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特許7520785露光装置、露光方法、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】露光装置、露光方法、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20240716BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021146147
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039134
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】張 劬
(72)【発明者】
【氏名】池田 研二
(72)【発明者】
【氏名】日置 真則
(72)【発明者】
【氏名】川端 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】早迫 瞭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-098285(JP,A)
【文献】特開2015-012258(JP,A)
【文献】特開2021-006893(JP,A)
【文献】特開2010-085793(JP,A)
【文献】特開2015-088587(JP,A)
【文献】特開2019-035874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86、7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターン形成領域を透過した光によって形成された第1パターンを含む第1パターン領域と、前記原版のパターン形成領域の一部の領域を透過した光によって形成された第2パターンを含み、前記第1パターン領域より小さい第2パターン領域と、を含む第1層が形成された基板上に第2層のパターンを重ねて露光する露光装置であって、
前記第1パターン領域には、前記第1層における前記第1パターン領域のパターンと前記第2層における前記第1パターン領域のパターンとの位置合わせのための第1アライメントマークと、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせのための第2アライメントマークと、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを求めるための第3アライメントマークが形成されており、
前記第2パターン領域には、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせのための第4アライメントマークと、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを求めるための第5アライメントマークが形成されており、
前記露光装置は、
アライメントマークを検出する検出部と、
前記原版と前記基板との位置合わせを制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記第1アライメントマークを前記検出部で検出した結果と、前記第2アライメントマークと前記第4アライメントマークを同時に前記検出部で検出した結果と、前記第3アライメントマークと前記第5アライメントマークを前記検出部で検出した結果と、に基づいて、前記第2層におけるパターン形成のために前記原版と前記基板との位置合わせを制御することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出部で検出された前記第3アライメントマーク、及び前記第5アライメントマークの検出結果に基づいて、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを示す配列情報を求め、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせに前記配列情報を用いることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第3アライメントマーク、及び前記第5アライメントマークは、複数のアライメントマークをそれぞれ含み、
前記検出部は、複数のスコープを含み、
前記複数のスコープのうち少なくとも1つのスコープは、前記第3アライメントマークのうち少なくとも1つのアライメントマークと、前記第5アライメントマークのうち少なくとも1つのアライメントマークを同時に検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記原版のパターンを前記基板に投影する投影光学系を更に有し、
前記検出部は、前記投影光学系を介さずに前記基板に形成されたアライメントマークを検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記検出部は、第1検出部と第2検出部を含み、
前記第1検出部は、前記投影光学系を介して前記第1アライメントマーク、前記第2アライメントマーク及び前記第4アライメントマークを検出し、
前記第2検出部は、前記投影光学系を介さずに前記第1アライメントマーク、前記第2アライメントマーク、前記第3アライメントマーク、前記第4アライメントマーク、及び前記第5アライメントマークを検出することを特徴とする請求項4に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1アライメントマーク、前記第2アライメントマーク、及び前記第4アライメントマークは、複数のアライメントマークをそれぞれ含み、
前記第2検出部は、前記投影光学系を介さずに、前記第1アライメントマークのうち前記第1検出部で検出していないアライメントマークと、前記第2アライメントマークのうち前記第1検出部で検出していないアライメントマークと、前記第4アライメントマークのうち前記第1検出部で検出していないアライメントマークと、を検出することを特徴とする請求項5に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2パターン領域は、前記第1パターン領域の一部と重複する重複領域を含み、
前記第3アライメントマークのうち少なくとも1つのマークと、前記第5アライメントマークのうち少なくとも1つのマークは、前記重複領域に形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記原版に照明される一部の照明光を遮光する遮光部を更に有し、
前記第2パターン領域は、前記遮光部により一部の照明光を遮光して照明される領域であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記第2パターン領域は、前記第1パターン領域の半分の領域であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との相対位置ずれを除去して、前記第1層における前記第2パターンに前記第2層における前記第2パターンが重なるように、前記第2層におけるパターン形成のために前記原版と前記基板との位置合わせを行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項11】
原版のパターン形成領域を透過した光によって形成された第1パターンを含む第1パターン領域と、前記原版のパターン形成領域の一部の領域を透過した光によって形成された第2パターンを含み、前記第1パターン領域より小さい第2パターン領域と、を含む第1層が形成された基板上に第2層のパターンを重ねて露光する露光方法であって、
前記第1パターン領域には、前記第1層における前記第1パターン領域のパターンと前記第2層における前記第1パターン領域のパターンとの位置合わせのための第1アライメントマークと、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせのための第2アライメントマークと、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを求めるための第3アライメントマークが形成されており、
前記第2パターン領域には、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせのための第4アライメントマークと、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを求めるための第5アライメントマークが形成されており、
前記露光方法は、
前記第1アライメントマークを検出する第1検出工程と
前記第2アライメントマークと前記第4アライメントマークを同時に検出する第2検出工程と
前記第3アライメントマークと前記第5アライメントマークを検出する第3検出工程と、
前記原版と前記基板との位置合わせを制御して、露光する露光工程と、を含み、
前記露光工程は、前記第1検出工程と、前記第2検出工程と、前記第3検出工程と、で検出された結果に基づいて、前記第2層におけるパターン形成のために前記原版と前記基板との位置合わせを制御することを特徴とする露光方法。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の露光装置により基板を露光する露光工程と、
記露光工程で露光された前記基板を現像する現像工程と、を含み、
前記現像工程で現像された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、露光方法、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)や半導体デバイス等の製造において、マスクなどの原版のパターンを、感光剤が塗布されたガラスプレートやウエハなどの基板に転写する露光装置が用いられる。このような露光装置では、基板上のパターン領域に、原版のパターンを高精度に位置合わせすることが求められている。一般的には、下層に位置合わせのためのアライメントマークを形成し、上層の露光の際に下層に形成されたアライメントマークを計測することで、下層に形成されたパターンに高精度に重ね合わせて上層にパターンを転写することができる。
【0003】
また、露光装置による露光工程において、パネルレイアウトを最適化し、基板を無駄なく利用することで生産コストを低減することも求められる。パネルレイアウトの最適化をする上で、原版のサイズが制約となりうる。例えば、図9(a)に示すような原版3aのパターン51を、図9(b)の基板6aに転写する場合には、図9(b)に示すようなパネルレイアウトとなる。図9(b)では、領域52においてパネルの生産ができない無駄なスペースが生じてしまう。
【0004】
特許文献1には、上記のような場合に、パネルレイアウトを最適化するために、原版の全体の領域を転写する露光(第1露光と呼ぶ)と、原版の一部の領域を転写する露光(第2露光と呼ぶ)とを組み合わせる手法が開示されている。第1露光と第2露光とを組み合わせることで、図9(c)に示すようなパネルレイアウトでパネルを生産することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-85793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1における第2露光は、原版の一部の領域を遮光して原版のパターンを転写する工程と、第1露光で形成されるパターンと第2露光で形成されるパターンとの位置ずれを求めるためのアライメントマークを転写する工程とに分けられる。特許文献1に記載の方法では、第2露光の際に、パターンの形成とアライメントマークの形成とでそれぞれ異なるタイミングで転写を行うため、生産性が低下してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、生産性の低下を低減することができる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、原版のパターン形成領域を透過した光によって形成された第1パターンを含む第1パターン領域と、前記原版のパターン形成領域の一部の領域を透過した光によって形成された第2パターンを含み、前記第1パターン領域より小さい第2パターン領域と、を含む第1層が形成された基板上に第2層のパターンを重ねて露光する露光装置であって、前記第1パターン領域には、前記第1層における前記第1パターン領域のパターンと前記第2層における前記第1パターン領域のパターンとの位置合わせのための第1アライメントマークと、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせのための第2アライメントマークと、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを求めるための第3アライメントマークが形成されており、前記第2パターン領域には、前記第1層における前記第2パターン領域のパターンと前記第2層における前記第2パターン領域のパターンとの位置合わせのための第4アライメントマークと、前記第1層における前記第1パターン領域と前記第2パターン領域との位置ずれを求めるための第5アライメントマークが形成されており、前記露光装置は、アライメントマークを検出する検出部と、前記原版と前記基板との位置合わせを制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第1アライメントマークを前記検出部で検出した結果と、前記第2アライメントマークと前記第4アライメントマークを同時に前記検出部で検出した結果と、前記第3アライメントマークと前記第5アライメントマークを前記検出部で検出した結果と、に基づいて、前記第2層におけるパターン形成のために前記原版と前記基板との位置合わせを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性の低下を低減することができる露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】露光装置の構成を示す概略図である。
図2】比較例1における露光方法を説明するための図である。
図3】比較例2における露光方法を説明するための図である。
図4】比較例3における露光方法を説明するための図である。
図5】第1実施形態における原版と遮光部の関係を示す図である。
図6】上層と下層の露光工程の手順を示すフローチャートである。
図7】露光された基板の状態を示す図である。
図8】第2実施形態における原版と遮光部の関係を示す図である。
図9】パネルレイアウトを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。尚、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
(露光装置の構成)
本実施形態における露光装置の構成について説明する。本実施形態における露光装置は、半導体デバイスや、フラットパネルディスプレイ(FPD)などのデバイスを製造する際のリソグラフィ工程に用いられる装置である。露光装置は、原版(マスク)のパターンをレジストが塗布された基板に転写することで、基板のパターン領域に潜像パターンを形成する。本実施形態における露光装置は、投影光学系を介して原版のパターンを基板における複数のパターン領域に転写する、いわゆる、ステップ・アンド・スキャン方式の走査露光装置である。
【0013】
図1は、本実施形態における露光装置100の構成を示す概略図である。本実施形態では、基板6aが載置される面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向として座標系を定義する。露光装置100は、照明光学系1と、アライメント計測部2aと、オフアクシス計測部2b、2cと、原版ステージ3bと、遮光部4と、投影光学系5と、基板ステージ6bと、定盤7と、制御部8とを含みうる。
【0014】
光源(不図示)から射出された光は、照明光学系1内の光学系を介して、原版3aを照明する。照明光学系1は、原版3aを照明する領域を規定する部材を有し、例えば、帯状または円弧状の光が原版3aに照明される。
【0015】
原版3aおよび基板6a(例えば、ガラス基板)は、原版ステージ3bおよび基板ステージ6bによってそれぞれ保持されており、投影光学系5を介して光学的にほぼ共役な位置(投影光学系5の物体面及び像面)に配置される。
【0016】
投影光学系5は、例えば、複数のミラーによって構成されたミラープロジェクション方式の投影光学系であり、所定の投影倍率(例えば、等倍、1/2倍、2倍等)を有し、原版3aに形成されたパターンを基板6aに投影する。
【0017】
原版ステージ3bおよび基板ステージ6bは、投影光学系5の光軸方向(Z方向)に直交する方向(本実施形態ではY方向)に、互いに同期しながら、投影光学系5の投影倍率に応じた速度比で走査する。
【0018】
遮光部4は、走査方向(本実施形態ではY方向)またはそれと直交する方向(本実施形態ではX方向)に駆動し、原版3aの露光領域を調整することができる。これにより、原版3aに形成されたパターンを、最適なパネルレイアウトで基板6a上におけるパターン領域に転写することができる。
【0019】
露光装置100は、基板ステージ6bをステップ移動させながら、基板6a上における複数のパターン領域のそれぞれについて順次繰り返すことにより、1枚の基板6aにおける露光処理を完了することができる。このように基板6a上の各パターン領域に原版3aのパターンを転写する際には、当該パターン領域と原版3aとの位置合わせを行う場合がある。
【0020】
露光装置100は、照明光学系1と原版3aとの間にアライメント計測部2a(第1検出部)を有しており、アライメント計測部2aは、少なくとも1つのアライメントスコープを含む。本実施形態におけるアライメント計測部2aは、X方向に所定の距離だけ離間して設けられた2つのアライメントスコープを有する。また、各アライメントスコープはXY平面で駆動できるよう露光装置100に構成されている。よって、アライメント計測部2aは、基板6a上のパターン領域に形成された位置合わせマーク(アライメントマーク)のそれぞれと原版3aに形成された位置合わせマークのそれぞれとを投影光学系5を介して観察することができる。
【0021】
また、投影光学系5と基板6aとの間にオフアクシス計測部2b、2c(第2検出部)を有しており、オフアクシス計測部2bおよび2cは少なくとも1つのオフアクシススコープを含む。本実施形態のオフアクシス計測部2b及び2cのそれぞれは、X方向に所定の距離だけ離間して設けられた2つのオフアクシススコープを有する。また、各オフアクシススコープはXY平面で駆動できるよう露光装置100に構成されている。よって、オフアクシス計測部2bおよび2cは、基板6a上のパターン領域に形成された位置合わせマークのそれぞれを観察することができる。
【0022】
露光装置100は、アライメント計測部2a、オフアクシス計測部2bおよび2cの各々の位置を基板6a上に形成されている位置合わせマークに合わせることで、複数のマークを同時に計測することができる。
【0023】
制御部8は、照明光学系1と、アライメント計測部2aと、オフアクシス計測部2bと2cと、原版ステージ3bと、遮光部4と、基板ステージ6bと、のそれぞれの制御を行う。また、制御部8は、アライメント計測部2aおよびオフアクシス計測部2bおよび2cにより計測されたパターン領域上の各位置合わせマークの位置に基づいてパターン領域の位置ずれや形状を取得することができる。制御部8は、原版3a上の位置合わせマークとパターン領域上の位置合わせマークとの相対位置に基づいて、原版ステージ3bや基板ステージ6bの移動速度や位置調整、投影光学系5の投影倍率などを制御しながら基板6aの走査露光を行うことができる。
【0024】
フラットパネルディスプレイ(FPD)等の露光工程、及び該露光工程の前後の工程では、まず、基板6aに感光材を塗布し、該感光材の第1層(以下では、下層と呼ぶ)に原版3aのパターンを転写(露光)し、その後の現像工程により現像パターンを形成する。その後再び、基板6aに感光材を塗布し、該感光材の第2層(以下では、上層と呼ぶ)に原版3aのパターンを転写(露光)し、その後の現像工程により現像パターンを形成する。この工程の繰り返しにより、複数の層を有する積層構造の基板を得ることができる。FPD等の露光工程において、下層のパターンと上層のパターンとの位置合わせが極めて重要である。
【0025】
下層と上層の位置合わせを行うために、一般的に、下層を露光する際に原版のパターンとともに位置合わせマークを形成しておき、上層を露光する際に、該位置合わせマークを検出することで、下層のパターンと上層のパターンとの位置合わせを行う。また、少ない位置合わせマークにより精度よくパターン領域の位置ずれや形状を検出するために、位置合わせマークは、パターン領域の端(本実施形態では、矩形のパターン領域の角付近の4点、及び長辺の中点付近の2点の計6箇所)に配置されることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、基板6aにおけるパネルレイアウトを最適化するために、原版3aの全体の領域を転写する露光(以下では、第1露光と呼ぶ)と、原版の一部の領域を転写する露光(以下では、第2露光と呼ぶ)とを組み合わせて、走査露光を実行する。尚、本実施形態における第2露光は、原版3aの半分の領域を転写する、いわゆるハーフショット露光である。本実施形態における走査露光の手順を説明する前に、比較例1~3における走査露光の手順を説明する。
【0027】
尚、位置合わせマークは、パターン領域に複数個形成されうるが、アライメント計測部2aやオフアクシス計測部2b、2cにおけるスコープの数や、必要な精度に応じて、形成される数が決定されれば良い。以下の比較例1~3及び本実施形態における説明において、1つのパターン領域の形状補正のために、6箇所に形成されている位置合わせマークをアライメント計測部2a又はオフアクシス計測部2b、2cの6つのスコープで同時に計測することを想定する。
【0028】
(比較例1)
比較例1では、アライメント計測部2aの各アライメントスコープや、オフアクシス計測部2b、2cのそれぞれの各オフアクシススコープの間隔を第1露光と第2露光とで変更する(スコープを駆動させる)方法について説明する。図2は、比較例1における走査露光を説明するための図である。
【0029】
図2(a)は、比較例1における原版3aを示す図である。後述する上層における第2露光で6点の位置合わせマーク21を計測することを目的として、位置合わせマーク21が9点形成されている。第1露光では、図2(a)に示す全体の領域を基板6aに転写する。このとき、位置合わせマークは図2(c)で示すように、第1パターン領域22に9点形成される。
【0030】
図2(b)は、第2露光における原版3aの状態を示す図である。遮光部24が原版3aの一部の領域(例えば、原版3aに形成されているパターンの半分を遮光する領域)を遮光する。第2露光では、図2(b)に示すように遮光部24で遮光されていない原版3aの領域を基板6aに転写する。このとき、位置合わせマークは図2(d)で示すように、第2パターン領域23に6点形成される。
【0031】
図2(c)及び図2(d)は、第1露光と第2露光とを組み合わせて基板6aの全域を走査露光した結果を示す図である。図2(c)では、第1パターン領域22を太線で強調して図示している。第1パターン領域22における走査露光を第1露光により行う際には、下層に形成された位置合わせマーク21a~21fを計測することにより、第1パターン領域22の形状を補正する。アライメント計測部2aの各スコープは、位置合わせマーク21bと21eをそれぞれ計測する。また、オフアクシス計測部2bの各スコープは、位置合わせマーク21aと21dをそれぞれ計測し、オフアクシス計測部2cの各スコープは、位置合わせマーク21cと21fをそれぞれ計測する。また、第1露光において、アライメント計測部2aの各スコープの間隔、オフアクシス計測部2bの各スコープの間隔、及びオフアクシス計測部2cの各スコープの間隔は、いずれもd1だけ離間した状態で計測される。
【0032】
図2(d)では、第2パターン領域23を太線で強調して図示している。第2パターン領域23における走査露光を第2露光により行う際には、下層に形成された位置合わせマーク21g~21lを計測することにより、第2パターン領域23の形状を補正する。アライメント計測部2aの各スコープは、位置合わせマーク21hと21kをそれぞれ計測する。また、オフアクシス計測部2bの各スコープは、位置合わせマーク21gと21jをそれぞれ計測し、オフアクシス計測部2cの各スコープは、位置合わせマーク21iと21lをそれぞれ計測する。また、第2露光において、アライメント計測部2aの各スコープの間隔、オフアクシス計測部2bの各スコープの間隔、及びオフアクシス計測部2cの各スコープの間隔は、いずれもd2だけ離間した状態で計測される。
【0033】
上記で説明したように、第1露光におけるスコープの間隔と第2露光におけるスコープの間隔とが異なるため、アライメント計測部2a、及びオフアクシス計測部2b、2cにおけるスコープを駆動させる必要がある。スコープは、露光装置100の構造上の制限により、高いコストを掛けずに駆動の高速化を実現させることは難しい。また、スコープの駆動の誤差により計測性能に影響が出る可能性もある。また、スコープの数を増やすことも考えられるが、コストの面で不利である。
【0034】
(比較例2)
比較例2では、アライメント計測部2aの各アライメントスコープや、オフアクシス計測部2b、2cのそれぞれの各オフアクシススコープの間隔を第1露光と第2露光とで変更しない(スコープを駆動させない)方法について説明する。比較例2では、下層における第1露光の際に形成した位置合わせ用マークを上層における第2露光の際に計測することで、比較例1に比べて生産性を向上させることができる。図3は、比較例2における走査露光を説明するための図である。
【0035】
図3(a)は、比較例2における原版3aを示す図である。後述する上層における第2露光で6点の位置合わせマーク31を計測することを目的として、位置合わせマーク31が9点形成されている。第1露光では、図3(a)に示す全体の領域を基板に転写する。第1露光では、図3(a)に示す全体の領域を基板6aに転写する。このとき、位置合わせマークは図3(c)で示すように、第1パターン領域32に9点形成される。
【0036】
図3(b)は、第2露光における原版3aの状態を示す図である。遮光部34が原版3aの一部の領域(例えば、原版3aに形成されているパターンの半分を遮光する領域)を遮光する。第2露光では、図3(b)に示すように遮光部34で遮光されていない原版3aの領域を基板6aに転写する。このとき、位置合わせマークは図3(d)で示すように、第2パターン領域33に3点形成される。
【0037】
図3(c)及び図3(d)は、第1露光と第2露光とを組み合わせて基板6aの全域を走査露光した結果を示す図である。図3(c)では、第1パターン領域32を太線で強調して図示している。第1パターン領域32における走査露光を第1露光により行う際には、下層に形成された位置合わせマーク31a~31fを計測することにより、第1パターン領域32の形状を補正する。アライメント計測部2aの各スコープは、位置合わせマーク31bと31eをそれぞれ計測する。また、オフアクシス計測部2bの各スコープは、位置合わせマーク31aと31dをそれぞれ計測し、オフアクシス計測部2cの各スコープは、位置合わせマーク31cと31fをそれぞれ計測する。また、第1露光において、アライメント計測部2aの各スコープの間隔、オフアクシス計測部2bの各スコープの間隔、及びオフアクシス計測部2cの各スコープの間隔は、いずれもd1だけ離間した状態で計測される。
【0038】
図3(d)では、第2パターン領域33を太線で強調して図示している。第2パターン領域33における走査露光を第2露光により行う際には、下層に形成された位置合わせマーク31g~31lを計測することにより、第2パターン領域33の形状を補正する。アライメント計測部2aの各スコープは、位置合わせマーク31hと31kをそれぞれ計測する。また、オフアクシス計測部2bの各スコープは、位置合わせマーク31gと31jをそれぞれ計測し、オフアクシス計測部2cの各スコープは、位置合わせマーク31iと31lをそれぞれ計測する。また、第2露光において、アライメント計測部2aの各スコープの間隔、オフアクシス計測部2bの各スコープの間隔、及びオフアクシス計測部2cの各スコープの間隔は、いずれも、第1露光と同様に、d1だけ離間した状態で計測される。
【0039】
上記で説明したように、比較例2では、上層における第2露光において、下層における第1露光で形成された位置合わせマーク31g、31h、31iを用いている。これにより、第1露光と第2露光とで、共にスコープの間隔がd1となるように位置合わせマーク31の位置を調整することで、スコープの駆動が不要となる。これにより、比較例1と比べて、露光処理の生産性を向上させることができる。
【0040】
しかしながら、第2露光において、下層における第1露光で形成された位置合わせマーク31g、31h、31iを用いることで、重ね合わせ精度の低下を招くおそれがある。図3(e)は、第1露光における第1パターン領域32に対して、第2露光における第2パターン領域33の位置がずれてしまっている様子を示す図である。図3(e)において点線で示されている目標領域35は、第2露光における第2パターン領域33の目標位置である。図3(e)に示すように、下層の露光の際に第1パターン領域32と第2パターン領域33との相対位置関係に誤差がある場合、上層の第2露光の際に位置合わせマーク31g~31lを計測しても正確に第2パターン領域33の形状補正を行うことができない。すなわち、第2パターン領域33において、上層と下層において精度よく重ね合わせることができない。これは、パターン領域の形状補正を下層における第1パターン領域32と第2パターン領域33とで相対位置ずれが無いものとして、位置合わせマークの検出結果に基づいてパターン領域の形状補正を行っているためである。下層における第1パターン領域32と第2パターン領域33とで相対位置ずれは、例えば、原版ステージ3bや基板ステージ6bの駆動誤差により生じうる。
【0041】
比較例1と比較して、生産性の観点では向上する。しかし、比較例1と比較して、第2パターン領域33の重ね合わせ精度の点で不利となるおそれがある。
【0042】
(比較例3)
比較例3では、特許文献1で説明した手法について説明する。比較例3では、比較例2と同様に、アライメント計測部2aの各アライメントスコープや、オフアクシス計測部2b、2cのそれぞれの各オフアクシススコープの間隔を第1露光と第2露光とで変更しない(スコープを駆動させない)方法について説明する。また、比較例3では、比較例2で説明した位置合わせマーク31g、31h、31iの形成のタイミングを比較例2とは異なるタイミングで実施することで、下層における第1パターン領域と第2パターン領域との相対位置の誤差による悪影響を低減する。図4は、比較例3における走査露光を説明するための図である。
【0043】
図4(a)は、第1露光における原版3aの状態を示す図である。後述する上層における第2露光で6点の位置合わせマーク41を計測することを目的として、位置合わせマーク41が6点形成されている。第1露光では、図4(a)に示すように原版3a中央部のパターンが形成されていない矩形状の領域に遮光部44を配置し、一部の光を遮光する。
【0044】
図4(b)は、図4(a)に示す原版3aの状態で、下層における第1露光を行った基板6aの状態を示す図である。第1露光で露光される領域が、第1パターン領域42である。上層において、第1パターン領域42における走査露光を第1露光により行う際には、下層に形成された位置合わせマーク41a~41fを計測することにより、第1パターン領域42の形状を補正する。アライメント計測部2aの各スコープは、位置合わせマーク41bと41eをそれぞれ計測する。また、オフアクシス計測部2bの各スコープは、位置合わせマーク41aと41dをそれぞれ計測し、オフアクシス計測部2cの各スコープは、位置合わせマーク41cと41fをそれぞれ計測する。また、第1露光において、アライメント計測部2aの各スコープの間隔、オフアクシス計測部2bの各スコープの間隔、及びオフアクシス計測部2cの各スコープの間隔は、いずれもd1だけ離間した状態で計測される。
【0045】
図4(c)は、第2露光における原版3aの状態を示す図である。遮光部44を駆動させ、遮光部44が原版3aの一部の領域(例えば、原版3aに形成されているパターンの半分を遮光する領域)を遮光する。
【0046】
図4(d)は、図4(c)に示す原版3aの状態で、下層における第2露光を行った基板6aの状態を示す図である。第2露光で露光される領域が、第2パターン領域43である。このとき、位置合わせマーク41j、41k、41lも形成する。第2パターン領域43にパターンを形成した後に、位置合わせマーク41g、41h、41iを形成する工程を行う。
【0047】
図4(e)は、下層の第2露光によるパターン形成を行った後に、位置合わせマーク41g、41h、41iを形成するための原版3aの状態を示す図である。遮光部44を駆動させ、遮光部44が原版3aの3つの位置合わせマークがある領域以外の領域を遮光する。
【0048】
図4(f)は、図4(e)に示す原版3aの状態で、位置合わせマーク41g、41h、41iを形成する工程を行った基板6aの状態を示す図である。位置合わせマーク41g、41h、41iは、領域46に形成される。第2パターン領域43における走査露光を第2露光により行う際には、下層に形成された位置合わせマーク41g~41lを計測することにより、第2パターン領域43の形状を補正する。アライメント計測部2aの各スコープは、位置合わせマーク41hと41kをそれぞれ計測する。また、オフアクシス計測部2bの各スコープは、位置合わせマーク41gと41jをそれぞれ計測し、オフアクシス計測部2cの各スコープは、位置合わせマーク41iと41lをそれぞれ計測する。また、第2露光において、アライメント計測部2aの各スコープの間隔、オフアクシス計測部2bの各スコープの間隔、及びオフアクシス計測部2cの各スコープの間隔は、いずれも、第1露光と同様に、d1だけ離間した状態で計測される。
【0049】
上記で説明したように、比較例3では、位置合わせマーク41g、41h、41iを第1露光で形成せずに、第2露光の後に形成することで、重ね合わせ精度を向上させることができる。図4(g)は、第1露光における第1パターン領域42に対して、第2露光における第2パターン領域43の位置がずれてしまっている様子を示す図である。図4(g)において点線で示されている目標領域45は、第2露光におけるパターン領域の目標位置である。比較例3では、位置合わせマーク41g、41h、41iを第2露光で第2パターン領域43を形成した基板6aの位置で、基板ステージ6bを駆動させずに形成するため、第1パターン領域42と第2パターン領域43との相対位置の誤差の影響を受けない。
【0050】
しかしながら、比較例3では、下層の第2露光でパターンを露光した後に、位置合わせマーク41g、41h、41iを形成するためだけの工程が別途必要になるため、生産性が低下する。また、下層の第2露光でパターンを露光する工程と、位置合わせマーク41g、41h、41iを形成する工程とで、基板ステージ6bを駆動させる必要がないものの、露光装置100の投影光学系の状態が露光により生じる熱等により変化するおそれがある。これにより、第2パターン領域43に対して位置合わせマーク41g、41h、41iの形成位置に誤差が生じるおそれがあり、重ね合わせ精度の低下につながるおそれもある。
【0051】
(本実施形態における露光処理)
本実施形態では、第1露光により露光される第1パターン領域と、第2露光により露光される第2パターン領域と、の相対位置ずれを計測することで、比較例2と比較して層の重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0052】
本実施形態における、原版3aにおける位置合わせマークの配置について、図5を参照して説明する。図5では、本実施形態における露光処理を説明するために位置合わせマークのみ図示しているが、実際には基板6aに転写するためのパターンが原版3aのパターン形成領域に形成されている。図5の原版3aにおける白で描画している箇所は、照射された光を透過或いは通過する箇所であり、原版3aに形成されている位置合わせマークが基板6aに転写される。
【0053】
図5(a)は、本実施形態の第1露光における原版3a及び遮光部4の状態を示す図である。図5(a)に示すように、原版3aのパターン形成領域には、位置合わせマークP1L、P1R、P2L、P2R、P3L、P3R、P1M、P2M、P3Mが形成されている。また、位置合わせマークP1MとP1Lの距離j1とし、位置合わせマークP1MとP1Rの距離j2としたとき、j1=j2の関係性となる。
【0054】
また、本実施形態では、位置合わせマークQ1S、Q3S、Q1F、Q3Fが更に形成されている。位置合わせマークQ1Sは、図5に示すように、位置合わせマークP1Mの近傍に形成されており、同様に位置合わせマークQ3S、Q1F、Q3Fは、それぞれ位置合わせマークP3M、P1R、P3Rの近傍に形成されている。
【0055】
遮光部4は、原版3aの直下に設けられており、例えば、X方向に駆動可能である。遮光部4の位置を制御部8で制御することにより、基板6aに転写される原版3aの領域を任意に定めることができる。本実施形態では、遮光部4が原版3aに形成されているパターンを遮光しない(第1照明領域を照明する)第1露光と、遮光部4が原版3aに形成されているパターンの半分を遮光する(第2照明領域を照明する)第2露光とを組み合わせて実行される。遮光部4は、照明光学系1、照明光学系1と原版3aとの間、原版3aと投影光学系5との間、投影光学系5、投影光学系5と基板6aとの間の少なくとも1つに、1個或いは複数個設けられる。
【0056】
図5(b)は、本実施形態の第2露光における原版3a及び遮光部4の状態を示す図である。図5(b)に示すように、図5(a)の状態から遮光部4をX方向に駆動することで、原版3a半分の領域と重複する状態となっている。これにより、第2露光では、原版3aの半分の領域におけるパターンのみが基板6aに転写される。
【0057】
次に、本実施形態における下層の露光方法と、上層の位置合わせ方法を順に説明する。図6は、本実施形態における下層及び上層の露光工程の手順を示すフローチャートである。制御部8が露光装置100の各部を制御することにより、本露光工程が実行される。
【0058】
ステップS101では、図5(a)に示した原版3a及び遮光部4の状態で、下地の第1露光を行う(第1露光工程)。図7(a)は、ステップS101により第1パターン領域73において第1露光が行われた後の基板6aの状態を示す図である。第1パターン領域73には、第1パターンと複数の位置合わせマークの潜像が形成される。図7(a)には、位置合わせマーク71a~71f(第1アライメントマーク)、71g~71i(第2アライメントマーク)、72a~72b(第3アライメントマーク)、及び72c~72dが基板6aに形成されている。
【0059】
ステップS102では、図5(b)に示した原版3a及び遮光部4の状態で、下地の第2露光を行う(第2露光工程)。制御部8は、遮光部4をX方向に駆動することで、原版3aの一部を遮光する。第2パターン領域76には、第2パターンと複数の位置合わせマークの潜像が形成される。図7(b)は、ステップS102により第2パターン領域76において第2露光が行われた後の基板6aの状態を示す図である。第2パターン領域76は、図7(b)の太線で示す領域であり、第1パターン領域73と一部が重複する領域である。第1パターン領域73と第2パターン領域76とが重複する領域を、以下では、重複領域77と呼ぶ。図7(b)には、位置合わせマーク74a~74c(第4アライメントマーク)、75a~75b、及び75c~75d(第5アライメントマーク)が基板6aに形成されている。
【0060】
ステップS103では、基板6aは、露光装置100から基板6aの潜像を現像する装置へと搬送され、現像される(第1現像工程)。そして、現像された基板6aは、露光装置100へと搬送される。現像された基板6aの位置合わせマークは、アライメント計測部2aやオフアクシス計測部2b、2cによって計測可能な状態となる。
【0061】
ステップS104では、基板ステージ6bを駆動させ、アライメント計測部2aと、オフアクシス計測部2b、2cとで、位置合わせマーク71a~71f(第1アライメントマーク)を計測する。位置合わせマーク71a~71fの計測は、アライメント計測部2a及びオフアクシス計測部2b、2cにおける複数のスコープで同時に行う。例えば、下層との重ね合わせ度合いを示す計測値(0に近い程、重ね合わせ精度が高いことを示す値)のすべてが0になるように、原版ステージ3bと、基板ステージ6bと、投影光学系5と、の制御情報を算出する。
【0062】
ステップS105では、ステップS104で算出された制御情報に基づいて上層における第1露光を実行する。これにより、第1パターン領域73において下層の第1パターンに重なるように上層の第1パターンを露光することができる。制御部8は、原版3aと基板6aの相対位置を制御しながらパターンを転写する。
【0063】
ステップS106では、基板ステージ6bを駆動させ、アライメント計測部2aと、オフアクシス計測部2b、2cとで、位置合わせマーク71g~71iと、位置合わせマーク74a~74cとを計測する。位置合わせマーク71g~71iと、位置合わせマーク74a~74cの計測は、アライメント計測部2a及びオフアクシス計測部2b、2cにおける複数のスコープで同時に行う。
【0064】
ステップS107では、基板ステージ6bを駆動させ、オフアクシス計測部2b、2cで、図7(b)に示す重複領域77に形成されている位置合わせマーク72a、72bと、位置合わせマーク75c、75dと、を計測する。このとき、位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cは、オフアクシス計測部2b又は2cのうちの1つの第1スコープの1つの視野内に収まっている。また、位置合わせマーク72bと位置合わせマーク75dは、オフアクシス計測部2b又は2cのうちの1つの第2スコープの1つの視野内に収まっている。
【0065】
ステップS108では、ステップS107で計測された第3アライメントマークと第5アライメントマークとに基づいて、下層に形成されている第1パターン領域73と第2パターン領域76との相対位置に関する配列情報を算出する。
【0066】
図7(c)及び図7(d)は、重複領域77に形成されている第3アライメントマークと第5アライメントマークの一例を示す図である。図7(c)では、位置合わせマーク72aの中心と位置合わせマーク75cの中心とが一致するように形成されている。位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cは、例えば、互いのマークを区別できるように大きさが異なる。同様に、位置合わせマーク72bの中心と位置合わせマーク75dの中心とが一致するように形成されている。
【0067】
図7(c)に示す例では、位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cの中心位置、及び位置合わせマーク72bと位置合わせマーク75dの中心位置のずれを測定する。中心位置がずれている場合には、第1パターン領域73と第2パターン領域76との相対位置がずれていることが分かる。位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cの中心位置のずれ量と、位置合わせマーク72bと位置合わせマーク75dの中心位置のずれ量に基づいて、パターン領域の相対位置がX方向やY方向にシフトしてしまっていることが分かる。また、位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cの中心位置のずれ量と、位置合わせマーク72bと位置合わせマーク75dの中心位置のずれ量の差を求めることで、Z軸回りの回転方向にパターン領域の相対位置がシフトしてしまっていることが分かる。或いは、位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cの中心位置、及び位置合わせマーク72bと位置合わせマーク75dの中心位置のずれの平均値を算出することにより、パターン領域間の相対位置ずれを算出しても良い。
【0068】
図7(d)では、図7(c)とは異なる形状および配置の位置合わせマークを示す。図7(d)に示す例では、位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cが隣り合う配置となるように重複領域77に形成されている。位置合わせマーク72aと位置合わせマーク75cとの距離を測定することで、パターン領域間の相対位置ずれを算出することができる。予め位置合わせマーク間の基準となる基準距離を設定しておき、基準距離からのずれ量に応じて、パターン領域間の相対位置を算出する。図7(d)に示した例においても、図7(c)の例と同様に、パターン領域間の相対位置を算出することができる。
【0069】
また、図7(c)、図7(d)で示した例以外のマークの形状でも良い。また、位置合わせマーク72aや位置合わせマーク75cが重複領域に形成される説明をしたが、1つのスコープで2つの位置合わせマークを検出することができれば良く、必ず重複領域が形成されるように第1露光と第2露光が行われなくとも良い。
【0070】
ステップS109では、ステップS107で第2アライメントマークと第4アライメントマークとが計測された計測情報と、ステップS108で算出された配列情報と、に基づいて、上層における第2露光を実行する(第3露光工程)。これにより、第2パターン領域76において下層のパターンに重なるように上層のパターンを露光することができる。具体的には、ステップS107で第2アライメントマークと第4アライメントマークとが計測された計測情報から、ステップS108で算出されたパターン領域間の相対位置ずれの量を除去する。これにより、パターン領域間の相対位置ずれの影響を低減させることができ、より高精度に第2パターン領域76における層の重ね合わせを実行することが可能となる。制御部8は、原版3aと基板6aの相対位置を制御しながらパターンを転写する。
【0071】
本実施形態における第1アライメントマーク、第2アライメントマーク、第3アライメントマーク、第4アライメントマーク、及び第5アライメントマークを検出する複数の工程(ステップS104、S106、S107)をまとめて検出工程とも呼ぶ。また、ステップS105の第1露光は、ステップS106やステップS107における計測の後、或いはステップS108における相対位置誤差の算出の後に実施されても良い。また、図6のフローチャートでは、同一の露光装置のみで下層と上層を露光する例について説明したがこれに限らず。上層と下層とで異なる装置により露光が行われても良い。例えば、露光装置100と同様な機能を有する別の露光装置でステップS101、S102を実行し、第1現像工程を実行し、露光装置100によりステップS104~S109が実行されても良い。
【0072】
以上より、本実施形態では、パターン領域間の相対位置誤差を算出し、第2露光の位置合わせに用いることで、比較例2に比べて層の重ね合わせ精度を向上させることが可能となる。また、比較例3に比べて露光のステップを減少させることができるため、生産性を向上させることができる。
【0073】
<第2実施形態>
第1実施形態では、第2露光において、遮光部4で原版3aの半分の領域を遮光する例について説明した。遮光部4で遮光する領域は、原版3aのパターンが形成されているレイアウト、及び基板6aにパターンを無駄なく形成するレイアウトによって決まれば良い。本実施形態では、遮光部4で原版3aの1/3の領域を遮光する例について説明する。尚、~の構成については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、本実施形態で言及しない事項については、第1実施形態に従う。
【0074】
本実施形態における、原版3aにおける位置合わせマークの配置について図8を参照して説明する。図8では、本実施形態における露光処理を説明するために位置合わせマークのみ図示しているが、実際には基板6aに転写するためのパターンが形成されている。図8で示す原版3a白の箇所は、照射された光を透過或いは通過する箇所であり、原版3aに形成されている位置合わせマークが基板6aに転写される。
【0075】
図8(a)は、本実施形態の第1露光における原版3a及び遮光部4の状態を示す図である。第1実施形態との違いは、位置合わせマークQ1S、及びQ3Sの位置である。位置合わせマークQ1Sは、位置合わせマークP1L、P1Mの間に配置され、位置合わせマークQ3Sは、位置合わせマークP3L、P3Mの間に配置されている。これは、第2露光において遮光部4で遮光する原版3aの領域が第1実施形態とは異なるために、変更されている。
【0076】
図8(b)は、本実施形態の第2露光における原版3a及び遮光部4の状態を示す図である。遮光部4が原版3aの1/3の領域を遮光し、2/3の領域が基板6aに転写される位置となっている。これにより、第1露光と第2露光で重複して露光される露光領域に、図7で示した状態と同じように位置合わせマークが形成される。
【0077】
以上より、本実施形態では、パターン領域間の相対位置誤差を算出し、第2露光の位置合わせに用いることで、比較例2に比べて層の重ね合わせ精度を向上させることが可能となる。また、比較例3に比べて露光のステップを減少させることができるため、生産性を向上させることができる。
【0078】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板上に塗布された感光剤に上記の露光装置による露光で潜像パターンを形成し、露光基板を得る工程と、かかる工程で潜像パターンが形成された露光基板を現像し、現像基板を得る工程(第2現像工程)とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
2a アライメント計測部(第1検出部)
2b、2c オフアクシス計測部(第2検出部)
3a 原版
6a 基板
8 制御部
71a、71b、71c、71d、71e、71f 位置合わせマーク(第1アライメントマーク)
71g、71h、71i 位置合わせマーク(第2アライメントマーク)
72a、72b 位置合わせマーク(第3アライメントマーク)
73 第1パターン領域
74a、74b、74c 位置合わせマーク(第4アライメントマーク)
75c、75d 位置合わせマーク(第5アライメントマーク)
76 第2パターン領域
100 露光装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9