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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】振動型駆動装置及び駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/14 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
H02N2/14
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020177104
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068435
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健一
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-162260(JP,A)
【文献】特開2017-175696(JP,A)
【文献】特開2003-340371(JP,A)
【文献】特開平09-318688(JP,A)
【文献】特開平09-294335(JP,A)
【文献】特開2019-198199(JP,A)
【文献】特開2005-102431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0067024(US,A1)
【文献】特開2018-078769(JP,A)
【文献】特開2017-060357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記振動体ユニットに流れる電流信号を検知する電流検知手段を備え、
前記振動体ユニットは、1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列にコンデンサと振動体を接続し、前記複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されており、
前記駆動部は、所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備え、起動動作の際に前記パルス信号の周波数を掃引し、前記パルス信号の高調波に相当する電流信号を検知し、
前記コンデンサの静電容量値は、断線時に前記振動体ユニットに流れる電流の周波数特性に現れる共振特性の谷の底の周波数と断線無しの場合の起動周波数の整数倍の周波数を近接するように構成されており、
前記制御部は、前記振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する前記振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、前記基本波の高調波に相当する前記振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する振動型駆動装置。
【請求項2】
指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記振動体ユニットに流れる電流信号を検知する電流検知手段を備え、
前記振動体ユニットは、並列に接続された1セットのインダクタとコンデンサと振動体が、直列に複数セットが連なるよう構成され、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段と、を備え起動動作の際に前記パルス信号の周波数を掃引し、前記パルス信号の高調波に相当する電流信号を検知し、
前記コンデンサの静電容量値は、断線時に前記振動体ユニットに流れる電流の周波数特性に現れる共振特性の谷の底の周波数と断線無しの場合の起動周波数の整数倍の周波数を近接するように構成されており、
前記制御部は、前記振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する前記振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、前記基本波の高調波に相当する前記振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定する振動型駆動装置。
【請求項3】
前記電流信号の前記基本波の成分をカットするハイパスフィルタ又は前記基本波に対する特定の次数の高調波を検出するバンドパスフィルタのいずれかを含む請求項1または2に記載の振動型駆動装置。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタの通過帯域は少なくともパルス信号の2次及び3次の高調波のいずれか一方を含む請求項記載の振動型駆動装置。
【請求項5】
前記整数倍は2または3倍である請求項1または2記載の振動型駆動装置。
【請求項6】
前記矩形電圧生成手段の出力するパルス信号を所定のパルス幅に設定し、周波数を所定周波数から所定の周波数まで周波数の掃引を行う請求項または記載の振動型駆動装置。
【請求項7】
前記矩形電圧生成手段の出力するパルス信号を所定のパルス幅に設定し、前記振動体ユニットに流れる1相以上の電流のいずれかの相の信号又はいくつかの相の信号を加算した前記電流信号の基本波成分の振幅が所定振幅に達するまで周波数の掃引を行う請求項または記載の振動型駆動装置。
【請求項8】
前記制御は、いずれかの相の信号又はいくつかの相を加算した信号の高調波の振幅を出力し、前記振幅が所定値より小さい場合に断線有りと判定する請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項9】
前記制御は、いずれかの相の信号又はいくつかの相を加算した信号の高調波の振幅の変化率を出力し、断線判定手段は前記振幅の変化率の大きさが所定値より大きい場合に断線有りと判定する請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項10】
前記制御は、いずれかの相の信号又はいくつかの相を加算した電流信号の高調波の振幅の最大値とその際の周波数を出力し、断線判定手段は前記最大値が所定の値より大きい場合に断線有りと判定すると共に、前記周波数によって断線数を判定する請求項1乃至のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項11】
前記振動型駆動装置の起動動作の際における前記パルス信号のパルス幅は、前記振動型駆動装置の通常の駆動時のパルス幅より小さいパルス幅とする請求項またはに記載の振動型駆動装置。
【請求項12】
前記パルス信号の基本波の電流振幅に基づき前記振動体に連結する配線の断線数を判定する請求項記載の振動型駆動装置。
【請求項13】
前記駆動信号の掃引を開始する際の周波数は前記振動体の共振周波数より高く振動体の断線の無い時の前記振動体ユニットに流れる電流の周波数特性のピークの周波数より高い周波数である請求項12に記載の振動型駆動装置。
【請求項14】
前記パルス信号の高調波成分をカットするローパスフィルタ又は前記パルス信号の基本波を検出するバンドパスフィルタのいずれかを含む請求項12または13に記載の振動型駆動装置。
【請求項15】
前記起動動作のいずれかの相の信号又はいくつかの相を加算した信号の基本波の振幅の最大値とその際の周波数を出力し、前記周波数によって断線数を判定する請求項12乃至14のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項16】
前記起動動作の前記パルス信号のパルス幅は、通常の駆動時のパルス幅より小さいパルス幅とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
【請求項17】
前記振動体ユニットに接する共通の接触体を有する請求項1乃至16のいずれか1項記載の振動型駆動装置。
【請求項18】
前記接触体は円柱シャフトであり、前記円柱シャフトの円周に略均等に配置された3つの振動体を備えている請求項17に記載の振動型駆動装置。
【請求項19】
前記接触体および前記振動体を収める中空ケースをさらに備える請求項17または18に記載の振動型駆動装置。
【請求項20】
前記振動体は2つの突起を有する矩形状の弾性体と、圧電体を備える請求項1乃至19のいずれか1項記載の振動型駆動装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の振動型駆動装置を備えた機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
超音波振動を利用したアクチュエータの駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気-機械エネルギー変換素子(圧電素子、電歪素子等)によって加振される振動体を使った振動型アクチュエータにおいて、印加電圧を計測して振動体の断線等の不具合を検知する方法は知られている。例えば特許文献1にはインダクタを介して振動体に印加する交流電圧の高周波成分の発生の検出によって断線を検知する例が示されている。又特許文献2では昇圧用のトランスの特性によって変化する印加電圧の周波数特性のピーク特性のQ値やピーク周波数の変化の検出によって断線を検知する例が示されている。特許文献1のように単体の振動体の場合、断線による印加電圧の変化が大きく、高周波成分の発生によって断線の発生を検知できる。しかしインダクタ素子が並列接続された複数の振動体の直列接続や、複数のトランスの2次側に並列に振動体を接続し各トランスの1次側を直列に接続した直列接続型の振動体装置は、1つの振動体が断線しても直列接続の両端の印加電圧の波形変化は少ない。駆動周波数より高い周波数領域に現れる高周波成分は周波数によって増加したり減少したりするため、単純に高周波成分が発生したからと言って断線の有無を判定出来なかった。また断線した振動体の数を知ることも出来なかった。
【0003】
また特許文献2のようにトランスの2次側の周波数特性を利用して印加電圧の周波数特性のピーク特性に着目し、ピーク周波数やQ値を検出する方法を用いれば、個々の振動体の不具合を検知する事が出来る。しかし上記直列接続型の振動体装置においては、すべての振動体に印加される交流電圧を検出する必要があり、不具合箇所を検知する事が出来る反面回路規模が大きくなる欠点があった。また、高周波域での周波数掃引や疑似乱数を用いたピーク周波数及びQ値の検出を、通常の駆動電圧を印加している最中に別途高周波電圧を重畳して独立に行うと速度変動や異音の原因になりやすいという問題があった。
【0004】
複数の振動体を連ねる振動型ユニットにおいては、複数の振動体の内、1個の振動体の断線が発生したとしても他の振動体へ印加電圧は供給され、ある程度駆動出来るので断線しても駆動を継続できるという性質を持つ。しかし、断線した状態では他の振動体の負担が重くなる為、性能劣化が加速的に進む可能性があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5716624
【文献】特開2018-78769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、複数の振動体を連ねる振動体ユニットにおいて、振動体の断線の有無又は断線数を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する振動型駆動装置は、指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記振動体ユニットに流れる電流信号を検知する電流検知手段を備え、前記振動体ユニットは、1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列にコンデンサと振動体を接続し、前記複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されており、
前記駆動部は、所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備え、起動動作の際に前記パルス信号の周波数を掃引し、前記パルス信号の高調波に相当する電流信号を検知し、
前記コンデンサの静電容量値は、断線時に前記振動体ユニットに流れる電流の周波数特性に現れる共振特性の谷の底の周波数と断線無しの場合の起動周波数の整数倍の周波数を近接するように構成されており、
前記制御部は、前記振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する前記振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、前記基本波の高調波に相当する前記振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定するものである。
上記課題を解決するまた別の振動型駆動装置は、指令信号を出力する制御部と、
前記指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、
前記駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットと、
前記振動体ユニットに流れる電流信号を検知する電流検知手段を備え、
前記振動体ユニットは、並列に接続された1セットのインダクタとコンデンサと振動体が、直列に複数セットが連なるよう構成され、
前記駆動部は所定の電圧と周波数を有するパルス信号を生成する矩形電圧生成手段と、前記矩形電圧生成手段と前記振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段と、を備え起動動作の際に前記パルス信号の周波数を掃引し、前記パルス信号の高調波に相当する電流信号を検知し、
前記コンデンサの静電容量値は、断線時に前記振動体ユニットに流れる電流の周波数特性に現れる共振特性の谷の底の周波数と断線無しの場合の起動周波数の整数倍の周波数を近接するように構成されており、
前記制御部は、前記振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する前記振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、前記基本波の高調波に相当する前記振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて前記振動体に連結する配線の断線の有無を判定するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の振動体を連ねる振動型ユニットを有する振動型駆動装置において通常の動作の起動時の周波数掃引の際に振動体の断線の有無又は断線数を検知可能となる。また起動動作中に断線が検出可能なので周辺機構への断線の影響を少なくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第1の例を示す図
図2】振動型アクチュエータの構造の第1の例を示す図
図3】振動型アクチュエータ内の電気的接続を示す図
図4】第1の実施例のCPU15の動作例を示すフローチャート
図5】第1の実施例の断線時の流入電流振幅の周波数特性変化の第1の例を示す図
図6】第1の実施例のCPU15の起動動作の例を示すフローチャート
図7】第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第2の例を示す図
図8】第1の実施例の断線時の流入電流振幅の周波数特性変化の第2の例を示す図
図9】第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の第3の例を示す図
図10】第1の実施例の断線時の流入電流振幅の周波数特性変化の第3の例を示す図
図11】第2の実施例の断線時の流入電流振幅の周波数特性変化の例を示す図
図12】第2の実施例のCPU15の起動動作の例を示すフローチャート
図13】第3の実施例の振動型アクチュエータの振動体の構成を示す図
図14】第3の実施例の振動体の振動モードを示す図
図15】第3の実施例の振動型アクチュエータの構成例を示す図
図16】第3の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路の例を示す図
図17】第3の実施例の断線時の流入電流振幅の周波数特性変化の第1の例を示す図
図18】第3の実施例のCPU15の動作の例を示すフローチャート
図19】第3の実施例のCPU15の起動動作の第1と第2の例を示すフローチャート
図20】第3の実施例の断線時の流入電流振幅の周波数特性変化の第2の例を示す図
図21】第3の実施例のCPU15の起動動作の第3の例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態の一例は、指令信号を出力する制御部と、指令信号に基づき駆動信号を出力する駆動部と、駆動信号に基づき振動する2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットを備えている。さらには、振動体ユニットに流れる電流信号を検知する電流検知手段を備えている。制御部は、振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、基本波の高調波に相当する振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて振動体に連結する配線の断線の有無を判定するものである。
【0012】
また本発明を実施するための形態の他の一例は、以下のような制御方法である。
【0013】
すなわち、制御部が指令信号を駆動部へ出力し、指令信号に基づき駆動部が出力した駆動信号によって2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットが振動する。それとともに、制御部は、振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、基本波の高調波に相当する振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて振動体に連結する配線の断線の有無を判定するものである。
【0014】
以下、図面を参照しつつ詳述する。
【実施例1】
【0015】
図1は第1の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図である。1、2、3は振動体、5、6、7は1次側を直列に接続したトランス、16、17、18はマッチング調整用コンデンサである。トランス5、6、7の2次側に振動体1、2、3とマッチング調整用コンデンサ16、17、18をそれぞれ並列に接続しており、点線で囲った部分は振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ10の内部回路を示している。
【0016】
各振動体に並列に接続されたトランスの2次側コイルのインダクタンス値は、振動型アクチュエータ10の共振周波数に近い所定の周波数でマッチングされている。即ち、マッチング周波数をF、上記振動体に接合された圧電素子の制動容量値をC、マッチング調整用コンデンサの静電容量をC、トランスの2次側コイルのインダクタンス値をLとすると、これらの関係は数式1で表される。
【0017】
【数1】
12は周波数指令に応じた駆動信号としてのパルス信号を出力する矩形電圧発生手段であり、これは駆動部として機能し、インダクタとコンデンサの直列回路で構成される波形整形手段11を介して駆動電圧を振動型アクチュエータ10に出力している。すなわち複数のトランスの1次側は、この駆動信号が印加されるように構成されている。
【0018】
13は振動型アクチュエータ10に流れる電流を計測する為の抵抗であり、これは電流検知手段として機能し、振動体1、2、3の振動速度に比例した電圧を出力する。
【0019】
尚、振動体の振動変位は正確にはこの振動速度を時間で積分した値に比例するが、振動速度の振幅は概ね振動振幅に比例するので以下の実施例では振動速度信号の振幅を制御することで振動型アクチュエータ10の振動振幅を制御している。
【0020】
14はA/D変換器、15は公知のCPUである。A/D変換器14は抵抗13で検出された電流信号をCPU15に入力している。CPU15は電流信号の基本波の振幅(以下電流信号の基本波の振幅を振動振幅と言う)を求め、振動振幅と不図示の指令手段からの速度指令に基づいて矩形電圧発生手段12に周波数指令及びパルス幅指令を出力している。
【0021】
図1に例示した振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ10は、1次側が直列に接続された複数のトランスの2次側にそれぞれ並列に振動体を接続した構成であり、複数のトランスの1次側は、前記駆動信号が印加されるように構成されている。加えて、矩形電圧生成手段と振動体ユニットとの間に挿入される波形整形手段を備えている。
【0022】
このように、2つ以上の振動体が連なって振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ10が構成されており、制御部としてのCPU15が発する共通の指令信号により、振動体がそれぞれ駆動するように構成されている。
【0023】
ここで本実施例の振動型アクチュエータの第1の例を示す。図2は3つの振動体を円柱シャフトの外周に接触させ、円柱シャフトを回転させる振動型アクチュエータの構造を示す図である。1、2、3は縦方向(矢印の方向)に振動する振動体で4は円柱シャフトである。本実施例では振動体1、2、3は円柱シャフト4の円周に120°毎に略均等に配置されている。振動体1、2、3を加振して縦方向の振動を励起することによって円柱シャフト4は時計周りに回転する。円柱シャフトは2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットに接する共通の接触体に相当し、振動体1,2,3の駆動により発生した合力の方向に振動体に対して相対移動する。
【0024】
また振動体1、2、3は弾性体に圧電素子を接合したもので、圧電素子に交流電圧を印加することで弾性体に矢印方向の振動が励起される。
【0025】
図3は振動型アクチュエータ10内の電気的接続を示す図である。5、6、7はトランスで、トランス5、6、7の2次側コイルは不図示のマッチング調整用コンデンサと共に振動体1、2、3に並列に接続されている。8は振動型アクチュエータ10に駆動電圧を供給する為のコネクタで、トランス5、6、7の1次側コイルの直列接続の両端が接続されている。9はドーナツ状の中空ケースで、上記振動体が収められ、これらが一体となり複数の振動体が連なった振動型アクチュエータ10を構成している。
【0026】
また、振動体1、2、3はケース9の円柱シャフト4を通す中空円筒部に、120°毎に円柱シャフト4に加圧接触される突出部を持ち、不図示のバネ構造を含む支持部材によって一定の加圧力で円柱シャフト4に押し当てられている。
【0027】
本実施形態にかかる振動型駆動装置の制御方法は、以下のものである。すなわち、制御部が指令信号を駆動部へ出力し、指令信号に基づき駆動部が出力した駆動信号によって2つ以上の振動体が連なる振動体ユニットが振動する。それとともに、制御部は、振動体ユニットの駆動周波数の範囲に対応する振動体ユニットに流れる電流信号を基本波として、基本波の高調波に相当する振動体ユニットに流れる電流信号に基づいて振動体に連結する配線の断線の有無を判定するものである。
【0028】
CPU15の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。不図示の指令手段から速度指令Vsが入力されるとCPU15は起動動作を開始する。起動動作の詳細説明は別途行うが、起動動作では矩形電圧発生手段12へ周波数指令Frq、パルス幅指令PW_Cを出力して振動型アクチュエータ10に駆動電圧を印加し、断線判定によって断線判定結果Errを出力している。断線判定結果Errが1ならばパルス幅指令PW_Cを0として終了、断線判定結果Errが0なら振動型アクチュエータ10の振動振幅制御を行う。
【0029】
振動振幅制御は、速度指令入力Vsに対応する振動振幅指令Amp_Cを決定し、以下に説明する動作を速度指令Vsが0になるまで繰り返し実行する。高調波振幅計測ルーチンは上記電流信号の高調波の振幅を計測すると共に基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)を計測している。具体的には、最初にA/D変換器14で入力した時系列の信号からバンドパスフィルタで所望の次数の波形を抽出すると共に基本波成分の波形も抽出する。そして、それぞれの成分ごとに最大値、最小値や実効値等から振幅を求めている。
【0030】
バンドパスフィルタの通過帯域は少なくともパルス信号の2次及び3次の高調波のいずれか一方を含んでいてもよい。
【0031】
また、振動型駆動装置は電流信号の基本波の成分をカットするハイパスフィルタ又は前記基本波に対する特定の次数の高調波を検出するバンドパスフィルタのいずれかを有する構成をとってもよい。
【0032】
次に、振動振幅指令Amp_Cと基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)の比較を行う。そして振動振幅指令Amp_Cより振動振幅Amp(1)が大きい場合には周波数を所定量上げ、振動振指令より小さい場合には周波数を所定量下げる周波数操作を行う。これによって基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)は振動振幅指令Amp_Cに近付いていく。この際、周波数指令Frqが最高周波数Frq_maxを超えたら周波数指令を最大周波数Frq_maxに制限する。もし、周波数指令Frqが最低周波数Frq_minを超えたら基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)が振動振幅指令Amp_Cに到達しなかったとして断線有と判定する。そして断線判定結果Errを1に、パルス幅指令PW_Cを0として終了する。
【0033】
基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)が振動振幅指令Amp_Cと一致した場合や周波数指令Frqが最低周波数Frq_minを超えなかった場合には、再度速度指令Vsを入力して速度指令Vsが0になるまで振動振幅制御動作を繰り返し実行する。そして振動振幅制御の実行中に速度指令Vsが0になったら、パルス幅指令PW_Cを0として振動振幅制御を終了する。
【0034】
次に起動動作について説明する。図5は振動型アクチュエータ10の振動体の断線の数によって変化する振動型アクチュエータ10に流入する電流の周波数特性を示す図である。
【0035】
本実施形態における振動型アクチュエータ10の駆動周波数の範囲は概ね93kHzから98kHzの間である。
【0036】
実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。振動型アクチュエータ10の駆動周波数の範囲に対応する周波数であるFは電流振幅の谷の周波数付近の周波数である。また、周波数Fでパルス信号を生成した場合、これは振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ10に流れる基本波としての電流信号に相当する。周波数Fの2次の高調波の周波数がF、3次の高調波の周波数がFである。本実施例では断線するとFの近傍に共振特性が現れていることがわかる。また上記マッチング周波数FはF付近の周波数に設定される。
【0037】
図6はCPU15の起動動作の第1の例のフローチャートである。起動動作がスタートすると矩形電圧発生手段12への周波数指令Frqを周波数Frq0に、パルス幅指令PW_Cを駆動パルス幅PW0に設定してパルス信号を生成し、振動型アクチュエータ10に駆動電圧を印加する。そして断線判定の判定結果Errを0に設定し、断線判定動作を開始する。
【0038】
断線判定は周波数指令Frqを高周波側(Frq0)から低周波側へ掃引し、周波数がFになるまで繰り返し行われる。
【0039】
断線判定は高調波振幅計算ルーチンで検出した3次波形の振幅Amp(3)を用いて行う。起動時の3次高調波の周波数Frq03は周波数Frq0の3倍の周波数で、図5に示すようにFrq03が断線時に発生する共振特性の谷の底付近(320kHz付近)又はそれ以上の周波数になるように設定されている。断線した場合には、3次波形の振幅Amp(3)が周波数の掃引中に共振特性の谷の周波数付近で大きな変化をしたり、所定振幅Amp0より低い値となったりするので、これを検出したら断線判定Errを1として終了する。断線が無い場合にはそのまま周波数の掃引をFまで継続し断線判定の動作を繰り返す。
【0040】
尚、断線した時の共振周特性の谷の底(320kHz付近)の周波数は、起動時の周波数Frq0から周波数Fまでの掃引時間、周波数掃引の速度や、基本波成分の電流の大きさの制約等から決定される。この周波数はマッチング調整用コンデンサの静電容量値Cを調整することで任意に設定可能である。すなわちマッチング調整用コンデンサの静電容量値は断線時に振動体ユニットに流れる電流の周波数特性に現れる共振特性の谷の底の周波数と断線無しの場合の起動周波数の整数倍の周波数を近接されるように構成されている。
【0041】
この場合、整数倍は2または3倍であると周波数掃引の範囲が大きくならずに良い精度で断線を検出するにあたりより望ましい。
【0042】
図7は振動型アクチュエータの駆動回路の第2の例である。図1の振動型アクチュエータの駆動回路との違いは、インダクタとコンデンサの直列回路である波形整形手段11をインダクタだけの波形整形手段19に変更したことである。図8図7の駆動回路の振動型アクチュエータ10の振動体の断線の数によって変化する振動型アクチュエータ10に流入する電流の周波数特性の例を示す図である。波形整形手段19に直流カットの為のコンデンサが無い為に、図5の特性と比較して低周波域の電流振幅が増加している。実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。Fは電流振幅の谷の周波数付近の周波数で、周波数Fでパルス信号を生成した場合の2次の高調波の周波数がF、3次の高調波の周波数がFである。
【0043】
波形整形手段はあるほうがより望ましいが必須ではない。
【0044】
図5の特性と同様に、断線するとFの近傍に電流の共振特性が現れている。また上記説明と同様に周波数Frq0の3倍の周波数Frq03が断線時に発生する共振特性の谷の底付近(320kHz付近)又はそれ以上の周波数になるように設定されている。各部の動作の説明は上記説明と同じなので説明を省略する。
【0045】
図9は振動型アクチュエータの構成が異なる場合の例で振動型アクチュエータの駆動回路の第3の例を示す図である。上記例では振動体1、2、3と並列にトランス5、6、7とマッチング調整用コンデンサ16、17、18が接続されていたが、本例では振動体1、2、3にインダクタ20、21、22、マッチング調整用コンデンサ16、17、18が並列に接続されている。また振動体1、2、3は直列に接続され、インダクタ20、21、22とマッチング調整用コンデンサ16、17、18がそれぞれに並列に接続され、これらが振動体ユニットとしての振動型アクチュエータ23を構成している。本実施形態の基本的な構成は、並列に接続された1セットのインダクタとコンデンサと振動体が、を直列に複数セットが連なる振動体ユニットを備える点にある。
【0046】
図10は振動型アクチュエータ23の振動体の接続が断線した時の振動型アクチュエータ23に流入する電流の周波数特性の第1の例を示している。上記説明と同様に矩形電圧発生手段12が正弦波を出力したと仮定して周波数を掃引し流入電流の振幅を測定したものである。
【0047】
実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。Fは電流振幅の谷の周波数付近の周波数で、周波数Fでパルス信号を生成した場合の2次の高調波の周波数がF、3次の高調波の周波数がFである。図5図8の特性と同様に、断線するとFの近傍に電流の共振特性が現れている。また上記説明と同様に周波数Frq0の3倍の周波数Frq03が断線時に発生する共振特性の谷の底付近(320kHz付近)又はそれ以上の周波数になるように設定されており、上記例と同様に図6の起動動作によって断線を検知している。
【0048】
また、振動体1、2、3は弾性体に圧電素子を接合したものとしたが、圧電体のみでも良い。上記説明では駆動電圧として矩形電圧発生手段12の出力であるパルス信号を用いたが他の波形でも良い。三角波、鋸波、公知のD級アンプの出力であるPWM変調波であっても5次以下の比較的低次の高調波を多く含む波形であれば、高調波の電流を検出でき、断線の有無や断線数の判定は可能である。なお波形整形手段はあるほうがより望ましいが必須ではなく直接に信号処理してもよい。
【実施例2】
【0049】
図11は振動型アクチュエータ23の振動体の接続が断線した時の振動型アクチュエータ23に流入する電流の周波数特性の第2の例を示している。図10の特性とはマッチング調整用コンデンサの値を調整して上記パルス信号の3次の高調波の周波数Fを断線時に発生する共振特性の谷の底付近(294kHz付近)の周波数に設定した部分が異なっている。振動型アクチュエータの駆動回路の構成は図9と同様であるがCPU15の動作が異なっている。
【0050】
以下にCPU15の動作について説明する。図12はCPU15の起動動作のフローチャートの第2の例である。起動動作がスタートすると矩形電圧発生手段12への周波数指令Frqを周波数Fに、パルス幅指令PW_Cを駆動パルス幅PW0に設定してパルス信号を生成し、振動型アクチュエータ10に駆動電圧を印加する。そして振幅指令Amp_Cを初期振幅Amp1に設定し、断線判定の判定結果Errを0に設定し、断線判定動作を開始する。
【0051】
断線判定は周波数指令Frqを高周波側(F)から低周波側へ掃引し、基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)が振幅指令Amp_C以上になるまで繰り返し行われる。
【0052】
断線判定は高調波振幅計算ルーチンで検出した3次波形の振幅Amp(3)を用いて行う。起動時の3次高調波の周波数Fは周波数Fの3倍の周波数で、図11に示すようにFが断線時に発生する共振特性の谷の底付近(294kHz付近)の周波数になるように設定されている。断線した場合には、3次波形の振幅Amp(3)が周波数の掃引中に共振特性の谷の周波数付近で大きな変化をしたり、所定振幅Amp0より低い値となったりするので、これを検出したら断線判定Errを1として終了する。また周波数Frqが最低周波数Frq_min以下となった場合も断線判定Errを1として終了する。断線が無い場合にはそのまま周波数の掃引を継続し断線判定の動作を繰り返す。
【0053】
ここで、上記マッチング周波数FをFと等しくなるようにトランスの2次側コイルのインダクタンス値Lを設定すると数式1は数式2となる。
【0054】
【数2】
また、断線時に発生する共振特性と合わせたい高調波の次数をNとした場合のマッチング調整用コンデンサの静電容量値C周波数Fの関係は数式3であらわすことが出来る。
【0055】
【数3】
すると、数式2と数式3より制動容量値Cと静電容量値Cの関係は数式4であらわすことが出来る。
【0056】
【数4】
第1の実施例では起動時の周波数が基本波の電流振幅の谷の周波数より高い周波数Frq0から周波数を掃引するため起動初期の電流振幅が大きくなり、それが効率を低下させていた。これに対して実施例2では周波数Fから周波数の掃引を開始するので従来の駆動と同等の効率にて起動動作を実行出来、断線の検出も可能である。
【0057】
また実施例1及び実施例2では起動時の周波数Frq0に対して3倍の周波数Frq03と断線時に発生する共振特性の谷の底付近(320kHz付近)を近接させた。しかし、上記パルス信号にある程度以上の比率で含まれる高調波の次数であれば、その次数と同じ倍率の周波数(高調波の次数が5次であれば周波数Frq0の5倍の周波数)と断線時に発生する共振特性の谷の底付近の周波数を近接させても良い。パルス幅がデューティ50%であれば偶数次の高調波がほとんど無いがパルス幅が狭くなると偶数次の高調波が増えてくる。パルス幅が狭いのであれば周波数Frq0の2倍の周波数やそれ以上の偶数倍の周波数としても良い。
【実施例3】
【0058】
図13は実施例3で用いる振動体の構成を示す図である。図13(a)の48は導電性材料で作られた矩形状の矩形状で、表面に接触体に接触する突起が2つ設けられている。49は振動体48の一部をなし、これを加振する為の圧電体である。図13(b)は圧電体49に設けられた電極を示しており、電極30、31間は電気的に絶縁され、位相が独立して変化する2つの交流電圧が印加される。圧電体49の裏面は全面が電極となっており、電極30、31の一部に設けられた不図示のビアを介して表面から通電出来るように構成されている。
【0059】
図14は振動体48の振動モードを示す図である。図14(a)は、上記電極30と電極31に同相の交流電圧を印加した際に励起される振動モード(突き上げ振動モード)の振動形態で、図14(b)は逆相の交流電圧を印加した際に励起される振動モード(送り振動モード)の振動形態である。
【0060】
即ち、印加する交流電圧の位相差を0°とすると、図14(a)のモードが励起され、位相差を180°とすると、図14(b)のモードが励起される。また、交流電圧の位相差を0°と180°の間(実際には0°から120°程度が使用される)にすると両方の振動モードが同時に励起され、振動体48に設けられた突起に加圧接触された接触体が振動体48の長方形の長手方向に移動する。
【0061】
図15は本実施例の直動型の振動型アクチュエータの構成を示す図で、上下に振動体36、37の突起部を互いに向い合せに配置したものである。また、同様に直線上に振動体38まで振動体を上下ペアで5セット配置し、合計10個の振動体で上下方向から共通の接触体50を挟み矢印の方向に移動するよう構成したものである。
【0062】
図16は第3の実施例の振動型アクチュエータの駆動回路を示す図である。上記実施例の振動型アクチュエータの振動体の数が3個で駆動電圧の相数が1であったが、本実施例では振動体の数が10個で2相の駆動電圧で駆動する。10個の振動体36、37、…、38は不図示の導電性の弾性体がグランド電位に接続されている。
【0063】
振動体36には圧電体49に設けられた電極30、31がトランス32、33にマッチング調整用コンデンサ34、35と共にそれぞれ並列に接続されている。トランス32の1次側には9個のトランス43、…、44の1次側が直列に接続され、各トランスの2次側にはマッチング調整用コンデンサと共に振動体37、…、38の9個の振動体がそれぞれ並列に接続されている。また、トランス33の1次側には同様に9個のトランス45、…、46が直列に接続され、各トランスの2次側にはマッチング調整用コンデンサと共に振動体37、…、38の9個の振動体がそれぞれ並列に接続されている。そして、これら振動体、マッチング調整用コンデンサ、トランスからなる直列に接続された10組のユニットで振動型アクチュエータ47を構成している。
【0064】
40は2相のパルス信号を出力する矩形電圧発生手段であり、インダクタとコンデンサの直列回路で構成される波形整形手段11、39を介して駆動電圧を振動型アクチュエータ47に印加している。41及び42は振動型アクチュエータ47に流れる2相の電流をそれぞれ計測する為の抵抗で、振動体36、37、…、38の振動速度に比例した電圧を検出している。
【0065】
24は抵抗41、42で検出された電流を加算した信号の基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)、2次の高調波の振幅Amp(2)及び3次の高調波の振幅Amp(3)を出力する為の振幅検出手段である。基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)は振動体36、37、…、38の突き上げ振動モードの振動振幅を示しており、CPU15に入力される。CPU15は不図示の指令手段からの位置指令、振幅検出手段24からの基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)と3次の高調波の振幅Amp(3)に基づいて位置指令、パルス幅指令、周波数指令を決定し、出力している。パルス幅指令及び周波数指令は矩形電圧発生手段40に入力され、出力する2相のパルス信号の周波数とパルス幅を設定している。CPU15の動作の詳細な説明は後述する。27は接触体50の位置を検出する為の公知のリニアエンコーダであり、28はCPU15からの位置指令とリニアエンコーダ27が出力する位置信号の差を出力する位置比較手段である。29は位置比較手段28の出力に応じて矩形電圧発生手段40に位相差指令を出力する位置制御手段であり、上記2相のパルス信号の位相差を設定して接触体50の移動方向と速度を制御している。
【0066】
図17図16の振動型アクチュエータ47の振動体が断線した時の振動型アクチュエータ47に流入する電流の周波数特性の第1の例を示している。矩形電圧発生手段40が正弦波を出力したと仮定して周波数を掃引し流入電流の振幅を測定したものである。実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。Fは電流振幅の谷の周波数付近の周波数で、周波数Fでパルス信号を生成した場合の2次の高調波の周波数がF、3次の高調波の周波数がFである。
【0067】
本実施例では実施例2と同様にパルス信号の3次の高調波の周波数Fを断線時に発生する共振特性の谷の底(316kHz付近)より若干低めの周波数に設定している。CPU15の動作は実施例2と同様に図12の動作で断線の有無を判定することも可能であるが、本実施例では断線数を検出する例について説明する。
【0068】
図18は実施例3のCPU15の動作を示すフローチャートである。断線結果によって振動型アクチュエータ47の異なる駆動シーケンスを実行するCPU15の動作の例を示すフローチャートである。接触体50の位置制御動作のシーケンスを示しており、断線の数(M)によって異なる動作シーケンスを選択している。以下フローチャートを用いて各動作シーケンスについて説明する。位置制御動作は不図示の指令手段から新たな位置指令POS_Cが入力されると開始する。最初にそれまでに発生した振動子の断線数Mを確認する。断線数Mが2以上なら断線状態表示用LEDを赤に点灯して位置制御動作を終了する。断線数Mが1以下なら、振動型アクチュエータ47の起動動作を行う。起動動作では、矩形電圧発生手段40にパルス幅指令PW_Cを与え、所定のパルス幅で所定周波数範囲の周波数の掃引を行い、断線数Mの判定を行う。断線数Mが0であれば断線状態表示用LEDを緑に点灯し、断線数Mが1なら断線状態表示用LEDを黄に点灯し、断線数Nが2ならば断線状態表示用LEDを橙に点灯して位置制御動作を実行する。断線数が2より多い場合には断線状態表示用LEDを赤に点灯してパルス幅指令PW_Cを0にし、振動振幅指令AMP_Cも0にして位置制御動作を終了する。
【0069】
ここまでで位置制御動作が終了しなかったら位置指令POS_Cの設定を行い、振幅指令AMP_Cを所定の振幅AMP0に設定し、駆動タイマーTを0に初期化して位置制御動作を開始する。CPU15は位置制御動作の間は一定時間(T1)の間、振動振幅制御を行う。T1の値は位置指令による移動距離に応じて設定する事が出来る。振動振幅制御ルーチンでは振幅指令AMP_Cと基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)を比較した結果に基づいて上記パルス信号の周波数を制御している。振幅指令AMP_Cの方が大きい場合には周波数Frqを低周波側に所定周波数下げ、逆であれば周波数Frqを高周波側に所定周波数上げる事で基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)を一定に保っている。そして駆動タイマーTがT1になるまで振動振幅制御を繰り返し、駆動タイマーTがT1になったらパルス幅指令PW_Cを0にし、振動振幅指令AMP_Cも0にして位置制御動作を終了する。
【0070】
振動型アクチュエータ47のように振動体ユニットを複数直列に接続した振動型アクチュエータはいくつかの振動体が断線しても駆動を継続可能な場合もあるので、アプリケーションによっては駆動を継続する場合もある。また、断線数が少なくても駆動を継続すると周辺機構にダメージが蓄積していくので、駆動を継続する場合でも累積駆動時間が一定以上になったら駆動禁止にする等の対応をする場合もある。
【0071】
図19は実施例3のCPU15の起動動作のフローチャートの第1と第2の例を示している。図19(a)はパルス信号の基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)を用いて断線数を検出する場合、図19(b)はパルス信号の3次の高調波の振幅Amp(3)を用いて断線数を検出する場合を示している。以下にそれぞれの動作を比較しながら説明する。
【0072】
最初に図19(a)、(b)のどちらの動作も周波数指令Frqを電流振幅の谷の周波数付近の周波数F(98kHz付近)より高く断線が無い場合のピーク周波数(130kHz付近)より高い周波数Frq1に設定する。パルス幅指令PW_CはPW0に設定する。PW0は矩形電圧発生手段40がデューティ50%のパルス信号を出力する値であり、パルス幅を設定することで矩形電圧発生手段40はパルス信号を出力する。
【0073】
断線数の判定は周波数指令Frqを高周波側(Frq1)から低周波側へ掃引し、周波数がFになるまで繰り返し行われる。その際3次の高調波の振幅の検出の為の掃引は周波数Frq1の3倍の周波数Frq13からパルス信号の3次の高調波の周波数Fに向けて周波数掃引が行われる。
【0074】
最初にそれぞれ断線数Mの検出に用いる電流振幅を入力する。そして周波数を掃引しながらそれぞれの検出に用いる電流振幅にピーク特性(図17の振幅特性の山の頂点)が検出されるまで周波数掃引を行う。図19(a)では基本波の振幅(振動振幅)Amp(1)、図19(b)では3次の高調波の振幅Amp(3)にピーク特性が検出されたら、ピーク特性の周波数と断線数Mの関係を示すテーブルを用いて断線数Mを決定する。断線数Mが決定された場合には断線数の判定を終了し周波数指令Frqを周波数Fに設定して終了する。断線数Mが決まらないまま周波数指令Frqが周波数Fに到達した場合には図19(a)の場合には駆動回路又は振動型アクチュエータ47が故障している事を示している。その場合はパルス幅指令PW_C=0として矩形電圧発生手段40のパルス信号出力を停止し、エラーフラグErrを1として終了している。また図19(b)の場合には断線数Mが決まらないまま周波数指令Frqが周波数Fに到達した場合、断線数M=0として起動動作を終了する。
【0075】
図20は振動型アクチュエータ47の振動体が断線した時の振動型アクチュエータ47に流入する電流の周波数特性の第2の例を示している。矩形電圧発生手段40が正弦波を出力したと仮定して周波数を掃引し流入電流の振幅を測定したものである。実線が断線無し、破線が1つの振動体が断線、一点鎖線が2つの振動体が断線、点線が全て断線した場合である。Fは電流振幅の谷の周波数付近の周波数で、周波数Fでパルス信号を生成した場合の2次の高調波の周波数がF、3次の高調波の周波数がFである。図17の特性が断線時に発生する共振特性の谷の底の周波数をパルス信号の3次の高調波の周波数F付近に設定したのに対して、図20の特性は2次の高調波の周波数F付近に設定している点が異なっている。
【0076】
本例では断線時に発生する共振特性の谷の底の周波数をパルス信号の2次の高調波の周波数F付近とする為に、マッチング調整用コンデンサの静電容量値Cを制動容量値Cの約3分の1に設定している。
【0077】
また、パルス信号のデューティが50%の状態で断線数Mを検出する為の周波数掃引を行うと、ピーク特性の付近で大きな電流が流れる為、駆動回路の電流容量を大きくしなければならないという問題がある。その為回路コストの上昇や駆動効率が低下する。その為本実施例では断線数Mを検出する為の起動動作の間だけパルス信号のデューティを小さくすることでこの問題を回避している。パルス幅のデューティが50%の際には2次の高調波がほとんど無いがパルス幅を小さくすることで2次の高調波の割合が増え、これを用いて断線の判定を行っている。
【0078】
図21は実施例3の起動動作のPU15の起動動作のフローチャートの第3の例を示している。
【0079】
断線数の判定に2次の高調波の振幅Amp(2)を用いていること、起動動作の間パルス幅指令PW_CをPW0の4分の1にしている他は図19(b)と同じである。ここでは2次の高調波の振幅Amp(2)を用いた例を示したが、図19(a)と同様に基本波を用いて断線数Mを判定する事も可能である。
【0080】
また上記実施例1乃至実施例3の説明では振動体には圧電体が接合されているとしたが、振動体自体を圧電体で構築しても良い。また圧電体は積層圧電体であっても良い。
【0081】
このように矩形電圧生成手段の出力するパルス信号を所定のパルス幅に設定し、振動体ユニットに流れる1相以上の電流のいずれかの相の信号又はいくつかの相の信号を加算した電流信号の基本波成分の振幅が所定振幅に達するまで周波数掃引を行うものである。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本願発明の振動型駆動知はさまざまな機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3、36、37、38、48 振動体
4 円柱シャフト
5、6、7、32、33、43、44、45、46 トランス
10、23、47 振動型アクチュエータ
11、19、39 波形整形手段
12、40 矩形電圧発生手段
13、41、42 抵抗
14 A/D変換器
15 CPU
16、17、18、34、35 マッチング調整用コンデンサ
20、21、22 インダクタ
24 振幅検出手段
27 リニアエンコーダ
28 位置比較手段
29 位置制御手段
49 圧電体
50 接触体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21