(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/14 20060101AFI20240716BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2020148747
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 駿介
(72)【発明者】
【氏名】福島 直樹
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-307287(JP,A)
【文献】特開2002-049225(JP,A)
【文献】特開2001-265076(JP,A)
【文献】特開2011-154064(JP,A)
【文献】特開平11-190931(JP,A)
【文献】特開平03-089265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/14
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を形成する画像形成動作を実行する画像形成装置であって、
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に帯電電圧を印加する帯電電圧印加部と、
前記帯電部材に流れる帯電電流を検知する帯電電流検知部と、
前記帯電電流検知部により検知された前記帯電電流に基づいて前記像担持体の表面電位に関する情報を取得する取得動作と、前記画像形成動作と、を実行可能に制御する制御部と、
前記像担持体に関する情報を記憶するメモリと、
を有し、
前記制御部は、前記画像形成動作が終了した後、次の画像形成動作を実行する場合において、前記像担持体の表面電位の絶対値が所定の閾値より小さい場合に、前記次の画像形成動作を実行する前に前記取得動作を実行するように制御する
ものであり、
前記制御部は、前記画像形成動作が終了してから、前記画像形成動作が終了したときに形成された前記表面電位の絶対値が前記閾値より小さくなるまで、の所要時間であって、前記像担持体に関する情報に基づいた前記所要時間に比べて、前記画像形成動作が終了して前記次の画像形成動作が実行されるまでの経過時間の方が長い場合に、前記次の画像形成動作を実行する前に前記取得動作を実行するように制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記メモリには、前記像担持体の使用状況に関する情報が記憶されていることを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体の使用状況に関する情報は、前記像担持体の累積駆動量および累積帯電時間を示す情報であることを特徴とする請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像形成装置の使用環境情報をさらに用いて前記所要時間を算出することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記使用環境情報としての温度情報を計測するためのセンサをさらに有することを特徴
とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記メモリには、前記像担持体の種類を示す情報が記憶されており、
前記制御部は、前記像担持体の種類を示す情報をさらに用いて前記所要時間を算出することを特徴とする請求項
1、
4および
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体の表面電位に関する情報は、前記帯電部材に流れる電流値であることを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記画像形成動作が実行された後に、前記表面電位が0Vになるまでに要する時間を前記所要時間として算出することを特徴とする請求項
1、
4および
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記帯電部材は、前記画像形成動作が終了した後に前記像担持体を再帯電させ、
前記制御部は、前記再帯電されたときの前記表面電位が前記閾値まで低下するための前記所要時間を算出することを特徴とする請求項
1、
4および
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成するために前記像担持体の表面を露光する露光ユニットを有し、
前記露光ユニットは、前記画像形成動作が終了した後に前記像担持体の表面に対する露光を行い、
前記制御部は、前記露光が行われたときの前記表面電位が前記閾値まで低下するための前記所要時間を算出することを特徴とする請求項
1、
4および
5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記閾値は0Vであることを特徴とする請求項1から1
0のいずれか1項に記載の画像
形成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記画像形成装置の電源が投入されたときに、前記取得動作を実行するように制御することを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記画像形成装置がスリープから復帰したときに、前記取得動作を実行するように制御することを特徴とする請求項1から
12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記画像形成動作が所定の回数なされるごとに、前記取得動作を実行するように制御することを特徴とする請求項1から
13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記像担持体が新品である場合に、前記取得動作を実行するように制御することを特徴とする請求項1から
13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記帯電電流検知部により検知された前記帯電電流に基づいて、前記像担持体が露光される前の前記表面電位を測定する前記取得動作を実行するように制御することを特徴とする請求項1から
15のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記像担持体が露光された後に、前記帯電部材により再帯電されるときの帯電量に基づいて、前記像担持体が露光された後の前記表面電位を測定する前記取得動
作を実行するように制御することを特徴とする請求項
16に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記像担持体が露光される前および後の前記表面電位に基づいて、前記帯電部材に印加される前記帯電電圧を制御することを特徴とする請求項
17に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記帯電部材によって帯電された前記像担持体の表面に静電潜像を形成するために前記像担持体の表面を露光する露光ユニットを有し、
前記露光ユニットは、前記画像形成動作が終了した後に前記像担持体の表面に対する露光を行い、
前記制御部は、前記露光が行われたときの前記表面電位が前記閾値まで低下した場合に、前記次の画像形成動作を実行する前に前記取得動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真複写機やレーザビームプリンタなど、電子写真方式の画像形成装置が用いられている。画像形成時には、まず帯電ローラが像担持体としての感光ドラムを帯電する。そして、露光装置が帯電された感光ドラムを露光して、感光ドラムに静電潜像を形成する。そして、現像剤担持体としての現像ローラが、感光ドラムに形成された静電潜像をトナー像として現像する。そして、転写ローラが、感光ドラムに形成されたトナー像を用紙やシートなどの記録材に転写する。そして、定着装置が記録材に転写されたトナー像を加熱・加圧して記録材に定着させる。これにより記録材に画像が形成される。
【0003】
ここで、感光ドラムにおいて露光装置により露光された部分である露光部の電位を露光後電位VL、現像ローラの表面電位を現像電位Vdcとした場合、露光後電位VLと現像電位Vdcとの電位差により感光ドラム上の静電潜像が現像される。具体的には、露光後電位VLと現像電位Vdcの電位差により、感光ドラム表面と現像ローラ表面との間に電界が生じる。そして、その電界の流れにより、現像ローラ表面に担持されたトナーが感光ドラム表面に移動する。ここで、露光後電位VLと現像電位Vdcとの電位差Vcontを現像コントラストとする。
【0004】
一方、感光ドラムにおいて、露光装置により露光されない部分である非露光部の電位を露光前電位VDとした場合に、露光前電位VDと現像電位Vdcとの電位差Vbackは、現像ローラから非露光部にトナーが移動しないような電位差に設定されている。露光前電位VDと現像電位Vdcとの電位差Vbackを現像バックコントラストとする。
【0005】
ここで、現像ローラから非露光部にトナーが移動し、非露光部にトナーが付着してしまうことを「カブリ」という。この「カブリ」は、現像バックコントラストが所望の値でない場合に生じてしまう。したがって、電子写真方式の画像形成装置において適正な画像を得るためには、電位差Vbackと電位差Vcontとが適正に制御される必要がある。
【0006】
ここで、帯電ローラに印加される電圧が一定である場合、感光ドラムの劣化や感光ドラムの感度の変化などにより、感光ドラム表面の電位(露光部および非露光部の電位)が変化してしまうことが知られている。
そこで従来、感光ドラムの使用状況(感光ドラムの回転数など)や感光ドラムの感光層の感度などから露光後電位VLと露光前電位VDとを予測していた。そして、この予測値に基づいて、帯電ローラに印加される電圧を変化させることで、露光後電位VLと露光前電位VDの値を所望の値に補正していた。これにより電位差Vcontと電位差Vbackも所定の値となり、適正な画像を得られると考えられていた。
【0007】
しかし上記の技術では、感光ドラムの電位ではなく感光ドラムの使用状況などから帯電ローラに印加される電圧を求めている。そのため、感光ドラム表面の電位が所定の電位にならない場合がある。そこで、特許文献1では、除電後の感光ドラムに対して帯電ローラから電圧を印加することで放電を生じさせ、その放電により帯電ローラに流れる帯電電流の直流成分を検知している。これにより感光ドラム表面の電位を検知し、検知結果に基づいて感光ドラムの表面の電位が目標値に近づくように補正を掛けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1において、感光ドラムの使用状況や周囲の環境などにより、検知精度が低下してしまうことがあった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、感光ドラムの表面電位を高い精度で検知できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
記録材に画像を形成する画像形成動作を実行する画像形成装置であって、
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、
前記帯電部材に帯電電圧を印加する帯電電圧印加部と、
前記帯電部材に流れる帯電電流を検知する帯電電流検知部と、
前記帯電電流検知部により検知された前記帯電電流に基づいて前記像担持体の表面電位に関する情報を取得する取得動作と、前記画像形成動作と、を実行可能に制御する制御部と、
前記像担持体に関する情報を記憶するメモリと、
を有し、
前記制御部は、前記画像形成動作が終了した後、次の画像形成動作を実行する場合において、前記像担持体の表面電位の絶対値が所定の閾値より小さい場合に、前記次の画像形成動作を実行する前に前記取得動作を実行するように制御するものであり、
前記制御部は、前記画像形成動作が終了してから、前記画像形成動作が終了したときに形成された前記表面電位の絶対値が前記閾値より小さくなるまで、の所要時間であって、前記像担持体に関する情報に基づいた前記所要時間に比べて、前記画像形成動作が終了して前記次の画像形成動作が実行されるまでの経過時間の方が長い場合に、前記次の画像形成動作を実行する前に前記取得動作を実行するように制御する
ことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期にわたる使用において、感光ドラムの表面電位を高い精度で検知できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1における画像形成装置の全体構成の概略図
【
図2】実施例1における現像装置の説明のための断面図
【
図3】実施例1における装置の制御部および制御内容を説明するためのブロック図
【
図4】実施例1における感光ドラムの表面電位を検知する手段を示す概略図
【
図5】実施例1における帯電電流IDと感光ドラムの帯電量ΔVDの関係を示す図
【
図6】実施例1における画像の形成終了後の電位の時間推移を示す説明図
【
図7】実施例1における表面電位測定制御の動作を示すフローチャート
【
図8】比較例における表面電位測定制御の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明では、図面および実施例を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、発明が適応される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0015】
[実施例1]
<画像形成装置の構成>
図1を参照して、本実施例の画像形成装置全体の概略構成について説明する。画像形成装置100は、電子写真を用いるレーザビームプリンタであり、概略、画像形成装置本体
Mとプロセスカートリッジ20を備える。ここで、画像形成装置本体Mとは、画像形成装置においてプロセスカートリッジ20を除いた構成部品を示すものである。一方、プロセスカートリッジ20は、画像形成装置本体Mに対して着脱して交換することが可能な部材である。本実施例のプロセスカートリッジ20には、感光ドラム1、帯電ローラ4、現像容器9、クリーニング容器5が一体的に組み込まれている。
【0016】
なお、本発明が適用可能な画像形成装置はここに示すものに限られない。本発明は例えば、複数のプロセスカートリッジ20を備え、中間転写ベルト(中間転写体)を用いて複数像のトナー像を記録材Pに転写してからカラー画像を形成するカラーレーザプリンタにも適用可能である。
また、本実施例における現像装置10は、磁性一成分現像剤を用い、感光ドラム1と所定のギャップを設けて対向配置される一成分非接触現像方式を用いている。しかし、二成分の現像剤を用いる二成分現像方式や、感光ドラム1と現像装置10が接触している接触現像方式を用いてもよい。
【0017】
プロセスカートリッジ20には、被帯電体としての像担持体である、感光ドラム1が配置されている。感光ドラム1は導電性ドラムの外周面にOPC(有機光半導体)感光層を形成したものである。感光ドラム1には、所定のプロセススピードで画像形成装置本体Mから駆動力が伝達され、時計回り方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その感光層へと作用するプロセス手段(帯電ローラ4やクリーニングブレード2など)や、現像電圧により現像を行う現像手段(現像容器9、現像ローラ7、規制部材8)が配置されている。
【0018】
帯電ローラ4は、帯電電圧電源(不図示)から帯電電圧の印加を受けて、感光ドラム1の表面を所定の帯電電位に均―に帯電する帯電部材である。本実施例の帯電電圧電源は、帯電ローラ4に対して-1050Vの帯電電圧を印加しており、これにより感光ドラム1の露光前電位VDが-500Vとなる。なお、本実施例では直流電圧を使用したが、これには限定されず、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を用いてもよい。
【0019】
スキャナ6は、露光装置であり、パーソナルコンピュータ(不図示)等から画像情報の入力を受けると、ビデオコントローラ(不図示)によって時系列電気デジタル画像信号に変換し、これに対応してレーザ光を変調して出力する。このように照射されたレーザ光が帯電された感光ドラム1表面を走査露光することにより、画像情報に対応する静電潜像が感光ドラム1上に形成される。本実施例では、感光ドラム1の露光後電位VLが-100Vとなるように、光量3.0mJ/m2でレーザ光を照射した。スキャナ6を本発明の露光ユニットと考えても良いし、スキャナ6にミラー等の光学部材を含めた構成を露光ユニットと考えても良い。
【0020】
現像装置10の現像ローラ7は、現像剤担持体であり、スキャナ6によって感光ドラム1に形成された静電潜像を、現像剤3によって現像する。本実施例では現像剤3として磁性一成分現像剤(トナー)を用い、現像ローラ7と感光ドラム1を所定のギャップ(例えば200μm)を設けて配置する非接触現像方式を採用している。
【0021】
また、感光ドラム1に対向して、感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに対して転写するための転写ローラ11が配置されている。
【0022】
<画像形成方法>
次に、画像形成動作を行うための画像形成方法について説明する。まず、画像形成装置本体M内の帯電電圧印加回路(不図示)が帯電ローラ4に電圧を印加することにより、感光ドラム1の表面が一様に帯電される。次いで、スキャナ6が画像情報に応じたレーザ光
を発し、帯電した感光ドラム1の表面を走査露光する。これにより、感光ドラム1上の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0023】
現像装置10は、現像手段としての現像容器9、現像ローラ7、規制部材8などを備える部材である。紙面で反時計回り方向に駆動された現像ローラ7上に、所定の帯電量のトナー層(磁性層)が形成される。そこに直流電圧と交流電圧が重畳された現像電圧が印加されると、電界でトナーが現像ローラ7から感光ドラム1へと飛翔し、静電潜像がトナー像として現像される。
【0024】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写電圧を印加された転写ローラ11によって記録材Pに転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置12に搬送される。定着装置12は、記録材Pに熱および圧力を加えることで、記録材Pにトナー像を定着させる。
【0025】
また、転写工程後に感光ドラム1上に残留した転写残トナーは、クリーニング手段としてのクリーニングブレード2によって除去され、廃トナーとして回収される。
その後、クリーニングされた感光ドラム1の表面は、再度帯電と露光が行われ、現像後の現像ローラ7から再度トナーが供給される。その後、転写と定着という流れを繰り返し、一連の画像形成動作のサイクルが行われる。
【0026】
<画像形成装置の各構成の詳細>
(感光ドラム1)
本実施例の感光ドラム1は有機光導電体(OPC)感光ドラムであり、直径30mmのアルミシリンダ外周面に抵抗層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層をディッピング塗工法にて順次塗布して構成される剛体である。電荷輸送層の膜厚は25μmである。
【0027】
(帯電ローラ4)
本実施例の帯電手段である帯電ローラ4は接触帯電部材である。帯電ローラ4は感光ドラム1の表面(外周面)を、所定の極性、電位に一様に帯電処理する。帯電ローラ4は、直径6mmの芯金に対し、外径が12mmとなるようにヒドリンゴムの基層にウレタンの表層を塗工している。また、抵抗値は1×106Ω以下であり、硬度は高分子計器(株)製AskerCゴム硬度計にて40度である。
【0028】
(スキャナ6)
スキャナ6は、感光ドラム1の表面にレーザを照射する露光装置であり、レーザの光量を変更可能である。本実施例では、半導体レーザのスキャナ6から波長800nmのレーザが照射される。半導体レーザ装置に、光路を規定するミラー等の光学部材を組み合わせたスキャナユニットを用いてもよい。
【0029】
(転写ローラ11)
転写ローラ11は、直径6mmの芯金に対し、外径15mmになるようにイオン導電性スポンジの基層を配置している。また抵抗値は温度22℃の環境において4×107Ωであり、硬度は高分子計器(株)製AskerCゴム硬度計にて30度である。
【0030】
(クリーニングブレード2)
クリーニングブレード2は、ゴムブレードがクリーニング支持板金によって支持されて一体となり形成される。本実施例では厚さ2mm、23℃環境下でのMD-1硬度が60度のウレタンゴムが使用される。
【0031】
(現像装置10)
図2は、本実施例で用いる一成分非接触現像方式の現像装置10の断面図である。現像装置10はトナーの収容部であるトナー収容室9aと、現像剤担持体としての現像ローラ7が設けられた現像室9bと、を有し、トナー収容室9aと現像室9bは開口9cを介して互いに連通している。
【0032】
本実施例において、トナーは平均粒径7μmの磁性1成分トナーを用いる。現像剤3は、トナー収容室9aから開口9cを介して現像室9bへと供給される。現像室9bに供給された現像剤3は、次に現像ローラ7に供給される。現像ローラ7は、画像形成時に現像剤3を担持するスリーブ7aと、その両端に嵌入されるキャップ7bを有している。またスリーブ7aには、磁性トナーに対応してマグネットローラ7cが内包されている。
【0033】
現像ローラ7は、感光ドラム1との間に所定の空隙(SDギャップ)が設けられつつ対向配置されている。本実施例において、SDギャップは200μmとした。スリーブ7aの両端は現像装置10の開口部に回転自在に支持されている。スリーブ7aは画像形成動作時には、紙面で反時計回りに回転駆動される。また、スリーブ7aには、画像形成装置本体Mに配置された不図示の電圧印加手段より所定のタイミングで電圧を印加している。本実施例においては直流電圧を-400Vとして、交流電圧をVpp=1400V、周波数2000Hzの矩形波として印加している。
【0034】
磁界発生手段であるマグネットローラ7cは、スリーブ7a中にあり、磁極N、Sが交互に複数個形成されている。本実施例では、現像極、規制極、取り込み極、およびシール極の、4つの磁極を配置した。現像極は、感光ドラム1対向位置に配置されトナーの現像を制御する。規制極は、規制部材8の対向に配置されスリーブ7a上のトナー量を制御する。取り込み極は、現像室9b内のトナーをスリーブ7a上に供給する。シール極は、現像室9bからのトナー漏れを防止する。また、マグネットローラ7cは、回転動作を行わず常に一定の位置に保持されているため、磁極は常に同じ方向に保たれる。
【0035】
現像ローラ7に供給されたトナーは、規制部材8によりトナー層の層厚が規制される。規制部材8により規制されたトナーは摩擦帯電により適切な電荷が付与される。
【0036】
ここで、本発明における現像ローラ7、規制部材8の主なパラメータを以下に列記する。
<<現像ローラ7>>
外径:14mm
材質:金属系(ニッケル、アルミニウム、SUS)
表面粗さ:Ra0.2~1.0μm
<<規制部材8>>
材質:ウレタン
厚み:1.0mm
【0037】
(制御ブロック図)
図3は本発明の画像形成装置本体Mの制御ブロック図である。制御部40は、演算処理を行う中心的素子であるCPU41、記憶手段であるROM42、RAM43などの本体メモリ、周辺機器との情報を入出力する入出力I/F44等を有している。RAM43には、センサの検知結果や、演算結果などが格納されている。ROM42には、制御プログラムなど予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU41には、画像形成装置本体Mにおける各制御対象が入出力I/F44を介して接続されている。CPU41は、各種の電気的情報信号の授受や、駆動のタイミングなどを制御しており、後述するフローチャートの処理を司る。
【0038】
画像形成部45は、
図1で説明した感光ドラム1、帯電ローラ4、スキャナ6、転写ローラ11、定着装置12等の総称であり、画像書き出し位置や画像パターンを形成する。
モータ駆動部46は、スキャナ6、感光ドラム1、現像ローラ7等を回転駆動する為の動力源となる各モータであり、制御部40からの制御信号に基づき動作する。
高圧電源47は、感光ドラム1、帯電ローラ4、現像ローラ7、転写ローラ11、定着装置等に高電圧を印加する電源である。
【0039】
露光制御部48は、感光ドラム1ヘ照射されるレーザ光の光量の信号をスキャナ6ヘ伝達する。
環境センサ49は、画像形成装置本体Mに備えられた温度を計測するセンサにより、温度を示す情報を制御部40に送信する。
タイマー50は、各モータの駆動時間や、後述する画像形成終了後からの経過時間など、時間を示す情報を制御部40へ送信する。
【0040】
メモリ通信部52は、後述するプロセスカートリッジ20のメモリ51とデータ通信を行い、制御部40にデータを送受信する。このデータは、制御部40で高圧電源47から帯電ローラ4、現像ローラ7等へ印加される電圧値を決定する際等に使用される。また、後述する感光ドラム1表面の電位測定タイミングを決定する際にも使用される。
【0041】
(メモリ)
本実施例のプロセスカートリッジ20にはメモリ51が備え付けられている。メモリ51には、感光ドラム1の駆動時間情報(感光ドラム1が回転する累積駆動量)、帯電時間(帯電ローラ4が感光ドラム1を帯電している累積帯電時間)などが記録されている。なお、感光ドラム1の使用状況を判断するための情報は、本実施例のような感光ドラム1の累積駆動量には限定されず、感光ドラム1の使用状況が判断できればどのような情報でもよい。
【0042】
さらに、本実施例のメモリ51には後述する感光ドラム1表面の電位測定が実行可能か判断するための感光ドラム1の使用状況や、帯電電流Iから帯電量ΔVDを求める際に用いる比例定数αなどが記憶されている。また、メモリ51には製造番号やモデルなどのプロセスカートリッジ20の種類を特定できる情報が記載されている。プロセスカートリッジ20が画像形成装置本体Mに装着された際に、メモリ51は、メモリ通信部52を介して制御部40と通信可能になり、制御部40による情報の読み取りや書き込みが可能になる。通信方式は非接触でもよく、電気接点を介した接触式でもよい。
【0043】
(感光ドラム1、帯電ローラ4、スキャナ6等の配置関係)
図4を用いて、本実施例での感光ドラム1、帯電ローラ4、スキャナ6等の配置について説明する。
図4は、感光ドラム1の表面電位を検知する手段を示す概略図である。
【0044】
帯電ローラ4の芯金はその長手方向の両端部がそれぞれ軸受部材(不図示)によって回転可能に保持されている。上記軸受部材は、付勢部材としての押圧バネ4cによって感光ドラム1ヘ向けて付勢されている。これにより、帯電ローラ4は感光ドラム1の表面に対して所定の押圧力をもって圧接され、感光ドラム1の表面との間に接触部である帯電ニップを形成している。帯電ローラ4は感光ドラム1の回転に伴い従動回転する。スキャナ6は、レーザ光が光学部材を介して感光ドラム1の外周面に照射されるように配置されている。現像ローラ7および転写ローラ11は、感光ドラム1に対向するように配置されている。
【0045】
帯電ローラ4には帯電電圧印加回路4aが接続されている。帯電電圧印加回路4aは、定電圧電源に接続されており、直流電圧である帯電電圧を帯電ローラ4に印加する、帯電
電圧印加部である。帯電電圧が印加された感光ドラム1の表面は露光前電位VDへと一様に帯電される。帯電ローラ4によりー様に帯電された感光ドラム1表面に対してスキャナ6は走査露光を行い露光後電位VLが形成される。制御部40は、RAM43、環境センサ49、メモリ51の情報を参照して、露光前電位VDの目標値が-500V、露光後電位VLの目標値が-100Vとなるように、帯電ローラ4ヘの印加電圧とスキャナ6のレーザ光量を決定する。
【0046】
また、本実施例において、帯電電圧印加回路4aには、帯電電流の直流成分を検出する帯電電流検知回路4b(帯電電流検知部)が接続されている。帯電電流とは、帯電電圧印加回路から帯電ローラ4に電圧が印加された際に、帯電ローラ4に流れる電流である。なお、転写ローラ11には転写電圧印加回路11aが接続されている。
【0047】
<感光ドラム1表面の露光前電位VDを検出する手段>
次に、感光ドラム1表面の露光前電位VDを検出する手段について説明する。帯電ローラ4から感光ドラム1への電圧印加により放電を生じると、帯電ローラ4に帯電電流が流れる。本実施例では、帯電電流の直流成分を検知することで感光ドラム1表面の電位を測定する。
【0048】
図5は、本実施例の帯電電流IDと感光ドラム1の帯電量ΔVDの関係を示す説明図である。ここで、感光ドラム1の帯電量ΔVDは、帯電ニップ通過前の感光ドラム1表面の電位である帯電前電位VD’と、帯電ニップ通過後の感光ドラム1表面の電位である帯電後電位(本実施例においては露光前電位VDと同一)との差分により求まる値である。このときに流れる帯電電流をIDとすると、帯電電流IDと帯電量ΔVDは、下式(1)に示されるような比例関係にある。
ΔVD=VD-VD’=αID (1)
したがって、帯電前電位VD’が0Vである状態において帯電電流IDを検知することで、感光ドラム1表面の露光前電位VDを検知することができる。
【0049】
ここで、式(1)における比例定数αは、下式(2)のように表せる。式(2)中、感光層の膜厚d、感光層の比誘電率ε、真空中の誘電率ε0、帯電ローラ4の有効帯電幅(感光ドラム1の表面の移動方向と略直行する方向)L、プロセススピードvpとする。
α=d/(ε×ε0×L×vp) (2)
なお、ε0、L、vpは、感光ドラム1の使用状況やその種類によらず予め定めておくことが可能なパラメータである。
【0050】
一方、感光層の比誘電率εは感光ドラム1の使用状況やその種類により決定される値である。また、感光層の膜厚dは感光ドラム1の使用状況により決定される値である。そこで制御部40は、メモリ51に保存されている感光層の情報、RAM43に保存されている感光ドラム1の情報、環境センサ49による温度情報などに基づいて、露光前電位VDを検出するときの比誘電率εおよび膜厚dを決定する。本実施例では使用する感光層の種類や使用状況に応じたテーブル予めメモリ51に格納させておき、制御部40でその情報を読み出すことで比例定数αを決定している。
【0051】
本実施例において、帯電電圧を印加した後に駆動モータにより感光ドラム1を1回転させ、感光ドラム1が1回転する間に流れる帯電電流の平均値を用いて露光前電位VDの検出を行っている。
【0052】
<感光ドラム1表面の露光後電位VLを検出する手段>
次に、感光ドラム1表面の露光後電位VLを検知する手段について説明する。本実施例では、表面電位を帯電前電位VD’から露光後電位VLにした状態で、感光ドラム1に帯電ニップを通過させて、帯電後電位VD(=露光前電位VD)に再帯電させる。そして、この再帯電時に流れる帯電電流の直流成分を検知することで、露光後電位VLを測定する。
【0053】
ここで、露光後電位VLから露光前電位VDへと再帯電されるときの帯電量をΔVL、その時に流れる帯電電流をILとすると、ΔVL=VD-VL=αILであることから、VLは下記式(3)のように表せる。
VL=VD-αIL (3)
式(3)における露光前電位VDは、感光ドラム1表面の露光前電位VDを検出したときの値を使用すればよい。また、比例定数αは式(2)で用いたものと同一である。
【0054】
このように、露光後電位VLから露光前電位VDへと再帯電するときに流れる帯電電流ILを検知することで、感光ドラム1表面の露光後電位VLを算出可能となる。なお、本実施例においては露光前電位VDを測定した後に露光後電位VLの測定を実施している。これは露光後電位VLの測定において用いられる露光前電位VDの精度を上げるためである。また、本実施例では、スキャナ6によるレーザ光の照射開始後に、駆動モータにより感光ドラム1を1回転駆動させ、感光ドラム1が1回転する間に流れる帯電電流の平均値を用いて露光後電位VLの測定を行っている。
【0055】
<表面電位測定制御の実行タイミングの決定方法>
次に、表面電位測定制御を実行するタイミングの決定方法について説明する。表面電位測定制御とは、露光前電位VDの測定および露光後電位VLの測定を一連の流れとして実行する制御のことであり、表面電位に関する情報を取得する取得動作である。
【0056】
上記の説明により、本実施例の露光前電位VDの測定において、帯電前電位VD’が0Vであることが重要だと分かる。そのため、露光前電位VDの測定を帯電前電位VD’が、所定の値である0Vとなるタイミングで実行することにより、高い精度で露光前電位VDを測定できる。
【0057】
図6は、本実施例の画像形成終了後電位VDtの時間推移を示す説明図である。ここで、画像形成終了後電位VDtとは、画像形成終了後の感光ドラム1表面の電位である。感光ドラム1は暗光下にあっても経過時間tに伴ってその電位が低下する(暗減衰)。そのため、
図6に示す通り、画像形成終了後の時間の経過に伴い、画像形成終了後電位VDtは低下していく。本実施例では、経過時間t=Tとなったときに、VDt=VD’=0Vとなる。Tは、後述するように表面電位の絶対値が所定の閾値まで低下するための所要時間であり、制御部40による判定のための閾値となる。
【0058】
したがって、t≧Tである、すなわち、画像形成終了後からの経過時間tが所要時間以上であることを露光前電位VDの測定実行が可能か否かを判断するための条件とする。
ここで、経過時間tは制御部40におけるタイマー50により計測されている。また、閾値Tは
図6におけるVDt0と感光ドラム1の使用状況や感光ドラム1の種類、周辺環境により決定される値である。そのため、制御部40は、環境センサ49、RAM43、メモリ51の情報を参照して閾値Tを決定できる。
【0059】
なお、VDt0は画像形成終了直後の感光ドラム1表面の電位であり、画像形成終了時の動作により決定される。VDt0は閾値Tを決定するためのパラメータであるため、ある程度予測可能な状態であることが望ましい。そこで本実施例では、画像形成終了時の帯電ローラ4に電圧を印加することで感光ドラム1を再帯電させ、感光ドラム1表面の電位を露光前電位VDとしてから画像形成を終了している。なお、画像形成終了時の動作はこれに限定されるものではない。例えば、画像形成終了時にスキャナ6によりレーザ光を照射してから画像形成を終了させることにより感光ドラム1表面の電位を低下させ、閾値Tの値を小さくすることもできる。
【0060】
メモリ51には表1、表2に示すテーブルが格納されている。表1は、感光ドラム1の累積稼働時間と累積帯電時間から感光ドラム1の使用状況を決定する際に用いられる。ここで、表1における感光ドラム1の累積駆動量とは、感光ドラム1が寿命を迎えるまでの総駆動量に対する現在までの駆動量の比率である。また、累積帯電時間とは、感光ドラム1が寿命を迎えるまでの総駆動時間に対する現在までの帯電時間の比率である。
【表1】
【0061】
また、表2は、感光ドラム1の使用状況と環境センサ49の情報から閾値Tを決定する際に用いられる。ここで、表2における周辺環境温度は環境センサ49により検知された使用環境における温度情報である。また、感光ドラム1の使用状況は表1により得られた値である。なお使用環境情報として、温度情報に代えて、または温度情報とともに、湿度など他の情報を用いてもよい。
【表2】
【0062】
上記の説明から、制御部40により経過時間tと閾値Tを比較し、t≧Tとなる状態で制御を実施することにより、露光前電位VD、露光後電位VLを精度よく測定できる。
これに鑑み、制御部40は、所定の実行タイミングで表面電位測定制御を行う。本実施例の所定の実行タイミングは、画像形成装置本体Mの電源が投入されたとき、画像形成装置100がスリープから復帰したとき、および、所定の回数(例えば1000枚)だけ画像形成がなされるタイミングにおいて、t≧Tであるか否かを判断する。また、感光ドラム1が新品かどうかを判断し、新品であると判断された場合に表面電位測定制御を行っても良い。そして、t≧Tであった場合に、表面電位測定制御を実行する。なお、表1や表2のようなテープルではなく、数式のような形式でメモリ51に保存されていてもよい。
【0063】
<表面電位測定制御のフローチャート>
次に、
図7のフローチャートを用いて、本実施例における表面電位測定制御の動作を説明する。本フローは、上述した表面電位測定制御の条件の場合において実行される。プリントジョブがスタートされると、制御部40はRAM43から感光ドラム1の累積駆動量および累積帯電時間の情報を取得し、また、メモリ51に格納されている表1を参照することで感光ドラム1の使用状況を読み取る(ステップS101)。
【0064】
次に、制御部40はS101で読み取られた感光ドラム1の使用状況および環境センサ49の情報を取得し、メモリ51に格納されている表2を参照することで閾値Tを読み取る(ステップS102)。
次に、制御部40はタイマー50から画像形成終了後からの経過時間tを読み取る(ステップS103)。
そして制御部40は、S102で読み取った閾値TとS103で読み取った経過時間tとを比較し、t≧Tであるか否かを判断する(ステップS104)。
【0065】
t≧Tでないと判断された場合(S104=No)、表面電位測定制御を実行することなく、制御部40は画像形成部45を制御して画像形成動作を実行する(ステップS109)。
一方、t≧Tであると判断された場合(S104=Yes)、制御部40は、次の画像形成動作を実行する前に表面電位に関する情報の取得動作を実行するために、感光ドラム1の駆動および帯電ローラ4への電圧印加をONにする(ステップS105)。
そして制御部40は、感光ドラム1を1回転させて、帯電電流検知回路4bにより取得した帯電ローラ4に流れる帯電電流IDの電流値の平均値から、露光前電位VDの値を算出する。(ステップS106)
【0066】
続いて制御部40は、感光ドラム1表面へスキャナ6からレーザ光の照射をONにする(ステップS107)。
そして制御部40は、レーザ光の照射から感光ドラム1を1回転させて、帯電電流検知回路4bにより帯電ローラ4に流れる帯電電流ILの電流値の平均値から露光後電位VLの値を算出する(ステップS108)。
表面電位測定制御を終了し、その後、画像形成動作を実行し(ステップS109)、画像形成動作を終了させるために帯電電圧をOFFする(ステップS110)。
【0067】
なお、表面電位制御における帯電電圧印加回路4aから帯電ローラ4へ印加される電圧値、および、スキャナ6から照射されるレーザ光の光量の値は、通常の画像形成中に使用する値と同じとする。ここでは、帯電ローラ4への印加電圧を-1000V、スキャナ6から照射するレーザ光の光量を3.0mJ/m2とした。
【0068】
また、
図7のフローチャートの動作は、t≧Tの条件が整えば毎回実行してもよいし、
所定の実行タイミングで行ってもよい。画像形成装置本体Mの電源が投入されたときや、画像形成装置100がスリープから復帰したとき、および、所定の回数(例えば1000枚)画像形成がなされた場合に実行してもよい。感光ドラム1が新品かどうかを判断し、新品であると判断された場合に実行してもよい。
なお、後述する実施例1と比較例における比較検討の温度環境条件は、温度30℃とした。
【0069】
<比較例>
本実施例の表面電位測定制御の効果を示すために、比較例による表面電位測定制御を行ったので以下に説明する。本実験は、本実施例と比較例それぞれの表面電位測定制御方法により、感光ドラム1表面の露光前電位VDと露光後電位VLを測定し、表面電位計を用いて得られた測定結果との測定誤差を求めたものである。なお、本実験は使用状況が異なる複数の感光ドラム1に対して行っている。
【0070】
まず、
図8のフローチャートを用いて比較例における表面電位測定制御の動作を説明する。比較例では、本実施例とは異なり、画像形成終了後に経過時間tを制御部40におけるタイマー50により計測することなく、その後、露光前電位VDの測定を実行している。実行条件としては、t=20分で固定とした。
【0071】
プリントジョブがスタートされると、感光ドラム1の駆動をONして帯電ローラ4への電圧印加をONし(ステップS201)、画像形成動作を開始する(ステップS202)。
画像形成動作が終了すると、帯電ローラ4ヘの印加電圧をOFFして感光ドラム1の駆動をOFFする(ステップS203)。
そして、経過時間tが経過するまで画像形成装置100を画像形成終了時点の状態で放置し、経過時間tが経過した後、感光ドラム1の駆動をONし帯電電圧をONする(ステップS204)。
【0072】
感光ドラム1を1回転させて、帯電電流検知回路4bにより帯電ローラ4に流れる電流値IDの平均値から露光前電位VDの値を算出する(ステップS205)。
【0073】
その後、感光ドラム1の駆動をOFF、帯電ローラ4への電圧印加をOFFにし(ステップS206)、制御を終了する。
【0074】
表3、表4に本実験の結果をまとめた。表3は各例における実験に用いた感光ドラム1の使用状況を一覧にしたものである。表に示すように、使用状況は10~90%の間でばらついている。なお、帯電電圧は、感光ドラム1の使用状況によらず露光前電位VDが-490Vで一定となるように調整した。
【表3】
【0075】
表4は実験により得られた、露光前電位VDの測定における表面電位計との測定誤差を
示している。上記の説明にあった通り、帯電前電位VD’は式(1)で示した関係にあるため、帯電前電位VD’との0Vからの誤差が、表面電位計との測定誤差になる。
【表4】
【0076】
実施例においては、制御部40は、RAM43、環境センサ49、メモリ51の情報に基づき、画像形成終了後からの経過時間tが帯電前電位VD’=0Vとなる閾値Tをそれぞれ超えたと判断した場合において表面電位測定制御を行っている。したがって、VD’=0Vで表面電位測定を実行できているために、測定誤差は生じていない。
【0077】
一方、比較例においては、経過時間tを測定することなくt=20分で固定しているため、感光ドラム1の使用状況が進むにつれて測定誤差が大きくなる結果となった。感光ドラム1の使用が進むにしたがって、感光ドラム1の表面電位の単位時間当たりの減衰量(暗減衰という)が小さくなるため、0V(ここでの表面電位の所定の閾値)に到達するまでの閾値Tを大きく設定する必要がある。それによって、特に感光ドラム1の使用が進んだEの条件で最も誤差が大きくなってしまった。
【0078】
本実施例では、制御部40がRAM43、環境センサ49、メモリ51の情報に基づき、画像形成終了後からの経過時間tが帯電前電位VD’=0Vとなる閾値Tを超えたと判断した場合に表面電位測定制御を行っている。そのため、高い精度で電位測定ができる。その結果、長期にわたる使用において、感光ドラム1の表面電位を高い精度で予測することが可能な画像形成装置を提供できる。したがって、制御部40は精度の高い表面電位の予測値に基づいて帯電ローラ4に印加する電圧を変化させることが可能になり、例えば露光後電位VLや露光前電位VDなどの値を所望の値に補正できるようになる。その結果、現像コントラストとなる電位差Vcontや現像バックコントラストとなる電位差Vbackを適正に制御できるので、トナーのカブリ等の不具合の発生を抑制できる。
【0079】
なお、本実施例において、画像形成動作実行後、表面電位測定制御を実行する前に露光を用いて予め表面電位の絶対値をVDより小さくしてもよい。また、その際の露光量は画像形成動作時と同じでもよいし、小さくても大きくてもよい。感光ドラム1の表面に露光を行うタイミングは、画像形成動作が終了した直後に行われることが特に望ましい。つまり、t=0の時に露光を実行することで、その後のTまでの経過時間を短縮することが出来るため、精度良く表面電位測定制御を実行するタイミングが増えることとなる。なお、上記露光は、感光ドラム1の1周以上行われることが望ましい。
【0080】
また、上述のように露光を用いて予め表面電位の絶対値をVDより小さくしてもよいが、感光ドラム1の回転方向における転写後帯電前の感光ドラム1の表面を除電する除電ユニットを設けて、露光の代わりに除電してもよい。この時、除電装置はLEDなどの発光装置を用いてもよい。
【0081】
また、閾値Tを画像形成動作が終了してから、画像形成動作が終了したときに形成された表面電位の絶対値が所定の値まで低下するまで、の所要時間よりも長くなるように閾値Tを設定してもよい。すなわち、感光ドラム1の表面電位の絶対値が所定の値まで低下す
るために十分な所要時間を少なくとも経過していればよい。
【0082】
また、本実施例においては、所要時間と閾値Tを比較したが、直接、感光ドラム1の表面電位に係わる情報を取得して、その情報に基づいて取得動作の実施可否を判断してもよい。具体的には、帯電ローラ4に電圧を印加した際に感光ドラム1から帯電ローラ4に流れる電流や、転写ローラ11に電圧を印加した際に感光ドラム1から転写ローラ11に流れる電流の電流値と予め設定された閾値を比較して取得動作の実行可否を判断してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1:感光ドラム、4:帯電ローラ、4b:帯電電流検知回路、6:スキャナ、10:現像装置、40:制御部