(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】通信装置及び情報処理装置、並びにそれらの制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 28/06 20090101AFI20240718BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240718BHJP
【FI】
H04W28/06 110
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2023110255
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2019036405の分割
【原出願日】2019-02-28
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 佑生
【審査官】望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-252867(JP,A)
【文献】特開2010-98339(JP,A)
【文献】Eunsung Park (LG Electronics),et al.,Overview of PHY Features for EHT, IEEE 802.11-18/1967r1,米国,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1967-01-0eht-overview-of-phy-features-for-eht.pptx>,2019年01月14日,特に、Slides 5,6,9,18, [検索日2024.06.04]
【文献】Leonardo Lanante,Extensible Preamble Format Design, IEEE 802.11-15/0853r1 ,米国,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/15/11-15-0853-01-00ax-extensible-preamble-format-design.pptx>,2015年07月16日,[検索日 2024.06.04]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-H04W99/00
H04B7/24-H04B7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリアンブルを有する物理レイヤ(PHY)のフレームを送信又は受信する通信手段を有し、
前記プリアンブルは、L-STF(Legacy Short Training Field)と、L-LTF(Legacy Long Training Field)と、L-SIG(Legacy Signal Field)と、L-SIGと異なる第一のSignal Fieldと、を含み、
前記プリアンブルにおいて前記第一のSignal Fieldは前記L-SIGよりも後ろに配置されており、前記フレームのバージョンを示すフィールドを含み、前記フィールドは3ビットで構成され、当該3ビットを用いて0が前記フィールドに設定されるとExtremely High Throughput(EHT)が示されることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は少なくとも1つのアンテナを有し、前記フレームは前記少なくとも1つのアンテナを介して送信又は受信されることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第一のSignal Fieldの先頭の3ビットが前記フィールドに割り当てられることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第一のSignal Fieldは、帯域幅を示すbandwidthフィールドと、Modulation and Coding Scheme(MCS)を示すMCSフィールドとをさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記bandwidthフィールドと前記MCSフィールドとは、前記バージョンを示すフィールドの後に位置することを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信装置は、アクセスポイントと通信を行うステーション装置であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記通信装置は、アクセスポイント装置であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記プリアンブルはRepeated Legacy Signal (RL-SIG) をさらに含み、前記RL-SIGは前記L-SIGの後に通信され、前記第一のSignal Fieldは前記RL-SIGの後に通信されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記3ビットを用いて1が前記フィールドにセットされるとEHTの後継のバージョンが示されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信装置がEHTをサポートし、EHTの後継のバージョンをサポートしていない場合、前記フィールドに0をセットしたPHYフレームを送信することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項11】
プリアンブルを有する物理レイヤ(PHY)のフレームを生成する生成手段を有し、
前記プリアンブルは、L-STF(Legacy Short Training Field)と、L-LTF(Legacy Long Training Field)と、L-SIG(Legacy Signal Field)と、L-SIGと異なる第一のSignal Field、とを含み、
前記プリアンブルにおいて前記第一のSignal Fieldは前記L-SIGよりも後ろに配置されており、前記フレームのバージョンを示すフィールドを含み、前記フィールドは3ビットで構成され、当該3ビットを用いて0が前記フィールドにセットされるとExtremely High Throughput(EHT)が示されることを特徴とする情報処理装置。
【請求項12】
前記情報処理装置は少なくとも1つのアンテナを有し、前記フレームは前記少なくとも1つのアンテナを介して送信又は受信されることを特徴とする請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記第一のSignal Fieldの先頭の3ビットが前記フィールドに割り当てられることを特徴とする請求項11または12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記第一のSignal Fieldは、帯域幅を示すbandwidthフィールドと、Modulation and Coding Scheme(MCS)を示すMCSフィールドとをさらに有することを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記bandwidthフィールドと前記MCSフィールドとは、前記バージョンを示すフィールドの後に位置することを特徴とする請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記情報処理装置は、アクセスポイントと通信を行うステーション装置であることを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記情報処理装置は、アクセスポイント装置であることを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記プリアンブルはRepeated Legacy Signal (RL-SIG) をさらに含み、前記RL-SIGは前記L-SIGの後に通信され、前記第一のSignal Fieldは前記RL-SIGの後に通信されることを特徴とする請求項11から17のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記3ビットを用いて1が前記フィールドにセットされるとEHTの後継のバージョンが示されることを特徴とする請求項11から18のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項20】
前記情報処理装置がEHTをサポートし、EHTの後継のバージョンをサポートしていない場合、前記フィールドに0をセットしたPHYフレームを送信することを特徴とする請求項11から19のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項21】
通信装置が実行する制御方法であって、
プリアンブルを有する物理レイヤ(PHY)のフレームを送信又は受信する通信工程を有し、
前記プリアンブルは、L-STF(Legacy Short Training Field)と、L-LTF(Legacy Long Training Field)と、L-SIG(Legacy Signal Field)と、L-SIGと異なる第一のSignal Fieldと、を含み、
前記プリアンブルにおいて前記第一のSignal Fieldは前記L-SIGよりも後ろに配置されており、前記フレームのバージョンを示すフィールドを含み、前記フィールドは3ビットで構成され、当該3ビットを用いて0が前記フィールドに設定されるとExtremely High Throughput(EHT)が示されることを特徴とする制御方法。
【請求項22】
情報処理装置が実行する制御方法であって、
プリアンブルを有する物理レイヤ(PHY)のフレームを生成する生成工程を有し、
前記プリアンブルは、L-STF(Legacy Short Training Field)と、L-LTF(Legacy Long Training Field)と、L-SIG(Legacy Signal Field)と、L-SIGと異なる第一のSignal Field、とを含み、
前記プリアンブルにおいて前記第一のSignal Fieldは前記L-SIGよりも後ろに配置されており、前記フレームのバージョンを示すフィールドを含み、前記フィールドは3ビットで構成され、当該3ビットを用いて0が前記フィールドにセットされるとExtremely High Throughput(EHT)が示されることを特徴とする制御方法。
【請求項23】
請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置としてコンピュータを動作させるためのプログラム。
【請求項24】
請求項11から20のいずれか1項に記載の情報処理装置としてコンピュータを動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANにおける通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Wireless Local Area Network)に関する通信規格として、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格が知られている。IEEE802.11規格シリーズのうちの最新規格であるIEEE802.11ax規格では、OFDMA(直交周波数分割多元接続)を用いて、高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度向上を実現している(特許文献1参照)。
【0003】
現在、さらなるスループット向上のために、IEEE802.11axの後継規格として、IEEE802.11EHT(Extremely High Throughput)と呼ばれるStudy Groupが結成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで数多くの規格が策定されてきたように、今後も新たな規格が出現することが想定される。その一方で、旧世代の規格のみに準拠した通信装置は、その新たな規格に準拠した無線フレームについて、自装置が対応していない規格の無線フレームであることが明らかとなるまでは、フレームを読み込み続けなければならず、電力消費が増大してしまう。
【0006】
本発明は、通信装置が、対応していない規格に準拠した無線フレームを受信した際に不必要にその無線フレームの読み取りを継続することを防ぐ技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る通信装置は、
プリアンブルを有する物理レイヤ(PHY)のフレームを送信又は受信する通信手段を有し、
前記プリアンブルは、L-STF(Legacy Short Training Field)と、L-LTF(Legacy Long Training field)と、L-SIG(Legacy Signal field)と、L-SIGと異なる第一のSignal fieldと、を含み、
前記プリアンブルにおいて前記第一のSignal fieldは前記L-SIGよりも後ろに配置されており、前記フレームのバージョンを示すフィールドを含み、前記フィールドは3ビットで構成され、当該3ビットを用いて0が前記フィールドに設定されるとExtremely High Throughput(EHT)が示されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信装置が、対応していない規格に準拠した無線フレームを受信した際に不必要にその無線フレームの読み取りを継続することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】通信装置において実行される処理の流れの例を示す図である。
【
図5】EHT SU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図である。
【
図6】EHT ER PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図である。
【
図7】EHT MU PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図である。
【
図8】EHT TB PPDUのPHYフレーム構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(ネットワーク構成)
図1に、本実施形態の無線通信ネットワークの構成例を示す。本無線通信ネットワークは、1台のアクセスポイント(AP)と3台のステーション(STA)とを含んで構成される。なお、AP102とSTA103は、IEEE802.11EHT(Extremely High Throughput)に準拠しており、IEEE802.11EHT規格以前に策定された規格に準拠した無線通信を実行可能に構成される。また、STA104は、IEEE802.11ax規格に対応するが、IEEE802.11EHTには対応しないSTAであるものとする。さらに、STA105は、IEEE802.11EHTより後の通信規格に準拠するSTAであるものとする。なお、IEEE802.11EHTという名称は便宜上設けられたものであり、規格が確定した状態において別の名称となりうるが、本明細書及び添付の特許請求の範囲は、後述の処理をサポートしうるすべての規格をカバーすることを予定している。以下では、特定の装置を指さない場合等において、参照番号を付さずに、アクセスポイントを「AP」と呼び、ステーション(端末)を「STA」と呼ぶ場合がある。なお、
図1では、一例として1台のAPと3台のSTAとを含んだ無線通信ネットワークを示しているが、これらの通信装置の台数は、図示されるより多くても少なくてもよい。一例においては、STA同士の通信が行われる場合、APが存在しなくてもよい。
図1では、AP102が形成するネットワークの通信可能範囲が円101によって示されている。なお、この通信可能範囲は、より広い範囲をカバーしてもよいし、より狭い範囲のみをカバーしてもよい。なお、EHTは、Extreme High Throughputの頭字語と解されてもよい。
【0012】
(装置の構成)
図2は、通信装置(AP及びSTA)のハードウェア構成例を示す。通信装置は、そのハードウェア構成の一例として、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206、及びアンテナ207を有する。
【0013】
記憶部201は、ROM、RAMの両方、または、いずれか一方により構成され、後述する各種動作を行うためのプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体が用いられてもよい。
【0014】
制御部202は、例えば、CPUやMPU等の1つ以上のプロセッサ、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等により構成される。ここで、CPUはCentral Processing Unitの、MPUは、Micro Processing Unitの頭字語である。制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムを実行することにより装置全体を制御する。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたプログラムとOS(Operating System)との協働により装置全体を制御するようにしてもよい。
【0015】
また、制御部202は、機能部203を制御して、撮像や印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部203は、装置が所定の処理を実行するためのハードウェアである。例えば、装置がカメラである場合、機能部203は撮像部であり、撮像処理を行う。また、例えば、装置がプリンタである場合、機能部203は印刷部であり、印刷処理を行う。また、例えば、装置がプロジェクタである場合、機能部203は投影部であり、投影処理を行う。機能部203が処理するデータは、記憶部201に記憶されているデータであってもよいし、後述する通信部206を介して他のAPやSTAと通信したデータであってもよい。
【0016】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、例えば、画面上への表示や、スピーカによる音声出力、振動出力等の少なくとも1つを含む。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。
【0017】
通信部206は、IEEE802.11規格シリーズに準拠した無線通信の制御や、IP通信の制御を行う。通信部206は、いわゆる無線チップであり、それ自体が1つ以上のプロセッサやメモリを備えていてもよい。本実施形態では、通信部206は、少なくともIEEE802.11ax規格に準拠した処理を実行することができる。また、通信部206はアンテナ207を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。装置は、通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のコンテンツを他の通信装置と通信する。アンテナ207は、例えば、サブGHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯、及び6GHz帯の少なくともいずれかを送受信可能なアンテナである。なお、アンテナ207によって対応可能な周波数帯(及びその組み合わせ)については特に限定されない。アンテナ207は、1本のアンテナであってもよいし、MIMO(Multi-Input and Multi-Output)送受信を行うための2本以上のアンテナのセットであってもよい。また、
図2では、1本のアンテナ207が示されているが、例えばそれぞれ異なる周波数帯に対応可能な2本以上(2セット以上)のアンテナを含んでもよい。
【0018】
図3に、通信装置(AP及びSTA)の機能構成例を示す。通信装置は、一例として、無線LAN制御部301、フレーム解析部302、フレーム生成部303、UI制御部304、記憶部305、及びアンテナ306を有する。
【0019】
無線LAN制御部301は、他の無線LAN装置(例えば他のAPやSTA)との間で、アンテナ306を用いて、無線信号の送受信を行うための回路及びそれらを制御するプログラムを含んで構成される。無線LAN制御部301は、IEEE802.11規格シリーズに従って、フレーム生成部303において生成されたフレームの送信や、他の無線LAN装置からの無線フレームの受信等、無線LANの通信制御を実行する。フレーム解析部302は、無線LAN制御部301を介して受信された無線フレームを解析する。この解析は、無線フレームの先頭からの読み込みによって行われる。なお、フレーム解析部302は、後述のように、無線フレームの物理レイヤ(PHY)プリアンブルを解析することにより、通信装置が準拠していない規格(バージョン)についての無線フレームを破棄するように動作しうる。これにより、通信装置は、自装置が準拠していな種類の無線フレームについて解析を早期に中断することができるため、消費電力を低減することができる。フレーム生成部303は、例えば他のAPやSTAへ送信するべきデータを含んだ無線フレームを生成する。フレーム生成部303は、自装置が準拠している規格に従って、また、場合によっては通信の相手装置が準拠している規格に従って、自装置と相手装置との通信が可能となる規格に準拠した無線フレームを生成する。例えば、通信装置がIEEE802.11EHTに準拠しており、相手装置がIEEE802.11axに準拠する場合、IEEE802.11axに準拠した無線フレームが生成されて送受信される。UI制御部304は、通信装置の不図示のユーザによる、通信装置に対する操作を受け付けるためのタッチパネル又はボタン等のユーザインタフェース(UI)に関するハードウェア及びそれらを制御するプログラムを含んで構成される。なお、UI制御部304は、例えば、画像等の表示、又は音声出力等の、情報をユーザに提示するための機能をも有する。記憶部305は、通信装置が実行するプログラムや各種データを保存するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置を含んで構成される。
【0020】
(処理の流れ)
続いて、上述のような通信装置が実行する処理の流れについて説明する。
図4は、本実施形態に係る、IEEE802.11EHTに準拠した通信装置(AP及びSTA)が実行する処理の流れの例を示している。まず、通信装置は、動作周波数帯域を決定する(S401)。この動作周波数帯域の決定は、APによって行われる。すなわち、通信装置がAPである場合は、通信装置のユーザ操作等によって動作周波数帯域が決定され、通信装置がSTAである場合は、接続先のAPによって決定された動作周波数帯域で動作することが決定される。なお、動作周波数帯域は、例えば、2.4GHz、5GHz、6GHzのいずれかの周波数帯域でありうるが、これ以外に使用可能な周波数帯域が存在する場合には、その周波数帯域であってもよい。なお、以下では、旧世代の通信規格に準拠した通信装置も使用可能な2.4GHz又は5GHzの周波数帯域が使用されるものとする。
【0021】
その後、通信装置は、無線フレームを送信する際に、その無線フレームが準拠すべき規格を決定する。なお、本処理例では、通信装置は、その規格がIEEE802.11EHTであるか否かを判定するものとする(S402)。通信装置は、例えば、自装置が準拠している規格と相手装置が準拠している規格とに基づいて、使用する通信規格を決定する。例えば、通信装置と相手装置が共にIEEE802.11EHTに準拠している場合、通信装置は、IEEE802.11EHTを使用すると決定する。また、通信装置と相手装置の一方がIEEE802.11EHTの後継規格に準拠しており、他方がIEEE802.11EHTには準拠しているがその後継規格に準拠していない場合も、通信装置は、IEEE802.11EHTを使用すると決定する。また、通信装置と相手装置の一方がIEEE802.11EHTに準拠しているが、他方が旧世代の規格にのみ準拠している場合は、通信装置は、その旧世代の規格を使用することを決定する。例えば、AP102とSTA103との間の通信では、両者がIEEE802.11EHTに準拠しているため、IEEE802.11EHTを使用することが決定される。また、AP102とSTA104との間の通信は、AP102がIEEE802.11EHTに準拠しているが、STA104がIEEE802.11axのみに準拠しているため、IEEE802.11axを使用することが決定される。また、AP102とSTA105との間の通信は、STA105がIEEE802.11EHTの後継規格に準拠しているが、AP102はその後継規格に準拠していないため、IEEE802.11EHTを使用することが決定される。なお、ここでの「後継規格」は、例えばIEEE802.11EHTのWave2などを含む。すなわち、本実施形態では、以下で議論する無線フレームを使用するIEEE802.11EHT規格が策定された後にさらなる改良を加えたIEEE802.11EHTのバージョン違いも、後継規格として取り扱う。
【0022】
通信装置は、IEEE802.11EHTを使用すると決定した場合(S402でYES)、無線フレーム内に規格の種類を示すフィールド(例えば後述のVersionサブフィールド)を設定し、そのフィールドにEHTを示す値を設定する(S403)。なお、通信装置は、IEEE802.11EHT以降の規格を使用すると決定した場合に、規格の種類を示すフィールドを用意して、使用する規格を示す値をそのフィールドに設定しうる。この場合、通信装置は、S402において、IEEE802.11EHT以降の規格が使用されるか否かを判定し、IEEE802.11EHT以降の規格が使用される場合には規格の種類を示すフィールドに適切な値を設定しうる。そして、通信装置は、そのような規格の種類を示すフィールドを含んだ無線フレーム(PPDU)を生成する。なお、PPDUは、Physical Layer (PHY) Protocol Data Unitの頭字語である。一方、通信装置は、IEEE802.11EHTより前の旧世代の規格(レガシー規格)を使用すると決定した場合(S402でNO)は、その旧世代の規格に従って無線フレーム(PPDU)を生成する。そして、通信装置は、生成した無線フレームを送信する(S404)。なお、ここでの無線フレームの送信は、Beaconの送信をも含む。すなわち、通信装置がAPである場合などにおいて、通信装置は、Beaconを、自装置が準拠する通信規格に従って生成して送信する。なお、通信装置は、自装置が無線フレームを送信せずに相手装置からの無線フレームを受信するのみである場合は、S402~S404の処理を省略してもよい。
【0023】
続いて信号受信時の処理について説明する。通信装置は、相手装置から無線フレームを受信する(S405)。なお、ここでの相手装置は、直接無線通信を行う相手装置のことを指し、例えば通信装置がSTAである場合は、相手装置は接続中のAPであり、通信装置がAPである場合は、相手装置は自装置に接続中のSTAである。通信装置は、受信した無線フレームがレガシー規格の無線フレームであるか否かを判定する(S406)。ここでは、レガシー規格は、IEEE802.11a/b/g/n/ax規格のことを指す。通信装置は、レガシー規格の無線フレームを受信したと判定した場合(S406でYES)には、その無線フレームの全てを読み取る(S407)。一方、通信装置は、IEEE802.11ax規格より後の規格の、すなわち、IEEE802.11EHT以降の規格の無線フレームを受信したと判定した場合(S406でNO)、上述のような規格の種類を示すフィールドを読み取る(S408)。そして、通信装置は、自装置が、読み取ったフィールドに設定されている値によって示される種類の規格に対応しているか(その規格に準拠した動作が可能であるか)を判定する(S409)。例えば、IEEE802.11EHTに準拠した通信装置は、そのフィールドに設定されている値がIEEE802.11EHTに対応する値であるかを判定する。通信装置は、無線フレームの規格の種類に自装置が対応している場合(S409でYES)は、無線フレームの解析を継続して無線フレームの全てを読み取る(S410)。通信装置は、無線フレームの読み込みを終了すると、データフィールドに格納されているデータを、MAC(媒体アクセス制御)層のフレームとして解析を続ける。一方、通信装置は、無線フレームの規格の種類に自装置が対応していない場合(S409でNO)は、その後の無線フレームの解析を行わずに、その無線フレームを破棄する(S411)。これにより、通信装置が、対応していない規格の無線フレームを不必要に読み取り続けることを防ぎ、通信装置の消費電力の浪費を防ぐことができる。なお、通信装置は、無線フレームの送信のみを行い、無線フレームを受信しない場合は、S405以降の処理を省略してもよい。
【0024】
図4では、一例として、APが、自装置が準拠する規格を示す情報を含んだBeaconフレームを生成して送出する。そして、STAは、そのBeaconフレームに基づいて、Probe Requestフレームを送信する。そして、APは、そのProbe Requestフレームが、レガシーフレームであるか否か、レガシーフレームでない場合に自装置が対応している規格に従って生成されたかを判定する。APは、Probe Requestフレームがレガシーフレーム又は自装置が対応している規格に従って生成されているフレームである場合に、MAC層での解析を行う。APは、このMAC層での解析によって、このフレームがProbe Requestフレームであることを認識し、Probe Responseフレームを送信することができる。一方、APは、自装置が対応していない規格に従ってProbe Requestフレームが生成されている場合にはそのフレームを破棄する。なお、APは、MAC層での解析を行うことなくフレームを破棄するため、このフレームがProbe Requestフレームであることを認識していない。このため、APは、Probe Responseフレームを送信しない。このように、通信装置は、S402~S404の信号送信処理と、S405~S411の信号受信処理とを別の通信機会で実行してもよいし、1回の通信機会でこれらの処理を一連の処理として実行してもよい。
【0025】
ここで、IEEE802.11EHTに準拠した無線フレームの構成例を、
図5~
図8に示す。
図5は、シングルユーザ通信用のEHT SU(Single User) PPDUの例を示し、
図6は、マルチユーザ通信用のEHT MU(Multi User) PPDUの例を示している。
図7は、長距離伝送用のEHT ER(Extended Range) PPDUの例を示し、
図8は、APから送信されたトリガフレームへの応答としてSTAから送信されるEHT TB(Trigger Based) PPDUの例を示している。EHT ER PPDUは、APと単一のSTAとの間での通信において、通信範囲を拡張すべき場合に用いられる。
【0026】
PPDUは、STF(Short Training Field)、LTF(Long Training Field)、SIG(Signal Field)の各フィールドを含む。
図5に示すように、PPDU先頭部には、IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に対して後方互換性を確保するための、L(Legacy)-STF501、L-LTF502、及びL-SIG503を有する。なお、
図6~
図8のフレームフォーマットにおいても、L-STF(L-STF601、701、801)、L-LTF(L-LTF602、702、802)、L-SIG(L-SIG603、703、803)が含まれる。なお、L-LTFはL-STFの直後に配置され、L-SIGはL-LTFの直後に配置される。なお、
図6~
図8の構成では、さらに、L-SIGの直後に配置されるRL-SIG(Repeated L-SIG、RL-SIG504、604、704、804)が含まれる。RL-SIGフィールドでは、L-SIGの内容が繰り返し送信される。RL-SIGは、IEEE802.11ax規格以降の規格に準拠したPPDUであることを受信者が認識可能とするものであり、場合によってはIEEE802.11EHTにおいては省略されてもよい。また、RL-SIGに代えて、IEEE802.11EHTのPPDUであることを受信者が認識可能とするためのフィールドが設けられてもよい。
【0027】
L-STFは、PHYフレーム信号の検出、自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)やタイミング検出などに用いられる。L-LTFは、周波数・時刻の高精度な同期や伝搬チャンネル情報(CSI:channnel state information)取得等に用いられる。L-SIGは、データ送信率やPHYフレーム長の情報を含んだ制御情報を送信するために用いられる。IEEE802.11a/b/g/n/ax規格に従うレガシー機器は、上記各種レガシーフィールドを復号することができる。
【0028】
各PPDUは、さらに、RL-SIGの直後に配置される、EHT用の制御情報を送信するためのEHT-SIG(EHT-SIG-A505、605、705、805、及び、EHT-SIG-B606)を含む。また、各PPDUは、EHT用のSTF(EHT-STF506、607、706、806)、EHT用のLTF(EHT-LTF507、608、707、807)を有する。各PPDUでは、これらの制御用のフィールドの後にデータフィールド508、609、708、808と、Packet extentionフィールド509、610、709、809を有する。各PPDUのL-STFからEHT-LTFまでのフィールドが、PHYプリアンブルと呼ばれる。なお、PPDUの各フィールドは、必ずしも
図5~
図8に示す順番に並んでいなくてもよいし、
図5~
図8に示していない新規のフィールドを含んでいてもよい。
【0029】
なお、
図5~
図8は、一例として、後方互換性を確保可能なPPDUを示しているが、後方互換性を確保する必要がない場合には、例えば、レガシーフィールドが省略されてもよい。この場合、例えば、同期の確立のために、L-STF及びL-LTFに代えて、EHT-STFやEHT-LTFが用いられる。そして、この場合、EHT-SIGフィールドの後のEHT-STFや複数のEHT-LTFのうちの1つが省略されうる。
【0030】
EHT SU PPDU及びEHT ER PPDUに含まれるEHT-SIG-A505及び705は、以下の表1及び表2に示すように、PPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2とを含む。また、
図6のEHT MU PPDUのEHT-SIG-A605は、以下の表3及び表4に示すように、PPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2とを含む。さらに、
図8のEHT TB PPDUのEHT-SIG-A805は、以下の表5及び表6に示すように、PPDUの受信に必要なEHT-SIG-A1とEHT-SIG-A2とを含む。本実施形態では、いずれのフレーム構成においても、無線フレームがどの規格に従って生成されるかを示す「Version」サブフィールドを、EHT-SIG-A1の先頭の3ビットに含める。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
そして、例えば、IEEE802.11EHT規格に従って無線フレームが生成された場合、この「Version」サブフィールドに0が格納される。また、IEEE802.11EHT規格の直後の後継規格や変更がなされた後の後継バージョンの規格に従って無線フレームが生成された場合、この「Version」サブフィールドに1が格納される。同様に、規格の種類が増えるごとに、各規格に対応してVersionサブフィールドに設定される値として、2、3、…、7と異なる値が規定される。上述の表1~表6のように、EHT-SIG-Aの先頭の所定数ビットをVersionサブフィールドとして使用することにより、通信装置が、その無線フレームが準拠する規格に自装置が対応しているか否かを早期に判定することができるようになる。この結果、通信装置が、自装置が対応していない規格に従って生成された無線フレームの読み取り(復号処理)を早期に終了することができ、無線フレームの読み取りに関連する消費電力を抑制することができる。
【0038】
なお、表1~表6の例では、Versionサブフィールドが3ビットのフィールドとして規定されているが、これに限られない。例えば、4ビット以上又は2ビット以下のフィールドがVersionサブフィールドとして提供されてもよい。また、EHT-SIG-A1フィールドの0番目~2番目のビット以外の位置で、このVersionの情報が通知されてもよい。また、表1~表6の例ではEHT-SIG-A1にVersionサブフィールドを設ける例を示したが、別の場所にこのサブフィールドが設けられてもよい。例えば、上述のEHT-SIG-Aの前に(例えばL-LTFフィールド又はL-SIGフィールドの直後に)追加のシグナルフィールドを設け、そのフィールドに新たにVersionサブフィールドを含めてもよい。一例において、新たなフィールドが、RL-SIGフィールドの前に配置されうる。これにより、さらに早い段階でフレームの規格の種類を判別することが可能となり、以降のフレームを解析する必要がなくなる。その分、フレームを解析するのにかける計算時間と消費電力を抑えることができる。
【0039】
なお、上述の説明ではIEEE802.11EHTの無線フレームについて説明したが、IEEE802.11EHTより後の後継規格においても、同様の構成を取ることができる。すなわち、例えば、上述のEHT-SIG-Aに対応するフィールドの対応する位置の所定数ビットが、規格の種類(バージョン)を示す情報が格納される構成が、新規の通信規格に対応する無線フレームにおいても採用されうる。同様に、L-SIG(又はRL-SIG)の後に規格の種類を示す情報が設定される新規フィールドを設ける構成が、新規の通信規格に対応する無線フレームにおいて採用されてもよい。これにより、通信装置は、無線フレームを受信した場合に、規格の種類を示す情報まで無線フレームの復号を進めた上で、その無線フレームが自装置が対応していない規格によって生成されたものであることに基づいて、その無線フレームを破棄することができる。なお、通信装置であるAP102やSTA103~105の他、上記のPHYプリアンブルを生成する情報処理装置(例えば、無線チップ)によって、本発明を実施することも可能である。
【0040】
<<その他の実施形態>>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0041】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0042】
102:AP、103~105:STA、301:無線LAN制御部、302:フレーム解析部、303:フレーム生成部、304:UI制御部、305:記憶部