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特許7520571イリジウム錯体を含む組成物、それを有する有機発光素子、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置、移動体
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  • 特許-イリジウム錯体を含む組成物、それを有する有機発光素子、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置、移動体 図1
  • 特許-イリジウム錯体を含む組成物、それを有する有機発光素子、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置、移動体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】イリジウム錯体を含む組成物、それを有する有機発光素子、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置、移動体
(51)【国際特許分類】
   H10K 85/30 20230101AFI20240716BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20240716BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240716BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240716BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240716BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240716BHJP
【FI】
H10K85/30
C07F15/00 E
C09K11/06 660
G02B5/20 101
G09F9/30 349B
G09F9/30 365
H10K50/12
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020085564
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021178798
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】谷 泰
(72)【発明者】
【氏名】堀田 克之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太郎
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-531495(JP,A)
【文献】特開2014-196258(JP,A)
【文献】特開2006-351837(JP,A)
【文献】特開2014-127687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00
C07F 15/00
C09K 11/06
G02B 5/20
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウム原子、前記イリジウム原子に結合している、第一の配位子、第二の配位子、第三の配位子を有し、前記第二の配位子が前記第一の配位子と同じ構造であり、前記第三の配位子が前記第一の配位子及び前記第二の配位子と異なる構造である、イリジウム錯体と、
イリジウム原子と、第四の配位子、第五の配位子、前記第三の配位子、を有し、
前記第四の配位子は前記第一の配位子と同じ示性式で表される配位子であり、
前記第五の配位子は前記第二の配位子と同じ示性式で表される配位子である、前記イリジウム錯体の異性体と、を有、前記イリジウム錯体と前記異性体との合計に対する前記異性体の組成比が、1.5%以上であって、
前記異性体は、前記イリジウム錯体の構造異性体であって、下記(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする組成物。
(1)前記第一の配位子と前記第四の配位子とが異なる構造である。
(2)前記第二の配位子と前記第五の配位子とが異なる構造である。
【請求項2】
イリジウム原子、前記イリジウム原子に結合している、第一の配位子、第二の配位子、第三の配位子を有し、前記第二の配位子が前記第一の配位子と同じ構造であり、前記第三の配位子が前記第一の配位子及び前記第二の配位子と異なる構造である、イリジウム錯体と、
イリジウム原子と、第四の配位子、第五の配位子、前記第三の配位子、を有し、
前記第四の配位子は前記第一の配位子と同じ示性式で表される配位子であり、
前記第五の配位子は前記第二の配位子と同じ示性式で表される配位子である、前記イリジウム錯体の異性体と、を有する組成物であって、
前記イリジウム錯体と前記異性体との合計に対する前記異性体の組成比が、1.5%以上であり、
前記イリジウム錯体は、下記一般式[6]で表され、
【化1】

一般式[6]において、R 34 乃至R 48 は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記一般式[6]におけるR 45 が水素原子であり、かつR 43 がアルキル基であり、
前記イリジウム錯体の異性体は、前記一般式[6]におけるR 45 がアルキル基かつ、R 43 が水素原子であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記異性体の組成比が、2.0%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記異性体は、前記イリジウム錯体の構造異性体であって、下記(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
(1)前記第一の配位子と前記第四の配位子とが異なる構造である。
(2)前記第二の配位子と前記第五の配位子とが異なる構造である。
【請求項5】
前記第一の配位子及び前記第二の配位子は置換基を有する構造であり、前記第四の配位子または前記第五の配位子は、それぞれ前記第一の配位子または前記第二の配位子と前記置換基の置換位置が異なる構造であることを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記(1)及び前記(2)のいずれも満たすことを特徴とする請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
前記異性体が、前記イリジウム錯体の立体異性体であって、下記(3)及び(4)の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
(3)前記第一の配位子と前記第四の配位子との前記イリジウム原子に対する立体配置が異なる。
(4)前記第二の配位子と前記第五の配位子との前記イリジウム原子に対する立体配置が異なる。
【請求項8】
前記(3)及び前記(4)のいずれも満たすことを特徴とする請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記イリジウム錯体が、下記一般式[1]または一般式[2]で表されるイリジウム錯体であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の組成物。
【化2】

一般式[1]及び一般式[2]において、Lは二座配位子であり、R乃至R18は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、シアノ基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の複素芳香族基からそれぞれ独立に選ばれる。
環Aは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナンスレン環、9,9-スピロビフルオレン環、クリセン環及び置換あるいは無置換の複素芳香族基から選ばれる環状構造を表す。前記環状構造は、置換基を有してよい。
IrLは、下記一般式[3]乃至[5]のいずれかで表される。
【化3】

一般式[3]乃至[5]において、R19乃至R33は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基及び置換あるいは無置換の複素芳香族基からそれぞれ独立に選ばれる。
【請求項10】
前記イリジウム錯体が、下記一般式[6]で表されるイリジウム錯体であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の組成物。
【化4】

一般式[6]において、R34乃至R48は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【請求項11】
前記イリジウム錯体は、前記一般式[6]におけるR45が水素原子であり、かつR43がアルキル基であり、
前記イリジウム錯体の異性体は、前記一般式[6]におけるR45がアルキル基かつ、R43が水素原子であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記イリジウム錯体が、HNT(Homo-N-Trans)型であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
第一電極と第二電極と前記第一電極と前記第二電極との間に配置されている有機化合物層とを有する有機発光素子であって、
前記有機化合物層は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の組成物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項14】
前記有機化合物層は発光層であり、前記発光層が第一の有機化合物をさらに有し、
前記第一の有機化合物は、前記組成物が有する前記イリジウム錯体よりも最低励起三重項エネルギーが大きい化合物であることを特徴とする請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記発光層が、第二の有機化合物をさらに有し、前記第二の有機化合物の最低励起三重項エネルギーは、前記組成物に含まれている前記イリジウム錯体の最低励起三重項エネルギー以上前記第一の有機化合物の最低励起三重項エネルギー以下であることを特徴とする請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記有機化合物層は、前記第一電極と前記発光層との間に配される第一の電荷輸送層と、前記第二電極と前記発光層との間に配される第二の電荷輸送層と、をさらに有し、
前記第一電極は前記第一の電荷輸送層と接し、前記第二電極は前記第二の電荷輸送層と接することを特徴とする請求項14または15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、請求項13乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項18】
前記有機発光素子の光出射側に、カラーフィルタを有することを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は請求項13乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項20】
請求項13乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項21】
請求項13乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルムと、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項22】
請求項13乃至16のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異性体を増加させたイリジウム錯体を含む組成物、それを有する有機発光素子、表示装置、撮像装置、電子機器、照明装置、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機発光素子と呼ぶ)は、第一電極と第二電極とこれら電極間に配置される有機化合物層とを有する電子素子である。これら一対の電極から電子及び正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放出する。
【0003】
有機発光素子の最近の進歩は著しく、低駆動電圧、多様な発光波長、高速応答性、発光デバイスの薄型化・軽量化が可能であることが挙げられる。
【0004】
発光デバイスの性能向上には、さらに性能の高い発光性有機化合物の開発が求められており、盛んに開発が進められている。発光性有機化合物は蛍光発光材料と燐光発光材料の2種類に分けられ、原理的に蛍光発光材料よりも燐光発光材料が高い発光効率を発揮することが知られている。
【0005】
特許文献1には、発光効率の高い燐光発光材料として下記の化合物Aが記載されている。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-114137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、化合物Aとその合成方法が記載されている。高効率かつ長寿命の素子として化合物Aを有する有機発光素子が記載されているが、化合物Aを有する有機発光素子には発光効率に改善の余地がある。特許文献1に記載の合成方法で化合物Aが合成される場合、化合物Aの異性体が1.4%程度含まれる。しかし、特許文献1には、この異性体に着目して、組成物の性能、さらには有機発光素子の性能を向上させることは、記載されてない。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光効率の高い、イリジウム錯体と、当該イリジウム錯体の異性体と、を含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、イリジウム原子、前記イリジウム原子に結合している、第一の配位子、第二の配位子、第三の配位子を有し、前記第二の配位子が前記第一の配位子と同じ構造であり、前記第三の配位子が前記第一の配位子及び前記第二の配位子と異なる構造である、イリジウム錯体と、イリジウム原子と、第四の配位子、第五の配位子、前記第三の配位子、を有し、前記第四の配位子は前記第一の配位子と同じ示性式で表される配位子であり、前記第五の配位子は前記第二の配位子と同じ示性式で表される配位子である、前記イリジウム錯体の異性体と、を有、前記イリジウム錯体と前記異性体との合計に対する前記異性体の組成比が、1.5%以上であって、前記異性体は、前記イリジウム錯体の構造異性体であって、下記(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする組成物。
(1)前記第一の配位子と前記第四の配位子とが異なる構造である。
(2)前記第二の配位子と前記第五の配位子とが異なる構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光効率の高い、イリジウム錯体と、当該イリジウム錯体の異性体と、を含む組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の画素の一例を表す概略断面図である。(b)本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の模式図である。
図3】(a)本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る携帯機器の一例を表す模式図である。
図4】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。(b)折り曲げ可能な表示装置の一例を表す模式図である。
図5】(a)本発明の一実施形態に係る照明装置の一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る移動体の一例である自動車を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の説明に限定されず、本発明の主旨及びその範囲から逸脱しない限り、その形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者に容易に理解される。すなわち、本発明は以下の説明により限定して解釈されることはない。
【0014】
本発明の一実施形態に係る組成物は、イリジウム錯体と当該イリジウム錯体の異性体を有し、前記イリジウム錯体と前記異性体との合計に対する前記異性体の組成比が、1.5%以上であることを特徴とする。異性体の組成比はさらに好ましくは、2.0%以上である。さらに好ましくは、2.9%以上である。
【0015】
イリジウム錯体は、イリジウム原子、前記イリジウム原子に結合している、第一の配位子、第二の配位子、第三の配位子を有する。前記第二の配位子が前記第一の配位子と同じ構造であり、前記第三の配位子が前記第一の配位子及び前記第二の配位子と異なる構造である、イリジウム錯体である。
【0016】
当該イリジウム錯体の異性体は、イリジウム原子と、第四の配位子、第五の配位子、前記第三の配位子、を有する。前記第四の配位子は前記第一の配位子と同じ示性式で表される配位子であり、前記第五の配位子は前記第二の配位子と同じ示性式で表される配位子である前記イリジウム錯体の異性体である。本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体は、イリジウム原子、第一の配位子、第二の配位子、第三の配位子を有する。第一乃至第三の配位子は、イリジウム原子と結合している。結合は、共有結合と呼ばれても、配位結合と呼ばれてもよい。第一の配位子と第二の配位子とは、構造が同じであり、第三の配位子は、第一及び第二の配位子と構造が異なる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体の異性体は、第四の配位子、第五の配位子、第三の配位子を有する錯体である。第四の配位子は第一の配位子と同じ示性式で表され、第五の配位子は第二の配位子と同じ示性式で表される。第一の配位子と第四の配位子、第二の配位子と第五の配位子は、示性式が同じなので、置換基の置換位置、Irに対する立体配置のみが異なる場合がある。配位子の性質は大きく異ならないが、イリジウム錯体全体の性能として差が生じる場合がある。すなわち、イリジウム錯体の異性体を、発光効率を向上させる添加剤とみなして増加させることで、有機発光素子の発光効率を向上できることを見出した。本発明の一実施形態に係る組成物は、組成物中の当該異性体比率を増加させることで、有機発光素子にした場合の発光効率を向上させる、組成物である。
【0018】
[組成比]
本明細書において、異性体の組成比は、イリジウム錯体と当該イリジウム錯体の異性体との合計に対する異性体の比率を表す。組成比は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定することができる。より具体的には、横軸を吸収波長、縦軸を吸光度としたスペクトルを取得する。励起波長としてはイリジウム錯体とその異性体が吸収しうる波長である限り特に限定されないが、例えば254nmであってよい。このスペクトルと、横軸とで定義される面積により、化合物量を見積もることができる。そして、イリジウム錯体とその異性体との面積比から組成比を算出することができる。HPLCを用いた測定は一例であり、本発明に係る組成物の組成比の測定方法は、これに限定されるものではない。
【0019】
[異性体]
本明細書における異性体について説明する。異性体には構造異性体と立体異性体が存在することが知られている。
【0020】
1.構造異性体
イリジウム錯体は、例えば、イリジウム原子、置換基を有する第一の配位子、第一の配位子と同じ構造の第二の配位子、第三の配位子を有する。同じ構造とは、同じ分子式、示性式で表され、同じ置換基が同じ置換位置に設けられていることを示す。構造異性体は、例えば、イリジウム原子、当該第一の配位子と同じ示性式で表される第四の配位子、当該第二の配位子と同じ示性式で表される第五の配位子、第三の配位子を有する。すなわち、構造異性体は、下記(1)及び(2)の少なくともいずれかを満たす。
【0021】
(1)前記第一の配位子と前記第四の配位子とが異なる構造である。
【0022】
(2)前記第二の配位子と前記第五の配位子とが異なる構造である。
【0023】
第一の配位子及び第二の配位子が置換基を有する構造であり、第四の配位子または第五の配位子は第一の配位子または第二の配位子と前記置換基の置換位置が異なる構造であってよい。構造異性体は、(1)及び(2)のいずれも満たす構造であってよい。
【0024】
構造異性体は、より具体的には、構造異性体は、イリジウム原子、当該第一の配位子と同じ構造である第四の配位子、当該第二の配位子と異なる位置に置換基を有する第五の配位子、第三の配位子を有する。または、構造異性体は、イリジウム原子、当該第一の配位子と異なる位置に置換基を有する第四の配位子、当該第二の配位子と異なる位置に置換基を有する第五の配位子、第三の配位子を有する。ここで、第一の配位子と第四の配位子は示性式が同じであるので、配位子自体の性能は大きく異なるものではない。しかし、配位子が構造異性体であることで、イリジウム錯体の性能が大きく異なる場合がある。第二の配位子と第五の配位子についても同様である。
【0025】
イリジウム錯体と当該イリジウム錯体の構造異性体は、例えば、下記構造式があげられる。
【0026】
【化2】
2.立体異性体
一方、立体異性体は、光学異性体や幾何異性体が知られている。イリジウム錯体は、例えば、イリジウム原子、第一の配位子、第一の配位子と同じ構造の第二の配位子、第一及び第二の配位子とは異なる構造の第三の配位子を有する。立体異性体は、イリジウム原子、第一の配位子と同じ構造である第四の配位子、第二の配位子と同じ構造である第五の配位子、第三の配位子を有する。第四の配位子、第五の配位子は、イリジウム原子に対する立体配置が異なる第四の配位子及び第五の配位子を有する。すなわち、立体異性体は、(3)及び(4)の少なくともいずれかを満たす。
【0027】
(3)前記第一の配位子と前記第四の配位子との前記イリジウム原子に対する立体配置が異なる。
【0028】
(4)前記第二の配位子と前記第五の配位子との前記イリジウム原子に対する立体配置が異なる。
【0029】
立体異性体は、(3)及び(4)のいずれも満たす構造であってよい。
【0030】
立体異性体は、具体的には、イリジウム錯体が、イリジウム原子と、第一の配位子、第二の配位子、第三の配位子を有する。立体異性体は、イリジウム原子、第四の配位子、第五の配位子、第三の配位子を有する。第一の配位子、第二の配位子、第四の配位子、第五の配位子は構造が同じである。互いに他とイリジウムに対する立体配置が異なってよい。第三の配位子は、第一乃至第五の配位子と構造が異なる。立体異性体は、構造は同じであるが、イリジウム錯体としての性能が大きく異なる場合がある。
【0031】
イリジウム錯体と当該イリジウム錯体の立体異性体は、例えば、下記構造式があげられる。ここでは、配位子は、簡略化して記載されている。炭素原子と窒素原子を有する配位子は、環構造を有する配位子であってよく、酸素原子を有する配位子は、アセチルアセトン構造のような構造であってよい。これら配位子の例示は一例であり、他の構造を排除するものではない。
【0032】
【化3】
本実施形態においては、イリジウム錯体がHNT(Homo-N-Trans)型であり、異性体はそれ以外の立体異性体であってよい。
【0033】
本発明者らは、鋭意検討の末、これらの異性体比率を増加させることで、当該組成物を有する有機発光素子の発光効率が向上することを見出した。
【0034】
[イリジウム錯体]
次に、本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体について説明する。本実施形態に係るイリジウム錯体は、下記一般式[1]または一般式[2]で表される。
【0035】
【化4】
一般式[1]及び一般式[2]において、R乃至R18は、水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルコキシ基、シアノ基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の複素芳香族基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0036】
環Aは、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナンスレン環、9,9-スピロビフルオレン環、クリセン環及び置換あるいは無置換の複素芳香族基から選ばれる環状構造を表す。当該環状構造は、さらに置換基を有してもよい。Lは二座配位子を表す。
【0037】
IrLは、下記一般式[3]乃至[5]のいずれかで表される。
【0038】
【化5】
一般式[3]乃至[5]において、R19乃至R33は、水素原子、アルキル基、置換あるいは無置換の芳香族炭化水素基又は置換あるいは無置換の複素芳香族基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0039】
本実施形態に係るイリジウム錯体は、一般式[6]で表されるイリジウム錯体であることが好ましい。
【0040】
【化6】
一般式[6]において、R34乃至R48は、水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【0041】
本実施形態に係る組成物に含まれるイリジウム錯体は前記一般式[6]におけるR45がアルキル基であり、かつR43が水素原子であってよい。当該組成物に含まれるイリジウム錯体の異性体は、前記一般式[6]におけるR45が水素原子かつ、R43がアルキル基であってよい。R43またはR45で表されるアルキル基はメチル基であってよい。
【0042】
本実施形態に係るハロゲン原子は、フッ素、塩素、ヨウ素、臭素のいずれかである。中でもフッ素が好ましい。
【0043】
本実施形態に係るアルキル基は、炭素原子数が1乃至20のアルキル基であってよい。アルキル基は、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。当該ハロゲン原子はフッ素であることが好ましい。アルキル基は、炭素原子数が1乃至8のアルキル基であってよく、炭素原子数が1乃至4であってよい。ハロゲン原子を置換基とする場合には、アルキル基のいずれの水素原子を置換してもよいが、トリフルオロメチル基とすることが好ましい。アルキル基は、より具体的には、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、セカンダリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本実施形態に係るアルコキシ基は、炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基であってよい。またアルコキシ基は、炭素原子数が1乃至6のアルコキシ基であってよい。アルコキシ基は、より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、2-エチル-オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本実施形態に係る芳香族炭化水素基は、炭素原子数が6乃至18の芳香族炭化水素基であってよい。芳香族炭化水素基は、より具体的には、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本実施形態に係る複素芳香族基は、炭素原子数が3乃至15の複素芳香族基であってよい。また、複素原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはこれらの組み合わせを有してよい。複素芳香族基は、より具体的には、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
上記のアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、複素芳香環基は、さらに置換基を有してよい。さらに有してもよい置換基は、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基等の炭素数1乃至4のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、ピリジル基、ピロリル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
以下に、本発明のイリジウム錯体の具体的な構造式を例示する。
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
上記例示化合物のうち、化合物(1)乃至化合物(64)及び化合物(79)乃至化合物(90)は、一般式[5]で表される配位子を有するイリジウム錯体である。これらのイリジウム錯体は、分子量が小さいacac系の配位子(ジケトン系二座配位子)が1つ含まれている。そのため、錯体自体の分子量が比較的小さいので、昇華精製が容易である。さらに、一般式[5]におけるR31乃至R33が、水素原子またはアルキル基であり、R32は水素原子であることがより好ましい。
【0056】
例示化合物のうち、化合物(65)乃至化合物(71)は、一般式[4]で表される配位子を有するイリジウム錯体である。これらのイリジウム錯体は、分子中にピコリン酸誘導体が配位子として一つ含まれている。ここでピコリン酸誘導体を配位子として導入すると、acac系配位子を導入する場合と比較して、錯体自体の発光ピーク波長が短波長にシフトすることができる。
【0057】
例示化合物のうち、化合物(72)乃至化合物(78)は、一般式[3]で表される配位子を有するイリジウム錯体である。これらのイリジウム錯体は、分子中に、フェニルピリジン(ppy)誘導体が1つ含まれている。ppy誘導体配位子はこのイリジウム錯体では非発光性の配位子であるため、イリジウム錯体からアリールベンゾ[f]イソキノリン配位子由来の赤色発光を得ることができる。ppy誘導体配位子を有することで量子収率が高い場合がある。
【0058】
[異性体の組成比向上方法]
本実施形態に係るイリジウム錯体の異性体は、イリジウム錯体の合成時にイリジウム錯体との混合物として得られる。この混合物に対して、昇華精製、再結晶、分散洗浄、GPC精製、カラム精製を複数回行うことで、異性体を単離、あるいは高濃度化することができる。上記精製は、1種類を複数回行ってもよいし、複数種を組み合わせてもよい。また、イリジウム錯体の合成時に、イリジウム錯体の溶解度とその異性体の溶解度に差を設けて、抽出することで異性体の組成比を増加させることもできる。
【0059】
[本発明の一実施形態に係る有機発光素子が有する有機化合物層]
次に、本発明の一実施形態に係る有機発光素子が有する有機化合物層について説明する。
【0060】
本実施形態に係る有機発光素子は、一対の電極である第一電極と第二電極と、これら電極間に配置される有機化合物層と、を少なくとも有する。一対の電極は陽極と陰極であってよい。本実施形態の有機発光素子において、有機化合物層は発光層を有していれば単層であってもよいし複数層からなる積層体であってもよい。有機化合物層は、有機EL層とも呼ばれる。
【0061】
ここで有機化合物層が複数層からなる積層体である場合、有機化合物層は発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等を有してもよい。また発光層は、単層であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。ホール輸送層、電子輸送層は、電荷輸送層とも称される。
【0062】
本実施形態の有機発光素子において、上記有機化合物層の少なくとも一層に本実施形態に係る組成物が含有されている。具体的には、本実施形態に係る組成物は、上述したホール注入層、ホール輸送層、電子ブロッキング層、発光層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等のいずれかに含有されており、好ましくは、発光層に含有される。
【0063】
本実施形態の有機発光素子において、本実施形態に係る組成物が発光層に含まれる場合、発光層は、本実施形態に係る組成物のみからなる層であってもよいし、本実施形態に係る組成物の他に第一の有機化合物と第一の有機化合物と異なる第二の有機化合物とを有する層であってもよい。第一の有機化合物は、組成物が含むイリジウム錯体の最低励起三重項エネルギーよりも大きい最低励起三重項エネルギーを有してよい。第二の有機化合物は、その最低励起三重項エネルギーが、組成物が含むイリジウム錯体の最低励起三重エネルギー以上、第一の有機化合物の最低励起三重項エネルギー以下であってよい。ここで、発光層が第一の有機化合物と第二の有機化合物とを有する層である場合、第一の有機化合物は、発光層のホストであってよい。また第二の有機化合物は、アシスト材料であってよい。組成物に含まれるイリジウム錯体は、ゲストまたはドーパントであってよい。
【0064】
ここでホストとは、発光層を構成する化合物の中で重量比が最も大きい化合物である。またゲストまたはドーパントとは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さい化合物であって、主たる発光を担う化合物である。またアシスト材料とは、発光層を構成する化合物の中で重量比がホストよりも小さく、ゲストの発光を補助する化合物である。なお、アシスト材料は、第2のホストとも呼ばれている。
【0065】
ここで、本実施形態に係るイリジウム錯体を発光層のゲストとして用いる場合、ゲストの濃度は、発光層全体に対して0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上5.0重量%以下であることがより好ましい。発光層全体とは、発光層を構成する化合物の合計の重量を表す。
【0066】
本発明者らは種々の検討を行い、本実施形態に係る組成物を、発光層のゲストとして用いると、高効率で高輝度な光出力を呈することを見出した。この発光層は単層でも複層でも良いし、他の発光色を有する発光材料を含むことで本実施形態の発光色である赤の発光と混色させることも可能である。複層とは発光層と別の発光層とが積層している状態を意味する。この場合、有機発光素子の発光色は赤に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。白色の場合、別の発光層が赤以外の色、すなわち青色や緑色を発光する。また、製膜方法も蒸着もしくは塗布製膜で製膜を行う。
【0067】
本実施形態に係る有機化合物は、本実施形態の有機発光素子を構成する発光層以外の有機化合物層の構成材料として使用することができる。具体的には、電子輸送層、電子注入層、ホール輸送層、ホール注入層、ホールブロッキング層等の構成材料として用いてもよい。この場合、有機発光素子の発光色は赤に限られない。より具体的には白色でもよいし、中間色でもよい。
【0068】
本実施形態に係る有機発光素子を製造する場合、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性化合物あるいはホール輸送性化合物、ホストとなる化合物、発光性化合物、電子注入性化合物あるいは電子輸送性化合物等を一緒に使用することができる。
【0069】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0070】
ホール注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にして、かつ注入されたホールを発光層へ輸送できるようにホール移動度が高い材料が好ましい。また有機発光素子中において結晶化等の膜質の劣化を低減するために、ガラス転移点温度が高い材料が好ましい。ホール注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、アリールカルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。さらに上記のホール注入輸送性材料は、電子ブロッキング層にも好適に使用される。
【0071】
以下に、ホール注入輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0072】
【化14】
ホール輸送材料としてあげた中でも、HT16乃至HT18は、陽極に接する層に用いることで駆動電圧を低減することができる。HT16は広く有機発光素子に用いられている。HT16に隣接する有機化合物層に、HT2、HT3、HT10、HT12を用いてよい。また、一つの有機化合物層に複数の材料を用いてもよい。例えば、HT2とHT4、HT3とHT10、HT8とHT9、の組み合わせを用いてよい。
【0073】
主に発光機能に関わる発光材料としては、本発明の一実施形態に係るイリジウム錯体の他に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、イリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、銅錯体、ユーロピウム錯体、ルテニウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられる。
【0074】
以下に、発光材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化15】
発光層に含まれる発光層ホストあるいは発光アシスト材料としては、芳香族炭化水素化合物もしくはその誘導体の他、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体等が挙げられる。
【0076】
特に好ましくは、ホスト材料は分子骨格に、アントラセン、テトラセン、ペリレン、フルオレン、ピレン骨格を有していることが好ましい。なぜなら、上記のように炭化水素で構成されることに加え、本発明の有機化合物に十分なエネルギー移動を起こすことができる最低励起一重項エネルギーを有しているからである。
【0077】
芳香族炭化水素化合物のホスト材料としては、以下の一般式[7]で表される化合物が好ましい。
【0078】
Ar-(Ar-(Ar-Ar 一般式[7]
一般式[7]において、p及びqは、それぞれ0又は1であり、またp+qは1以上である。
【0079】
Arは、下記置換基群αに示される置換基のいずれかである。
【0080】
Ar及びArは、それぞれ下記置換基群βに示される置換基のいずれかである。Ar及びArは、同じであっても異なっていてもよい。ただし、*はそれぞれの置換位置を示している。
【0081】
【化16】
【0082】
【化17】
以下に、発光層に含まれる発光層ホストあるいは発光アシスト材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない
【0083】
【化18】
電子輸送性材料としては、陰極から注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、ホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、クリセン誘導体、アントラセン誘導体等)が挙げられる。さらに上記の電子輸送性材料は、ホールブロッキング層にも好適に使用される。
【0084】
以下に、電子輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない
【0085】
【化19】
電子注入性材料としては、陰極からの電子注入が容易に可能なものから任意に選ぶことができ、ホール注入性とのバランス等を考慮して選択される。有機化合物としてn型ドーパント及び還元性ドーパントも含まれる。例えば、フッ化リチウム等のアルカリ金属を含む化合物、リチウムキノリノール等のリチウム錯体、ベンゾイミダゾリデン誘導体、イミダゾリデン誘導体、フルバレン誘導体、アクリジン誘導体があげられる。
【0086】
[有機発光素子の構成]
有機発光素子は、基板の上に設けられた絶縁層上に、第一電極、有機化合物層、第二電極を形成して設けられる。第二電極の上には、保護層、カラーフィルタ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。第一電極、第二電極はいずれかが陽極で、他方が陰極であってよい。
【0087】
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、陽極と配線の導通を確保するために、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0088】
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
【0089】
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものが良い。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン、等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
【0090】
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0091】
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
【0092】
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム-銀、アルミニウム-リチウム、アルミニウム-マグネシウム、銀-銅、亜鉛-銀等が使用できる。酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を抑制するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が抑制できれば、合金の比率は問わない。例えば、1:1であってよい。
【0093】
陰極は、酸化インジウムスズ(ITO)などの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流及び交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
【0094】
[保護層]
陰極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、陰極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、陰極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機化合物層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、陰極を形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。
【0095】
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
【0096】
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
【0097】
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等があげられる。
【0098】
[対向基板]
平坦化層の上には、対向基板を有してよい。対向基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対向基板と呼ばれる。対向基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。対向基板は、前述の基板を第一基板とした場合、第二基板であってよい。
【0099】
[有機化合物層の形成]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層(ホール注入層、ホール輸送層、電子阻止層、発光層、ホール阻止層、電子輸送層、電子注入層等)は、以下に示す方法により形成される。
【0100】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ等のドライプロセスを用いることができる。またドライプロセスに代えて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。
【0101】
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0102】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0104】
[本発明の一実施形態に係る有機発光素子の用途]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0105】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。
【0106】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0107】
次に、図面を参照しながら本実施形態に係る表示装置について説明する。
【0108】
図1(a)は、本実施形態に係る表示装置を構成する画素の一例の断面模式図である。画素は、副画素10を有している。副画素はその発光により、10R、10G、10Bに分けられている。発光色は、発光層から発光される波長で区別されても、副画素から出射する光がカラーフィルタ等により、選択的透過または色変換が行われてもよい。それぞれの副画素は、層間絶縁層1の上に第一電極である反射電極2、反射電極2の端を覆う絶縁層3、第一電極と絶縁層とを覆う有機化合物層4、透明電極5、保護層6、カラーフィルタ7を有している。
【0109】
層間絶縁層1は、その下層または内部にトランジスタ、容量素子を配されていてよい。トランジスタと第一電極は不図示のコンタクトホール等を介して電気的に接続されていてよい。
【0110】
絶縁層3は、バンク、画素分離膜とも呼ばれる。第一電極の端を覆っており、第一電極を囲って配されている。絶縁層の配されていない部分が、有機化合物層4と接し、発光領域となる。
【0111】
有機化合物層4は、正孔注入層41、正孔輸送層42、第一発光層43、第二発光層44、電子輸送層45を有する。
【0112】
第二電極5は、透明電極であっても、反射電極であっても、半透過電極であってもよい。
【0113】
保護層6は、有機化合物層に水分が浸透することを低減する。保護層は、一層のように図示されているが、複数層であってよい。層ごとに無機化合物層、有機化合物層があってよい。
【0114】
カラーフィルタ7は、その色により7R、7G、7Bに分けられる。カラーフィルタは、不図示の平坦化膜上に形成されてよい。また、カラーフィルタ上に不図示の樹脂保護層を有してよい。また、カラーフィルタは、保護層6上に形成されてよい。またはガラス基板等の対向基板上に設けられた後に、貼り合わせられてよい。
【0115】
図1(b)は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるトランジスタとを有する表示装置の例を示す断面模式図である。トランジスタは、能動素子の一例である。トランジスタは薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。
【0116】
図1(b)の表示装置100は、ガラス、シリコン等の基板11とその上部に絶縁層12が設けられている。絶縁層の上には、TFT等の能動素子18が配されており、能動素子のゲート電極13、ゲート絶縁膜14、半導体層15が配置されている。TFT18は、他にも半導体層15とドレイン電極16とソース電極17とで構成されている。TFT18の上部には絶縁膜19が設けられている。絶縁膜に設けられたコンタクトホール20を介して有機発光素子を構成する陽極21とソース電極17とが接続されている。
【0117】
なお、有機発光素子に含まれる電極(陽極、陰極)とTFTに含まれる電極(ソース電極、ドレイン電極)との電気接続の方式は、図1(b)に示される態様に限られるものではない。つまり陽極又は陰極のうちいずれか一方とTFTソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが電気接続されていればよい。TFTは、薄膜トランジスタを指す。
【0118】
図1(b)の表示装置100では有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層22は、複数層であってもよい。陰極23の上には有機発光素子の劣化を低減するための第一の保護層24や第二の保護層25が設けられている。
【0119】
図1(b)の表示装置100ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えて他のスイッチング素子として用いてもよい。
【0120】
また図2(b)の表示装置100に使用されるトランジスタは、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタに限らず、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタでもよい。活性層として、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンなどの非単結晶シリコン、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体が挙げられる。なお、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
【0121】
図1(b)の表示装置100に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
【0122】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFTにより発光輝度が制御され、有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。なお、本実施形態に係るスイッチング素子は、TFTに限られず、低温ポリシリコンで形成されているトランジスタ、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。基板内にトランジスタを設けるか、TFTを用いるかは、表示部の大きさによって選択され、例えば0.5インチ程度の大きさであれば、Si基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0123】
図2は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。タッチパネル1003及び表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0124】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0125】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0126】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。撮像装置は、光電変換装置と呼ぶこともできる。
【0127】
図3(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0128】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本発明の有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0129】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。
【0130】
図3(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0131】
図4は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。図4(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。
【0132】
額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、図4(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。
【0133】
また、額縁1301及び表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0134】
図4(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。図4(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光装置を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一及び第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0135】
図5(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光学フィルム1404と、光拡散部1405と、を有してよい。光源は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。光学フィルタは光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ、光拡散部は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0136】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路を有してよい。照明装置は本発明の有機発光素子とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
【0137】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0138】
図5(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0139】
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。テールランプは、有機発光素子を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0140】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。この場合、有機発光素子が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0141】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光素子を有する。
【0142】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【実施例
【0143】
以下、実施例を説明する。ただし本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0144】
[合成例1]
化合物(16)の合成
以下の手順で化合物(16)を合成した。まず配位子の合成に関して説明する。
【0145】
【化20】
窒素雰囲気において、100mlナスフラスコに3-メチルフェニルボロン酸1.36g、4-クロロベンゾ[f]イソキノリン2.14g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.38g、トルエン15ml、エタノール7.5ml、2M炭酸ナトリウム水溶液15mlを加えた。室温から90℃に昇温し、16時間30分攪拌した。トルエンと水を加え、有機層を抽出した有機層に硫酸マグネシウムを加え、ろ過した。濃縮後、クロロホルムでカラムした。得られた液体を濃縮し、ヘプタンで再結晶し、配位子2.288gを得た。構造はH NMR、GC-MSにて同定した。
【0146】
次にクロロブリッジ二量体の合成に関して説明する。
【0147】
【化21】
窒素雰囲気下で、100mlナスフラスコに塩化イリジウム1.36g、配位子2.288g、2-エトキシエタノール30ml、水15mlを加えた。室温から120℃に昇温し、20時間攪拌した。水を加え、吸引ろ過した。エタノールに再分散、洗浄した。トルエンを加え、100℃に昇温し、放冷後、ろ取し、クロロブリッジ二量体2.65gを得た。構造はH NMRにて同定した。
【0148】
【化22】
窒素雰囲気下で、100mlナスフラスコにクロロブリッジ二量体1.3g、炭酸ナトリウム0.45g、2,2,6,6-tetramethylheptane-3,5-dione 1045μl、2-エトキシエタノール40mlを加えた。室温から120℃に昇温し、13時間攪拌した。水とエタノールを加え、吸引ろ過した。クロロベンゼンを入れて溶かしセライトろ過した。得られた液体を濃縮後、メタノールで繰り返し分散洗浄し、赤色粉末として化合物(16)0.73gを得た。構造はH NMR、MALDI-TOF-MSにて同定した。また得られた粉末は、X線結晶構造解析によりHNT型を示唆した。
【0149】
合成例1で得られた化合物(16)を含む組成物の組成比を以下の手順で測定した。合成例1で得られた赤色粉末1mgをジクロロメタン1mLに溶かし、組成比をHPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。LC-MSにて同じ分子量であったことから、含まれているのは異性体であることが確認された。
【0150】
化合物(16)98.5%、異性体1.4%
HPLC測定の条件:
カラム:ODS-SP 5μm 4.6*150mm
移動相:メタノール
流速:1.0mL/min
なお、化合物(16)は保持時間6.1min、異性体は保持時間5.6minであった。LC-MSにて同じ分子量であったことから異性体であることを確認した。
【0151】
[合成例2]
化合物(19)の合成
3-メチルフェニルボロン酸に替えて3-tert-ブチルフェニルボロン酸を用いる以外は、合成例1と同様の方法によって化合物(19)を合成した。構造はH NMR、MALDI-TOF-MSにて同定した。またX線結晶構造解析によりHNT型を示唆した。
【0152】
【化23】
合成例2で得られた化合物(19)を含む組成物の組成比を、合成例1と同様にして求めたところ、以下の組成比であった。LC-MSにて同じ分子量であったことから、含まれているのは異性体であることが確認された。
【0153】
化合物(19)98.9%、異性体1.1
【0154】
[合成例3]
化合物(24)の合成
3-メチルフェニルボロン酸に替えて3-イソプロピルフェニルボロン酸を用いる以外は、合成例1と同様の方法によって化合物(24)を合成した。構造はH NMR、MALDI-TOF-MSにて同定した。またX線結晶構造解析によりHNT型を示唆した。
【0155】
【化24】
合成例3で得られた化合物(24)を含む組成物の組成比を、合成例1と同様にして求めたところ、以下の組成比であった。LC-MSにて同じ分子量であったことから、含まれているのは異性体であることが確認された。
【0156】
化合物(24)98.5%、異性体1.3
【0157】
[合成例4]
化合物(29)の合成
3-メチルフェニルボロン酸に替えて4-ビフェニルボロン酸を用いる以外は、合成例1と同様の方法によって化合物(29)を合成した。構造はH NMR、MALDI-TOF-MSにて同定した。またX線結晶構造解析によりHNT型を示唆した。
【0158】
【化25】
合成例4で得られた化合物(29)を含む組成物の組成比を、合成例1と同様にして求めたところ、以下の組成比であった。LC-MSにて同じ分子量であったことから、含まれているのは異性体であることが確認された。
【0159】
化合物(29)98.9%、異性体1.0
【0160】
[合成例5]
化合物(33)の合成
3-メチルフェニルボロン酸に替えて2-メチル[1,1’-ビフェニル]-4-ボロン酸を用いる以外は、同様の方法によって化合物(33)を合成した。構造はH NMR、MALDI-TOF-MSにて同定した。またX線結晶構造解析によりHNT型を示唆した。
【0161】
【化26】
合成例5で得られた化合物(33)を含む組成物の組成比を、合成例1と同様にして求めたところ、以下の組成比であった。LC-MSにて同じ分子量であったことから、含まれているのは異性体であることが確認された。
【0162】
化合物(33)98.8%、異性体1.1
【0163】
[合成例6]
化合物(57)の合成
3-メチルフェニルボロン酸に替えて9,9-ジメチルフルオレン-3-ボロン酸を用いる以外は、同様の方法によって化合物(57)を合成した。構造はH NMR、MALDI-TOF-MSにて同定した。またX線結晶構造解析によりHNT型を示唆した。
【0164】
【化27】
合成例5で得られた化合物(57)を含む組成物の組成比を、合成例1と同様にして求めたところ、以下の組成比であった。LC-MSにて同じ分子量であったことから、含まれているのは異性体であることが確認された。
【0165】
化合物(57)98.6%、異性体1.2
【0166】
[精製例1]
合成例1で得られた組成物をクロロホルムに溶かし、GPC精製により組成物を分離した。分離されたのは、化合物(16)を主成分とする組成物(以下、化合物(16)GPC(A))と、その異性体を主成分とする組成物(以下、化合物(16)GPC(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0167】
化合物(16)GPC(A):化合物(16)99.3%、異性体0.6%
化合物(16)GPC(B):化合物(16)10.4%、異性体89.5%
GPC分離条件:
カラム:JAIGEL-2H-40 40mm×600mm
移動相:クロロホルム
流速:10.0mL/mi
【0168】
[精製例2]
合成例1で得られた組成物をクロロホルム/メタノールからの再結晶を繰り返すことによって組成物を分離した。分離されたのは、化合物(16)を主成分とする組成物(以下、化合物(16)晶析(A))と、その異性体を主成分とする組成物(以下、化合物(16)晶析(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0169】
化合物(16)晶析(A):化合物(16)99.2%、異性体0.7%
化合物(16)晶析(B):化合物(16)20.2%、異性体79.5
【0170】
[精製例3]
合成例1で得られた組成物に替えて合成例2で得られた組成物を用いる以外は、精製例1と同様の方法によって組成物を分離した。分離されたのは、化合物(19)を主成分とするフラクション(以下、化合物(19)GPC(A))と、その異性体を主成分とするフラクション(以下、化合物(19)GPC(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0171】
化合物(19)GPC(A):化合物(19)99.8%、異性体0.2%
化合物(19)GPC(B):化合物(19)24.4%、異性体75.5
【0172】
[精製例4]
合成例1で得られた組成物に替えて合成例3で得られた組成物を用いる以外は、精製例2と同様の方法によって組成物を分離した。分離されたのは、化合物(24)を主成分とする組成物(以下、化合物(24)晶析(A))と、その異性体を主成分とする組成物(以下、化合物(24)晶析(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0173】
化合物(24)晶析(A):化合物(24)99.0%、異性体0.9%
化合物(24)晶析(B):化合物(24)18.5%、異性体81.4
【0174】
[精製例5]
合成例1で得られた組成物に替えて合成例4で得られた組成物を用いる以外は、精製例2と同様の方法によって組成物を分離した。分離されたのは、化合物(29)を主成分とする組成物(以下、化合物(29)晶析(A))と、その異性体を主成分とする組成物(以下、化合物(29)晶析(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0175】
化合物(29)晶析(A):化合物(29)99.5%、異性体0.5%
化合物(29)晶析(B):化合物(29)21.0%、異性体78.9
【0176】
[精製例6]
合成例1で得られた組成物に替えて合成例5で得られた組成物を用いる以外は、精製例2と同様の方法によって組成物を分離した。分離されたのは、化合物(33)を主成分とする組成物(以下、化合物(33)晶析(A))と、その異性体を主成分とする組成物(以下、化合物(33)晶析(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0177】
化合物(33)晶析(A):化合物(33)99.1%、異性体0.9%
化合物(33)晶析(B):化合物(33)35.3%、異性体64.5
【0178】
[精製例7]
合成例1で得られた組成物に替えて合成例3で得られた組成物を用いる以外は、精製例2と同様の方法によって組成物を分離した。分離されたのは、化合物(57)を主成分とする組成物(以下、化合物(57)晶析(A))と、その異性体を主成分とする組成物(以下、化合物(57)晶析(B))とである。それぞれの組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0179】
化合物(57)晶析(A):化合物(57)99.1%、異性体0.8%
化合物(57)晶析(B):化合物(57)12.9%、異性体87.0
【0180】
[実施例1]
精製例1で得られた化合物(16)GPC(A)と化合物(16)GPC(B)を、重量比98.8:1.2の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0181】
化合物(16)98.4%、異性体1.5%
上記昇華物を用いて、基板上に順次陽極/ホール注入層/ホール輸送層/電子ブロッキング層/発光層/ホールブロッキング層/電子輸送層/陰極の構成の有機発光素子を、以下のように作製した。
【0182】
ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚100nmで製膜したものを透明導電性支持基板(ITO基板)として使用した。このITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、1×10-5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
ホール注入層(10nm) HT16
ホール輸送層(30nm) HT3
電子ブロッキング(EB)層(10nm) HT7
発光層(30nm) ホスト材料:EM33、アシスト材料:GD10、ゲスト材料:組成物(4wt%)
ホールブロッキング(HB)層(45nm) ET12
電子輸送層(20nm) ET7
金属電極層1(0.5nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
次に、有機発光素子が水分の吸着によって劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせアクリル樹脂系接着材で封止した。
【0183】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.3%であった。実施例、比較例のHNT体と異性体との含有量、外部量子効率(EQE)を表1に示す。
【0184】
[実施例2]
精製例2で得られた化合物(16)晶析(A)と化合物(16)晶析(B)を、重量比98.2:1.8の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、
化合物(16)98.0%、異性体1.9%
であった。
【0185】
実施例1で用いた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0186】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.8%であった。
【0187】
[実施例3]
精製例1で得られた化合物(16)GPC(A)と化合物(16)GPC(B)を、重量比98.0:2.0の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0188】
化合物(16)97.9%、異性体2.0%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0189】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、25.7%であった。
【0190】
[実施例4]
精製例2で得られた化合物(16)晶析(A)と化合物(16)晶析(B)を、重量比97.2:2.8の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0191】
化合物(16)97.0%、異性体2.9%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0192】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、26.3%であった。
【0193】
[実施例5]
精製例2で得られた化合物(16)晶析(A)と化合物(16)晶析(B)を、重量比94.8:5.2の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0194】
化合物(16)95.3%、異性体4.6%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0195】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、26.7%であった。
【0196】
[実施例6]
精製例2で得られた化合物(16)晶析(A)と化合物(16)晶析(B)を、重量比57.5:42.5の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0197】
化合物(16)66.0%、異性体33.8%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0198】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、26.6%であった。
【0199】
[実施例7]
精製例1で得られた化合物(16)GPC(A)と化合物(16)GPC(B)を、重量比32.0:68.0の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0200】
化合物(16)34.9%、異性体65.0%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0201】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、27.0%であった。
【0202】
[実施例8]
合成例1で得られた化合物(16)GPC(B)を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0203】
化合物(16)10.6%、異性体89.3%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0204】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、27.3%であった。
【0205】
[実施例9]
精製例3で得られた化合物(19)GPC(A)と化合物(19)GPC(B)を、重量比95.1:4.9の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0206】
化合物(19)96.5%、異性体3.5%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0207】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、26.0%であった。
【0208】
[実施例10]
精製例3で得られた化合物(19)GPC(A)と化合物(19)GPC(B)を、重量比50.0:50.0の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0209】
化合物(19)66.3%、異性体33.7%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0210】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.4%であった。
【0211】
[実施例11]
精製例4で得られた化合物(24)晶析(A)と化合物(24)晶析(B)を、重量比98.1:1.9の比率で混合した。この混合物を370℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0212】
化合物(24)98.1%、異性体1.9%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0213】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.4%であった。
【0214】
[実施例12]
精製例5で得られた化合物(29)晶析(A)と化合物(29)晶析(B)を、重量比98.2:1.8の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0215】
化合物(29)98.4%、異性体1.9%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0216】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.9%であった。
【0217】
[実施例13]
精製例6で得られた化合物(33)晶析(A)と化合物(33)晶析(B)を、重量比94.9:5.1の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0218】
化合物(33)96.8%、異性体3.1%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0219】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、25.0%であった。
【0220】
[実施例14]
精製例7で得られた化合物(57)晶析(A)と化合物(57)晶析(B)を、重量比95.0:5.0の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0221】
化合物(57)97.1%、異性体2.9%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本実施例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0222】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、26.0%であった。
【0223】
[比較例1]
合成例1で得られた化合物(16)を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0224】
化合物(16)98.9%、異性体1.1%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0225】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.0%であった。
【0226】
[比較例2]
精製例1で得られた化合物(16)GPC(A)と化合物(16)GPC(B)を、重量比99.0:1.0の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0227】
化合物(16)98.8%、異性体1.2%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0228】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.9%であった。
【0229】
[比較例3]
精製例2で得られた化合物(16)晶析(A)と化合物(16)晶析(B)を、重量比98.7:1.3の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0230】
化合物(16)98.6%、異性体1.3%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0231】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.8%であった。
【0232】
[比較例4]
精製例3で得られた化合物(19)GPC(A)を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0233】
化合物(19)99.8%、異性体0.1%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0234】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.1%であった。
【0235】
[比較例5]
精製例3で得られた化合物(19)GPC(A)と化合物(19)GPC(B)を、重量比98.0:2.0の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0236】
化合物(19)98.5%、異性体1.1%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0237】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、22.5%であった。
【0238】
[比較例6]
精製例4で得られた化合物(24)晶析(A)を370℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0239】
化合物(19)99.8%、異性体0.1%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0240】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.6%であった。
【0241】
[比較例7]
合成例3で得られた化合物(24)を370℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0242】
化合物(24)98.9%、異性体1.1%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0243】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.2%であった。
【0244】
[比較例8]
精製例5で得られた化合物(29)晶析(A)を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0245】
化合物(29)99.5%、異性体0.5%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0246】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、22.5%であった。
【0247】
[比較例9]
精製例5で得られた化合物(29)晶析(A)と化合物(29)晶析(B)を、重量比99.0:1.0の比率で混合した。この混合物を360℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0248】
化合物(29)98.8%、異性体1.2%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0249】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、21.9%であった。
【0250】
[比較例10]
精製例6で得られた化合物(33)晶析(A)を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0251】
化合物(33)99.6%、異性体0.3%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0252】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.1%であった。
【0253】
[比較例11]
精製例6で得られた化合物(33)晶析(A)と化合物(33)晶析(B)を、重量比99.0:1.0の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0254】
化合物(33)99.0%、異性体1.0%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0255】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.0%であった。
【0256】
[比較例12]
精製例7で得られた化合物(57)晶析(A)を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0257】
化合物(57)99.2%、異性体0.8%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0258】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、24.4%であった。
【0259】
[比較例13]
精製例7で得られた化合物(57)晶析(A)と化合物(57)晶析(B)を、重量比99.0:1.0の比率で混合した。この混合物を380℃、3×10-3Paにて昇華精製を行い、昇華物を回収した。得られた昇華物の組成比を前記HPLC測定によって求めたところ、以下の組成比であった。
【0260】
化合物(57)98.6%、異性体1.3%
実施例1で得られた昇華物に替えて、本比較例で得られた昇華物を用いる以外は、実施例1と同様の方法によって有機発光素子を作製した。
【0261】
得られた有機発光素子について、ITO電極を陽極、Al電極を陰極にして、外部発光量子収率を測定したところ、23.6%であった。
【0262】
実施例1乃至14、比較例1乃至13の結果を表1にまとめる。
【0263】
【表1】
以上説明の通り、本発明の一実施形態に係る組成物は、有機発光素子に用いることで、高い発光効率を奏する。
【符号の説明】
【0264】
1 層間絶縁層
2 反射電極
3 絶縁層
4 有機化合物層
5 透明電極
6 保護層
7 カラーフィルタ
10 副画素
11 基板
12 絶縁層
13 ゲート電極
14 ゲート絶縁膜
15 半導体層
16 ドレイン電極
17 ソース電極
18 薄膜トランジスタ
19 絶縁膜
20 コンタクトホール
21 下部電極
22 有機化合物層
23 上部電極
24 第一保護層
25 第二保護層
26 有機発光素子
100 表示装置
1000 表示装置
1001 上部カバー
1002 フレキシブルプリント回路
1003 タッチパネル
1004 フレキシブルプリント回路
1005 表示パネル
1006 フレーム
1007 回路基板
1008 バッテリー
1009 下部カバー
1100 撮像装置
1101 ビューファインダ
1102 背面ディスプレイ
1103 操作部
1104 筐体
1200 電子機器
1201 表示部
1202 操作部
1203 筐体
1300 表示装置
1301 額縁
1302 表示部
1303 土台
1310 表示装置
1311 第一表示部
1312 第二表示部
1313 筐体
1314 屈曲点
1400 照明装置
1401 筐体
1402 光源
1403 回路基板
1404 光学フィルム
1405 光拡散部
1500 自動車
1501 テールランプ
1502 窓
1503 車体

図1
図2
図3
図4
図5