(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/02 20060101AFI20240719BHJP
B62D 55/10 20060101ALI20240719BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20240719BHJP
B62D 21/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E02F9/02 C
B62D55/10 A
B62D21/18 E
B62D21/14
(21)【出願番号】P 2020206106
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氏本 厚
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-087336(JP,A)
【文献】特開2006-151546(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171021(WO,A1)
【文献】特開2012-219445(JP,A)
【文献】特開2005-067336(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0229894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/02
B62D 55/10
B62D 21/18
B62D 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックフレーム、前記トラックフレームの左右に設けられた一対のサイドフレーム、及び前記一対のサイドフレームの間隔を拡縮する拡縮シリンダを有する下部走行体と、
前記トラックフレームに旋回可能に支持された上部旋回体と、
前記上部旋回体に起伏可能に支持された作業装置とを備える作業機械であって、
前記一対のサイドフレームの間隔が、拡幅状態または前記拡幅状態より狭い格納状態であることを検知するための拡幅センサと、
前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記拡幅状態が検知された場合と比較して、前記作業機械の動作速度を遅くする制御装置とを備え
、
前記作業装置は、
前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームと、
前記ブームの先端に揺動可能に支持されたアームと、
前記アームの先端に着脱可能に支持されたアタッチメントと、
前記ブームを起伏させるブームシリンダと、
前記アームを揺動させるアームシリンダと、
前記アタッチメントを動作させるアタッチメントアクチュエータとを含み、
前記制御装置は、前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、
前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの動作速度を前記拡幅状態が検知された場合と比較して遅くし、
前記アタッチメントアクチュエータの動作を無効化することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
油圧ポンプと、
パイロットポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油によって、前記作業機械を動作させる油圧アクチュエータと、
前記パイロットポンプからパイロットポートに供給されるパイロット圧油の圧力が高いほど、前記油圧アクチュエータへの作動油の供給量を増加させる制御弁と、
前記パイロットポンプから前記パイロットポートに供給されるパイロット圧油の圧力を調整する操作装置と、
パイロット圧油を減圧する減圧弁と、
前記パイロットポンプから出力されるパイロット圧油を、前記減圧弁を通じて前記操作装置に供給する規制位置、及び前記減圧弁をバイパスして前記操作装置に供給するバイパス位置に切替可能な第1電磁弁とを備え、
前記制御装置は、
前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記第1電磁弁を前記バイパス位置から前記規制位置に切り替え、
前記拡幅センサで前記拡幅状態が検知された場合に、前記第1電磁弁を前記規制位置から前記バイパス位置に切り替えることを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項
2に記載の作業機械において、
前記アタッチメントアクチュエータへの作動油の供給量を制御する前記制御弁の前記パイロットポートへのパイロット圧油の供給を、許容する許容位置及び遮断する遮断位置に切替可能な第2電磁弁を備え、
前記制御装置は、
前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記第2電磁弁を前記許容位置から前記遮断位置に切り替え、
前記拡幅センサで前記拡幅状態が検知された場合に、前記第2電磁弁を前記遮断位置から前記許容位置に切り替えることを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記拡幅センサは、前記トラックフレームによって下方から覆われていることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
トラックフレーム、前記トラックフレームの左右に設けられた一対のサイドフレーム、及び前記一対のサイドフレームの間隔を拡縮する拡縮シリンダを有する下部走行体と、
前記トラックフレームに旋回可能に支持された上部旋回体と、
前記上部旋回体に起伏可能に支持された作業装置とを備える作業機械であって、
前記一対のサイドフレームの間隔が、拡幅状態または前記拡幅状態より狭い格納状態であることを検知するための拡幅センサと、
前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記拡幅状態が検知された場合と比較して、前記作業機械の動作速度を遅くする制御装置と
、
油圧ポンプと、
パイロットポンプと、
前記油圧ポンプから供給される作動油によって、前記作業機械を動作させる油圧アクチュエータと、
前記パイロットポンプからパイロットポートに供給されるパイロット圧油の圧力が高いほど、前記油圧アクチュエータへの作動油の供給量を増加させる制御弁と、
前記パイロットポンプから前記パイロットポートに供給されるパイロット圧油の圧力を調整する操作装置と、
パイロット圧油を減圧する減圧弁と、
前記パイロットポンプから出力されるパイロット圧油を、前記減圧弁を通じて前記操作装置に供給する規制位置、及び前記減圧弁をバイパスして前記操作装置に供給するバイパス位置に切替可能な第1電磁弁とを備え、
前記制御装置は、
前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記第1電磁弁を前記バイパス位置から前記規制位置に切り替え、
前記拡幅センサで前記拡幅状態が検知された場合に、前記第1電磁弁を前記規制位置から前記バイパス位置に切り替えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡縮可能な一対のサイドフレームを備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラックフレームと、トラックフレームの左右に支持されて拡縮可能な一対のサイドフレームとで構成された下部走行体を備える作業機械が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような作業機械は、一対のサイドフレームの間隔を拡げれば(以下、「拡幅状態」と表記する。)姿勢が安定した状態で作業を行うことができると共に、一対のサイドフレームの間隔を狭めれば(以下、「格納状態」と表記する。)トレーラに搭載して輸送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の作業機械では、オペレータがキャブに搭乗する前にサイドフレームの状態を確認するのが一般的である。しかしながら、オペレータがサイドフレームの拡縮状態の確認を失念する場合がある。そして、サイドフレームが格納状態のときに、作業機械を高負荷で動作させると、作業機械の安定性を損なう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡縮可能な一対のサイドフレームを備える作業機械において、安定性の低下を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、トラックフレーム、前記トラックフレームの左右に設けられた一対のサイドフレーム、及び前記一対のサイドフレームの間隔を拡縮する拡縮シリンダを有する下部走行体と、前記トラックフレームに旋回可能に支持された上部旋回体と、前記上部旋回体に起伏可能に支持された作業装置とを備える作業機械であって、前記一対のサイドフレームの間隔が、拡幅状態または前記拡幅状態より狭い格納状態であることを検知するための拡幅センサと、前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記拡幅状態が検知された場合と比較して、前記作業機械の動作速度を遅くする制御装置とを備え、前記作業装置は、前記上部旋回体に起伏可能に支持されたブームと、前記ブームの先端に揺動可能に支持されたアームと、前記アームの先端に着脱可能に支持されたアタッチメントと、前記ブームを起伏させるブームシリンダと、前記アームを揺動させるアームシリンダと、前記アタッチメントを動作させるアタッチメントアクチュエータとを含み、前記制御装置は、前記拡幅センサで前記格納状態が検知された場合に、前記ブームシリンダ及び前記アームシリンダの動作速度を前記拡幅状態が検知された場合と比較して遅くし、前記アタッチメントアクチュエータの動作を無効化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、拡縮可能な一対のサイドフレームを備える作業機械において、安定性の低下を防止することができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】トラックフレーム及びサイドフレーム周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業機械の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機械1の側面図である。
図2は、下部走行体2の平面図である。
図3は、下部走行体2の拡縮状態を示す図である。
図4は、トラックフレーム5及びサイドフレーム6a周辺の拡大図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、作業機械1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1に示すように、作業機械1は、下部走行体2と、下部走行体2に旋回可能に支持された上部旋回体3と、上部旋回体3に起伏可能に支持されたフロント作業機(作業装置)4とを主に備える。本実施形態に係る作業機械1は、地中に杭を打設する杭打機として利用される。但し、作業機械1の具体例は杭打機に限定されず、油圧ショベル、クレーン、解体機など、下部走行体2、上部旋回体3、及びフロント作業機4を備えていれば、どのような用途に利用されるものでもよい。
【0012】
図2に示すように、下部走行体2は、トラックフレーム5と、一対のサイドフレーム6a、6bとを主に備える。一対のサイドフレーム6a、6bは、トラックフレーム5の左右に設けられて、各々が前後方向に延設されている。一対のサイドフレーム6a、6bは、油圧ポンプ30(
図5参照)から供給される作動油によって回転駆動する走行モータ7a、7bと、走行モータ7a、7bの駆動力によって回転するクローラ8a、8bとを支持している。クローラ8a、8bが回転することによって、作業機械1が走行する。
【0013】
図2及び
図3に示すように、トラックフレーム5とサイドフレーム6aとは、一対の拡縮シリンダ9aと、一対のスライドプレート10aとで接続されている。拡縮シリンダ9aは、油圧ポンプ30から供給される作動油によって伸縮する。そして、拡縮シリンダ9aが伸長すると、サイドフレーム6aがトラックフレーム5から離間する向き(すなわち、右方)に移動する。一方、拡縮シリンダ9aが縮小すると、サイドフレーム6aがトラックフレーム5に近接する向き(すなわち、左方)に移動する。
【0014】
同様に、トラックフレーム5とサイドフレーム6bとは、一対の拡縮シリンダ9bと、一対のスライドプレート10bとで接続されている。拡縮シリンダ9bは、油圧ポンプ30から供給される作動油によって伸縮する。そして、拡縮シリンダ9bが伸長すると、サイドフレーム6bがトラックフレーム5から離間する向き(すなわち、左方)に移動する。一方、拡縮シリンダ9bが縮小すると、サイドフレーム6bがトラックフレーム5に近接する向き(すなわち、右方)に移動する。
【0015】
図3(A)に示すように、拡縮シリンダ9a、9bを伸長すると、一対のサイドフレーム6a、6bの間隔が広がる。
図3(A)に示したのは、一対のサイドフレーム6a、6bの間隔が拡縮シリンダ9a、9bの物理的なストロークエンドの手前であらかじめ定められた最大幅W1となる状態である(以下、この状態を「拡幅状態」と表記する。)。一方、
図3(B)に示すように、拡縮シリンダ9a、9bを縮小すると、一対のサイドフレーム6a、6bの間隔が狭まる。
図3(B)に示したのは、一対のサイドフレーム6a、6bの間隔があらかじめ定められた最小幅W2となる状態である(以下、この状態を「格納状態」と表記する。)。
【0016】
すなわち、拡幅状態における一対のサイドフレーム6a、6bの間隔W1は、格納状態における一対のサイドフレーム6a、6bの間隔W2より広い。換言すれば、格納状態における一対のサイドフレーム6a、6bの間隔W2は、拡幅状態における一対のサイドフレーム6a、6bの間隔W1より狭い。
【0017】
スライドプレート10aは、拡縮シリンダ9aの伸縮に伴って、左右方向にスライドする。
図4に示すように、スライドプレート10aには、左右方向に離間した位置において、各々が上下方向に貫通する貫通孔11a、11bが設けられている。また、トラックフレーム5のスライドプレート10aを支持する部分には、左右方向に離間した位置において、各々が上下方向に貫通する貫通孔12a、12bが設けられている。
【0018】
そして
図4(A)に示すように、サイドフレーム6aが拡幅状態のとき、貫通孔11a、12aが連通する。そして、連通した貫通孔11a、12aにロックピン13を挿通することによって、サイドフレーム6aが拡幅状態で固定される。一方、
図4(B)に示すように、サイドフレーム6aが格納状態のとき、貫通孔11b、12bが連通する。そして、連通した貫通孔11b、12bにロックピン13を挿通することによって、サイドフレーム6aが格納状態で固定される。トラックフレーム5とサイドフレーム6bとの間のスライドプレート10bについても同様である。
【0019】
さらに、
図4に示すように、トラックフレーム5は、拡幅センサ14を備える。拡幅センサ14は、トラックフレーム5によって下方から覆われている。換言すれば、拡幅センサ14は、トラックフレーム5の下面側に露出していない。拡幅センサ14は、サイドフレーム6aの状態を検知し、検知結果を示す検知信号(電流)を出力する。サイドフレーム6bの状態を検知する拡幅センサもトラックフレーム5に搭載されているが、図示は省略する。
【0020】
拡幅センサ14は、例えば、接触センサである。そして、拡幅センサ14は、貫通孔11a、12aに挿通されたロックピン13に接触し、貫通孔11b、12bに挿通されたロックピン13に接触しない位置に配置される。そして、拡幅センサ14は、ロックピン13に接触している(すなわち、拡幅状態)のときに検知信号を出力せず、ロックピン13に接触していない(すなわち、格納状態)ときに検知信号を出力する。但し、拡幅センサ14は、接触センサに限定されず、近接センサなどであってもよい。
【0021】
上部旋回体3は、トラックフレーム5に旋回可能に支持されると共に、フロント作業機4を支持している。旋回モータ(図示省略)の駆動力が伝達されることによって、上部旋回体3が下部走行体2に対して旋回する。
図1に示すように、上部旋回体3は、トラックフレーム5に旋回可能に支持される旋回フレーム15と、フロント作業機4との重量バランスをとるカウンタウェイト16と、作業機械1のオペレータが搭乗するキャブ(運転席)17とを主に備える。
【0022】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム18と、ブーム18の先端に揺動可能に支持された第1アーム19と、第1アーム19の先端に揺動可能に支持された第2アーム20と、第2アーム20の先端に着脱可能に支持されたオーガ21(アタッチメント)と、ブーム18を起伏させるブームシリンダ22と、第1アーム19を揺動させる第1アームシリンダ23と、第2アーム20を揺動させる第2アームシリンダ24と、オーガ21を回転させるオーガモータ25(
図5参照)とを主に備える。
【0023】
オーガ21は、オーガモータ25の駆動力が伝達されることによって、杭打ち及び杭抜きを行う。なお、アタッチメントの具体例はオーガ21に限定されず、バケット、カッタ、破砕機などでもよい。
【0024】
また、走行モータ7a、7b、旋回モータ、ブームシリンダ22、第1アームシリンダ23、第2アームシリンダ24、及びオーガモータ25は、油圧ポンプ30から作動油の供給を受けて動作する油圧アクチュエータの一例である。また、オーガモータ25は、オーガ21(すなわち、アタッチメント)を動作させるアタッチメントアクチュエータの一例である。
【0025】
キャブ17には、作業機械1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ17の内部には、オペレータが着席するシート(図示省略)と、シートに着席したオペレータが操作する操作装置(ステアリング、ペダル、レバー、スイッチなど)とが配置されている。キャブ17に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機4が動作する。
【0026】
図5は、作業機械1のハードウェア構成図である。
図5に示すように、操作装置は、ブームシリンダ22(換言すれば、ブーム18)を操作するブーム操作レバー26と、オーガモータ25(換言すれば、オーガ21)を操作するオーガ操作レバー27と、作業機械1の動作モードを切り替える動作モードスイッチ28と、後述する油圧アクチュエータの動作速度の規制をキャンセルするキャンセルスイッチ29とを主に備える。なお、走行モータ7a、7b、旋回モータ、第1アームシリンダ23、及び第2アームシリンダ24を操作する操作装置の図示は省略する。
【0027】
ブーム操作レバー26は、パイロットポンプ31から制御弁32のパイロットポート32a、32bに供給されるパイロット圧油の圧力を調整する。オーガ操作レバー27は、パイロットポンプ31から制御弁33のパイロットポート33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力を調整する。より詳細には、ブーム操作レバー26及びオーガ操作レバー27(以下、これらを総称して、「操作レバー26、27」と表記することがある。)の操作量が大きいほど、パイロットポート32a、32b、33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力が高くなる。
【0028】
動作モードスイッチ28は、作業機械1の動作モードを、作業モード及び輸送モードの一方から他方に切り替えるためのスイッチである。作業モードとは、下部走行体2による自走及びフロント作業機4を用いた作業を行うモードである。輸送モードとは、フロント作業機4を取り外して、トレーラによって輸送されるモードである。動作モードスイッチ28は、作業モードに切り替えられた場合に動作モード信号(電流)を出力し、輸送モードに切り替えられた場合に動作モード信号の出力を停止する。
【0029】
キャンセルスイッチ29は、リレースイッチ39による動作速度の規制を解除するためのスイッチである。キャンセルスイッチ29が操作されていないとき、リレースイッチ39から出力される電圧が第1電磁弁36に印加される。一方、キャンセルスイッチ29が操作されると、リレースイッチ39から出力される電圧が第1電磁弁36に印加されない。
【0030】
また
図5に示すように、作業機械1は、油圧ポンプ30と、パイロットポンプ31と、複数の制御弁32、33と、ゲートロック弁34と、減圧弁35と、第1電磁弁36と、第2電磁弁37と、LEDランプ38と、リレースイッチ39とをさらに備える。
【0031】
油圧ポンプ30及びパイロットポンプ31は、エンジン(図示省略)の駆動力が伝達されて回転する。油圧ポンプ30は、作動油タンク(図示省略)に貯留された作動油を、制御弁32、33を通じて対応する油圧アクチュエータに供給する。パイロットポンプ31は、作動油タンクに貯留された作動油を、パイロット圧油として制御弁32、33のパイロットポート32a、32b、33a、33bに供給する。
【0032】
制御弁32は、油圧ポンプ30からブームシリンダ22に至る作動油の流路上に配置される。制御弁32は、パイロットポート32a、32bに供給されるパイロット圧油の圧力に応じて、ブームシリンダ22に供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する。より詳細には、制御弁32は、パイロットポート32a、32bに供給されるパイロット圧油の圧力が高いほど、ブームシリンダ22に供給する作動油の単位時間当たりの供給量を増加させる。すなわち、パイロットポート32a、32bに供給されるパイロット圧油の圧力が高いほど、ブームシリンダ22の動作速度が速くなる。
【0033】
制御弁33は、油圧ポンプ30からオーガモータ25に至る作動油の流路上に配置される。制御弁33は、パイロットポート33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力に応じて、オーガモータ25に供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する。より詳細には、制御弁33は、パイロットポート33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力が高いほど、オーガモータ25に供給する作動油の単位時間当たりの供給量を増加させる。すなわち、パイロットポート33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力が高いほど、オーガ21の動作速度が速くなる。
【0034】
なお、パイロットポート32a、32bに供給されるパイロット圧油の圧力は、オペレータによるブーム操作レバー26の操作量によって変化する。同様に、パイロットポート33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力は、オペレータによるオーガ操作レバー27の操作量によって変化する。すなわち、操作レバー26、27の操作量が多いほど、対応するパイロットポート32a、32b、33a、33bに供給されるパイロット圧油の圧力が高くなる。
【0035】
ゲートロック弁34は、パイロットポンプ31から操作レバー26、27に至るパイロット圧油の流路上に配置されている。ゲートロック弁34は、オペレータによる操作装置(ゲートロックレバー)の操作に従って、流路を開放または遮断する。
【0036】
減圧弁35は、パイロットポンプ31から操作レバー26、27に至るパイロット圧油の流路上に配置されている。減圧弁35は、パイロット圧油の流路を絞る。すなわち、減圧弁35は、パイロットポンプ31から出力されるパイロット圧油を、圧力P1から圧力P2に減圧して、操作レバー26、27に供給する。
【0037】
第1電磁弁36は、パイロットポンプ31から操作レバー26、27に至るパイロット圧油の流路のうち、減圧弁35より上流側に配置されている。第1電磁弁36は、リレースイッチ39の制御に従って、規制位置と、バイパス位置とに切替可能に構成されている。第1電磁弁36の初期位置は、バイパス位置である。そして、第1電磁弁36は、リレースイッチ39を通じて制御電圧が印加されると、バイパス位置から規制位置に切り替わる。また、第1電磁弁36は、制御電圧の印加が停止すると、再び規制位置からバイパス位置に切り替わる。
【0038】
規制位置は、パイロットポンプ31から出力されるパイロット圧油を、減圧弁35を通じて操作レバー26、27に供給する位置である。すなわち、第1電磁弁36が規制位置である場合、パイロットポンプ31から出力されるパイロット圧油は、減圧弁35、ゲートロック弁34を通じて、操作レバー26、27に供給される。換言すれば、第1電磁弁36が規制位置である場合、操作レバー26、27に供給されるパイロット圧油の圧力はP2である。
【0039】
バイパス位置は、パイロットポンプ31から出力されるパイロット圧油を、減圧弁35をバイパスして操作レバー26、27に供給する位置である。すなわち、第1電磁弁36がバイパス位置である場合、パイロットポンプ31から出力されるパイロット圧油は、減圧弁35を通過せずに、ゲートロック弁34を通じて操作レバー26、27に供給される。換言すれば、第1電磁弁36がバイパス位置である場合、操作レバー26、27に供給されるパイロット圧油の圧力はP1である。
【0040】
第2電磁弁37は、オーガ操作レバー27から制御弁33のパイロットポート33a、33bに至るパイロット圧油の流路上に配置されている。第2電磁弁37は、リレースイッチ39の制御に従って、許容位置と、遮断位置とに切替可能に構成されている。第2電磁弁37の初期位置は、許容位置である。そして、第2電磁弁37は、リレースイッチ39を通じて制御電圧が印加されると、許容位置から遮断位置に切り替わる。また、第2電磁弁37は、制御電圧の印加が停止すると、再び遮断位置から許容位置に切り替わる。
【0041】
許容位置は、オーガ操作レバー27から制御弁33のパイロットポート33a、33bに至る流路を開放する位置である。すなわち、第2電磁弁37が許容位置の場合、パイロットポート33a、33bへのパイロット圧油の供給が許容される。一方、遮断位置は、オーガ操作レバー27から制御弁33のパイロットポート33a、33bに至る流路を遮断する位置である。すなわち、第2電磁弁37が遮断位置の場合、オーガ操作レバー27の操作量に拘わらず、パイロットポート33a、33bへのパイロット圧油の供給が遮断される。
【0042】
LEDランプ38は、リレースイッチ39の制御に従って、点灯または消灯する。LEDランプ38は、油圧アクチュエータの動作状態を示す報知装置の一例である。より詳細には、LEDランプ38は、油圧アクチュエータの動作速度が規制されていないときに点灯し、油圧アクチュエータの動作速度が規制されているときに消灯する。但し、LEDランプ38の点灯及び消灯のタイミングは、前述の例に限定されない。また、報知装置の具体例はLEDランプ38に限定されず、ディスプレイやスピーカなどでもよい。
【0043】
リレースイッチ39は、拡幅センサ14及び動作モードスイッチ28の状態に応じて、第1電磁弁36、第2電磁弁37、及びLEDランプ38を制御する制御装置である。但し、制御装置の具体的な構成はリレースイッチ39に限定されず、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよい。
【0044】
より詳細には、リレースイッチ39は、拡幅センサ14から検知信号が出力されていない(すなわち、拡幅状態である)場合に、作業機械1の動作モードに拘わらず、第1電磁弁36及び第2電磁弁37に電圧を印加せず、LEDランプ38を点灯する。すなわち、第1電磁弁36はバイパス位置となり、第2電磁弁37は許容位置となる。また、拡幅センサ14から検知信号が出力され(すなわち、格納状態)、且つ動作モードスイッチ28から動作モード信号が出力されていない場合(すなわち、輸送モード)も同様である。
【0045】
これにより、パイロットポンプ31から出力される圧力P1のパイロット圧油は、減圧弁35を通過せずに操作レバー26、27に供給される。また、操作レバー26、27に供給されたパイロット圧油は、操作レバー26、27の操作量に応じた圧力に調整(減圧)されて、制御弁32、33のパイロットポート32a、32b、33a、33bに供給される。
【0046】
一方、リレースイッチ39は、拡幅センサ14から検知信号が出力され(すなわち、格納状態)、且つ動作モードスイッチ28から動作モード信号が出力されている(すなわち、作業モード)の場合に、第1電磁弁36及び第2電磁弁37に電圧を印加し、LEDランプ38を消灯する。すなわち、第1電磁弁36は規制位置となり、第2電磁弁37は遮断位置となる。
【0047】
これにより、パイロットポンプ31から出力されるパイロット圧油は、減圧弁35で圧力P1から圧力P2に減圧されて、操作レバー26、27に供給される。また、ブーム操作レバー26に供給されたパイロット圧油は、ブーム操作レバー26の操作量に応じた圧力に調整(減圧)されて、制御弁32のパイロットポート32a、32bに供給される。一方、オーガ操作レバー27に供給されたパイロット圧油は、オーガ操作レバー27の操作量に拘わらず、制御弁33のパイロットポート33a、33bに供給されない。
【0048】
すなわち、ブーム操作レバー26に供給されるパイロット圧油の圧力は、第1電磁弁36が規制位置である場合(=P2)、バイパス位置である場合(=P1)より低い。そのため、ブーム操作レバー26の操作量が同一である場合において、制御弁32のパイロットポート32a、32bに供給されるパイロット圧油の圧力は、第1電磁弁36が規制位置である場合に、バイパス位置である場合より低くなる。
【0049】
その結果、ブームシリンダ22の動作速度は、第1電磁弁36が規制位置(すなわち、一対のサイドフレーム6a、6bが格納状態)である場合に、バイパス位置(すなわち、一対のサイドフレーム6a、6bが拡幅状態)である場合より遅くなる。
【0050】
一方、第2電磁弁37が遮断位置である場合、オーガ操作レバー27を操作しても制御弁33にパイロット圧油が供給されない。そのため、第2電磁弁37が遮断位置(すなわち、一対のサイドフレーム6a、6bが格納状態)である場合、オーガモータ25の動作は無効化される。
【0051】
さらに、第1電磁弁36及び第2電磁弁37に電圧が印加されている状態で、オペレータがキャンセルスイッチ29を操作すると、第1電磁弁36に印加される電圧が遮断される。これにより、第1電磁弁36が規制位置からバイパス位置に切り替えられて、操作レバー26、27に圧力P1のパイロット圧油が供給される。
【0052】
すなわち、キャブ17に搭乗したオペレータは、キャンセルスイッチ29を操作によって、ブームシリンダ22の動作速度の規制を解除することができる。一方、キャンセルスイッチ29を操作しても第2電磁弁37に印加される電圧は遮断されない。そのため、オーガモータ25の動作無効化状態は解除されない。
【0053】
上記の実施形態によれば、一対のサイドフレーム6a、6bの状態を拡幅センサ14で検知して、格納状態である場合に拡幅状態の場合よりブームシリンダ22の動作速度を遅くした。これにより、仮にオペレータがサイドフレーム6a、6bの状態を確認せずにフロント作業機4を動作させたとしても、作業機械1の安定性が低下するのを防止できる。
【0054】
また、上記の実施形態では、ブームシリンダ22の動作速度を調整する例を説明したが、走行モータ7a、7b、旋回モータ、第1アームシリンダ23、及び第2アームシリンダ24についても、ブームシリンダ22と同様に動作速度が調整される。
【0055】
また、上記の実施形態によれば、油圧アクチュエータの動作速度の規制を、キャンセルスイッチ29によってオペレータによって解除可能にした。これにより、作業機械1の安定性が確保されている状況では、作業機械1の作業効率を優先することができる。
【0056】
また、上記構成によれば、一対のサイドフレーム6a、6bが格納状態の場合に、オーガモータ25(換言すれば、オーガ21)の動作を無効化した。このように、特に負荷の大きい油圧アクチュエータは、動作速度を遅くするのではなく、完全に動作を無効化することによって、作業機械1の安定性の低下をさらに防止することができる。一対のサイドフレーム6a、6bが格納状態のときに動作を無効化する油圧アクチュエータは、オーガモータ25に限定されない。
【0057】
一方、上記の実施形態によれば、動作モードが輸送モードの場合に、一対のサイドフレーム6a、6bが格納状態でも油圧アクチュエータの動作を規制しない。これにより、フロント作業機4が取り外された作業機械1をトレーラに積載する作業の効率低下を防止することができる。
【0058】
さらに、上記の実施形態によれば、下部走行体2に搭載した拡幅センサ14を、トラックフレーム5で下方から覆うことによって、クローラ8a、8bが巻き上げた粉塵などで、拡幅センサ14が損傷するのを防止することができる。
【0059】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 作業機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
5 トラックフレーム
6a,6b サイドフレーム
7a,7b 走行モータ
8a,8b クローラ
9a,9b 拡縮シリンダ
10a,10b スライドプレート
11a,11b,12a,12b 貫通孔
13 ロックピン
14 拡幅センサ
15 旋回フレーム
16 カウンタウェイト
17 キャブ
18 ブーム
19 第1アーム
20 第2アーム
21 オーガ
22 ブームシリンダ
23 第1アームシリンダ
24 第2アームシリンダ
25 オーガモータ
26 ブーム操作レバー
27 オーガ操作レバー
28 動作モードスイッチ
29 キャンセルスイッチ
30 油圧ポンプ
31 パイロットポンプ
32,33 制御弁
32a,32b,33a,33b パイロットポート
34 ゲートロック弁
35 減圧弁
36 第1電磁弁
37 第2電磁弁
38 LEDランプ
39 リレースイッチ(制御装置)