(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】光電変換装置および機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240716BHJP
H04N 25/62 20230101ALI20240716BHJP
H04N 25/60 20230101ALI20240716BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20240716BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 A
H04N25/62
H04N25/60
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2020069428
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勉
(72)【発明者】
【氏名】小川 俊之
(72)【発明者】
【氏名】石野 英明
(72)【発明者】
【氏名】大貫 裕介
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-326725(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136738(WO,A1)
【文献】特開2019-200399(JP,A)
【文献】特開2010-186818(JP,A)
【文献】特開平07-202160(JP,A)
【文献】特開2012-191005(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114154(WO,A1)
【文献】特開平11-045989(JP,A)
【文献】特開2005-142510(JP,A)
【文献】特開平08-288484(JP,A)
【文献】特開2013-038266(JP,A)
【文献】特開平06-302798(JP,A)
【文献】特開平11-330440(JP,A)
【文献】特開2018-142681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/62
H04N 25/60
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、
{(Na-1)
2+Ka
2}/{(Na+1)
2+Ka
2}>{(Nb-1)
2+Kb
2}/{(Nb+1)
2+Kb
2}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さ
く、
前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、
前記第2金属層の主成分はタングステンであり、
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さ
く、
前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項3】
前記光電変換装置は前記光電変換層が設けられるとともに、光が入射する面である第1面を備える半導体層と、
前記遮光膜と前記光電変換層との間に設けられた誘電体層とを有し、
前記遮光膜は前記誘電体層と接する第2面を有し、
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記第1面から前記第2面までの長さであることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、
{(Na-1)
2+Ka
2}/{(Na+1)
2+Ka
2}>{(Nb-1)
2+Kb
2}/{(Nb+1)
2+Kb
2}およびKb*Tb≧0.183*λbを満た
し、
前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項5】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、
前記第2金属層の主成分はタングステンであ
り、
前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、
{(Na-1)
2
+Ka
2
}/{(Na+1)
2
+Ka
2
}>{(Nb-1)
2
+Kb
2
}/{(Nb+1)
2
+Kb
2
}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さく、
前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、
前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項7】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、
前記第2金属層の主成分はタングステンであり、
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さく、
前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、
前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、
{(Na-1)
2
+Ka
2
}/{(Na+1)
2
+Ka
2
}>{(Nb-1)
2
+Kb
2
}/{(Nb+1)
2
+Kb
2
}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、
前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、
前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項9】
光電変換層と、
前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、
前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、
前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、
前記第2金属層の主成分はタングステンであり、
前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、
前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接している
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含む、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第1金属層の厚さは前記第2金属層の厚さよりも大きい、請求項1乃至
10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層を含む、請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記第2金属層の厚さは前記第1金属化合物層の厚さよりも大きい、請求項
12に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記第1金属化合物層の主成分は窒化チタンである、請求項
12または13に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記遮光膜は、前記第1金属層に対して前記光電変換層の側とは反対側に設けられた第2金属化合物層を含む、請求項1乃至
14のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記第1金属層の厚さは前記第2金属化合物層の厚さよりも大きい、請求項
15に記載の光電変換装置。
【請求項17】
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さい、請求項1乃至
16のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項18】
前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記第2金属層の厚さよりも大きい、請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項19】
前記第2金属層と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、
前記第2金属層と前記誘電体層との間の距離が前記第2金属層の厚さよりも小さい、請求項1乃至
18のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項20】
前記遮光膜と前記光電変換層との間には、第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層と前記光電変換層との間に位置する第2金属酸化物層と、が設けられている、請求項1乃至
19のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項21】
前記光電変換装置は受光画素領域および遮光画素領域を有し、
前記遮光画素領域において前記光電変換層は前記遮光膜によって遮光されており、
前記受光画素領域において前記遮光膜は複数の開口を有する、請求項1乃至
20のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項22】
前記受光画素領域において前記遮光膜の上には、遮光壁が設けられており、前記遮光壁の高さは前記遮光膜の厚さよりも大きい、請求項
21に記載の光電変換装置。
【請求項23】
前記遮光壁の主成分はタングステンである、請求項
22に記載の光電変換装置。
【請求項24】
前記第1金属層の厚さは100~300nmであり、前記第2金属層の厚さは50~150nmである、請求項1乃至
23のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項25】
前記光電変換層に対して前記遮光膜の側とは反対側に設けられた配線構造を備える、請求項1乃至
24のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項26】
請求項1乃至
25のいずれか1項に記載の
光電変換装置と、
前記
光電変換装置に対応する光学装置、
前記
光電変換装置を制御する制御装置、
前記
光電変換装置から出力された信号を処理する処理装置、
前記
光電変換装置から得られた情報を表示する表示装置、
前記
光電変換装置から得られた情報を記憶する記憶装置、および
前記
光電変換装置から得られた情報に基づいて動作する機械装置、
の6つのうちの少なくともいずれかと、を備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換装置では、受光領域や遮光領域に遮光膜が配置される。特許文献1には、遮光膜(39)を、例えばアルミニウム(Al)、あるいはタングステン(W)、あるいは銅(Cu)の膜で形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では遮光膜の光学特性が十分でない。そこで本発明は光電変換装置の光学特性を改善する上で有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、{(Na-1)2+Ka2}/{(Na+1)2+Ka2}>{(Nb-1)2+Kb2}/{(Nb+1)2+Kb2}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さく、前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、前記第2金属層の主成分はタングステンであり、前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さいことを特徴とする。
本発明の別の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、{(Na-1)2+Ka2}/{(Na+1)2+Ka2}>{(Nb-1)2+Kb2}/{(Nb+1)2+Kb2}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含むことを特徴とする。
本発明の別の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、前記第2金属層の主成分はタングステンであり、前記遮光膜は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第1金属化合物層と、前記第1金属層と前記第2金属層との間に設けられた第3金属層と、を含むことを特徴とする。
また、別の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、{(Na-1)
2
+Ka
2
}/{(Na+1)
2
+Ka
2
}>{(Nb-1)
2
+Kb
2
}/{(Nb+1)
2
+Kb
2
}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さく、前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接していることを特徴とする。
また、別の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、前記第2金属層の主成分はタングステンであり、前記遮光膜と前記光電変換層との間の距離が、前記遮光膜の厚さよりも小さく、前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接していることを特徴とする。
また、別の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の屈折率をNa、前記第1金属層の消衰係数をKa、前記第2金属層の屈折率をNb、前記第2金属層の消衰係数をKb、前記第2金属層の厚さをTb(nm)、前記第2金属層へ入射する光の波長をλb(nm)として、{(Na-1)
2
+Ka
2
}/{(Na+1)
2
+Ka
2
}>{(Nb-1)
2
+Kb
2
}/{(Nb+1)
2
+Kb
2
}およびKb*Tb≧0.183*λbを満たし、前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接していることを特徴とする。
また、別の観点は、光電変換層と、前記光電変換層を覆う遮光膜と、を備える裏面照射型の光電変換装置であって、前記遮光膜は、第1金属層と、前記第1金属層と前記光電変換層との間に位置する第2金属層と、を含み、前記第1金属層の主成分はアルミニウムであり、前記第2金属層の主成分はタングステンであり、前記遮光膜と前記光電変換層との間には誘電体層が設けられており、前記第2金属層の前記光電変換層の側の面の一部が前記光電変換層に接していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光電変換装置の光学特性を改善する上で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】光吸収係数および光透過率について説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の説明および図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
【0010】
図1(a)は、光電変換装置APRを説明する図面であり、光電変換装置APRの平面模式図である。
図1(b)は、光電変換装置APRを備える機器EQPを説明する模式図である。
図2は、
図1(a)において範囲Aで示した部分を詳説する光電変換装置APRの平面模式図である。
図3は、
図2において線Bで示した部分における光電変換装置APRの断面模式図である。
【0011】
図1(a),
図2および
図3に示す様に、光電変換装置APRは受光画素領域1および遮光画素領域2を有する。
図1において受光画素領域1は一点鎖線L1で囲まれた範囲であり、遮光画素領域2は一点鎖線L1と二点鎖線L2で挟まれた範囲である。受光画素領域1と遮光画素領域2を合わせて画素領域と総称できる。周辺領域3は二点鎖線L2の外の範囲である。少なくとも遮光画素領域2には遮光膜50が設けられている。本例では受光画素領域1にも遮光膜50が設けられている。また、周辺領域3にも遮光膜50が設けられている。本例の遮光膜50は、受光画素領域1において複数の開口OPを有している。この開口OPを介して光電変換層10が受光可能となっている。遮光膜50は、受光画素領域1に位置する受光画素部57と、遮光画素領域2に位置する遮光画素部58と、周辺領域3に位置する部分とを有しうる。受光画素部57と遮光画素部58の厚さは同じであってもよいが、異なっていてもよい。周辺領域3に位置する部分は接続部59を含む。開口OPは受光画素部57によって囲まれている。遮光画素部58は複数の光電変換部112を覆っている。デバイスDEVの周辺領域3には電極19が設けられている。この電極19は、光電変換装置APRに含まれるボンディングワイヤが接続されるボンディングパッドでありうる。電極15は光電変換層10に設けられたパッド開口から露出し、ボンディングワイヤはこのパッド開口の中に配置され得る。
【0012】
主に
図3に示す様に、光電変換装置APRは、光電変換層10と、光電変換層10を覆う遮光膜50と、を備える。光電変換層10は表面F1と裏面F2とを有する。光電変換層10の表面F1と裏面F2との間に複数の光電変換部11が配列されている。複数の光電変換部11のうちで、受光画素領域1に位置する光電変換部111が受光画素を構成し、複数の光電変換部11のうちで、遮光画素領域2に位置する光電変換部112が遮光画素を構成する。光電変換部111と光電変換部112とを相互に区別する必要がない場合には、光電変換部11と記載する。
【0013】
受光画素領域1は、光電変換部111を含む受光画素が行列状に配置された領域である。受光画素領域1の各列の受光画素の信号は、不図示の列信号線を通して出力される。遮光画素領域2は、光電変換部112を含む遮光画素が行列状に配置された領域である。遮光画素は、黒レベルを検出するために使用されるOB(オプティカルブラック)画素でありうる。受光画素領域1と遮光画素領域2との間には、画素構造を含む緩衝領域が含まれてもよい。受光画素領域1の画素および遮光画素領域2の画素信号の出力は、周辺領域3にある、行選択回路と、読出回路と、列選択回路を用いて行われる。行選択回路は、前述の画素行列の行を選択し、選択した行の画素を駆動する。行選択回路によって選択された行の画素信号は、列信号線を通して読出回路に出力される。列選択回路は、複数の列信号線から読出回路によって読み出された複数の信号を順に選択して出力する。
【0014】
光電変換装置APRは、光電変換層10に対して遮光膜50の側とは反対側(表面F1側)に設けられた配線構造20を備えうる。配線構造20は複数の配線層WLとその周囲の絶縁体ILを含む。絶縁体ILは複数の層間絶縁層を含みうる。光電変換装置APRは光電変換層10に対して光入射側(裏面F2側)に光学構造30を備える。遮光膜50は光学構造30の一部である。遮光膜50と配線構造20との間に光電変換層10が配置される。光学構造30は遮光膜50の他に、誘電体DLと、誘電体DLの上のカラーフィルターと、カラーフィルターの上のマイクロレンズMLと、を含みうる。光学構造30はカラーフィルターと光電変換層10との間に、不図示の層内レンズを備えていてもよい。光学構造30は遮光膜50の上に設けられた遮光壁60を含みうる。受光画素領域1において、遮光膜50は誘電体DLで構成された透光部35を画定しており、透光部35の形状は開口OPの形状に一致しうる。
【0015】
本例の光電変換装置APRは、裏面照射型の光電変換装置APRであるが、本実施形態は表面照射型の光電変換装置APRにも適用可能である。表面照射型の光電変換装置APRにおいては、遮光膜50と光電変換層10との間に配線構造20が配置されうるか、配線構造20と光電変換層10との間に遮光膜50が配置されうる。
【0016】
図6は光電変換装置APRの参考形態を示す断面図であり、参考形態の光電変換装置APRは、
図3に類似した構造を有する。参考形態では、光電変換装置APRに入射した光であって、光電変換層10の裏面F2、光電変換層10の表面F1あるいは配線層WLで反射している反射光Laの例を示している。反射光Laは、さらに遮光膜50の下面(光電変換層10側の面)で再反射して光電変換層10へ入射している。また、参考形態では、光電変換装置APRに入射したであって、遮光膜50を透過して光電変換層10へ入射する透過光Lbの例を示している。遮光膜50の下面で再反射すると受光画素領域1では画素間でのクロストークが生じうる。また、遮光されるべき光電変換部112が反射光Laや透過光Lbを受光してしまい、遮光画素の出力に影響を及ぼしうる。例えば、遮光画素の出力の変化は黒レベルを上昇させ、その結果、撮像性能が低下する場合がある。あるいは、遮光画素領域2での光電変換によって生じた電荷が受光画素の出力に影響を及ぼす場合もありうる。このように、遮光膜50の光学特性が十分でないと、撮像性能が低下しうる。そこで本実施形態では遮光膜50に特徴的な構造を採用することで、遮光膜50の光学特性を改善する。すなわち、遮光膜50を、遮光膜50の遮光性能を確保するための層と、遮光膜50の下面での反射を抑制するための層と、を有する積層構造を採用する。
【0017】
遮光膜50は、金属層51と、金属層51と光電変換層10との間に位置する金属層52と、を含む。金属層51の主成分と金属層52の主成分は互いに異なる。金属層51、52の材料は種々の金属から選択することができ、典型的には、タングステン、タンタル、チタン、ニッケル、コバルト、金、銀、銅およびアルミニウムからなる材料群から選択された材料を採用することができる。
【0018】
以下、
図5を参照しながら遮光膜50の構造と光学特性との関係について説明する。ここでは、光Lが入射する対象物を物体Oとして説明する。遮光膜50の光反射率、光吸収率および光透過率を議論する際には、物体Oを遮光膜50で置き換えて考えればよい。
【0019】
物体Oは、材料Mからなり、材料物体Oの厚さd(nm)、材料Mの屈折率n、材料Mの消衰係数kについて検討する。ここで、屈折率nおよび消衰係数kは入射する光Lの波長λ(nm)に対する値である。
【0020】
光Lは、物体Oの表面に垂直に入射するものとする。物体Oの表面では光の反射が起こる。物体Oの表面における光の反射率を光反射率Rとする。光反射率Rと材料Mの屈折率n、消衰係数kとの関係は次式で表される。
【0021】
R={(n-1)2+k2}/{(n+1)2+k2}・・・式(i)
反射しなかった光は物体Aの表面から物体Oの内部に侵入し、物体Oの内部では光の吸収が起こる。物体Oの内部に侵入する光に対する、物体Oの内部での光の吸収率を光吸収率Aとする。物体Oの内部で吸収されない光が物体Oを透過する。物体Oの表面に入射した光に対する、物体Oを透過した光を光透過率τとする。
【0022】
物体Oに向かう光Lの強度をIs、光Lのうち物体Oで反射される光の強度をIr、光Lのうち物体Oに侵入する光の強度をIeとする。物体Oに侵入する光のうち、物体Oで吸収される光の強度をIa、物体Oを透過する光の強度をItとする。強度Is、Ir、Ie、Ia,Itと、光反射率R、光透過率τ、光吸収率Aは下記の様な関係にあり、式(ii)が導き出せる。
【0023】
Is=Ir+Ie
Ie=Ia+It
Ir=Is*R
Ie=Is*(1-R)
Ia=Ie*A
It=Ie*(1-A)
It=Is*τ
τ=It/Is=(1-R)*(1-A)・・・式(ii)
透過光の強度It、光吸収率Aは、物体Oの内の光の入射部から出射部までの距離dと、物体Oを構成する材料Mの光吸収係数αとで表すことができる。光吸収係数αと消衰係数kとの関係は次式で表される。
【0024】
It=Ie*exp[-α*d]
A=(Ie-It)/Ie=1-exp[-α*d]
α=4π*k/λ
A=1-exp[-4π*k*d/λ]・・・式(iii)
材料Mが決まっている場合、光吸収率Aは、距離Dに依存する。物体Oの表面と裏面が平行で表面に対して光Lが垂直入射する場合、距離dは表面と裏面との距離、すなわち、物体Oの厚さdに相当する。
【0025】
光透過率τが低いほど遮光膜50の遮光性能が高いといえる。遮光膜50の遮光性能を高めるには、反射率が高い金属層を用いることが有効である。そこで、金属層51には光反射率が高い材料を用いる。遮光膜50の下面に光反射率が大きい材料を用いると、
図6を用いて説明したように、遮光膜50の下面での反射が生じやすく、遮光画素領域2において光電変換層10へ入射する光が増加しうる。これは、遮光画素の黒レベルを上昇させ、撮像素子の性能を低下させる。そこで、金属層52には反射率が低い材料を用いる。金属層52の光反射率Rbは金属層51の光反射率Raよりも低ければよい。つまり、Ra>Rbを満たせばよい。
【0026】
金属層51の屈折率をNa、金属層51の消衰係数をKa、金属層52の屈折率をNb、金属層52の消衰係数をKb、金属層51の厚さをTbとする。金属層51の反射率Raはn=Na、k=Kaを式(i)に代入すればよい。
【0027】
Ra={(Na-1)2+Ka2}/{(Na+1)2+Ka2}
Rb={(Nb-1)2+Kb2}/{(Nb+1)2+Kb2}
Ra>Rbを満たすことは下記式(R)を満たすことを意味する。
【0028】
{(Na-1)2+Ka2}/{(Na+1)2+Ka2}>{(Nb-1)2+Kb2}/{(Nb+1)2+Kb2}・・・式(R)
式(i)は光Lが垂直入射する場合について説明したが金属層における反射率の入射角依存性については無視してよい。これは、絶縁体(誘電体)への入射光に比べて、金属層への入射光は、反射率の入射角依存性が小さいためである。
【0029】
金属層52の光反射率Rbが低くても、金属層52の光透過率τbが高ければ、金属層52を透過した光が金属層51で反射して再び金属層52を透過して光電変換層10へ入射してしまう。そこで、金属層52の光吸収率Abを高くすることが有効である。具体的には金属層52の光吸収率Abを90%以上にすればよい(Ab≧0.9)。金属層52に侵入した光の90%以上が金属層52で吸収されれば、光電変換層10へ反射される光を十分に抑えることができる。金属層52の光吸収率Abを90%以上にすれば、金属層52に侵入した光の10%が金属層52を透過したとしても、この透過光は金属層51等で反射されて、透過光の9%以上が金属層52で吸収される。つまり、金属層52の光吸収率Abを90%以上にすれば、金属層52へ侵入した光の99%以上を吸収することが可能となる。
【0030】
ここで、金属層51に入射する光の波長λaと、金属層52に入射する光の波長λbは異なりうる。例えば遮光膜50の上に青色フィルターCFBが存在する場合には、金属層51に入射する光は主に青色光である。従って、金属層51の屈折率Naおよび消衰係数Kaを評価する波長λaは青色光(例えば波長450±10nm)であることが好ましい。金属層52に入射する光は、光電変換層10を透過した光を含みうるため、光電変換層10で吸収されにくい光である。例えば光電変換層10がシリコン層である場合には、金属層51に入射する光は主に赤色光である。従って、金属層52の屈折率Nbおよび消衰係数Kbを評価する波長λbは赤色光(例えば波長630±10nm)であることが好ましい。しかしながら、必ずしも金属層51に青色光のみが入射するとは限らず、金属層52に赤色光のみが入射するとは限らない。そこで、青色光と赤色光の間の波長である緑色光の波長λc(例えば波長550±10nm)でもって、金属層51の屈折率Naおよび消衰係数Kaと金属層52の屈折率Nbおよび消衰係数Kbの両方を評価してもよい。
【0031】
金属層52の光吸収率Abはn=Nb、k=Kb、d=Tb、λ=λbを式(iii)に代入すればよく、Ab≧0.9を満たす条件は下記式(A)となる。
【0032】
Ab=1-exp[-4π*Kb*Tb/λb]≧0.9・・・式(A)
式(A)を変形すれば式(A’)を得ることができ、式(A’)にネイピア数eと円周率πの具体値を適用することで式(A”)を得ることができる。
【0033】
exp[4π*Kb*Tb/λb]≧10・・・式(A’)
Kb*Tb≧0.183*λb・・・(式A”)
表1には、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、銅(Cu)の4種類の材料について、波長帯域ごとの屈折率nおよび消衰係数kを記載している。また、表1には、式(i)で表される光反射率Rと、k*d≧0.183*λを満たす距離d(d≧0.183)*λ/k)を記載している。表2には、銀(Ag)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、金(Au)の4種類の材料について、波長帯域ごとの屈折率nおよび消衰係数kを記載している。また、表2には、式(i)で表される光反射率Rと、k*d≧0.183*λを満たす距離d(d≧0.183)*λ/k)を満たす距離dを記載している。金属層52の厚さTbが表1,2に示した距離dを満足すれば、金属層52の光吸収率は0.9以上となる
【0034】
【0035】
【表2】
アルミニウムと銀は他の材料に比べて光反射率Rが高いため、金属層51の材料として好適である。タングステンとタンタルはアルミニウムや銀に比べて光反射率Rが低いため金属層52の材料として好適である。
【0036】
チタンとニッケルは光反射率Rが低いため金属層52の材料として用いることができる。しかしながら、チタンは水素を吸蔵しやすいため、光電変換層10の裏面F2におけるダングリングボンドの水素終端に好ましくない影響を与えうる。例えば、遮光画素領域2における遮光画素部58にチタン層を設けると、光電変換層10への水素供給量を減少させ、受光画素領域1と遮光画素領域2との間での水素供給量の違いに基づく暗電流の差を増大させうる。そのため、受光画素領域1と遮光画素領域2との間での黒レベルの差を増大させ、黒レベル補正の誤差が増大する。ニッケルは強磁性を有するため、デバイスDEVへ好ましくない電磁気的な影響を与えうる。そのため、金属層52の材料としては、チタンやニッケルよりもタングステンやタンタルの方が好適である。
【0037】
銅と金は赤色光に対して高い光反射率を示すため、金属層51に赤色光が入射する場合には、金属層51の材料として用いることができる。銅と金は青色光に対して低い光反射率を示すため、金属層52に青色光が入射する場合には、金属層52の材料として用いることができる。銅は緑色光に対して低い光反射率を示すため、金属層52に緑色光が入射する場合には、金属層52の材料として用いることができる。金は緑色光に対して高い光反射率を示すため、金属層51に緑色光が入射する場合には、金属層51の材料として用いることができる。
【0038】
アルミニウム、タングステン、チタン、銅、銀、ニッケル、金のいずれにおいても、厚さdを50nm以上にすれば、青色光、緑色光および赤色光のいずれに対しても、0.9(90%)以上の光吸収率を実現することできる。タンタルにおいても、厚さdを60nm以上にすれば、青色光、緑色光および赤色光のいずれに対しても、0.9(90%)以上の光吸収率を実現することできる。
【0039】
金属層51の主成分はアルミニウムまたは銀であることが好ましい。また、金属層52の主成分は、タングステンまたはタンタルであることが好ましい。
【0040】
図4を用いて遮光膜50について詳説する。金属層51の厚さTaは金属層52の厚さTbよりも大きいことが好ましい。遮光画素領域2において要求される遮光性能が例えば-200db以上であるとする。これは光透過率ではτ=10
-10以下となる。この遮光性能を実現するためには、光反射率Rが高いだけでは不十分であり、τ=(1-R)*(1-A)から、光吸収率Aを高める必要があることが分かる。上述の様に、光吸収率Aを高めるには、消衰係数kがより高いことと、厚さdがより大きいことが求められる。-200db以上の遮光性能は、アルミニウムを主成分とする金属層の厚さを150nm以上とすることで実現可能である。同等の遮光性能は、タングステンを主成分とする金属層の厚さを370nm以上とすることでも実現可能であるが、遮光膜の厚さが大きくなることは明らかである。消衰係数がより大きい材料からなる金属層を遮光膜50に用いることで、遮光膜50の厚さTを小さくできる。遮光膜50の厚さの増大を抑制しつつ、遮光膜50の遮光性能を高めるには、消衰係数kがより高い材料を用いればよい。金属層51の消衰係数Kaは金属層52の消衰係数Kbよりも高いこと(Ka>Kb)が好ましい。金属層52の消衰係数Kbが金属層51の消衰係数Kaより小さい場合、金属層52の厚さTbと金属層51の厚さTaはTb<Taとなることが望ましい。このようにすると、遮光画素領域2における遮光膜50の遮光性能を向上させつつ、複層構造をとる遮光膜50の膜厚Tを薄くすることができる。これにより遮光膜50の側壁における光の反射を抑制することが可能となる。金属層51の厚さは50nm以上でありうる。金属層51の厚さが50nm以上であれば、どの金属材料であっても金属層51の透過率は十分に低くなる。金属層51として上述した典型材料群の材料を用いる場合、金属層51の厚さが50nmであれば、透過率を10%以下にすることができる。金属層51の厚さTaは例えば100~300nmである。金属層52の厚さは50nm以上でありうる。金属層52の厚さが50nm以上であれば、どの金属材料であっても金属層52の透過率は十分に低くなる。金属層52として上述した典型材料群の材料を用いる場合、金属層52の厚さが50nmであれば、透過率を10%以下にすることができる。金属層52の厚さTbは例えば50~150nmである。
【0041】
遮光膜50は、金属層51と金属層52との間に設けられた金属化合物層53を含んでいてもよい。金属層52の厚さTbは金属化合物層53の厚さTcよりも大きいことが好ましい。金属化合物層53の主成分は金属窒化物、金属酸化物あるいは金属炭化物などの種々の金属化合物から選択することができる。典型的な金属化合物層53の主成分は窒化チタンあるいは窒化タンタルである。本例における金属化合物層53の主成分は窒化チタンである。
【0042】
遮光膜50は、金属層51と金属層52との間に設けられた金属層54を含んでいてもよい。本例の金属層54は金属化合物層53と金属層52との間に設けられているが、金属層54を金属化合物層53と金属層51との間に設けてもよい。典型的な金属層54の主成分はチタンまたはタンタルである。金属層54の厚さTdは金属化合物層53の厚さTcよりも小さくてよい。
【0043】
遮光膜50は、金属層51に対して光電変換層の側とは反対側に設けられた金属化合物層55を含んでいてもよい。金属層51の厚さTaは金属化合物層55の厚さTeよりも大きいことが好ましい。遮光膜50と光電変換層10との間の距離Dが、遮光膜50の厚さTよりも小さいことが好ましい。遮光膜50と光電変換層10との間の距離Dが、金属層52の厚さTbよりも大きいことも好ましい。
【0044】
遮光膜50は、金属層51に対して光電変換層の側とは反対側に設けられた金属層56を含んでいてもよい。本例の金属層56は金属層51と金属化合物層55との間に設けられているが、金属化合物層55を金属層51と金属層56との間に設けてもよい。典型的な金属層56の主成分はチタンまたはタンタルである。金属層56の厚さTfは金属化合物層55の厚さTeよりも小さくてよい。
【0045】
金属化合物層53あるいは金属層54、金属化合物層55、金属層56はバリア層として機能しうる。バリア層として機能する材料は、金属層52及び金属層51を構成する材料との組み合わせに応じて選択されうる。金属層51と金属層52が互いに異なる材料で構成される場合、金属層51と金属層52との間のバリア層は、金属層51と金属層52との接続を安定させるために有利である。金属層51がアルミニウムで構成され、遮光壁60がタングステンで構成された場合のバリア層として、金属化合物層53は窒化チタン層であり、金属層54はチタン層でありうる。
【0046】
遮光膜50を構成する層の典型的な配置は、光電変換層10の側から、金属層52、金属層54、金属化合物層53、金属層51、金属層56、金属化合物層55の順である。遮光膜50を構成する層の種類の典型的な組み合わせとしては、金属層51がアルミニウム層であり、金属層52がタングステン層であり、金属化合物層53および金属化合物層55が窒化チタン層であり、金属層54、56がチタン層である。遮光膜50を構成する層の厚さの典型的な関係としては、Td&Tf<Tc&Te<Tb<Taである。Tf<Tdであってよく、Tc<Teであってよい。厚さTcは例えば1~5nmであり、厚さTdは例えば1~10nmであり、厚さTcは例えば10~50nmであり、厚さTeは例えば10~50nmである。
【0047】
遮光膜50と光電変換層10との間には誘電体層43が設けられている。遮光膜50と光電変換層10との間には金属酸化物膜40が設けられている。金属酸化物膜40は誘電体層43と光電変換層10との間に設けられている。金属酸化物膜40は、金属酸化物層41と、金属酸化物層41と半導体層との間に位置する金属酸化物層42と、を含みうる。遮光膜50と光電変換層10との間には、金属酸化物層41と、金属酸化物層41と光電変換層10との間に位置する金属酸化物層42と、が設けられている。誘電体層43の主成分は、酸化シリコンや窒化シリコン、炭化シリコン等のシリコン化合物でありうる。金属酸化物層41の主成分は、例えば酸化タンタルや酸化チタンである。金属酸化物層41の主成分は、例えば酸化アルミニウムや酸化ハフニウムである。透光部材DLを構成する層の種類の典型的な組み合わせとしては、誘電体層43が酸化シリコン層であり、金属酸化物層41が酸化タンタル層であり、金属酸化物層42が酸化アルミニウム層である。誘電体層43は遮光膜50の下面に接している。金属層52と誘電体層43との間の距離が金属層52の厚さTbよりも小さいことが好ましい。換言すると、金属層52と誘電体層43との間には、金属層52の厚さTb以上の厚さを有する遮光層が存在しないことが好ましい。本例では、遮光膜50の下面が金属層52で構成されているため、金属層52と誘電体層43は接しており、金属層52と誘電体層43との間の距離はゼロである。遮光膜50が誘電体層43と金属層52との間に不図示の遮光層(金属層や金属化合物層)を含む場合、金属層52と誘電体層43との距離は、誘電体層43と金属層52との間の遮光層の厚さに相当しうる。厚さThは例えば5~20nmであり、厚さTgは例えば20~100nmである。厚さTkは例えば5~20nmであり、厚さTgは例えば50~500nmである。誘電体部材DLを構成する層の厚さの典型的な関係としては、Th<Tg<Tkである。遮光膜50を構成する層と、誘電体部材DLを構成する層の厚さの典型的な関係としては、Td<Th<Tg<Tkである。
【0048】
金属層52の光電変換層10の側の面の一部である接続部59が光電変換層10に接している。光電変換層10は、所定の導電型の半導体領域15を含み、遮光膜50と半導体領域15とは、接続部59と半導体領域15によって電気的に接続される。半導体領域15および遮光膜50は、一定の電位に維持される。半導体領域15は、遮光画素領域2とは異なる周辺領域3に配置される。更に、遮光壁60および遮光膜50も、相互に電気的に接続される。金属酸化物層41、42および誘電体層43は半導体領域15の上に開口を有しており、この開口の中に金属層52の一部が配置される。開口の中に配置された金属層52の一部が接続部59を有する。
【0049】
受光画素領域1において遮光膜50の上に設けられている遮光壁60は、格子(例えば、矩形格子)を構成するように配置される。遮光壁60には、下面と上面がある。光学構造30は遮光膜50の上に設けられた遮光壁60を含みうる。遮光壁は開口APを有する。遮光壁60と光電変換層10との間に遮光膜50が位置する。受光画素領域1において、遮光壁60は誘電体DLで構成された透光部36を画定しており、透光部36の形状は開口APの形状に一致しうる。透光部36の配列ピッチは、受光画素領域1でも、遮光画素領域2でも同じであってよい。遮光壁60は、受光画素領域1において、受光画素部57に接して、受光画素部57に重なるように配置される。遮光壁60は、遮光画素領域2において、遮光画素部58に接して、遮光画素部58に重なるように配置される。遮光膜50と遮光壁60が接することで、遮光膜50と遮光壁60との間から光が漏れることを抑制できる。遮光膜50の上面に凹部を形成し、この凹部の中に遮光壁60の一部が配置されてもよい。光電変換部111とそれに隣接する光電変換部112の境界の上にも遮光壁60は配置される。遮光壁60を設けることにより、光電変換部112の上方の誘電体DL(透光部36)に入射した光は、光電変換部111に入射しないようにできる。遮光壁60は、受光画素領域1に配置されたものも、遮光画素領域2に配置されたものも同じ構造でありうる。遮光壁60は、周辺領域3にも設けても設けられなくてもよい。遮光壁60の高さHは遮光膜50の厚さTよりも大きいことが好ましい。遮光壁60は少なくとも金属層61を含みうる。遮光壁60を設けることにより、受光画素間の光のクロストークを抑制することができる。金属層61の幅Wwはおおむね遮光壁60の幅に一致し、100~500nmである。本例の遮光壁60は金属層61と誘電体DLとの間に位置する金属化合物層61を含みうる。金属層61の主成分はタングステンでありうるが、銅であってもよい。金属化合物層61の主成分は窒化チタンでありうるが、窒化タンタルであってもよい。金属化合物層62は金属層61に対するバリア層として機能しうるが、金属化合物層62を省略してもよい。遮光壁60の幅Wは100~500nmでありうる。遮光壁60の高さHは500~5000nmでありうる。遮光壁60は複数の遮光壁を縦に重ねた構造を有していてもよい。遮光壁60の金属層61の幅Wwは遮光膜50の金属層51の厚さTaよりも大きいこと(Ta<Ww)が好ましい。遮光壁60の金属層61の幅Wwは遮光膜50の金属層52の厚さTbよりも大きいこと(Tb<Ww)が好ましい。金属層61の幅Wwを大きくすることで、金属層61へ入射した光の吸収率を高くすることができる。金属層61の幅Wwを金属層51の厚さTaよりも大きくすることで、金属層61の材料の消衰係数kが金属層51の材料の消衰係数kよりも低くても、金属層61は十分な遮光性能を提供できる。受光画素領域1に入射する光の大半は遮光壁61に入射することなく光電変換層10へ入射する。そのため、遮光壁60の遮光性能は、遮光画素領域2に入射する光の大半が入射する遮光膜50ほど高くなくてよい。ここでは、金属層61と金属層51との間には金属化合物層55および金属化合物層61の両方が位置しているが、金属層61と金属層51との間には金属化合物層55および金属化合物層61の片方のみが位置していてもよい。例えば、金属層61が設けられるトレンチを誘電体DLに形成する際に、金属化合物層55を除去して、金属化合物層55(および金属層56)にスリットを設けてもよい。その場合には、トレンチの中に設けられる金属層61あるいは金属化合物層62が金属層51あるいは金属層56に接しうる。以上説明したような遮光壁60と遮光膜50の関係は、遮光膜50の金属層51および金属層52の一方(例えば金属層52)を省略した場合においても成立しうる。
【0050】
受光画素領域1においては、光電変換装置APRへ入射した光は、マイクロレンズMLおよび緑色フィルターCFGあるいは青色フィルターGFBを透過し、透光部36、35を通って光電変換層10へ入射する。緑色フィルターCFGおよび青色フィルターGFBをカラーフィルターと総称でき、緑色フィルターCFGおよび青色フィルターGFBを含むカラーフィルターアレイには不図示の赤色フィルターも含まれうる。本例では、遮光画素領域2にもマイクロレンズMLや青色フィルターGFBが設けられている。遮光画素領域2のマイクロレンズMLは、受光画素領域1におけるマイクロレンズMLの形状を良好にする機能を有するが、省略してもよい。遮光画素領域2の色フィルターGFBは、遮光膜50への入射光を低減する機能を有するが、省略してもよい。遮光画素領域2においては、光電変換装置APRへ入射した光は、遮光膜50によって遮断あるいは減衰される。遮光膜50に到達しうる光は遮光画素領域2に設けられた青色フィルターGFBを透過した青色光でありうる。
【0051】
遮光膜50と誘電体DLとの間には、反射防止膜(不図示)が配置されてもよい。反射防止膜は、窒化シリコンまたは酸窒化シリコンなどで構成される。
【0052】
遮光膜50および遮光壁60は、次の方法で製造できる。まず、金属酸化物層41、42となる金属酸化物材料膜が裏面F2を覆うように形成され、次いで、誘電体層43となる誘電体材料膜が金属酸化物材料膜の上に形成される。そして、金属酸化物材料膜および誘電体材料膜には、接続部59を形成すべき位置に接続用の開口が形成される。次に、金属層51と金属層52を含む複層構造を有する遮光材料膜が成膜される。この際に、上述した接続用の開口の中に金属層52が入り込むことにより、充填されて接続部59が形成される。次いで、複数の開口OPが形成されるように遮光材料膜がパターニングされて遮光膜50が形成される。次に、遮光膜50を覆うように、誘電体層44を含む誘電体材料膜が形成される。誘電体層44を含む誘電体材料膜の一部は開口OPの中に入り込む。次に遮光膜50の上において誘電体材料膜にトレンチを形成する。このトレンチで囲まれた部分が透光部36となる。このトレンチの中にタングステンなどの遮光材料膜を、スパッタリング等を用いて埋め込む。この遮光材料膜のうちの誘電体層44となる誘電体材料膜の上に位置する部分をCMP等で除去する。これにより、開口APを有する遮光壁60が形成される。遮光壁60の高さHは、誘電体層44となる誘電体材料膜の厚さによって制御できる。
【0053】
光電変換層10は例えば単結晶シリコン層や化合物半導体層などの半導体層でありうる。光電変換部11はpnフォトダイオード、pinフォトダイオードあるいはアバランシェフォトダイオードなどのフォトダイオードあるいはフォトゲートでありうる。本例における光電変換層10には光電変換部11の電荷を読み出すためのトランジスタが設けられており、
図3にはこのトランジスタのゲート電極GEを示している。読み出し回路を別の半導体層に配置して、当該別の半導体層を光電変換層と積層することもでき、その場合には、光電変換層10にはトランジスタを設けなくてもよい。他の例において、光電変換装置APRは、光電変換層10に対して表面F1側に設けられた画素電極と、光電変換層10に対して裏面F2側に設けられた対向電極とを備えていてもよい。この場合の光電変換層10は有機材料および/または無機材料で構成された光電変換膜でありうる。光電変換膜は量子ドット膜であってもよい。光電変換膜の内で対向電極と画素電極との間に位置する部分が光電変換部11となる。
【0054】
図1(b)に示した機器EQPについて詳述する。半導体装置APRはデバイスDEVの他に、デバイスDEVを収容するパッケージPKGを含みうる。パッケージPKGは、デバイスDEVが固定された基体と、デバイスDEVに対向するガラス等の蓋体と、基体に設けられた端子とデバイスDEVに設けられた端子とを接続するボンディングワイヤやバンプ等の接続部材と、を含みうる。
【0055】
機器EQPは、光学装置OPT、制御装置CTRL、処理装置PRCS、表示装置DSPL、記憶装置MMRYの少なくともいずれかをさらに備え得る。光学装置OPTは光電変換装置としての半導体装置APRに結像するものであり、例えばレンズやシャッター、ミラーである。制御装置CTRLは半導体装置APRを制御するものであり、例えばASICなどの半導体デバイスである。処理装置PRCSは半導体装置APRから出力された信号を処理するものであり、AFE(アナログフロントエンド)あるいはDFE(デジタルフロントエンド)を構成する。処理装置PRCSは、CPU(中央処理装置)やASIC(特定用途向け集積回路)などの半導体デバイスである。表示装置DSPLは半導体装置APRで得られた情報(画像)を表示する、EL表示装置や液晶表示装置である。記憶装置MMRYは、半導体装置APRで得られた情報(画像)を記憶する、磁気デバイスや半導体デバイスである。記憶装置MMRYは、SRAMやDRAMなどの揮発性メモリ、あるいは、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性メモリである。機械装置MCHNはモーターやエンジン等の可動部あるいは推進部を有する。機器EQPでは、半導体装置APRから出力された信号を表示装置DSPLに表示したり、機器EQPが備える通信装置(不図示)によって外部に送信したりする。そのために、機器EQPは、半導体装置APRが有する記憶回路部や演算回路部とは別に、記憶装置MMRYや処理装置PRCSを更に備えることが好ましい。
【0056】
図1(b)に示した機器EQPは、撮影機能を有する情報端末(例えばスマートフォンやウエアラブル端末)やカメラ(例えばレンズ交換式カメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、監視カメラ)などの電子機器でありうる。カメラにおける機械装置MCHNはズーミングや合焦、シャッター動作のために光学装置OPTの部品を駆動することができる。また、機器EQPは、車両や船舶、飛行体などの輸送機器(移動体)でありうる。輸送機器における機械装置MCHNは移動装置として用いられうる。輸送機器としての機器EQPは、半導体装置APRを輸送するものや、撮影機能により運転(操縦)の補助および/または自動化を行うものに好適である。運転(操縦)の補助および/または自動化のための処理装置PRCSは、半導体装置APRで得られた情報に基づいて移動装置としての機械装置MCHNを操作するための処理を行うことができる。機器EQPは内視鏡やコンピュータ断層撮影(CT)などの医療機器や、測距センサなどの計測機器、電子顕微鏡のような分析機器、複写機などの事務機器であってもよい。
【0057】
本実施形態による半導体装置APRは、その設計者、製造者、販売者、購入者および/または使用者に、高い価値を提供することができる。そのため、半導体装置APRを機器EQPに搭載すれば、機器EQP価値も高めることができる。よって、機器EQPの製造、販売を行う上で、本実施形態の半導体装置APRの機器EQPへの搭載を決定することは、機器EQPの価値を高める上で有利である。
【0058】
本発明は、上述の実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。なお、本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略しても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【符号の説明】
【0059】
50 遮光膜
51 金属層
52 金属層
10 光電変換層