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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電流検出回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G01R19/00 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020164849
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056872
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 啓
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200803(JP,A)
【文献】特開2004-173353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流出力型の差動アンプと、
前記差動アンプの第1入力端と第1電流センス端子との間に接続されるように構成された第1入力抵抗と、
前記差動アンプの第2入力端と第2電流センス端子との間に接続されるように構成された第2入力抵抗と、
前記差動アンプの出力端に接続されるように構成された出力抵抗と、
前記差動アンプの前記第1入力端と前記出力端との間に第1帰還電流を流すように構成された第1帰還電流経路と、
前記第2電流センス端子と前記差動アンプの前記出力端との間に第2帰還電流を流すように構成された第2帰還電流経路と、
を有する、電流検出回路。
【請求項2】
前記第1帰還電流と前記第2帰還電流は同値である、請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項3】
前記第1帰還電流と前記第2帰還電流にオフセットが付与されている、請求項1に記載の電流検出回路。
【請求項4】
電流出力型の差動アンプと、
前記差動アンプの第1入力端と第1電流センス端子との間に接続されるように構成された第1入力抵抗と、
前記差動アンプの第2入力端と第2電流センス端子との間に接続されるように構成された第2入力抵抗と、
電圧信号を電流信号に変換するV-I変換器と、
前記V-I変換器のゲインを決定するように構成された帰還抵抗と、
前記第1電流センス端子と前記V-I変換器の第1出力端との間に第1基準電流を流すように構成された第1基準電流経路と、
前記第2電流センス端子と前記V-I変換器の第2出力端との間に第2基準電流を流すように構成された第2基準電流経路と、
を有する、電流検出回路。
【請求項5】
前記第1電流センス端子と、
前記第2電流センス端子と、
前記第1電流センス端子及び前記第2電流センス端子それぞれに接続された静電保護ダイオードと、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電流検出回路と、
を有する、半導体装置。
【請求項6】
出力素子と、
前記電流検出回路から出力される電流検出信号が所定の目標値と一致するようにボトム検出オン時間固定方式で前記出力素子を駆動する出力帰還制御部と、
をさらに有する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記出力帰還制御部は、
スロープ信号を生成するスロープ信号生成部と、
前記電流検出回路から出力される電流検出信号と所定の基準信号との誤差に応じた誤差信号を生成するエラーアンプと、
前記スロープ信号と前記誤差信号を比較してセット信号を生成するコンパレータと、
前記セット信号のパルス生成タイミングから所定のオン時間が経過した時点でリセット信号にパルスを生成するオン時間設定部と、
前記セット信号及び前記リセット信号に応じて前記出力素子の制御信号を生成するコントローラと、
前記制御信号に基づいて前記出力素子の駆動信号を生成するドライバと、
を含む、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記スロープ信号生成部は、前記第1電流センス端子及び前記第2電流センス端子から電流を引き込むことなく両端子間に現れるセンス電圧を検出するように構成されたgmアンプを含む、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記オン時間設定部は、前記第1電流センス端子及び前記第2電流センス端子から電流を引き込むことなく前記第2電流センス端子に現れる端子電圧を検出するように構成されたソースフォロワを含む、請求項7又は8に記載の半導体装置。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記出力素子に直列接続されたインダクタ、センス抵抗及び負荷と、
前記第1電流センス端子と前記センス抵抗との間に接続された第1電流制限抵抗と、
前記第2電流センス端子と前記センス抵抗との間に接続された第2電流制限抵抗と、
を有する、モジュール。
【請求項11】
前記負荷は、発光ダイオード素子を含む、請求項10に記載のモジュール。
【請求項12】
前記発光ダイオード素子の直列段数を任意に切り替えるように構成されたマトリクスマネージャをさらに有する、請求項11に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、電流検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センス抵抗の電圧降下に基づいて監視対象電流を示す電流検出信号を生成する電流検出回路は、種々のアプリケーション(LED[light emitting diode]ドライバIC及びスイッチング電源ICなど)で利用されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/022633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電流検出回路は、その検出精度について改善の余地があった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願発明者らにより見出された上記課題に鑑み、検出精度の高い電流検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本明細書中に開示されている電流検出回路は、電流出力型の差動アンプと、前記差動アンプの第1入力端と第1電流センス端子との間に接続されるように構成された第1入力抵抗と、前記差動アンプの第2入力端と第2電流センス端子との間に接続されるように構成された第2入力抵抗と、前記差動アンプの出力端に接続されるように構成された出力抵抗と、前記差動アンプの前記第1入力端と前記出力端との間に第1帰還電流を流すように構成された第1帰還電流経路と、前記第2電流センス端子と前記差動アンプの前記出力端との間に第2帰還電流を流すように構成された第2帰還電流経路と、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成る電流検出回路において、前記第1帰還電流と前記第2帰還電流は同値である構成(第2の構成)にしてもよい。
【0009】
また、上記第1の構成から成る電流検出回路は、前記第1帰還電流と前記第2帰還電流にオフセットが付与されている構成(第3の構成)にしてもよい。
【0010】
また、例えば、本明細書中に開示されている電流検出回路は、電流出力型の差動アンプと、前記差動アンプの第1入力端と第1電流センス端子との間に接続されるように構成された第1入力抵抗と、前記差動アンプの第2入力端と第2電流センス端子との間に接続されるように構成された第2入力抵抗と、電圧信号を電流信号に変換するV-I変換器と、前記V-I変換器のゲインを決定するように構成された帰還抵抗と、前記第1電流センス端子と前記V-I変換器の第1出力端との間に第1基準電流を流すように構成された第1基準電流経路と、前記第2電流センス端子と前記V-I変換器の第2出力端との間に第2基準電流を流すように構成された第2基準電流経路と、を有する構成(第4の構成)にしてもよい。
【0011】
また、本明細書中に開示されている半導体装置は、前記第1電流センス端子と、前記第2電流センス端子と、前記第1電流センス端子及び前記第2電流センス端子それぞれに接続された静電保護ダイオードと、上記第1~第3いずれかの構成から成る電流検出回路とを有する構成(第5の構成)とされている。
【0012】
なお、上記第5の構成から成る半導体装置は、出力素子と、前記電流検出回路から出力される電流検出信号が所定の目標値と一致するようにボトム検出オン時間固定方式で前記出力素子を駆動する出力帰還制御部とをさらに有する構成(第6の構成)にしてもよい。
【0013】
また、上記第6の構成から成る半導体装置において、前記出力帰還制御部は、スロープ信号を生成するスロープ信号生成部と、前記電流検出回路から出力される電流検出信号と所定の基準信号との誤差に応じた誤差信号を生成するエラーアンプと、前記スロープ信号と前記誤差信号を比較してセット信号を生成するコンパレータと、前記セット信号のパルス生成タイミングから所定のオン時間が経過した時点でリセット信号にパルスを生成するオン時間設定部と、前記セット信号及び前記リセット信号に応じて前記出力素子の制御信号を生成するコントローラと、前記制御信号に基づいて前記出力素子の駆動信号を生成するドライバと、を含む構成(第7の構成)にしてもよい。
【0014】
また、上記第7の構成から成る半導体装置において、前記スロープ信号生成部は、前記第1電流センス端子及び前記第2電流センス端子から電流を引き込むことなく両端子間に現れるセンス電圧を検出するように構成されたgmアンプを含む構成(第8の構成)にしてもよい。
【0015】
また、上記第7又は第8の構成から成る半導体装置において、前記オン時間設定部は、前記第1電流センス端子及び前記第2電流センス端子から電流を引き込むことなく前記第2電流センス端子に現れる端子電圧を検出するように構成されたソースフォロワを含む構成(第9の構成)にしてもよい。
【0016】
また、本明細書中に開示されているモジュールは、上記第6~第9いずれかの構成から成る半導体装置と、前記出力素子に直列接続されたインダクタ、センス抵抗及び負荷と、前記第1電流センス端子と前記センス抵抗との間に接続された第1電流制限抵抗と、前記第2電流センス端子と前記センス抵抗との間に接続された第2電流制限抵抗と、を有する構成(第10の構成)とされている。
【0017】
なお、上記第10の構成から成るモジュールにおいて、前記負荷は、発光ダイオード素子を含む構成(第11の構成)にしてもよい。
【0018】
また、上記第11の構成から成るモジュールは、前記発光ダイオード素子の直列段数を任意に切り替えるように構成されたマトリクスマネージャを更に有する構成(第12の構成)にしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本明細書中に開示されている発明によれば、検出精度の高い電流検出回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】LEDランプモジュールの第1実施形態を示す図
図2】ボトム検出オン時間固定方式の出力帰還制御を示す図
図3】LEDランプモジュールの第2実施形態を示す図
図4】LEDドライバICに求められる応答性能を示す図
図5】負荷オープン/ショートカット試験時に流れるサージ電流の経路を示す図
図6】負荷オープン/ショートカット試験時に流れるサージ電流の波形を示す図
図7】LEDランプモジュールの第3実施形態を示す図
図8】電流センスアンプにおけるゲイン誤差の発生を示す図
図9】LEDランプモジュールの第4実施形態を示す図
図10】電流検出信号の温度特性を示す図
図11】LEDランプモジュールの第5実施形態を示す図
図12】電流センスアンプにおけるゲイン誤差の解消を示す図
図13】LEDランプモジュールの第6実施形態を示す図
図14】第6実施形態の電流検出回路を等価的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<LEDランプモジュール(第1実施形態)>
図1は、LEDランプモジュールの第1実施形態(基本的構成)を示す図である。第1実施形態のLEDランプモジュールXは、LEDドライバIC1と、LEDストリング2(=直列接続された複数の発光ダイオード素子)と、各種ディスクリート部品(キャパシタCb、Cc及びCo、インダクタL1、抵抗Rt並びにセンス抵抗Rs)を有する。
【0022】
LEDドライバIC1は、パワー系の入力電圧Viを降圧してLEDストリング2への電力供給を行う半導体装置である。なお、LEDドライバIC1は、IC外部との電気的な接続を確立するための手段として、複数の外部端子(PINピン、SWピン、BOOTピン、PGNDピン、SNSPピン、SNSNピン、TONピン、及び、COMPピンなど)を有する。
【0023】
PINピンは、パワー系電源端子である。SWピンは、スイッチ出力端子である。BOOTピンは、上側ゲート駆動用のブートストラップキャパシタ接続端子である。PGNDピンは、パワー系接地端子である。SNSPピンは、第1電流センス端子(+)である。SNSNピンは、第2電流センス端子(-)である。TONピンは、オン時間設定用の抵抗接続端子である。COMPピンは、位相補償用のキャパシタ接続端子である。
【0024】
PINピンは、パワー系の電源端(入力電圧Viの印加端)に接続されている。SWピンは、インダクタL1の第1端に接続されている。インダクタL1の第2端は、センス抵抗Rsの第1端に接続されている。センス抵抗Rsの第2端は、LEDストリング2のアノードに接続されている。LEDストリング2のカソードは、接地端に接続されている。BOOTピンとSWピンとの間には、キャパシタCb(ブートストラップ用キャパシタ)が接続されている。LEDストリング2のアノードと接地端との間には、キャパシタCo(出力キャパシタ)が接続されている。センス抵抗Rsの第1端(高電位端)は、SNSPピンに接続されている。センス抵抗Rsの第2端(低電位端)は、SNSNピンに接続されている。PGNDピンは、パワー系の接地端に接続されている。TONピンと接地端との間には、抵抗Rt(オン時間設定抵抗)が接続されている。COMPピンと接地端との間には、キャパシタCc(位相補償用キャパシタ)が接続されている。
【0025】
<LEDドライバIC>
引き続き、図1を参照しながら、LEDドライバIC1の回路構成について説明する。本構成例のLEDドライバIC1は、LEDストリング2を駆動するための手段として、上側スイッチ11Hと、下側スイッチ11Lと、上側ドライバ12Hと、下側ドライバ12Lと、コントローラ13と、オン時間設定部14と、スロープ信号生成部15と、電流センスアンプ16と、エラーアンプ17と、コンパレータ18と、DAC19と、ブートストラップ用のダイオードD1とを集積化して成る。もちろん、LEDドライバIC1には、上記以外の構成要素(温度検出回路や各種保護回路など)を集積化してもよい。
【0026】
上側スイッチ11Hは、PINピンとSWピンとの間に接続されており、上側ゲート信号GHに応じてオン/オフされる。なお、上側スイッチ11Hとしては、NMOSFET[N-channel type metal oxide semiconductor field effect transistor]等を好適に用いることができる。その場合、上側スイッチ11Hは、GH=H(=BOOT)であるときにオンして、GH=L(=SW)であるときにオフする。なお、上側スイッチ11Hとして、NMOSFETではなくPMOSFET[P-channel type MOSFET]を用いることも可能である。その場合には、ブートストラップ用のダイオードD1、キャパシタCb、及び、BOOTピンが不要となる。
【0027】
下側スイッチ11Lは、SWピンとPGNDピンとの間に接続されており、下側ゲート信号GLに応じてオン/オフされる。なお、下側スイッチ11Lとしては、NMOSFET等を好適に用いることができる。その場合、下側スイッチ11Lは、GL=H(=5VEXT)であるときにオンして、GL=L(=PGND)であるときにオフする。
【0028】
このように接続された上側スイッチ11Hと下側スイッチ11Lは、SWピンから矩形波状のスイッチ電圧Vswを出力するハーフブリッジ出力段を形成している。つまり、上側スイッチ11Hが出力素子に相当し、下側スイッチ11Lが同期整流素子に相当する。なお、先出のインダクタL1、センス抵抗Rs及びLEDストリング2は、上側スイッチ11Hに直列接続された形となる。また、本図では、同期整流方式のハーフブリッジ出力段を挙げたが、ダイオード整流方式を採用する場合には、下側スイッチ11Lとしてダイオードを用いればよい。
【0029】
上側ドライバ12Hは、コントローラ13から入力される上側制御信号SHに基づいて上側ゲート信号GHを生成する。なお、上側ゲート信号GHのハイレベルは、BOOTピンに現れるブースト電圧Vbst(≒Vsw+5VEXT)となる。一方、上側ゲート信号GHのローレベルは、SWピンに現れるスイッチ電圧Vswとなる。
【0030】
下側ドライバ12Lは、コントローラ13から入力される下側制御信号SLに基づいて下側ゲート信号GLを生成する。なお、下側ゲート信号GLのハイレベルは、定電圧5VEXT(内部電源電圧または別途の外部入力電圧)となる。一方、下側ゲート信号GLのローレベルは、PGNDピンの端子電圧(パワー系接地電圧)となる。
【0031】
コントローラ13は、例えば、セット信号SET及びリセット信号RSTの入力を受け付けるRSフリップフロップを含み、上側スイッチ11H及び下側スイッチ11Lを相補的にオン/オフするように上側制御信号SH及び下側制御信号SLを生成する。
【0032】
より具体的に述べると、コントローラ13は、セット信号SETの立上りタイミングで上側スイッチ11Hをオンして下側スイッチ11Lをオフする一方、リセット信号RSTの立上りタイミングで上側スイッチ11Hをオフして下側スイッチ11Lをオンするように、上側制御信号SH及び下側制御信号SLを生成する。
【0033】
ただし、本明細書中における「相補的」という文言は、上側スイッチ11H及び下側スイッチ11Lそれぞれのオン/オフ状態が完全に逆転している場合だけでなく、貫通電流を防止するための同時オフ期間(いわゆるデッドタイム)が設けられている場合も含むものとして、広義に理解されるべきである。
【0034】
オン時間設定部14は、セット信号SETの立上りタイミング(延いては上側スイッチ11Hのオンタイミング)から所定のオン時間Tonが経過した時点でリセット信号RSTをハイレベルに立ち上げる。なお、オン時間設定部14は、TONピンに接続された抵抗Rtの抵抗値に応じてオン時間Tonを任意に設定する機能を備えている。また、オン時間設定部14は、PINピン及びSNSNピンそれぞれの端子電圧に基づいてスイッチング周波数Fswの変動を抑えるようにオン時間Tonを可変する機能も備えている。
【0035】
スロープ信号生成部15は、SNSPピンとSNSNピンとの端子間電圧(=センス抵抗Rsの両端間に生じるセンス電圧Vsns)を検出し、インダクタ電流ILの情報(交流成分)を含んだスロープ信号Vslpを生成する。なお、スロープ信号Vslpは、インダクタ電流ILが大きいほど高くなり、インダクタ電流ILが小さいほど低くなる。
【0036】
電流センスアンプ16(=電流検出回路に相当)は、先のセンス電圧Vsnsを増幅して電流検出信号VISETを生成する。電流検出信号VISETは、センス抵抗Rsに流れる出力電流ILED(=平均インダクタ電流IL_ave)が大きいほど高くなり、出力電流ILEDが小さいほど低くなる。なお、電流検出信号VISETには、任意のオフセット電圧Vofs(数百mV)を付与してもよい。
【0037】
エラーアンプ17は、非反転入力端(+)に入力されるアナログ調光信号Vdcdim(=所定の基準信号に相当)と、反転入力端(-)に入力される電流検出信号VISETとの差分に応じた電流出力を行い、キャパシタCcを充放電することにより、誤差信号Vcを生成する。なお、誤差信号Vcは、VISET<Vdcdimであるときに上昇し、VISET>Vdcdimであるときに低下する。
【0038】
コンパレータ18は、反転入力端(-)に入力されるスロープ信号Vslpと、非反転入力端(+)に入力される誤差信号Vcとを比較することにより、セット信号SETを生成する。セット信号SETは、Vc<Vslpであるときにローレベルとなり、Vc>Vslpであるときにハイレベルとなる。従って、誤差信号Vcが低いほどセット信号SETの立上りタイミング(延いては上側スイッチ11Hのオンタイミング)が遅くなり、逆に、誤差信号Vcが高いほどセット信号SETの立上りタイミングが早くなる。
【0039】
DAC19は、LEDドライバIC1に外部入力されるmビット(例えばm=10)のデジタル調光信号ISETをアナログ調光信号Vdcdimに変換する。
【0040】
なお、上記構成要素のうち、上側ドライバ12H及び下側ドライバ12L、コントローラ13、オン時間設定部14、スロープ信号生成部15、電流センスアンプ16、エラーアンプ17、コンパレータ18、並びに、DAC19は、ボトム検出オン時間固定方式の出力帰還制御部として機能し、スイッチ出力端子SWからLEDストリング2に供給される出力電流ILEDが所定の目標値と一致するように、上側スイッチ11H及び下側スイッチ11Lが相補的に駆動される。
【0041】
<出力帰還制御>
図2は、ボトム検出オン時間固定方式の出力帰還制御を示す図であり、上から順に、インダクタ電流ILとスイッチ電圧Vswが描写されている。
【0042】
上側スイッチ11Hがオフして下側スイッチ11Lがオンしている間、スイッチ電圧Vswは、ローレベル(=下側スイッチ11Lのドレイン・ソース間に生じる負電圧-VDSW)となる。このとき、PGNDピンから下側スイッチ11Lを介してSWピンに流れるインダクタ電流ILは、インダクタL1のエネルギー放出に伴って減少していく。
【0043】
そして、インダクタ電流ILが誤差信号Vcに応じたボトム値IL_btmまで減少すると、Vc>Vslpとなり、セット信号SETがハイレベルに立ち上がる。その結果、上側スイッチ11Hがオンして下側スイッチ11Lがオフする。このとき、スイッチ電圧Vswがハイレベル(≒Vi)となるので、PINピンから上側スイッチ11Hを介してSWピンに流れるインダクタ電流ILが増大していく。
【0044】
その後、所定のオン時間Tonが経過すると、リセット信号RSTがハイレベルに立ち上がり、上側スイッチ11Hがオフして下側スイッチ11Lがオンするので、インダクタ電流ILが再び増大から減少に転じる。その結果、インダクタ電流ILは、ピーク値IL_pkとボトム値IL_btmとの間で増大と減少を繰り返すリップル波形となる。
【0045】
ここで、インダクタ電流ILのボトム値IL_btmは、電流検出信号VISET(=平均インダクタ電流IL_aveに相当)と、アナログ調光信号Vdcdim(=平均インダクタ電流IL_aveの目標値に相当)との差分に応じて変動する。また、インダクタ電流ILのリップル振幅ΔIL(=IL_pk-IL_btm)は、オン時間Tonに応じて決定される。
【0046】
従って、上記一連の動作が繰り返されることにより、LEDドライバIC1では、平均インダクタ電流IL_ave(延いては出力電流ILED)が所定の目標値と一致するように、ボトム検出オン時間固定方式の出力帰還制御が行われる。
【0047】
なお、LEDドライバIC1の出力帰還制御方式については、必ずしも上記に限定されるものではなく、例えば、ボトム検出オン時間固定方式に代えて、ピーク検出オフ時間固定方式を採用してもよいし、或いは、ヒステリシスウィンドウ方式を採用してもよい。また、高速応答が求められないアプリケーションでは、PWM[pulse width modulation]制御方式などの線形制御方式を採用することもできる。
【0048】
<LEDランプモジュール(第2実施形態)>
図3は、LEDランプモジュールの第2実施形態を示す図である。第2実施形態のLEDランプモジュールXは、先出の第1実施形態(図1)を基本としつつ、マトリクスマネージャ3をさらに有する。また、本図では、LEDドライバIC1のPINピンと接地端との間に接続されたキャパシタCi(=入力キャパシタ)が明示されている。
【0049】
マトリクスマネージャ3は、LEDストリング2を形成する複数の発光ダイオード素子それぞれに並列接続された複数のスイッチ素子を含み、各スイッチ素子をオン/オフすることにより発光ダイオード素子の直列段数(点灯数)を任意に切り替えることができる。
【0050】
図4は、第2実施形態のLEDランプモジュールXにおいて、LEDドライバIC1に求められる応答性能を示す図であり、上から順に、LEDストリング2の両端間電圧VLED(=点灯状態の発光ダイオード素子における順方向降下電圧の総和)と、出力電流ILEDが描写されている。
【0051】
第2実施形態のLEDランプモジュールXでは、マトリクスマネージャ3が導入されているので、LEDストリング2の点灯中に発光ダイオード素子の点灯数(延いてはLEDストリング2の両端間電圧VLED)が急峻に変動し得る。
【0052】
そのため、発光ダイオード素子それぞれを一定の輝度で点灯するためには、LEDドライバIC1の応答速度を高めて、発光ダイオード素子の点灯数が変動しても一定の出力電流ILEDを安定して供給し続ける必要がある。
【0053】
そこで、LEDドライバIC1の出力帰還制御方式としては、高速応答性に優れた非線形制御方式(例えばボトム検出オン時間固定方式)を採用することが望ましい。なお、非線形制御方式を採用した場合には、平均インダクタ電流IL_aveを検出する必要があるので、インダクタL1の後段にセンス抵抗Rsを挿入し、その両端間に生じるセンス電圧VsnsをLEDドライバIC1で検出する構成が一般的である。
【0054】
<負荷オープン/ショートカット試験>
図5及び図6は、それぞれ、負荷オープン/ショートカット試験時に流れるサージ電流ID1及びID2の経路及び波形を示す図である。
【0055】
まず、負荷オープン試験について検討する。LEDストリング2の点灯中に発光ダイオード素子のオープンが生じると、LEDストリング2に向かう電流経路が遮断される。そのため、インダクタL1の逆起電力によりキャパシタCoがチャージされ、出力オーバーシュートが生じる。その結果、LEDドライバIC1に内蔵された静電保護ダイオードDesd(特にSNSNピンと電源端との間に接続された上側の静電保護ダイオード)を介して電源端にサージ電流ID1が還流する。
【0056】
なお、LEDドライバIC1で非線形制御方式(例えばボトム検出オン時間固定方式)が採用されている場合には、出力キャパシタCoの容量値(数μF)に対してインダクタL1のインダクタンス値が比較的大きい値(数十~数百μH)に設定される。そのため、インダクタL1に蓄えられているエネルギが大きく、数Aのサージ電流ID1が比較的長時間に亘って還流する。その結果、数十mAの電流能力しか持たない上側の静電保護ダイオードDesdが破壊され得る。
【0057】
次に、負荷ショートカット試験について検討する。例えば、LEDランプモジュールXが車載用である場合には、LEDドライバIC1とLEDストリング2が別々の基板に実装される。なお、各基板間は1m~1.5m程度のワイヤーハーネスで接続される。そのため、ワイヤーハーネスは、無視することのできない寄生インダクタンス成分Lx及びLy(1μH程度)を持つ。
【0058】
従って、発光ダイオード素子のショートカット(マトリクスマネージャ3による点灯数の切替制御を含む)が生じると、キャパシタCoから寄生インダクタンス成分Lx及びLyにエネルギがチャージされ、さらには、LEDドライバIC1に内蔵された静電保護ダイオードDesd(特にSNSNピンと接地端との間に接続された下側の静電保護ダイオード)を介して接地端から数十Aのサージ電流ID2が瞬時的に流れる。その結果、数十mAの電流能力しか持たない下側の静電保護ダイオードDesdが破壊され得る。
【0059】
<LEDランプモジュール(第3実施形態)>
図7は、LEDランプモジュールの第3実施形態を示す図である。第3実施形態のLEDランプモジュールXでは、先出の静電保護ダイオードDesd(図5を参照)をサージ電流から保護するための手段として、LEDドライバIC1にサージ保護ダイオードDH及びDLが外付けされている。
【0060】
なお、サージ保護ダイオードDHは、LEDストリング2のアノードと入力電圧Viの印加端との間に接続されている。また、サージ保護ダイオードDLは、LEDストリング2のアノードと接地端との間に接続されている。
【0061】
このような回路構成によれば、発光ダイオード素子のオープン/ショートカットが発生しても、LEDストリング2のアノード電位を所定の範囲にクランプすることができるので、LEDドライバIC1の静電保護ダイオードDesdを保護することが可能となる。
【0062】
ただし、比較的高価なサージ保護ダイオードDH及びDLが1チャンネル毎に2つずつ必要となるので、LEDランプモジュールXのコストアップ(部品調達コスト及び部品輸送コストを含む)が問題となり得る。また、基板上の部品実装面積も増大してしまう。
【0063】
一方、サージ保護ダイオードDH及びDLを外付けするのではなく、より安価で小型の電流制限抵抗RpP及びRpN(1kΩ程度)をLEDドライバIC1のSNSPピン及びSNSNピンそれぞれに外付けすることにより、静電保護ダイオードDesdに流れるサージ電流を抑制しつつ、静電保護ダイオードDesdを介してサージ電流を電源端及び接地端に逃がすことも考えられる。
【0064】
なお、電流制限抵抗RpPは、SNSPピンとセンス抵抗Rsの第1端(高電位端)との間に接続するとよい。また、電流制限抵抗RpNは、SNSNピンとセンス抵抗Rsの第2端(低電位端)との間に接続するとよい。
【0065】
しかしながら、単純に電流制限抵抗RpP及びRpNを外付けするだけでは、LEDドライバIC1における出力電流ILEDの検出精度が低下してしまう。以下では、この点について詳細に考察する。
【0066】
図8は、電流制限抵抗RpP及びRpNの外付けに起因して電流センスアンプ16におけるゲイン誤差が発生する様子を示す図である。
【0067】
本図で示したように、電流センスアンプ16は、電流出力型の差動アンプAMP1と、入力抵抗R1P及びR1Nと、出力抵抗R2を含む。差動アンプAMP1の非反転入力端(+)は、入力抵抗R1P(例えば10kΩ)の第1端に接続されている。入力抵抗R1Pの第2端は、SNSPピンに接続されている。差動アンプAMP1の反転入力端(-)は、入力抵抗R1N(例えば10kΩ)の第1端に接続されている。入力抵抗R1Nの第2端は、SNSNピンに接続されている。差動アンプAMP1の出力端は、出力抵抗R2(例えば120kΩ)の第1端に接続されるとともに、差動アンプAMP1の非反転入力端(+)にも接続されている。出力抵抗R2の第2端は、接地端に接続されている。
【0068】
また、スロープ信号生成部15は、電流出力型の差動アンプAMP2と、入力抵抗R3P及びR3Nと、出力抵抗R4とを含む。差動アンプAMP2の非反転入力端(+)は、入力抵抗R3P(例えば10kΩ)の第1端に接続されている。入力抵抗R3Pの第2端は、SNSPピンに接続されている。差動アンプAMP2の反転入力端(-)は、入力抵抗R3N(例えば10kΩ)の第1端に接続されている。入力抵抗R3Nの第2端は、SNSNピンに接続されている。差動アンプAMP2の出力端は、出力抵抗R4(例えば10kΩ)の第1端に接続されるとともに、差動アンプAMP2の非反転入力端(+)にも接続されている。出力抵抗R4の第2端は、接地端に接続されている。
【0069】
なお、差動アンプAMP1の非反転入力端(+)と出力端との間には、帰還電流I1が流れる。この帰還電流I1は、高精度の電流帰還制御を行うために必須である。また、差動アンプAMP2の非反転入力端(+)と出力端との間には、帰還電流I2が流れる。
【0070】
このように、平均インダクタ電流IL_aveの非線形制御を行うための一般的な電流センスアンプ16は、センス電圧Vsnsをレールトゥレール(電源電位と接地電位との間)で増幅することのできるフローティング入力段を備えた差動アンプAMP1を含む。ここで「フローティング」とは、接地電位から浮いている(電位的に切り離されている)という意味である。
【0071】
仮に、SNSPピン及びSNSNピンにそれぞれ電流制限抵抗RpP及びRpNが外付けされていない場合には、電流センスアンプ16のゲインGが入力抵抗R1及び出力抵抗R2の比に応じて一義的に決まる(G=R2/R1、例えばG=12)。
【0072】
一方、電流制限抵抗RpP及びRpNが外付けされている場合には、SNSPピンに流れる端子電流(I1+I2)により、差動アンプAMP1の差動入力電流差ΔIBIAS(=差動アンプAMP1の非反転入力端(+)及び反転入力端(-)それぞれに流れる入力電流の差)が変動する。
【0073】
その結果、電流センスアンプ16のゲインGが入力抵抗R1及び出力抵抗R2の比に応じて一義的に決まらなくなるので、電流検出信号VISET(=Vsns・R2・R3/(R1・R3+R3・Rp+Rp・R1))が本来の値(=Vsns・R2/R1)から大きくずれてしまう。特に、帰還電流I1及びI2がそれぞれ大きくなるほど、電流検出信号VISETの変動も大きくなる。
【0074】
また、LEDドライバIC1に内蔵された入力抵抗R1及び出力抵抗R2は、互いにペア性が取れているので、それぞれの温度特性をキャンセルするように働くが、外付けの電流制限抵抗RpP及びRpNは、入力抵抗R1及び出力抵抗R2と全く異なる温度係数を持っている上、それぞれに製造ばらつきもある。そのため、最終的な電流検出信号VISETの温度特性が大きくばらついてしまう。
【0075】
なお、入力抵抗R1と電流制限抵抗RpPとの合成抵抗値が常に一定値となるように、入力抵抗R1をトリミングすることも考えられるが、LEDドライバIC1のチップサイズが非常に大きくなってしまうので、あまり現実的な解決手段とは言えない。
【0076】
<LEDランプモジュール(第4実施形態)>
図9は、LEDランプモジュールの第4実施形態を示す図である。第4実施形態のLEDランプモジュールXでは、先出の構成要素(LEDドライバIC1、LEDストリング2、インダクタL1、キャパシタCo、センス抵抗Rs、並びに、電流制限抵抗RpP及びRpN)が2チャンネル分(本図では各構成要素の符号末尾にA及びBを付して明示)設けられており、MCU4が両チャンネルを統括的に制御する構成とされている。
【0077】
なお、LEDドライバIC1A及び1Bは、それぞれ、LEDストリング2A及び2Bへの電力供給を行うBuckコンバータのほか、内部ジャンクション温度Tjを検出する温度検出部、及び、MCU4とのSPI[serial peripheral interface]通信を行う通信部などを備えている。
【0078】
ここで、電流制限抵抗RpPA及びRpNA、並びに、電流制限抵抗RpPB及びRpNBの外付けにより問題となるのが、LEDドライバIC1A及び1Bそれぞれにおける電流検出精度の低下(特に温度ドリフト)である。
【0079】
その解消策としては、例えば、MCU4を用いてLEDドライバIC1A及び1Bそれぞれの内部ジャンクション温度Tjを監視し、その監視結果に基づいてセンス電圧VsnsA及びVsnsBそれぞれの検出結果を動的に常時補正する手法が考えられる。
【0080】
図10は、センス電圧Vsnsの検出結果(先出の電流検出信号VISETに相当)が持つ温度特性を示す図である。なお、太い実線VsnsAは、LEDドライバIC1Aにおけるセンス電圧VsnsAの検出結果を示している。また、太い実線VsnsBは、LEDドライバIC1Bにおけるセンス電圧VsnsBの検出結果を示している。一方、細い実線Vsns(@RpP=RpN=0Ω)は、電流制限抵抗RpP及びRpNがいずれも外付けされていない場合におけるセンス電圧Vsnsの検出結果を示している。また、太い破線Vsns(typ.)は、MCU4での補正基準となる温度特性を示している。
【0081】
本図で示したように、センス電圧VsnsA及びVsnsBそれぞれの検出結果は、互いに異なる温度特性を持つ。例えば、Tj=+25℃において、センス電圧VsnsA及びVsnsBそれぞれの検出結果は、外付け抵抗が無い場合の検出結果に対して、+a%及び+b%シフトしている(ただしa≠b)。
【0082】
そのため、仮に、+c%(ただしc≠a,b)の温度特性を補正基準とし、MCU4を用いてセンス電圧VsnsA及びVsnsBそれぞれの検出結果を動的に補正したとしても、それぞれの温度特性を十分にキャンセルすることが難しい。本図に即して述べると、全温度範囲(-40℃~+150℃)では、LEDドライバIC1A及び1B相互間で、最大±(d+e)%の温度ドリフトが残ってしまう。
【0083】
また、MCU4を用いてセンス電圧VsnsA及びVsnsBそれぞれの検出結果を動的に常時補正するためには、常にリード/ライトコマンドシーケンスを実行する必要があるので、MCU4の負荷も大きくなってしまう。
【0084】
<LEDランプモジュール(第5実施形態)>
図11は、LEDランプモジュールの第5実施形態を示す図である。第5実施形態のLEDランプモジュールXにおいて、LEDドライバIC1は、電流センスアンプ16を形成する差動アンプAMP1(図8を参照)の差動入力電流差ΔIBIASを低減するための機能部(ΔIBIASctl)を有しており、電流制限抵抗RpP及びRpNが外付けされていても、電流センスアンプ16のゲイン誤差を低減する工夫が凝らされている。
【0085】
図12は、電流センスアンプ16におけるゲイン誤差の解消を示す図である。本図で示すように、第5実施形態のLEDドライバIC1において、電流センスアンプ16は、差動アンプAMP1の非反転入力端(+)と出力端との間に帰還電流I1を流すように構成された第1帰還電流経路だけでなく、SNSNピンと差動アンプAMP1の出力端との間に帰還電流I1’を流すように構成された第2帰還電流経路を新たに有する。
【0086】
なお、帰還電流I1’は、帰還電流I1のコピー(ミラー電流)であり、それぞれの電流値は同値(最大20μA程度)としておけばよい。このように、差動アンプAMP1の基準側にも帰還電流I1と同値の帰還電流I1’を流すことにより、差動入力電流差ΔIBIASをゼロに近付けることができる。
【0087】
ただし、帰還電流I1と帰還電流I1’を厳密に同値とする必要はなく、例えば、両者の間に任意のオフセットが付与されていてもよい。
【0088】
また、スロープ信号生成部15は、先出の差動アンプAMP2に代えて、SNSPピン及びSNSNピンから電流を引き込むことなく両端子間に現れるセンス電圧Vsnsを検出するgmアンプAMP2gを含む。このように、さほど高い電流検出精度が求められないスロープ信号生成部15では、帰還電流制御を必要としないgmアンプAMP2gを用いることにより、先出の帰還電流I2をゼロにすることができる。
【0089】
このような構成とすることにより、SNSPピン及びSNSNピンにそれぞれ電流制限抵抗RpP及びRpNが外付けされていても、電流センスアンプ16のゲインGが入力抵抗R1及び出力抵抗R2の比に応じて一義的に決まるので、LEDドライバIC1における電流検出精度の低下(特に温度ドリフト)を解消することが可能となる。
【0090】
また、電流制限抵抗RpP及びRpNの外付けにより、LEDドライバIC1の静電保護ダイオードDesd(図5を参照)をサージ電流ID1及びID2から保護することができる。従って、1チャンネル毎に2つずつ必要とされていた外付けのサージ保護ダイオードDH及びDLが不要となる。その結果、LEDランプモジュールXのコストダウンを図るとともに、基板上の部品実装面積を縮小することが可能となる。
【0091】
なお、先出のオン時間設定部14(図1を参照)では、SNSNピンに現れる端子電圧(=VLED)の検出手段として、単純な抵抗分圧回路を用いることが多い。しかし、電流検出精度の向上を鑑みると、オン時間設定部14では、上記の抵抗分圧回路に代えて、SNSPピン及びSNSNピンから電流を引き込むことなくSNSNピンに現れる端子電圧を検出するソースフォロワを用いることが望ましい。
【0092】
<LEDランプモジュール(第6実施形態)>
図13は、LEDランプモジュールの第6実施形態を示す図である。第6実施形態のLEDランプモジュールXにおいて、LEDドライバIC1は、図1の構成要素15~19に代えて、バレイ電流制御部20と、電流センスアンプ21と、V-I変換器22と、DAC23を有する。また、LEDドライバIC1には、入力抵抗R5P及びR5N(例えばいずれも10kΩ)と、帰還抵抗R6P及びR6N(例えばいずれも140kΩ)が集積化されている。これらの構成要素20~23は、いずれも電流検出回路の構成要素として理解することができる。
【0093】
バレイ電流制御部20は、センス抵抗Rsの両端間に生じるセンス電圧Vsnsと、電流センスアンプ21で生成される電流検出信号CSに基づいて、インダクタ電流ILのボトム検出(バレイ(谷)検出)を行うことにより、先出のセット信号SETを生成する。
【0094】
電流センスアンプ21は、入力信号をレールトゥレールで増幅することのできるフローティング入力段を備えた電流出力型の差動アンプである。電流センスアンプ21の反転入力端(-)は、入力抵抗R5Pの第1端に接続されている。入力抵抗R5Pの第2端は、SNSPピンに接続されている。電流センスアンプ21の非反転入力端(+)は、入力抵抗R5Nの第1端に接続されている。入力抵抗R5Nの第2端は、SNSNピンに接続されている。電流センスアンプ21の出力端は、COMPピンを介して位相補償用のキャパシタCcに接続されている。
【0095】
V-I変換器22は、電圧信号(=電流調整電圧VIadj)を電流信号(=基準電流I11及びI11’)に変換する機能ブロックであり、オペアンプ22aと、NMOSFET22b及び22cと、を含む。
【0096】
オペアンプ22aは、非反転入力端(+)に入力される電流調整電圧VIadjと、反転入力端(-)に入力される帰還抵抗R6Pの端子電圧(=I11×R6P)が一致するように、NMOSFET22b及び22cそれぞれのゲートを制御する。従って、NMOSFET22bに流れる基準電流I11、及び、NMOSFET22cに流れる基準電流I11’は、それぞれ、電流調整電圧VIadjの電圧値と抵抗R6Pの抵抗値に応じた電流値(=VIadj/R6P)となる。すなわち、V-I変換器22のゲインは、帰還抵抗R6Pにより決定される。
【0097】
NMOSFET22bのドレインは、電流センスアンプ21の反転入力端(-)と入力抵抗R5Pの第1端に接続されている。NMOSFET22bのソースは、帰還抵抗R6Pの第1端とオペアンプ22aの反転入力端(-)に接続されている。帰還抵抗R6Pの第2端は、接地端に接続されている。NMOSFET22bのゲートは、オペアンプ22aの出力端に接続されている。
【0098】
一方、NMOSFET22cのドレインは、入力抵抗R5Nの第2端とSNSNピンに接続されている。NMOSFET22cのソースは、帰還抵抗R6Nの第1端に接続されている。帰還抵抗R6Nの第2端は、接地端に接続されている。NMOSFET22cのゲートは、オペアンプ22aの出力端に接続されている。
【0099】
DAC23は、不図示のデジタル信号(例えば10ビット)をアナログの電流調整電圧VIadjに変換する。
【0100】
本実施形態の電流検出回路において、電流センスアンプ21は、スケーリングされた電流調整電圧(=VIadj×R5P/R6P)と、SNSPピン-SNSNピン間に入力されるセンス電圧Vsnsとの差分を増幅して電流検出信号CSを生成する。この電流検出信号CSにより、インダクタ電流ILのボトム検出値(バレイ検出値)が制御される。その結果、出力電流ILEDは、VIadj×R5P/(R6P×Rs)に調整される。
【0101】
図14は、第6実施形態の電流検出回路を等価的に示す図である。なお、本図の帰還抵抗R6は、図13の帰還抵抗R6P(または帰還抵抗R6N)として理解すればよい。
【0102】
本図で示すように、本実施形態の電流検出回路において、電流センスアンプ21の基準電圧(=スケーリングされた電流調整電圧VIadj×R5P/R6)を生成するためには、V-I変換器22に基準電流I11を流す必要がある。そのため、本実施形態の電流検出回路は、SNSPピンとV-I変換器22の第1出力端(=MOSFET22bのドレイン)との間に基準電流I11を流すように構成された第1基準電流経路を含む。
【0103】
ただし、SNSPピンに外付けされる電流制限抵抗RpPにだけ第1基準電流I11が流れる構成では、電流制限抵抗RpPの両端間電圧分だけ電流センスアンプ21の基準電圧がずれてしまう。そこで、本実施形態の電流検出回路は、SNSNピンとV-I変換器22の第2出力端(=MOSFET22cのドレイン)との間に基準電流I11’を流すように構成された第2基準電流経路を含む。なお、基準電流I11及びI11’は、同値であってもよいし、両者の間に任意のオフセットが付与されていてもよい。
【0104】
このように、電流センスアンプ21の基準電圧を生成するために必要な基準電流I11を基準電流I11’で補正する構成によれば、SNSPピン及びSNSNピンそれぞれに電流制限抵抗RpP及びRpNが外付けされていても、V-I変換器22のゲイン(延いては電流センスアンプ21の基準電圧)が入力抵抗R5Pと帰還抵抗R6の比に応じて一義的に決まるので、LEDドライバIC1における電流検出精度の低下(特に温度ドリフト)を解消することが可能となる。
【0105】
なお、本実施形態の電流検出回路において、電流センスアンプ21は、SNSPピン及びSNSNピンから入力電流I2を引き込むことなく、スケーリング済みの電流調整電圧(=VIadj×R5P/R6P)とセンス電圧Vsnsとの差分を増幅して電流検出信号CSを生成するgmアンプとして機能する。
【0106】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0107】
1、1A、1B LEDドライバIC(半導体装置)
2、2A、2B LEDストリング
3 マトリクスマネージャ
4 MCU
11H 上側スイッチ(NMOSFET)
11L 下側スイッチ(NMOSFET)
12H 上側ドライバ
12L 下側ドライバ
13 コントローラ(RSフリップフロップ)
14 オン時間設定部
15 スロープ信号生成部
16 電流センスアンプ(電流検出回路)
17 エラーアンプ
18 コンパレータ
19 DAC
20 バレイ電流制御部
21 電流センスアンプ
22 V-I変換器
22a オペアンプ
22b、22c NMOSFET
23 DAC
AMP1、AMP2 差動アンプ
AMP2g gmアンプ
Cb、Cc、Ci、Co、CoA、CoB キャパシタ
D1 ダイオード
Desd 静電保護ダイオード
DH、DL サージ保護ダイオード
L1、L1A、L1B インダクタ
Lx、Ly 寄生インダクタンス成分
R1P、R1N、R3P、R3N、R5P、R5N 入力抵抗
R2、R4 出力抵抗
R6P、R6N 帰還抵抗
RpP、RpN、RpPA、RpNA、RpPB、RpNB 電流制限抵抗
Rs、RsA、RsB センス抵抗
Rt 抵抗
X LEDランプモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14