0018】
画像読取装置1には、シェーディング補正時に読み取られる基準白色板11、及びADF220により搬送される原稿が通過する流し読みガラス219が設けられる。基準白色板11は、原稿台ガラス14と流し読みガラス219との間に配置される。画像読取時には、CISユニット13は、シェーディング補正に用いるシェーディング補正値を生成するために、基準白色板11を読み取る。基準白色板11の流し読みガラス219側には、ユーザが原稿台ガラス14上に配置された原稿を先端基準位置に突き当てるための原稿突き当て板12が取り付けられている。原稿突き当て板12は原稿台ガラス14の上面に配置される。
【0019】
ADF220は、原稿トレイ201、原稿が搬送される搬送経路、及び排紙トレイ208を備える。ADF220は、原稿トレイ201から搬送経路を介して排紙トレイ208まで原稿を1枚ずつ給送する。原稿トレイ201は1枚以上の原稿が積載可能である。搬送経路には、ピックアップローラ221、分離ローラ222、搬送ローラ223、及び排紙ローラ224が設けられる。ピックアップローラ221、分離ローラ222、搬送ローラ223、及び排紙ローラ224は、不図示の原稿搬送モータにより駆動される。
【0020】
ピックアップローラ221は、原稿トレイ201から原稿を搬送経路に取り込む。分離ローラ222は、搬送経路に取り込まれた原稿を1枚ずつ分離して搬送ローラ223へ搬送する。搬送ローラ223は、搬送されてきた原稿を流し読みガラス219上を介して排紙ローラ224へ搬送する。ADF220を用いて原稿の画像を読み取る場合、CISユニット13は、読取位置207の直下に位置しており、読取位置207を通過する原稿から1ラインずつ画像を読み取る。排紙ローラ224は、読取位置207を通過した原稿を排紙トレイ208へ排出する。なお、ADF220を用いて原稿の画像を読み取る際にも、CISユニット13は、シェーディング補正に用いられるシェーディング補正値を生成するために、基準白色板11を読み取る。
【0021】
(コントローラ)
図2は、画像読取装置1の動作を制御するコントローラの説明図である。コントローラは、画像読取装置1に内蔵される。コントローラは、増幅器21、A/D変換器22、LED駆動部(ドライバ)3、タイミング発生部4、CPU(Central Processing Unit)5、及びデジタル処理部6を備える。
【0022】
なお、画像読取装置1は、外部装置からインタフェースを介して取得する指示に応じて画像読取処理を実行する。また、画像読取装置1は、不図示の操作部によるユーザ操作に応じて画像読取処理を実行する。操作部は、ユーザインタフェースであり、入力キー、タッチパネル等の入力装置と、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置と、を備える。ディスプレイには、画像読取装置1の状態の通知や、ユーザへの入力操作を案内するためのメッセージが表示される。ユーザは入力キーやタッチパネルを操作して、必要な指示を入力することができる。
【0023】
CPU5は、RAM(Random Access Memory)51及びROM(Read Only Memory)52が接続される。CPU5は、ROM52に格納されたコンピュータプログラムを実行することで、画像読取装置1の動作を制御する。RAM51は、CPU5が処理を実行する際の作業領域を提供する。CPU5は、タイミング発生部4及びLED駆動部3を介してCISユニット13の動作を制御する。CPU5は、デジタル処理部6の動作を制御して、画像データの出力等を行う。
【0024】
タイミング発生部4は、CPU5の設定に応じて、LED駆動部3に照明部131の発光を制御する制御信号を送信することで、照明部131の光量調整を可能にしている。タイミング発生部4は、例えば制御信号にPWM(Pulse Width Modulation)信号を用いる。タイミング発生部4は、主走査方向の1ライン毎にPWM信号のデューティ比を変化させることで、照明部131の光量調整を行う。
【0025】
LED駆動部3は、タイミング発生部4から取得する制御信号に応じて、CISユニット13の照明部131の発光制御を行う。LED駆動部3は、主走査方向の1ライン毎に照明部131の光量調整で行った点灯時間に応じて、照明部131を発光させる。LED駆動部3は、例えばPWM信号を照明部131の駆動信号に用いる。PWM信号のデューティ比により照明部131の点灯時間が制御される。照明部131が赤色LED1311、緑色LED1312、及び青色LED1313を備えるために、LED駆動部3は、各LEDに対して駆動信号を送信することで、LED毎の点灯制御を行う。これにより、照明部131は、発光タイミングの調整、発光時間調整、及び光量調整が行われる。
【0026】
CISユニット13の撮像部134から出力される電気信号は、増幅器21に入力される。増幅器21は、取得した電気信号を増幅してA/D変換器22に入力する。A/D変換器22は、増幅された電気信号をA/D変換して、例えば各画素を16ビットの輝度値として表現するデジタル信号である画像データを出力する。CISユニット13が出力する1ライン分の電気信号は、赤色LED1311、緑色LED1312、青色LED1313を順次点灯することにより得られ、1ラインずつ線順次で主走査同期信号に同期してA/D変換器22に入力される。A/D変換器22は、画像データをデジタル処理部6へ送信する。
【0027】
デジタル処理部6は、A/D変換器22から取得した画像データに対して各種の画像処理を行う。デジタル処理部6は、メモリ61及びシェーディング補正部62を備える。メモリ61は画像処理後の画像データを格納する。メモリ61に格納される画像データは、画像読取装置1に対して通信可能に接続される印刷装置やパーソナルコンピュータ等の外部装置へ転送可能である。そのために画像読取装置1は、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインタフェースやネットワークインタフェースを備える。
【0028】
デジタル処理部6のメモリ61は、画像データの他に、シェーディング補正値、シェーディング補正値取得後の読取動作時間、シェーディング補正値の取得処理の実行回数等を格納する。シェーディング補正値取得後の読取動作時間は、実際の時間の計時の他に、読み取った原稿の枚数で表されてもよい。デジタル処理部6のシェーディング補正部62は、メモリ61に格納されているシェーディング補正値に基づいて、A/D変換器22から取得した原稿の画像を表す画像データに対するシェーディング補正を行う。デジタル処理部6は、メモリ61に格納されている読取動作時間やシェーディング補正値の取得処理の実行回数に応じて、再度、シェーディング補正値を取得するタイミングを制御する。メモリ61に格納されるシェーディング補正値は、シェーディング補正値の取得処理が行われるたびに更新される。画像データに対するシェーディング補正は、常に最新のシェーディング補正値を用いて行われる。
【0029】
(読取位置のズレ)
画像読取装置1が連続して読取動作を行う場合、CISユニット13内部の照明部131や撮像部134の温度が上昇する。その結果、照明部131、光学レンズ133、及び撮像部134が実装される基板が膨張し、初期状態における光学レンズ133に対する撮像部134の位置が、連続した読取動作後における光学レンズ133に対する撮像部134の位置とは異なる位置になる。これは、光学レンズ133の熱膨張率が基板の熱膨張率とは異なる値であるからである。
【0030】
図3は、光学レンズ133に対する撮像部134の相対的な位置(ズレ量)の時間変化を表すグラフである。CISユニット13は、駆動開始されてから所定時間以内は、温度変化が大きい状態が続く。例えば、CISユニット13は、駆動開始から約20分未満は温度が急激に上昇し、20分以上経過すると温度が安定する。ズレ量は温度が安定するまで大きく変化する。したがって、各画素の輝度の主走査方向における不均一さは、初期状態と連続した読取動作中とで異なる。
【0031】
このような温度変化に対応するために、画像読取装置1は、連続して読取動作を行う間に、所定の間隔でシェーディング補正値の取得処理を行う。動作中にシェーディング補正値を取得する場合、CISユニット13を基準白色板11の読取位置まで一旦移動させる必要がある。この間、ADF220による原稿の搬送が一旦中断される。したがって、シェーディング補正値の取得処理は可能な限り回数を削減することが、生産性の観点から好ましい。本実施形態では、読取動作を開始してから所定時間が経過するまでは、シェーディング補正値の取得は第1の時間間隔で行われ、読取動作を開始してから所定時間が経過した後は、シェーディング補正値の取得は第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔で行われる。なお、所定時間は、読取動作を開始してから読取ユニットの温度が安定するまでの時間よりも長い時間である。
【0032】
(画像読取処理)
図4は、画像読取装置1による画像読取処理を表すフローチャートである。CPU5は、画像読取処理の開始時及びその途中にシェーディング補正値の取得処理を行う。この処理は、ADF220を用いて複数枚の原稿から画像を連続して読み取る際に行われる。
【0033】
CPU5は、外部装置や操作部から画像読取の指示を受け付けると、画像読取の動作を開始する(S101)。動作を開始したCPU5は、シェーディング補正値の取得処理を実行する。そのためにCPU5は、スキャナモータ18によりCISユニット13を基準白色板11の直下に移動させて、CISユニット13に基準白色板11を読み取らせる。CPU5は、基準白色板11の読取結果に基づいて、デジタル処理部6にシェーディング補正値を算出させる(S102)。シェーディング補正値はメモリ61に格納される。CPU5は、シェーディング補正値の取得処理の実行回数をカウントする。また、CPU5は、シェーディング補正値の取得処理の終了直後からの時間(シェーディング補正値取得後の読取動作時間)のカウントを開始する。
【0034】
シェーディング補正値を算出したCPU5は、スキャナモータ18により、CISユニット13を基準白色板11の直下から読取位置207の直下に移動させる(S103)。CISユニット13を読取位置207の直下に移動させると、CPU5は、ADF220に原稿トレイ201から1枚ずつ原稿を搬送させる。CPU5は、CISユニット13に読取位置207を通過する原稿の画像を1ラインずつ読み取らせる。原稿の画像の読取結果(電気信号)は、CISユニット13から増幅器21及びA/D変換器22を介して、画像データとしてデジタル処理部6へ送信される。デジタル処理部6は、画像データに対してシェーディング補正値による補正等の各種のデジタル画像処理を行い、処理後の画像データをメモリ61に格納する(S104)。
【0035】
原稿の画像の読取処理を行ったCPU5は、当該原稿が最後の原稿であり、画像読取処理を終了するか否かを判断する(S105)。最後の原稿の画像読取処理が終了した場合(S105:Y)、CPU5は、スキャナモータ18によりCISユニット13を所定の待機位置に移動させて処理を終了する(S106)。
【0036】
画像読取処理を継続する場合(S105:N)、CPU5は、読取動作中のCISユニットの出力変動を補正するために、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n回以上であるか否かを判断する(S107)。シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数nより少ない場合(S107:Y)、CPU5は、前回のシェーディング補正値の取得処理からの読取動作時間が第1の時間間隔を示す時間t1より長いか否かを判断する(S108)。読取動作時間が時間t1より短い場合(S108:N)、CPU5は、読取動作時間が時間t1以上となるまで読取動作を行う。
【0037】
読取動作時間が時間t1以上である場合(S108:Y)、CPU5は、シェーディング補正値の取得処理を再度実行して新たなシェーディング補正値を取得すると判断する。そのためにCPU5は、スキャナモータ18によりCISユニット13を基準白色板11の直下まで移動させる(S109)。CPU5は、CISユニット13に基準白色板11を読み取らせる。CPU5は、基準白色板11の読取結果に基づいて、デジタル処理部6にシェーディング補正値を算出させる(S110)。新たに算出されたシェーディング補正値はメモリ61に格納される。CPU5は、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHに1加算する。また、CPU5は、前回のシェーディング補正値の取得処理の終了直後からカウントしている読取動作時間をクリアして、新たに読取動作時間の計時を開始する。シェーディング補正値を算出したCPU5は、スキャナモータ18により、CISユニット13を基準白色板11の直下から読取位置207の直下に移動させて、画像読取が終了するまで処理を継続する。
【0038】
シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n以上の場合(S107:N)、CPU5は、前回のシェーディング補正値の取得処理からの読取動作時間が第2の時間間隔を示す時間t2より長いか否かを判断する(S111)。読取動作時間が時間t2より短い場合(S111:N)、CPU5は、読取動作時間が時間t2以上となるまで読取動作を行う。
【0039】
読取動作時間が時間t2以上である場合(S111:Y)、CPU5は、シェーディング補正値の取得処理を再度実行して新たなシェーディング補正値を取得すると判断する。そのためにCPU5は、S109、S110の処理によりシェーディング補正値の取得処理を再度実行する。シェーディング補正値を算出したCPU5は、スキャナモータ18により、CISユニット13を基準白色板11の直下から読取位置207の直下に移動させて、画像読取が終了するまで処理を継続する。
【0040】
なお、所定回数nは、
図3で説明したズレ量が安定する時間に基づいて設定される。具体的には、例えば、ズレ量が安定する時間(例えば、20分)を時間t1で除算した際の商に基づいて設定される。即ち、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n以上になると、
図3で説明したズレ量が安定してくる。一方、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n未満では、
図3で説明したズレ量の変動量が大きい。本実施形態では、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n未満では、時間t1毎にシェーディング補正値の取得処理を実行する。また、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n以上になると、時間t2毎にシェーディング補正値の取得処理を実行する。
【0041】
時間t1は、連続して画像読取を行うときの初期状態(画像読取処理の実行時間が短い状態)を想定して設定される。初期状態は、ズレ量の変動量が大きい。時間t2は、長時間連続して画像読取処理が行われてズレ量が安定した状態を想定して設定される。ズレ量が安定した状態では、ズレ量の変動量が小さい。即ち、本実施形態では、ズレ量の変動量が大きい初期状態ではシェーディング補正値の取得処理の実行間隔を短くし、ズレ量の変動量が小さい安定した状態ではシェーディング補正値の取得処理の実行間隔を長くする。
【0042】
以上のように、連続して原稿の画像を読み取る場合、シェーディング補正値の取得処理の実行後の読取動作時間と、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHとに基づいて、シェーディング補正値の再度の取得処理の実行タイミングが決定される。シェーディング補正値の取得処理を行う時間間隔は、動作開始から所定時間経過するまでの初期状態のときよりも、所定時間経過後の安定状態の方を長くする。つまり初期状態では、シェーディング補正値の取得処理の実行後の読取動作時間が時間t1以上になれば、シェーディング補正値の再度の取得処理が行われる。安定状態では、シェーディング補正値の取得処理の実行後の読取動作時間が時間t1より長い時間t2以上になれば、シェーディング補正値の再度の取得処理が行われる。このような構成により、読取ユニットの温度変化量を検出するためのセンサを用いることなくシェーディング補正を高精度に行うことができる。即ち、画像読取装置のコストの増大を抑制しつつ、シェーディング補正を高精度に行うことができる。また、不要なシェーディング補正値の取得処理を削減して、生産性の向上をはかることができる。
【0043】
(変形例)
図5は、画像読取装置1による別の画像読取処理を表すフローチャートである。CPU5は、画像読取処理の開始時及びその途中にシェーディング補正値の取得処理を行う。この処理は、ADF220を用いて複数枚の原稿から画像を連続して読み取る際に行われる。
図4の処理ではシェーディング補正値取得後の読取動作時間に基づいてシェーディング補正値の取得処理を行うか否かを判断している。これに対して
図5では、シェーディング補正値取得後に画像を読み取った原稿の枚数に基づいてシェーディング補正値の取得処理を行うか否かを判断する。
【0044】
S201~S207までの処理は、
図4のS101~S107の処理と同様であるので説明を省略する。ただし、CPU5は、S202のシェーディング補正値の取得処理の終了直後から、画像を読み取った原稿の枚数をカウントする。CPU5は、1枚の原稿から画像を読み取るたびに、画像を読み取った原稿の枚数に1加算する。シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数nより少ない場合(S207:Y)、CPU5は、前回のシェーディング補正値の取得処理後に読み取った原稿の枚数が第1の枚数p1より多いか否かを判断する(S208)。読み取った枚数が第1の枚数p1より少ない場合(S208:N)、CPU5は、読み取った枚数が第1の枚数p1以上となるまで読取動作を行う。
【0045】
読み取った枚数が第1の枚数p1以上である場合(S208:Y)、CPU5は、シェーディング補正値の取得処理を再度実行して新たなシェーディング補正値を取得すると判断する。そのためにCPU5は、スキャナモータ18によりCISユニット13を基準白色板11の直下まで移動させる(S209)。CPU5は、CISユニット13に基準白色板11を読み取らせる。CPU5は、基準白色板11の読取結果に基づいて、デジタル処理部6にシェーディング補正値を算出させる(S210)。新たに算出されたシェーディング補正値はメモリ61に格納される。CPU5は、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHに1加算する。また、CPU5は、前回のシェーディング補正値の取得処理の終了直後からカウントしている画像を読み取った原稿の枚数をクリアして、新たに、シェーディング補正値の取得処理の終了直後から画像を読み取った原稿の枚数をカウントする。シェーディング補正値を算出したCPU5は、スキャナモータ18により、CISユニット13を基準白色板11の直下から読取位置207の直下に移動させて、画像読取が終了するまで処理を継続する。
【0046】
シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHが所定回数n以上の場合(S207:N)、CPU5は、前回のシェーディング補正値の取得処理後に読み取った原稿の枚数が第2の枚数p2より多いか否かを判断する(S211)。読み取った枚数が第2の枚数p2より少ない場合(S211:N)、CPU5は、読み取った枚数が第2の枚数p2以上となるまで読取動作を行う。
【0047】
読み取った枚数が第2の枚数p2以上である場合(S211:Y)、CPU5は、シェーディング補正値の取得処理を再度実行して新たなシェーディング補正値を取得すると判断する。そのためにCPU5は、S209、S210の処理によりシェーディング補正値の取得処理を再度実行する。シェーディング補正値を算出したCPU5は、スキャナモータ18により、CISユニット13を基準白色板11の直下から読取位置207の直下に移動させて、画像読取が終了するまで処理を継続する。
【0048】
第1の枚数p1は、連続して画像読取を行うときの初期状態(画像読取処理の実行時間が短い状態)を想定して設定される。初期状態は、ズレ量の変動量が大きい。第2の枚数p2は、長時間連続して画像読取処理が行われてズレ量が安定した状態を想定して設定される。ズレ量が安定した状態では、ズレ量の変動量が小さい。即ち、本実施形態では、ズレ量の変動量が大きい初期状態ではシェーディング補正値の取得処理の実行間隔を短くし、ズレ量の変動量が小さい安定した状態ではシェーディング補正値の取得処理の実行間隔を長くする。
【0049】
以上のように、連続して原稿の画像を読み取る場合、シェーディング補正値の取得処理の実行後に読み取った原稿の枚数と、シェーディング補正値の取得処理の実行回数SHとに基づいて、シェーディング補正値の再度の取得処理の実行タイミングが決定される。シェーディング補正値の取得処理を行う時間間隔は、動作開始から所定時間経過するまでの初期状態のときよりも、所定時間経過後の安定状態の方を長くする。つまり初期状態では、シェーディング補正値の取得処理の実行後に読み取った枚数が第1の枚数p1以上になれば、シェーディング補正値の再度の取得処理が行われる。安定状態では、シェーディング補正値の取得処理の実行後に読み取った枚数が第1の枚数p1より多い第2の枚数p2以上になれば、シェーディング補正値の再度の取得処理が行われる。このような構成により、読取ユニットの温度変化量を検出するためのセンサを用いることなくシェーディング補正を高精度に行うことができる。即ち、画像読取装置のコストの増大を抑制しつつ、シェーディング補正を高精度に行うことができる。また、不要なシェーディング補正値の取得処理を削減して、生産性の向上をはかることができる。
【0050】
以上の説明では、画像読取装置1単体を例に説明したが、このような画像読取装置1と画像形成装置とを組み合わせた複写機、ファクシミリ装置、複合機等にも本発明は適用可能である。画像形成装置は、電子写真方式やインクジェット記録方式を採用可能である。画像読取装置1は、画像形成装置で印刷された原稿を読み取り、印字精度を検出する用途に用いることができる。