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特許7520919受電装置、受電装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】受電装置、受電装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240716BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240716BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022107355
(22)【出願日】2022-07-01
(62)【分割の表示】P 2018234711の分割
【原出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2022130669
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】七野 隆広
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184383(JP,A)
【文献】特開2017-169408(JP,A)
【文献】特開2018-129942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
を有し、
前記通信手段は、第一の周波数で識別情報を送信し、認証が第二の周波数で可能であるかを意味するパケットを送信し、前記送電装置から前記認証が前記第二の周波数で可能であるかを意味するパケット受信することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記通信手段は、前記第二の周波数で前記認証の通信を行うことを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記認証の通信は、電子証明書を用いる前記送電装置の認証の通信であることを特徴とする請求項1又は2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記受電装置は、前記認証に基づいて、前記送電装置と電力の交渉を行うことを特徴とする請求項3に記載の受電装置。
【請求項5】
前記通信手段は、前記第一の周波数で前記交渉の通信を行うことを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記通信手段が送信する前記認証が前記第二の周波数で可能であるかを意味する前記パケットは、Bluetooth Low Energyに関する規格に基づく通信による認証が可能であることを意味するパケットであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項7】
前記通信手段が前記送電装置から受信する前記認証が前記第二の周波数で可能であるかを意味するパケットは、Bluetooth Low Energyに関する規格に基づく通信による認証が可能であることを意味するパケットであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項8】
前記通信手段は、前記第一の周波数で負荷変調による通信を行い、
前記第二の周波数でBluetooth Low Energyに関する規格に基づく通信を行うことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の受電装置。
【請求項9】
送電装置から無線で受電する受電手段と、前記送電装置と通信を行う通信手段とを有する受電装置の制御方法であって、
前記通信手段が、第一の周波数で識別情報を送信し、認証が第二の周波数で可能であるかを意味するパケットを送信する工程と、
前記通信手段が、前記送電装置から前記認証が前記第二の周波数で可能であるかを意味するパケット受信する工程と、
を有することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1乃至8の何れか1項に記載の受電装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、受電装置の制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。特許文献1では、非接触充電規格の標準化団体Wireless Power Consortium(WPC)が策定する規格(WPC規格)に準拠した送電装置および受電装置が開示されている。これらの送電装置および受電装置は、電力伝送に必要な制御情報を、送受電する電力に重畳する通信によってやりとりを行う。
【0003】
特許文献2では、送電電力の制御のために送電装置と受電装置との間で実施される制御信号を、送電部及び受電部とは異なる周波数、異なるコイル(またはアンテナ)を介した通信部を用いた通信で通信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-007116号公報
【文献】特開2012-217224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線電力伝送システムにおける制御通信には、データ量の少ないパケットや、データ量の多いパケットがある。しかしながら、従来技術では、複数の通信部を用いた通信が可能な無線電力伝送システムにおいて、それらのパケットを複数の通信部を使い分けて送受信することは行われていない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、無線電力伝送の際に複数の通信部を好適に制御可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明に係る受電装置は、
送電装置から無線で受電する受電手段と、
前記送電装置と通信を行う通信手段と、
を有し、
前記通信手段は、第一の周波数で識別情報を送信し、認証が第二の周波数で可能であるかを意味するパケットを送信し、前記送電装置から前記認証が前記第二の周波数で可能であるかを意味するパケット受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線電力伝送の際に複数の通信部を好適に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る送電装置の構成例を示すブロック図。
図2】一実施形態に係る受電装置の構成例を示すブロック図。
図3】一実施形態に係る無線電力伝送システムの動作シーケンス図。
図4】一実施形態に係る受電装置が実施する処理の手順を示すフローチャート。
図5】一実施形態に係る送電装置が実施する処理の手順を示すフローチャート。
図6】一実施形態に係る送電装置が実施する送電停止の防止に関する処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0011】
<送電装置の構成>
図1は、一実施形態に係る無線電力伝送システムに適用可能な送電装置の構成例を示すブロック図である。送電装置100はWPC規格に準拠しており、さらに機器認証プロトコルに対応しているとする。なお、本実施形態では、送電装置と受電装置とがWPC規格に準拠しているものとして説明するが、それに限定されず、他の無線電力伝送規格であってもよい。
【0012】
送電装置100は、制御部101、電源部102、送電部103、第一通信部104、送電コイル105、第二通信部106、メモリ107、及び認証部108を備えている。制御部101は、送電装置100全体を制御する。制御部101の一例はCPU(Central Processing Unit)である。電源部102は、少なくとも制御部101および送電部103が動作するための電源を供給する。送電部103は、送電コイル105を介して図2を参照して後述する受電装置200へ伝送する交流電圧および交流電流を発生させる。具体的には、送電部103は、電源部102が供給する直流電圧を、FET(Field Effect Transistor)を使用したハーフブリッジもしくはフルブリッジ構成のスイッチング回路で交流電圧に変換する。送電部103はFETのON/OFFを制御するゲ-トドライバを含む。また、送電部103は、WPC規格に対応した受電装置200の充電部に例えば15ワットの電力を出力する電力供給能力があるものとする。
【0013】
第一通信部104は、受電装置200の通信部(図2の第一通信部204)との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。本実施形態では、第一通信部104が実行する通信は、送電部103が発生する交流電圧または電流を変調し、無線電力伝送に用いるための信号を重畳する通信である。以下、第一通信部104と受電装置200の通信部(図2の第一通信部204)とで行う通信を第一通信という。
【0014】
第二通信部106は、受電装置200の通信部(図2の第二通信部202)との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。第二通信部106による通信は、送電部103の周波数と異なる周波数を使用する通信であり、送電コイル105とは異なるアンテナ(不図示)を使用する。本実施形態では、第二通信部106はBluetooth Low Energy(BLE)のペリフェラルとして動作するものとして説明を行う。ただし、BLEのセントラルや、Near Field Communication(NFC)またはWiFiなどであってもよい。本実施形態では、第二通信部106による通信は第一通信部104による通信と比較して、高速な通信が可能であるとする。以下、第二通信部106と受電装置200の通信部(図2の第二通信部202)とで行う通信を第二通信という。
【0015】
また、第二通信部106は、制御部101によって制御されるが、送電装置100を内蔵する図示しない他の装置(カメラ、スマートフォン、タブレットPC、ラップトップ)の制御部により制御される構成であってもよい。
【0016】
メモリ107は、送電装置100および受電装置200の状態を記憶する。また、送電装置100を動作させるためのコンピュータプログラムを記憶している。認証部108は、第一通信部104または第二通信部106を介して受電装置200との間で機器認証プロトコルを実行する。
【0017】
なお、図1の例では、制御部101、電源部102、送電部103、第一通信部104、メモリ107、第二通信部106は別体として記載しているが、これらの内の任意の複数は、同一チップ内に実装されてもよい。
【0018】
<受電装置の構成>
続いて、図2は、一実施形態に係る無線電力伝送システムに適用可能な受電装置の構成例を示すブロック図である。受電装置200はWPC規格に準拠しており、WPC規格v1.2.2に記載の機能を含み、加えて、機器認証プロトコルに対応しているとする。
【0019】
受電装置200は、制御部201、第二通信部202、受電部203、第一通信部204、送電コイル205、充電部206、バッテリ207、メモリ208、及び認証部209を備えている。
【0020】
制御部201は、受電装置200全体を制御する。制御部201の一例はCPUである。受電部203は、受電コイル205を介して受電した送電コイル105からの交流電圧および交流電流を制御部201および充電部206などが動作する直流電圧および直流電流に変換する。受電部203は、充電部206がバッテリ207を充電するための電力を供給し、充電部206に15ワットの電力を出力する電力供給能力があるものとする。
【0021】
第一通信部204は、送電装置100の第一通信部104との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。この制御通信は、受電コイル205で受電した電磁波を負荷変調することで行う通信である。
【0022】
第二通信部202は、送電装置100の第二通信部106との間で、WPC規格に基づいた無線電力伝送の制御通信を行う。第二通信部202による通信は、送電装置100の送電部103の周波数と異なる周波数を使用する通信であり、送電コイル105とは異なる図示しないアンテナを使用する。本実施形態では、第二通信部202はBLEのセントラルに対応しているものとして説明する。ただし、BLEのペリフェラルや、NFCまたはWiFiなどであってもよい。本実施形態では、第二通信部202による通信は第一通信部204による通信と比較して、高速な通信が可能であるとする。
【0023】
また、第二通信部202は、制御部201によって制御されるが、受電装置200を内蔵する図示しない他の装置(カメラ、スマートフォン、タブレットPC、ラップトップ)の制御部により制御される構成であってもよい。
【0024】
メモリ208は、送電装置100および受電装置200の状態を記憶する。また、受電装置200を動作させるためのコンピュータプログラムを記憶している。認証部209は、第一通信部204または第二通信部202を介して送電装置100との間で機器認証プロトコルを実行する。
【0025】
<機能及び状態遷移>
ここで、WPC規格に準拠した送電装置100、受電装置200の機能および状態遷移について、図3から該当する部分を抜き出して概略的に説明する。図3は、一実施形態に係る無線電力伝送システムに適用可能な送電装置と受電装置とのシーケンス図である。
【0026】
送電装置100が起動すると、送電部103は、送電コイル105を介してAnalog Pingを送電する(F300)。Analog Pingとは送電コイル105の近傍に存在する物体を検出する為の微小な電力の信号である。送電装置100がAnalog Pingを送電しているとき、送電装置100はSelectionフェーズという状態にある。
【0027】
送電装置100は、Analog Pingを送電した時の送電コイル105の電圧値または電流値を検出する。そして、電圧がある閾値を下回るもしくは電流値がある閾値を超えるなどの場合に送電コイル105の周辺に物体が存在すると判断し、送電装置100はPingフェーズに遷移する。
【0028】
Pingフェーズでは、送電装置100はAnalog Pingより電力が大きいDigital Pingを送電する(F301)。Digital Pingの大きさは、少なくとも送電コイル105の近傍に存在する受電装置200および制御部201が起動するのに十分な電力であるものとする。
【0029】
受電装置200の制御部201は、受電コイル205を介して受電した電力(Digital Ping)により起動する。起動すると、受電電圧の大きさを送電装置100へ通知し(F302)、Identification & Configuration(以下、I&Cフェーズという)へ遷移する。ここで、受電電圧通知は、第一通信部204を介した第一通信により行われる。
【0030】
送電装置100は、受電装置200から受電電圧通知を受信すると、I&Cフェーズへ遷移する。続いて、受電装置200は自身の製造者を示す製造者コードやデバイス識別情報を含むID Packetを送電装置100へ送信する(F303)。また、送電装置100は、自身が準拠している規格バージョン等を含むConfiguration Packetを送電装置100へ送信する(F304)。
【0031】
送電装置100は、受電装置200からConfiguration Packetを受信し、かつ受電装置200が対応する規格バージョンが例えばv1.2.2以上のバージョンであるか否かを判定する。規格バージョンがv1.2.2以上のバージョンである場合、Configuration Packetに含まれる情報を許諾したことを示すACKを受電装置200へ送信する(F305)。そして、Negotiationフェーズに遷移する(F319)。同様に、受電装置200は、ACKを受信すると(F305)、Negotiationフェーズに遷移する(F319)。なお、本実施形態に特有の所定の処理(F306~F318、F323、F324)についての説明は後述する。
【0032】
そしてNegotiationフェーズ(F319)では、送電装置100及び受電装置200は、受電装置200が必ず受電できる電力の大きさを示すGuaranteed Power(以下、GPという)を決めるための交渉を行う。具体的には、受電装置200がGPの候補となる値を送電装置100へ通知する。そして、送電装置100は当該通知を許諾もしくは拒否する。受電装置200は充電部206に15ワットの電力を出力する電力供給能力があるので、GPの値の候補として最大15ワットを通知できる。また、送電装置100は、GPの値として最大15ワットを許諾することができる。
【0033】
GPの交渉が終了すると、送電装置100及び受電200は、Calibrationフェーズ(F320)へ遷移する。Calibration フェーズ(F320)では、詳細は説明しないが、送電装置10が送電コイル105近傍に受電装置200ではない物体が存在することを検出する異物検出機能に必要なパラメータを決定する。Calibrationフェーズでは、受電装置100は、受電部203から負荷となる充電部206へ電力を供給する処理も行う。その後、送電装置100及び受電装置200は、Power Transferフェーズ(F321)へ遷移し、受電装置200はバッテリ207を充電する。
【0034】
以上が、WPC規格に準拠した送電装置100及び受電装置200の機能および状態遷移に関する概略説明である。
【0035】
<機器認証>
続いて、機器認証について説明する。機器認証は、送電装置100及び受電装置200の間で互いの正当性を確認する処理であり、双方向で行われる処理である。具体的には、送電装置100が受電装置200の正当性を確認してもよいし、受電装置200が送電装置100の正当性を確認してもよい。そして、送受電する電力の大きさは機器認証の結果に応じて決定する。
【0036】
具体的には、送電装置100は、正当性を確認できなかった受電装置に対しては、正当性を確認できた受電装置に送電する電力と比較して小さい電力で送電を行う。そのため、送電装置100は、Negotiationフェーズにおいて、正当性を確認できなかった受電装置に対して、正当性を確認できた受電装置と比較して小さいGPしか許容せず、かつ自身が供給できるGPの最大値である15ワットは許容しない。正当性を確認できなかった受電装置は粗悪な受電装置の可能性があり、正当な受電装置と比較して過度に発熱するなどの可能性があるが、これにより、過度な発熱を防止することができる。
【0037】
同様に、受電装置200は、正当性を確認できなかった送電装置に対して、正当性を確認できた送電装置から受電する電力と比較して小さいGPを要求する。つまり、受電装置200は、Negotiationフェーズにおいて、正当性を確認できなかった送電装置に対して、自身のGPの最大値である15ワットを要求しない。正当性を確認できなかった送電装置は、粗悪な送電装置である可能性があり、正当な送電装置と比較して過度に発熱するなどの可能性があるが、これにより、過度な発熱を防止することができる。
【0038】
また、機器認証はNegotiationフェーズよりも前に実施する。なぜなら、機器認証の結果は、Negotiationフェーズで交渉するGPの大きさに影響を及ぼすためである。仮にNegotiationフェーズでGPが決定した後に機器認証を行った場合は、機器認証の結果に基づいて、再度Negotiationフェーズに遷移し、GPの交渉をやり直すなど無駄な処理が発生する可能性があるからである。
【0039】
また、より早期に機器認証処理を終了させるには、機器認証を第一通信と比較して高速な第二通信で行う方法がある。
【0040】
ここで、機器認証を第二通信で行った場合の現象について説明する。まず、WPC規格では、送電装置100が、受電装置200を検出できない場合に、送電を停止する仕組みがある。この仕組みにより、受電装置200が送電装置100から物理的に離れたりして、受電装置200が検出できなくなった場合に、送電装置100が送電を停止できる。そのため、受電装置200が送電範囲に存在しないにも関わらず不要な電波を出し続けることを防止することができる。
【0041】
具体的には、I&Cフェーズでは、受電装置200の第一通信部204が送信したパケットの後端を送電装置100が受信してから、所定の時間(25ms)内に次のパケットの先頭を受信しない場合に、送電装置100は送電を停止する。また、Negotiationフェーズでは、受電装置200の第一通信部204が送信したパケットに対して送電装置100が応答を送信してから、所定の時間(250ms)内に次のパケットを受信しない場合に、送電装置100は送電を停止する。またPower Transferフェーズでも同様に、受電装置200の第一通信部204が送信したパケットの後端を送電装置100が受信してから、所定の時間(1500ms)内に次のパケットの先頭を受信しない場合、送電装置100は送電を停止する。このように、送電装置100はタイムアウトによって送電を停止する機能を有する。
【0042】
そしてI&Cフェーズが終了し、Negotiationフェーズに遷移した際に、第二通信で機器認証(制御通信)を行った場合は、先に述べた理由でGPの交渉を第二通信で行う機器認証の結果に基づいて行う。そのため、第一通信で受電装置が送信すべきパケットが存在しない。すると、送電装置は、すでに説明したように受電装置から第一通信で所定の時間、パケットを受信せず、送電を停止してしまう。また、第二通信は、他の無線通信との干渉などにより再送が発生しやすいため、第一通信を行わない時間がより長くなる可能性もある。
【0043】
これに対して、本実施形態に係る受電装置は、第二通信で送電装置との間で機器認証を行っている間も、第一通信で送電装置にパケットを送信する。これにより、送電装置が送電を停止すること防止することが可能となる。
【0044】
<無線電力伝送システムの動作シーケンス>
改めて図3を用いて、送電装置100及び受電装置200を含む無線電力伝送システムのシーケンスの詳細な手順を説明する。前述した通り、送電装置100はAnalog Pingを送信し(F300)、送電コイルの近傍に物体が存在すると判断すれば、Digital Pingを送電する(F301)。受電装置200はDigital Pingを受電すると(F301)、制御部201を起動する。そしてDigital Pingの受電電圧を送電装置200に通知し(F302)、I&Cフェーズへ遷移する。
【0045】
そして、受電装置200はID Packetを送信し(F303)、Configuration Packetを、第一通信部104を介して送電装置100へ送信する(F304)。送電装置200は、Configuration Packetを受信すると、ACKを送信する(F305)。受電装置200はACKを受信する(F305)と、OOB Reqを送信する(F306)。
【0046】
Configuration Packetによれば、受電装置200は機器認証に対応しており、さらにBLEを使用した機器認証にも対応しているものとする。また、送電装置100も機器認証に対応しており、さらにBLEを使用した機器認証にも対応しているものとする。よって、送電装置100はBLEによる機器認証を行うことを許諾するACKを送信する(F307)。
【0047】
受電装置200は当該ACKを受信する(F307)と、第一通信部104を介してIDLEの送信を開始する(F308)。送電装置100はIDLEに対してACKを送信する(F323)。ここで、受電装置200がIDLEに対するACKを受信しなければ、受電装置200は送電装置100に対して送電停止を指示するEPTを送信してもよい。また、受電装置200がIDLEに対してACKではない他のパケット、例えばNAKやND(Not Defined)を受信した場合にも、受電装置200はEPTを送信してもよい。
【0048】
NDパケットとは、受電装置200が送信したパケットを送電装置100が理解できなかった場合に、送電装置100が送信する応答パケットである。送電装置100は、受電装置200から受信したOOB Reqに対してACKを受電装置200へ送信していた場合(F307)、IDLEを送信することでタイムアウトによる送電停止を回避するという意図を、送信装置100は理解できるはずである。それにも関わらず、受電装置200が送電装置100からNAKやNDを受信した場合(F323)、受電装置200は送電装置100が故障したと解釈し、EPTの送信により送電を停止させることができる。
【0049】
続いて、送電装置100は、第二通信部106を介してADVを送信する(F309)。そして、受電装置200は、第二通信部202を介してCONNECTを送信する(F311)。その後、受電装置200は、Auth Reqを送信し(F312)、送電装置100からACKを受信した(F313)後に、受電装置200は自身がイニシエータとして動作するAuth処理を実施する(F314)。
【0050】
送電装置100および受電装置200が第二通信による制御通信を行っている間も、受電装置200は一定時間が経過する前に(例えば定期的に)IDLEを送信する(F310、F324)。そして、送電装置100は当該IDLEに対してACKで応答する(不図示)。続いて、送電装置100はAuth Reqを送信し(F315)、受電装置200からACKを受信した(F316)後、送電装置100自身がイニシエータとして動作するAuth処理を実施する(F317)。
【0051】
Auth処理が終了すると、受電装置200は、送電装置100へTERMINATEを送信し(F318)、BLEの通信を終了する。Auth処理が終了したので、送電装置100及び受電装置200はGPのNegotiationを実施し(F319)、Calibrationフェーズ(F320)へ、そしてPTフェーズ(F321)へ遷移する。
【0052】
ここで、Specific RequestのうちPacket TypeがGuaranteed Powerであるパケットであって、受電装置200が所望のGPを送電装置100へ通知するパケットを送信した後は、送電装置100および受電装置200は、決められたタイミングでパケットを送受信することがWPC規格で規定されている。よって、以降、送電装置100がタイムアウトで送電を停止することがない。そのため、受電装置200は、タイムアウトが発生しないことを目的として送信していたIDLEの送信を停止する。
【0053】
以上説明したように、第二通信で制御通信を行っている間は、受電装置が第一通信でIDLEを送信することで、送電装置が送電を停止すること防止することができる。さらに、第一通信で送信すべきパケットが存在するGPの交渉以降は、IDLEの送信を停止することで、無駄なパケットの送信を停止し、処理を軽減することができる。
【0054】
なお、送電装置100が第二通信を行っている間に、第二通信部106を使用できなくなる状況が発生する可能性もある。例えば、送電装置100を内蔵した図示しない装置が第二通信部106を占有してしまう場合などである。その場合、送電装置100は、第二通信部106を第二通信に使用できないと判断した場合には、IDLEに対してNAKで応答するように構成してもよい。
【0055】
受電装置200は、NAKを受信すると、第二通信で行っていた制御通信を第一通信に切り替える。具体的には、NAKを受信した後、TERMINATEを受信しなければ、受電装置200はTERMINATEを送信する。そして、第二通信で実施していた制御通信を、第一通信で実施する。当然ながら、受電装置200は、第一通信に切替えた時点で、第一通信で送信すべきパケットが存在するので、IDLEの送信は不要であり送信を停止する。これにより第二通信が使用できない場合でも、送電装置100との通信を継続することができる。
【0056】
また、受電装置200の第二通信部202が動作するための電力を、受電装置200の図示しないバッテリが供給している。バッテリ残量がBLEを駆動するのに十分でない場合は、受電装置200はConfiguration PacketのBLE bitに「0」を格納するようにしてもよい。また、受電装置200を内蔵した図示しない装置がBLEを使用中であり、認証処理(制御通信)にBLEを使用できない場合にも、受電装置200はConfiguration PacketのBLE bitに「0」を格納するようにしてもよい。これにより、受電装置200がBLEを第二通信に使用できないにも関わらず、送電装置100がADVを送信するといった不具合の発生を回避することができる。
【0057】
<受電装置の処理>
続いて、図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る受電装置200が実施する処理の手順を説明する。まずS401において、受電装置200は、図3を参照して説明したSelectionフェーズおよびPingフェーズの処理を実行する。
【0058】
S402において、受電装置200は、ID PacketとConfiguration Packetを送電装置100へ送信する。ここで、受電装置200は、Configuration Packetにおいて、機器認証に対応していることと、機器認証をBLEによる第二通信で実施可能であることとを送電装置100へ通知する。具体的には、WPC規格のConfiguration Packetで使用されていないReserve領域を用いて、Authentication bit(以下Auth bit)と、BLE bitとが「1」であるConfiguration Packetを送電装置100へ送信する。Auth bitは機器認証に対応していることを示すためのbitである。また、BLE bitは機器認証をBLEによる第二通信で実施可能であることを示すためのbitである。
【0059】
S403において、受電装置200は、Configuration Packetに対するACKを送電装置から受信したか否かを判定する。WPC規格v1.2.2によれば、Configuration Packetに対してACKを受信した場合、受電装置200は、送電装置がNegotiationフェーズに対応していることを認識できる。ACKを受信した場合、受電装置200はNegotiationフェーズに遷移し、S404へ進む。一方、ACKを受信していない場合、S418へ進む。
【0060】
S404において、受電装置200は、BLEによる第二通信を要求することを示すOut OFBand Request(OOB Req) パケットを、第一通信部202を介して送信する。OOB Reqパケットは、送電装置100が第二通信部104としてBLEに対応しており、さらに第二通信部104を用いた機器認証に対応しているか否かを確認するために送信される。
【0061】
OOB ReqパケットはBLE bitを含んでおり、BLE bitが「1」であれば、第二通信としてBLEを使用することを要求することを示している。また、OOB ReqパケットはAuth bitを含んでおり、Auth bitが「1」であれば、第二通信を使用した機器認証を要求することを示している。
【0062】
また、OOB Reqパケットは、第二通信の種類としてNFCを使用することを要求するNFC bitを含んでもよい。NFC bitが「1」であれば、第二通信としてNFCを使用することを要求することを示している。同様に、第二通信の種類としてWiFiを使用することを要求するWiFi bitを含んでもよい。さらに、WPC規格で定義されているGeneral RequestやSpecific Requestのうち、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetパケットを、OOB Reqパケットとして定義してもよい。
【0063】
S405において、受電装置200は、送電装置100から、OOB Reqの応答としてACKを受信したか否かを判定する。受電装置200が送電装置100からOOB Reqの応答としてACKを受信した場合、受電装置200は、送電装置100が第二通信部104としてBLEに対応しており、さらに第二通信部104を用いた機器認証に対応していることを認識できる。ACKを受信した場合、S406へ進む。一方、ACKを受信していない場合、S420へ進む。
【0064】
S406において、受電装置200は、Negotiationフェーズに遷移してからGPの交渉を行うまでの間、送電装置100へ、WPC規格で定められたタイミングで第一通信部204を介して定期的にIDLEを送信する。IDLEは例えば図3のF308、F310、F324に対応している。具体的には、送電装置100が第一通信部104を介して送信する、IDLEの応答パケット(例えばACK)の後端、つまり前のパケットの後端から、WPC規格で定められた最大19ms以内に、受電装置200は次のIDLEを送信する。ここでIDLEパケットとは、第二通信で制御通信を行うときに、送電装置100に送電を停止させないために定期的に送信するパケットである。
【0065】
OOB Reqを理解できる送電装置100は、IDLEを受信すると、応答としてACKを送信するようにしてもよい。送電装置100は定期的にIDLEを受信するので、タイムアウトにより送電を停止することがない。従って、第二通信で機器認証を行った場合に、送電装置が第一通信でパケットを一定時間受信せずに、送電を停止してしまうことを防止することができる。
【0066】
なお、受電装置200が送信するIDLEは、送電装置100がタイムアウトと判断しないようにすることが目的なので、他のパケットを使用してもよい。例えば、General RequestまたはSpecific Requestパケットの内、Packet Typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetであってもよい。
【0067】
続いて、S407において、受電装置200は、S405でACKを受信してから一定時間内に送電装置100の第二通信部104からAdvertise Indicationパケット(以下ADVという)を受信したか否かを判定する。ここで、ADVとは、BLEのペリフェラルが送信する情報である。ADVには、当該ペリフェラルの固体識別情報であるBluetooth Device Address(以下BD アドレスという)や、対応しているプロファイル情報(サービス情報)が格納されている。一定時間内にADVを受信した場合、S408へ進む。一方、一定時間内にADVを受信しなかった場合、S421へ進む。
【0068】
なお、受電装置200が受信するADVが、送電装置100が送信したADVであるか否かを判定するために、受電装置200は、事前に送電装置100の第二通信部104のBD アドレスを受信しておいてもよい。具体的には、S405でのACK受信後に、受電装置200が第一通信部204を介して、能力を問い合わせるパケットとしてWPC規格で定義されているパケットを送電装置100へ送信する。そして、送電装置100が当該パケットの応答としてBDアドレスを格納した応答を、第一通信部104を介して受電装置200へ送信してもよい。また、BDアドレスを問い合わせるパケットを新たに割り当ててもよい。例えばGeneral RequestもしくはSpecific Requestのうち、Packet typeが定義されていないReserved PacketやProprietary Packetパケットを割り当ててもよい。
【0069】
受電装置200は、送電装置100のBDアドレスを受信し、第二通信部202を介して受信したBDアドレスと一致するか否かを判定することによって、送電装置100からADVを受信したか否かを判定することができる。
【0070】
S408において、受電装置200は、第二通信部202を介して送電装置100にBLEによる接続を行うことを示すCONNECTパケットを送信する。
【0071】
S409において、受電装置200は、送電装置100との間でBLEによるデータの送受信が可能となった後に、Auth Reqパケットを、第二通信部202を介して送電装置100へ送信する。Auth Reqパケットは、送電装置100の正当性を確認するための機器認証を要求することを示すためのパケットである。
【0072】
Auth Reqパケットは、パケットの送信元(受電装置200)が送信先(送電装置100)の正当性を確認する役割であるイニシエータとして動作し、送信先が正当性を確認される役割であるレスポンダとして動作することを要求する情報を含む。
【0073】
S410において、受電装置200は、Auth Reqに対して許諾を示すACKを送電装置100から受信したか否かを判定する。許諾を示すACKを受信した場合、S411へ進む。一方、許諾を示すACKを受信しなかった場合、S412へ進む。
【0074】
S411において、受電装置200は、機器認証プロトコルであるAuthenticationを実施する。Authentication処理(以下Auth処理)は、電子証明書を使用した認証プロトコルの1つである。受電装置200は、Auth処理において送電装置100の正当性を確認する。
【0075】
S412において、受電装置200は、S411での送電装置100の正当性の確認後或いはS410でACKを受信しなかった場合、一定時間内に送電装置100から第二通信部202を介してAuth Reqを受信したか否かを判定する。Auth Reqは、送電装置100が送信先(受電装置200)の正当性を確認する役割であるイニシエータとして動作し、送信先である受電装置200が正当性を確認される役割であるレスポンダとして動作することを示す情報を含む。Auth Reqを受信した場合、S413へ進む。一方、Auth Reqを受信しなかった場合、S414へ進む。
【0076】
S413において、受電装置200は、自身がレスポンダとして動作するAuthenticationを行う。ここで、受電装置200が、S411のAuth処理において送電装置100の正当性を確認できなかった場合、つまり機器認証が失敗した場合は、送電装置100をイニシエータとするAuth処理を行わないようにしたい。その場合は、送電装置100が送信するAuth Reqを待たずにBLE接続を切断してもよい。なぜなら、送電装置100の正当性が確認できなかったために、送電装置100をイニシエータとするAuth処理の結果に関わらず、後述するNegotiationフェーズにおいて、送電装置100に要求するGPを制限する必要があるからである。無駄なAuth処理を行わないようにすることで、送電開始までの処理を高速化することができる。なお、受電装置200は、正当性が確認できなかった送電装置の識別情報、例えばBDアドレスまたはWPC規格によって規定される識別情報をメモリに記憶しておき、以降BLE接続をしないように構成してもよい。
【0077】
S414において、受電装置200は、第二通信部202を介して、BLE接続を切断することを意味するTERMINATE Indication(以下、TERMINATEという)を送電装置100へ送信する。
【0078】
そして、S415において、受電装置200は、BLEの切断以降は、第二通信部202は使用せずに、第一通信部204を使用すると判定し、IDLEの送信を停止する。このように、第二通信部202を使用する間、第一通信部204を介してIDLEパケットを送電装置100に送信することで、送電装置100が送電を停止することを防止することができる。
【0079】
さらに、機器認証の間IDLEを送信し、GPの交渉を行わないことにより、BLEを介して機器認証を行っている間に、第一通信でGPの交渉が行われ、機器認証終了後にGPの再交渉が必要になってしまうことを防止することができる。また、BLEを切断し、第二通信を用いた制御通信を行わない場合は、IDLEの送信を停止することで、無駄なパケットの送信をせず、制御部の処理を軽減することができる。
【0080】
S416において、受電装置200は、送電装置100との間でGPの交渉を行う。ここで、受電装置200は送電装置100の正当性が確認されている場合、GPとして最大値である15ワットを、第二通信部202を介して要求する。その場合、送電装置100も同様に受電装置200の正当性を確認しているので、自身のGPの最大値である15ワットを超えない範囲で、受電装置200の要求を許諾する。
【0081】
続いて、S417において、受電装置200は、Calibrationフェーズへ遷移する。そして、S418において、受電装置200は、PTフェーズへ遷移して、送電装置100から受電した電力で充電部206へ最大15ワットの電力を供給する。そして、充電が終了すると、S419において、受電装置200は、第一通信部204を介して送電装置100へ送電停止を指示するEnd Power Transfer(EPT)を送信する。
【0082】
S420において、受電装置200は、拒否を示す応答であるNAKを受信したか否かを判定する。NAKを受信した場合、S423へ進む。一方、NAKを受信しなかった場合、S418へ進み、PTフェーズへ遷移して受電電力を最大5ワットとして充電を開始する。
【0083】
S421において、受電装置200は、第二通信は使用せず、第一通信を使用してAuthenticationを行うと判断する。S422において、受電装置200は、IDLEの送信を停止する。S423において、受電装置200は、第一通信部204を介した第一通信でAuthenticationを実施する。その後、S416へ進み、GPの交渉を行う。
【0084】
以上の一連の処理によれば、送電装置及び受電装置が、第一通信と第二通信とを好適に制御可能となる。
【0085】
以上説明したように、S407でADVを受信する時間を、S405でACKを受信してから一定時間内に制限する。これにより、送電装置100又は受電装置200のBLEが正常に動作していない場合、もしくは、電波環境が悪いためにADVを受信できない場合などに、第一通信で機器認証を行うことができる。また、S421において第一通信で機器認証を行うと判断したら、S422でIDLEの送信を停止することで、無駄なパケットの送信を防止することができる。
【0086】
なお、一定時間内にADVを受信しなかった場合に、S423において受電装置200が第一通信でAuthenticationを実施する例を説明したが、この例に限定されない。一定時間内にBLEを使用した通信を開始しなかった場合もしくはBLEによる接続を確立できなかった場合に、第一通信でAuthenticationを実施する構成としても、同様の効果が得られる。
【0087】
また、受電装置200がOOB Reqを送信することで、送電装置100が第二通信部104としてBLEに対応しており、さらに第二通信部104を用いた機器認証に対応しているかどうかを確認する例を説明した。
【0088】
しかし、これに限らず、OOB Reqの送信に先立って送電装置100の能力を問い合わせてもよい。具体的には、General Request(Power Transmitter Capability)(括弧内はパケットタイプを示す)を、OOB Reqに先立って、受電装置200が第一通信部204を介して送信する。General Request(Power Transmitter Capability)は、WPC規格で規定されているGeneral Requestパケットの内、送電装置の能力を問い合わせるためのパケットとして定義されている。そして、送電装置100は、Power Transmitter Capability Packetを、第一通信部104を介して受電装置200へ送信してもよい。Power Transmitter Capability Packetは、BLE bitと、Auth bitと、Enable bitとを含むパケットである。BLE bitは、第二通信としてBLEに対応していることを示すためのbitである。Auth bitは、BLEを使用した機器認証処理に対応していることを示すためのbitである。Enable bitは、現在BLEを使用した認証処理を行うことが可能かどうかを示すためのbitである。
【0089】
そして、受電装置200はBLE bitが「1」で、Auth bitが「1」で、かつEnable bitが「1」である場合に、OOB Reqを送信するように構成する。そして、そうでない場合(第二通信部202で機器認証できない場合)は、OOB Reqを送信しないように構成する。これにより、無駄なOOB Reqの送信を防止することができる。
【0090】
なお、送電装置100又は当該送電装置100を内蔵する装置(不図示)がBLEを使用中であり、認証処理(制御通信)にBLEを使用できない場合には、送電装置100はEnable bitに「0」を格納する。また、BLEが動作するための電力をバッテリ(不図示)が供給しており、バッテリ残量がBLEを駆動するのに十分でない場合にも、送電装置100はEnable bitに「0」を格納する。
【0091】
また、送電装置100は、第二通信部104とは異なる第二通信部として機能する図示しない第三通信部(例えばNFC)を備えてもよい。その場合、第三通信部に対応していることを示すbitと、それを用いた機器認証に対応していることを示すbitと、現在第三通信部を使用した認証処理を行うことが可能かどうかを示すEnable bitとを、さらに設けてもよい。
【0092】
これにより、受電装置200と送電装置100とが複数の第二通信に対応している場合に、柔軟に対応することができる。例えば、送電装置100及び受電装置200が第二通信としてBLE及びNFCに対応している場合を考える。送電装置100がBLEでは機器認証できず(Auth bit または Enable bit が0)、NFCでは機器認証できる場合(Auth bit及びEnable bitがともに1)に、NFCによる機器認証を行うことができる。この時、受電装置200は、NFC bitが「1」でAuth bitが「1」であるOOB Reqを送信する。
【0093】
<送電装置の処理>
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係る送電装置100が実施する処理の手順を説明する。
【0094】
S501において、送電装置100は、SelectionフェーズおよびPingフェーズの処理を実行する。S502において、送電装置100は、ID Packet及びConfiguration Packetを受電装置200から受信する。送電装置100は、Configuration Packetを受信したことにより、受電装置200が機器認証に対応していること、および、機器認証をBLEによる第二通信で実施可能であることを認識できる。
【0095】
S503において、送電装置100は、第一通信部104を介してACKを送信する。S504において、送電装置100は、受電装置200から送信されたOOB Reqを受信したか否かを判定する。OOB Reqを受信した場合、S505へ進む。一方、OOB Reqを受信していない場合S522へ進む。
【0096】
S505において、送電装置100は、自身が現在機器認証にBLEを利用可能であるか否かを判定する。BLEを利用可能である場合、S506へ進む。一方、BLEを利用可能ではない場合、S521へ進む。
【0097】
S506において、送電装置100は、OOB Reqに応答してACKを受電装置200へ送信する。ACKを送信後、S507において、送電装置100は、一定時間内に、第二通信部106を介してADVを送信する。S508において、送電装置100は、受電装置200からCONNECTを受信したか否かを判定する。CONNECTを受信した場合、S509へ進む。一方、CONNECTを受信していない場合、S522へ進む。
【0098】
続いて、S509において、送電装置100は、受電装置200から、受電装置200をイニシエータとするAuth Reqパケットを受信したか否かを判定する。Auth Reqパケットを受信した場合、S510へ進む。一方、Auth Reqパケットを受信していない場合、S512へ進む。
【0099】
S510において、送電装置100は、Auth Reqパケットの受信に応じてACKを送信する。S511において、送電装置100は、自身がレスポンダとして動作するAuth処理を行う。S512において、送電装置100は、Auth処理の終了後、自身がイニシエータとなるAuth処理を要求するAuth Reqを受電装置200へ送信する。また、CONNECTを受信し、BLEによる通信可能になった状態で(S508でYES)、一定時間内に自身がレスポンダとして動作するAuth Reqを受信しなかった場合(S509でNO)にも、S512へ進んでいる。この場合にも、S512において、送電装置100は、自身がイニシエータとなるAuth処理を要求するAuth Reqを受電装置200へ送信する。
【0100】
S513において、送電装置100は、S512で送信したAuth Reqに対して、受電装置200からACKを受信したか否かを判定する。ACKを受信した場合、S514へ進む。一方、ACKを受信していない場合、S515へ進む。
【0101】
S514において、送電装置100は、自身がイニシエータとして動作するAuth処理を行う。S515において、送電装置100は、受電装置200からTEMINATEを受信したか否かを判定する。TEMINATEを受信した場合、S517へ進む。一方、TEMINATEを受信していない場合、S516へ進む。S516において、送電装置100は、受電装置200へTERMINATEを送信し、第二通信部106を介した通信を終了する。
【0102】
そして、S517において、送電装置100は、Negotiationフェーズで、受電装置200との間でGPの交渉を行う。ここで、受電装置200は送電装置100の正当性を確認している場合、GPとして最大値である15ワットを要求する。その場合、送電装置100も同様に受電装置200の正当性を確認しているので、自身のGPの最大値である15ワットを超えない範囲で、受電装置200の要求を許諾する。
【0103】
続いて、S518において、送電装置100は、Calibrationフェーズへ遷移する。S519において、送電装置100は、PTフェーズへ遷移して、受電装置200の充電部206へ最大15ワットの電力を供給する。
【0104】
そして、充電が終了すると、S520において、送電装置100は、受電装置200の第一通信部204を介して送信された、送電停止を指示するEPTを受信する。
【0105】
また、S504でOOB Reqを受信した時点で、BLEが利用可能でない場合(S505でNO)、S521において、送電装置100は、受電装置200に対してNAKを送信する。その後、S522へ進む。
【0106】
S522において、送電装置100は、Auth処理に第二通信を使用せず、第一通信を使用すると判断する。そして、S523において、第一通信でAuth処理を実施する。その後、S517へ進む。
【0107】
なお、S511において、送電装置100は、受電装置200の正当性を確認できなかった場合、つまり機器認証が失敗した場合は、送電装置100はAuth Reqを送信せずに、BLE接続を切断してもよい。これは、送電装置100をイニシエータとするAuth処理を行わないようにするためである。
【0108】
なぜなら、送電装置100の正当性が確認できなかったので、送電装置100をイニシエータとするAuth処理の結果に関わらず、Negotiationフェーズで、送電装置100は受電装置200が要求するGPを制限する必要があるからである。このように、無駄なAuth処理を行わないようにすることで、送電開始までの処理を高速化することができる。
【0109】
<送電装置の処理>
続いて、図6のフローチャートを参照して、本実施形態に係る送電装置100が、第二通信で機器認証を行った場合であっても送電を停止しないことを説明する。
【0110】
S601において、送電装置100は、受電装置200から送信されたOOB Reqに対して、第一通信部104を介してACKを送信する。これに対して、受電装置200は、ACKを受信すると定期的にIDLEの送信を開始し(S406)、送電装置100の第二通信部106とBLEによる接続を行う(S408)。
【0111】
S602において、送電装置100は、受電装置200から送信されたIDLEを、第一通信部104を介して受信したか否かを判定する。IDLEを受信した場合、S603へ進む。一方、IDLEを受信していない場合、S605へ進む。
【0112】
S603において、送電装置100は、送電中のDigital Pingを一定期間(例えば200ms)延長する。S604において、送電装置100は、受電装置200の第二通信部202からTERMINATEを受信したか否かを判定する。TERMINATEを受信した場合、処理を終了する。一方、TERMINATEを受信していない場合、S602に戻る。
【0113】
なお、送電装置100の第二通信部106と受電装置200の第二通信部202との間でAuth処理を実施中である場合、送電装置100は、受電装置200の第二通信部202からTERMINATEを受信しておらず、従ってS602に戻る。そして、送電装置100は、再びIDLEを受信したか否かの判定を行う。
【0114】
S605において、送電装置100は、タイムアウトが発生したか否かを判定する。ここで、送電装置100は、タイムアウトの値として、例えばS603でDigital Pingを延長した期間である200ms以上の値を設定しておく。タイムアウトが発生した場合、S606へ進む。一方、タイムアウトが発生していない場合、S602に戻って、再びIDLEを受信した否かの判定を行う。
【0115】
ここで、受電装置200は、IDLEの応答パケット(例えばACK)の後端から例えば最大19ms以内に、次のIDLEを送信するようにしてもよい。受電装置200がIDLEの送信を開始して、当該IDLEに対して送電装置100がACKの後端を送信し、受電装置200が次のIDLEの送信を開始するまでを1サイクルとして、1サイクルの時間を例えば50msとする。これにより、Digital Pingを延長している期間である200ms以内に、送電装置100は必ずIDLEを受信することができるので、送電装置100は再びDigital Pingの期間を延長することができる。
【0116】
そして、IDLEを受信する度に送電装置100はタイマの値を初期値にリセットする。これにより、受電装置200が第二通信で送電装置100と機器認証を行っている間も、第一通信で送電装置100にパケットを送信することができる。従って、送電装置100は、タイムアウトが発生することなく、Digital Pingを送信し続けることができる。また、送電装置100は、第一通信部104を用いた制御通信を継続したまま、第二通信部106を用いてより高速な制御通信を行うことが可能となる。
【0117】
また、受電装置200が送電装置100の送電可能な範囲外に移動したなどの理由で、送電装置100がIDLEパケットを受信できなくなった場合は、タイムアウトが発生する(S605でYES)。そのため、S606において、送電装置100はDigital Pingを停止する。
【0118】
そして、S607において、送電装置100は、受電装置200に対して第二通信部106を介してTERMINATEを送信する。これにより、送電装置100の第一通信部104を用いた制御通信が不可能になり、送電を停止した場合に、送電装置100は第二通信部106を用いた制御も停止することができる。また、受電装置200からTERMINATEを受信すれば(S604でYES)、送電装置100はBLEを切断し、処理を終了することができる。
【0119】
<変形例>
上述の実施形態では、送電装置200がタイムアウトを起こさないように、第二通信を行っている間、受電装置100は第一通信で定期的にIDLEパケットを送信する例を説明した。
【0120】
その際、送電装置100は、第二通信を行う間は、図6に示すタイムアウトの値を第一通信だけを行う場合と比較して長い値に設定してもよい。
【0121】
送電装置100は、OOB Req(F306)に対してACK(F307)を送信し、第二通信を行うと判断した後は、タイムアウトの値を第一通信のみを行う場合(第二通信を行わない場合)と比較して長い値に設定する。そして、TERMINATEを受信して(F318)、第二通信を行わないと判断した場合に、タイムアウト値を元の値に戻す。長い値とは、例えば500ミリ秒より長い値であってもよい。或いは、ADV(F309)を送信してから、もしくは、ACK(F307)を送信してからTERMINATEを受信するまでの間の期間を含むような、十分長い値であってもよい。
【0122】
受電装置200は、第二通信を使用する場合は、長い値に設定したタイムアウト値に基づいて、第一通信のみを行う場合と比較して長い周期で定期的にIDLEを送信する。これにより、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、送電装置100は、第二通信を行う場合は、タイムアウトしたかどうかの判定を、第二通信で受信したパケットに基づいて行ってもよい。送電装置100は、第一通信のみを使用する場合は、第一通信部104を介して受信したパケットに基づいてタイムアウトを判定する。一方、OOB Req(F306)に対してACK(F307)を送信した後は、第二通信部106を介して受信したパケットに基づいてタイムアウトを判定する。また、第二通信を使用する場合は、タイムアウトの値を変更してもよい。
【0124】
受電装置200は、送電装置100がタイムアウトを起こさないように、第二通信部202を介してパケットを送信する。これにより、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0125】
なお、本発明に係る無線電力伝送システムの電力伝送方式は特に限定はしない。送電装置の共振器(共鳴素子)と、受電装置の共振器(共鳴素子)との間の磁場の共鳴(共振)による結合によって電力を伝送する磁界共鳴方式でもよい。また、電磁誘導方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザ等を利用した電力伝送方式を用いてもよい。
【0126】
また、送電装置および受電装置は例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォンなどの情報処理装置であってもよい。
【0127】
また、図4図5図6に示すフローチャ-トは、制御部に電源が投入された場合に開始される。なお、図4に示される処理は受電装置のメモリに記憶されたプログラムを制御部が実行することで実現される。また、図5図6に示される処理は送電装置のメモリに記憶されたプログラムを制御部が実行することで実現される。
【0128】
なお、図4図5図6のフローチャ-トで示される処理の少なくとも一部がハードウェアにより実現されてもよい。ハードウェアにより実現する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。
【0129】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0130】
200:受電装置、201:制御部、202:第二通信部、203:受電部、204:第一通信部、205:受電コイル、206:充電部、207:バッテリ、208:メモリ、209:認証部
図1
図2
図3
図4
図5
図6