(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G03G15/20 505
(21)【出願番号】P 2023033537
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2021164706の分割
【原出願日】2017-06-30
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】村松 基保
(72)【発明者】
【氏名】秋屋 佳吾
(72)【発明者】
【氏名】村▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】香取 秀祐
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-099189(JP,A)
【文献】特開2017-058449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の定着フィルムと、
前記定着フィルムの内部空間に設けられており、前記定着フィルムの母線方向に細長い板状のヒータと、
前記定着フィルムの外周面に接触し、前記定着フィルムを介して前記ヒータと共に記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成するローラと、
前記定着フィルムの内部空間に設けられており、前記ヒータの温度を検知する複数の温度検知素子と、
前記定着フィルムの内部空間に設けられており、前記ヒータが異常な温度まで昇温すると、その熱により作動し、前記ヒータへの給電を遮断するための保護素子と、
を有し、前記定着ニップ部で搬送される記録材を前記ヒータの熱によって加熱し、記録材に形成された未定着トナー画像を記録材に定着する定着装置において、
前記装置は、前記ヒータへの給電回路中にリレーを有し、
前記複数の温度検知素子と前記保護素子は前記給電回路とは独立したDC回路に設けられており、
前記保護素子が作動して前記保護素子に繋がる回路がオープンになると前記リレーが前記給電回路をオープンにする構成になっており、
前記複数の温度検知素子と前記保護素子に電気的に繋がっている全ての線材は
絶縁被覆のない裸線であり、全ての前記線材は、それらの一部を樹脂製の線材ガイド部材に封止されて絶縁されており、前記全ての線材のうち、前記保護素子に繋がっている線材と少なくとも一つの前記温度検知素子に繋がっている線材は、同一の線材ガイド部材に封止されており、
前記全ての線材は前記定着フィルムの母線方向の一方の端部から前記定着フィルムの外に引き出されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着フィルムの内部空間には、前記定着フィルムの温度を検知する温度検知素子が設けられており、前記定着フィルムの温度を検知する温度検知素子に電気的に繋がっている線材も前記一方の端部から前記定着フィルムの外に引き出されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置に搭載されており、記録材に形成された未定着画像を記録材に定着する定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の複写機やプリンタに搭載されている定着装置として、フィルム加熱方式のものが知られている。フィルム加熱方式の定着装置は、筒状のフィルムと、フィルムの内部空間に設けられておりフィルムの内面に接触するヒータと、フィルムを介してヒータと定着ニップ部を形成する加圧ローラを有している。ヒータは、フィルムの内部空間に設けられた樹脂製のヒータホルダで保持されている。ヒータホルダは、フィルムの内部空間に設けられた金属製の補強部材(ステー)で補強されている。
【0003】
ヒータホルダのヒータ保持座面の一部には貫通孔が設けられている。また、ヒータホルダと補強部材の間の空間にはヒータの温度を検知する温度検知素子(センサ等)が配置されている。温度検知素子はヒータホルダの貫通孔に挿入されている。ヒータは温度検知素子の検知温度に応じて制御される。ヒータホルダと補強部材の間の空間には、異常時にヒータへの電力供給を遮断するための保護素子(サーモスイッチや温度ヒューズ等)も配置されている。保護素子もヒータホルダに設けられた他の貫通孔に挿入されている。
【0004】
センサと装置のCPU(制御部)は電気ケーブルを介して接続されている。CPUはセンサの抵抗値に応じた電圧に基づき温度を検知すると共に、この検知温度に応じてヒータを制御する。
【0005】
温度検知素子や保護素子は、ヒータに接触するように、若しくはヒータの近傍に配置される。そのため、温度検知素子や保護素子と接続される電気ケーブル(Electrical Cable)の裸線(Stripped Wire)を覆う絶縁被覆(Wire Insulation)は耐熱性が要求される。
【0006】
特許文献1には、ヒータホルダに電気ケーブルを支える突起を設けることで、電気ケーブルとヒータホルダとの接触領域を小さくして、ヒータから電気ケーブルに伝わる熱を抑えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
温度検知素子の端子に接続される信号線や、保護素子の端子に接続される電力供給線には、特許文献1に示されているように絶縁被覆を有する電気ケーブルが用いられている。これらの電気ケーブルはフィルムの内部空間に配置されるので、絶縁性だけでなく耐熱性も要求される。また、プリントスピードの上昇に伴いヒータの制御目標温度が高くなると、耐熱性と絶縁性がより優れた電気ケーブルを使用する必要がある。
【0009】
しかしながら、これらの要求を満たす電気ケーブルは高価である。また、耐熱性と絶縁性を満足する電気ケーブルは絶縁被覆の厚みが大きい。そのため、フィルムの内部空間における電気ケーブルの占有スペースが大きくなり、定着装置の小型化の妨げになるという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、電気ケーブルを含めた配線に掛るコストを抑えた小型の定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するための本発明は、筒状の定着フィルムと、前記定着フィルムの内部空間に設けられており、前記定着フィルムの母線方向に細長い板状のヒータと、前記定着フィルムの外周面に接触し、前記定着フィルムを介して前記ヒータと共に記録材を挟持搬送する定着ニップ部を形成するローラと、前記定着フィルムの内部空間に設けられており、前記ヒータの温度を検知する複数の温度検知素子と、前記定着フィルムの内部空間に設けられており、前記ヒータが異常な温度まで昇温すると、その熱により作動し、前記ヒータへの給電を遮断するための保護素子と、を有し、前記定着ニップ部で搬送される記録材を前記ヒータの熱によって加熱し、記録材に形成された未定着トナー画像を記録材に定着する定着装置において、前記装置は、前記ヒータへの給電回路中にリレーを有し、前記複数の温度検知素子と前記保護素子は前記給電回路とは独立したDC回路に設けられており、前記保護素子が作動して前記保護素子に繋がる回路がオープンになると前記リレーが前記給電回路をオープンにする構成になっており、前記複数の温度検知素子と前記保護素子に電気的に繋がっている全ての線材は絶縁被覆のない裸線であり、全ての前記線材は、それらの一部を樹脂製の線材ガイド部材に封止されて絶縁されており、前記全ての線材のうち、前記保護素子に繋がっている線材と少なくとも一つの前記温度検知素子に繋がっている線材は、同一の線材ガイド部材に封止されており、前記全ての線材は、前記定着フィルムの母線方向の一方の端部から前記定着フィルムの外に引き出されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電気ケーブルを含めた配線に掛るコストを抑えた小型の定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例1)
(全体構成)
以下、本例の定着装置1について説明する。定着装置1は、電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載されている。電子写真記録技術は周知の技術なので、説明は割愛する。
【0015】
定着装置1の全体構成について
図1~
図7を用いて説明する。
図1は定着装置1の断面図である。定着装置1は、加熱ユニット2と加熱ユニット2と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ4を有している。加熱ユニット2は、筒状の定着フィルム3を有する。定着フィルム3の内部空間には、定着フィルム3の内面に接触するヒータ5、ヒータ5を保持するヒータホルダ7、加熱ユニット2を補強する金属製のステー(フレーム部材)8が設けられている。未定着トナー画像が形成されたシート(記録材)Sは定着ニップ部Nで挟持搬送される。シートSが定着ニップ部Nを通過する時、トナー画像はヒータ5からの熱、及び定着ニップ部Nに掛る圧力を受ける。これによりシートSにトナー画像が定着される。
【0016】
図2は、加熱ユニット2と加圧ローラ4の斜視図である。加圧ローラ4は、不図示の駆動源の動力をギア4Gで受けることによって回転する。加圧ローラ4と圧接する定着フィルム3は、加圧ローラ4の回転に従動して回転する。29は、定着フィルム3が母線方向(±Y方向)に寄り移動するのを規制するフランジである。
【0017】
図3~
図5は加熱ユニット2の内部空間を示した断面図である。定着フィルム3の内部空間には、4つのセンサ9a、9b、9c、9dとサーモスイッチ(保護素子)10が配置されている。4つのセンサ9a、9b、9c、9dは、夫々、サーミスタ(温度検知素子)9at、9bt、9ct、9dtを一つずつ有している。四つのサーミスタ9at、9bt、9ct、9dtのうちの三つのサーミスタ9at、9ct、9dtと、サーモスイッチ10が、ヒータホルダ7とステー8で囲まれた空間内に配置されている。ヒータホルダ7のヒータ5を保持する座面には4つの孔部17が設けられている。三つのサーミスタ9at、9ct、9dtとサーモスイッチ10は、一つずつ孔部17に挿入されており、夫々ヒータ5に接触している。三つのサーミスタ9at、9ct、9dtはヒータ5の温度に応じて抵抗値が変化する素子である。サーモスイッチ10は、ヒータ5が異常な温度まで昇温すると、その熱により作動するスイッチであり、ヒータ5への給電を遮断する役目を有する。
【0018】
センサ9a、9c、9dとサーモスイッチ10は、ヒータホルダ7に固定されたガイド部材12に設けられた4つの押圧バネ13によって、それぞれヒータ5に向って付勢されている。これにより、センサ9a、9c、9dとサーモスイッチ10をヒータ5に接触させた状態で、これらをヒータホルダ7に取り付けることが可能になる。
【0019】
センサ9bは、
図4(c)のA-A部の断面図である
図6に示すように、ヒータホルダ7上に固定された部分であって、後述する線材11が接続される接続部9bbと、定着フィルム3の内面に接触するサーミスタ9btを有する。サーミスタ9btは板バネ9bcに保持されており、板バネ9bcはステー8に設けられた貫通孔8hを介して接続部9bbに保持されている。
【0020】
サーミスタ9at、9bt、9ct、9dtの出力は、後述する線材11を通って制御部(CPU)に入力している。制御部は、サーミスタ9at、9bt、9ct、9dtの出力に応じてヒータ駆動部(トライアック)を駆動する。
【0021】
サーモスイッチ10は、電源部のリレー駆動部と、リレーと、の間に接続されている。ヒータ5の異常昇温による熱でサーモスイッチ10がOFFするとリレーへの給電が断たれてリレーがOFFし、ヒータ5への電力供給が停止する。
【0022】
センサ9bのサーミスタ9btは、定着フィルム3の母線方向(±Y方向)の中央付近において、定着フィルム3の内面の温度を検知する。制御部は、サーミスタ9btによる検知温度が制御目標温度を維持するようにヒータ5への電力供給を制御する(ヒータ駆動部を制御する)。センサ9a、9dはヒータ5の長手方向(±Y方向)におけるヒータ5の端部の温度を検知する。センサ9cは、センサ9bと9dの略中央付近に配置されており、ヒータ5の温度を検知する。センサ9a、9c、9dは、小サイズ紙を定着処理した時のヒータの非通紙領域の温度をモニタするセンサである。サーモスイッチ10は、ヒータ5の長手方向においてヒータ5の中央付近に設けられている。
【0023】
本例の定着装置1は、通紙される記録材の幅方向中央がヒータ5の長手方向における中央部と合致するように記録材を搬送する中央基準のプリンタに搭載されるものである。したがって、通紙される記録材のサイズに拘らず、センサ9bが配置された位置とサーモスイッチ10が配置された位置は記録材の通過領域内になる。なお、本例の定着装置1は、温度制御用のセンサ9bとして定着フィルム3の温度を検知するタイプを用いているが、ヒータ5の温度を検知するタイプを採用しても構わない。また、温度検知素子や保護素子の種類、使用個数、配置箇所は、この実施例のものに限られるものではない。また、温度検知素子と保護素子をヒータ5に直接接着してもよい。また、サーモスイッチ10の代わりに温度ヒューズを用いてもよい。
【0024】
(回路構成)
次に、
図7を用いて加熱ユニット2の回路について説明する。各サーミスタ9at、9bt、9ct、9dtは、導電性の線材11、中継導通部材14、外部導通部材15、を介して定着装置1の外(プリンタ以内)に設けられた制御部と電気的に接続されている。このように温度検知回路が構成されている。また、低圧電源部内のリレー駆動部は、外部導通部材15、中継導通部材14、線材11、サーモスイッチ10、線材11、中継導通部材14、外部導通部材15、を介してリレーと電気的に接続されている。これらによりヒータ保護回路が構成されている。本例の装置は、温度検知回路とヒータ保護回路は、いずれも直流電圧で駆動するDC回路である。
【0025】
各線材11は細長い部材であり、その長手方向がヒータ5の長手方向に沿うように、センサ9a、9b、9c、9d、及びサーモスイッチ10に対して接続されている。ヒータホルダ7はヒータ5から伝わる熱で高温状態になっており、センサ9やサーモスイッチ10、線材11も同様に高温状態となる。また、電気部品を安全に動作させるためには、各センサ9やサーモスイッチ10を含むDC回路を絶縁しなければならない。本構成のように4個のセンサ9とサーモスイッチ10を有する場合、10本のDC回路の線材11をそれぞれ接触させずに配置する必要がある。また、定着フィルム3の内部空間には金属製のフレーム部材8があるため、線材11とフレーム部材8の間も絶縁に必要な距離を確保する必要がある。
【0026】
本例の定着装置では、絶縁被覆がない裸線(線径0.45mmのすずメッキ銅線)を線材11として用いており、耐熱性の樹脂で作られた線材ガイド部材19(19a、19b)で線材11の一部を封止している。また、線材ガイド部材19の材質は、LCP(液晶ポリマー)である。また、線材ガイド部材19の一部と、線材11と中継導通部材14との接合部18と、は定着フィルム3の内部空間よりも、定着フィルムの母線方向において外側に突出している。以下に詳しく説明する。
【0027】
(線材ガイド部材)
図8を用いて線材ガイド部材19について説明する。
図8(a)は、四つのセンサやサーモスイッチを保持した状態の線材ガイド部材19の上面図、
図8(b)は斜視図である。本例の装置は、四つのセンサ9a、9b、9c、9dと一つのサーモスイッチ10を搭載しているので、DC回路の電気ケーブルとして用いられる線材11を10本必要とする。しかしながら、10本の線材11を全て、耐熱性が高い絶縁被覆を有する電気ケーブルで構成すると、コストが嵩む。更に、フレーム部材8の内部空間における電気ケーブルの占有スペースが大きくなり、装置の大型化を招いてしまう。
【0028】
一方、10本の線材(裸線)を、互いに接触しないように絶縁性の線材ガイド部材に封止する方法がある。しかしながら、10本の線材を一つの線材ガイド部材に互いに接触しないように封止する構成の場合、線材ガイド部材の幅を広くする必要があり、線材ガイド部材をフレーム部材8の内部空間に収めることが困難となる。
【0029】
そこで、本実施例は、線材ガイド部材を二つ設け、線材ガイド部材(第1の線材ガイド部材)19a内に線材11を6本、線材ガイド部材(第2の線材ガイド部材)19b内に線材11を4本配置している。二個の線材ガイド部材19aと19bは、各センサ9a、9b、9c、9d、及びサーモスイッチ10を挟むように配置されている。また、それぞれの線材11のうち、各センサ及びサーモスイッチ10と、線材ガイド部材と、の間に位置する部分は、線材ガイド部材19a、19bのいずれにも封止されておらず露出している。
【0030】
図9は、
図8から線材ガイド部材19a、19bを取り除いた状態の、各センサ9a、9b、9c、9d、サーモスイッチ10、及び線材11を示した図である。線材ガイド部材19a、19bは破線で示してある。
図9(a)は上面図、
図9(b)は斜視図である。線材ガイド部材19aの内部の線材11には、センサ9aの端子9a-1、9a-2、サーモスイッチ10の端子10-1、センサ9bの端子9b-1、センサ9cの端子9c-1、9c-2が電気的に繋がっている。線材ガイド部材19bの内部の線材11には、サーモスイッチ10の端子10-2、センサ9bの端子9b-2、センサ9dの端子9d-1、9d-2が電気的に繋がっている。このように、センサ9a~9dとサーモスイッチ10の少なくとも一つの素子9b、10は、その素子の二つの端子が、第1の線材ガイド部材19aに封止されている線材と第2の線材ガイド部材19bに封止されている線材に接続されている。また、センサ9a~9dとサーモスイッチの少なくとも一つの素子9a、9c、9dは、その素子の二つの端子が共に、第1及び第2の線材ガイド部材の一方に封止されている線材のみと接続されている。
【0031】
図10は、センサ9aと線材ガイド部材19aの接合部の詳細図である。
図10に示すように、センサ9aには二つの端子9a-1、9a-2があるが、これらの端子に接続される二本の線材11a-1、11a-2はいずれも線材ガイド部材19aに保持されている。±X方向において線材ガイド部材19aに近い側の端子部9a-1に接続される線材11a-1の露出部分の根元の位置は11a-1nである。線材ガイド部材19aから遠い側の端子部9a-2に接続される線材11a-2の露出部分の根元の位置は11a-2nである。位置11a-2nが位置11a-1nよりも、センサ9aから遠い位置になるように二本の線材11a-1と11a-2は曲げ部26において塑性変形されている。そして、塑性変形した状態で端子と線材が接合されている。これにより端子9a-1、9a-2に接合された線材11a-1と線材11a-2が短絡するのを防止している。なお、位置11a-2nと位置11a-1nの間の距離はWaである。また、端子と線材は溶接によって接合されている。なお、センサ9cに接続される二本の線材も、その露出部分の根元は線材ガイド部材19a上で距離Waずれている。また、センサ9dに接続される二本の線材も、その露出部分の根元は線材ガイド部材19b上で距離Waずれている。
【0032】
図11は、ヒータホルダ7と、ヒータホルダ7上に線材ガイド部材19を配置した上面図である。
図11(a)はヒータホルダ7のみの図、
図11(b)はヒータホルダ7上に線材ガイド部材19a、19bを配置した図、
図11(c)はセンサ9a部の詳細図である。センサ9やサーモスイッチ10は、ヒータホルダ7上でヒータ5に対し垂直方向に自由に移動できるように、位置決めボス20や位置決めリブ21により、±Y方向及び±X方向において位置決めされている。そのため、本例のような曲げ部26を設けない場合、押圧バネ13でセンサ9をヒータ5に対して押圧した時、線材11の長さのばらつきが要因で、線材11が突っ張ったり引っ張られたりする可能性が有る。この場合、十分な押圧力を得ることができない。これに対して、線材ガイド部材19から出た線材11に曲げ部26を設ければ、センサ9やサーモスイッチ10を安定してヒータ5に圧接した状態を保つことができる。この時、線材11の線径が大きくなると断面二次モーメントが大きくなることで剛性が大きくなり、押圧バネ13の付勢力に対する影響が大きくなる。また、線材11を配置した線材ガイド部材19が大きくなってしまう。一方、線材11が細過ぎると押圧バネ13の付勢力に対する影響は小さくできるが、線材11が弱く、接合や組み立て、動作時等で破損してしまう可能性がある。このため、線材として適度な線径のものを使用するのが好ましい。
【0033】
上述したように、センサ9a、9c、9d個々に接続される二本の線材11は、線材ガイド部材19a又は19bのいずれか一方に保持されている。一方、センサ9bに接続される二本の線材と、サーモスイッチ10に接続される二本の線材は、線材ガイド部材19aと19bに一本ずつ保持されている。このように、定着フィルム3の内部空間には、温度検知素子の端子に電気的に接続された線材の一部と保護素子の端子に電気的に接続された線材の一部を封止する第1及び第2の線材ガイド部材19a、19bが配置されている。この構成により、電気ケーブルを含めた配線に掛るコストを抑えた小型の定着装置を提供できる。なお、第1及び第2の線材ガイド部材の少なくとも一方は、その端部が定着フィルム3の外まで亘る長さを有している。
【0034】
図9に示したように、端子9b-1と10-1が線材ガイド部材19aから露出した線材11と接合しており、端子9b-2と10-2は線材ガイド部材19bから露出した線材11と接合している。サーモスイッチ10の二つの端子に繋がる線材を二つの線材ガイド部材に分けて保持させた構成なので、二つの線材ガイド部材のうちの少なくとも一方が破損しサーモスイッチ10と繋がる線材11が切れた場合、必ずリレーがOFFする。よってヒータ5の異常発熱を防止できるので安全性が向上する。
【0035】
次に
図12を用いて、線材ガイド部材19の線材11を、定着フィルム3の外部に設けた回路と接続する方法について説明する。
図12(a)はヒータホルダ7に定着フィルム3が取り付けられた状態を示す図であり、
図12(b)は線材ガイド部材19から中継導通部材14への接合部18の詳細図である。線材ガイド部材19a及び19bの端部22はいずれも、定着フィルム3の外部で角度α曲げられている。この角度αは、90度とすることが加熱ユニット2を小型化するために最も優れている。しかしながら、本例では、樹脂部材である線材ガイド部材19を成型する際の離型性が良いというメリットを生かすため角度αは95°とした。角度αは80°~120°の範囲が好ましい。角度αで曲げられた端部22からは線材11が露出し、不図示の制御部へ接続するための中継導通部材14と接合部18で接合される。このように、中継導通部材14と線材11との接合部18を定着フィルム3の外部に設けることにより、耐熱温度の高くない安価な中継導通部材14を用いることが可能である。本例では、中継導通部材14にFFC(フレキシブルフラットケーブル)を用いている。
【0036】
図13(a)及び(b)は、
図8のB-B部の断面図である。
図13(a)に示すように、線材ガイド部材19a及び19bには、線材11が一定の間隔p(本例では1mm)で配置されており、線材11同士が接触しないように樹脂中に封止されている。本例では、中継導通部材14としてFFCを用いているため、線材11が一定の間隔で配置されているが、中継導通部材14として絶縁被覆で覆われた撚り線を用いる場合、線材11を一定間隔で配置する必要はない。
【0037】
図15は、
図13(a)に示した断面位置における加熱ユニットの断面図である。
図15に示す全ての線材11は、フレーム部材8から沿面距離で所定の距離以上離れており、絶縁性を確保している。本例のように、線材11を樹脂の線材ガイド部材19に封止した構成である場合、成型時の樹脂の射出圧によって線材11が変形することも考えられる。変形が生じると、線材ガイド部材19の樹脂内部で線材同士が接触することも考えられるので、この事態を防ぐ必要がある。
【0038】
そこで、線材ガイド部材19aは、
図13(b)の破線で示した境界面BLaで分割される二つの樹脂部19a-1と19a-2を組み合わせた構成になっている。線材11は二つの樹脂部19a-1と19a-2に挟まれている。同様に、線材ガイド部材19bは、境界面BLbで分割される二つの樹脂部19b-1と19b-2を組み合わせた構成になっており、線材11は二つの樹脂部19b-1と19b-2に挟まれている。以下、線材ガイド部材19aを用いて説明する。
【0039】
図14(a)は、樹脂部19a-1、線材11、樹脂部19a-2を分けて示した詳細図である。まず、樹脂部19a-1を成型機で成型する。成型機で成型される樹脂部19a-1には、線材11を所定のピッチで配置できるように溝24が設けてある。次に樹脂部19a-1の溝24に、線材11を沿わせて配置し、再度成型機に投入する。線材11を配置した樹脂部19a-1に、樹脂部19a-2を合せるように成型することで、線材11を封止した線材ガイド部材19aが出来上がる。
図14(b)に示すように、線材ガイド部材19bも同様な手順で成型される。
【0040】
樹脂部19a-1の溝24は、樹脂部19a-2を成型する時、樹脂の射出圧によって、線材11同士が接触することを防止している。この時、成型のみで樹脂同士を完全に密着させることは困難であり、
図13(b)の破線BLaで示した樹脂部19a-1と19a-2の境界面は絶縁されていることにはならない。このため、線材ガイド部材19aを含む線材11をフレーム部材8から絶縁を保てる距離分、離す必要がある。
【0041】
図16は、線材ガイド部材19の境界面BL1と、フレーム部材8までの距離、の関係を説明するための模型図である。
図16(a)は、線材ガイド部材19を直線的に樹脂部19-1と樹脂部19-2に分け、間に線材11を挟むように構成した場合を示している。この場合、線材11からフレーム部材8までの沿面距離L1を確保しようとすると線材ガイド部材19をフレーム部材8から離す必要がある。このため、加熱ユニット2が大きくなり、定着装置1が大型化してしまう。
【0042】
図16(b)は、本例と同様、樹脂部19-1と樹脂部19-2の境界面を破線BL2で示した形状にした場合を示している。
図16(b)の構成にすれば、沿面距離L2(=L1)を確保しつつ、線材ガイド部材19とフレーム8の距離を近づけることができる。
【0043】
図17は、
図15のC-C部における断面図である。
図18は、
図17のセンサ9aが配置された付近の拡大図、
図19はセンサ9aが配置された付近の斜視図(ヒータホルダ7及びフレーム部材8は省略)である。先述したように、センサ9、サーモスイッチ10、線材11等、全ての導電部材は、フレーム部材8との絶縁を確保できる距離分、フレーム部材8から離して配置する必要がある。本例では、
図18のフレーム部材8から破線までの矢印の区間内にある全ての導電部材を絶縁する必要がある。線材ガイド部材19の内部の線材11は、樹脂(LCP)で絶縁されているものの、センサ9との間の露出した線材部分に関しては、絶縁距離を保つ必要がある。そこで、
図19に示したように、線材11の露出部分に関しては、線材ガイド部材19の一部に壁状の絶縁リブ27を設け、矢印のように絶縁距離(沿面距離)を確保するように構成している。その他のセンサ9b、9c、9d、サーモスイッチ10に関しても同様に絶縁距離を確保する構成となっている。このように、第1及び第2の線材ガイド部材は、夫々、二つの樹脂部を組み合わせた構成になっており、二つの樹脂部の境界面は、フレーム部材8に対向する面とは反対側の面に設けられている。
【0044】
(組立構成)
次に、
図20を用いて、定着装置1の組立構成について説明する。
図20は、定着フィルム3の内部空間に配置されるヒータホルダ7に対して、各部品を組み付ける前の状態を示した図である。線材ガイド部材のユニット(センサユニット)25は、センサ9a、9b、9c、9dやサーモスイッチ10を保持している。センサ9a、9b、9c、9dやサーモスイッチ10を線材ガイド部材19a、19bによってユニット化したことで、ヒータホルダ7上に複数の素子を容易に配置することが可能となる。また、取り扱いが難しい絶縁被覆を有する電気ケーブルをガイド部材に取り付ける工程も削減できる。
【0045】
なお、本例では、線材ガイド部材19に対し、各センサ9やサーモスイッチ10を接合し、センサユニット25として構成した後に、このセンサユニット25をヒータホルダ7上へ配置している。しかしながら、各センサ9やサーモスイッチ10をヒータホルダ7上へ配置し、ヒータホルダ7上で各センサ9やサーモスイッチ10を線材ガイド部材に接合してもよい。これにより、自動組み立て機を用いた組み立てにも容易に対応できるようになる。
【0046】
以上のように、本例によれば、電気ケーブルを含めた配線に掛るコストを抑えた小型の定着装置を提供できる。特に、線材11を封止した線材ガイド部材19の線材ガイド部材の端部22を定着フィルム3の外部に設けたことにより、省スペースで製造コストを減らすことが可能な定着装置を提供することが可能になる。
【0047】
(実施例2)
図21~
図23を用いて実施例2の定着装置を説明する。実施例1と同じ機能の部材には同じ符号を付し説明は割愛する。
図21は、本例の装置の定着フィルム3の内部構成図である。実施例1では、DC回路のサーモスイッチ10を用いた。これに対し、本例では、AC回路のサーモスイッチ10を用いている。
【0048】
図21(a)は、線材ガイド部材19a、19bを有するセンサユニット25が配置されたヒータホルダ7に対してガイド部材12を装着する前の図である。
図21(b)は、ガイド部材12をヒータホルダ7に装着した後の図である。線材ガイド部材19aには、線材11を5本、線材ガイド部材19bには線材11を3本配線し、これらの線材11はセンサ9a~9dに接続されている。またサーモスイッチ10の端子には、耐熱性の絶縁被覆を有する電気ケーブル31が接合されている。サーモスイッチ10と電気ケーブルの接合部は、フレーム部材8や線材11との絶縁距離を保つように配置されている。線材ガイド部材の端部22は、定着フィルム3の外部に出るように配置し、線材11は定着フィルム3の外で中継導通部材14に接続されている。
【0049】
図22は、
図21(b)のD-D部での断面図を示す。
図22に示したように、電気ケーブル31をガイド部材12の上部に配線することで、センサ9を押圧する押圧バネ13も問題なく配置することが可能である。
図23は実施例2の加熱ユニットの回路である。この図に示すように、サーモスイッチ10はヒータ5への電力供給路(AC回路)中に配置されている。
【0050】
以上のように、サーモスイッチはAC回路に設け、サーミスタ9at、9bt、9ct、9dtの線材のみを線材ガイド部材に保持させる構成でも、電気ケーブルを含めた配線に掛るコストを抑えた小型の定着装置を提供できる。特に線材ガイド部材の端部22を定着フィルム3の外部に出るように配置し、中継導通部材14に対して定着フィルム3の外部で接続することで、省スペースで製造コストを減らすことが可能な定着装置を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0051】
1 定着装置
2 加熱ユニット
3 定着フィルム
5 ヒータ
7 ヒータホルダ
8 フレーム部材
9 センサ
10 サーモスイッチ
11 線材
19 線材ガイド部材
25 センサユニット