(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】画像処理装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240716BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240716BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 207
B41J2/165 501
B41J2/205
B41J2/165 201
B41J2/01 209
(21)【出願番号】P 2020063607
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武末 直也
(72)【発明者】
【氏名】石川 尚
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-128052(JP,A)
【文献】特開2015-074108(JP,A)
【文献】特開2010-058464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0313989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を含む記録ヘッドを用いて記録媒体上に入力画像の印刷を行う画像形成装置のための画像処理装置であって、
階調毎に均一濃度のパッチを含むチャートを所定回数分スキャンして得られるスキャン画像に基づき記録素子毎の濃度特性を取得する取得手段と、
色材を正常に印刷できない不記録素子を検出する検出手段と、
前記所定回数分のスキャンにより得られた前記スキャン画像の濃度測定値のうち、前記検出手段によって前記不記録素子として検出されなかった記録素子に対応する前記スキャン画像の濃度測定値に基づいて、前記入力画像の濃度を補正する補正手段と、
を有し、
前記スキャン画像は、入力階調値における目標濃度を実現するための出力階調値を記録素子毎に規定する情報を含み、
前記補正手段は、
前記濃度特性に基づいて、前記所定回数分のスキャンにより得られた前記スキャン画像それぞれに対応する暫定的な情報を生成し、
生成された複数の前記暫定的な情報における前記出力階調値を選択的に平均化する合成を記録素子毎に行って、入力階調値における目標濃度を実現するための出力階調値を記録素子毎に規定する情報を生成して、前記補正を行う、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記入力画像の入力階調値に対応する、前記記録媒体上の前記入力画像の濃度を示す特性を補正することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像形成装置は、前記記録ヘッドの機能を回復させるためのクリーニングを行う手段を備え、
前記補正手段は、前記画像形成装置に対し、前記チャートの出力をさせる度に、前記クリーニングを実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記クリーニングの実行回数をカウントするカウント手段と、
前記クリーニングの実行回数が規定回数を超えた場合にエラーを通知する通知手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、
各記録素子における処理状態を示すリストを、前記検出手段における検出結果に基づき作成し、
生成された複数の前記暫定的な情報から前記不記録素子の影響を受ける部分を前記リストに基づき除外してその残りについて平均することにより、前記情報を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記所定回数分のスキャンの実行回数をカウントするカウント手段をさらに備え、
前記リストは、各記録素子が前記不記録素子であるかどうかを示す情報と前記カウント手段のカウント値とを対応付けたリストであることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記不記録素子の影響を受ける部分は、前記検出手段で検出された前記不記録素子の周辺記録素子を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記リストは、各記録素子が前記不記録素子又は前記周辺記録素子であるかどうかを示す情報と前記カウント手段のカウント値とを対応付けたリストであることを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記リストにおいて、前記各記録素子が、いずれかのカウント値に対応する前記チャートの出力において正常な記録素子となるまで、前記チャートの出力が繰り返される、ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項10】
複数の記録素子を含む記録ヘッドを用いて記録媒体上に入力画像の印刷を行う画像形成装置のための画像処理方法であって、
階調毎に均一濃度のパッチを含むチャートを所定回数分スキャンして得られるスキャン画像に基づき記録素子毎の濃度特性を取得する取得ステップと、
色材を正常に印刷できない不記録素子を検出する検出ステップと、
前記所定回数分のスキャンにより得られた前記スキャン画像の濃度測定値のうち、前記検出ステップにて前記不記録素子として検出されなかった記録素子に対応する前記スキャン画像の濃度測定値に基づいて、前記入力画像の濃度を補正する補正ステップと、
を含み、
前記スキャン画像は、入力階調値における目標濃度を実現するための出力階調値を記録素子毎に規定する情報を含み、
前記補正ステップでは、前記濃度特性に基づいて、前記所定回数分のスキャンにより得られた前記スキャン画像それぞれに対応する暫定的な情報を生成し、生成された複数の前記暫定的な情報における前記出力階調値を選択的に平均化する合成を記録素子毎に行って、入力階調値における目標濃度を実現するための出力階調値を記録素子毎に規定する情報を生成して、前記補正を行う、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して画像を形成する際に生じる濃度ムラやスジを低減するための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のインク吐出口(ノズル)が配列されたノズル列を有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させつつ、個々のノズルからインク滴を吐出することで、記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が用いられている。インクジェット記録装置で用いられる記録ヘッドは、その製造上の誤差などの原因によって複数のノズル間で吐出量にばらつきを持つことがある。このような吐出量のばらつきがあると、形成される画像に濃度ムラが生じる場合がある。
【0003】
従来、このような濃度ムラを低減する処理として、HS(Head Shading)技術が知られている。HS技術では、ノズル個々の吐出量に関する情報(ノズル特性)に応じて、最終的に形成されるインクドットの数あるいはサイズを増加または減少させ、形成画像に生じる濃度ムラを低減する。上記ノズル特性を取得する際には、例えば、階調毎の均一濃度のパッチから成るチャートを紙面上に印刷し、印刷結果をスキャナで読み取り、読み取った画像を解析する方法が一般的に用いられる。
【0004】
一方、記録ヘッド内の複数のノズルにおいて、インク滴を吐出不能な不吐ノズルが発生することがある。このような不吐ノズルに起因する画像上の白スジを抑制する技術として、不吐補完処理が知られている。不吐補完処理では、不吐ノズルが形成するべきインク滴を他のノズルで補って形成することで、白スジを抑制する。特許文献1には、取得したノズル特性に基づき、不吐ノズルの分をその周辺ノズルによって補完する技術が記載されている。
【0005】
上記濃度ムラ補正処理と不吐補完処理はそれぞれ独立した処理であるところ、不吐ノズルとその周辺ノズルに対応する領域において両処理が重複する結果、当該領域において補正が過剰となり、黒スジや濃度ムラが発生することが知られている。この点、特許文献2には、不吐ノズルの情報に基づいて濃度分布測定用チャートの読み取りデータを修正し、修正後の読み取りデータに基づいて濃度ムラ補正のための補正値を算出することで、黒スジや濃度ムラを抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-71474号公報
【文献】特開2012-147126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
不吐ノズルは、メンテナンスモード等において記録ヘッドのクリーニング処理を行うことで、正常ノズルへと回復する場合がある。その一方で、印刷処理の実行中に不吐ノズルが突発的に発生することもある。そのため、上記特許文献2の手法で良好な印刷結果を維持しようとした場合には、不吐ノズルを考慮した濃度ムラ補正のための補正値算出を頻繁に行う必要がある。しかしながら、上記補正値算出には多くの時間と手間を要すため、これを頻繁に行うと印刷の生産性が低下してしまうことになる。
【0008】
そこで本開示の技術は、濃度ムラ補正のための補正値算出に伴う印刷の生産性低下を抑制しつつ、高精度な濃度ムラ補正を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る画像処理装置は、複数の記録素子を含む記録ヘッドを用いて記録媒体上に入力画像の印刷を行う画像形成装置のための画像処理装置であって、階調毎に均一濃度のパッチを含むチャートを所定回数分スキャンして得られるスキャン画像に基づき記録素子毎の濃度特性を取得する取得手段と、色材を正常に印刷できない不記録素子を検出する検出手段と、前記所定回数分のスキャンにより得られた前記スキャン画像の濃度測定値のうち、前記検出手段によって前記不記録素子として検出されなかった記録素子に対応する前記スキャン画像の濃度測定値に基づいて、前記入力画像の濃度を補正する補正手段と、を有し、前記スキャン画像は、入力階調値における目標濃度を実現するための出力階調値を記録素子毎に規定する情報を含み、前記補正手段は、前記濃度特性に基づいて、前記所定回数分のスキャンにより得られた前記スキャン画像それぞれに対応する暫定的な情報を生成し、生成された複数の前記暫定的な情報における前記出力階調値を選択的に平均化する合成を記録素子毎に行って、入力階調値における目標濃度を実現するための出力階調値を記録素子毎に規定する情報を生成して、前記補正を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の技術によれば、濃度ムラ補正のための補正値算出に伴う印刷の生産性低下を抑制しつつ、高精度な濃度ムラ補正を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】画像形成システムのハードウェア構成を示す図
【
図4】不吐ノズル検出処理の流れを示すフローチャート
【
図6】実施形態1に係る、濃度補正情報生成処理の流れを示すフローチャート
【
図8】補正テーブル作成処理の流れを示すフローチャート
【
図9】(a)及び(b)は、入力階調値に対する補正値の導出方法を説明する図
【
図10】画像形成システムにおける印刷処理の流れを示すフローチャート
【
図11】(a)及び(b)は、補正テーブルの変更を説明する図
【
図14】実施形態2に係る、濃度補正情報生成処理の流れを示すフローチャート
【
図17】実施形態3に係る、濃度補正情報生成処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではない。また、本実施形態において説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
[実施形態1]
本実施形態においては、不吐ノズルを検出可能なパターンを付した所定チャートを用い、不吐ノズルが検出されなくなるまで、記録ヘッドのクリーニング処理と当該所定チャートの出力を繰り返して、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを得る。そして、印刷処理を実行する際には所定のタイミングで不吐ノズル検出処理を行い、不吐ノズルが検出された場合には補正テーブルを適宜修正することで、不吐ノズルによる白スジの発生を抑制する。
【0014】
<画像形成システムのハードウェア構成>
図1は、本実施形態に係る、画像形成システム10のハードウェア構成を示す図である。本実施形態における画像形成システム10は、画像処理装置11、画像形成装置12、入力装置13、表示装置14、外部記憶装置15を有する。以下、画像形成システム10の構成要素について説明する。
【0015】
画像処理装置11は、CPU100、RAM101、ROM102、画像処理モジュール106、外部I/F(インタフェース)110、バス111を備え、いわゆる画像処理コントローラとして機能する。また、画像処理装置11は、外部I/F110を介して入力装置13、表示装置14、外部記憶装置15に接続される。
【0016】
CPU(Central Processing Unit)100は、入力されたデータやRAM101、ROM102に格納されているコンピュータプログラムを用いて、画像形成システム10全体の動作を制御する。なお、ここでは、CPU100が画像形成システム10全体を制御する場合をその一例として説明するが、複数のハードウェアが処理を分担することにより、画像形成システム10全体を制御するようにしてもよい。
【0017】
RAM(Random Access Memory)101は、外部記憶装置15から読み取ったコンピュータプログラムやデータ、外部I/F110を介して外部から受信したデータを一時的に記憶する。また、RAM101は、CPU100が各種の処理を実行するときに用いる記憶領域や画像処理モジュール106が画像処理を実行するときに用いる記憶領域として使用される。ROM(Read Only Memory)102は、画像処理装置11内各部の設定パラメータやブートプログラム等を記憶する。
【0018】
画像処理モジュール106は、コンピュータプログラムを実行可能なプロセッサや専用の画像処理回路によって実現され、印刷対象として入力された画像データを画像形成装置12が出力可能な画像データに変換するための各種画像処理を実行する。なお、画像処理モジュール106として専用のプロセッサを用意するのではなく、CPU100が画像処理モジュール106として各種画像処理を行う構成でもよい。
【0019】
外部I/F110は、画像処理装置11と、画像形成装置12、入力装置13、表示装置14および外部記憶装置15とを接続するためのインタフェースである。また、外部I/F110は、赤外線通信や無線LAN或いはインターネット等を用いて不図示の外部装置とデータのやりとりをするための通信インタフェースとしても機能する。
【0020】
入力装置13は、例えばキーボードやマウス等であり、操作者による操作(指示)を受け付ける。操作者は、入力装置13を介して、各種指示をCPU100に対して入力することができる。表示装置14は、例えばCRTや液晶ディスプレイ等であり、CPU100による処理結果を画像や文字等で表示する。なお、表示装置14がタッチ操作を検知可能なタッチパネルである場合、表示装置14が入力装置13の一部として機能してもよい。
【0021】
外部記憶装置15は、例えばHDDやSSDといった大容量情報記憶装置である。外部記憶装置15には、OSやCPU100に各種処理を実行させるためのコンピュータプログラムやデータ等が保存されている。また、外部記憶装置15は、入出力される画像データや各部の処理によって生成される一時的なデータを記憶する他、各種テーブル等の保持も行う。例えば、画像処理モジュール106で用いられる色変換テーブル、閾値マトリクス、各ノズルのインク吐出に関する情報、濃度特性取得用及び不吐ノズル検出用の各チャート画像データ等が保持される。外部記憶装置15に記憶されているコンピュータプログラムや各種データは、CPU100による制御に従って適宜読み取られ、RAM101に記憶されてCPU100による処理対象となる。
【0022】
画像形成装置12は、印刷モジュール107、イメージセンサ108、メンテナンスモジュール109、外部I/F112、バス113、RAM114を備える。
【0023】
外部I/F112は、画像形成装置12を画像処理装置11に接続するためのインタフェースである。RAM114は、処理中のデータ等の記憶に使用され、例えば画像処理装置11から取得した印刷出力用の画像データ(ハーフトーン画像データ)を一時的に記憶する。印刷モジュール107は、RAM114に記憶されたハーフトーン画像データに基づいて、インクジェット方式にて記録媒体上に画像を形成する。ハーフトーン画像データは、画像処理装置11の画像処理モジュール106から直接、あるいは外部記憶装置15から読み込んで取得する。印刷モジュール107が備える記録ヘッドは、インクを吐出可能なノズル(記録素子)を一方向に複数配列した、インク色に応じた数のノズル列(記録素子列)を有する。
図2は、記録ヘッドの構成例を示す図である。なお、カラー印刷に対応した画像形成システムの場合、記録ヘッドは典型的にはシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各インクに対応した4つのノズル列を搭載する。
図2では、説明の簡易化のため、ブラック(K)のノズル列のみ図示されている。
図2に示す記録ヘッドは、ノズル列平行方向(x方向)に、描画領域の全幅をカバーする長尺のラインヘッドである。記録ヘッドは駆動信号に基づき、記録媒体をノズル列平行方向と垂直なノズル列垂直方向(y方向)に相対移動させつつインク滴を吐出してドットを生成することにより、記録媒体上に画像を形成する。
図2では、ノズル位置番号が7番のノズルが不吐ノズルとなったことを×印で表している。なお、本明細書において、用語「不吐ノズル」はインクを正常に吐出できない状態のノズル全般を意味するものとし、目詰まり等によってインクを全く吐出できない状態のノズルに加え、適切な量のインクを適切な位置に吐出できないノズルを含むものとする。
【0024】
イメージセンサ108は、印刷モジュール107によって記録媒体上に形成された画像を撮像するためのセンサであり、例えばラインセンサやエリアセンサである。イメージセンサ108は、撮像画像から不吐ノズルを検出する手段及び各ノズルのインク吐出特性を取得する手段として機能する。なお、イメージセンサ108は画像形成装置12内に設けられている必要はなく、例えば、画像処理装置11の外部I/F110を介して接続された不図示のインラインスキャナやオフラインスキャナであってもよい。
【0025】
メンテナンスモジュール109は、印刷モジュール107が備える記録ヘッドのノズル目詰まりを除去して回復させるためのクリーニング処理を行う。クリーニング処理の方法には、例えば、記録ヘッドを廃インクの吸収体(スポンジなど)がある位置まで移動させて、ノズル列内の各ノズルから一定量のインクを強制的に吐出させるといった方法がある。また、インクタンク側からインクを加圧して強制的にインクを押し出す方法がある。あるいは、ノズルの外部から負圧を与えてインクを強制的に吸引して目詰まりを除去する方法がある。本実施形態の画像形成装置12は、上記いずれかの方法による自動クリーニング機構を備えているものとする。
【0026】
<画像処理モジュール106の機能構成>
次に、
図3を用いて、画像処理モジュール106の機能構成について説明する。画像処理モジュール106は、色変換処理部301、補正処理部302、HT処理部303、不吐ノズル検出部304、濃度補正値導出部305から構成される。なお、画像処理モジュール106において扱われる画像データの解像度は記録ヘッドのノズル配置の解像度と同一であり、例えば1200dpiである。以下、各部について説明する。
【0027】
色変換処理部301は、外部記憶装置15からの入力画像データを、印刷モジュール107の色再現域に対応した画像データに変換する。入力画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示す8ビットの画像データである。色変換処理部301は、RGB各8ビットの入力画像データを、プリンタの色再現域に対応したR’G’B’各8ビットの画像データに変換する。この変換には、マトリクス演算処理や三次元ルックアップテーブルを用いた処理等の公知の手法を用いることができる。さらに、色変換処理部301は、変換後のR’G’B’各8ビットの画像データに対して、プリンタで用いる複数のインクに対応した色信号に変換する変換処理を行う。印刷モジュール107が、例えばブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いる場合には、CMYK各8ビットの画像データに変換される。この色変換も、上述のRGBからR’G’B’への変換と同様、三次元ルックアップテーブルに補間演算を併用して行う。なお、他の変換の手法として、上述と同様、マトリクス演算処理等の手法を用いることもできる。
【0028】
補正処理部302は、ノズル単位の濃度補正情報に基づき、色変換処理後のCMYKの色版毎の画像データに対して、ノズル特性の違いによる濃度ムラ、不吐ノズルによる白スジの両方を低減するための補正処理を行う。補正処理の詳細は後述する。
【0029】
HT処理部303は、補正処理後の画像データあるいは外部記憶装置15に記憶された多階調の画像データに対して、印刷モジュール107が表現可能な階調数への変換、並びにドット配置を決定するためのハーフトーン処理を行う。本実施形態のHT処理部303は、1画素当たり8ビットの画像データを、画素毎に“0”か“1”のいずれかの値を有する1ビット2値のハーフトーン画像データ(出力画像データ)に変換する。このハーフトーン画像データにおいて、画素値(出力値)が“0”である画素はドットのオフを、画素値(出力値)が“1”である画素はドットのオンを表す。なお、ハーフトーン処理には誤差拡散法やディザ法といった公知の手法を適用可能である。ハーフトーン処理によって生成されたハーフトーン画像データは、直接、あるいはRAM101や外部記憶装置15を介して、画像形成装置12内の印刷モジュール107へと順次受け渡される。
【0030】
不吐ノズル検出部304は、印刷モジュール107から出力された不吐ノズル検出用チャートの印刷結果に基づき、各ノズル列においてインクの吐出不良が生じている不吐ノズル(そのノズル位置番号)を特定する。なお、不吐ノズル検出用チャートは、インク色毎(すなわち、ノズル列毎)に印刷出力される。例えば、印刷モジュール107がCMYKの4種類のインクを用いる場合には、各インクについて不吐ノズル検出用チャートをそれぞれ出力し、CMYKの色毎(ノズル列毎)に不吐ノズルを特定する。不吐ノズルを検出する処理の詳細は後述する。各インク色で処理内容は共通であるため、以下では、Kインクのノズル列を例に説明を行うものとする。
【0031】
濃度補正情報生成部305は、濃度特性取得用チャートを読み取ったスキャン画像に基づき、印刷結果において濃度ムラが低減されるような入力階調値に対する出力階調値(濃度補正値)を、ノズル列を構成するノズル単位で規定した濃度補正情報を生成する。ここで、濃度特性取得用チャートには、ノズル毎の特性を取得するための、濃度を段階的に異ならせた均一濃度のパッチが少なくとも含まれる。なお、この濃度特性取得用チャートも、インク色毎に印刷出力される。例えば、印刷モジュール107がCMYKの4種類のインクを用いる場合には、各インク色について専用チャートをそれぞれ出力し、CMYKそれぞれのノズル列におけるノズル毎に補正値が導出されて、濃度補正情報が生成されることになる。濃度補正情報生成処理の詳細は後述する。濃度補正情報生成処理も不吐ノズル検出処理と同様、各インク色(各ノズル列)で処理内容は共通であるため、以下では、Kインクのノズル列を例に説明を行うものとする。
【0032】
<不吐ノズル検出処理>
続いて、不吐ノズル検出部304によって実行される、各ノズル列における不吐ノズルを検出する処理の詳細について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、S401にて、ハーフトーン処理済みの不吐ノズル検出用チャート画像のデータが外部記憶装置15から取得され、その印刷指示と共に印刷モジュール107に送信される。印刷指示を受けた印刷モジュール107では、チャート画像を用紙上に形成して出力する。
図5(a)は、不吐ノズル検出用チャート画像の一例を示している。
図5(a)のチャート画像は縦16画素×横16画素の構成であり、各画素の数値(“0”又は“255”)は階調値を示している。また、チャート画像の上部に付された0~15までの数字は各画素列に対応するノズル位置番号を示しており、
図2に示す記録ヘッドが備える各ノズル列におけるノズル位置番号との対応が取れているものとする。不吐ノズル検出用チャートは、ノズル単位でのインクの吐出の有無が判別可能なように、ライン状の矩形(
図5(a)の例では4画素で構成)が配置されている。
【0034】
次に、S402にて、印刷モジュール107から出力された不吐ノズル検出用チャートが、イメージセンサ108で読み取られる。
【0035】
そして、S403にて、S402で得られた不吐ノズル検出用チャートの読み取り画像(スキャン画像)に基づき、不吐ノズルの位置が特定される。
図5(b)は、ノズル位置が7番のノズルが不吐ノズルとして検出された場合のスキャン画像を模式的に示した図である。
図5(b)に示すように、不吐ノズルが存在すると、そのノズル位置において本来は形成されるべきラインが形成されない。このように形成されなかったラインについてノズル位置番号との対応を取ることで、各ノズル列における不吐ノズルの位置を特定することができる。
【0036】
以上が、不吐ノズル検出処理の内容である。
【0037】
<濃度補正情報生成処理>
次に、濃度補正情報生成部305によって実行される、濃度ムラを抑制するための補正処理で用いる補正テーブルを生成する処理の詳細を、
図6のフローチャートを参照して説明する。ここでは濃度補正情報として、段階的に変化する複数の入力階調値と補正値(出力階調値)とを対応付けたLUT(ルックアップテーブル)形式の補正テーブルを生成する場合を例に説明を行うものとする。ただし、LUT形式は一例であってこれに限定されず、ある入力階調値に対する補正値を数式や関数を用いて決めるような濃度補正情報であってもよい。
【0038】
まず、S601にて、ハーフトーン処理済みの濃度特性取得用チャート画像のデータが外部記憶装置15から取得され、その印刷指示と共に印刷モジュール107に送信される。印刷指示を受けた印刷モジュール107では、濃度特性取得用チャート画像を用紙上に形成して出力する。
図7は、本実施形態に係る濃度特性取得用チャートの一例を示している。本実施形態における濃度特性取得用チャート画像は、不吐検出領域701と濃度パッチ領域702の2種類の画像領域で構成される。不吐検出領域701は、不吐ノズルがあった場合にそのノズル位置番号を検出するための画像領域であり、例えば、前述の不吐検出用チャートと同一チャートであってもよい。濃度パッチ領域702は、記録ヘッドを構成する各ノズル列におけるノズル毎の濃度特性を取得するための画像領域である。
図7に示す濃度パッチ領域702では、濃度を9段階で異ならせた、均一濃度の9種類の矩形パッチが形成されることになる。
【0039】
次に、S602にて、印刷モジュール107から出力された濃度特性取得用チャートが、イメージセンサ108で読み取られる。濃度特性取得用チャートの読み取り画像(スキャン画像)の色空間は任意であるが、ここではRGBの3チャンネルの画像とする。そして、RGB3チャンネルのスキャン画像は、イメージセンサ108の読み取り特性に合わせて事前に用意された色変換テーブルにより1チャンネルのスキャン画像に変換されるものとする。ここで、色変換テーブルは、例えばCIEXYZ色空間におけるY値やCIEL*a*b*色空間におけるL*値といった、濃度に線形な値に変換するテーブルである。また、印刷出力されたチャート上の各パッチが、シアン、マゼンタ、イエロー等のカラーインクで形成されている場合には、明るさに相当する値ではなく彩度に相当する値を用いてもよい。例えば、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの補色に対応する値として、RGB値を用いてもよい。なお、本実施形態においてスキャン解像度は、記録ヘッドのノズル配置の解像度と同じ1200dpiとする。
【0040】
次に、S603にて、S602で得られた読み取り画像(スキャン画像)上の不吐検出領域701を解析し、不吐ノズルが検出されればそのノズル位置が特定される。不吐ノズルが検出された場合には、当該ノズルのノズル位置番号が不吐ノズル情報として外部記憶装置15に記憶される。なお、スキャン画像から不吐検出領域701を抽出する際には、例えば、パターンマッチングの手法や、位置マーカー(不図示)を用いた手法など公知の手法を適用すればよい。
【0041】
S604では、S603での不吐検出領域の解析結果に基づき、次の処理内容が決定される。解析の結果、不吐ノズルが検出された場合はS605へ進み、不吐ノズルが検出されなかった場合はS606に進む。
【0042】
S605では、メンテナンスモジュール109に対し、記録ヘッドを回復させるためのクリーニング処理の実行が指示される。そして、当該指示を受けたメンテナンスモジュール109において、クリーニング処理が実施される。それと共に、S602にて読み取った専用チャートのスキャン画像データが破棄される。クリーニング処理が終わると、S601へと戻り、S601~S604までの処理を再度繰り返す。すなわち、濃度特性取得用チャートの出力を行う都度、クリーニング処理を実行して不吐ノズルの回復が図られる。なお、S605におけるクリーニング処理の実行回数をカウントしておき、規定回数を超えた場合にエラーをユーザに通知し、例えば記録ヘッドを交換するまで濃度補正情報生成処理を停止するような構成としてもよい。
【0043】
S606では、S602で取得したスキャン画像に基づき、入力階調値に対応する補正値をノズル単位で算出し、不吐ノズルの影響を排除した補正テーブルを作成する処理が実行される。
図8は、補正テーブル作成処理の詳細を示すフローチャートである。以下、
図8のフローに沿って説明する。
【0044】
まずS801では、S602で取得した濃度特性取得用チャートのスキャン画像から濃度パッチ領域702が検出される。続くS802では、検出された濃度パッチ領域702から、各ノズルに対応する測定曲線が取得される。ここで測定曲線とは、スキャン画像上での各ノズルに対応する階調値と測定信号値との対応関係を示す曲線である。
図9(a)に測定曲線の例を示す。
図9(a)において横軸は濃度パッチ領域702の入力信号値(入力階調値)であり、縦軸はスキャン画像から測定された信号値(厳密には、RGB3チャンネルを、濃度を示す1チャンネルに変換後の値。以下、「測定値」と表記。)である。また、
図9(a)において破線901は横軸の上限値を示し、8bitの入力信号値であれば“255”である。そして、
図9(a)における曲線902が、濃度パッチ領域702の各階調値に対応する測定値とその補間演算の結果から得られた測定曲線を示している。本実施形態では補間方法として区分線形補間を用いる。ただし、補間方法は任意であり、公知のスプライン曲線などを用いてもよい。測定曲線902は、画素位置xに対応するノズルの濃度特性を表しており、濃度特性取得用のチャート画像を用紙上に形成する際に用いたノズル数分だけ得られることになる。ノズル毎に異なる測定曲線が得られ、インク吐出量の少ないノズルでは測定曲線が上方向に(明るい方向に)シフトし、インク吐出量の多いノズルでは測定曲線が下方向に(暗い方向に)シフトすることになる。次のS803では、各ノズルに対応する目標特性が取得される。ここで目標特性とは、各ノズルの測定曲線に応じて予め定められた目標となる濃度特性である。
図9(a)における直線903(階調に対して線形となる測定値の集合)が目標特性を示している。
【0045】
そして、S804にて、S802で取得した測定曲線とS803で取得した目標特性に基づいて、各階調値に応じた補正値が、ノズル単位で決定される。
図9(b)は、補正値の求め方を説明する図である。まず、導出対象となる注目ノズルのノズル位置番号と、補正値を求めたい入力階調値を取得する。
図9(b)において、横軸上の点904が入力階調値を示している。次に、入力階調値904に対応する目標濃度値を、目標特性903から求める、
図9(b)において、縦軸上の点905が、入力階調値904と目標特性903とから求めた目標濃度値を示している。そして、注目ノズルの測定曲線902から、目標濃度値905に対応する階調値を求め、入力階調値904に対応する補正値(出力階調値)として決定する。
図9(b)において、横軸上の点906が、入力階調値904に対応する補正値(出力階調値)906を示している。このような処理を予め定めた複数の階調値について行うことで、所定の入力階調値に出力階調値(補正値)を対応付けた、注目ノズルについての補正テーブルが得られる。なお、0~255のすべての入力階調値に対応する個別の補正値を求める代わりに、代表的な階調値(例えば濃度パッチに対応した9個の階調値)に対応する補正値だけを求めてもよい。その場合には、補正テーブルを使用した補正処理を行う際に、テーブル内に規定されていない入力階調値については、補間処理によって対応する補正値を求めればよい。
【0046】
上述の処理が各ノズル列のすべてのノズルについて完了すると、作成された補正テーブルが外部記憶装置15に記憶され、本処理を終了する。
【0047】
以上が、濃度補正情報生成処理の内容である。補正テーブルの作成は、ユーザ指示に基づく印刷処理の実行開始前に終了しておく必要があり、システム出荷時や記録ヘッド取り付け時に行われる。また、記録ヘッド交換時などユーザが指定する所定のタイミングで補正テーブルの作成・更新が行われる。あるいは、任意のタイミングで補正テーブルの評価を行い、ノズル特性が変化するなどして適正な補正値からずれが生じていたら補正テーブルを更新するようにしてもよい。
【0048】
<印刷処理の流れ>
続いて、画像形成システム10における印刷処理の流れについて、
図10に示すフローチャートに沿って説明する。この印刷処理の過程で、上述の方法で作成された補正テーブルを用いた補正処理が実行されることになる。
図10のフローに沿った詳細説明に入る前に、本実施形態に係る印刷処理の設計思想を説明しておく。
【0049】
不吐ノズルに起因する白抜けは、ノズル特性の違いによる濃度ムラに比べ、知覚的に目立ちやすい。そのため、発生後は速やかに検出して補完することが好ましい。また、不吐ノズルの検出はインク吐出の有無を判断するだけでよいため、専用チャートの出力枚数や不吐ノズル検出に要する処理時間が、濃度補正情報生成処理に比べて少ない。一方、濃度ムラは、記録ヘッドの製造時の吐出特性(吐出量/吐出方向/吐出速度)のばらつき、記録ヘッド取り付け時のヘッドの傾き、記録ヘッド駆動時のクロストーク等に起因し、経時的に変化することは少ない。ただし、ノズル毎の特性は入力レベルに対して線形でないため、専用チャートの出力枚数や補正値の導出に要する処理時間が、不吐ノズルの検出に比べて多くなる。そのため、処理負荷の大きい濃度補正情報生成処理の実行頻度はできるだけ少なくすることが望ましい。その一方で、処理負荷の小さい不吐ノズル検出処理についてはその頻度を高くして、印刷画質の品質が保持されるようにすることが好ましい。以上のような基本思想に基づき設計された印刷処理がユーザ指示に基づき実行される。なお、
図10のフローに示す一連の処理は、ユーザが入力装置13を介して、印刷対象となる画像データのファイル名と印刷枚数を指定してその実行を指示することで開始される。
【0050】
まず、S1001では、画像処理装置11において、印刷準備処理が実行される。具体的には、まず、印刷対象の画像データが、ユーザが指定したファイル名を基に外部記憶装置15から読み込まれ、画像処理モジュール106に送られ、色変換処理部301にて色変換処理が実行される。また、ユーザが指定した出力枚数NがRAM101等に設定され、さらに、印刷出力された枚数を係数するカウンタCn_pが初期化(カウント値=0)される。印刷準備処理が完了するとS1002に進む。
【0051】
S1002では、前述の不吐ノズル検出処理(
図4のフローを参照)が実行される。不吐ノズル検出処理の結果は不吐ノズル情報として、外部記憶装置15に保存される。
【0052】
続くS1003では、S1002で生成された不吐ノズル情報に基づき、補正テーブルにおける不吐ノズルに対応する補正値が変更される。具体的には、補正テーブルでノズル位置番号と対応付けて規定されている階調値毎の補正値のうち、見つかった不吐ノズルとその周辺ノズルに対応する補正値を、不吐ノズルによって生じる白抜けが知覚されにくくなるよう変更する。ここで、具体例を用いてさらに詳しく説明する。
図11(a)は、濃度補正情報生成処理によって得られていた変更前の補正テーブルを示している。
図11(a)の補正テーブルには、9階調×ノズル数分の補正値が格納されている。例えば、印刷対象画像の入力階調値が“32”の場合、ノズル位置番号が1番に対応する補正値(出力階調値)は“34”である。ここで、上述のS1002における不吐ノズル検出処理において、ノズル位置番号がn番のノズルが不吐ノズルとして検出されたとする。
図11(b)は、このときの変更後の補正テーブルを示している。
図11(b)に示すように、変更後の補正テーブルでは、不吐ノズルであるn番目のノズルのすべての補正値が“0”に変更されている。あるノズルの補正値を“0”に変更することは、当該ノズルについてインクを吐出しないように制御することを意味する。このように補正値を変更することで、印刷処理中に不吐ノズルが意図せず回復した場合でも、黒スジが発生するのを抑制することができる。また、
図11(b)に示す例では、n+1番、n-1番のノズルの補正値I’がI+Ix/2に変更されている。ここで、Iは変更前の補正値を表し、Ixは変更前の不吐出となったノズルnの補正値を表す。ただし、I’が階調値の最大値(
図11の例では255)を超える場合には、I’を最大値にクリッピングされる。不吐ノズルが担うはずであった濃度に相当する分を、不吐ノズルに隣接する周辺ノズルで補うようにその補正値が変更される。その結果、不吐ノズル周辺のドット数もしくはドットサイズが増加し、不吐ノズルによる白抜けを抑制できる。
【0053】
次に、S1004では、色変換後の印刷対象画像に対し、変更後の補正テーブルを用いた補正処理が、補正処理部302にて実行される。この補正処理の詳細については後述する。続くS1005では、補正後の印刷対象画像に対し、HT処理部303にてハーフトーン処理が実行される。そして、生成されたハーフトーン画像データは、外部I/F110及び112を介して画像形成装置12へと送られる。
【0054】
次に、S1006では、画像形成装置12の印刷モジュール107にて、画像処理装置11から受け取ったハーフトーン画像データを用いた印刷が実行され、ユーザ指定の画像が用紙上に形成される。この際、前述のカウンタCn_pの値がインクリメント(+1)される。1枚分の印刷出力が済むとS1007へ進む。
【0055】
そして、S1007では、S1001にて設定された出力枚数Nの印刷がすべて完了したか否かが判定される。具体的には、カウンタCn_pの値が、出力枚数Nの値と等しいか否かが判定される。カウンタCn_pの値が出力枚数Nの値と等しい場合には、本印刷処理を終了する。一方、カウンタCn_pの値と出力枚数Nの値とが等しくない場合には、S1008へと進む。
【0056】
S1008では、カウンタCn_pの値が、予め定めた所定枚数に達しているか否かが判定される。ここで、閾値となる所定枚数は、例えば200の倍数などである。カウンタCn_pの値が所定枚数に達していれば、S1002へと戻り、不吐ノズルの検出、補正テーブルの変更、変更後の補正テーブルに基づく補正処理を再度実行する。一方、カウンタCn_pの値が、所定枚数に達していない場合には、S1006へと戻り、印刷を継続する。
【0057】
以上が、本実施形態に係る印刷処理の内容である。一定枚数を印刷する毎に不吐ノズル検出処理を実行することで、印刷中に不吐ノズルが発生したとしても間を置かずに対応することができる。また、予め不吐ノズルの影響を含まないように補正テーブルを作成しているため、不吐ノズルが回復した場合に、補正テーブルを再作成しなくても該ノズルとその周辺ノズルが担う濃度分を補正できる。
【0058】
なお、補正テーブルを作成する濃度補正情報生成処理は、印刷処理の開始前に実施しておくことが前提となっているが、ユーザによる印刷指示の入力に先立って毎回実行する必要はなく、一定時間の経過や一定処理枚数に達したタイミングで実行すればよい。あるいは、記録ヘッドの交換時や画像形成システムの電源オン/オフなど、所定のイベントに基づいて実行するようにしてもよい。また、指定された出力枚数が膨大な場合には、一定時間(例えば2時間)の経過や一定処理枚数(例えば1000枚)に到達した時点で割り込み処理として実行してもよい。
【0059】
<濃度補正処理>
次に、上述の補正処理(S1004)の詳細について、
図11(b)に示す変更後の補正テーブルを用いた場合を例に説明する。
図12は、補正処理部402における処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図12のフローに従って詳しく説明する。
【0060】
まず、S1201では、処理対象となる色変換後の画像データにおける注目する画素位置が初期化される。これにより、例えば、色変換後の画像における座標(x,y)=(0,0)の画素が最初の注目画素として決定される。
【0061】
次に、S1202では、注目画素に対応するノズル位置番号xが取得される。例えば、注目画像位置(x,y)=(1,1)のドットがノズル位置番号1番のノズルによって形成されるとすると、対応するノズル位置番号x=0が取得されることになる。
【0062】
次に、S1203では、色変換後の画像データから、注目画素の階調値iが取得される。続くS1204では、注目画素の補正値(出力階調値)i’が、変更後の補正テーブルに基づき決定される。具体的には、S1202で取得したノズル位置番号xとS1203で取得した階調値iとに対応する補正値i’が、変更後の補正テーブルを参照して決定される。ここで、注目画素の階調値i=32であったとする。いま、
図11(b)の補正テーブルに従うので、ノズル位置番号x=1であれば補正値i’=34となり、ノズル位置番号x=nであれば補正値i’=0となる。なお、例えばi=48のように、補正テーブル内に対応する階調値が存在しないときは、線形補間処理を行ってi’=52のように決定すればよい。
【0063】
次に、S1204では、処理対象となる色変換後の画像データにおける全画素について補正値が決定されたか否かが判定される。全画素についての補正値が決定済みである場合には、本補正処理を終了する。一方、補正値が未決定の画素が存在する場合には、S1206に進んで注目画素位置が更新される。更新後はS1202へと戻り、新たな注目画素についての補正値の決定を続行する。
【0064】
以上が、補正テーブルに基づく補正処理の内容である。
【0065】
以上のとおり本実施形態においては、不吐ノズルが検出されなくなるという条件を満たすまで濃度特性取得用チャートの出力を複数回実行する。こうして不吐ノズルが検出されなくなるまでチャート出力を繰り返し行うことにより、ノズル列を構成する全てのノズルについての適切な補正値を得て、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成する。出来上がった補正テーブルが不吐ノズルの影響を含まないことから、不吐ノズルが回復した場合にも補正テーブルを再度作成する必要がなく、ダウンタイムの抑制、専用チャート出力に要するインクや用紙の節約に繋がる。
【0066】
[実施形態2]
実施形態1では、不吐ノズルが検出されなくなるまでクリーニング処理と濃度特性取得用チャートの出力とを繰り返すことで、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成していた。実施形態2では、異なる位置に不吐ノズルが生じている複数の濃度特性取得用チャートの読み取り結果に基づき暫定的な補正テーブルを得てそれらを合成することで、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成する。なお、システムの基本構成など実施形態1と共通する内容については説明を省略ないしは簡略化することとし、以下では差異点である濃度補正情報生成処理の内容を中心に説明を行うこととする。
【0067】
図13は、本実施形態における考え方を説明する図である。
図13に示す5つのグラフはノズル列の濃度特性を表すもので、その横軸はノズル列におけるノズル位置を示し、縦軸は所定階調の濃度パッチを出力した場合の紙面上の濃度(前述の測定値)を示している。そして、
図13において、折れ線1301と1302は、クリーニング処理を挟んで得られた2通りのノズル列特性を表している。この例では、ノズル列特性1301及び1302それぞれの取得時に、それぞれ×印で示したノズル位置1311及び1312のノズルに吐出不良が発生している。そのため×印に位置するノズルに対応する濃度は他のノズルに比して、極端に低くなっている。この例のように不吐ノズルの発生した場所がクリーニング処理を挟んで異なる場合、ノズル列特性1301からは取得できないノズル位置1311のノズルについてのインク吐出特性を、ノズル列特性1302からは取得することができる。同様に、ノズル列特性1302からは取得できないノズル位置1312のノズルについてインク吐出特性を、ノズル列特性1301からは取得することができる。すなわち、
図13の矩形領域1311’及び1312’に示すように、不吐ノズルの周辺部をマスクした2つのノズル列特性1301’及び1302’を合成することで、不吐ノズルの影響を含まないノズル列特性1303を得ることができる。
【0068】
本実施形態は上記考え方に基づき、それぞれ異なる位置に不吐ノズルが発生した状況で作成した複数の補正テーブルを、不吐ノズルの影響を受けている部分を除外して合成することで、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを得るものである。
【0069】
<濃度補正情報生成処理>
次に、本実施形態に係る濃度補正情報生成処理の詳細を、
図14のフローチャートを参照して説明する。なお、実施形態1と同様、本処理は濃度補正情報生成部305によって実行される。
【0070】
まず、S1401では、濃度特性取得用チャートの出力回数を係数するカウンタCn_cが初期化(カウント値=0)される。なお、本実施形態における濃度特性取得用チャートも、前述の
図7で示したような不吐検出領域701と濃度パッチ領域702の2種類の領域で構成されたものを使用する。
【0071】
次に、S1402では、実施形態1のS601と同様、上述の濃度特性取得用チャート画像のデータが外部記憶装置15から取得され、その印刷指示と共に印刷モジュール107に送信される。印刷指示を受けた印刷モジュール107では、濃度特性取得用チャート画像を用紙上に形成して出力する。この際、上述のカウンタCn_cの値がインクリメント(+1)される。続くS1403では、実施形態1のS602と同様、印刷モジュール107から出力された濃度特性取得用チャートがイメージセンサ108で読み取られ、出力チャートのスキャン画像が生成される。
【0072】
次に、S1404では、実施形態1のS606と同様、S1403で取得したスキャン画像から入力階調値に対応する補正値をノズル単位で算出して、補正テーブルが作成される。なお、本ステップで作成される補正テーブルは、後述のS1409における合成処理の対象となる暫定的な補正テーブルであるため、以下、「暫定補正テーブル」と呼ぶこととする。
【0073】
次に、S1405では、実施形態1のS603と同様、S1403で得られたスキャン画像上の不吐検出領域701を解析し、不吐ノズルが検出されればそのノズル位置が特定される。
【0074】
次に、S1406では、S1405での不吐ノズル検出結果に基づき、不吐ノズルチェックリストが作成・更新される。ここで、不吐ノズルチェックリストは、各ノズルにおけるインク吐出状態について、そのノズル位置番号とカウンタCn_cのカウント値とを対応付けたリストである。
図15に、不吐ノズルチェックリストの一例を示す。
図15に示す例では、カウンタCn_cの値毎に、各ノズル位置番号に対して「〇(True):吐出OK」と「×(False):吐出NG」のうちいずれかの情報を格納している。例えば、Cn=3の列を見ると、ノズル位置番号が4番のところだけが「×」となっている。これは、3回目のチャート出力結果において、ノズル位置番号が4番のノズルだけが不吐ノズルとして検出され、それ以外のノズルについては正常にインク吐出が確認されたことを意味している。なお、ノズル毎に吐出OKなのか吐出NGなのかが分かればよく、「〇と×」に代えて「1と0」でもよい。あるいは、チャート出力数のカウント値毎に、吐出OKのノズルのノズル位置番号を保持するようなリストでもよい。
【0075】
次に、S1407では、S1406で作成或いは更新された不吐ノズルチェックリストを参照し、全ノズルにて吐出OKとなったか否かが判定される。具体的には、不吐ノズルチェックリストにおいて、すべてのノズルに少なくとも1つ「〇(True)」が割り当てられている場合には、全ノズルが吐出OKになったとして、S1409へと進む。一方、未だ「〇(True)」が割り当てられていないノズルが存在する場合(どのCnの値でも「×(False)」が割り当てられているノズルが一つでもある場合)には、S1408へと進む。
【0076】
S1408では、実施形態1のS605と同様、メンテナンスモジュール109に対しクリーニング処理の実行が指示され、メンテナンスモジュール109においてクリーニング処理が実施される。それと共に、S1403にて読み取ったチャートのスキャン画像データが破棄される。クリーニング処理が終わると、S1402へと戻り、S1402~S1407までの処理を再度繰り返す。なお、実施形態1のS605と同様、本ステップにおけるクリーニング処理の実行回数をカウントしておき、規定回数を超えた場合にエラーをユーザに通知し、例えば記録ヘッドを交換するまで濃度補正情報生成処理を停止するような構成としてもよい。
【0077】
全ノズルについて吐出OKが確認された場合のS1409では、S1404にて作成された2つ以上の仮テーブルをノズル毎に選択的に平均化する合成を行って、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルが作成される。具体的には、各ノズル位置番号について、不吐ノズルチェックリストにて「×(False)」が格納されているときの補正値を除外し、残った補正値の平均値を求めることで、ノズル毎の最終的な補正値を決定する。例えば、前述の
図15に示す例において、Cn=3のときに全ノズルにて吐出OKになったとする。このときノズル位置番号が0番のノズルについては、3回のチャート出力で得られた3つの暫定補正テーブルにおけるすべての補正値を平均した値を、各入力階調値に対応する最終的な補正値(出力階調値)とすればよい。また、ノズル位置番号が4番のノズルについては、Cn=3のときに「×(False)」となっているのでこのときの補正値を除外し、Cn=1のときとCn=2のときに得られた2つの補正値の平均値を求め、最終的な補正値とすればよい。そして、ノズル位置番号が2番のノズルについては、Cn=1及びCn=2のときに「×(False)」となっているので、Cn=3のときに得られた補正値をそのまま最終的な補正値とすればよい。
【0078】
以上が、本実施形態に係る、濃度補正情報生成処理の内容である。なお、1枚目のチャート出力結果において不吐ノズルが検出されなかった場合(最初のS1407の判定でYesとなった場合)には、S1409をスキップし、S1404で作成された暫定補正テーブルをそのまま最終的な補正テーブルとして出力すればよい。
【0079】
<変形例>
不吐ノズルチェックリストの形式は、上述の例に限定されない。例えば、S1401にて、全ノズルのノズル位置番号を記載したリストを用意する。そして、S1406では、S1405にて不吐ノズルとして検出されたノズル以外のノズルのノズル位置番号を、上記リストから削除する。そして、S1407では、上記リストにノズル位置番号が1つでも残っていれば、全ノズルが吐出OKとはなっていないと判定する。このような手法で、全ノズルが吐出OKとなったか否かを判定するようにしてもよい。
【0080】
また、不吐ノズルの周囲では、当該不吐ノズルによる白抜けの影響を受けて、ノズル特性を精度良く検出できないことが知られている。そこで、S1406における不吐ノズルチェックリストの更新において、検出された不吐ノズルの影響を受け得る周辺ノズルについても「×(False)」の情報を割り当てるようにしてもよい。この際、不吐ノズルの影響を受ける周辺ノズルの範囲は、記録素子の特性、インクの特性、用紙の特性によって変化するものであるが、概ね不吐ノズルを中心として左右1~5ノズルの範囲となることが多い。
【0081】
以上のとおり、本実施形態によれば、より短時間・低コストで不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成できる。また、複数の暫定補正テーブルを合成する際に、複数のチャート出力に基づく結果を平均化して最終的な補正値を決定しているため、センサノイズやゴミ・キズ等の読み取り誤差が低減され、より精度の高い補正値を得ることができる。
【0082】
[実施形態3]
実施形態1及び2では、不吐ノズル検出用パターンを含む濃度特性取得用チャートを出力してそのスキャン画像を解析することで、チャート出力時に存在する不吐ノズルを特定していた。実施形態3では、不吐ノズル検出用パターンを含まない濃度特性取得用チャートを用いて不吐ノズルを特定して、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成する。なお、以下では実施形態1及び2との差異点である濃度補正情報生成処理について説明し、システム構成等については省略することとする。
【0083】
図16は、本実施形態における考え方を説明する図である。実施形態2で説明した
図13と同様、
図16に示す2つのグラフの横軸はノズル列におけるノズル位置を示し、縦軸は所定階調の濃度パッチを出力した場合の紙面上の濃度を示す測定値の平均値(aveD)を示している。そして、
図16において、折れ線1601と1602は、クリーニング処理を挟んで得られた2通りのノズル列特性を表している。この例では、ノズル列特性1601及び1602それぞれの取得時に、それぞれ両矢印1611及び1612で示した範囲においてaveDが極端に低い値となっており、当該範囲に存在するノズルで不吐が発生していると推測される。実施形態2においては、不吐検出領域701を含むチャートを出力しそのスキャン画像を解析することで不吐ノズルを特定していたが、本実施形態では、
図16に示すようなノズル列特性から統計的処理によって不吐ノズルを特定する。具体的には、aveDのときのノズル間の濃度値の分散をσとし、例えばaveD±3σの範囲外となったノズルを不吐ノズルとして特定する。あるいは、不吐ノズルが発生した場合には、該ノズルを中心とする所定範囲の濃度が低下する(明るくなる)ことを考慮し、aveD-3σより低い濃度となったノズルを不吐ノズルとして特定してもよい。このような統計的処理によって不吐ノズルを特定した後の処理は実施形態2と同じである。
【0084】
<濃度補正情報生成処理>
本実施形態に係る濃度補正情報生成処理の詳細を、
図17のフローチャートを参照して説明する。なお、実施形態1及び2と同様、本処理は濃度補正情報生成部305によって実行される。
【0085】
まず、S1701では、実施形態2のS1401と同様、濃度特性取得用チャートの出力回数を係数するカウンタCn_cが初期化(カウント値=0)される。
図18は、本実施形態における濃度特性取得用チャートの一例を示している。前述の
図7で示した濃度特性取得用チャートと異なり、不吐検出領域を含まず、濃度パッチ領域1801のみで構成されている。
図18に示す濃度パッチ領域1801の場合も、
図7の濃度パッチ領域702と同様、濃度を9段階で異ならせた、均一濃度の9種類の矩形パッチが形成されることになる。
【0086】
次に、S1702では、上述の濃度特性取得用チャート画像のデータが外部記憶装置15から取得され、その印刷指示と共に印刷モジュール107に送信される。印刷指示を受けた印刷モジュール107では、濃度特性取得用チャート画像を用紙上に形成して出力する。この際、上述のカウンタCn_cの値がインクリメント(+1)される。続くS1703では、実施形態1のS602や実施形態2のS1403と同様、印刷モジュール107から出力された濃度特性取得用チャートがイメージセンサ108で読み取られ、出力チャートのスキャン画像が生成される。
【0087】
次に、S1704では、実施形態1のS606や実施形態2のS1404と同様、S1703で取得したスキャン画像から入力階調値に対応する補正値をノズル単位で算出して、暫定補正テーブルが作成される。
【0088】
次に、S1705では、S1701にて設定されたカウンタCn_cのカウント値を参照し、予め定めた規定回数Np(例えばNp=5)だけ濃度特性取得用チャートを出力したか否かが判定される。ここで、規定回数Npは、ノズル数や、不吐ノズルの発生確率、クリーニング処理による不吐ノズルの回復確率、濃度補正情報生成処理に割り当て可能な時間などを考慮して適宜設定すればよい。例えば、あるノズルが不吐ノズルとなる確率をP、チャートの出力回数をCとする。この場合、あるノズルが、C回のうち少なくとも1度はインクを吐出する確率Pnは、Pn=1-Pow(P、C)で求められる。ただし、Pow(x,y)は、xのy乗を算出する関数であるとする。このとき、例えばPn>0.999となる最小のCを規定回数Npとすればよい。あるいは、Pnにノズル数Nozを考慮し、全ノズルが少なくとも1度はインクを吐出する確率Pn’=(1-Pow(P、Np),Noz)を用い、例えば、Noz>0.99となるように規定回数Npを定めてもよい。さらには、経年劣化や温湿度の変化による不吐ノズルの発生確率の上昇に応じて、規定回数Npを増やす構成も可能である。判定の結果、カウンタCn_cの値が、規定回数Npの値と等しい場合には、S1707に進む。一方、カウンタCn_cの値が規定回数Npの値に達していない場合には、S1706へと進む。
【0089】
S1706では、実施形態2のS1408と同様、メンテナンスモジュール109に対しクリーニング処理の実行が指示され、メンテナンスモジュール109においてクリーニング処理が実施される。それと共に、S1703にて読み取った濃度特性取得用チャートのスキャン画像データが破棄される。クリーニング処理が終わると、S1702へと戻り、S1702~S1705までの処理を再度繰り返す。
【0090】
カウンタCn_cの値が規定回数に達した場合のS1707では、実施形態2のS1409と同様、S1704にて作成された2つ以上の暫定補正テーブルをノズル毎に選択的に平均化する合成を行って、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルが作成される。この際、本実施形態では、不吐ノズルであると見做せるノズルを上述した統計的処理によってまず特定する。そして、当該特定されたノズルの補正値を各暫定補正テーブルから除外して、残った補正値の平均値を求めることで、各入力階調値に対応する最終的な補正値(出力階調値)が決まることになる。
【0091】
以上が、本実施形態に係る、濃度補正情報生成処理の内容である。なお、データのバラつき度合が求まればよいので、それぞれの測定値と平均値との差分(偏差)を二乗し平均を取ることで求まる分散に代えて、標準偏差を用いてもよい。
【0092】
<変形例>
なお、前述のとおり、不吐ノズルが発生した場合には、該ノズルとその周囲の濃度は低く(=明るく)なることが経験上分かっている。したがって、複数のチャート出力から得られた複数のノズル毎の特性に基づき、各ノズルについての複数の測定値のうち最も高い測定値を当該ノズルの測定値として選択することでも、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成することができる。
【0093】
また、ノズル毎に測定値が高い(濃い)方から所定数(ただし、濃度特性取得用チャートの出力回数よりも少ない数)だけ平均して得られた値を当該ノズルの測定値としてもよい。例えば、例えばチャートの出力回数が5回であって、上位4つの測定値を平均して得た値をそのノズルの測定値として採用するといった具合である。いま、あるノズルに対する均一パッチ上の測定値が以下のとおりであったとする。
・1回目のチャート出力における測定値:1.0
・2回目のチャート出力における測定値:1.1
・3回目のチャート出力における測定値:0.9
・4回目のチャート出力における測定値:0.3
・5回目のチャート出力における測定値:1.0
【0094】
この場合、4回目のチャート出力における測定値を除外し、残り4つの測定値の平均値を、(1.0+1.1+0.9+1.0)/4によって求め、該ノズルの測定値を1.0に決定する。
【0095】
なお、上位いくつまでを平均値算出時の対象とするかは不吐ノズルの発生確率に基づいて決定すればよく、例えば、統計的に99%以上の確率で不吐ノズルを含まない最大の出力回数とする等すればよい。
【0096】
さらには、複数のチャートを読み取って得られた複数のスキャン画像における信号値(例えばRGB値)から、ノズル毎に濃度特性を得るようにしてもよい。例えば、スキャン画像上では、不吐ノズルとその周囲における信号値が正常ノズルに比して十分に大きな値を取ることが分かっているとする。この場合、最も低い信号値を選択することで不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを得ることが可能である。あるいは、各ノズルに対する複数の信号値について、その値が低い方から所定数(例えば3つ)を対象としてそれらの平均を求めることでも同様に、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成することができる。
【0097】
以上のとおり本実施形態によれば、不吐ノズル検出用パターンを含まない濃度特性取得用チャートを用いて、不吐ノズルの影響を含まない補正テーブルを作成することが可能となる。本実施形態の場合には、チャート内に不吐検出領域がない分だけ、濃度パッチの階調数を増やすことができ、より高精度な補正値を得ることができる。また、濃度特性取得用チャートの出力中に同一紙面内であるノズルのインク吐出状態が変化した場合にも、当該ノズルの影響を排除して補正テーブルを作成できる。例えば、チャート出力の開始直後には正常に吐出していたノズルが、途中で不吐出になり、さらに同一チャートの出力中に吐出状態が回復したとする。このような場合でも、当該チャートのうち不吐ノズルが生じた部分の濃度パッチのみを平均を求める対象から除外すればよいので、より柔軟に補正テーブルを作成できる。
【0098】
[その他の実施形態]
印刷モジュール107が、同一位置を描くノズルを複数備える多列ヘッドを備え、不吐ノズル及び不吐ノズルとは異なるヘッドで同一位置を描くノズルを代替ノズルとして選択する方法としても適用可能である。
【0099】
また、上記実施形態においては、ノズル特性として濃度特性を用い、補正テーブルも濃度に基づいて作成した。しかしながら、例えばノズル毎にCIEXYZ色空間のYやCIELa*b*のL*の特性を取得してもよいし、補正テーブルもそれらの特性に基づいて作成してもよい。
【0100】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0101】
11 画像処理装置
12 画像形成装置
106 画像処理モジュール
107 印刷モジュール
305 濃度補正情報生成部