(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】振動型駆動装置及び振動型駆動装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/14 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
H02N2/14
(21)【出願番号】P 2020177103
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健一
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162260(JP,A)
【文献】特開2018-078769(JP,A)
【文献】特開2017-175696(JP,A)
【文献】特開2003-340371(JP,A)
【文献】特開2017-060357(JP,A)
【文献】特開昭50-158480(JP,A)
【文献】特開2014-016356(JP,A)
【文献】特開平09-318688(JP,A)
【文献】特開平09-294335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0067024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記駆動信号を分析して分析結果を出力する駆動信号分析手段と、前記分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する判定手段を備え、
1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列に振動体を接続した前記振動体ユニットを備え、前記複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されており、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備え、
前記駆動信号の高調波の周波数が、前記振動体が断線していない状態において波形整形手段の出力電圧又は出力電流の周波数特性の谷の最下点の近傍であるよう構成されている振動型駆動装置。
【請求項2】
指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記駆動信号を分析して分析結果を出力する駆動信号分析手段と、前記分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する判定手段を備え、
並列に接続された一対のインダクタと振動体が、直列に複数対が連なる前記振動体ユニットを備え、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備え、
前記駆動信号の高調波の周波数が、前記振動体が断線していない状態において波形整形手段の出力電圧又は出力電流の周波数特性の谷の最下点の近傍であるよう構成されている振動型駆動装置。
【請求項3】
前記駆動信号分析手段は前記波形整形手段の出力電圧又は出力電流の波形を分析し、波形率、高調波歪率、実効値と絶対値の平均値との差、高調波振幅のいずれかに応じた値を検出する事を特徴とする請求項1または2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
前記波形整形手段はインダクタとコンデンサの直列回路又はインダクタである請求項
1乃至
3のいずれか1項記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
前記インダクタに対し、さらに並列にコンデンサを接続したことを特徴とする請求項2記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記トランスの2次側に並列にコンデンサを接続した請求項
1記載の振動型駆動装置。
【請求項7】
前記判定手段は所定の閾値によって断線の有無を判定する請求項1乃至
6のいずれか1項記載の振動型駆動装置。
【請求項8】
前記判定手段はあらかじめ断線数に応じて得られる分析結果のテーブルに基づいて断線の数を判定する請求項1乃至
6のいずれか1項記載の振動型駆動装置。
【請求項9】
前記振動体ユニットに接する共通の接触体を有する請求項1乃至
8のいずれか1項記載の振動型駆動装置。
【請求項10】
前記接触体は円柱シャフトであり、前記円柱シャフトの円周に略均等に配置された3つの振動体を備えている請求項
9に記載の振動型駆動装置。
【請求項11】
前記接触体および前記振動体を収める中空ケースをさらに備える請求項
9または
10に記載の振動型駆動装置。
【請求項12】
前記振動体は2つの突起を有する矩形状の弾性体と、圧電体を備える請求項1乃至
11のいずれか1項記載の振動型駆動装置
【請求項13】
制御部が指令信号を駆動部へ出力し、前記指令信号に基づき前記駆動部が出力した駆動信号によって2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットが振動するとともに、前記駆動信号を分析して分析結果を出力し、
前記分析結果は、前記駆動信号としての、駆動電圧の波形あるいは前記振動体ユニットに流入する電流の波形を分析した結果であり、
前記波形は、前記駆動電圧の周波数に対する3次の高調波の振幅と基本波の振幅の波形であり、
前記分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する振動型駆動装置の制御方法。
【請求項14】
前記振動体ユニットは、1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列に振動体が接続され、前記複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されており、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備える請求項
13記載の振動型駆動装置の制御方法。
【請求項15】
前記振動体ユニットは並列に接続された一対のインダクタと振動体が、直列に複数対が連なるように構成されており、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備える請求項
13記載の振動型駆動装置の制御方法。
【請求項16】
前記振動体のうち、前記振動体に連結する配線の断線の数に応じて異なる駆動シーケンスを実行する請求項
13乃至
15のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の制御方法。
【請求項17】
前記断線の数に応じて断線状態表示用LEDを点灯する請求項
16に記載の振動型駆動装置の制御方法。
【請求項18】
請求項1乃至12記載のいずれか1項に記載の振動型駆動装置を搭載した機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
超音波振動を利用したアクチュエータの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気-機械エネルギー変換素子(圧電素子、電歪素子等)によって加振される振動体を使った振動型アクチュエータにおいて、印加電圧を計測して振動体の断線等の不具合を検知する方法は知られている。例えば特許文献1にはインダクタを介して振動体に印加する交流電圧の高周波成分の発生の検出によって断線を検知する例が示されている。又特許文献2には昇圧用のトランスの特性によって変化する印加電圧の周波数特性のピーク特性のQ値やピーク周波数の変化の検出によって断線を検知する例が示されている。
【0003】
特許文献1のように単体の振動体の場合、断線による印加電圧の変化が大きく、高周波成分の発生によって断線の発生を検知できる。しかし、インダクタ素子と振動体とが並列接続された振動体ユニットを直列に複数接続したものや、複数のトランスの2次側にそれぞれ並列に振動体を接続し各トランスの1次側を直列に接続した直列接続型の振動体装置においては以下の問題がある。
【0004】
すなわち、1つの振動体が断線しても直列接続の両端にかかる印加電圧の波形変化は少ない上、駆動周波数より高い周波数領域に現れる高周波成分は周波数によって増加したり減少したりする。そのため、単純に高周波成分が発生したからと言って断線の有無を判定出来なかった。
【0005】
また特許文献2のようにトランスの2次側の周波数特性を利用して印加電圧の周波数特性のピーク特性に着目し、ピーク周波数やQ値を検出する方法を用いれば、個々の振動体の不具合を検知する事が出来る。しかし、上述したような直列接続型の振動体装置においては、すべての振動体に印加される交流電圧を検出する必要があり、不具合箇所を検知する事が出来る反面回路規模が大きくなる欠点があった。また、高周波域での周波数掃引や疑似乱数を用いたピーク周波数及びQ値の検出は、通常の駆動電圧を印加している最中に別途高周波電圧を重畳して独立に行うと速度変動や異音の原因になりやすいという問題があった。複数の振動体を連ねる振動型ユニットにおいては、複数の振動体の内、1個の振動体の断線が発生したとしても他の振動体へ印加電圧は供給され、ある程度駆動出来るので断線しても駆動を継続できるという性質を持つ。しかし、断線した状態では他の振動体の負担が重くなる為、性能劣化が加速的に進む可能性があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5716624
【文献】特開2018-78769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、複数の振動体を連ねる振動体ユニットにおいて、駆動中に振動体の断線を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための振動型駆動装置は、指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記駆動信号を分析して分析結果を出力する駆動信号分析手段と、前記分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する判定手段を備え、
1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列に振動体を接続した前記振動体ユニットを備え、前記複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されており、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備え、
前記駆動信号の高調波の周波数が、前記振動体が断線していない状態において波形整形手段の出力電圧又は出力電流の周波数特性の谷の最下点の近傍であるよう構成されている。
また別の振動型駆動装置は、
指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記駆動信号を分析して分析結果を出力する駆動信号分析手段と、前記分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する判定手段を備え、
並列に接続された一対のインダクタと振動体が、直列に複数対が連なる前記振動体ユニットを備え、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備え、
前記駆動信号の高調波の周波数が、前記振動体が断線していない状態において波形整形手段の出力電圧又は出力電流の周波数特性の谷の最下点の近傍であるよう構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の振動体を連ねる振動型ユニットを有する振動型駆動装置において通常の駆動中に振動体の断線を検知可能となる。また通常駆動中に断線が発生しても、いち早く断線の状況に応じた駆動制御の実施が可能なので周辺機構や使用ユーザへの断線の影響を少なくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第1の例を示す図
【
図2】振動型アクチュエータの構造の第1の例を示す図
【
図3】振動型アクチュエータ内の電気的接続を示す図
【
図4】第1の実施例の断線時の駆動電圧振幅の周波数特性変化の第1の例を示す図
【
図5】第1の実施例の断線時の駆動電圧波形の変化を示す図
【
図6】第1の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の分析結果の第1の例を示す図
【
図7】第1の実施例のデューティ38%のパルス信号で駆動した際の分析結果の第1の例を示す図
【
図8】第1の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の断線数と分析結果の関係の第1の例を示す図
【
図9】第1の実施例のデューティ38%のパルス信号で駆動した際の断線数と分析結果の関係の第1の例を示す図
【
図10】第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第2の例を示す図
【
図11】第1の実施例の断線時の駆動電圧振幅の周波数特性変化の第2の例を示す図
【
図12】第1の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の分析結果の第2の例を示す図
【
図13】第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第3の例を示す図
【
図14】第1の実施例の断線時の駆動電圧振幅の周波数特性変化の第3の例を示す図
【
図15】第1の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の分析結果の第3の例を示す図
【
図16】第1の実施例のデューティ38%のパルス信号で駆動した際の分析結果の第2の例を示す図
【
図17】第2の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第1の例を示す図
【
図18】第2の実施例の断線時の駆動電圧振幅の周波数特性変化の例を示す図
【
図19】第2の実施例の断線時の駆動電圧波形の変化の例を示す図
【
図20】第2の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の分析結果の例を示す図
【
図21】第2の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第2の例を示す図
【
図22】第3の実施例の振動型アクチュエータの振動体の構成を示す図
【
図23】第3の実施例の振動体の振動モードを示す図
【
図24】第3の実施例の振動型アクチュエータの構成例を示す図
【
図25】第3の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図
【
図26】第3の実施例の断線時の駆動電圧振幅の周波数特性変化の例を示す図
【
図27】第3の実施例の断線時の駆動電圧波形の変化を示す図
【
図28】第3の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の分析結果の例を示す図
【
図29】第3の実施例のCPU15の動作例を示すフローチャート
【
図30】第3の実施例のCPU15の波形分析、断線判定、振動振幅制御の動作例を示すフローチャート
【
図31】第4の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図
【
図32】第4の実施例の断線時の駆動電流の周波数特性変化の例を示す図
【
図33】第4の実施例のデューティ50%のパルス信号で駆動した際の分析結果の例を示す図
【
図34】第4の実施例のCPU15の波形分析、断線判定、振動振幅制御の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態の一例は、指令信号を出力する制御部と、指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットを備えている。さらには、駆動信号を分析して分析結果を出力する駆動信号分析手段と、分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する判定手段を備える振動型駆動装置である。
【0012】
本発明を実施するための形態の他の一例は、以下のような制御方法である。すなわち制御部が指令信号を駆動部へ出力し、前記指令信号に基づき駆動部が出力した駆動信号によって2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットが振動する。それとともに、前記駆動信号を分析して分析結果を出力し、前記分析結果に基づき前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する振動型駆動装置の制御方法である。
【0013】
当該構成によって、複数の振動体を連ねる振動型アクチュエータにおいて通常の駆動中に振動体の断線を検知することができる。以下、図面を参照しつつ詳述する。
【実施例1】
【0014】
図1は第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図である。1、2、3は振動体、5、6、7は1次側のインダクタを直列に接続したトランスであり、トランス5、6、7の2次側に振動体1、2、3をそれぞれ並列に接続した点線で囲った部分は振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ10の内部回路を示している。各振動体に並列に接続されたトランスの2次側コイルのインダクタンス値は、振動型アクチュエータ10の共振周波数に近い所定の周波数でマッチングされている。
【0015】
即ち、マッチング周波数をF0、制動容量値をC0、トランスの2次側コイルのインダクタンス値をL0とすると、これらの関係は数式1で表される。
【0016】
【数1】
12は周波数指令に応じたパルス信号を出力する矩形電圧生成手段であり、インダクタとコンデンサの直列回路で構成される波形整形手段11を介して駆動電圧を振動型アクチュエータ10に出力している。13は振動型アクチュエータ10に流れる電流を計測する為の抵抗で、振動体1、2、3の振動速度に比例した電圧を出力する。したがって振動型アクチュエータ10の全体を代表した電圧の値を抵抗13の出力から検出できる。
【0017】
尚、振動体の振幅は正確にはこの振動速度を時間で積分した値に比例するが、振動速度の振幅は概ね振動振幅に比例するので以下の実施例では振動速度信号の振幅を制御することで振動振幅を制御している。
【0018】
14は抵抗13で検出された振動速度信号の振幅を検出する為の振幅検出手段、15は不図示の指令手段からの指令に応じて振動型アクチュエータ10の振動振幅指令を出力する公知のCPUである。16は振動振幅指令と振幅検出手段14の出力を比較する振幅比較手段、17は振幅比較手段16の出力に応じて矩形電圧生成手段12に対して周波数指令を出力する振幅制御手段である。18は振動型アクチュエータ10の駆動電圧の波形を分析する駆動信号分析手段であって、制御部であるCPU15は駆動信号分析手段18の波形分析結果に応じてON-OFF指令等の指令信号を出力する。この指令信号に基づき、駆動部は駆動信号を2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットに出力する。
【0019】
制御部であるCPU15はON-OFF指令等の指令信号を、駆動部である矩形電圧生成手段12に出力し、振動型アクチュエータ10の駆動・停止等の動作を制御している。
【0020】
図1に例示した振動体ユニットは、1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列に振動体を接続した構成であり、複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されている。加えて、矩形電圧生成手段と振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備えている。
【0021】
このように、2つ以上の振動体が連なって振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ10が構成されており、制御部としてのCPU15が発する共通の指令信号により、振動体がそれぞれ駆動するように構成されている。
【0022】
ここで本実施例の振動型アクチュエータの第1の例を示す。
図2は3つの振動体を円柱シャフトの外周に接触させ、円柱シャフトを回転させる振動型アクチュエータの構造を示す図である。1、2、3は縦方向(矢印の方向)に振動する振動体で4は円柱シャフトである。本実施例では振動体1、2、3は円柱シャフト4の円周に120°毎に略均等に配置されている。振動体1、2、3を加振して縦方向の振動を励起することによって円柱シャフト4は時計周りに回転する。円柱シャフトは2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットに接する共通の接触体に相当し、振動体1,2,3の駆動により発生した合力の方向に振動体に対して相対移動する。
【0023】
図3は振動型アクチュエータ10内の電気的接続を示す図である。5、6、7はトランスで、トランス5、6、7の2次側コイルが振動体1、2、3に接合された圧電体に並列に接続されている。8は振動型アクチュエータ10に交流電圧を入力する為のコネクタで、トランス5、6、7の1次側コイルを直列接続し、その両端が接続されている。9はドーナツ状の中空ケースで、上記振動体が収められ、これらが一体となり複数の振動体が連なった振動型アクチュエータ10を構成している。
【0024】
また、振動体1、2、3はケース9の円柱シャフト4を通す中空円筒部に、120°毎に円柱シャフト4に加圧接触される突出部を持ち、不図示のバネ構造を含む支持部材によって一定の加圧力で円柱シャフト4に押し当てられている。次にCPU15の動作について説明する。CPU15は不図示の指令手段からの速度指令に応じて速度指令に対応する振動振幅のテーブルを元に振動振幅に関連する指令信号を出力する。駆動中に定期的に駆動信号分析手段18の分析結果をモニタし、分析結果が所定の範囲外であれば振動体1、2、3のいずれかが断線したと判定し、振動振幅指令を0にして振動型アクチュエータを停止する。さらには停止と共に不図示の指令手段に断線発生を知らせるように動作してもよい。
【0025】
次に駆動信号分析手段18の動作について説明する。
図4は振動型アクチュエータ10の振動体の接続が断線した時の駆動電圧振幅の周波数特性の変化を示している。矩形電圧生成手段12が、正弦波状の電圧信号である駆動信号を出力したと仮定して周波数を掃引し駆動電圧の振幅を測定したものである。本実施形態における振動型アクチュエータ10の駆動周波数の範囲は概ね93kHzから98kHzの間である。
【0026】
図4中、実線が断線無し、破線が振動体の1つに連結する配線が断線、一点鎖線が2つの振動体のそれぞれに連結する配線が断線、点線が全ての振動体のそれぞれに連結する配線が断線した場合である。
図4中、F
1は通常駆動で用いる周波数範囲内のある駆動電圧波形の基本波の周波数、F
2はその2次の高調波の周波数、F
3はその3次の高調波の周波数を示している。
図4の各次数の電圧振幅を比較すると、断線の数によって次数間の振幅の比が異なり波形が変化している事がわかる。また駆動電圧の3次の高調波の周波数F
3が断線無しの時の周波数特性の谷の最下点の周波数(310kHz付近)の近傍である為、3次の高調波の振幅が断線時に大きく変化しているため断線時の波形変化を大きくしている。
【0027】
図5に駆動電圧の波形の変化を示す。
図5(a)は矩形電圧生成手段12がデューティ50%のパルス信号を出力した場合、
図5(b)は矩形電圧生成手段12がデューティ38%のパルス信号を出力した場合を示している。実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。
【0028】
図5(a)、
図5(b)とも断線が発生すると滑らかな波形の一部が急峻に変化し、矩形波が重畳している様子がよくわかる。また断線の数が増えると急峻な波形が大きくなる一方で振幅は小さくなっており、重畳される矩形波成分の割合が増加していることがわかる。
【0029】
図6は矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが50%の時の駆動信号分析手段18の波形分析結果の例を示している。
図6(a)、(b)は駆動電圧の周波数を変えて駆動電圧の「絶対値の平均値」と実効値を元に計算したグラフである。
図6(a)は波形率(「絶対値の平均値」/実効値)、
図6(b)は実効値―「絶対値の平均値」の結果である。
【0030】
交流信号の実効値は矩形波に近いほど交流信号の「絶対値の平均値」に近づいていくので、断線数の増加によって重畳される矩形波成分が増加すると波形率は1に近づいてゆき、実効値―「絶対値の平均値」は減少している。
【0031】
このように分析する波形は、駆動電圧の周波数に対する駆動電圧の絶対値の平均値の波形、あるいは駆動電圧の周波数に対する駆動電圧の実効値の波形であってもよい。
【0032】
図6(c)、(d)は駆動電圧の高調波の振幅から計算したグラフである。
図6(c)は高周波成分の度合いを評価する為の全高調波歪率(基本波以外の高周波成分(高調波成分)の振幅を基本波の振幅で割った値)、
図6(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。基本波や高調波の振幅の計測方法としては、公知のFFT(高速フーリエ変換)を用いる方法の他以下の方法がある。すなわち、ローパスフィルタを使って基本波と高周波成分(高調波成分)を分離してそれぞれの振幅を計測する方法、バンドパスフィルタで特定の次数の高調波を抜き出して振幅を計測する方法等がある。また、本実施例では駆動信号分析手段18を使って波形の分析を行ったが、不図示のA/D変換器を用いて駆動電圧の時系列波形をCPU15に読み込み、FFT等の演算を用いて波形分析を行っても良い。その場合、A/D変換器で入力する前にローパスフィルタで5次以上の高調波を減衰させてから入力することで、A/D変換器のサンプリング周波数を下げることが出来る。波形の変化には3次以下の高調波の影響が大きいので、3次の高調波を検出するのに十分なサンプリング周波数(例えば基本波の12倍以上の周波数)でサンプリングするのが望ましい。このように、駆動電圧の周波数に対する3次の高調波の振幅と基本波の振幅の波形から分析してもよい。
【0033】
図4の駆動電圧振幅の周波数特性より矩形波の2次以上の高調波成分は断線によってほぼ増加しているので、高調波歪率及び3次高調波(F
3近傍の周波数)の振幅を基本波(F
1近傍の周波数)の振幅で割った値は断線数が増えるに従って増加している。
【0034】
断線の有無を判定する閾値を
図6(a)、(b)、(c)、(d)のそれぞれのグラフに長鎖線で示した。この閾値を用いれば各波形分析計算の結果から94kHzから97kHzまでのどの周波数で駆動中であっても、断線の有無の判定が可能である。
【0035】
図7は矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが38%の時の駆動信号分析手段18の波形分析結果の例を示している。
図7(a)、(b)は駆動電圧の周波数を変えて駆動電圧の「絶対値の平均値」と実効値を元に計算したグラフである。
図7(a)は波形率(「絶対値の平均値」/実効値)、
図7(b)は実効値―「絶対値の平均値」の結果である。
図7(c)、(d)は駆動電圧の高調波の振幅から計算したグラフである。
図7(c)は全高調波歪率(基本波以外の高周波成分(高調波成分)の振幅を基本波の振幅で割った値)、
図7(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。
【0036】
図7(a)、(b)の分析結果は断線によって増加又は減少方向に一様に変化しているが、断線0と断線1の結果が近接しており、間に閾値を設けても断線判定の信頼性が低い。
図7(c)、(d)の分析結果は断線0と断線1の間隙が十分あるので断線の有無の判定が比較的容易である。
【0037】
図8は
図6を基に矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが50%の時の周波数を所定周波数に固定した時の断線個数に対する分析結果の変化を示したグラフである。
図8(a)は波形率、
図8(b)は実効値―「絶対値の平均値」、
図8(c)は全高調波歪率、
図8(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。94kHzから97kHzの周波数範囲において概ね
図8の様に断線の数によって各値が一様に変化しているので、断線の数を求める事も可能である。
【0038】
図9は
図7を基に矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが38%の時の周波数を所定周波数に固定した時の断線個数に対する分析結果の変化を示したグラフである。
図9(a)は波形率、
図9(b)は実効値―「絶対値の平均値」、
図9(c)は全高調波歪率、
図9(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。
【0039】
図7の説明と同様に
図9(a)、(b)の分析結果は断線によって増加又は減少方向に一様に変化しているが、断線数間の結果が近接しており、断線の数を求めても誤差が大きくなる可能性がある。
図9(c)、(d)の分析結果は断線0と断線1の間隙が十分あるのでデューティ50%の場合と同様に断線の数を求める事が可能である。
【0040】
この様にデューティ50%とデューティ38%の分析結果に大きな違いが発生するのは、パルス信号の2次と3次の高調波の振幅比が異なるからである。
図4の駆動電圧振幅の周波数特性は2次と3次の高調波の周波数周辺で断線による特性変化が大きいため、パルス信号の2次と3次の高調波の振幅比の違いが分析結果の違いに影響している。このように駆動条件(デューティや駆動周波数)によって分析結果が変わるので駆動条件が変化するアプリケーションに於いては、駆動条件によって波形分析方法切り替える事は有効である。
【0041】
図10は
図1の振動型アクチュエータの駆動回路の波形整形手段11をインダクタだけの波形整形手段19に変えた場合の構成を示している。CPU15の動作は上記例と変わらないが、振動型アクチュエータ10の振動体が断線した時の駆動電圧の振幅の周波数特性の変化が異なるので、駆動信号分析手段18の分析結果が異なっている。
【0042】
図11は
図10の振動型アクチュエータの駆動回路における振動型アクチュエータ10の振動体の接続が断線した時の駆動電圧の振幅の周波数特性の変化を示す図である。
【0043】
波形整形手段に直流カットの為のコンデンサが無い為に、
図4の特性と比較して低周波域の駆動電圧振幅の周波数特性が増加している。
【0044】
図12は矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが50%の時の駆動信号分析手段18による駆動電圧の波形分析結果の例を示している。
図12(a)は波形率、
図12(b)は実効値―「絶対値の平均値」、
図12(c)は全高調波歪率(基本波以外の高調波成分の振幅を基本波の振幅で割った値)、
図12(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。
図11のグラフにおいて全て断線した断線3以外の特性は高周波域(F
2以上の周波数)での振幅変化が少ない。それに対して周波数が90kHzから100kHzに近づくほど振幅が大きくなっている為、基本波(F
1近傍)の周波数が100kHzに近いほど断線による波形の変化が少なくなっている。その為
図12(a)、(c)、(d)の分析結果は周波数が高いほど断線0、断線1、断線2の変化が少なくなっている。
【0045】
図12の各分析結果は97kHz近傍で断線による変化が少なくなっているが、それぞれ断線の数によって各値が一様に変化している。したがって、あらかじめ断線によって発生する駆動電圧の振幅の特性を計測し、各分析結果を周波数毎の比較テーブルとして用意しておくことで断線の有無や断線の数を求める事が可能である。
【0046】
図13は振動型アクチュエータの構成が異なる場合の例で振動型アクチュエータの駆動回路の第3の例を示す図である。上記例では振動体1、2、3と並列にトランス5、6、7が接続され振動型アクチュエータ10を構成していた。本例では振動体1、2、3にインダクタ20、21、22が並列に接続されると共に振動体1、2、3は直列に接続され、振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ23を構成している。すなわち並列に接続された一対のインダクタと振動体が、直列に複数対が連なる前記振動体ユニットを構成している。
【0047】
各部の動作は上記例と同様なので駆動信号分析手段18の動作についてのみ説明する。
【0048】
図14は振動型アクチュエータ23の振動体の接続が断線した時の駆動電圧の振幅の周波数特性の変化を示している。上記説明と同様に矩形電圧生成手段12が正弦波を出力したと仮定して周波数を掃引し駆動電圧の振幅を測定したものである。
【0049】
実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。F1は通常駆動で使用するある駆動電圧波形の基本波の周波数、F2は2次の高調波の周波数、F3は3次の高調波の周波数を示している。
【0050】
図15は矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが50%の時の駆動信号分析手段18の波形分析結果の例を示している。
図15(a)は波形率、
図15(b)は実効値―「絶対値の平均値」、
図15(c)は全高調波歪率(基本波以外の高調波成分の振幅を基本波の振幅で割った値)、
図15(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。各分析結果とも断線0と断線1の間隙が大きいので断線の有無の判定は容易である。各グラフの長鎖線は断線判定のための閾値である。
【0051】
図16は矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが38%の時の駆動信号分析手段18による駆動電圧の波形分析結果の例を示している。
図16(a)は波形率、
図16(b)は実効値―「絶対値の平均値」、
図16(c)は全高調波歪率(基本波以外の高調波成分の振幅を基本波の振幅で割った値)、
図16(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。
図16(c)の全高調波歪率以外の特性は断線数間の間隙が狭くなった以外は
図15のデューティ50%の場合と同じで断線の有無の判定が容易である。しかし、
図16(c)の全高調波歪率は
図15(c)と比較して断線0と断線1の順番が入れ替わっている。全高調波歪率が減少するということは基本波成分に対して相対的に高周波成分が減少する事を示しており、
図16(c)の特性は断線1によって駆動電圧の高周波成分が減少している事を示している。従って
図16(c)の全高調波歪率を用いて断線の有無を判定するには図の2つの長鎖線の様に大小2つの閾値が必要である。また
図16のどの分析手法でも94kHzから97kHzの範囲内で断線数間のグラフの交差は無いので、あらかじめ断線による駆動電圧波形の分析結果を比較テーブルとして作成しておき、それに基づいて判定すれば断線の判定が可能である。
【0052】
上記説明にて異なる回路、異なるデューティ、異なる駆動周波数では断線による駆動電圧波形への影響が異なる事を示した。
図16の説明では、断線した場合でも高周波成分が減少する場合があり、駆動条件によっては単純に高周波成分の有無だけでは断線の判定が出来ない事を示した。また、あらかじめ断線による駆動電圧波形の分析結果を比較テーブルとして作成しておけば周波数指令と分析結果と比較テーブルを用い、それに基づいて判定すれば断線の判定が可能である事を示した。
【0053】
また、上記説明では4つの波形分析手法の例を用いて断線の判定方法を説明したが波形によって出力が変化する演算手法や測定方法であれば使用することが可能である。例えば断線によって急峻な波形が現れ、断線数によって大きさが変化するので、単位時間あたりの駆動電圧の変化の最大値を用いても良い。また特定の次数の高調波振幅によって断線を判定することも可能である。
【0054】
尚、上記説明では駆動電圧として矩形電圧生成手段12の出力であるパルス信号を用いたが他の波形でも良い。三角波、鋸波、公知のD級アンプの出力であるPWM変調波であっても5次以下の比較的低次の高調波を多く含む波形であれば、断線による波形変化が比較的大きい為、断線の検知に利用可能である。
【0055】
このように駆動信号分析手段は波形整形手段の出力電圧又は出力電流の波形を分析し、波形率、高調波歪率、実効値と絶対値の平均値との差、高調波振幅のいずれかに応じた値を検出するとよい。なお波形整形手段はあるほうがより望ましいが必須ではなく直接に信号処理してもよい。
【実施例2】
【0056】
図17は第2の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図である。上記実施例の振動型アクチュエータは振動体1、2、3とトランス5、6、7が並列に接続されていたが、本実施例ではマッチング調整用コンデンサ24、25、26が並列に追加接続されている。各部の動作は実施例1と同じなので説明は省略し、駆動電圧波形の分析及び断線の判定について説明する。
【0057】
各振動体に並列に接続されたコンデンサはマッチング周波数調整用のコンデンサで、その静電容量値C1は、マッチング周波数をF0、制動容量値をC0、トランスの2次側コイルのインダクタンス値をL0とすると、これらの関係は数式2で表される。
【0058】
【数2】
トランスの2次側コイルのインダクタンス値L
0や制動容量値C
0の値はバラツキが大きいので、マッチング調整用コンデンサ(静電容量値C
1)を並列に接続することでマッチング周波数F
0を揃えるようにしている。
【0059】
次に、振動体が断線した場合の駆動電圧波形について上記実施例との違いについて説明する。回路構成としては、上記実施例では振動体の接続が断線すると振動体に並列に接続されたトランス又はインダクタに並列に接続された静電容量成分が無くなるのに対して、本実施例ではマッチング調整用のコンデンサの接続が残る。そのため、断線によってトランスとマッチング調整用コンデンサとの並列共振系が現れ、駆動電圧波形にその影響が現れる。
【0060】
図18は
図17の振動型アクチュエータ27の振動体の接続が断線した時の駆動電圧の振幅の周波数特性の変化を示している。矩形電圧生成手段12が正弦波を出力したと仮定して周波数を掃引し駆動電圧の振幅を測定したものである。
【0061】
実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。F1は通常駆動で用いるある駆動電圧波形の基本波の周波数、F2は2次の高調波の周波数、F3は3次の高調波の周波数、F4は4次の高調波の周波数を示している。3次の高調波の周波数F3と4次の高調波の周波数F4の間のピーク特性は振動体の断線によって生じたマッチング調整用コンデンサとトランスの並列共振の影響である。また駆動電圧の3次の高調波の周波数F3が断線無しの時の周波数特性の谷の最下点の周波数(310kHz付近)の近傍である為、3次の高調波の振幅が断線時に大きく変化しているため断線時の波形変化を大きくしている。
【0062】
図19は矩形電圧生成手段12がデューティ50%のパルス信号を出力した場合の駆動電圧波形を示している。実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。断線が発生すると断線の数の増加に応じて正弦波が矩形波に近付いていることがわかる。
【0063】
図20は矩形電圧生成手段12の出力するパルス信号のデューティが50%の時の駆動信号分析手段18による駆動電圧の波形分析結果の例を示している。
図20(a)は波形率、
図20(b)は実効値―「絶対値の平均値」、
図20(c)は全高調波歪率(基本波以外の高調波成分の振幅を基本波の振幅で割った値)、
図20(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値を示すグラフである。
図20のすべての波形分析結果において断線0と断線1間の間隙が広く断線の有無の判定が容易である。
図20の長鎖線は振動型アクチュエータ27の駆動中に断線の有無を判定する為の閾値を示している。このように間隙が広くなった理由は
図18の駆動電圧振幅の周波数特性がマッチング調整用コンデンサとトランスの並列共振の影響で3次の高調波(F
3)付近での断線の有無による変化が大きいからである。このようにマッチング調整用コンデンサとトランスによる並列共振の周波数をパルス信号の低次の高調波の付近に設定する事で、断線の有無の判定を容易にすることが出来る。
【0064】
また上記実施例と同様にあらかじめ断線によって発生する駆動電圧の振幅の特性を計測して分析結果の比較テーブルを作成しておくことで、振動型アクチュエータ27の駆動中に分析結果と比較テーブルを用いて断線の有無や断線数を判定することが可能である。
【0065】
図21は第2の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第2の例を示す図である。
図17に示した例では振動体1、2、3にトランス5、6、7とマッチング調整用コンデンサ24、25、26が並列に接続しているのに対し、振動体1、2、3にインダクタ20、21、22とマッチング調整用コンデンサ24、25、26が並列接続している。マッチング調整用コンデンサ24、25、26はインダクタ20、21、22と隣接して不図示の回路基板上に実装され、振動体1、2、3はこの回路基板とはコネクタを介してフレキシブル基板で接続される。フレキシブル基板が屈曲を繰り返す用途や折り曲げる用途ではフレキシブル基板の断線のリスクが高くなる。
【0066】
マッチング調整用コンデンサの静電容量値C1は、マッチング周波数をF0、制動容量値をC0、インダクタのインダクタンス値をL0とすると、これらの関係は数式2で表される。振動体1、2、3、インダクタ20、21、22及びマッチング調整用コンデンサ24、25、26、の並直列回路は振動型アクチュエータ28を構成しており、矩形電圧生成手段12のパルス信号が波形整形手段11を介して印加される。振動型アクチュエータ28に流れる電流は抵抗13で電圧信号に変換され、振幅検出手段14に入力されている。各部の動作は実施例1と同じなので説明は省略する。
【0067】
また直列に接続する振動体の数が増えると、製造時にコネクタの差し込み不良等のリスクも増加する。差し込み不良も断線の一種であり、接触不良から完全にコネクタが脱落(断線)するまでの間で分析結果が断線0から断線1の状態に変化していく。その変化の過程で分析結果が閾値をよぎり、コネクタの差し込み不良等も検出することが可能である。
【0068】
また、上記説明では4つの波形分析手法を用いて説明したが波形によって出力が変化する方法であれば使用することが可能である。
【0069】
尚、上記説明では駆動電圧として矩形電圧生成手段12の出力であるパルス信号を用いたが他の波形でも良い。三角波、鋸波、公知のD級アンプの出力であるPWM変調波であっても5次以下の比較的低次の高調波を多く含む波形であれば、断線による波形変化が比較的大きい為、断線の検知に利用可能である。
【実施例3】
【0070】
図22は実施例3で用いる振動体の構成を示す図である。
図22(a)の48は導電性材料で作られた矩形状の弾性体で、表面に接触体に接触する突起が2つ設けられている。49は弾性体48の一部をなし、これを加振する為の圧電体である。
図22(b)は圧電体49に設けられた電極を示しており、電極31、32間は電気的に絶縁され、位相が独立して変化する2つの交流電圧が印加される。圧電体49の裏面は全面が電極となっており、電極31、32の一部に設けられた不図示のビアを介して表面から通電出来るように構成されている。
【0071】
図23は弾性体48の振動モードを示す図である。
図23(a)は、上記電極31と電極32に同相の交流電圧を印加した際に励起される振動モード(突き上げ振動モード)の振動形態で、
図23(b)は逆相の交流電圧を印加した際に励起される振動モード(送り振動モード)の振動形態である。
【0072】
即ち、印加する交流電圧の位相差を0°とすると、
図23(a)のモードが励起され、位相差を180°とすると、
図23(b)のモードが励起される。また、交流電圧の位相差を0°と180°の間(実際には0°から120°程度が使用される)にすると両方の振動モードが同時に励起され、弾性体48に設けられた突起に加圧接触された接触体が弾性体48の長方形の長手方向に移動する。
【0073】
図24は本実施例の直動型の振動型アクチュエータの構成を示す図である。具体的には、上下に振動体36、37の突起部を互いに向い合せに配置し、同様に直線上に振動体38まで振動体を上下ペアで5セット配置し、合計10個の振動体で上下方向から共通の接触体50を挟み矢印の方向に移動するよう構成したものである。
【0074】
図25は第3の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図である。第1及び第2の実施例の振動型アクチュエータの振動体の数が3個で駆動電圧の相数が1であったが、本実施例では振動体の数が10個で2相の駆動電圧で駆動する。10個の振動体36、37、…、38は不図示の導電性の弾性体がグランド電位に接続されている。
【0075】
振動体36には圧電体49に設けられた電極30、31が設けられトランス32、33にマッチング調整用コンデンサ34、35と共にそれぞれ並列に接続されている。トランス32の1次側にはトランス52、…、53の9個のトランスの1次側が直列に接続され、トランス52、…、53の2次側それぞれに振動体37、…、38の9個の振動体の一方の電極が並列接続されている。またトランス33の1次側には同様に9個のトランス54、…、55の1次側が直列に接続され、トランス54、…、55の2次側それぞれに振動体37、…、38の9個の振動体の他方の電極が並列接続されている。また10個の振動体36、37、…、38にはトランスと共に並列にマッチング調整用コンデンサが接続され、これら振動体、マッチング調整用コンデンサ、トランスからなる直列に接続された10組のユニットで振動型アクチュエータ51を構成している。
【0076】
40は2相のパルス信号を出力する矩形電圧生成手段であり、インダクタとコンデンサの直列回路で構成される波形整形手段11、39を介して駆動電圧を振動型アクチュエータ51に印加している。41及び42は振動型アクチュエータ51に流れる2相の電流をそれぞれ計測する為の抵抗で、振動体36、37、…、38の振動速度に比例した電圧を検出している。
【0077】
43は抵抗41、42で検出された振動速度を検出する為のA/D変換器で、CPU15に2相の電流信号(CurA、CurB)を時系列データとして入力している。CPU15は不図示の指令手段からの位置指令、A/D変換器43からの2相の電流信号、後述する駆動信号分析手段47の分析結果に基づいて位置指令、パルス幅指令、周波数指令を決定し、出力している。パルス幅指令及び周波数指令は矩形電圧生成手段40に入力され、出力する2相のパルス信号の周波数とパルス幅を設定している。CPU15の動作の詳細な説明は後述する。
【0078】
45は共通の接触体50の位置を検出する為の公知のリニアエンコーダであり、46はCPU15からの位置指令とリニアエンコーダ45が出力する位置信号の差を出力する位置比較手段である。44は位置比較手段46の出力に応じて矩形電圧生成手段40に位相差指令を出力する位置制御手段であり、上記2相のパルス信号の位相差を設定して接触体50の移動方向と速度を制御している。47は振動型アクチュエータ51の2相の駆動電圧の波形を分析する駆動信号分析手段であって、2相の駆動電圧の波形分析をそれぞれ行い、分析結果を出力している。
【0079】
図26は
図25の振動型アクチュエータ51の振動体の接続が断線した時の駆動電圧の振幅の周波数特性の変化を示している。矩形電圧生成手段40が正弦波を出力したと仮定して周波数を掃引し駆動電圧の振幅を測定したものである。実線が断線無し、点線が断線数1から10までの特性を示している。F
1は通常駆動中のある駆動電圧の基本波の周波数、F
2、F
3、F
4、F
5は2次から5次までの高調波の周波数示している。
図26の各高調波次数の周波数の電圧振幅を比較すると、断線の数によって次数間の振幅の比が異なっており波形が変化する事がわかる。特に3次の高調波の周波数(F
3)付近は断線の有無による駆動電圧振幅の変化が大きい事を示している。また駆動電圧の3次の高調波の周波数F
3が断線無しの時の周波数特性の谷の最下点の周波数(290kHz付近)の近傍である為、3次の高調波の振幅が断線時に大きく変化しているため断線時の波形変化を大きくしている。
【0080】
図27に駆動電圧の波形の変化を示す。実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。断線が発生すると正弦波の頂点がつぶれ、断線の数の増加に応じて正弦波が矩形波に近付いていることがわかる。
【0081】
図28は矩形電圧生成手段40の出力するパルス信号のデューティが50%の時の駆動信号分析手段47による駆動電圧の波形分析結果の例を示している。
図28(a)は波形率(絶対値の平均値/実効値)、
図28(b)は実効値―(絶対値の平均値)、
図28(c)は全高調波歪率、
図28(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値である。
【0082】
図28のすべての波形分析結果において断線0と断線1間の間隙が広く断線の有無の判定が容易である。
図28の長鎖線は振動型アクチュエータ51の駆動中に断線の有無を判定する為の閾値を示している。10個の振動体の1つが断線しただけであっても十分断線の有無を判定可能であることがわかる。
【0083】
ではここでCPU15の詳細な動作についてフローチャートを用いて説明する。CPU15はA/D変換器43からの2相の電流信号に基づく振動振幅制御と、駆動信号分析手段47の波形分析結果に基づく振動型アクチュエータ51の駆動・停止等の動作の制御を行っている。まず波形分析結果に基づく振動型アクチュエータ51の駆動・停止等の動作について説明する。
【0084】
本実施形態にかかる振動型駆動装置の制御方法は、以下のものである。すなわち制御部が指令信号を駆動部へ出力し、駆動部が出力した駆動信号によって2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットが振動する。それとともに、駆動信号を分析して分析結果を出力し、分析結果に基づき振動体に連結する配線の断線の有無を判定するものである。
【0085】
図29は断線結果によって振動型アクチュエータ51の異なる駆動シーケンスを実行するCPU15の動作の例を示すフローチャートである。接触体50の位置制御動作のシーケンスを示しており、断線の数(N)によって異なる動作シーケンスを選択しており、フローチャートを用いて各動作シーケンスについて説明する。位置制御動作は不図示の指令手段から新たな位置指令POS_Cが入力されると開始する。最初にそれまでに発生した振動子の断線数Nを確認する。断線数Nが2以上なら断線状態表示用LEDを赤に点灯して位置制御動作を終了する。断線数Nが1以下なら、振動型アクチュエータ51に印加する駆動電圧を生成する為に、パルス幅指令PW_Cを所定のパルス幅PW0に、周波数指令Frqを初期周波数F
0に設定する。そして振幅指令AMP_Cを所定の振幅AMP0に設定し、駆動タイマーTを0に初期化する。すると矩形電圧生成手段40からパルス信号が出力され、振動型アクチュエータ51の移動が開始する。次に波形分析、断線判定、振動振幅制御を行う。振動振幅制御の詳細については後述する。断線判定によって決定した断線数Nが0であれば断線状態表示用LEDを緑に点灯し、そのまま駆動タイマーTがT1になるか断線数Nが1以上になるまで波形分析、断線判定、振動振幅制御を繰り返す。その間に不図示の指令手段から位置指令POS_Cが更新されれば駆動タイマーTを0に初期化して駆動タイマーTがT1になるまで波形分析、断線判定、振動振幅制御を繰り返す。駆動タイマーTがT1になったらパルス幅指令PW_Cを0にし、振動振幅指令AMP_Cも0にして位置制御動作を終了する。
【0086】
この駆動タイマーTがT1になるまでの間に断線数Nが1以上になったら断線数Nによって異なる動作が実行される。断線数Nが1なら断線状態表示用LEDを黄に点灯して断線数Nが0の時と同じ動作を継続する。断線数Nが2ならば断線状態表示用LEDを橙に点灯し、位置指令POS_Cの更新は行わないが駆動タイマーTがT1になるまで断線数Nが0の場合と同じ動作が継続される。断線数Nが3以上なら断線状態表示用LEDを赤に点灯してパルス幅指令PW_Cを0にし、振動振幅指令AMP_Cも0にして位置制御動作を終了する。
【0087】
振動型アクチュエータ51のように振動体ユニットを複数直列に接続した振動型アクチュエータはいくつかの振動体が断線しても駆動を継続可能な場合もあるので、アプリケーションによっては駆動を継続する場合もある。また、断線数が少なくても駆動を継続すると周辺機構にダメージが蓄積していくので、駆動を継続する場合でも累積駆動時間が一定以上になったら駆動禁止にする等の対応をする場合もある。
【0088】
次に波形分析、断線判定、振動振幅制御の動作について説明する。
【0089】
図30は波形分析、断線判定、振動振幅制御動作のフローチャートである。最初に割り込み処理によって別途A/D変換器43から入力された2相の時系列の電流信号CurA(t)とCurB(t)を加算して信号Cur(t)を生成する。これは振動体の突き上げ振動モードの振動速度(振動振幅)に相当する。次にローパスフィルタ演算によって1次(基本波)の信号を抽出して1次の振幅Amp(1)を求める。次に駆動信号分析手段47から入力された
図28の分析手法に基づく分析結果(例えば波形率)から2相それぞれの断線数を求め合計の断線数Nを求める。次に振動振幅指令Amp_Cと1次の振幅Amp(1)を比較してAmp(1)がAmp_Cより小さいなら周波数指令FrqからdFだけ周波数を低く設定する。Amp(1)がAmp_Cより大きいなら周波数指令FrqにdFだけ周波数を高く設定する。また周波数指令は最小周波数Frq_minと最大周波数Frq_max内に収まるように制限される。
【0090】
この様にして振動型アクチュエータ51の突き上げ振動モードの振動振幅は振動振幅指令Amp_Cに制御され、接触体50と振動体間の接触状態を所望の状態に保っている。尚、本実施例では2相の駆動電圧の波形分析を個別に行っているが、駆動電圧を加算した信号を元に波形分析しても良い。
【0091】
また、上記説明では4つの波形分析手法を用いて説明したが波形によって出力が変化する方法であれば使用することが可能である。
【0092】
尚、上記説明では駆動電圧として矩形電圧生成手段12の出力であるパルス信号を用いたが他の波形でも良い。三角波、鋸波、公知のD級アンプの出力であるPWM変調波であっても5次以下の比較的低次の高調波を多く含む波形であれば、断線による波形変化が比較的大きい為、断線の検知に利用可能である。
【実施例4】
【0093】
上記実施例は駆動電圧の波形を分析する事で振動型アクチュエータの振動体の断線を検知したが、振動型アクチュエータへの流入電流の波形を分析する事でも断線を検知可能である。
図31は
図25の振動型アクチュエータの駆動回路の駆動信号分析手段47を駆動電圧ではなく抵抗41、42の端子電圧(振動型アクチュエータへの流入電流)の波形を分析するように変更したものである。各部の動作の説明は実施例3と同じなので説明は省略し、波形分析動作について説明する。
【0094】
図32は
図31の振動型アクチュエータ51の振動体の接続が断線した時の抵抗41又は抵抗42の端子電圧(振動型アクチュエータへの流入電流)の振幅の周波数特性の変化を示している。実線が断線無し、点線が断線数1から10までの特性を示している。F
1は通常駆動中のある駆動電圧波形の基本波の周波数、F
2、F
3、F
4、F
5は2次から5次までの高調波の周波数示している。
図32の各高調波次数の周波数の流入電流の振幅を比較すると、断線の数によって次数間の振幅の比が異なり波形が変化している事がわかる。特に3次の高調波の周波数(F
3)付近は断線の有無による流入電流振幅の変化が大きい事を示している。
図26の駆動電圧振幅の特性と比較して特徴的なのが310kHz付近の断線の数によらずに一致する負のピーク特性である。これは振動体と並列に接続したトランスの2次側とマッチング調整用コンデンサによる並列共振によって生じている。
【0095】
図33は矩形電圧生成手段40の出力するパルス信号のデューティが50%の時の駆動信号分析手段47による振動型アクチュエータ51への流入電流の波形分析結果の例を示している。
図33(a)は波形率(絶対値の平均値/実効値)、
図33(b)は実効値―(絶対値の平均値)、
図33(c)は全高調波歪率、
図33(d)は3次の高調波の振幅を基本波の振幅で割った値である。
【0096】
図33のすべての波形分析結果において断線0と断線1間の断線の有無の判定は可能であるが、分析結果が周波数によって値が大きく変化するので、駆動周波数によって断線判定の閾値を変える必要がある。あらかじめ断線によって発生する振動型アクチュエータへの流入電流の振幅の特性を計測して分析結果の比較テーブルを作成しておく事が必要である。そうすることで上記実施例と同様に振動型アクチュエータ51の駆動中に分析結果と比較テーブルを用いて断線の有無や断線数を判定することが出来る。
【0097】
断線結果に応じて異なるシーケンスで駆動・停止を制御するCPU15の動作は
図29のフローチャートに従っており、上記説明と同じなので説明は省略する。
【0098】
次に波形分析、断線判定、振動振幅制御の動作について説明する。
図34は波形分析、断線判定、振動振幅制御動作のフローチャートである。最初に割り込み処理によって別途A/D変換器43から入力された2相の時系列の電流信号CurA(t)とCurB(t)を加算して信号Cur(t)を生成する。これは振動体の突き上げ振動モードの振動速度(振動振幅)に相当する。次にバンドパスフィルタ演算によって1次(基本波)と3次の高調波信号を抽出して1次の振幅Amp(1)と3次の振幅Amp(3)を求める。次にAmp(3)/Amp(1)を求め、周波数指令Frqとあらかじめ求めてあった
図31(d)の関係から断線数Nを求める。次に振動振幅指令Amp_Cと1次の振幅Amp(1)を比較してAmp(1)がAmp_Cより小さいなら周波数指令FrqからdFだけ周波数を低く設定する。Amp(1)がAmp_Cより大きいなら周波数指令FrqにdFだけ周波数を高く設定する。また周波数指令は最小周波数Frq_minと最大周波数Frq_max内に収まるように制限される。この様にして振動型アクチュエータ51の突き上げ振動モードの振動振幅は振動振幅指令Amp_Cに制御される。
【0099】
このように本実施例は振動振幅の制御と断線分析の両方とも振動型アクチュエータ51に流れる電流信号を用いているので回路規模を小さくすることが出来る。
【0100】
このように前記分析結果は、駆動電圧の波形あるいは前記振動体ユニットに流入する電流の波形を分析した結果である。
【0101】
また、上記説明では4つの波形分析手法を用いて説明したが波形によって出力が変化する方法であれば使用することが可能である。
【0102】
また上記説明では振動体には圧電体が接合されているとしたが、振動体自体を圧電体で構築しても良い。また圧電体は積層圧電体であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
上記の振動型駆動装置はさまざまな機器へと適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1、2、3、36、37、38、48 振動体
4 円柱シャフト
5、6、7、32、33、52、53、54、55 トランス
10、23、27、28、51 振動型アクチュエータ
11、19 波形整形手段
12、40 矩形電圧生成手段
13、41、42 抵抗
14 振幅検出手段
15 CPU
16 振幅比較手段
17 振幅制御手段
18、39、47 駆動信号分析手段
20、21、22 インダクタ
24、25、26、34、35 マッチング調整用コンデンサ
43 A/D変換器
44 位置制御手段
46 位置比較手段
49 圧電体
50 共通の接触体