(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】撮像装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/68 20230101AFI20240716BHJP
G03B 9/36 20210101ALI20240716BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20240716BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20240716BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20240716BHJP
【FI】
H04N23/68
G03B9/36 C
G03B5/00 L
G03B5/00 J
G03B7/091
H04N23/54
(21)【出願番号】P 2020054705
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】刈部 和也
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009094(JP,A)
【文献】特開2006-330114(JP,A)
【文献】特開2019-161499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/68
G03B 9/36
G03B 5/00
G03B 7/091
H04N 23/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を取得する撮像素子と、
ブレ検出手段により検出されたブレ量に基づいて前記撮像素子を移動させることでブレを補正するブレ補正機構と、
先羽根群および後羽根群を有するシャッタ装置と、
前記ブレ補正機構のブレ補正制御を行う制御手段と、を有
する撮像装置であって、
前記撮像
装置は、前記先羽根群と前記後羽根群とで形成される領域を通過する光に基づいて前記画像を取得する第1のモードと、前記撮像素子の電子先幕と前記後羽根群との間の領域を通過する光に基づいて前記画像を取得する第2のモードと、を有し、
前記制御手段は、シャッタスピードが所定のシャッタスピードよりも遅い場合、前記第1のモード及び前記第2のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行し、
前記制御手段は、前記シャッタスピードが前記所定のシャッタスピードよりも速い場合、前記第1のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行し、且つ、前記第2のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行しないことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記ブレ補正機構は、前記ブレ検出手段により検出された並進ブレ量及び回転ブレ量に基づいて前記撮像素子を並進移動及び回転移動させることでブレを補正する並進ブレ及び回転ブレ補正制御する機構であり、
前記制御手段は、前記シャッタスピードが前記所定のシャッタスピードよりも遅い場合、前記第1のモード及び前記第2のモードにおいて前記並進ブレ及び回転ブレ補正制御を実行し、
前記制御手段は、前記シャッタスピードが前記所定のシャッタスピードよりも速い場合、前記第1のモードにおいて前記並進ブレ及び回転ブレ補正制御を実行し、且つ、前記第2のモードにおいて前記並進ブレ及び回転ブレ補正制御を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
撮像素子を用いて画像を取得する取得ステップと、
ブレ検出手段により検出されたブレ量に基づいて、ブレ補正機構のブレ補正制御を行い前記撮像素子を移動させることでブレを補正するブレ補正ステップと、を
備え、
シャッタ装置の先羽根群と後羽根群とで形成される領域を通過する光に基づいて前記画像を取得する第1のモードと、前記撮像素子の電子先幕と前記後羽根群との間の領域を通過する光に基づいて前記画像を取得する第2のモードと、を有
する撮像装置の制御方法において、
前記ブレ補正ステップにおいて、
シャッタスピードが所定のシャッタスピードよりも遅い場合、前記第1のモード及び前記第2のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行し、
前記ブレ補正ステップにおいて、前記シャッタスピードが前記所定のシャッタスピードよりも速い場合、前記第1のモードにおいて、前記ブレ補正制御を実行し、
且つ、前記第2のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行しないことを特徴とする
撮像装置の制御方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の
撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカシャッタ撮影モードと電子先幕撮影モードを有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メカシャッタ撮影モードを有する撮像装置が知られている。メカシャッタ撮影モードでは、カメラ内に搭載されたフォーカルプレーンシャッタのメカシャッタ(先羽根群と後羽根群の2つのシャッタ羽根)により形成されるスリットが撮像面を連続的に露光する。また、メカシャッタと電子シャッタとを併用して撮像動作を行う電子先幕撮影モードを有する撮像装置が知られている。このような撮像装置は、フォーカルプレーンシャッタの後羽根群(後幕)と、後幕の走行に先行して撮像素子の電荷蓄積開始走査(リセット走査)を行う電子先幕とにより、撮影を行う。
【0003】
近年、撮像素子を移動させてブレ補正を行うブレ補正機構を備えた撮像装置が提案されている。しかし、電子先幕撮影中にブレ補正を行って撮像素子が駆動されると、撮像素子の画素のリセット走査と後羽根群との間の領域を通過して撮像素子に露光する光量が変化し、適切な画像を取得することができない。撮像素子の画素のリセット走査とメカシャッタで構成される後羽根群との間の領域の幅は、シャッタ秒時(シャッタスピード)が高速であるほど狭いため、撮像素子が駆動することによる画像の露出への影響が大きい。
【0004】
特許文献1には、カメラの撮影時のシャッタ秒時が所定のシャッタ秒時よりも遅い場合にはブレ補正制御を許可し、シャッタ秒時が所定のシャッタ秒時よりも速い場合にはブレ補正制御を禁止するカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたカメラは、シャッタ秒時が所定のシャッタ秒時よりも速い場合、メカシャッタ撮影および電子先幕撮影のいずれの撮影モードにおいてもブレ補正を禁止する。したがって、シャッタ秒時が所定のシャッタ秒時よりも速い場合におけるメカシャッタ撮影において、撮像素子のブレ補正およびレンズのブレ補正を行わないため、撮影画像がブレる可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、適切な露出で適切にブレ補正を実行して画像を取得可能な撮像装置、制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての撮像装置は、画像を取得する撮像素子と、ブレ検出手段により検出されたブレ量に基づいて前記撮像素子を移動させることでブレを補正するブレ補正機構と、先羽根群および後羽根群を有するシャッタ装置と、前記ブレ補正機構のブレ補正制御を行う制御手段と、を有する撮像装置であって、前記撮像装置は、前記先羽根群と前記後羽根群とで形成される領域を通過する光に基づいて前記画像を取得する第1のモードと、前記撮像素子の電子先幕と前記後羽根群との間の領域を通過する光に基づいて前記画像を取得する第2のモードとを有し、前記制御手段は、シャッタスピードが所定のシャッタスピードよりも遅い場合、前記第1のモード及び前記第2のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行し、前記制御手段は、前記シャッタスピードが前記所定のシャッタスピードよりも速い場合、前記第1のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行し、且つ、前記第2のモードにおいて前記ブレ補正制御を実行しない。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な露出で適切にブレ補正を実行して画像を取得可能な撮像装置、制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各実施例における撮像装置のブロック図である。
【
図2(a)】各実施例におけるシャッタ装置の分解斜視図である。
【
図2(b)】各実施例におけるシャッタ装置の分解斜視図である。
【
図3】各実施例におけるシャッタ装置の撮影待機状態の平面図である。
【
図4】各実施例におけるブレ補正機構を被写体側から見た分解斜視図である。
【
図5】各実施例におけるブレ補正機構を撮像素子側から見た分解斜視図である。
【
図6】各実施例におけるブレ補正機構の可動部の分解斜視図である。
【
図7】各実施例におけるブレ補正機構の可動部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、
図1を参照して、本発明の実施例1における撮像装置について説明する。
図1は、撮像装置200のブロック図である。撮像装置200は、撮像素子301を有するカメラ本体(撮像装置本体)201と、カメラ本体201に着脱可能な撮像レンズ202(交換レンズ、レンズ装置)とを備えて構成される。撮像装置200は、フォーカルプレーンシャッタ218の先羽根4と後羽根5によるメカシャッタ方式と、撮像素子301によるリセット走査(電子先幕走査)と後羽根5による電子先幕方式とを選択可能である。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、撮像レンズと撮像装置本体とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
【0014】
撮像レンズ202は、ブレ補正用レンズ401bを有する撮像光学系401を備える。本実施例において、撮像光学系401の光軸401aと直交する平面を光軸直交平面401cとする。なお撮像レンズ202は、絞りを有していてもよい。
【0015】
カメラ本体201と撮像レンズ202はそれぞれ、ブレ補正制御手段216a、216bと、ブレ検出手段217a、217bと、ブレ補正機構300、400とを備える。撮像素子301は、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどにより構成され、カメラ本体201内で撮像面301aを不図示の被写体側に向けて光軸401aに直交するように配置される。撮像素子301は、後述する撮像光学系401が結像させる被写体光束を撮像面301a上で光電変換することにより画像信号を生成する。撮像光学系401は、撮像レンズ202内の不図示のレンズ群により構成されており、不図示の被写体光束を撮像素子301の撮像面301a上に結像させる。撮像光学系401は、後述するブレ補正用レンズ401bを含む。
【0016】
撮像レンズ202内の撮像光学系401により光軸401aが形成される。撮像装置200においては、光軸401aに対して撮像素子301を正確に配置するため、撮像レンズ202と撮像素子301とが共にカメラ本体201内の不図示のマウント部材を介して接続される。この際、撮像素子301は、後述するブレ補正機構300を介してカメラ本体201の不図示のフレーム部材に対して接続される。また、撮像レンズ202は不図示のマウント部材を介して不図示のフレーム部材に対して接続される。
【0017】
撮像装置200において、撮像素子301およびブレ補正用レンズ401bはそれぞれ、ブレ補正手段を構成する。これらが光軸直交平面401cで並進または回転移動することによりブレ補正が実行される。より具体的には、撮像装置200が撮影中に不図示の被写体に対して姿勢変化がある、すなわちブレると、撮像素子301の撮像面301a上における被写体光束の結像位置が変化することで画像にブレが発生する。このような姿勢の変化が十分に小さい場合、前述の結像位置の変化は撮像面301a内で一様であり、光軸直交平面401cにおける並進または回転移動とみなすことができる(像面ブレ)。よって、この像面ブレを低減する(打ち消す)ように、撮像素子301の光軸直交平面401cでの並進または回転移動制御をすると、ブレ補正を行うことができる。また、ブレ補正用レンズ401bは、光軸直交平面401cで並進移動することで光軸401aを屈折させることができる。よって、前述の像面ブレを低減する(打ち消す)ように、ブレ補正用レンズ401bの光軸直交平面401cでの並進移動制御をすることでブレ補正を行うことができる。なお、より詳細なブレ補正の原理および制御は公知であるため、その説明を省略する。
【0018】
ブレ補正手段である撮像素子301およびブレ補正用レンズ401bはそれぞれ、ブレ補正機構300、400により、光軸401a上で光軸直交平面401cの一定範囲内で移動可能に保持され、移動制御される。なお一般的に、これらの移動可能範囲が広い程、補正可能な像面ブレ量が大きくなるため、より多くの撮影シーンでブレ補正をしやすくなる。一方、カメラ本体201や撮像レンズ202が大型化するため、移動可能範囲は適切な必要量に設定される。
【0019】
ブレ補正機構(第1のブレ補正機構)300は、
図1には不図示の固定部と可動部、および複数の駆動力発生部を有する。固定部は可動部を三自由度で支持し、固定部に対して相対的に所定の駆動平面内で並進および回転させる。そして、固定部が不図示のフレーム部材に対して固定され、可動部が撮像素子301を保持することで、撮像素子301を光軸直交平面401c方向で並進および回転可能とする。すなわちブレ補正機構300は、三軸駆動制御可能な駆動装置、いわゆるXYθステージを構成する。
【0020】
ブレ補正機構(第2のブレ補正機構)400は、ブレ補正機構300と同様に、
図1には不図示の固定部と可動部、および複数の駆動力発生部を有する。固定部は可動部を二自由度で支持し、固定部に対して相対的に所定の駆動平面内で並進させる。そして、固定部が撮像レンズ202の筐体および不図示のマウント部材を介して不図示のフレーム部材に対して固定され、可動部がブレ補正用レンズ401bを保持することで、ブレ補正用レンズ401bを光軸直交平面401cで並進可能とする。すなわちブレ補正機構400は、二軸駆動制御可能な駆動装置、いわゆるXYステージを構成する。
【0021】
カメラ本体201および撮像レンズ202のブレ補正制御手段216a、216bはそれぞれ、ブレ補正機構300、400の駆動を制御することで、撮像素子301およびブレ補正用レンズ401bの移動を制御し、ブレ補正を実行する。この際、撮像素子301および光軸401aの移動目標値は、共に、撮像装置200のブレ情報に基づいて算出される。ブレ情報は、カメラ本体201のブレ検出手段217aおよび撮像レンズ202のブレ検出手段217bから取得することができる。
【0022】
ブレ検出手段217a、217bは、撮像装置200の各方向の角度変化量や移動量に関する情報を検出する。例えば、これらは共にジャイロセンサや加速度センサ等により構成され、撮像装置200の各方向の角速度や加速度を検出する。よって、カメラ本体201のブレ補正制御手段216aおよび撮像レンズ202のブレ補正制御手段216bはこの角速度や加速度を積分することで、ブレ情報としての撮像装置200の各方向の角度変化量や移動量を算出することができる。このようにブレ補正制御手段216a、216bは、撮像素子301およびブレ補正用レンズ401bの移動目標値を算出し、ブレ補正機構300、400の駆動を制御する。なお撮像装置200は、ブレ補正機構400を有さなくてもよい。この場合、撮像レンズ202のブレ補正手段(ブレ補正用レンズ401b)は、光軸401aに対して固定的に配置される。
【0023】
フォーカルプレーンシャッタ(シャッタ装置)218は、撮像素子301に対して被写体側に配置され、後述するように、先羽根群4、後羽根群5、先駆動源24、および後駆動源25を有する。CPU(制御手段)204は、シャッタ駆動回路205を介して、フォーカルプレーンシャッタ218(先羽根群4、後羽根群5、先駆動源24、後駆動源25)の動作(羽根群走行の開始タイミング、モータの駆動)を制御する。またCPU204は、後述のように、垂直駆動変調回路208によるリセット走査の走査パターンを制御する。
【0024】
第1スイッチ(SW1)210は、撮像準備を開始するためのスイッチである。第2スイッチ(SW2)211は、撮像を開始するためのスイッチである。第1スイッチ210および第2スイッチ211は、2段スイッチとして構成されており、第1ストロークで第1スイッチ210がONし、第2ストロークで第2スイッチ211がONする。
【0025】
レンズ制御手段215は、撮像レンズ202の焦点距離、絞り径(絞り値)、射出瞳径、射出瞳と撮像素子301との間の距離などの撮影条件情報(撮像レンズ202の状態に関する情報、すなわちレンズ情報)をCPU204に出力する。またレンズ制御手段215は、CPU204からの指示に応じて、撮像レンズ202(絞りを含む)の動作(駆動)を制御する。CPU204は、信号処理回路209、垂直駆動変調回路(走査手段)208、シャッタ駆動回路205、および、レンズ制御手段215の制御および演算を行う。またCPU204は、パルス発生回路207を介して、走査クロック(水平駆動パルス)や所定の制御パルスを撮像素子301へ供給する。
【0026】
パルス発生回路207にて発生した走査クロックのうち垂直走査用のクロックは、垂直駆動変調回路208により所定のクロック周波数に変調され、撮像素子301に入力される。垂直駆動変調回路208は、CPU204の指令に基づいて、電子先幕としてのリセット走査の走査パターン(走査カーブ)を設定する。垂直駆動変調回路208は、電子先幕としての走査手段であり、リセット走査の走査パターンを決定する。垂直駆動変調回路208は、CPU204の指令に基づいて、上から下への方向ないし下から上への方向に順に蓄積電荷のリセット走査、すなわち、撮像素子301の画素ごとに電荷蓄積を開始する走査を行う。
【0027】
パルス発生回路207は、信号処理回路209にもクロック信号を出力する。信号処理回路209は、撮像素子301から読み出された信号に対して所定の処理(色処理やガンマ補正など)を施すことにより、画像データを生成する。記録媒体212は、信号処理回路209により処理された画像データを記録する。表示部213は、液晶ディスプレイ(LCD)などで構成され、撮像した画像や各種メニュー画面などを表示する。RAM(Random Access Memory)214は、信号処理回路209に接続され、画像データなどを一時的に記憶する記憶手段である。
【0028】
次に、
図2(a)、(b)、および
図3(a)、(b)を参照して、本実施例におけるフォーカルプレーンシャッタ218の構成について説明する。
図2(a)は、フォーカルプレーンシャッタ218を撮像素子301が取り付けられる側(撮像素子側)から見た分解斜視図である。
図2(b)は、撮像レンズ202が取り付けられる側(被写体側)から見た分解斜視図である。
図3(a)は、撮像素子側から見たフォーカルプレーンシャッタ218の撮影待機状態の平面図である。
図3(b)は、被写体側から見たフォーカルプレーンシャッタ218の撮影待機状態の平面図である。
【0029】
シャッタ地板1の被写体側には、仕切り板2とカバー板3がそれぞれ所定の間隔をあけて順に取り付けられている。シャッタ地板1、仕切り板2、およびカバー板3の3つの板部材には、類似した形状のアパーチャ1a、2a、3aが形成され、3つのアパーチャ1a~3aを重ね合わせた長方形の露光開口が、フォーカルプレーンシャッタ218を通過する光束を規定している。また、これら3つの板部材の間に2つの羽根室を形成し、それらの羽根室内には遮光羽根と羽根アームからなるシャッタ羽根が、先羽根群4および後羽根群5として個別に配置される。
【0030】
シャッタ地板1の強度向上のため、また、各種金属軸を加締めるために、金属で形成された補助地板6が、シャッタ地板1とビスによって締結されている。補助地板6には、撮像素子側に複数の軸6a、6b、6c、6d、6e、6fが立設されており、軸6a、6b、6c、6dには、先駆動部材7、後駆動部材8、先係止部材9、および後係止部材10がそれぞれ回転可能に取り付けられている。また、補助地板6の被写体側には、DCモータ等である先駆動源24および後駆動源25が、それぞれビスにより締結されている。
【0031】
補助地板6の被写体側には、ギア地板26がビスにより締結されている。先カムギア22および後カムギア23は、ギア地板26の撮像素子側に立設された軸26a、26bに、それぞれ回転可能に取り付けられている。ギア地板26の撮像素子側の軸26c、26eには、先減速ギア群27が、軸26d、26fには、後減速ギア群28が回転可能に軸支されている。先駆動源24の出力軸24aと先減速ギア群27と先カムギア22、および、後駆動源25の主力軸25aと後減速ギア群28と後カムギア23が、それぞれ係合している。これにより、先駆動源24および後駆動源25のトルクを先カムギア22および後カムギア23にそれぞれ伝達している。先駆動源24および後駆動源25は、正転および逆転のいずれにも使用可能である。本実施例では、
図3(a)において、先カムギア22および後カムギア23が反時計方向に回転する方向を正転と定義する。
【0032】
図3(a)中に示される線A-A’は、露光開口中心を通る線である。先羽根群4を駆動する部品に関し、線A-A’に近い順に、先カムギア22の回転軸である軸26a、先駆動部材7の回転軸である軸6a、先減速ギア群27の回転軸である軸26c、先駆動源24の出力軸24aが配置されている。一方、後羽根群5を駆動する部品の配置に関し、線A-A’に近い順に、後カムギア23の回転軸である軸26b、後駆動部材8の回転軸である軸6b、後減速ギア群28の回転軸である軸26d、および、後駆動源25の主力軸25aが配置されている。
【0033】
前述の配置は、フォーカルプレーンシャッタ218を先駆動源24と後駆動源25の2つの駆動源で動作させ、先羽根群4と後羽根群5を駆動するのに必要なトルクを分散し、先カムギア22と後カムギア23を小型化することにより可能となる。これにより、フォーカルプレーンシャッタ218の全体を小型化することができる。
【0034】
駆動部材7、8は、駆動ばね12、13の付勢力によって、撮像素子側から見て反時計方向に付勢されている。時計方向へは、カムギア22、23により、駆動ばね12、13の付勢力に抗して回転させられる。そしてセット位置では、駆動部材7、8に設けられた係止部7a、8aと、係止部材9、10の係止部9a、10aとが係合することにより、駆動部材7、8が係止される。また駆動部材7、8には、駆動ピン7b、8bが設けられ、シャッタ地板1と補助地板6とカバー板3の3組の長孔1bと長孔1c、長孔6gと長孔6h、および、長孔3bと長孔3cをそれぞれ貫通しつつ、羽根アーム4a、5aの長孔4c、5cと係合している。また駆動部材7、8には、ローラ14、15、16、17が回転可能に取り付けられている。ローラ14、15を介して先カムギア22による先駆動部材7のセット作動が、ローラ16、17を介して後カムギア23による後駆動部材8のセット作動が、それぞれ好適に行われる。
【0035】
本実施例において、先カムギア22にはカム面22aとカム面22bが、後カムギア23にはカム面23aとカム面23bが、それぞれ形成されている。駆動部材7、8にそれぞれ取り付けられた2つのローラ14、15および2つのローラ16、17が、2つのカム面に順次接触してセット作動が行われる。これにより、駆動部材7、8とカムギア22、23のセット作動時の回転量が均されるため、セット作動時の最大負荷を低減させることが可能である。ところで、関係部品の許容公差によっては、駆動部材7、8を許容範囲内のセット位置に配置されない場合がある。その際には、ローラ15、17を交換することで、駆動部材7、8のセット位置を調整することができる。
【0036】
羽根位相検出手段29、30およびカム位相検出手段31、32は、非接触の光学式位相検出手段であり、補助地板6の撮像素子側に配置された押さえ地板11に取り付けられている。本実施例では、羽根位相検出手段29、30およびカム位相検出手段31、32として、フォトインタラプタを使用している。羽根位相は、駆動部材7、8の被検出部7f、8fによる羽根位相検出手段29、30の遮光状態を判定することで位相が検出される。カム位相は、カムギア22、23の被検出部22c、23cによるカム位相検出手段31、32の遮光状態を判定することで位相が検出される。本実施例では、カム位相検出手段31、32として、それぞれ2つずつのフォトインタラプタ31a、31bおよびフォトインタラプタ32a、32bを使用して位相を判定する。
【0037】
本実施例の先羽根群4と後羽根群5はそれぞれ、2組の羽根アーム4a、4b、5a、5bと、4組の遮光羽根4d、4e、4f、4g、5d、5e、5f、5gとで構成されている。先羽根群4は、2つの羽根アーム4a、4bが、補助地板6の被写体側において、軸6i、6jに回動自在に枢着されている。4枚の羽根4d、4e、4f、4gは、羽根アーム4a、4bに対して連結軸33を介して枢支されている。前述のように、羽根アーム4aには、長孔4cが形成され、先駆動部材7の駆動ピン7bが係合している。後羽根群5は、2つの羽根アーム5a、5bが、補助地板6の被写体側において、軸6k、6lに回動自在に枢着されている。そして、4枚の遮光羽根5d、5e、5f、5gが、羽根アーム5a、5bに対して連結軸33を介して枢支されている。前述のように、羽根アーム5aには、長孔5cが形成され、後駆動部材8の駆動ピン8bが係合している。またフォーカルプレーンシャッタ218は、不図示のフレーム部材に対して固定されている。
【0038】
次に、
図4および
図5を参照して、本実施例における駆動装置としてのブレ補正機構300の構成について説明する。
図4は、ブレ補正装置300を被写体側から見た分解斜視図である。
図5は、ブレ補正装置300を撮像素子側から見た分解斜視図である。ブレ補正機構300は、固定部300aと可動部300bとを備える。
【0039】
固定部300aは、固定部材302、第1の枠部材303a、第2の枠部材303b、第3の枠部材303c、第1のマグネット群305a、第2のマグネット群305b、および、第3のマグネット群305cを備える。固定部材302には、第1の開口302a、第2の開口302b、および、第3の開口302cが設けられている。第1の開口302a、第2の開口302b、および、第3の開口302cにはそれぞれ、第1の枠部材303a、第2の枠部材303b、および、第3の枠部材303cの外形で係合している。第1の枠部材303a、第2の枠部材303b、および、第3の枠部材303cの内径にはそれぞれ、第1のマグネット群305a、第2のマグネット群305b、および、第3のマグネット群305cが係合している。第1のマグネット群305a、第2のマグネット群305b、および、第3のマグネット群305cはそれぞれ、着磁方向の異なる3つのマグネットにより、ハルバッハ磁気回路を形成している。
【0040】
固定部300aは、第1のリアヨーク306a、第2のリアヨーク306b、および、複数のスペーサ部材304を備えている。第1のリアヨーク306aは第1のマグネット群305aを、第2のリアヨーク306bは第2のマグネット群305bおよび第3のマグネット群305cをそれぞれ光軸直交平面401cの投影上で覆うように配置される。これらは、固定部材302との間に配されたスペーサ部材304と当接し、光軸401a方向の位置が規定される。
【0041】
また固定部300aは、それぞれ当接面307dを有する第1の柱部材307a、第2の柱部材307b、および第3の柱部材307cを備える。第1の柱部材307a、第2の柱部材307b、および第3の柱部材307cは、固定部材302にそれぞれ係合し、当接面307dが固定部材302に当接し、光軸401a方向の位置が規定される。
【0042】
前述のように、第1のリアヨーク306aおよび第2のリアヨーク306bは、複数のスペーサ部材304により固定部材302に対する位置が規定される。第1の柱部材307a、第2の柱部材307b、および第3の柱部材307cはそれぞれ、当接面307dにより固定部材302に対する位置が規定される。規定された位置において、第1のリアヨーク306aは固定部材302を挟み、ビス部材308で第1の柱部材307aおよび第2の柱部材307bに固定される。また規定された位置において、第2のリアヨーク306bは、ビス部材308で固定部材302へ固定され、固定部材302を挟み、第3の柱部材307cに固定される。これにより、第1のリアヨーク306a、第2のリアヨーク306b、第1の柱部材307a、第2の柱部材307b、および第3の柱部材307cは、固定部材302に固定されている。
【0043】
第1のマグネット群305a、第2のマグネット群305b、および第3のマグネット群305cはそれぞれ、フランジ部305dを有する。そして、固定部材302と第1のリアヨーク306aおよび第2のリアヨーク306bとがフランジ部305dを抑えることで固定されている。なお本実施例では、ハルバッハ磁気回路を形成するように複数のマグネット配列を示しているが、1つのマグネットに複数の極を着磁するような、ハルバッハ磁気回路と異なる構成でもよい。
【0044】
固定部300aは、規制部材309および締結部材310を備え、規制部材309は締結部材310によって固定部材302に固定される。詳細は後述するが、規制部材309と締結部材310は、可動部300bの移動を規制する。また固定部300aはフロントヨーク311を備え、フロントヨーク311は第1の柱部材307a、第2の柱部材307b、および第3の柱部材307cにビス部材308で固定される。固定部300aはマグネット312を備え、マグネット312は固定部材302に接着剤などで固定される。
【0045】
次に、
図6および
図7を参照して、可動部300bの構成について説明する。
図6は、ブレ補正装置300の可動部300bの分解斜視図である。
図6に示されるように、可動部300bは、可動部材313および撮像素子301を備える。撮像素子301は、可動部材313に対して接着剤などで固定される。第1のマスク314a、第2のマスク314b、赤外吸収フィルタ315a、および光学ローパスフィルタ315bは、ホルダ部材316とホルダ板金317により保持され、撮像素子301に粘着部材などで固定される。第1のマスク314aおよび第2のマスク314bは、撮像素子301に撮影光路外からの余計な光が入射することを防ぐ。光学ローパスフィルタ315bには、振動によって自身の表面についた異物を除去する振動機構318が設けられているが、より詳細な原理および制御については公知であるため、その説明を省略する。
【0046】
また可動部300bは、第1のコイル319a、第2のコイル319b、第3のコイル319c、駆動FPC320、第1の吸着板金321a、および第2の吸着板金321bを備える。可動部材313は、第1の開口313a、第2の開口313b、および第3の開口313cを備える。第1のコイル319aが第1の開口313aの内部に、第2のコイル319bが第2の開口313bの内部に、第3のコイル319cが第3の開口313cの内部にそれぞれ配され、接着剤などで可動部材313に固定される。
【0047】
駆動FPC320は、第1のコイル319a、第2のコイル319b、および第3のコイル319cを光軸直交平面401cの投影上で覆うように配され、接着剤などで可動部材313に固定される。第1のコイル319a、第2のコイル319b、および第3のコイル319cは、駆動FPC320に電気的に接続され、駆動FPC320を介して、ブレ補正制御手段216aにより決められた通電が行われる。
【0048】
第1の吸着板金321aおよび第2の吸着板金321bは、接着剤などで駆動FPC320に固定される。第1の吸着板金321aおよび第2の吸着板金321bは、固定部300aの第1のマグネット群305aおよび第3のマグネット群305cとそれぞれ光軸直交平面401cの投影上で重なっている。これらは、第1のマグネット群305aおよび第3のマグネット群305cに引き付けられることで、可動部300bに付勢力を発生させている。
【0049】
図7は、可動部300bの斜視図である。
図7に示されるように、駆動FPC320は、第1の検出器322a、第2の検出器322b、および第3の検出器322cを備える。第1のコイル319aの内側には第1の検出器322aが、第2のコイル319bの内側には第2の検出器322bが、第3のコイル319cの内側には第3の検出器322cがそれぞれ配置されている。第1の検出器322a、第2の検出器322b、および第3の検出器322cはホール素子である。これらは、後述のように、対向するマグネットの磁力を検出し、ブレ補正制御手段216aにより固定部300aに対する可動部300bの光軸直交平面401c上の位置を算出する。
【0050】
可動部300bは第3の吸着板金321cを備え、第3の吸着板金321cは可動部材313にビス部材308で固定される。第3の吸着板金321cは、固定部300aのマグネット312と対向しており、マグネット312に引き付けられることで可動部300bに付勢力を発生させている。
【0051】
第1の転動部材323a、第2の転動部材323b、および第3の転動部材323cは、可動部材313に設けられた第1の囲い部313d、第2の囲い部313e、および第3の囲い部313fの内部に配置されている。第1の吸着板金321a、第2の吸着板金321bと第1のマグネット群305a、第3のマグネット群305cとによる付勢力と、第3の吸着板金321cとマグネット312とによる付勢力とが発生する。これらの付勢力により、可動部300bは、第1の転動部材323a、第2の転動部材323b、および第3の転動部材323cを介して固定部材302に付勢される。固定部300aに対して可動部300bが移動する際には、第1の転動部材323a、第2の転動部材323b、および第3の転動部材323cが転動するため、摩擦による負荷はほぼ発生しない。
【0052】
第1のコイル319aは第1のマグネット群305aと、第2のコイル319bは第2のマグネット群305bと、第3のコイル319cは第3のマグネット群305cと対向するように位置し、それぞれVCM(ボイスコイルモータ)を構成する。第1のコイル319aと第1のマグネット群305aとで第1のアクチュエータが構成される。同様に、第2のコイル319bと第2のマグネット群305bとで第2のアクチュエータ324b、第3のコイル319cと第3のマグネット群305cとで第3のアクチュエータがそれぞれ構成される。ここで、撮像素子301は略矩形であり、光軸直交平面401cにおいて短辺に垂直な方向をX方向、長辺に垂直な方向をY方向とする。
【0053】
第1のアクチュエータは、撮像素子301のX方向に、短辺に沿って位置する。第1のマグネット群305aは、X方向に磁力が変化するような磁気回路構成であり、第1のコイル319aの通電方向に応じて第1のアクチュエータはX方向に駆動力を発生させる。第2のアクチュエータおよび第3のアクチュエータは、撮像素子301のY方向に、長辺に沿って並んで位置する。第2のマグネット群305bおよび第3のマグネット群305cはそれぞれ、Y方向に磁力が変化するような磁気回路構成である。第2のコイル319bおよび第3のコイル319cの通電方向に応じて、第2のアクチュエータおよび第3のアクチュエータはY方向に駆動力を発生させる。また、第2のアクチュエータおよび第3のアクチュエータは、X方向に光軸401aを中心に略対称に位置しており、第2のアクチュエータと第3のアクチュエータとによる駆動力の差に応じて光軸401a周りの回転力を発生させる。
【0054】
ブレ検出手段217bにより検出されたブレ量(ブレ検出量)に基づいて、前述の方法によりブレを低減する(打ち消す)ように、X方向とY方向、および光軸401a周りの回転方向に可動部300bを駆動する。これにより、ブレを軽減させた画像を取得することが可能である。
【0055】
電子先幕撮影モードでは、撮像素子301のリセット走査(電子先幕)とそれを追いかけるフォーカルプレーンシャッタ218に搭載された後羽根群5との間の領域(スリット)を通過した光が撮像素子301に露光することにより画像を生成する。撮像装置200のブレ検出手段217aがブレを検出すると、ブレ補正を行うために撮像素子301を搭載した可動部300bが駆動する。一方、フォーカルプレーンシャッタ218は、不図示のフレーム部材に固定されているため、電子先幕走行中に可動部300bが動作した場合、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットの幅が変化する。適切な露出の画像を取得するには、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットの幅を保つことが重要である。このスリットの幅が変化した場合、撮像素子301に露光する光量が変化するため、画像の露出の特性が低下する。
【0056】
例えば、撮影中に可動部300bをY方向に駆動するように制御した場合、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットの幅が狭く、または広くなるため、適切な露出に対して暗く、または明るい画像となる。また、撮影中に可動部300bを光軸401a周りの回転方向に駆動するように制御した場合、電子先幕が後羽根群5に対して傾き、左右の明るさが異なる画像となる。
【0057】
したがって、電子先幕撮影モードにおいては、電子先幕走行中に可動部300bが動作しても画像に影響が出ないように、撮影時のシャッタ秒時に応じてブレ補正機構300のブレ補正制御をすることが重要である。
【0058】
メカシャッタ撮影モードでは、先羽根群4と後羽根群5とが領域(スリット)を形成して走行し、スリットを通過した光が撮像素子301に露光することにより画像を作成する。撮像装置200のブレ検出手段217aがブレを検出すると、ブレ補正を行うために撮像素子301を搭載した可動部300bが駆動する。しかし、フォーカルプレーンシャッタ218は不図示のフレーム部材に固定されているため、先羽根群4と後羽根群5とで形成される領域(スリット)の幅は、撮像素子301を搭載した可動部300bが駆動することによっては変化しない。適切な露出の画像を取得するには、先羽根群4と後羽根群5とで形成されるスリットの幅を保つことが重要である。
【0059】
次に、本実施例における撮像装置200の撮影モードによるブレ補正機構300の動作を説明する。本実施例の撮像装置200は、メカシャッタ撮影モード(第1のモード)および電子先幕撮影モード(第2のモード)の2つの撮影モードを有する。
【0060】
(メカシャッタ撮影モード)
撮影モードとしてメカシャッタ撮影モードが選択されている場合、撮像装置200は、ユーザが設定したシャッタ秒時(シャッタスピード)がいずれのシャッタ秒時でも、ブレ補正機構300のブレ補正制御(第1のブレ補正)を実行する。
【0061】
メカシャッタ撮影モードでは、フォーカルプレーンシャッタ218に搭載された先羽根群4と後羽根群5とがスリットを形成して走行し、スリットを通過した光が撮像素子301に露光することにより画像が形成される。したがって、先羽根群4と後羽根群5との間のスリットを通過する光の光量は、ブレ補正機構300の第1のブレ補正がONの場合とOFFの場合とで変化しない。撮像素子301に露光する光量は、撮像素子301を搭載した可動部300bの移動速度に応じて変化する。しかし、可動部300bの移動速度は羽根群の走行速度と比較して遅いため、ブレ補正機構300の駆動による画像の露出への影響は軽微である。このため、メカシャッタ撮影モードにおいては、いずれのシャッタ秒時が設定された場合でも、ブレ補正機構300の駆動を制限しない(ブレ補正機構300のブレ補正制御を実行する)。
【0062】
(電子先幕撮影モード)
撮影モードとして電子先幕撮影モードが選択されている場合、ユーザがブレ補正機構300のブレ補正制御(第1のブレ補正)をONに設定していても、シャッタ秒時が所定の秒時よりも速い秒時である場合にはブレ補正機構300の駆動を禁止する。すなわち、この場合には第1のブレ補正をOFFにして撮影する。一方、シャッタ秒時が所定の秒時よりも遅い秒時である場合、ブレ補正機構300のブレ補正制御を実行しながら撮影を行う(ブレ補正機構300の駆動を許可する)。例えば、所定のシャッタ秒時は1/1000秒であるが、これに限定されるものではない。
【0063】
電子先幕撮影モードでは、前述のように、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットを通過した光が撮像素子301に露光することにより画像を形成する。撮影中にブレ補正機構300が駆動する場合、可動部300bに搭載された撮像素子301が動作することになる。したがって、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットを通過する光の光量が、適切な露光量に対して変化し、ブレ補正機構300の駆動量によっては画像内で露出が変化する。また、シャッタ秒時が速いほど電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットの幅は狭い。したがって、可動部300bが駆動することで、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットの幅が変化することによる画像の露出への影響度が大きく、適切な露出の画像が得られない場合がある。
【0064】
シャッタ秒時が所定の秒時よりも速い場合、撮像素子301の露光時間が短いため、ブレ補正機構300の動作(第1のブレ補正)をOFFにした場合でも、手ブレによる画像への影響は少ない。したがって本実施例では、ブレ補正機構300を駆動することによる画像の露出の特性の低下を防ぐため、所定の秒時よりも速い秒時である場合、ブレ補正機構300のブレ補正制御(第1のブレ補正)をOFFにする。
【0065】
一方、シャッタ秒時が所定の秒時よりも遅い場合、撮像素子301の露光時間が長いため、電子先幕とそれを追いかける後羽根群5との間のスリットを通過する光が適切な露光量に対して変化した場合でも、画像の露出への影響は軽微である。したがって、シャッタ秒時が遅い場合、ブレ補正機構300の駆動を制限しない(ブレ補正機構300のブレ補正制御を実行する)。
【0066】
以上のように、本実施例の撮像装置200は、画像を取得する撮像素子301と、ブレ検出手段217aにより検出されたブレ量に基づいて撮像素子301を移動させることでブレを補正するブレ補正機構300とを有する。また撮像装置200は、先羽根群4および後羽根群5を有するシャッタ装置(フォーカルプレーンシャッタ218)と、ブレ補正機構のブレ補正制御を行う制御手段(ブレ補正制御手段216a)とを有する。撮像素子301は、第1のモード(メカシャッタ撮影モード)と第2のモード(電子先幕撮影モード)とを有する。第1のモードは、先羽根群4と後羽根群5とで形成される領域(スリット)を通過する光に基づいて画像を取得するモードである。第2のモードは、撮像素子301の電子先幕と後羽根群5との間の領域(スリット)を通過する光に基づいて画像を取得するモードである。制御手段は、第1のモードにおいてブレ補正制御を実行し、第2のモードにおいてシャッタ装置のシャッタスピード(シャッタ秒時)に基づいて、ブレ補正制御を実行するか否かを判定する。
【0067】
好ましくは、撮像装置200は、シャッタスピードを設定する設定手段(CPU204)を有する。制御手段は、第2のモードにおいて、設定手段により設定されたシャッタスピードが所定のシャッタスピードよりも速い場合、ブレ補正制御を実行しない。一方、制御手段は、第2のモードにおいて、シャッタスピードが所定のシャッタスピードよりも遅い場合、ブレ補正制御を実行する。本実施例の撮像装置200によれば、適切な露出で適切にブレ補正を実行して画像を取得することができる。
【実施例2】
【0068】
次に、本発明の実施例2における撮像装置について説明する。本実施例の撮像装置は、撮影モードとして、実施例1のメカシャッタ撮影モード(第1のモード)および電子先幕撮影モード(第2のモード)に加えて、電子シャッタモード(第3のモード)を有する点で、実施例1の撮像装置と異なる。以下、電子シャッタモードにおけるブレ補正機構300の動作(ブレ補正制御)について説明する。なお、本実施例の撮像装置の他の構成や動作は、実施例1の撮像装置と同じであるため、それらに関する説明は省略する。
【0069】
(電子シャッタモード)
撮像装置のCPU204は、電子シャッタモードが選択されている場合、ユーザにより設定されたシャッタ秒時がいずれのシャッタ秒時でも、ブレ補正機構300のブレ補正制御(第1のブレ補正)を実行する。すなわち、ユーザが第1のブレ補正をONに設定した場合には第1のブレ補正をONにして撮影を行い、ユーザが第1のブレ補正をOFFに設定した場合には第1のブレ補正をOFFにして撮影を行う。
【0070】
電子シャッタモードにおいて、CPU204は、撮像素子301の撮像面301aに入射した光によって生じた電荷の蓄積開始および蓄積終了を電気的に制御する。したがって、撮影中にブレ補正機構300が駆動したことによる撮像素子301への露光量の変化はなく、撮像素子301を搭載した可動部300bの移動速度に応じてのみ変化する。可動部300bの移動速度は、撮像素子301の電荷の蓄積開始走査および蓄積終了走査と比較して遅いため、ブレ補正機構300の駆動による画像の露出への影響は軽微である。このため本実施例では、電子シャッタモードにおいて、いずれのシャッタ秒時が設定された場合でもブレ補正機構300の駆動を制限しない(ブレ補正機構300のブレ補正制御を実行する)。
【0071】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0072】
各実施例によれば、適切な露出で適切にブレ補正を実行して画像を取得可能な撮像装置、制御方法、およびプログラムを提供することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
4 先羽根群
5 後羽根群
200 撮像装置
216a ブレ補正制御手段(制御手段)
217a ブレ検出手段
218 フォーカルプレーンシャッタ(シャッタ装置)
300 ブレ補正機構
301 撮像素子