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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】光源装置、露光装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/52 20060101AFI20240716BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240716BHJP
   H01J 61/02 20060101ALI20240716BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H01J61/52 B
G03F7/20 501
H01J61/02 C
H01J61/35 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020167964
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022060004
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】深沢 寛
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105931(JP,A)
【文献】特開2001-135134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/50-65/08
G03F 7/20-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置であって、
円柱面を有する口金が設けられたランプを保持する保持部と、
前記ランプが発生する光を集光させる集光ミラーと、
前記口金を冷却するための気体を噴射する噴射孔を有するノズルと、を備え
前記噴射孔の中心軸を含む直線と前記口金の中心軸との距離が前記円柱面の半径の1/2以上かつ前記半径以下であり、前記ノズルから噴射された前記気体が前記円柱面に沿って流れて、前記口金に接続されているリード線に吹き付けられるように、前記ノズルが配置されている、
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記口金を冷却するための気体を噴射する第2噴射孔を有する第2ノズルを更に備え、
前記第2噴射孔の中心軸を含む第2直線と前記口金の前記中心軸との距離が前記円柱面の半径の1/2以上かつ前記半径以下となるように前記第2ノズルが配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記噴射孔の前記中心軸を含む前記直線と前記第2噴射孔の前記中心軸を含む前記第2直線とが互いに平行である、
ことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記噴射孔の前記中心軸を含む前記直線と前記第2噴射孔の前記中心軸を含む前記第2直線との間に前記口金の前記中心軸が配置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記口金の中心軸に直交する平面への正射影において、前記噴射孔の前記中心軸を含む前記直線と前記第2噴射孔の前記中心軸を含む前記第2直線とが互いに交差している、
ことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項6】
前記口金の前記中心軸に平行な方向において、前記直線と前記円柱面との交点と前記第2直線と前記円柱面との交点との距離が10mm以上である、
ことを特徴とする請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
前記ノズルに供給する気体の流量および前記第2ノズルに供給する気体の流量を調整する調整機構を更に備える、
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項8】
記口金と前記リード線との接続部と前記噴射孔との間に前記口金が配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項9】
前記口金の前記中心軸をZ軸、前記噴射孔の前記中心軸に平行な軸をX軸とするXYZ座標系におけるXY平面に対する正射影において、前記噴射孔は第2象限または第3象限に配置され、前記リード線のうち少なくとも前記集光ミラーからの光束が照射される部分は第1象限および第4象限からなる領域内に配置されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の光源装置。
【請求項10】
前記ノズルは、前記ランプから放射され前記集光ミラーによって反射された有効光束の外側に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項11】
前記噴射孔から噴射される気体の流速分布は、前記噴射孔の前記中心軸に対して軸対称である、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項12】
前記噴射孔は、直径が1mm以上かつ2mm以下の範囲内の円形開口であり、前記噴射孔から噴射される気体の前記噴射孔における最大流速は、50m/sec以上かつ600m/sec以下の範囲内である、
ことを特徴とする請求項11に記載の光源装置。
【請求項13】
前記集光ミラーは、楕円ミラーである、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項14】
前記口金の前記円柱面の中心軸は、前記集光ミラーの光軸と一致する、
ことを特徴とする請求項13に記載の光源装置。
【請求項15】
前記ノズルは、前記円柱面に噴射された前記気体が前記円柱面に沿って流れるように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項16】
前記ノズルから噴射された前記気体が前記集光ミラーにより反射された光を通過するように前記ノズルが配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項17】
前記ノズルは、前記集光ミラーにより反射された光を遮光しないように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項18】
光源装置であって、
円柱面を有する口金が設けられたランプを保持する保持部と、
前記ランプが発生する光を集光させる集光ミラーと、
前記口金を冷却するための気体を噴射する噴射孔を有するノズルと、を備え、
前記噴射孔の中心軸を含む直線と前記口金の中心軸との距離が前記円柱面の半径の1/2以上かつ前記半径以下となり、前記ランプから放射され前記集光ミラーによって反射された有効光束の外側に前記ノズルが配置されている、
ことを特徴とする光源装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を使って原版を照明する照明光学系と、
前記原版のパターンを基板に投影する投影光学系と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項20】
請求項19に記載の露光装置を用いて基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記基板を現像する現像工程と、
前記現像工程を経た前記基板を処理して物品を得る処理工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、露光装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスまたはディスプレイデバイスなどのデバイスを製造するためのリソグラフィー工程において露光装置が使用される。露光装置には、光源装置が組み込まれていて、光源装置は、交換可能なランプを含みうる。ランプは、例えば、一対の口金と、一対の口金の間に配置された発光管と、発光管の中に配置され一対の口金にそれぞれ接続された一対の電極とを含み、発光菅の中に発光物質としての水銀等が封入されうる。一対の口金を通して一対の電極間に電力が供給されることによって一対の電極間でアーク放電が発生し、これによりランプが発光しうる。ランプを発光させているときは口金の温度が高温になるので、口金を冷却する必要がある。特許文献1には、冷却効率を高めるためのフィンを口金部に設け、フィンに対して冷却エアーを吹き付けることによって口金部を冷却する光源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-17003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランプの高出力化に伴って口金の温度が上昇する傾向にある。口金を十分に冷却するためには、口金に対して十分な流量で気体を吹き付ける必要がある。しかし、その気体によって発光管が過剰に冷却されると、発光管の中の水銀等の発光物質を十分に蒸発させることができなくなり、ランプの点灯不良を引き起こしうる。
【0005】
本発明は、ランプを安定して発光させるために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、光源装置に係り、前記光源装置は、円柱面を有する口金が設けられたランプを保持する保持部と、前記ランプが発生する光を集光させる集光ミラーと、前記口金を冷却するための気体を噴射する噴射孔を有するノズルと、を備え、前記噴射孔の中心軸を含む直線と前記口金の中心軸との距離が前記円柱面の半径の1/2以上かつ前記半径以下であり、前記ノズルから噴射された前記気体が前記円柱面に沿って流れて、前記口金に接続されているリード線に吹き付けられるように、前記ノズルが配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ランプを安定して発光させるために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の露光装置の構成を模式的に示す図。
図2】第1実施形態の光源装置の構成を模式的に示す図。
図3】リード線の配置例を示す図。
図4】第1実施形態の光源装置の構成を模式的に示す図。
図5】第1実施形態の光源装置における口金とノズルとの配置例を模式的に示す図。
図6】第1実施形態の光源装置の効果を説明する図。
図7】第1実施形態の光源装置の効果を説明する図。
図8】第1実施形態の光源装置の効果を説明する図。
図9】第1実施形態の光源装置の効果を説明する図。
図10】第1実施形態の光源装置の効果を説明する図。
図11】第2実施形態の光源装置の構成を模式的に示す図。
図12】第3実施形態の光源装置の構成を模式的に示す図。
図13】第4実施形態の光源装置の構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられても良い。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。本明細書および図面では、方向はXYZ座標系で示されている。典型的には、Z軸は鉛直方向であり、XY平面は水平面である。ハッチングまたは網掛けが付された部分は、断面を示している。
【0010】
図1には、第1実施形態の露光装置100の構成例が示されている。露光装置100は、例えば、光源装置110、シャッタ装置120、照明光学系130、原版保持部140、投影光学系150および基板保持部160を備えうる。光源装置110は、ランプ10を保持する保持部20を含みうる。原版保持部140は、原版142を保持する。原版保持部140は、不図示の原版位置決め機構によって位置決めされ、これにより原版142が位置決めされうる。基板保持部160は、基板162を保持する。露光装置100には、レジスト塗布装置によってレジスト(感光材)が塗布された基板162が供給される。基板保持部160は、不図示の基板位置決め機構によって位置決めされ、これにより基板162が位置決めされうる。
【0011】
シャッタ装置120は、光源装置110と原版保持部140との間の光路において光束を遮断することができるように配置されている。照明光学系130は、光源装置110からの光を使って原版142を照明する。投影光学系150は、照明光学系130によって照明された原版142のパターンを基板162に投影し、これによって基板162が露光される。これにより、基板162に塗布されたレジストに潜像パターンが形成される。潜像バターンは、不図示の現像装置によって現像され、これによりレジストパターンが基板162上に形成される。
【0012】
図2には、光源装置110の構成例が示されている。光源装置110は、ランプ10を保持する保持部20と、ランプ10が発生する光を集光させる集光ミラー50と、ランプ10の口金11a、11bを冷却するための気体を噴射する噴射孔を有するノズル42a、42bとを備えうる。また、光源装置110は、ランプ10にリード線(ケーブル)32a、32bを通して電力を供給する電力供給部(ランプ電源)30と、ノズル42a、42bにそれぞれ供給管41a、41bを通して気体を供給する気体供給部40とを備えうる。
【0013】
ランプ10は、例えば、水銀ランプ、キセノンランプまたはメタルハライドランプなどのショートアークタイプのランプでありうる。集光ミラー50は、例えば、2つの焦点FP1、FP2を有する楕円ミラーでありうる。第1焦点FP1またはその近傍にランプ10の輝点が配置され、集光ミラー50は、該輝点から放射された光を反射して、第2焦点FP2に集光させうる。集光ミラー50の開口部の直径は、ランプ10の大きさに依存しうるが、例えば300~400mmである。また、ランプ10は、集光ミラー50の光軸OAX(第1焦点FP1と第2焦点FP2とを結ぶ軸線)の上に配置されうる。ノズル42a、42bは、気体供給部40から供給される高圧のエアーをそれぞれ口金11a、11bに吹き付けるように配置されうる。これにより、口金11a、11bが冷却される。ノズル42aは、集光ミラー50で反射された有効光束52を遮断しないように、有効光束52の外側に配置されうる。口金11a、11bの冷却は、エアーではなく、別の冷却媒体、例えば、窒素またはヘリウムなどの気体が用いられてもよい。
【0014】
ランプ10は、一対の口金11a、11bと、口金11a、11bからそれぞれ延びたステム14a、14bと、ステム14a、14bの間に配置された発光管13と、ステム14a、14および発光管13の中に配置された一対の電極12a、12bとを含みうる。ステム14a、14および発光管13は、一体的に構成されうる。一例において、口金11aは陽極側口金であり、口金11bは陰極側口金であり、電極12aは陽極であり、電極12bは陰極でありうる。
【0015】
口金11aと電極12aとは、モリブデン箔等の接続部によって接続されうる。同様に、口金11bと電極12bとは、モリブデン箔等の接続部によって接続されうる。発光管13の内部には、ネオン、キセノンなどの希ガス、あるいは、水銀、ナトリウム、スカンジウムなどの金属、あるいは、これらの混合物質が封入されうる。一対の電極12a、12b間のアーク放電により発光が行われる。口金11a、11bは、それぞれリード線32a、32bによって電力供給部30に接続されうる。図2では、リード線32a、32bがそれぞれ口金11a、11bの側面に接続された例が示されているが、図3(a)に例示されるように、リード線32a、32bは、それぞれ口金11a、11bの端面に接続されていてもよい。あるいは、図3(b)に例示されるように、リード線32a、32bは、それぞれリード線接続端子、アダプターまたは固定金具などのコネクタ11c、11dを介して口金11a、11bに接続されてもよい。また、リード線32a、32bは、導電性の線材で構成されてもよいし、他の導電性部材で構成されてもよい。
【0016】
なお、以下では、口金11a、11bを区別することなく説明する場合には、口金11と記載する。口金11についての説明は、口金11aおよび/または口金11bについての説明である。同様に、リード線32a、32bを区別することなく説明する場合には、リード線32と記載する。リード線32についての説明は、リード線32aおよび/またはリード線32bについての説明である。同様に、ノズル42aa、32bを区別することなく説明する場合には、ノズル42と記載する。ノズル42についての説明は、ノズル42aおよび/またはノズル42bについての説明である。同様に、供給管41a、41bを区別することなく説明する場合には、供給管41と記載する。供給管41についての説明は、供給管41aおよび/または供給管41bについての説明である。
【0017】
図4には、口金11とノズル42との配置例が模式的に示されている。図4(a)は、平面図、即ちXY平面に対する正射影を示している。図4(b)は、側面図を示している。口金11は、円柱面CSを有しうる。ノズル42は、口金11を冷却するための気体を噴射する噴射孔45を有する。噴射孔45は、中心軸HAXを有する。噴射孔45の中心軸HAXは、例えば、噴射孔45が円筒形状を有する場合、その円筒形状の中心軸と一致する。噴射孔45から噴射される気体の流れは、F1、F2、F3として模式的に示されている。
【0018】
噴射孔45の中心軸HAXを含む直線L1と口金11の中心軸AXとの距離(以下、オフセット)dは、円柱面CSの半径Rの1/2以上かつ半径R以下でありうる。ここで、口金11の中心軸CAXは、円柱面CSの中心軸である。口金11の円柱面CSの中心軸CAXは、集光ミラー50の光軸と一致しうる。ノズル42から噴射され、口金11の表面、即ち円柱面CSに吹き付けられる気体の流れF1は、口金11の円柱面CSに沿った流れF2となった後、コアンダ効果によって向きを変えて流れF3となり、リード線32に吹き付けられる。口金11は、気体の流れF1、F2、F3によって冷却されうる。口金11は、円柱面CSの周囲に複数の円環形状のフィンを有してもよい。図2に示されるように、口金11aに対してはノズル42aが設けられ、口金11bに対してはノズル42bが設けられうる。
【0019】
ノズル42の噴射孔45の中心軸HAXの仰角は、-10°以上かつ+10°以内の範囲内であり、鉛直方向(Z軸方向)に対する口金11の中心軸CAXの角度は、-10°以上かつ+10°以内の範囲内でありうる。他の観点において、ノズル42の噴射孔45の中心軸HAXを含み口金11の中心軸CAXに平行な平面において、噴射孔45の中心軸HAXを含む直線L1と口金11の中心軸CAXに垂直な平面とがなす角度は、-10°以上かつ+10°以内の範囲内でありうる。
【0020】
図5には、ノズル42および供給管41の構造が例示されている。ノズル42は、エアーあるいは気体のリークが発生しないように供給管41に接合または結合されうる。ノズル42の噴射孔45は、例えば、直径ΦDが1mm以上かつ2mm以下の範囲内の円形開口でありうる。噴射孔45から噴射されるエアーあるいは気体の流速分布は、噴射孔45の中心軸HAXに対して軸対称でありうる。噴射孔45から噴射されるエアーあるいは気体の最大流速は、例えば、50m/sec以上かつ100m/sec以内の範囲内に設定されうる。
【0021】
以下、図6図7図8および図9を参照しながら第1実施形態に従う実施例を例示的に説明する。図6には、ノズル42から噴射されるエアーの流れを実測するために使用された実験系が示されている。図6(a)は、平面図を示している。図6(b)は、側面図を示している。噴射孔45の中心軸HAXを含む直線L1と口金11の中心軸CAXとの距離(オフセット)をdとし、ノズル42の先端と円柱CCの側面である円柱面CS1(口金11の円柱面CSに相当する)との距離をD1とした。また、円柱面CS1を通過した後のエアーの流れをF3、F1とF3との角度差(屈折角度)をθとした。また、円柱面CS1から距離D2の位置を流速分布の測定位置とし、図6のH方向、Z方向における流速分布を測定した。なお、H方向は、F3に直交する方向である。円柱面CS1の直径Φ(=2R)を40mm、オフセットdを0、5、10、15mmとし、ノズル42から噴射されるエアーの流量を50L/min、ノズル42の噴射孔45の直径ΦDを1.5mm、噴射孔45における平均流速を470m/secとした。
【0022】
図7には、ノズル42から噴射されたエアーの流速分布をノズル42の先端からの距離D1=120mmの位置で測定した結果が示されている。この測定の際には、図6に示された円柱CCを取り外した。横軸は、中心軸HAXを含む直線L1からの距離であり、縦軸は、エアーの流速である。エアーの流速分布は、中心軸HAXを含む直線L1に対して対称であることが分かる。距離D1=120mmは、集光ミラー50の直径が300mm、口金11の円柱面CSの直径Φが40mmの場合において、ノズル42の先端が図2に示された有効光束52を遮断しない最小距離である。
【0023】
図8には、円柱面CS1からの距離D2=100mmの位置で±H方向における流速分布を測定した結果が示されている。図9には、円柱面CS1からの距離D2=100mmの位置で±Z方向における流速分布を測定した結果が示されている。オフセットdが大きくなるに従って±Z方向における流速分布の拡がりが狭くなることが分かる。オフセットdが10mm、つまり円柱面CS1の半径Rの1/2以上である場合に、±Z方向における流速分布の拡がりが狭い範囲に抑えられることが分かる。図10には、図7図9の測定と同条件で屈折角度θを測定した結果が示されている。オフセットdが増加するに従って屈折角度θが大きくなり、オフセットd=15mmのときに屈折角度θが約45°であることが分かる。
【0024】
一例において、ランプ10の口金11と発光管13との高さ方向の距離(ステム14の長さ)は概ね80mm以上であり、上側の口金11aと集光ミラー50の上端との高さ方向(Z方向)の距離は概ね100mm程度に設定されうる。したがって、オフセットdを口金11の円柱面CSの半径の1/2以上かつ半径以下とすることにより、口金11に吹き付けられたエアーが口金11以外の範囲に拡散することを抑制することができる。これにより、口金11に吹き付けられたエアーが直接的にランプ10の発光管13を冷却したり、集光ミラー50の内側空間に流入して間接的に発光管13を冷却したりすることを抑制し、ランプ10の過冷却による点灯不良または不点灯などを防止することができる。したがって、第1実施形態によれば、ランプ10を安定して発光させることができる。
【0025】
また、ランプ10の出力向上に伴って集光ミラー50で反射された光束が口金11aに電力を供給するリード線32aに照射されことによってリード線32aの温度が上昇し、リード線32aの酸化および劣化を招く可能性がある。リード線32aを冷却するために、専用のエアー吹き付け機構を設けると、光源装置110のコストの増加、あるいは、エアー流量の増加による露光装置100のランニングコストの増加を招きうる。リード線32aのうち光束が照射される部分(温度上昇部)にエアーあるいは気体の流れF3を形成することにより、リード線32aの当該部分を低コストで冷却することができる。
【0026】
ここで、ノズル42から噴射されるエアーあるいは気体によってリード線32aを効果的に冷却するために、図4に例示されるように、口金11aとリード線32aとの接続部と噴射孔45との間に口金11aが配置されうる。口金11aの中心軸CAXをZ軸、噴射孔45の中心軸HAXに平行な軸をX軸とするXYZ座標系におけるXY平面に対する正射影において、噴射孔45は、第2象限または第3象限に配置されることが好ましい。また、リード線32のうち少なくとも集光ミラー50からの有効光束52が照射される部分は、第1象限および第4象限からなる領域内に配置されることが好ましい。
【0027】
また、ノズル42から噴射されるエアーあるいは気体の流速は、口金11およびリード線32による流速の減衰およびランプ10の出力を考慮して決定されうる。一例において、ノズル42から噴射されるエアーあるいは気体の流速は、50m/sec以上かつ600m/sec以下の範囲内で決定されうる。
【0028】
以下、図11を参照しながら第2実施形態の露光装置における光源装置110の構成を説明する。第2実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。図11には、第2実施形態の光源装置110における口金11とノズル42との配置例が模式的に示されている。図11(a)は、平面図、即ちXY平面に対する正射影を示している。図11(b)は、側面図を示している。
【0029】
第2実施形態では、第1実施形態のノズル42が2つのノズル42-1、42-2で置き換えられている。第1ノズル42-1の噴射孔45-1の中心軸HAX-1を含む直線L1-1と口金11の中心軸CAXとの距離(オフセット)d-1は、円柱面CSの半径Rの1/2以上かつ半径R以下でありうる。第2ノズル42-2の噴射孔45-2の中心軸HAX-2を含む直線L1-2と口金11の中心軸CAXとの距離(オフセット)d-2は、円柱面CSの半径Rの1/2以上かつ半径R以下でありうる。オフセットd-1とオフセットd-2は、互いに異なってもよいし、互いに同じであってもよい。直線L1-1と直線L1-2とは、平行に配置されうる。第1ノズル42-1および第2ノズル42-2は、直線L-1と直線L-2との間に口金11の中心軸CAXが配置されるように配置されうる。第1ノズル42-1および第2ノズル42-2は、同一高さに配置されてもよいし、互いに異なる高さに配置されてもよい。
【0030】
第1ノズル42-1から噴射され、口金11の表面、即ち円柱面CSに吹き付けられる気体の流れF1-1は、口金11の円柱面CSに沿った流れF2-1となった後、コアンダ効果によって向きを変えて流れF3-1となり、リード線32に吹き付けられる。第2ノズル42-2から噴射され、口金11の表面、即ち円柱面CSに吹き付けられる気体の流れF1-2は、口金11の円柱面CSに沿った流れF2-2となった後、コアンダ効果によって向きを変えて流れF3-2となり、リード線32に吹き付けられる。流れF3-1と流れF3-2とは合流しうる。第1ノズル42-1から噴射される気体の流量と第2ノズル42-2から噴射される気体の流量とは、互いに同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
【0031】
第2実施形態によれば、第1実施形態の同等の効果が得られる他、口金11のうちエアーあるいは気体が吹き付けられる面積を増加させることによって口金11の冷却能力を向上させることができる。
【0032】
以下、図12を参照しながら第3実施形態の露光装置における光源装置110の構成を説明する。第3実施形態として言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。図12には、第3実施形態の光源装置110における口金11とノズル42との配置例が模式的に示されている。図12(a)は、平面図、即ちXY平面に対する正射影を示している。図12(b)は、側面図を示している。
【0033】
第3実施形態では、第1実施形態のノズル42が2つのノズル42-1、42-2で置き換えられている。第1ノズル42-1の噴射孔45-1の中心軸HAX-1を含む直線L1-1と口金11の中心軸CAXとの距離(オフセット)d-1は、円柱面CSの半径Rの1/2以上かつ半径R以下でありうる。第2ノズル42-2の噴射孔45-2の中心軸HAX-2を含む直線L1-2と口金11の中心軸CAXとの距離(オフセット)d-2は、円柱面CSの半径Rの1/2以上かつ半径R以下でありうる。オフセットd-1とオフセットd-2は、互いに異なってもよいし、互いに同じであってもよい。
【0034】
口金11の中心軸CAXに直交する平面(XY平面)への正射影において、第1ノズル42-1の噴射孔45-1の中心軸HAX-1を含む直線L1-1と第2ノズル42-2の第2噴射孔45-2の中心軸HAX-2を含む第2直線L1-2とは、互いに交差する。
【0035】
第1ノズル42-1から噴射され、口金11の表面、即ち円柱面CSに吹き付けられる気体の流れF1-1は、口金11の円柱面CSに沿った流れF2-1となった後、コアンダ効果によって向きを変えて流れF3-1となり、リード線32に吹き付けられる。第2ノズル42-2から噴射され、口金11の表面、即ち円柱面CSに吹き付けられる気体の流れF1-2は、口金11の円柱面CSに沿った流れF2-2となった後、コアンダ効果によって向きを変えて流れF3-2となり、リード線32に吹き付けられる。
【0036】
一例において、流れF3-1、F3-2がほぼ平行になるように、コアンダ効果による屈折角(前述のθ)を考慮して、第1ノズル42および第2ノズル42の方向(中心軸HAX-1、HAX-2)の方向が決定されうる。このような構成によれば、流れF3-1、F3-2が互いに干渉することによる淀みの発生を抑え、口金11およびリード線32を効果的に冷却することができる。
【0037】
流れ1-1、F1-2が互いに干渉しないように、あるいは、それらの干渉が低減されるように、口金11の中心軸CAXに平行な方向において、直線L1-1と円柱面CSとの交点と直線L2-2と円柱面CSとの交点との間に相応の距離z1が設けられうる。距離z1は、例えば、10mm以上でありうる。距離z1の上限は、口金11のZ方向の寸法により定まりうる。距離z1は、例えば、口金11のZ方向の寸法より小さく設定されうる。あるいは、ノズル42-1、42-2の噴射孔45-1、45-2の中心軸HAX-1、HAX-2の仰角が互いに等しい場合において、ノズル42-1、42-2の高さの差は、10mm以上でありうる。ノズル42-1、42-2の高さの差の上限は、口金11のZ方向の寸法により定まりうるものであり、例えば、該高さの差は、口金11のZ方向の寸法より小さく設定されうる。
【0038】
以下、図13を参照しながら第4実施形態の露光装置における光源装置110の構成を説明する。第4実施形態は、第2実施形態の変形例であり、第4実施形態として言及しない事項は、第2実施形態に従いうる。図13には、第4実施形態の光源装置110における口金11とノズル42との配置例が模式的に示されている。図13(a)は、平面図、即ちXY平面に対する正射影を示している。図13(b)は、側面図を示している。
【0039】
第4実施形態の光源装置110は、気体供給部40から第1ノズル42-1、第2ノズル42-2にそれぞれ供給される気体の流量を調整する調整機構として、第1流量絞り46-1、第2流量絞り46-2が設けられている。第1流量絞り46-1、第2流量絞り46-2は、供給管41a、41bの途中に設けられてもよいし、気体供給部40に組み込まれてもよい。
【0040】
一例において、流れF1-1の流量が流れF1-2の流量より大きいように第1流量絞り46-1、第2流量絞り46-2を調整あるいは制御することができる。この場合、流れF3-1、F3-2の合流後の流れFの向きは、流れF3-2よりも流れF3-1に近い。第1流量絞り46-1、第2流量絞り46-2は、手動の流量絞りでもよいし、不図示のコントローラによって制御可能な流量絞りでもよい。第4実施形態は、ノズル42-1、42-2の配置および/あるいはリード線32の配置に制約がある場合に、流れFの向きを調整あるいは制御するために有利である。
【0041】
以下、実施形態の物品製造方法を説明する。物品製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)、カラーフィルターなどの物品を製造するのに好適である。物品製造方法は、上記の露光装置を用いて、(感光剤が塗布された)基板を露光する露光工程と、該露光工程で露光された基板を現像する現像工程と、該現像工程を経た基板を処理して物品を得る処理工程とを含みうる。また、該処理工程は、例えば、周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
11a、11b:口金、10:ランプ、20:保持部、50:集光ミラー、45:噴射孔、42:ノズル、110:光源装置
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