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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】検査装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20240722BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240722BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240722BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G01N21/956 A
G03F7/20 521
H01L21/66 J
H01L27/146 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019238518
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107848
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 功輔
(72)【発明者】
【氏名】稲 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 善之
(72)【発明者】
【氏名】玉木 順也
(72)【発明者】
【氏名】豊田 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】手塚 智之
(72)【発明者】
【氏名】太田 靖
(72)【発明者】
【氏名】石岡 真男
(72)【発明者】
【氏名】松野 靖司
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-317773(JP,A)
【文献】特開2007-067018(JP,A)
【文献】特開2008-277463(JP,A)
【文献】特開2010-186918(JP,A)
【文献】特開2013-033870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の露光ショットによって複数のパターンが形成されたウエハを検査する検査装置であって、
第1の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第1情報と、前記第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第3の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第2情報と、を取得する取得手段と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分と、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分とを導出する導出手段と、
を備え
前記第1の露光ショットおよび前記第3の露光ショットでは、第1のレチクルを用い、
前記第2の露光ショットでは、第2のレチクルを用い、
前記導出手段は、前記レチクルに起因する誤差の線形成分として、前記第1のレチクルに起因する誤差の線形成分と、前記第2のレチクルに起因する誤差の線形成分とを導出する、
検査装置。
【請求項2】
前記第3の露光ショットは前記第1の露光ショットの後であり、
前記第2の露光ショットは前記第3の露光ショットの後である、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記導出手段は、最小二乗法を用いた回帰分析により、前記レチクルに起因する誤差の線形成分と、前記ウエハの位置に起因する誤差の線形成分とを導出する、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記導出手段は、機械学習による学習済モデルを用いて、前記レチクルに起因する誤差の線形成分と、前記ウエハの位置に起因する誤差の線形成分とを導出する、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記導出手段は、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分を暫定的に導出し、
前記第1情報と前記第2情報に応じた値から、前記暫定的に導出された線形成分に応じた値を差し引いた値に基づいて、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分を導出し、
前記第1情報と前記第2情報に応じた値から、前記ウエハに起因する誤差の線形成分に応じた値を差し引いた値に基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分を導出する、
請求項1からのいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第1の露光ショットおよび前記第2の露光ショットは、前記ウエハの1層目の露光として行われる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
複数の露光ショットによって複数のパターンが形成されたウエハを検査する検査装置であって、
第1の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第1情報と、前記第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第3の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第2情報と、を取得する取得手段と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分と、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分とを導出する導出手段と、
を備え、
前記導出手段は、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分を暫定的に導出し、
前記第1情報と前記第2情報に応じた値から、前記暫定的に導出された線形成分に応じた値を差し引いた値に基づいて、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分を導出し、
前記第1情報と前記第2情報に応じた値から、前記ウエハに起因する誤差の線形成分に応じた値を差し引いた値に基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分を導出する、
検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップサイズが大きく、かつ微細なパターンを有する半導体装置を製造する場合、各層のパターンを複数の部分パターンに分割し、この部分パターンを繋ぎ合わせて露光する分割露光が用いられている。分割露光を行う際には、部分パターンと下地との位置合わせや、部分パターン同士の繋ぎ合わせを精度良く行う必要がある。また、分割露光でパターンを形成した層の上に一括露光でパターンを形成する場合に下地との位置合わせを精度良く行う必要がある。特許文献1には、チップサイズが露光装置の露光範囲より大きい積層構造を有する半導体装置において、分割露光と一括露光を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-216334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、分割露光を用いて半導体装置を製造する上で有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一態様は、
複数の露光ショットによって複数のパターンが形成されたウエハを検査する検査装置であって、
第1の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第1情報と、前記第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第3の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第2情報と、を取得する取得手段と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分と、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分とを導出する導出手段と、
を備え
前記第1の露光ショットおよび前記第3の露光ショットでは、第1のレチクルを用い、
前記第2の露光ショットでは、第2のレチクルを用い、
前記導出手段は、前記レチクルに起因する誤差の線形成分として、前記第1のレチクルに起因する誤差の線形成分と、前記第2のレチクルに起因する誤差の線形成分とを導出する、検査装置である。
本発明の他の態様は、
複数の露光ショットによって複数のパターンが形成されたウエハを検査する検査装置であって、
第1の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第1情報と、前記第2の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークと第3の露光ショットによって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第2情報と、を取得する取得手段と、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分と、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分とを導出する導出手段と、
を備え、
前記導出手段は、
前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分を暫定的に導出し、
前記第1情報と前記第2情報に応じた値から、前記暫定的に導出された線形成分に応じた値を差し引いた値に基づいて、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分を導出し、
前記第1情報と前記第2情報に応じた値から、前記ウエハに起因する誤差の線形成分に応じた値を差し引いた値に基づいて、レチクルに起因する誤差の線形成分を導出する、検査装置である。
【0006】
本発明の第二態様は、
半導体装置の製造方法であって、
第1の部分パターンと第2の部分パターンを繋ぎ合わせて露光する繋ぎ露光処理によって第1のパターンを形成する第1の形成工程と、
一括露光処理によって第2のパターンを形成する第2の形成工程と、
前記第1のパターンと前記第2のパターンの位置関係を表す情報を取得する取得工程と、
を含み、
前記第1のパターンは、前記第1の部分パターンの露光によって形成された少なくとも3つの検査マークを含む第1の検査マーク群と、前記第2の部分パターンの露光によって形成された少なくとも3つの検査マークを含む第2の検査マーク群と、を有し、
第1の検査マーク群および第2の検査マーク群のそれぞれは、前記3つの検査マークのうちの第1の検査マークと第2の検査マークとを結ぶ直線と、前記3つの検査マークのう
ちの第3の検査マークと前記第1の検査マークとを結ぶ直線と、が交差するように配置され、
前記第1の検査マーク群の前記3つの検査マークおよび第2の検査マーク群の前記3つの検査マークと、前記第2のパターンに含まれる検査マークと、を用いて前記情報を取得する、
半導体装置の製造方法である。
【0007】
本発明の第三態様は、
基板と、前記基板の上に配された絶縁体層と、を含むウエハを用意する工程と、
前記ウエハの上に、複数の部分パターンを繋ぎ合わせた繋ぎ露光処理により配線層を形成する工程と、
前記配線層の形成後に、一括露光処理により前記絶縁体層を加工する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法である。
【0008】
本発明の第四態様は、
ウエハから複数のチップを製造する半導体装置の製造方法であって、
前記ウエハの上のフォトレジストを露光する露光工程と、
前記フォトレジストを現像する現像工程と、を備え、
前記露光工程は、
第1チップの第1の部分パターンと、第2チップの第2の部分パターンと、前記第1チップと前記第2チップの間のスクライブ領域パターンと、を前記フォトレジストに露光する第1の露光ショットと、
前記第2チップの第3の部分パターンを前記フォトレジストに露光する第2の露光ショットと、を含む
半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分割露光を用いて半導体装置を製造する上で有利な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るリソグラフィシステムの全体構成図。
図2】リソグラフィシステムに含まれる露光装置の構成図。
図3】リソグラフィシステムに含まれる重ね合わせ検査装置の構成図。
図4】第1実施形態における分割露光のショットを説明する図。
図5】重ね合わせ検査マークの例を示す図。
図6】ウエハに起因する重ね合わせ誤差の線形成分を説明する図。
図7】ショットに起因する重ね合わせ誤差の線形成分を説明する。
図8】第1実施形態における重ね合わせ検査の流れを示すフローチャート。
図9】一括露光および分割露光のショットを説明する図。
図10】第2実施形態におけるチップ配置および検査マークを示す図。
図11】第2実施形態におけるチップ配置を説明する図。
図12】第2実施形態における半導体装置の構成を示す図。
図13】第2実施形態において形成される検査マークを説明する図。
図14】第2実施形態において形成される検査マークを説明する図。
図15】第2実施形態の効果を説明する図。
図16】第2実施形態の効果を説明する図。
図17】第2実施形態の変形例を示す図。
図18】第2実施形態の他の適用例を示す図。
図19】第3実施形態における第一種の露光工程の流れを示すフローチャート。
図20】第3実施形態における第二種の露光工程の流れを示すフローチャート。
図21】第3実施形態を半導体装置製造に適用した例を説明する図。
図22】第3実施形態を半導体装置製造に適用した例を説明する図。
図23】第3実施形態を半導体装置製造に適用した例を説明する図。
図24-1】第4実施形態における半導体装置の構造および製造方法の説明図。
図24-2】第4実施形態における半導体装置の構造および製造方法の説明図。
図24-3】第4実施形態における半導体装置の構造および製造方法の説明図。
図24-4】第4実施形態における半導体装置の構造および製造方法の説明図。
図25】第4実施形態における露光処理を説明する図。
図26-1】第5実施形態における課題を説明する図。
図26-2】第5実施形態における課題を説明する図。
図27】第6実施形態における露光ショットおよびレチクルパターンを示す図。
図28】第6実施形態における露光ショットおよびレチクルパターンを示す図。
図29】第6実施形態における露光ショットおよびレチクルパターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の記載は本発明の実施形態を例示的に説明することを目的としており、本発明の範囲を説明される実施形態のみに限定する趣旨ではない。また、以下の実施形態はそれぞれ組み合わせて実施してもよい。したがって、或る実施形態で説明した事項について、他の実施形態でも同様であってよい事項については、他の実施形態における説明を省略する。本発明は、明細書に記載した実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。なお、本明細書の開示内容は、本明細書に記載したことのみならず、本明細書および本明細書に添付した図面から把握可能な全ての事項を含む。また本明細書の開示内容は、本明細書に記載した概念の補集合を含んでいる。すなわち、本明細書に例えば「AはBよりも大きい」旨の記載があれば、「AはBよりも大きくない」旨の記載を省略しても、本明細書は「AはBよりも大きくない」旨を開示していると云える。なぜなら、「AはBよりも大きい」旨を記載している場合には、「AはBよりも大きくない」場合を考慮していることが前提だからである。
【0012】
<第1実施形態>
チップサイズが大きく、かつ微細なパターンを有する半導体デバイスを製造するために、分割露光と呼ばれる手法が用いられている。分割露光は、各層の所望パターン(以下、元パターンと称す)を複数のパターン(以下、部分パターンあるいは分割パターンと称す)に分割し、この部分パターンを繋ぎ合わせて露光する処理である。分割露光は複数の部分パターンを繋ぎ合わせて露光することから、繋ぎ露光とも称することができる。分割露光により1つの層の元パターンを形成し、それらの工程を複数回繰り返すことにより複数層からなる半導体デバイスが製造される。これに対して、元パターンを分割せずに一括して露光する処理を、一括露光と称する。なお、繋ぎ露光あるいは分割露光において形成されるパターンにおいては、複数の部分パターンが繋ぎ領域で連続することが典型的である。しかし、繋ぎ露光あるいは分割露光において形成されるパターンにおいて、複数の部分パターンが繋ぎ露光で連続することは必須ではなく、複数の部分パターンが同一チップ内に互いに不連続であってもよい。半導体装置の製造においては、ウエハの上のフォトレジストを露光する露光工程と、フォトレジストを現像する現像工程と、を経て、フォトレジストからレジストパターンを形成する。このレジストパターンを用いてウエハの加工(ウエハの層に対するエッチングやイオン注入)などが行われる。露光工程では、レチクル(フォトマスク)に形成されたレチクルパターンに応じてフォトレジストが露光される。1つの露光ショットによって、1つのレチクルパターンがフォトレジストに露光される。露光ショットによってフォトレジストに形成された露光パターン(潜像)が、現像工程を経
て、レジストパターンとして形成される。レジストパターンを用いてウエハの加工がおこなわれ、加工の結果、ウエハを構成する層に加工パターンが形成される。以下の説明では、特に断りがない限りは、レチクルパターンとレジストパターンと加工パターンとを等価なものとして扱う。
【0013】
この分割露光による製造方法においては、各部分パターンはアライメントにより位置合わせされる。しかし、アライメントには、ある程度の誤差(以下、アライメント誤差と称す)が含まれている。部分パターンのアライメントは下地に対して行われるが、アライメント誤差などのため、必ずしも同一層の部分パターン同士の繋ぎ目が一致せず部分パターン間にずれが生じることがある。部分パターン間ずれを低減するために、少なくとも1つの層について分割露光において、いずれか1つの部分パターンのアライメントで得られたアライメント情報をレチクルの位置合わせに用いることが提案されている(特開2004-153115号公報)。
【0014】
一方、露光装置のウエハステージのXY方向の二次元の駆動により形成する格子位置の配置精度の管理は色々な方法で実施されている。例えば「基準ウエハ」と呼ばれる工具用のウエハを使用して「正しい格子位置」の情報を得ることで実際に使用する露光装置のウエハステージの配置精度が管理されている(特開昭61-219134号公報)。
【0015】
また、1枚のレチクルをステップして露光する際に隣接したショット間で重なるように露光する「隣接ショット間重ね合わせ」と呼ばれる方法でも露光装置の格子位置の配置精度を管理している。この方法は工具の特定レチクルを使って行われている一般的だが、実素子用レチクルを使って管理する方法も提案されている(特開2007-067018号
【0016】
しかしながら、各分割露光に使用するレチクルの描画誤差が異なる場合に関しての重ね合わせの管理方法に関して、これまで提案が行われていない。つまり、各部分パターンについて描画誤差の異なるレチクルを使用する露光においては、下地に対するアライメントをある程度の精度で行ったとしても、同一層の部分パターン間がずれるという問題が生じる。これは、描画誤差の異なるレチクルを使うことにより発生する誤差を考慮できていないため、重ね合わせ誤差が必然的に発生するからである。
【0017】
さらには、下地に対してアライメントせずに分割露光を行う場合、「隣接ショット間重ね合わせ」での露光装置の配置を管理することが考えられるが、複数レチクルを使用した場合に関しての検討は何も行われていないのが現状である。
【0018】
ここで、「ショット間重ね合わせ」による露光装置の配置位置精度について、図9(A),図9(B)を用いて考える。
【0019】
図9(A)は、図9(B)に示す1枚のレチクル1001を用いた一括露光の場合の「チップ間重ね合わせ」を示す図である。原版のレチクル1001に部分パターン1005と共に検査マーク1040,1041,1042が形成される。このとき、検査マーク1040,1041,1042は、レチクル1001の各辺の両端部に近い位置に所定の数だけ形成される。レチクル1001を用いた露光により、ウエハ1002上に部分パターン1005と検査マーク1040,1041,1042とが同時に転写される。この露光動作を繰り返すことによりウエハ1002全面にレチクル1001の原版パターン(所望パターン)が順次転写される。この転写の際に、検査マーク1041,1042が形成されている露光ショット1006の外縁部は、検査マーク1040が形成されている隣接ショット1007、1008の外縁部と重なるように転写される。
【0020】
重ね合わせ検査装置1120は、検査マーク1040と検査マーク1041との複合体
により形成された重ね合わせ検査マークのずれ量を測定する。重ね合わせ検査装置1120は、測定されたずれ量に基づいて、露光ショット1006と隣接ショット1007との間の、平面視で上下ステップの隣接ショット間ずれを検出することができる。同様に、検査マーク1040と検査マーク1042との複合体により形成された重ね合わせ検査マークのずれ量を測定することにより、露光ショット1006とその隣接ショット1008との間の、平面視で左右ステップの隣接ショット間ずれを検出できる。また、検査マークの数と配置位置から、ショット倍率成分、ショット回転成分およびショット直交度の線形成分を算出することができる。
【0021】
図9(C)は、図9(D)に示す2枚のレチクル1001a、1001bを用いた分割露光の場合の「分割ショット間重ね合わせ」を示す図である。原版の各レチクル1001a、1001bに部分パターン1005a、1005bと共に検査マーク1040a、1041a、1042a、1040b、1041b、1042bが形成される。このとき、検査マークは、各レチクル1001a、1001bの各辺の端部に近い位置に所定の数だけ形成される。レチクル1001a,1001bを用いた露光により、ウエハ1002上に部分パターン1005a、1005bと検査マーク1040a、1041a、1042a、1040b、1041b、1042bとが同時に転写される。この露光動作を繰り返すことによりウエハ1002全面に各レチクル1001a、1001bの原版パターン(所望パターン)が順次転写される。この転写の際に、露光ショット1006a、1006b(合わせて露光ショット1006とする)の外縁部は、検査マーク1040a、1040bが形成されている隣接ショット1007a、1007b、1008a、1008bの外縁部と重なるように転写する。
【0022】
重ね合わせ検査装置1120は、検査マーク1040aと検査マーク1041aとの複合体により形成された重ね合わせ検査マークのずれ量を測定する。重ね合わせ検査装置1120は、計測されたずれ量に基づいて、露光ショット1006aとその隣接ショット1007aとの間の、平面視で上下ステップの隣接ショット間ずれを検出することができる。同様に、検査マーク1040b、1041bの複合体により形成された重ね合わせ検査マークのずれ量測定により、露光ショット1006bとその隣接ショット1007bとの間の、平面視で上下ステップの隣接ショット間ずれを検出できる。
【0023】
左右ステップに関しては、検査マーク1040bと検査マーク1042aとの複合体により形成された重ね合わせ検査マークのずれ量に基づいて、隣接ショット間ずれが検出される。しかし、検査マークのずれ量が、レチクル1001a、1001bのショット倍率、ショット回転のショット誤差成分であるのか、レチクル1001a、1001bで露光された転写パターン間の配置位置オフセット誤差であるのかを区別できない。この区別ができないと、分割露光での繋ぎ合わせ補正を精度良く実行できない。ショット誤差はレチクルに起因する誤差である。また、配置位置オフセット誤差はウエハの位置に起因する誤差であり、ウエハに起因する誤差とステージに起因する誤差が含まれる。
【0024】
このような課題を鑑みて、本実施形態は、各部分パターンについて描画誤差の異なるレチクルを使用して分割露光を行っても、高精度な繋ぎ合わせを行うことができる重ね合わせ検査装置と半導体デバイスの製造方法を提供する。
【0025】
以下、本実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態における半導体デバイスはチップサイズが大きく、かつ微細なパターンを有しており、その一例として画像を撮影する撮像装置(撮像装置)である。
【0026】
[リソグラフィシステム]
図1は、実施形態に係るリソグラフィシステム1110の全体構成を概略的に示す。リ
ソグラフィシステム1110は、N台の露光装置1000-1、1000-2、……、1000-N、重ね合わせ検査装置1120、情報サーバ1130、ターミナルサーバ1140、及びホストコンピュータ(ホスト)1150等を備えている。露光装置1000-1~1000-N、重ね合わせ検査装置1120、情報サーバ1130及びターミナルサーバ1140は、ローカルエリアネットワーク(LAN)1160を介して相互に接続されている。また、ホストコンピュータ1150は、ターミナルサーバ1140を介してLAN1160に接続されている。すなわち、ハードウエア構成上では、露光装置1000-i(i=1~N)、重ね合わせ検査装置1120、情報サーバ1130、ターミナルサーバ1140、及びホストコンピュータ1150の相互間の通信経路が確保されている。
【0027】
(露光装置の構成)
露光装置1000-1~1000-Nのそれぞれは、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)であっても良いし、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(スキャナ)であっても良い。以下、露光装置1000-1~1000-Nを総称して、露光装置1000と呼ぶ。露光装置1000は、ショット間の非線形誤差の補正機能を有するスキャナであるものとする。グリッド補正機能とは、ウエハ上に既に形成された複数のショット相互間の位置誤差に含まれる非線形な平行移動成分を補正する機能を意味する。
【0028】
図2には、グリッド補正機能を有するスキャナ型の露光装置1000-1の概略構成が示されている。露光装置1000-1は、照明系1010、レチクルRを保持するレチクルステージRS、投影光学系UL、ウエハWが搭載されるウエハステージWS、及び装置全体を統括制御する主制御系1020等を備えている。
【0029】
照明系1010は、回路パターン等が描かれたレチクルR上のレチクルブラインドで規定されたスリット状の照明領域部分を照明光ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの遠紫外光、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)などの真空紫外光などが用いられる。
【0030】
レチクルステージRSは、真空吸着または静電吸着により、レチクルRを保持する。レチクルステージRSは、不図示のレチクルステージ駆動部によって、所定の走査方向(Y軸方向)に指定された走査速度で駆動可能である。レチクルステージRSのステージ移動面内の位置は、バーミラー1015を介して、レチクル干渉計1016によって常時検出される。レチクル干渉計1016からのレチクルステージRSの位置情報はステージ制御系1019及びこれを介して主制御系1020に供給される。ステージ制御系1019は、主制御系1020からの指示に応じ、レチクルステージRSの位置情報に基づいてレチクルステージRSを駆動制御する。レチクルRの上方には、一対のレチクルアライメント系1022が配置されており、レチクルアライメント結果は主制御系1020に供給される。
【0031】
投影光学系ULの投影光学倍率は例えば1/2、1/3.125、1/4、1/5等である。このため、照明系1010からの照明光ILによってレチクルRの照明領域が照明されると、このレチクルRを通過した照明光ILは、投影光学系ULを介してウエハWに照射される。照明領域内のレチクルRの回路パターンの縮小像がウエハWのレジスト上に形成される。
【0032】
ウエハステージWSには、ウエハチャック1025が載置されている。このウエハチャック1025上にウエハWが例えば真空吸着によって固定される。ウエハステージWSは、走査方向(Y軸方向)の移動のみならず、走査方向に直交する非走査方向(X軸方向)にも移動可能に構成される。露光装置1000-1は、ウエハW上の各ショットを走査(
スキャン)露光する動作と、次のショットの露光のための加速開始位置まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作を行う。
【0033】
ウエハステージWSのXY平面内での位置は、バーミラー1017を介して、ウエハ干渉計1018によって、常時検出される。ここで、実際には、ウエハステージWS上には、走査方向(Y方向)に直交する反射面を有するY方向バーミラーと非走査向(X軸方向)に直交するX方向バーミラーとが設けられる。これに対応して、Y方向バーミラーに垂直に干渉計ビームを照射するY方向ウエハ干渉計と、X方向バーミラーに垂直に干渉計ビームを照射するX方向ウエハ干渉計とが設けられている。
【0034】
ウエハステージWSのステージ座標系上における位置情報(又は速度情報)はステージ制御系1019、及びこれを介して主制御系1020に供給される。ステージ制御系1019は、主制御系1020の指示に応じ、ウエハステージWSの上記位置情報(又は速度情報)に基づき、ウエハステージ駆動部1024を介してウエハステージWSを制御する。
【0035】
投影光学系ULの側面には、オフアクシス方式のアライメント系OASが設けられている。このアライメント系OASは、ウエハ上のアライメントマークの像と、ウエハと共役な面内に配置された指標板上の指標マークの像とを撮像する。撮像は、所定の波長幅を有する照明光(光源は例えば白色LED)をウエハに照射し、反射光を対物レンズ等によって撮像素子の受光面上に結像することにより行われる。アライメント系OASはアライメントマークの撮像結果を、主制御系1020へ向けて出力する。
【0036】
主制御系1020は、CPUのようなプロセッサとメモリとを含んで構成され、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより、装置の構成各部を統括制御する。主制御系1020は、前述したLAN1160に接続されている。また、本実施形態では、主制御系1020を構成するハードディスク等の記憶装置、あるいはRAM等のメモリには、複数種類の補正マップなどがデータベースとして格納される。
【0037】
その他の露光装置1000-2~1000-Nも、主制御系1020のアルゴリズムの一部が異なる点を除き、露光装置1000-1と同様に構成されている。露光装置1000-1~1000-Nの一部または全部は、グリッド補正機能を有していなくてもよい。
【0038】
(露光装置による露光処理)
次に、露光装置1000-1の露光処理工程の動作について、簡単に説明する。
【0039】
露光に先立って、主制御系1020により、準備作業が行われる。準備作業は、不図示のウエハ搬送系を用いたウエハチャック1025上へのウエハWのロード、レチクルアライメント及びアライメント系OASのベースライン計測、及びウエハライメントを含む。ウエハアライメントは、ショット内1マークについてのAGA(アドバンスト・グローバル・アライメント)計測、ショット内多点AGA計測のいずれにより行われても良い。ここで、ショット内多点AGAとは、ショット内の複数のウエハライメントマーク(例えばショット内4隅)の位置検出データを用いたグローバル・アライメントである。グローバル・アライメントは、位置検出データに対して最小2乗法を利用した統計学的手法を用いて、ウエハW上の全てのショットの配列座標及び各ショットの倍率、回転、シフトを含む変形量を求める手法である。
【0040】
主制御系1020は、上記のレチクルアライメント及びベースライン計測の結果、並びにウエハライメントの結果に基づいて、ウエハW上の全てのショットに、順次、走査露光によりレチクルRのパターンを転写する。
【0041】
ウエハW上の各ショットに対するスキャン露光では、主制御系1020は、レチクル干渉計1016とウエハ干渉計1018からの位置情報をモニタしつつ、レチクルステージRSとウエハステージWSをそれぞれの走査開始位置(加速開始位置)に移動させる。そして、主制御系1020は、両ステージRS,WSをY軸方向に、ただし互いに逆向きに、相対駆動する。ここで、両ステージRS,WSがそれぞれの目標速度に達すると、照明光ILによってレチクルRのパターン領域が照明され始め、走査露光が開始される。
【0042】
主制御系1020は、特に上記の走査露光時にレチクルステージRSとウエハステージWSのY軸方向の移動速度が投影光学系ULの投影倍率に応じた速度比に維持されるようにレチクルステージRS及びウエハステージWSを同期制御する。このとき、主制御系1020は、両ステージRS,WSの同期駆動を調整し、あるいは投影光学系ULの内部機構による結像特性補正により,レチクルRのパターンのウエハW上への投影像の歪みを補正する。両ステージRS,WSの同期駆動の調整は、レチクルステージ駆動系1022とウエハステージ駆動部1024とを介して走査露光時におけるレチクルR(レチクルステージRS)とウエハW(ウエハステージWS)との走査方向の速度比を調整することを含む。両ステージRS,WSの同期駆動の調整は、また、両ステージRS,WSの走査方向を僅かにずらすことを含む。速度比の調整によって、投影像の走査方向についての倍率を補正することができ、走査方向の調整によって、投影像を歪ませることができる。
【0043】
レチクルRのパターン領域の異なる領域が照明光ILで逐次照明され、パターン領域全面に対する照明が完了することにより、ウエハW上の第1ショットの走査露光が終了する。これにより、レチクルRの回路パターンが投影光学系ULを介して第1ショットに縮小転写される。
【0044】
第1ショットに対する走査露光が終了すると、主制御系1020はウエハステージWSを、次の第2ショットに対する走査開始位置(加速開始位置)へ移動(ステッピング)させる。そして、先と同様に、第2ショットに対する走査露光を行う。以後、第3ショット以降についても同様の動作を行う。このようにして、ショット間のステッピング動作とショットに対する走査露光動作とが繰り返され、ステップ・アンド・キャン方式でウエハW上の全てのショットにレチクルRのパターンが転写される。
【0045】
他の露光装置1000-2~1000-Nのうち、スキャナは、露光装置(スキャナ)1000-1と同様に構成されている。また、ステッパは、基本的には、露光装置1000-1と同様に構成される。但し、ステッパは、レチクルステージがXY平面内でX、Y及びθz方向に微少駆動のみ可能に構成されている。また、ステッパは、投影光学系ULの円形視野内での照明光ILの照射領域(前述の照明領域や露光領域に対応)が図2のスキャナに比べて大きく、例えばスキャナの走査露光範囲と同程度の大きさを持つ点が異なる。これは、ステッパは、ウエハステージ及びレチクルステージを共に静止させた状態で露光を行うためである。
【0046】
(重ね合わせ検査装置)
次に、重ね合わせ検査装置1120について、図3を参照して説明する。図3は、重ね合わせ検査装置1120の一例を示す概略図である。同図でウエハ1002の上に重ね合わせ測定の対象となる重ね合わせ検査マーク1040a、1041aが形成されている場合を示した。ハロゲンランプ1021から射出した光束1322はファイバ1323、照明光学系1324a、1324b、偏光ビームスプリッタ1325、λ/4板1326を透過し、対物レンズ1327を介して検査マーク1040a、1040bを照明する。
【0047】
2つのマーク1040a、1041aからの反射光は、対物レンズ1327、λ/4板
1326を透過し、偏光ビームスプリッタ1325で反射する。偏光ビームスプリッタ1325で反射した光は、リレーレンズ1328、エレクターレンズ1329を通過してCCDカメラ1330の撮像面上に像を形成する。形成された像はCCDカメラ1330により光電変換され、回線を通じてコンピュータ(演算手段)1331に入力される。コンピュータ1331はCCDカメラ1330からの画像信号を画像処理して2つのマーク1040a、1041aの相対位置関係を検出することができる。例えば、コンピュータ1331は、供給された画像信号に対して平均化処理を行い、それにより得られた信号波形に基づいてマークのエッジを検出し、検出したエッジの位置から重ね合わせ誤差(ずれ量)を求めることができる。
【0048】
このように、重ね合わせ検査装置1120は、異なるレイヤに形成されたマーク間の位置ずれを、重ね合わせ誤差として算出する。結果は、所定の演算を行うなどして、LAN1160及びターミナルサーバ1140を介して、ホストコンピュータ1150に供給される。
【0049】
(ターミナルサーバ)
ターミナルサーバ1140は、LAN1160とホストコンピュータ1150との間の通信プロトコルの相違を吸収するためのゲートウエイプロセッサとして構成される。ターミナルサーバ1140の機能によって、ホストコンピュータ1150と、LAN1160に接続された露光装置1000-1~1000-N及び重ね合わせ検査装置1120との間の通信が可能となる。露光装置1000-1~1000-Nのそれぞれが備える主制御系1020及び重ね合わせ検査装置1120は、LAN1160に接続され、LAN1160及びターミナルサーバ1140を介して、ホストコンピュータ1150と通信を行う。
【0050】
(情報サーバ)
情報サーバ1130は、大容量記憶装置とプロセッサとから構成される。情報サーバ1130は、リソグラフィシステム1110で用いられる各種の情報を記憶する。
【0051】
(ホストコンピュータ)
ホストコンピュータ1150は、リソグラフィシステム1110を統括的に管理する大型のコンピュータである。ホストコンピュータ1150は、各露光装置1000-1~1000-Nから送られてくる露光履歴(例えば、各露光装置により処理されたウエハのロット名、プロセスプログラム名、及び処理時刻等)などを、情報サーバ1130に記憶する。ホストコンピュータ1150は、露光履歴に基づいて、全てのウエハ(ロット)の露光工程(を含む全ての電子デバイス加工工程)における全露光装置の稼動をスケジューリングする。
【0052】
また、ホストコンピュータ1150は、露光装置1000-1~1000-Nにおいてウエハアライメント(AGA)の結果得られる重ね合わせ誤差の結果を用いて、露光の際に重ね合わせ誤差を解消するための補正情報を作成する。作成された補正情報は、情報サーバ1130に記憶される。ホストコンピュータ1150は、露光装置1000-iに対してウエハの露光を指示する際には、情報サーバ1130から必要な補正情報を読み出し、露光装置1000-iに送信する。
【0053】
[検査マーク]
以下、本実施形態において用いられる検査マークについて詳細に説明する。検査マークは、重ね合わせ検査装置1120で読み取られて、露光パターンのずれ量を測定するために用いられる。検査マークは、テストパターン、評価パターン、検査パターンなどとも称される。
【0054】
図4(A)は、分割露光において、露光ショット内の検査マーク位置とその平面視で上下および左右の隣接ショットの検査マーク位置との関係と、露光ショットの部分パターン間の繋ぎずれの検査マーク位置を表す平面図である。図4(B)は、分割露光に用いるレチクルの層全体のパターンを示す。図4(C)は、層全体のパターンを分割した部分パターンを示す。図4(D)は、チップ間の重ね合わせの検査マークと、部分パターン間の繋ぎずれの検査マークの配置例を示す。
【0055】
図4(A)は、露光ショットが矩形の場合のショットの一例1090を示す。露光ショット1006a,1006bは、ウエハ1002上に転写された複数の露光領域(ショット)のうち、重ね合わせ評価の対象となる任意のショットである。図4(A)には、露光ショット1006a,1006bによる検査マークと、その上下の隣接ショット1007a,1007bおよび左右の隣接ショット1008a,1008bの検査マークが示されている。
【0056】
図4(B)に示すように、回路パターン1005が、レチクルの層全体のパターンである。回路パターン1005が、1チップ全体の回路パターンである。本実施形態では、図4(C)に示すように、回路パターン1005を2つに分割して、部分パターン1005aを有するレチクル1001aと部分パターン1005bを有するレチクル1001bを用いる。レチクル1001aの外周領域(評価領域)には、検査マーク1040a,1041a,1042aが設けられる。レチクル1001bの外周縁(評価領域)には、検査マーク1040b、1041b、1043bが設けられる。
【0057】
図4(A)に示すように、露光ショット1006a、1006bの三辺の内側に、隣接ショット1007a、1007b、1008a,1008bの検査マークの外周縁部がそれぞれ配置されている。即ち、露光ショット1006a、1006bの外周領域が隣接するチップのショット1007a、1007b、1008a、1008bの外周領域と重なるように配置されている。例えば、図4(A)に示す検査マーク1060は、露光ショット1006aの上端部領域に設けられた検査マーク1040aと、上側に隣接する隣接ショット1007aの下端部領域に設けられた検査マーク1041aとが重ね合わされて構成される。
【0058】
また、露光ショット1006aと1006bとによって分割された一辺は、部分パターンの検査マークが重なるように配置されている。例えば、図4(A)に示す検査マーク1061は、露光ショット1006aの右端部領域に設けられた検査マーク1040aと、露光ショット1006bの左端部領域に設けられた検査マーク1043bとが重ね合わされて構成される。
【0059】
レチクル1001a、1001b(露光ショット1006a、1006b)に設けられる検査マークのうち、回路パターン1005を分割した領域に設けられる検査マークは、部分パターンのショット間の繋ぎずれ評価のために用いられる。図4(C)の例では、レチクル1001aの右端部領域に設けられる検査マーク1040aと、レチクル1001bの左端部領域に設けられる検査マーク1043bが、部分パターン間の繋ぎずれ評価のために用いられる。また、回路パターン1005の周辺領域に設けられる検査マークは、チップ間のショットの重ね合わせ評価に用いられる。図4(C)の例では、レチクル1001aの上端部領域、左端部領域、下端部領域に設けられる検査マーク、およびレチクル1001bの上端部領域、右端部領域、下端部領域に設けられる検査マークが、チップ間のショットの重ね合わせ評価に用いられる。
【0060】
図4(A)は、検査マークの配置が理想的な状態を示す。図4(A)では、上述のよう
に例えば、露光ショット1006aとその上側に隣接する隣接ショット1007aのあいだで、検査マーク1040aと検査マーク1041aが重なり合う。また、分割された露光ショット1006aと露光ショット1006bの間で、検査マーク1040aと検査マーク1043bが重なり合う。検査マークの理想的な配置とは、隣接ショットの互いに重なり合う検査マークが、ずれなく重なっている状態を指す。例えば、隣接ショットの外周領域(評価領域)内にある検査マークの白丸「〇」の中に、露光ショットの各辺の評価領域内にある検査マーク「×」印、「+」印が互いにそれぞれずれていない状態が理想的な配置である。さらには、部分パターン間の検査マークの白丸「〇」と検査マーク「*」印が互いにずれていない状態が理想的な配置である。
【0061】
露光ショットの評価領域の内側には、図4(C)に示すように部分パターン1005a,1005bが設けられている。これによって、分割露光動作による露光位置を評価する評価工程と、半導体デバイスの製造工程とを同時に行うことができる。
【0062】
図5(A)~図5(D)は、図4の各検査マークの一例を示す拡大図である。図5(A)は、一例に係る検査マーク1050を示す。この検査マークは、チップ間の重ね合わせと分割ショット間の繋ぎずれのいずれの検査に用いられてもよい。検査マーク1050は2つの部分1050a,1050bを含み、互いに重なり合う隣接ショットの外周領域に設けられる。検査マーク1050のうち、外側の大きい矩形部分(網掛け部分)1050aは、図4(A)中では略記号として白丸「○」によって示されている。また、内側の小さい矩形部分(白抜き部分)1050bは、図4(A)中では略記号として、「×」印、「+」印、「*」印を用いて示されている。重ね合わせ検査装置1120は、この露光ショットの白丸「〇」の中心座標と「×」印、「+」印、「*」印の中心座標とのそれぞれとのずれ量を検出する。
【0063】
図5(B)~図5(D)は、図5(A)以外での検査マークのその他の一例を示している。図5(B)および図5(C)は溝状の検査マーク1051,1052の例を示し、図5(D)は格子状の検査マーク1053の例を示す。それぞれの検査マークにおいて、網掛け部分1051a,1052a,1053aと、白抜き部分1051b,1052b,1053bが隣接ショットの外周領域に設けられる。なお、これらの検査マークの大きさは、位置ずれの精度に関係あるが、重ね合わせ検査装置1120の検査マーク(検査マーク)に関する仕様書に規定されているため、ここではその詳細な説明は省略している。
【0064】
また、重ね合わせ検査装置1120は、例えば重ね合わせ検査マーク1050aおよび1050bの重ね合わせずれ測定結果から、図6に示すような各種誤差の線形成分を一括して算出するソフトウェアプログラムを備える。重ね合わせ検査装置1120は、重ね合わせ検査マーク1050aおよび1050bのズレ量を測定し、算出された線形成分のズレ量を露光装置1010にフィードバックする。即ち、一旦、露光工程完了後、重ね合わせ検査装置1120は、算出した結果を露光装置1010にフィードバックする。フィードバックは、自動的に行われてもよいし、管理者によって手動で行われてもよい。
【0065】
[重ね合わせ誤差の線形成分]
以下に上述した重ね合わせ誤差の線形成分について説明する。各種の線形成分として、以下のものがある。
【0066】
図6(A)、図6(B)は、ウエハ倍率成分SCを示す図である。図6(A)がウエハ倍率X成分SCXを表し、図6(B)がウエハ倍率Y成分SCYを表している。
【0067】
図6(C)はウエハ回転成分WROTを示し、図6(D)はウエハ直交度成分ORTHを示す図である。ウエハ回転成分WROTは、図6(E)に示すウエハ回転X成分WRO
TXと、図6(F)に示すウエハ回転Y成分WROTYを有し、WROT=(WROTX+WROTY)/2である。また、ORTH=WROTY-WROTXである。
【0068】
図7(A)は、ショット倍率成分MAGを示す図である。また、X方向とY方向の倍率差DIFF(不図示)という成分もある。ショット倍率成分MAGは、図7(B)に示すショット倍率X成分MAGXと、図7(C)に示すショット倍率X成分MAGYとによって、MAG=(MAGX+MAGY)/2と表される。また、倍率差DIFFは、DIFF=MAGY-MAGXと表される。
【0069】
図7(D)はショット回転成分SROTを示す、図7(E)はショット直交度成分SKEWを示す図である。ショット回転成分SROTは、図7(F)に示すショット回転X成分SROTXと、図7(G)に示すショット回転Y成分SROTY成分とによって、SROT=(SROTX+SROTY)/2と表される。また、ショット直交度成分SKEWは、SKEW=SROTY-SROTXと表される。
【0070】
図7(H)は、各レチクルで露光された転写パターン間の配置オフセット誤差を示す図である。配置オフセット誤差は、オフセット誤差X成分OFSX、配置オフセット誤差Y成分OFSYで表される。
【0071】
なお、上述のウエハ倍率成分、ウエハ回転成分、ウエハ直交度成分は、ウエハ倍率成分、ウエハ回転成分、ウエハ直交度成分とも称される。また、ショット倍率成分、ショット回転成分、ショット直交度成分、配置オフセット誤差は、チップ倍率成分、チップ回転成分、チップ直交度成分、チップシフト成分とも称される。
【0072】
前述した重ね合わせ誤差の線形成分のうち、図6(A)~図6(F)に示す線形成分はウエハの位置に起因する重ね合わせ誤差の線形成分である。ウエハの位置に起因する重ね合わせ誤差は、ウエハ自体に起因する重ね合わせ誤差とステージに起因する重ね合わせ誤差を含む。また、図7(A)~図7(H)に示す線形成分は、レチクル(ショット)に起因する重ね合わせ誤差の線形成分である。
【0073】
本実施形態では、露光ショットの外周縁部の三辺の所定の位置に、チップ間重ね合わせの検査マーク1040a,1041a,1042a,1040b、1041bが配置される。また、露光ショットの分割された一辺の所定の位置に、部分パターン間の繋ぎずれ検出用の検査マーク1040a,1043bが配置される。重ね合わせ検査装置1120は、これらの検査マークを光学的に検出して、それらのズレ量から、上述の位置ズレの各種線形成分を算出する。線形成分はズレ量に対して回帰分析を施すことにより求められる。算出方法自体は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
[重ね合わせ検査方法]
ここで、チップ間の重ね合わせ誤差と部分パターンの繋ぎ合わせの誤差から各線形成分を算出する手順について、図8を参照しながら説明する。以下の処理は、ホストコンピュータ1150からの指令によって、露光装置1000または重ね合わせ装置によって行われる。一部の処理は、ホストコンピュータ1150あるいはその他のコンピュータによって行われてもよい。
【0075】
S1101では、露光装置1010を用いてウエハ上のレジスト層にパターンを形成する露光・現像工程が行われる。S1101の露光・現像工程では、部分パターンごとに製作されたレチクルを用いて分割露光を行う。具体的には、まず、レチクル1005aを用いて部分パターン1005aの露光を行い、次に、レチクル1005bを用いて部分パターン1005bの露光を行う。各レチクルでのショット中心位置のオフセット量は、予め
レチクルパターン設計時に決定し、各々の部分パターン間の繋ぎずれを検査するための検査マークが重なるようにする。露光ステップ量は、予めレチクルパターン設計時に決定し、隣接ショット間重ね合わせ検査マークが重なるようにする。
【0076】
S1102では、重ね合わせ検査装置1120を用いて、ウエハ1002に検査マークに基づいて、分割ショット間の繋ぎ合わせ誤差(第1情報)と、チップ間の重ね合わせ誤差(第2情報)を計測する。分割ショット間の繋ぎ合わせ誤差は、露光ショット1006aおよび1006bの重複領域に設けられた検査マーク1040aと1043bの位置関係に基づいて求められる。チップ間の重ね合わせ誤差は、露光ショット1006a、1006bと隣接ショット1007a,1007b,1008a,1008bの重複領域に設けられた検査マークの位置関係に基づいて求められる。
【0077】
ステップS1102では、露光ショットを複数設定して、それぞれの露光ショットについて繋ぎ合わせ誤差および重ね合わせ誤差を求めることが好ましい。さらには、露光ショットがウエハ面内に偏らないように露光ショットを選択することが好ましく、より好ましくは、全ショットを露光ショットとして選択するようにする。
【0078】
S1103では、S1102で測定した測定値(分割ショット間の繋ぎ合わせ誤差とチップ間の重ね合わせ誤差)に対して最小二乗法を用いた回帰分析を行うことにより、ショット線形成分を求める。なお、S1102で測定される誤差には、レチクルに起因する誤差(ショット成分)だけでなく、ウエハの位置に起因する誤差(ウエハ成分)も含まれる。したがって、S1103で求められるショット線形成分は正確ではなく、暫定的な値を有する。以下では、S1103で求められるショット線形成分のことを、暫定ショット線形成分とも称する。
【0079】
S1104では、S1102で測定した測定値に応じた値から、S1103で求めた暫定ショット線形成分に応じた値を差し引いた値を用いて、ウエハ線形成分を求める。
【0080】
S1105では、S1102で測定した測定値から、S1104で求めたウエハ線形成分に応じた値を差し引いた値を用いて、ショット線形成分を求める。このようにウエハ線形成分を除外することで、ショット線形成分を高精度に求められる。
【0081】
S1106では、S1102で測定した測定値、S1104で求めたウエハ線形成分、S1105で求めたショット線形成分が目標範囲内か否かが判断される。目標範囲は、例えば、目標値である「0」に許容誤差を加えた範囲である。目標範囲内であれば、工程終了となる。目標範囲にない場合は、S1107に進む。
【0082】
S1107では、ウエハ上のレジストをシンナーによるウェット処理やアッシング処理で剥離し、再度露光工程に戻せる状態にする。
【0083】
S1108では、S1104で求めたウエハ線形成分、S1105で求めたショット線形成分を補正するような露光動作オフセット量を設定し、再度露光工程S1101に進む。
【0084】
以上のフローを繰り返すことで、線形誤差成分を目標値である「0」に追い込むことができる。
【0085】
上記のフローを別の観点から説明する。S1101では、半導体装置のある1つの層について、該層の全体の回路パターン1005を複数に部分パターン1005a,1005bに分割した分割露光によって回路パターンが形成される。部分パターン1005aを有
するレチクル1001a(第1のレチクル)を用いた第1の露光ショットがウエハ全体に対して露光される。次に、部分パターン1005bを有するレチクル1001b(第2のレチクル)を用いた第2の露光ショットがウエハ全体に対して露光される。
【0086】
露光ショット1006aの露光の後に、右隣の隣接ショット1008aが露光されると仮定すると、露光される順序は次のようになる。露光ショット1006a(第1の露光ショット)の後に右隣の隣接ショット1008a(第3の露光ショット)が露光され、隣接ショット1008a(第3の露光ショット)の後に露光ショット1006b(第2の露光ショット)が露光される。
【0087】
S1102では、分割ショットにおいて重ね合わされる領域の検査マークの位置関係を表す情報(第1情報)が取得(計測)される。例えば、露光ショット1006aの右辺領域にある検査マーク1040aと、露光ショット1006bの左辺領域にある検査マーク1043bとの位置関係が、分割ショット間の繋ぎ合わせ誤差として計測される。この誤差が、露光ショット1006a(第1の露光ショット)よって形成されたパターンに含まれる検査マークと、露光ショット1006b(第2の露光ショット)によって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第1情報に相当する。
【0088】
S1102では、また、チップ間のショットにおいて重ね合われる領域の検査マークの位置関係を表す情報(第2情報)が計測される。例えば、露光ショット1006bの右辺領域にある検査マーク1040bと、露光ショット1006bの右側に隣接する隣接ショット1008aの左辺領域にある検査マーク1042aとの位置関係が、チップ間の重ね合わせ誤差として計測される。この誤差が、露光ショット1006b(第2の露光ショット)によって形成されたパターンに含まれる検査マークと、露光ショット1008a(第3の露光ショット)によって形成されたパターンに含まれる検査マークの位置関係を表す第2情報に相当する。ここでは、露光ショット1006bの右辺についてのみ説明したが、露光ショット1006bの上辺と下辺、露光ショット1006aの上辺と左辺と下辺についても同様に検査マーク同士の位置関係を表す情報が計測される。
【0089】
S1102の計測は、重ね合わせ検査装置1120において行われる。具体的には、コンピュータ1331が、CCDカメラ1330からの画像信号を画像処理することにより、検査マークの位置関係を表す情報が計測される。
【0090】
S1103では、分割ショット間の重ね合わせ誤差(第1情報)とチップ間の重ね合わせ誤差(第2情報)に回帰分析(最小二乗法)を適用して、レチクルに起因する誤差の線形成分が暫定的に導出される。S1104では、分割ショット間の重ね合わせ誤差とチップ間の重ね合わせ誤差に応じた値から、暫定的に導出されたレチクルに起因する誤差の線形成分に応じた値を差し引くことにより、ウエハの位置に起因する誤差の線形成分が導出される。S1105では、分割ショット間の重ね合わせ誤差(第1情報)とチップ間の重ね合わせ誤差(第2情報)に応じた値から、ウエハに起因する誤差の線形成分に応じた値を差し引くことにより、レチクルに起因する誤差の線形成分が導出される。重ね合わせ誤差または線形成分に応じた値として、重ね合わせ誤差または線形成分そのものを用いてもよいし、重ね合わせ誤差または線形成分から求められる値を用いてもよい。
【0091】
S1103の導出は、重ね合わせ検査装置1120のコンピュータ1331によって行われてもよいし、ホストコンピュータ1150によって行われてもよい。ここでは、誤差の線形成分を、回帰分析法を用いて導出する例を示したが、これに限らず、機械学習された学習済みモデルを用いた処理を実行することにより導出してもよい。機械学習の学習済みモデルを構築する際には、分割ショット間の重ね合わせ誤差(第1情報)とチップ間の重ね合わせ誤差(第2情報)を入力データとする。そして、ウエハに起因する誤差の線形
成分に関する既知の情報と、レチクルに起因する誤差の線形成分に関する既知の情報を教師データとする。複数の入力データと、複数の入力データの各々に対応する教師データとの相関関係を機械学習によって学習する。これにより学習済みモデルを構築することができる。学習済モデルに分割ショット間の重ね合わせ誤差(第1情報)とチップ間の重ね合わせ誤差(第2情報)を入力すれば、ウエハに起因する誤差の線形成分に関する情報と、レチクルに起因する誤差の線形成分に関する情報とを出力データとして取得できる。
【0092】
機械学習の具体的なアルゴリズムとしては、最近傍法、ナイーブベイズ法、決定木、サポートベクターマシンなどが挙げられる。また、ニューラルネットワークを利用して、学習するための特徴量、結合重み付け係数を自ら生成する深層学習(ディープラーニング)も挙げられる。適宜、上記アルゴリズムのうち利用できるものを用いて本実施形態に適用することができる。GPUはデータをより多く並列処理することで効率的な演算を行うことができるので、ディープラーニングのような学習モデルを用いて複数回に渡り学習を行う場合にはGPUで処理を行うことが有効である。そこで、コンピュータ1331あるいはホストコンピュータ1150による処理にはCPUに加えてGPUを用いる。具体的には、学習モデルを含む学習プログラムを実行する場合に、CPUとGPUが協働して演算を行うことで学習を行う。なお、コンピュータ1331あるいはホストコンピュータ1150による処理はCPUまたはGPUのみにより演算が行われても良い。
【0093】
また、機械学習に限らず、ルックアップテーブル(LUT)等のルールベースの処理により導出してもよい。その場合には、例えば、入力データと出力データとの関係をあらかじめLUTとして作成する。そして、この作成したLUTをコンピュータ1331またはホストコンピュータ1150のメモリに格納しておくとよい。導出の処理を行う場合には、この格納されたLUTを参照して、出力データを取得することができる。つまりLUTは、前記処理部と同等の処理をするためのプログラムとして、CPUあるいはGPUなどと協働で動作することにより、前記処理部の処理を行う。
【0094】
上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。コンピュータは、1または複数のプロセッサーまたは回路を有し、コンピュータ実行可能命令を読み出し実行するために、分離した複数のコンピュータまたは分離した複数のプロセッサーまたは回路のネットワークを含みうる。プロセッサーまたは回路は、中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートウェイ(FPGA)を含みうる。また、プロセッサーまたは回路は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、データフロープロセッサ(DFP)、またはニューラルプロセッシングユニット(NPU)を含みうる。
【0095】
このように本実施形態によれば、1層目(ファーストレイヤ)の露光のように下地に対してアライメントせずに、複数のレチクルを用いた分割露光を行う場合に、ショットとウエハの位置に起因する重ね合わせ誤差それぞれの線形成分を求めることができる。そして、これらの誤差成分を「0」とすることで、ショット全体での部分パターン間およびチップ間の重ね合わせを精度良く行える。
【0096】
上記では考慮していないが、投影レンズのディストーション等により露光装置の非線形成分が生じることが考えられる。非線形成分は露光装置では補正することができず、線形誤差成分の目標値を零とすると、非線形誤差成分によって、局所的にチップ間重ね合わせや部分パターン間繋ぎずれが悪化することがある。したがって、非線形成分の誤差の影響が大きい場合は、線形成分誤差を零に追い込まなくてもよい。具体的には、S1106の
目標範囲を非零の目標値に許容誤差の範囲を加えた値にして、若干の線形成分が残るように補正を行う。このようにすることで、ショット全体でのチップ間重ね合わせや部分パターン間繋ぎずれが改善する場合がある。この場合は、上記のように、線形成分の補正目標値を設定し、管理、補正を行なうか、露光装置のメンテナンス管理の徹底や改造をするかを選択することとなる。
【0097】
<第2実施形態>
露光装置の描画可能な領域より広い範囲で半導体装置を製造する場合、繋ぎ露光によって所望のパターニングを行う方法がある。露光処理の際に、一般的には露光領域(ショット)の4隅に配置された検査マークを用いて、下地との位置合わせズレ量を計測する。そして、計測されたズレ量に基づくシフト成分、回転成分、倍率成分のフィードバックを行うことにより、次の露光時における下地との合わせ精度(アライメント精度)を向上させている。
【0098】
繋ぎ露光後の一括露光時に、一括露光領域4隅に配された検査マークを計測し、フィードバックを行った場合、繋ぎ部近傍で、繋ぎ露光後の一括露光時に位置合わせ精度が悪化するという課題がある。
【0099】
本実施形態は、繋ぎ露光工程後の一括露光工程において、高精度な位置合わせが可能な半導体装置の製造方法を実現する。
【0100】
以下、図10図18を参照して、本実施形態に係る半導体装置製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る半導体装置は、図1に示したリソグラフィシステム1110を用いて製造される。
【0101】
[重ね合わせ誤差の測定]
図10(A)は、本実施形態にかかる半導体装置のチップ配置図を示している。ウエハウエハ2000に複数のチップ2010が配列されて製造される。図10(B)は図10(A)に記載のチップ2010を拡大した図である。チップ2010には、不図示の多数層の回路パターンが配されており、半導体装置としての所望の機能を有する。このチップ2010の回路パターンは、露光装置によってパターニングされる。レジスト付きのウエハに、露光装置による露光、現像を行なった後、イオン注入やエッチング及び埋め込みなどによって、所望の回路パターンを得ることができる。
【0102】
チップ2010は、繋ぎ露光によってパターニングされる層と、一括露光によってパターニングされる層とを有する。例えば、微細なパターンは高精細なパターニングが可能なステッパなどの露光装置によってパターニングされ、その際、チップ2010が例えば、露光装置の描画範囲より大きい場合は、繋ぎ露光によって露光される。つまり、露光領域2001と露光領域2002の2回の露光処理を行って、1つのチップ2010が製造される。今後、1チップの露光パターン全体を複数の領域に分割して、これら複数の部分パターンを繋ぎ合わせた複数回の露光処理で1チップ内の1つの層を形成することを繋ぎ露光と記載する。また、例えば、高精細なパターニングを必要としない場合には、例えば、より描画範囲の広い露光装置で、露光領域2001と露光領域2002の両領域を一括で露光処理を行うことができる。今後、1回の露光処理で1チップの1つの層のパターニングを行うことを一括露光と記載する。
【0103】
本実施形態では、露光領域2001と露光領域2002のそれぞれの外周領域内に配置されている検査マーク2011~検査マーク2018は、重ね合わせ用検査用の検査マークである。本実施形態では、特に、検査マーク2011~検査マーク2018は、露光領域2001,2002の4隅に配置される。なお、検査マーク2011,2013,20
16,2018は、露光領域2001と露光領域2002を合わせた領域、すなわち元パターン(所望パターン)の4隅である。これらの検査マークは、チップ2010を製造する際の下地との重ね合わせの検査に用いられる。例えば、繋ぎ露光処理を行った後に、一括露光処理を行う場合、先の繋ぎ露光処理で形成された回路パターンと、後の一括露光処理との合わせズレ(アライメントズレ)を計測するために検査マークが用いられる。
【0104】
検査マーク2011~検査マーク2014は露光領域2001の四隅近傍に設けられ、検査マーク2015~検査マーク2018は露光領域2002の四隅近傍に設けられている。なお、検査マークは露光領域の隅にある必要はなく、露光領域を上下左右均等に4分割したそれぞれの領域内にあればよい。検査マークは、露光領域2001及び、露光領域2002内であればよく、例えばスクライブラインに配置されていてもよいし、半導体装置内に配置されていてもよい。以下の説明では、検査マークとその位置に設けられる検査マークに同じ符号を付して説明することがある。例えば、検査マーク2011が設けられる位置を、マーク位置2011とも称する。検査マーク2011と同じ露光ショットで形成された複数の検査マークを検査マーク群として総称することができる。検査マーク2011を含む検査マーク群は、検査マーク2013、2014や、検査マーク2012、第1実施形態で説明した検査で用いられる検査マークなどを含む。同様に、検査マーク2015と同じ露光ショットで形成された複数の検査マークを検査マーク群として総称することができる。検査マーク2015を含む検査マーク群は、検査マーク2016、2017や、検査マーク2017、第1実施形態で説明した検査で用いられる検査マークなどを含む。
【0105】
一括露光の露光領域は、露光領域2001と露光領域2002を足し合わせた領域である。一括露光の露光パターンは、検査マーク2011~2018のそれぞれを有する。
【0106】
図10(C)は、検査マーク2011~検査マーク2014の位置を、図10(D)は検査マーク2015~検査マーク2018の位置をそれぞれ示している。マーク2021及びマーク2022は繋ぎ露光によってパターニングされるマークであり、露光、現像、エッチング処理を得て形成される。マーク2020は一括露光によってパターニングされるマークであり、検査マーク2011~検査マーク2018の全てでパターニングされる。マーク2020~2022は、それぞれ、上下左右対称に描写されている。マーク2020は、例えば、レジストのパターニングで形成される。
【0107】
レジストパターニング後に、マーク2021の重心とマーク2020の重心とのズレ、すなわち位置ズレ(アライメントズレ)を、重ね合わせ検査装置1120などを使用して計測する。重ね合わせ検査装置1120は、検査マーク2011~2018での位置ズレを、例えば、図10(E)に記載したチップ2002~チップ2006で示した5チップについて計測する。位置ズレの計測は、他の組み合わせのチップに対して行われてもよいし、全チップに対して行われてもよい。チップ2002~チップ2006の5チップの検査マーク2011~2018の合計40点の位置ズレから、既知の回帰分析を用いて、位置合わせ誤差の各種線形成分が求められる。位置合わせ誤差の線形成分は、図6および図7を参照して説明したので簡単に説明する。
【0108】
ウエハ倍率成分、ウエハ回転成分、およびウエハシフト成分をより正確に算出するには、より外周のチップを含めてアライメントを計測するのが望ましい。例えば、図10(E)に記載したように、上下左右の方向で最外周のチップを測定すること望ましい。
【0109】
また、図11(A)に示すように、1つの繋ぎ露光領域に対してマークを直線上に配置すると、この直線と垂直な方向についてチップ倍率成分を求めることができない。例えば、図11(A)に示す検査マーク2011,2013,2023,2016,2018,
2024のように、露光領域2001および2002のそれぞれで直線上に3箇所以上のマークを配置する場合を考える。この場合、マーク配置の直線方向、すなわち、ここではY方向のチップ倍率成分は、回帰分析で求めることができるが、マーク配置の垂直方向、すなわち、ここではX方向のチップ倍率成分は回帰分析による算出ができない。
【0110】
そのため、図11(B)に示すように少なくとも、それぞれの露光領域2001,2002について、直線上に並ばない位置に3つ以上のマークを設ける必要がある。言い換えると、露光領域2001,2002のそれぞれは、少なくとも第1~第3の検査マークを有し、第1の検査マークと第2の検査マークとを結ぶ直線と、第2の検査マークと第3の検査マークとを結ぶ直線は交差する、すなわち平行ではない。例えば、露光領域2001については、検査マーク2014,2013,2011がそれぞれ第1~第3の検査マークに相当し、露光領域2002については、検査マーク2015,2016,2018がそれぞれ第1~第3の検査マークに相当する。この条件を満たせば、図10(B)に示すように、各露光領域が4つ以上の検査マークを有してもよい。また、この条件を満たせば、1つの露光領域に、一直線上に並ぶ3つ以上の検査マークが配されても構わない。なお、一括露光の露光領域には、分割露光領域の各マークに対応する位置に検査マークが配されうる。すなわち、一括露光の露光領域には、3つの検査マーク2014,2013,2011のそれぞれに対応する3つの検査マークと、3つの検査マーク2015,2016,2018のそれぞれに対応する3つの検査マークと、の計6つの検査マークが配されうる。そして、対応する検査マーク同士で、位置ズレを算出するための位置関係を測定することができる。ただし、一括露光の露光領域で形成する検査マークを分割露光の露光領域よりも少なくしてもよい。例えば、一括露光の露光領域で形成する検査マークを1つのみとしてもよい。例えば、一括露光の露光領域で形成する1つのみの検査マークを原点として、分割露光で形成された、検査マーク2014,2013,2011および検査マーク2015,2016,2018の相対的な位置関係を測定することもできる。
【0111】
それぞれの露光領域に直線上に並ばない3つ以上のマークを配置することで、チップ倍率、チップ回転、チップシフトにおいて、X方向、Y方向で正確に補正できる。また、より正確にチップ倍率成分やチップ回転成分のズレ量を求めるには、露光領域のなるべく最外周領域、例えば、四隅近傍に設けるのが好ましい。
【0112】
上述の検査マークを用いて測定される位置ズレ量が所望の位置合わせ精度よりも大きい場合には、パターニングされたレジストを除去し、再度、レジスト塗布、露光、現像を行う。その際には、露光装置は、先に計測した位置ズレの結果を元に、測定した各検査マークでの位置ズレの二乗平均平方根が最小となるよう露光時のパラメータを調整する。つまり、ステッパなどの露光装置は、倍率成分や回転成分、シフト成分を補正できる機構を有しており、先に求めた各種のズレ量だけ補正した座標系で露光処理を行う。
【0113】
また、位置ズレ量が所望の値よりも小さい場合でも、露光装置は、次に、処理される別のウエハに対して、先に求めた各種のズレ量だけ補正した座標系で露光処理を行う。そうすることで、露光装置の経時的変化によるアライメントのズレなどを適宜補正することができ、半導体装置の安定した生産が可能になる。
【0114】
[半導体装置の構造]
図12(A)~図12(C)は、本実施形態によって製造される半導体装置の断面を示した図である。半導体装置は、例えば、撮像装置でありうる。各構成要素の材質やその形成方法などは、公知の半導体装置と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0115】
図12(A)は図10(B)のA-A′の断面を、図12(B)は図10(B)のB-B′の断面を、図12(C)は図10(B)のC-C′の断面を、それぞれ示している。
この半導体装置は、例えば、シリコンからなる基板2030の上に、光電変換を行うフォトダイオード部2031と、絶縁体を埋め込んだ素子分離2032と、トランジスタゲート2033とが形成されて製造される。また、基板2030上の層間絶縁膜2043には、図10(B)に示す露光領域2001において繋ぎ露光によってパターニングされる、コンタクトビア2034、配線2035、スルーホールビア2036、配線2037が形成される。同様に、図10(B)に示す露光領域2002で繋ぎ露光によってパターニングされるコンタクトビア2038、配線2039、スルーホールビア2040、配線2041が形成される。また、半導体装置は、光を集光するためのインナーレンズ2045と集光された光の光漏れを防ぐためのライトガイド2044と、不図示のカラーフィルターや不図示のマイクロレンズを備える。コンタクトビア2034、配線2035、スルーホールビア2036、配線2037、コンタクトビア2038、配線2039、スルーホールビア2040、配線2041は、繋ぎ露光で露光されたパターンを元に形成される。これらと層間絶縁膜2043以外の図示した層は、一括露光によって露光されたパターンを元に形成される。カラーフィルターやマイクロレンズなどの光学部材は、一括露光によって形成されることが望ましい。
【0116】
繋ぎ露光は、例えば、KrFエキシマレーザや、ArFエキシマレーザを光源とした、露光装置によって行われる。一括露光は、繋ぎ露光用の露光装置よりも描画領域の大きいKrFエキシマレーザや超高圧水銀ランプによるi線を光源として用いた露光装置によって行われる。
【0117】
[製造方法]
以下、図12(A)~図12(C)に示す半導体装置の製造例について、図13および図14を参照して説明する。ここでは、重ね合わせ精度の向上に関する点を説明する。以下の工程のうち、繋ぎ露光を用いてパターンを形成する工程が第1の形成工程に相当し、一括露光処理によってパターンを形成する工程が第2の形成工程に相当する。
【0118】
(1.一括露光による素子分離形成)まず、基板2030上にレジストを塗布した後に、一括露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去、絶縁物の埋め込みを行い、素子分離2032を形成する。その際、図10(B)に示す検査マーク2011,2013のそれぞれにとして、図13(A)に示す、マーク2130,2132が並べて同時に形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示す、マーク2130,2132が並べて同時に形成される。
【0119】
(2.一括露光によるフォトダイオード部形成)次に、素子分離2032が形成された基板2030を含むウエハに、レジストを塗布し、一括露光で露光、現像、イオン注入を行い、フォトダイオード部2031を形成する。現像後には、図10(B)に示す、検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2231が形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2231がそれぞれ同時に形成される。
【0120】
その後、重ね合わせ検査装置1120によって、マーク2130とマーク2231とのアライメントズレ(重ね合わせズレ)が計測される。各測定点でのマーク2130とマーク2231のアライメントズレが所望の値以下の場合には、続いてイオン注入を行う。また、同一工程を処理する次のウエハに対して、アライメントズレの測定結果を元に、先に説明した各種誤差成分のズレ量を補正し、補正後の座標系で露光処理を行う。一方、アライメントズレが所望の値以上の場合には、イオン注入を行わずに、レジストを一旦除去し、再度、レジスト塗布、露光、現像、アライメントズレの計測を行う。その露光時には、先に説明したように各種誤差成分のズレ量を補正した座標系で露光処理を行う。アライメントズレが所望の値以下になるまで、レジスト塗布、露光、現像、アライメント計測が繰
り返される。アライメントズレが所望の値以下になりイオン注入が終わった後は、レジスト除去を行うため、図13(A),図13(B)に示すマーク231も同時に除去される。
【0121】
(3.一括露光によるトランジスタゲート形成)次に、ゲート絶縁膜となりうる膜とゲート電極となりうる膜を成膜し、レジスト塗布、一括露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去を行い、トランジスタゲート2033を形成する。現像後には、図10(B)に示す検査マーク2011~2014のそれぞれとして図13(A)、図14(A)に示すマーク2133,2233がそれぞれ同時に形成される。また、検査マーク2016~2018のそれぞれとして図13(B)、図14(B)に示すマーク2133,2233それぞれ同時に形成される。
【0122】
その後、重ね合わせ検査装置1120によって、マーク2132とマーク2233とのアライメントズレが計測される。アライメントズレの計測後の処理は上記と同様である。アライメントズレが所望の値以下になり、エッチング処理が終わった後は、レジスト除去を行う。エッチング処理時に、図10(A)、図10(B)に示すマーク2133とマーク2233も同時にエッチング処理されるので、レジスト除去を行ってもマーク2133及び、マーク2233の形状は残る。
【0123】
(4.繋ぎ露光によるコンタクトビア形成)次に、層間絶縁膜2043を配線2035及び、配線2039の下面まで形成する。その後、レジスト塗布、繋ぎ露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去、プラグ埋め込みを行い、コンタクトビア2034及び、コンタクトビア2038を形成する。現像後には、図10(B)に示す検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2134,2234が、検査マーク2012,2014のそれぞれとして図14(A)に示すマーク2134および2234が、同時に形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2138,2238が、検査マーク2015,2017のそれぞれとして図14(B)に示すマーク2138,2238が同時に形成される。
【0124】
その後、重ね合わせ検査装置1120によって、マーク2133とマーク2234とのアライメントズレと、マーク2133とマーク2238とのアライメントズレが、それぞれ計測される。
【0125】
露光領域2001、露光領域2002の両方で、アライメントズレが所望の値以下の場合は、続いて、エッチング、プラグ埋め込みを行う。また、次に処理する別のウエハに対して、同一工程でのアライメントズレが小さくなるように露光位置を調整する補正処理を行う。具体的には、図13(A)および図14(A)に示すマーク2133とマーク2234とのアライメントズレの計測結果を元に座標系を補正する。次のウエハに対しては補正後の座標系を用いて露光処理を行う。同様に、露光領域2002の露光に対しては、図13(B)および図14(B)に示すマーク2133とマーク2238とのアライメントズレの計測結果を元に補正した座標系で露光処理を行う。
【0126】
一方、露光領域2001、または、露光領域2002のいずれか、または、両方のアライメントズレが所望の値以上の場合には、エッチング処理は行わずに、レジストを一旦除去し、再度、レジスト塗布、露光、現像、アライメントズレの計測を行う。再度の露光時には、上述のアライメントズレの計測結果を元に補正した座標系での露光処理を行う。露光領域2001,2002の両方でアライメントズレが所望の値以下になるまで、レジスト塗布、露光、現像、アライメント計測を繰り返し行う。
【0127】
エッチング処理が終わった後は、レジスト除去を行う。エッチング処理時に、マーク2
134,2234,2138,2238も同時にエッチング処理されるので、レジスト除去を行ってもこれらのマーク2134,2234,2138,2238の形状は残る。
【0128】
(5.繋ぎ露光による配線形成)次に、層間絶縁膜2043を配線2035及び、配線2039の上面まで形成する。その後、レジスト塗布、繋ぎ露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去、配線埋め込みを行い、配線2035及び配線2039を形成する。現像後には、図10(B)に示す検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2135,2235が、検査マーク2012,2014のそれぞれとして図14(A)に示すマーク2135,2235が、同時に形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2139,2239が、検査マーク2015,2017のそれぞれとして図14(B)に示す、マーク2139,2239が、同時に形成される。
【0129】
その後、重ね合わせ検査装置1120によって、マーク2134とマーク2235とのアライメントズレと、マーク2138とマーク2239とのアライメントズレが、それぞれ計測される。アライメントズレの計測後の処理は上記と同様である。エッチング処理が終わった後は、レジスト除去を行う。エッチング処理時に、マーク2135,2235,2139,2239も同時にエッチング処理されるので、レジスト除去を行ってもこれらのマーク2135,2235,2139,2239の形状は残る。
【0130】
(6.繋ぎ露光によるスルーホールビア形成)次に、層間絶縁膜2043を配線2037及び、配線2041の下面まで形成する。その後、レジスト塗布、繋ぎ露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去、プラグ埋め込みを行い、スルーホールビア2036及び、スルーホールビア2040を形成する。現像後には、図10(B)に示す検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2136,2236が、検査マーク2012,2014のそれぞれとして図14(A)に示すマーク2136,2236が同時に形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2140,2240が、検査マーク2015,2017のそれぞれとして図14(B)に示すマーク2140,2240が同時に形成される。その後の処理については、先の配線パターン2035,2039を形成する際と同様なため、詳細を省略する。
【0131】
(7.繋ぎ露光による配線形成)次に、層間絶縁膜2043を配線2037及び、配線2041の上面まで形成する。その後、レジスト塗布、繋ぎ露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去、配線埋め込みを行い、配線2037及び、配線2041を形成する。現像後には、図10(B)示す検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2137,2237が、検査マーク212,2014のそれぞれとして図14(A)に示すマーク2137,2237が、同時に形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2141,2241が、検査マーク2015,2017のそれぞれとして図14(B)に示すマーク2141,2241が、同時に形成される。その後の処理については、先の配線2035及び配線2039を形成する際と同様なため、詳細を省略する。
【0132】
(8.一括露光によるライトガイド形成)次に、層間絶縁膜2043をライトガイド(導波路)2044の上面まで形成する。その後、レジスト塗布、一括露光で露光、現像、エッチング、レジスト除去、ライトガイド埋め込みを行い、ライトガイド2044を形成する。現像後には、図10(B)に示す検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2144,2244が、検査マーク2012,2014のそれぞれとして図14(A)に示すマーク2144,2244が同時に形成される。また、検査マーク2016,2018のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2144,22
44が、検査マーク2015,2017のそれぞれとして図14(B)に示すマーク2144,2244が、それぞれ同時に形成される。
【0133】
その後、重ね合わせ検査装置1120によって、図13(A)、図14(A)に示すマーク2137とマーク2244と、図13(B),図14(B)に示すマーク2141とマーク2244とを用いて、チップ2010全体のアライメントズレが計測される。チップ全体のアライメントズレは、一括露光の露光領域におけるアライメントズレであり、繋ぎ露光により形成されるパターンと一括露光によって形成されるパターンの位置関係を表す情報に相当する。
【0134】
アライメントズレが所望の値以下の場合(第1の条件に該当する場合)には、続いて形成されたレジストパターンを用いたウエハのエッチング加工を行う。また、次に処理する別のウエハに対して、同一工程でのアライメントズレが小さくなるように露光位置を調整する補正処理を行う。具体的には、アライメントズレの計測結果を元に露光装置の座標系を補正し、補正後の座標系で露光処理を行う。
【0135】
一方、アライメントズレが所望の値以上の場合(第2の条件に該当する場合)には、形成されたレジストパターンを用いたウエハのエッチング加工は行わずに、レジストパターンを一旦除去し、再度、レジスト塗布、露光、現像、アライメントズレ計測を行う。その露光時には、先に説明した補正後の座標系で露光処理を行う。アライメントズレが所望の値以下になるまで、レジスト塗布、露光、現像、アライメント計測を繰り返し行う。
【0136】
エッチング処理が終わった後は、レジスト除去を行う。エッチング処理時に、マーク2144,2244も同時にエッチング処理されるので、レジスト除去を行ってもこれらのマーク2144,2244の形状は残る。
【0137】
(9.一括露光によるインナーレンズ形成)次に、層間絶縁膜2043をインナーレンズ2045の下面まで形成する。続いて、インナーレンズの材料となりうる膜を成膜する。その後、レジスト塗布、一括露光、現像、エッチング、レジスト除去、を行い、インナーレンズ2045を形成する。インナーレンズのような球面形状を得るためには、露光時に階調露光を行ってもよいし、現像後にリフローなどでパターニングされたレジストに曲率を設けてもよい。現像後には、図10(B)に示す検査マーク2011,2013のそれぞれとして図13(A)に示すマーク2245が、検査マーク2012,2014のそれぞれとして図13(B)に示すマーク2245が、それぞれ同時に形成される。その後の処理については、先のトランジスタゲート2033を形成する際と同様なため、詳細を省略する。
【0138】
最後に、カラーフィルターやマイクロレンズを形成することで、本実施形態の製造方法を利用した半導体装置を得ることができる。
【0139】
[本実施形態の効果]
図15(A),図15(B)は、一括露光後に、繋ぎ露光を複数回繰り返し、再び一括露光を行った際の、アライメントズレを計測した結果を示すグラフある。例えば、図12に記載の半導体装置を製造した際の配線2037及び配線2041を形成した後に、ライトガイド2044を形成する際の一括露光を行った際のアライメント計測結果を示す。図15(A)は、本実施形態に係る方法で一括露光した際のアライメントズレ計測結果を示す。すなわち、図15(A)は、図10(B)に示す検査マーク2011~2018からアライメントズレを計測し、次に処理するウエハに対して、補正後の座標系で露光処理を行った場合の結果を示す。一方、図15(B)は、参考例の方法で一括露光した場合の計測結果を示す。参考例では、露光領域の四隅近傍、図10(B)の検査マーク2011,
2013,2016,2018のアライメントズレを計測し、次に処理するウエハに対して、補正を行い露光処理する。ただし、本実施形態の優位性を示すため、検査マーク2012,2014,2015,2017を配置し、これらのマークに対してアライメントズレの計測のみを行っている。
【0140】
図15(A)に示すように、本実施形態の手法によると、全体的にアライメントズレが平均化され、±0.02マイクロメートル以内に収まっている。一方、図15(B)に示すように、全体領域の四隅のみにマークを配置する手法によると、アライメントズレの最大値が大きくなる。具体的には、四隅近傍、すなわち、検査マーク2011,2013,2016,2018ではアライメントズレが小さくなっているが、繋ぎ部近傍、すなわち、検査マーク2012,2014,2015,2017では、アライメントズレが大きくなる。場所によっては、アライメントズレが0.03マイクロメートル程度になっている。
【0141】
図12に記載した半導体装置のように、繋ぎ露光が複数回続いた後に、一括露光した際には、図10(B)に示す繋ぎ部19でズレ量が大きくなる。これは、繋ぎ露光時に、露光装置自体が持つ装置固有の合わせ精度の誤差や、レチクルが持つ誤差、工程を経ることのウエハの反りなどに起因する。
【0142】
図16(A)は、繋ぎ露光が続いた場合のアライメントズレの様子の一例を示した図である。ショット2300は一括露光で処理を行った領域であり、この一括露光の後に繋ぎ露光により露光領域2301,2302が処理される。その後、複数回の繋ぎ露光工程を経て、最後の繋ぎ工程において露光領域2303,2304のようにズレうる。そうした場合、次の一括露光時に、一括露光領域の4隅近傍(すなわち、検査マーク2011,2013,2016,2018)に配置したマークでアライメントズレの計測を行い、その結果を元に一括露光時補正を行うと、アライメントズレが大きくなる。具体的には、図16(B)に示す露光領域305のように露光されてしまい、繋ぎ部2306の近傍でアライメントズレが大きくなっているのが分かる。例えば、図12に示す半導体装置の場合は、図12(C)に示す位置で、ライトガイド2044と配線2037及び、ライトガイド2044と配線2041の干渉が起こり、歩留り低下を招きうる。
【0143】
一方、検査マーク2011~2018でアライメントズレの計測を行い、その結果を元に一括露光時の補正を行うと、図16(C)の露光領域2307のように露光されうる。結果、アライメントズレが平均化され、チップ全体としてアライメント精度の高い、半導体装置を製造できる。
【0144】
上記の説明では、連続する複数回の繋ぎ露光工程の最後の繋ぎ露光工程によって形成されるパターンと、その直後の一括露光工程によって形成されるパターンの間でのアライメントを精度良く行う例を説明した。しかしながら、連続する複数回の繋ぎ露光工程における最後以外の露光工程によって形成されるパターンと、一括露光工程によって形成されるパターンの間でアライメントを行ってもよい。例えば、図12に示す配線2037,2041とライトガイド2044の間のアライメントよりも、配線2035,2039とライトガイド2044の間のアライメントの方が、より精度を要求される場合がある。このような場合、配線2035の層とライトガイド2044の層、および配線2039の層とライトガイド2044の層とのマークを図10(B)に示す検査マーク2011~2018に設けて重ね合わせて露光する。そして重ね合わせ検査装置1120が、アライメントズレを計測する検出工程と、次に製造されるウエハに対して一括露光工程でのアライメントズレが小さくなるように一括露光工程での露光位置を調整する補正工程を行ってもよい。
【0145】
つまり、複数の連続する繋ぎ露光工程の直後に一括露光工程がある場合に、複数の繋ぎ
露光工程における任意の繋ぎ露光工程と一括露光工程の間のアライメントに上述の手法を利用することができる。なお、連続する繋ぎ露光工程とは、その間に一括露光工程を含まない繋ぎ露光工程を意味し、その間に露光工程以外の工程が含まれてもよい。また、特定の繋ぎ露光工程の直後の一括露光工程とは、特定の繋ぎ露光工程の後に行われる最初の一括露光工程を意味し、特定の繋ぎ露光工程と直後の一括露光工程の間に露光工程以外の工程が含まれてもよい。
【0146】
また、図17(A)に示すように、1つのチップが2行2列の4つの露光領域2402~2405からなる半導体装置の製造方法にも利用できうる。4つの露光領域2402~2405に繋ぎ露光を行ってパターニングを行った後、露光領域2400に一括露光を行う。露光領域2402~2405には、その後の一括露光工程でのアライメントズレを計測するための検査マーク2411~2422が配置されている。一括露光時には、検査マーク2411~2422を、重ね合わせ検査装置1120を使用して計測する。複数チップでマークを計測して、既知の回帰分析を用い各種の誤差成分を求め、同一工程での次の一括露光で露光を行うウエハに対して、誤差成分を元に補正を行い、一括露光で露光を行う。
【0147】
また、図17(B)に示すように、1つのチップが1行3列の3つの露光領域2502~2504からなる半導体装置の製造方法にも利用できうる。3つの露光領域2502~2504に繋ぎ露光を行ってパターニングを行った後、露光領域2500に一括露光を行う。露光領域2502~2504には、その後の一括露光工程でのアライメントズレを計測するための検査マーク2511~2522が配置されている。一括露光時には、検査マーク2511~2522を、重ね合わせ検査装置1120を使用して計測する。複数チップでアライメントマークを計測して、既知の回帰分析を用い各種の誤差成分を求め、同一工程での次の一括露光で露光を行うウエハに対して、誤差成分を元に補正を行い、一括露光を行う。
【0148】
また、繋ぎ露光の領域の形状は上述した例に限定されず、また、露光領域の数も2~4個には限定されず5個以上であってもよい。
【0149】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第1実施形態と組み合わせて実施してもよい。すなわち、本実施形態は、第1層目(ファーストレイヤ)の分割露光において、第1実施形態で説明した手法によりレチクル起因誤差とウエハ起因誤差の線形成分を求めてもよい。そして、各線形成分が小さくなるように第1層目での露光位置を調整する補正工程を有してもよい。なお、第1層目の分割露光において、第1の検査マーク群のうちの1つの検査マークと、第2の検査マーク群のうちの1つの検査マークの位置関係を表す情報(重ね合わせズレ)から、レチクルに起因する誤差とウエハの位置に起因する誤差が導出される。
【0150】
[他の適用例]
図18(A)~図18(D)を参照して、本実施形態の半導体装置製造方法の他の適用例について説明する。本適用例で製造される半導体装置は、2つのウエハを貼り合わせて製造される裏面照射型の撮像装置である。
【0151】
図18(A),図18(B)は、半導体装置のチップ配置図を示す。図示されるように、ウエハ2600に複数のチップ2601が配列され、ウエハ2700に複数のチップ2701が配列される。
【0152】
図18(C),図18(D)は、チップ2601,2701の拡大図である。チップ2601は露光領域2601を含む一括露光処理によってパターンを形成されており、チッ
プ2701は露光領域2702と露光領域2703を含む繋ぎ露光処理によってパターンが形成されている。チップ2601は、例えば、画素回路が形成されたチップであり、チップ2701は、例えば、信号処理回路が形成されたチップでありうる。これらのチップを貼り合せて、ウエハを積層化する。積層後に所定の工程を経た後、ウエハをチップ単位でスクライブすることで、所望の半導体装置を得ることができる。
【0153】
チップ2601には、貼り合せ後のアライメントズレを計測するための検査マーク2611~2618が配置されている。チップ2701には、貼り合せ後のアライメントズレを計測するための検査マーク2711~2718が配置されている。
【0154】
ウエハ2600および2700を貼り合せる工程において、ウエハ倍率成分、ウエハ回転成分、及び、ウエハシフト成分を補正できる貼り合せ装置を用いて貼り合せを行う。貼り合わせ後は、アライメント計測装置を用いて、対応する位置のマークを用いて貼り合わせ精度が検出される。検査マーク2611と2711、検査マーク2612と2712、検査マーク2613と2713、検査マーク2614と2714の間の位置ズレ量がそれぞれ検出される。また、検査マーク2615と2715、検査マーク2616と2716、検査マーク2617と2717、検査マーク2618と2718の間の位置ズレ量がそれぞれ検出される。複数のチップで各8ポイントずつ貼り合せ精度を検出し、回帰分析の手法を用いて、ウエハ倍率成分、ウエハ回転成分、及び、ウエハシフト成分のズレ量を求めることができる。次に貼り合せるウエハに対して、ウエハ倍率成分、ウエハ回転成分、及び、ウエハシフト成分のズレ量分の補正を行うことで、繋ぎ部近傍にある検査マーク2613~2616および検査マーク2713~2716における貼り合せズレを低減できる。したがって、貼り合せ精度の高い半導体装置を製造できる。上記以外の各構成要素の材質やその形成方法などは、公知の半導体装置と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0155】
<第3実施形態>
本実施形態は、露光工程における位置合わせ誤差の非線形補正を精度良くかつ効率的に実施可能な製造技術に関する。
【0156】
[背景]
重ね合わせ誤差の要因であるウエハ上のショットの配列誤差が線型的な成分である場合には、グローバル・アライメントによりその誤差を除去可能である。その一法として、アドバンスト・グローバル・アライメント(AGA)が知られている(特開2004-228327号公報)。AGAでは、1枚のウエハにおいて予め選択された複数個のサンプルショットのアライメントマークの位置情報を検出し、これらの計測結果に統計演算処理(最小二乗法など)を行い、全ショットの配列を算出する。
【0157】
しかし、ショットの配列誤差が非線形な成分を含む場合には、グローバル・アライメントではこれを除去することはできない。
【0158】
電子デバイス製造工程では連続的または断続的に行う露光工程において、異なる露光装置(号機)を用いることが一般的に行われる。これらの露光装置間にはステージグリッド誤差(各露光装置におけるウエハの移動位置を規定するステージ座標系相互間の誤差)が生じる。また、エッチング、CVD(化学的気相成長)、CMP(化学的機械研磨)、貼合せなどのウエハ加工を伴うプロセス工程ではウエハ面内に歪みが発生する。これらは、ショットの配列誤差の非線形成分と成り得る。更には、露光装置に搬送される間のウエハの温度変化、ウエハステージ上に配置するウエハチャックによるウエハ毎の吸着状態の違い、レチクルの熱膨張等により、露光処理中にショット配列誤差の非線形成分が変化することもある。
【0159】
重ね合わせ精度の向上を図るため、プロセス起因で生じるショット配列誤差の非線形成分を補正するグリッド補正機能と、ステージグリッド誤差(露光装置起因で生じるショット配列誤差。)の非線形成分をグリッド補正機能に着目した露光方法が知られている(特開2007-129056号公報)。先ず露光装置間のステージグリッドの違いにより生じるウエハグリッドの非線形成分について、事前に基準ウエハを用いて計測し、全ショットに対する補正マップを作成する。そして、実際の露光処理においては、露光レシピに指定されたサンプルショットのアライメント検査マーク計測を行い、その計測結果に基づく補正量に対して、事前に作成した補正マップに基づく補正量を加算する。更にショット形状補正も行った後に、露光が行われる。
【0160】
上述の露光方法によると、全ショットに対する補正マップにより、ステージグリッド起因の非線形成分の補正が正確なものとなる。しかし、プロセス起因で生じるショット配列の非線形性は、あくまでもウエハ内の複数サンプルショットのアライメントマークを対象としたAGA計測結果が基本となる。プロセス起因によるウエハグリッド変形を適切に表現するサンプルショットが指定されなければ、プロセス起因の非線形成分の補正は不十分なものとなる。特にロットを構成するウエハ毎にショット配列誤差の非線形の傾向や程度が大きく異なる場合、露光レシピにおける適切なサンプルショットの指定は困難である。
【0161】
露光装置に要求される重ね合わせ精度は次第に厳しくなっており、ウエハのショット配列誤差の非線形性が、許容できないレベルになってきている。しかしながら、ショット配列誤差の非線形補正の精度を向上させるべく、多数のアライメントマークを配して、ショット内多点且つ全ショットアライメント計測することはスループット低下を招く。
【0162】
一旦、ある露光工程で上述のようなショット内多点且つ全ショットアライメント計測を行って非線形補正を伴う露光をすると、次の露光工程以降ではAGAによる線型補正だけでは対応できなくなる。結局、非線形補正のためのショット内多点及び全ショットアライメント計測が必要となり、電子デバイス製造における露光処理のトータルでの処理時間は長大になる。
【0163】
[概要]
上記の課題を鑑み、本実施形態は、露光物体内のショット配列の非線形補正を高精度に行うと同時に、電子デバイス製造におけるトータルでの露光処理時間の短縮を可能とする露光方法及び露光システムを提供することを目的とする。
【0164】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、露光対象ウエハが有するショット配列誤差の非線形性に関して、ロット内のウエハ間バラつきが発生する程度に着目して、ウエハ間バラツキが大きい工程と小さい工程で異なる処理を実施する。以下では、ショット配列誤差の非線形性のウエハ間バラツキが相対的に大きい工程を第一種の露光工程と称し、相対的に小さい工程を第二種の露光工程と称する。
【0165】
より具体的には、本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第一種の露光工程においてはロット内のN(Nは2以上の自然数)枚のウエハについて全ショットアライメント計測による非線形性補正を伴う補正を行う。その結果、N枚のウエハ各々について非線形補正情報(第1補正情報)が得られる。Nはロット内の全てのウエハ枚数と等しくてもよいし、それより小さくてもよい。以下では、Nはロット内の全てのウエハ枚数と等しいものとして説明する。一方、第一種の露光工程の後の第二種の露光工程では、M(Mは1以上N-1以下)枚のウエハに対しては第一種の露光工程と同様に全ショットアライメント計測による非線形性補正を伴う補正を行う。その結果、M枚のウエハ各々について非線形補正情報(第2補正情報)が得られる。M枚以外の残りのウエハに対しては、第1補正情
報と第2補正情報を用いた演算処理による第3補正情報を生成し、当該第3補正情報を用いた非線形補正を伴う露光を行う。
【0166】
このように非線形誤差のウエハ間のバラつきに着目して露光処理を異ならせることで、精度のよいアライメントとスループット向上の両立が図れる。また、本実施形態では、非線形成分がプロセス起因によるものか、露光装置間のステージグリッド誤差に起因するものかを特に意識せずに補正が行える。例えば、ロット処理の合間に、露光装置の突発的なトラブルが発生してステージグリッドが変動した場合であっても、本実施形態に係る製造方法によれば露光処理を正しく続けることができる。
【0167】
[第一種の露光工程]
本実施形態では、電子デバイス製造プロセスにおけるロット(例えば1ロット25ウエハ)の露光処理に関して、ショット配列誤差の非線形性のウエハ間バラツキが相対的に大きい露光工程を第一種の露光工程と称する。後述するが、例えば、ウエハ同士の貼り合わせ及び薄膜化の直後の露光工程では、ウエハ間のショット配列誤差の非線形性の傾向が、ウエハ毎に大きく異なることがある。また、バッチ式の高温炉における熱処理などを経た直後の露光工程でも、同様のケースが発生することがある。これは、高温炉内の均熱化を完全ならしめることは困難であり、石英ボート内のウエハ搭載位置によってウエハ毎に熱の掛かり方が異なってしまうからである。
【0168】
[第二種の露光工程]
また、本実施形態では、電子デバイス製造プロセスにおけるロット(例えば1ロット25ウエハ)の露光処理に関して、ショット配列誤差の非線形性のウエハ間バラツキが相対的に小さい露光工程を第二種の露光工程と称する。後述するが、例えば、CVD法によるシリコン窒化膜の枚葉処理(堆積)において、シリコン窒化膜の膜厚増加に伴い、膜ストレスが増加し、膜形成直後の露光工程におけるショット配列誤差の非線形性も増加することを発明者は見い出した。しかし、シリコン窒化膜を堆積させるCVD装置の処理室(チャンバー)が同じであれば、ウエハ間で、ショット配列誤差の非線形性の傾向が顕著に変化することはない。すなわち、シリコン窒化膜の堆積処理後の露光工程における非線形性のウエハ間バラツキの程度は、ウエハ同士の貼合せ及び薄膜化の直後の露光工程などと比較すると小さい。
【0169】
[処理内容]
本実施形態に係る半導体装置製造方法のうち、露光処理について、図を参照して説明する。なお、本実施形態に係る半導体装置(電子デバイス)製造方法は、図1に示したリソグラフィシステム1110を用いて行われる。
【0170】
図19(A)は、第一種の露光工程におけるスキャナの主制御系1020内のCPUの制御アルゴリズムが概略的に示されている。以下の説明において、動作主体が主制御系1020である場合には動作主体の明示を省略することがある。
【0171】
ここで説明される露光処理は、同一ロット内(N=25枚など)のウエハWにおける第2層目以降の層(セカンドレイヤ)に対する処理である。また、前提として、ロット内の全てのウエハは同一条件、同一工程で各種処理が施されているものとする。また、以下の説明における各層の露光処理は、繋ぎ露光処理であっても一括露光処理であっても構わない。
【0172】
サブルーチンS3201において、主制御系1020は、所定の準備作業を行う。サブルーチンS3201の処理詳細は、図19(B)に示される。ステップS3218において、ホストコンピュータ1150から露光指示とともに与えられた露光条件の設定指示情
報に対応するプロセスプログラムファイル(露光条件の設定ファイル)に従って露光条件が設定される。ステップS3220では、不図示のレチクルローダによってレチクルステージRS上にレチクルRがロードされる。ステップS3222では、レチクルアライメント及びアライメント系OASのベースライン計測が行われる。レチクルアライメント及びアライメント系ASのベースライン計測が終了すると、図19(A)のステップS3202にリターンする。
【0173】
ステップS3202では、不図示のウエハローダによって図2のウエハチャック1025上の露光処理済みのウエハと未露光のウエハとが交換される。但し、ウエハチャック1025上に露光処理済みウエハがない場合は、未露光のウエハがウエハチャック1025上に単にロードされる。
【0174】
ステップS3204では、そのウエハチャック1025上にロードされたウエハWのプリアライメントが行われる。具体的には、例えば、ウエハW中心に関してほぼ対称に周辺部に位置する少なくとも2つのTVプリアライメントマークを、アライメント系OASを用いて検出する。2つのマークの位置座標からウエハW残留回転誤差を算出し、この残留回転誤差がほぼ零となるようにウエハチャック1025を微小回転させる。これにより、ウエハWのプリアライメントが終了する。
【0175】
ステップS3206では、ウエハ内の複数のサンプルショットに関してアライメントマークの位置座標計測が行われる。最小二乗法を用いた統計演算(AGA演算)を行い、ウエハW上の各ショット配列に関する回転、倍率、直交度、シフトなどの誤差成分が算出される。この算出結果とショット設計上の位置座標とに基づいて、全ショットの位置座標(配列座標)が算出され、ウエハW上の全ショットの位置座標が内部メモリの所定領域に記憶される。
【0176】
ステップS3208では、ウエハW上の全てのショットのステージ座標系上における位置座標が計測される。具体的には、前述したプリアライメント時における各TVプリマークの位置座標の計測と同様にして、ウエハW上のウエハライメントマークのステージ座標系上における位置座標、すなわち、ショットの位置座標が求められる。なお、ウエハマークの検出は、アライメント系OASの倍率を高倍率に設定して行われる。
【0177】
ステップS3210では、全てのショットについて、位置ずれ量の線形成分と非線形成分とを分離する。具体的には、上記ステップS3206で算出した各ショットの位置座標とそれぞれの設計上の位置座標(基準位置)との差を、位置ずれ量の線形成分として算出する。また、ステップS3208で実際に計測した全てのショットの位置座標とそれぞれの設計上の位置座標との差から前記線形成分を差し引いた残差を、位置ずれ量の非線形成分として算出する。なお、位置ずれ量の非線形成分は、適切な補完関数を用いて算出しても良い。
【0178】
ステップS3212では、上記ステップS3210で算出した非線形成分を、各ショットの配列ずれ補正情報として補正マップを作成する。第一種の露光工程におけるこの補正マップを第1補正情報とし、当該露光工程で重ね合わせ露光を行う全てのウエハに関して第1補正情報が作成される。
【0179】
ステップS3214では、AGA計測に基づく全ショットの配列座標(ステップS3206)と、全ショットについての位置ずれ量の非線形成分の補正マップ(第1補正情報)とに基づいて、重ね合わせ露光が行われる。より具体的には、AGA計測に基づく配列座標と補正マップとから、全ショットについて位置ずれ量(線形成分及び非線形成分)が補正された重ね合わせ補正位置を算出する。また、算出された重ね合わせ補正位置のデータ
を用いて、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作が行われる。ステップ動作は、算出された補正位置と、予め計測したベースライン量とに基づいて、ウエハW上の各ショットに対する露光のための走査開始位置(加速開始位置)にウエハステージWS(ウエハW)を順次ステッピングさせる動作である。スキャン動作は、レチクルステージRSとウエハステージWSとを走査方向に同期移動させつつレチクルパターンをウエハ上に転写する動作である。これらの動作が繰り返されて、ロット先頭(ロット内の第1枚目)のウエハWに対する露光処理が終了する。
【0180】
ステップS3216では、予定枚数のウエハに対する露光が終了したか否かが判定される。否定判定の場合には、処理はステップS3202に戻り、以後上記処理および判定が繰り返される。
【0181】
このようにして、N枚全てのウエハWに対して露光が終了すると、ステップS3216における判断が肯定され、第一種の露光工程の露光処理を終了する。
【0182】
露光処理中に主制御系1020の内部メモリ内に記憶されていた第1補正情報は、そのまま主制御系1020を構成するハードディスク等の記憶装置に記憶、保存される。第1補正情報は、主制御系1020に接続続されているLAN1160を介して、情報サーバ1130に記憶されても良い。
【0183】
図20は、第二種の露光工程におけるスキャナの主制御系1020内のCPUの制御アルゴリズムが概略的に示されている。図20に示す処理が行われるのは、第一種の露光工程を行った直後の連続する露光工程であっても良いし、または数回程度の露光工程を隔てた後の露光工程であっても良い。ここでは、第一種の露光工程で処理した同一ロットN枚(例えば25枚)全てのウエハについて、重ね合わせ露光を行うものとする。
【0184】
前提として、後述するロット内のウエハ番号(k)を示す不図示のカウンタの値は「1」に初期設定されている(k←1)ものとする。
【0185】
まず、準備作業であるサブルーチンS3201が実行される。サブルーチンS3201の詳細は、図19(B)を参照して説明したので繰り返しの説明は省略する。
【0186】
ステップS3302では、第二種の露光工程を実施する露光装置の主制御系1020は、第二種の露光工程で処理する全てのウエハに関して、第一種の露光工程で取得した第1補正情報を読み出す。第1補正情報は、第一種の露光工程を実施した露光装置の主制御系1020または情報サーバ1130から読み出される。読み出された第1補正情報は、主制御系1020の内部メモリ内の所定領域に記憶される。
【0187】
なお、ステップS3302では、第一種の露光工程後または第一種の露光工程直後のエッチング加工を経た後に重ね合わせ検査装置1120で評価した重ね合わせ誤差情報を第1補正情報に加えて、第1補正情報をさらに補正しても良い。補正された場合には、以下では補正後の第1補正情報が、第1補正情報として用いられる。重ね合わせ検査装置1120による誤差情報は、ホストコンピュータ1150の指示のもと、情報サーバ1130からLAN1160を通じて第2露光を行う露光装置の主制御系1020に送られ、主制御系1020で第1補正情報との演算が行われる。また、情報サーバ1130内でホストコンピュータ1150の指示のもと、予め第1補正情報と重ね合わせ検査装置1120による誤差情報の演算が行われた状態で、LAN1160を通じて露光装置の主制御系1020へ送られても良い。
【0188】
ステップS3302では、前述したカウンタのカウント値kが、所定の値(M+1)以
上であるか否かが判断される。これにより、ウエハチャック1025上のウエハWが、ロット内の第(M+1)枚目以降のウエハであるか否かが分かる。ここでは、処理ロット内ウエハ数N=25枚とし、所定の値Mは1以上で24以下の任意の整数に予め設定される。以下においては、説明の便宜上から、M=1であるものとして説明を行う。この場合、ウエハWはロット先頭(第1枚目)のウエハであるから、初期設定によりk=1となっているので、ステップS3302の判断は否定され、処理は次のステップS3304に進む。
【0189】
ステップS3304では、不図示のウエハローダによってウエハチャック1025上の露光処理済みのウエハと未露光のウエハとが交換される。但し、k=1の場合、ウエハチャック1025上にウエハが無いので、未露光のウエハWがウエハチャック1025上に単にロードされる。
【0190】
ステップS3306からステップS3316までのシーケンスは、先に説明した第一種の露光工程におけるシーケンスS3204からS3214までと基本的に同じである。異なるのは、ステップS3314で作成される補正マップ(補正情報)を、第1補正マップ(第1補正情報)ではなく、第2補正マップ(第2補正情報)と称している点である。また、ステップS3316では、第1補正マップ(第1補正情報)ではなく第2補正マップ(第2補正情報)が重ね合わせ補正位置の算出に用いられる。
【0191】
次のステップS3318では、前述したカウンタのカウント値がインクリメントされる(k←k+1)。ここでは、k=1であるからk=2となる。その後、処理はステップS3303に戻って、S3303で肯定判定されるまで、ステップS3304~S3316の処理が繰り返される。
【0192】
ステップS3303で肯定判定されると処理はステップS3320に進み、否定判定されると処理はステップS3304に進む。ここでは、M=1と仮定しているので、k=2のとき、すなわちロット内の第2枚目のウエハが露光対象であるときに肯定判定される。
【0193】
ステップS3320では、露光済みのM枚のウエハの第1補正マップ(第1補正情報)と第2補正マップ(第2補正情報)とに基づいて、第3補正マップ(第3補正情報)が作成される。第1補正マップは、ステップS3302で取得されて主制御系1020の内部メモリに記憶されている。また、第2補正マップはステップS3314で作成されて主制御系1020の内部メモリに記憶されている。
【0194】
第2補正情報と第1補正情報は、同じショットレイアウトに関する非線形補正マップである。したがって、X,Y2次元座標系で表現されるショットの配列位置に関して、例えば、各ウエハに関して第2補正情報から第1補正情報を引き算した差分は、各ウエハに関する第1露光から第2露光までに生じた非線形成分の変分と見なすことが出来る。例えば、第1枚目から第M枚目までの各々のウエハについて第1補正情報に対する第2補正情報の変分を算出し、M枚についての差分の平均値に基づいて求めた補正マップが第3補正情報となる。第3補正情報は、露光装置の主制御系1020の内部メモリ内に記憶される。述のように第二種の露光工程はウエハ間の非線形の誤差成分のバラツキが相対的に小さい露光工程である。したがって、各ウエハで第3補正情報の変動(ばらつき)は少ない。
【0195】
第1補正情報と第2補正情報の演算処理方法によって第3補正情報は変わり得る。第1補正情報と第2補正情報の演算処理方法の例として、第2補正情報から第1補正情報の引き算とウエハ枚数分での平均化を挙げたが、他の演算方法も可能である。例えば、第2補正情報、第1補正情報の各々に一定の係数を乗じたものの間で引き算し、ウエハ枚数分の平均を取って第3補正情報を求めても良い。前記係数は、重ね合わせ検査装置1120で
の計測結果を反映した数値、例えば、露光とエッチングの間で重ね合わせ結果に一定の変化量が存在する場合にはその変化量を表現するような数値に決定すれば良い。
【0196】
ステップS3322では、不図示のウエハローダによってウエハチャック1025上の露光処理済みのウエハと未露光のウエハとが交換される。
【0197】
ステップS3324では、ウエハチャック1025上にロードされたウエハWのプリアライメントが行われる。
【0198】
ステップS3326では、ウエハ内の複数のサンプルショットに関してアライメントマークの位置座標計測が行われる。最小二乗法を用いた統計演算(AGA演算)を行い、ウエハW上の各ショット配列に関する回転、倍率、直交度、シフトなどの誤差成分が算出される。この算出結果とショット設計上の位置座標とに基づいて、全ショットの位置座標(配列座標)が算出され、ウエハW上の全ショットの位置座標が内部メモリの所定領域に記憶される。
【0199】
ステップS3328では、AGA計測に基づく全ショットの配列座標(ステップS3326)と、露光対象ウエハ(第k枚目)の第1補正マップ、および第3補正マップ(ステップS3320)に基づいて、重ね合わせ露光が行われる。重ね合わせ露光では、これら3つのデータを用いて、各ショットについて位置ズレ量(線形成分および非線形成分)が補正された重ね合わせ補正位置が算出される。AGA計測に基づく全ショットの配列座標によって線形成分が主に補正され、第1補正マップおよび第3補正マップによって非線形成分が主に補正される。そして、算出された重ね合わせ補正位置のデータを用いて、ステップ・アンド・スキャン方式による露光動作が行われる。これにより、ここではロット先頭から第2枚目(k=2)のウエハWに対する露光処理が終了する。
【0200】
ステップS3330では、予定枚数のウエハに対する露光が終了したか否かが判定される。否定判定の場合は、ステップS3311に進んで、カウンタkがインクリメントされ、処理はステップS3322に戻る。
【0201】
ステップS3322に戻って以降、ロット内の全てのウエハの露光が終了するまで、上記ステップS3322~ステップS3330の処理および判定が繰り返し行われる。ロット内の全てのウエハの露光が終了し、ステップS3330の判断が肯定されると、一連の第二種の露光工程の処理を終了する。
【0202】
[適用例]
本実施形態に係る露光方法を電子デバイス(半導体装置)製造へ適用した例について説明する。ここでは、近年、精力的に開発・生産が進められているCMOS型の裏面照射型の撮像装置の製造プロセスを例にして説明する。図21(A)~図23(A)は製造プロセスフロー概略を、図23(B)は製造工程が終了した後の完成した裏面照射型の撮像装置3400の概略断面図を示す。
【0203】
裏面照射型の撮像装置3400は、センサウエハ3401とウエハ3402が貼り合わせて製造され、センサウエハ3401の配線層が設けられる側と反対側の面(裏面)を受光面とする。センサウエハ3401は、シリコンからなる半導体層3403aを有し、その半導体層3403a上に、複数の画素3423が例えば行列状に配置される画素領域3425を有する。この画素領域3425に配置される各画素3423は、光電変換機能を有する受光素子としてのフォトダイオード3410を有する。また、センサウエハ3401においては、半導体層の一方の主面側に、例えば複数の配線3406aが層間絶縁膜3405aを介して積層された配線層3408aが設けられる。センサウエハ3401の半
導体層3403a内にエッチングとシリコン窒化膜埋め込みによりアライメントマーク3411が形成される。また、シリコンからなる半導体層3403aには、配線層3408aが設けられる側と反対側に、金属遮光部3414、層内レンズ3417、カラーフィルタ3419およびマイクロレンズ3421が形成される。その後、センサウエハ3401、3402はダイシングされてチップとなる。撮像装置4100におけるセンサチップはセンサウエハ3401の一部であり、回路チップはウエハ3402の一部である。撮像装置4100におけるセンサチップの半導体層はセンサウエハ3401の半導体層3403aの一部であり、回路チップの半導体基板はウエハ3402の半導体基板3403bの一部である。
【0204】
裏面照射型の撮像装置3400においては、マイクロレンズ3421側から入射する光は、配線層を通過することなく、画素3423のフォトダイオード3410により受光される。このため、フォトダイオード3410の実質的な受光面積を広く確保することができ、感度を向上させることができるのである。
【0205】
このような裏面照射型の撮像装置3400の製造過程は、以下の工程を含む。
【0206】
まず、画素が形成されたセンサウエハ3401(図21(A))と、これに貼り合わせるウエハ3402(図21(B))を用意する。ウエハ3402は、例えば、センサウエハ3401の平坦性や機械強度を保つための支持基板としてのウエハであったり、センサウエハ3401に形成される撮像装置を制御する論理回路が形成された回路基板としてのウエハであったりする。ここではウエハ3402に論理回路が形成される例を取り上げている。図21(B)に示す様に、ウエハ3402は、シリコンからなる半導体基板3403bと、その表面上に形成されるMOSトランジスタ3404bと、層間絶縁膜3405bを介して設けられる配線層3408bを有する。配線層3408bは、層間絶縁膜3405bを介して積層される複数の配線3406bを有する。層間絶縁膜3405bは、例えば、シリコン酸化膜により構成される。複数の配線3406bは、例えば異なる金属により形成され、層間に形成されるプラグ等を介して互いに接続される。図面番号に関して、同じ番号数字は同じ構成要素であり、センサウエハ3401内にあるものは番号数字の後にaを、ウエハ402内にあるものはbを付して表現している。例えば、符号3404a、3404bは共にMOSトランジスタを示すが、前者はセンサウエハ3401に形成されたMOSトランジスタを、後者はウエハ3402側に形成されたMOSトランジスタを意味する。
【0207】
次に、センサウエハ3401とウエハ3402とを、センサウエハ3401の金属接合層3407aとウエハ3402の金属接合層3407bとが金属結合を形成するように貼り合わせる(図21(C))。貼り合わせには、接着剤を用いてもよいしプラズマを用いてもよい。ウエハ貼り合わせ工程においては、ウエハに対する加熱や加圧が行われる。
【0208】
貼り合わせ工程の後に、裏面側からの入射光を得るために、センサウエハ3401を薄くする薄膜化処理が行われる。具体的には、シリコンからなる半導体層3403aを、バックグラインド研磨及びエッチングなどにより薄くする。
【0209】
ウエハの貼り合わせおよび薄膜化プロセスにおいて、ウエハに対する加熱や加圧、あるいはセンサウエハの薄膜化に際して生じる残留応力等により、通常、センサウエハ3401に大きな歪みが生じる。また、ロット内のウエハ間で歪の傾向や大きさが異なる場合が多い。貼り合せ、シリコンウエハの薄膜化に関する技術は昨今、急速に進歩しているが、ウエハ間で歪の傾向や大きさを略同一にすることは未だ困難である。貼り合せおよび薄膜化によるセンサウエハ3401の歪みは、それ以降に行われる、画素領域3425のフォトダイオード3410に効果的に入射光を取り込ませるための光学構造要素のパターン形
成に行う露光工程に影響を及ぼす。具体的には図23(B)に示す金属遮光部3414、層内レンズ3417、カラーフィルタ3419、マイクロレンズ3421のパターン形成を行う露光工程において、特にアライメントへ大きな影響を及ぼす。
【0210】
センサウエハ3401の薄膜化の後に、図22(A)に示すように、電荷固定膜や反射防止膜や酸化シリコン膜などから構成される積層膜3412を形成し、金属遮光膜3413がCVD法やスパッタリング法により堆積される。図22(B)に示すように、フォトダイオード上の金属遮光膜を除去するためには、露光による金属遮光部パターニングと、エッチングによる加工を行う必要がある。
【0211】
金属遮光膜上で金属遮光部パターニングを行う露光工程が、センサウエハ3401の貼り合せ及び薄膜化の後の最初の露光工程であるとすると、前述のようにセンサウエハ3401は歪を有しており、かつウエハ間でも歪の傾向や大きさが異なる。この歪はウエハ内のショット配列誤差における非線形成分として発現するため、金属遮光部パターニングは本実施形態の第一種の露光工程に該当する。したがって、ロット内の全ウエハに関して全ショットアライメント座標検出を行い、各ウエハに関するショット配列の非線形成分を表す補正マップを第1補正情報として露光装置の主制御系1020の内部メモリや、情報サーバ1130に記憶する。アライメント座標検出は、例えば、ショット内で4箇所以上のアライメントマーク(例えば、X方向及びY方向位置を同時に計測可能なアライメントマーク(XY8、XY4マークなど))を検出することにより行われる。金属遮光部パターニングのアライメント計測は、センサウエハ3401のシリコンからなる半導体層3403a内に形成されているアライメントマーク3411を用いて行う。
【0212】
図22(B)に示すように金属遮光部3414が形成された後、酸化シリコン膜等の層間絶縁膜3415を堆積し、必要に応じてCMP等で平坦化を行う。その上に層内レンズ3417の母材となるシリコン窒化膜層3416を枚葉式のCVD装置により堆積させる。その後、公知のフォトリソ技術によって、フォトダイオード直上にそれをマスクする様にレジストパターンを形成し、リフロー等の熱処理により層内レンズを形作るレジストパターンを形成する。このレンズ形状をしたレジストパターンをマスクにしてエッチング加工により、層内レンズ3417をシリコン窒化膜層3416に形成する。
【0213】
本発明者の検討によると、一般的に、電子デバイス製造工程において堆積させるシリコン窒化膜の膜厚を増すと、当該シリコン窒化膜内のストレスが増加し、それに伴って当該シリコン窒化膜より下層に形成されたパターンとの重ね合わせ精度が悪化する。その主要因はショット配列誤差における非線形成分によるものである。しかし、シリコン窒化膜堆積に起因する非線形性は、貼り合せおよび薄膜化に起因する非線形性よりもそもそも相対的に小さく、且つロット内の各ウエハ間での非線形性の傾向や大きさのバラツキも相対的に小さいことが分かっている。そのため、この層内レンズパターン形成の露光工程は本実施形態の第二種の露光工程に該当する。
【0214】
したがって、例えば、N枚のウエハから成るロット内の先頭からM数分のウエハについては第一種の露光工程と同様に全ショットアライメント座標検出を行い、各ウエハに関するショット配列の非線形成分を表す補正マップを求める。求められた補正マップは、第2補正情報として当該第二種の露光工程の露光装置の主制御系1020の内部メモリ等に記憶する。そして、M枚分のウエハについて、装置の主制御系1020などで、第1補正情報に対する第2補正情報の差分等を演算し、M枚のウエハ間で平均化することで第3補正情報を作成する。第二種の露光工程におけるロット先頭からM枚のウエハに関して、第1補正情報に対する第2補正情報の差分に関するウエハ間ばらつきは、第一種の露光工程における対応するM枚のウエハに関する第1補正情報のウエハ間ばらつきよりも小さいものとなる。
【0215】
第二種の露光工程における残余のウエハ(N-M)枚については、各々のウエハに関する第1補正情報と、ロット先頭からM枚分のウエハから算出した前記第3補正情報からショット配列の非線形補正成分を算出し、露光に適用する。なお、第一種の露光工程である金属遮光部パターン露光と、第二種の露光工程である層内レンズパターン露光とで、同一のアライメントマーク3411を計測することが望ましい。すなわち、同一のアライメントマーク3411を計測して第1補正情報と第2補正情報を作成し、それらの引き算、平均化から第3補正情報を作成することが望ましい。
【0216】
[有利な効果]
本実施形態に係る露光方法によれば、複数の露光物体のそれぞれに連続的または断続的に露光を行う際に、露光物体内のショット配列の非線形補正を高精度に行うと同時に、電子デバイス製造におけるトータルでの露光処理時間を短縮可能である。
【0217】
[変形例]
上記の説明において、第一種の露光工程では、ロット内の全てのウエハについてアライメント計測を行う例を説明したが、一部のウエハのみについてアライメント計測をしてもよい。すなわち、上記の自然数Nは、ロット内の全ウエハ枚数より小さくてもよい。この場合、第一種の露光工程における位置ズレ量の非線形成分は、適切な補間関数を用いて算出することが好ましい。
【0218】
上記の説明における露光処理は、一括露光処理であっても繋ぎ露光処理であってもよい。本実施形態における製造方法は、一括露光処理のみによって行われてもよいし、繋ぎ露光処理のみによって行われてもよいし、一括露光処理と繋ぎ露光処理を組み合わせて行われてもよい。一括露光処理と繋ぎ露光処理の組み合わせは第2実施形態において説明されている。第2実施形態において、各露光処理が第一種の露光処理であるか第二種の露光処理であるかに応じて、本実施形態のように位置ズレの非線形成分の補正方法を切り替えてもよい。
【0219】
<第4実施形態>
撮像装置において、受光領域より上方に回路配線を配置する場合、配線パターンはトップレンズから集光した入射光を妨げないように配置する必要がある。配線パターンをつなぎ露光を用いて形成した場合、複数回露光による配線パターンの合わせ精度の低下によって、配線パターンの一部が入射光を妨げる場合があり、その結果、つなぎ領域での感度ばらつきが大きくなる。前述の感度ばらつきは、より微細かつ多層配線を用いた画素で顕著となるため、つなぎ露光を用いた撮像装置は、微細化や高機能化が困難である。
【0220】
本実施形態は、複数回露光による配線パターンの繋ぎ合わせ精度を向上させ、繋ぎ領域での感度バラツキを抑制可能な撮像装置の製造方法に関する。
【0221】
[製造方法の全体概要]
本実施形態の露光処理の詳細を説明する前に、まず、図24(A)~図24(H)を参照して撮像装置の構造及び製造方法の全体概要について説明する。図24(A)~図24(H)は製造工程を説明する図であり、図24(H)が最終的な撮像装置の構造を示す。
【0222】
撮像装置4100は、基板4101を有する。基板4101は、撮像装置4100を構成する部材のうち半導体材料の部分でありうる。例えば、基板4101は、半導体ウエハに対して、周知の半導体製造プロセスによってウェルなどの半導体領域が形成されたものを含む。半導体材料として、例えばシリコンやヒ化ガリウムなどが用いられうる。半導体材料と別の材料との界面が、基板4101の主面4102である。例えば、別の材料は、
基板4101の上に基板4101と接して配された酸化シリコンなどである。なお、製造工程中は基板4101はウエハの一部である。製造工程の後工程でウエハはダイシングされてチップとなる。撮像装置4100における基板4101はチップの一部である。
【0223】
基板4101には周知の半導体基板を用いることができ、本実施形態において、シリコンを用いる。基板4101に、p型半導体領域及びn型半導体領域が配される。本実施形態では、主面4102は、基板4101と基板4101の上に積層された酸化シリコン(不図示)との界面でありうる。基板4101は、複数の光電変換部4105が配された撮像領域4103と、複数の光電変換部4105から出力される信号を処理するための信号処理回路が配された周辺領域4104とを含む。撮像領域4103及び周辺領域4104については後述する。本実施形態において、平面は主面4102と平行な面のことをいう。例えば、後述する光電変換部4105が配された領域における主面4102、あるいは、MOSトランジスタのチャネルにおける主面4102を基準としてもよい。また、断面は平面と交差する面のことをいう。
【0224】
図24(A)に示される工程において、基板4101内に各半導体領域、基板4101の上にゲート電極や、多層の配線パターン及び配線パターン間の層間絶縁膜を含む構造体4127などが形成される。基板4101の撮像領域4103には、光電変換部4105、フローティングディフュージョン(FD)部4106、画素トランジスタ用のウェル4107や、ウェル4107内にソース・ドレイン領域などが形成される。光電変換部4105は、例えば、フォトダイオードであってもよい。光電変換部4105は、例えば、基板4101のp型の半導体領域に配されたn型の半導体領域を含み、pn接合を構成する。入射した光に応じて光電変換によって発生した電荷は、光電変換部4105のn型の半導体領域に蓄積される。FD部4106は、基板4101のp型の半導体領域に配されたn型の半導体領域である。それぞれの半導体領域の導電型は、それぞれ逆の導電型であってもよい。光電変換部4105で発生した電荷は、FD部4106に転送され、電圧に変換される。FD部4106は、増幅部の入力ノードに電気的に接続されてもよい。また、FD部4106は、信号出力線に電気的に接続されてもよい。本実施形態において、FD部4106は、増幅部の増幅トランジスタのゲート電極4110bに、コンタクトプラグ4114を介して電気的に接続される。画素トランジスタ用のウェル4107には、信号を増幅する増幅トランジスタや、増幅トランジスタの入力ノードをリセットするリセットトランジスタなどのソース・ドレイン領域が形成される。基板4101の周辺領域4104には、周辺回路用のトランジスタのウェル4108が形成される。ウェル4108には、光電変換部から出力される信号を処理するための信号処理回路を構成するトランジスタのソース・ドレイン領域が形成される。また、基板4101には、素子分離部4109が形成されてもよい。素子分離部4109は、撮像領域4103及び周辺領域4104において、それぞれの素子を電気的に分離する。素子分離部4109は、STI(Shallow Trench Isolation)やLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)などの素子分離法を用いて形成される。図24(A)に示す工程において、基板4101の上に、転送ゲート電極4110a及び各トランジスタのゲート電極4110bが形成される。転送ゲート電極4110a及びゲート電極4110bは、基板4101の上にゲート絶縁膜(不図示)を介して配される。ゲート絶縁膜として、例えば、基板4101を熱酸化した酸化シリコンなどが用いられうる。転送ゲート電極4110aは、光電変換部4105とFD部4106との間の電荷の転送を制御する。ゲート電極4110bは、画素トランジスタや周辺回路用のトランジスタのチャネル領域を制御する。光電変換部4105が配された撮像領域4103と、光電変換部4105から出力される信号を処理するための周辺領域4104とが、上述のこれらの工程を含み形成される。転送ゲート電極4110a及びゲート電極4110bの形成後、基板4101の上に保護層としての絶縁体層4111を形成する。保護層としての絶縁体層4111として、例えば、窒化シリコンが用いられうる。また、保護層としての絶縁体層4111は
、窒化シリコンと酸化シリコンとを含む複数の層によって構成されてもよい。保護層としての絶縁体層4111は、後の工程で光電変換部4105に与えられるダメージを低減する機能を有していてもよい。また、保護層としての絶縁体層4111は、ゲート電極110bやソース・ドレイン領域との電気的な接続を行う電極などを形成するためのシリサイド工程において、金属の拡散を防止する機能を有していてもよい。保護層としての絶縁体層4111の形成後、光電変換部4105の上に配された保護層としての絶縁体層4111の上に、エッチストップ部4117を形成する。エッチストップ部4117は、基板4101の主面4102に対する正射影において、後の工程で光導波路を配するために形成される孔4116の底よりも大きく形成されうる。保護層としての絶縁体層4111及びエッチストップ部4117は、必ずしも形成される必要はない。
【0225】
次いで、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に構造体4127を形成する。構造体4127は、層間絶縁膜4113a~4113eと、層間絶縁膜4113a~4113eの中に配された複数の配線パターン4112a及び4112bとを含む。また、構造体4127は、構成要素に上述の保護層としての絶縁体層4111及びエッチストップ部4117を含んでもよい。層間絶縁膜4113a~4113eは、基板4101に配された素子や配線パターン4112a及び4112bを電気的に絶縁する。本実施形態において、ダマシン法を用いて配線パターン4112a及び4112bが形成される。
【0226】
まず、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に、層間絶縁膜4113aを形成する。必要に応じて、層間絶縁膜4113aの上面に生じる段差を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法などを用いて平坦化してもよい。本実施形態において、上面とは、撮像装置4100を構成する各部材の基板4101とは反対側の面のことを示す。層間絶縁膜4113aには、スルーホールが形成される。スルーホールには、次に形成される配線パターン4112aと基板4101に形成された半導体領域や転送ゲート電極4110a及びゲート電極4110bなどとを電気的に接続するためのコンタクトプラグ4114が配される。コンタクトプラグ4114は、導電性の材料によって形成され、例えばタングステンが用いられる。
【0227】
次いで、層間絶縁膜4113aの上面に層間絶縁膜4113bを形成し、層間絶縁膜4113bのうち、配線パターン4112aが配される領域に対応した部分をエッチングし除去する。その後、配線パターン4112aの材料となる金属などの導電膜を撮像領域4103及び周辺領域4104の上に形成する。形成された導電膜を、CMP法などを用いて研磨することによって、層間絶縁膜4113bの上面が露出するまで除去する。このような手順によって、配線パターン4112aが所定のパターンに形成される。
【0228】
続いて、層間絶縁膜4113c及び4113dを、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に形成する。形成された層間絶縁膜4113dのうち、配線パターン4112bが配される領域に対応した部分をエッチングし除去する。次に層間絶縁膜4113cのうち、配線パターン4112aと、配線パターン4112bとを電気的に接続するためのコンタクトプラグが配される領域に対応した部分をエッチングし除去する。その後、配線パターン4112b及びコンタクトプラグの材料となる金属などの導電膜を、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に形成する。形成された導電膜を、CMP法などを用いて研磨することによって、層間絶縁膜4113dの上面が露出するまで導電膜を除去する。このような手順によって、配線パターン4112b及びコンタクトプラグが所定のパターンに形成される。ここで、層間絶縁膜4113c、4113dの形成後、まず、層間絶縁膜4113c、4113dのうち、2つの配線パターン4112a、4112bを電気的に接続するためのコンタクトプラグが配される領域に対応した部分をエッチングし除去してもよい。この場合、次いで、層間絶縁膜4113dのうち、配線パターン4112bが配される領域に対応した部分をエッチングし除去する。
【0229】
次に、層間絶縁膜4113eを撮像領域4103及び周辺領域4104の上に形成する。必要に応じて、層間絶縁膜4113eの上面を、CMP法などを用いて平坦化してもよい。配線パターン4112a及び4112bは、ダマシン法以外の手法を用いて形成されてもよい。ダマシン法以外の手法の一例を説明する。層間絶縁膜4113aを形成した後、配線パターン4112aの材料となる導電膜を撮像領域4103及び周辺領域4104の上に形成する。次いで、導電膜のうち、配線パターン4112aが配される領域以外の部分をエッチングすることによって除去する。これによって、配線パターン4112aが得られる。その後、層間絶縁膜4113b及び4113cを形成し、配線パターン4112aの形成と同様の手法を用いて配線パターン4112bを形成する。配線パターン4112bを形成した後、層間絶縁膜4113d及び4113eを形成する。層間絶縁膜4113c及び4113eの上面は、必要に応じて平坦化してもよい。配線パターン4112a及び4112bは、基板4101の主面4102を基準に、互いに異なる高さに配される。本実施形態において、配線パターン4112a及び4112bには、銅が用いられるが、導電部材は導電性の材料であれば銅以外の材料が用いられてもよい。コンタクトプラグによって電気的に接続される部分を除いて、配線パターン4112a及び4112bは、層間絶縁膜4113cによって互いに絶縁されている。本実施形態において、配線パターンは、2層の構成を示しているが、単層であってもよいし、3層以上であってもよい。また、それぞれの層間絶縁膜4113の間には、配線パターン4112を形成する際のエッチストップ膜、配線パターン4112の金属の拡散防止膜、または、エッチストップと金属の拡散防止との両方の機能を備える膜が配されてもよい。本実施形態では、層間絶縁膜4113a~4113eを構成する材料として酸化シリコンを用いる。このため、本実施形態において、エッチストップ及び金属の拡散防止の機能を備える拡散防止膜4115が配される。拡散防止膜4115は、例えば窒化シリコンが用いられうる。上述の構造体4127には、この拡散防止膜4115が含まれてもよい。拡散防止膜4115は、構造体4127の配線層や絶縁膜の構成によって、必ずしも配されなくてもよい。以上の様にして、基板4101と、基板4101の上の構造体4127とを含むウエハを用意する。なお、配線層は、アルミニウムや銅などの導電材料からなる導電層であるため、各種の配線層を導電層と称することもできる。
【0230】
次いで、図24(B)に示すように、層間絶縁膜4113a~4113eの光電変換部4105の上の部分に孔4116を形成する。本実施形態のように拡散防止膜4115が配される場合、主面4102に対する正射影において、層間絶縁膜4113a~4113e及び拡散防止膜4115の光電変換部4105と重なる領域に孔4116を形成する。主面4102に対する正射影において、孔4116の少なくとも一部が、光電変換部4105と重なって配されればよい。
【0231】
孔4116の形成のはじめに、エッチング用のレジストマスク(不図示)を、層間絶縁膜4113eの上面に形成する。エッチング用のレジストマスクは、孔4116が配される領域に開口を有する。エッチング用のレジストマスクは、例えばフォトリソグラフィー法によってパターニングされたフォトレジストでありうる。続いて、エッチング用のレジストマスクをマスクとして、層間絶縁膜4113a~4113e及び拡散防止膜4115をエッチングする。これによって、孔4116が形成される。孔4116を形成するためのエッチングの工程は、1つの条件で連続的にエッチングを行ってもよいし、条件の異なる複数回のエッチングを行ってもよい。孔4116を形成した後、エッチング用のレジストマスクは除去されうる。
【0232】
図24(A),図24(B)に示す工程によって、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に、構造体4127が形成される。構造体4127は、複数の光電変換部4105の上にそれぞれ配された複数の孔4116を有する層間絶縁膜4113と、層間絶縁膜
中に配された配線パターン4112を含む。
【0233】
図24(B)に示す構成のようにエッチストップ部4117が配される場合、孔4116を形成するためのエッチングは、エッチストップ部4117が露出するまで行われてもよい。エッチストップ部4117は、層間絶縁膜4113a~4113eをエッチングするエッチング条件において、層間絶縁膜4113a~4113eよりもエッチングレートが小さい材料が用いられうる。層間絶縁膜4113a~4113eに酸化シリコンを用いる場合、エッチストップ部4117の材料として、窒化シリコンや酸窒化シリコンが用いられうる。孔4116を形成し、エッチストップ部4117を露出させるためのエッチングの工程は、1つの条件で連続的にエッチングを行ってもよいし、条件の異なる複数回のエッチングを行ってもよい。孔4116は、必ずしも層間絶縁膜4113a~4113eの全てを貫通しなくてもよい。層間絶縁膜113a~113eが有する凹みが、孔116であってもよい。孔4116の平面形状は、孔4116の境界が円形や四角形などの閉じたループである。また、孔4116の平面形状は、複数の光電変換部4105に渡って延在する溝のような形状であってもよい。つまり、本実施形態において、ある平面において層間絶縁膜113eの配されていない領域が、層間絶縁膜4113eの配された領域に囲まれている、または、挟まれている場合、層間絶縁膜4113が、孔4116を有するといってもよい。本実施形態において、主面4102に対する正射影において、光電変換部4105と重なる位置に孔4116が形成され、周辺領域4104の上には、孔4116が形成されない。しかしながら、周辺領域4104に孔4116が形成されてもよい。この場合、撮像領域4103に形成される孔4116の密度が、周辺領域4104に形成される孔116の密度よりも高くてもよい。孔4116の密度は、単位面積あたりに配される孔4116の数によって決定することができる。また、孔4116の密度は、孔4116の占める面積の割合によっても決めることができる。
【0234】
次に、図24(C)に示すように、複数の孔4116を充填しつつ撮像領域4103及び周辺領域4104の上に配されている構造体4127を覆うように、光導波路を構成する材料を用いた誘電体材料膜4129を形成する。誘電体材料膜4129は、例えば、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法や、スパッタ法などを用いて成膜される。図24(C)は、誘電体材料膜4129の平坦化処理後を示している。誘電体材料膜4129は、図24(C)に示されるように、孔4116を埋め込み光導波路コア部として機能する部分と、孔以外の撮像領域4103及び周辺領域4104の上に配された部分とを有する。以下では、孔4116内の部分であり、光導波路コア部として機能する部分を誘電体部材4118とも称する。誘電体材料膜4129の形成は、1つの条件で連続的に形成してもよいし、条件の異なる複数の工程を用いて形成してもよい。例えば、最初の工程において、下地の層間絶縁膜4113a~4113eとの密着性が高くなる条件を用いて誘電体材料膜4129の一部を形成し、次の工程において、孔4116の埋め込み性が高くなる条件で残りの誘電体材料膜4129を形成してもよい。また、複数の異なる材料を順次形成することによって、誘電体材料膜4129を形成してもよい。図24(B)の工程において、エッチストップ部4117が露出するように層間絶縁膜4113a~4113eがエッチングされた場合、誘電体材料膜4129のうち光導波路として機能する部分は、エッチストップ部4117と接するように配されうる。また、誘電体材料膜4129は、図24(C)に示すように、孔4116を完全に充填していてもよい。また、誘電体材料膜4129は、一部に誘電体材料によって充填されない空間を有していてもよい。
【0235】
誘電体材料膜4129の材料には、層間絶縁膜4113a~4113eの屈折率よりも高い屈折率を有する材料が用いられうる。層間絶縁膜4113a~4113eが酸化シリコンの場合、誘電体材料膜4129の材料は、窒化シリコンであってもよい。屈折率が約1.45の酸化シリコンに対して、窒化シリコンは、約2.00の屈折率を有する。この
ため、スネルの法則に基づいて、誘電体材料膜4129の孔4116に埋め込まれた部分によって構成される光導波路と層間絶縁膜4113a~4113eとの界面において、光が反射する。これによって、光電変換部4105の上に入射した光を、光導波路の内部に閉じ込めることができる。また、誘電体材料膜4129の材料に窒化シリコンを用いた場合、形成する際に窒化シリコンに含まれる水素の量を多くすることが可能であり、この水素によって、基板4101のダングリングボンドを効果的に終端することができる。これによって、白キズなどのノイズを低減することが可能となる。誘電体材料膜4129の材料は、層間絶縁膜4113a~4113eとの屈折率差などの光学特性と、製造工程上の長所との兼ね合いとを考慮し、適宜選択することができる。
【0236】
ここで、層間絶縁膜4113a~4113eと、複数の孔4116に配された光導波路のコア部との位置関係について説明する。ある平面において、光導波路のコア部が配された領域が、層間絶縁膜4113a~4113eの配された領域に囲まれている、または、挟まれている。言い換えると、光電変換部4105と孔4116に配された光導波路コア部とが並ぶ方向と交差する方向に沿って、孔4116に配された光導波路のコア部が並んでいる。光電変換部4105と孔4116に配された光導波路のコア部とが並ぶ方向と交差する方向は、例えば基板4101の主面4102と平行な方向である。
【0237】
主面4102に対する正射影において、基板4101の光電変換部4105と重なる位置に、孔4116に配された光導波路のコア部が配される。本実施形態において、窒化シリコンを用いる光導波路のコア部を構成する誘電体材料膜4129の屈折率は、酸化シリコンを用いる層間絶縁膜4113a~4113eの屈折率よりも高い。このような屈折率の関係によって、光電変換部4105の上の光導波路のコア部に入射した光のうち、層間絶縁膜4113a~4113eに漏れ出す光の量を低減することができる。このため、孔4116に配される光導波路のコア部の少なくとも一部が、主面4102に対する正射影において、光電変換部4105と重なって配されれば、光電変換部4105に入射する光の量を増やすことが可能となる。
【0238】
光導波路を構成する誘電体材料膜4129の屈折率が、必ずしも層間絶縁膜4113a~4113eの屈折率よりも高い必要はない。例えば、光導波路のコア部に入射した光が、周囲の層間絶縁膜4113a~4113eに漏れ出ない構成であれば、光導波路として機能する。例えば、孔4116の側壁に光を反射する金属などの反射部材が配され、孔4116の他の部分に、光導波路のコア部を構成する部材が埋め込まれていてもよい。また例えば、孔4116に配された光導波路のコア部と層間絶縁膜4113a~4113eとの間にエアギャップがあってもよい。エアギャップは、真空であってもよいし、気体が配されていてもよい。これらの場合、光導波路のコア部を構成する部材の材料と、層間絶縁膜4113a~4113eの材料との屈折率は、どのような大小関係になっていてもよい。
【0239】
図24(C)は、図24(B)で示した孔4116に光導波路のコア部を形成するための材料として窒化シリコンを堆積し、誘電体材料膜4129を形成した状態を示す。光導波路のコア部を形成する際に孔4116の深さに応じて、形成される誘電体材料膜4129の膜厚が変化する。例えば、孔4116の深さが深くなると、形成する光導波路のコア部の高さが高くなり、より膜厚の厚い誘電体材料膜4129を形成する必要がある。CVD法やスパッタ法などで成膜される膜は、厚くなるほど応力が高まることが知られている。このため、誘電体材料膜4129の成膜時に製造装置の処理室の内壁に付着した堆積物が、膜厚が厚くなるにしたがって壁部から剥がれ落ちやすくなりうる。誘電体材料膜4129の成膜中に、処理室の内壁から堆積物が剥がれ落ちた場合、剥がれた堆積物が、誘電体材料膜4129の膜中に異物4130として取り込まれてしまう可能性がある。
【0240】
誘電体材料膜4129の成膜時に発生する異物を除去するために、ついで洗浄処理を行う。誘電体材料膜4129の成膜は、複数回に分けて成膜してもよく、各成膜後に洗浄処理を行う。洗浄方法は、液体を用いた洗浄で、たとえばナノスプレーによる2流体洗浄が例としてあげられる
【0241】
次いで、誘電体材料膜4129の上面に生じる段差を解消するために、平坦化処理を行う。図24(C)は、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に、平坦化された平坦面を含む上面を有する誘電体材料膜4129を形成する平坦化工程を示す。この平坦化は、CMP法以外の周知の方法で行ってもよい。例えば、研磨などによって平坦化が行われてもよい。この平坦化工程において、誘電体材料膜4129の上面のうち平坦化された平坦面が、図24(C)に示すように完全に平坦になる必要はない。平坦化を行う前の誘電体材料膜129の上面の段差が、平坦化工程によって低減されればよい。また、誘電体材料膜4129のうち孔4116以外に配された部分、換言すると構造体4127のうち最も上にある層間絶縁膜4113eの上面と接する部分の膜厚が、50nm以上、350nm以下程度の範囲であってもよい。
【0242】
本実施形態において、配線パターン4112bの上に配される層間絶縁膜4113eは、上述のように酸化シリコンによって形成される。しかしながら、層間絶縁膜4113a~4113eのうち孔4116以外の部分で誘電体材料膜4129と接する層間絶縁膜4113eの材料は酸化シリコンに限られるものではない。例えば、層間絶縁膜4113eとして炭化シリコンが用いられ、その上に誘電体部材4118(誘電体材料膜4129)として窒化シリコンが堆積されてもよい。層間絶縁膜4113eの材料は、配線パターン4112bの導電部材と比較して、抵抗率が高く絶縁体として機能する材料であればよい。炭化シリコンは、配線パターン4112bの導電部材よりも抵抗率が高く、絶縁体として機能しうる。
【0243】
次いで、誘電体材料膜4129を覆うように、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に低屈折率膜4119を形成する。低屈折率膜4119は、絶縁膜でありうる。低屈折率膜4119を形成した状態を図24(D)に示す。低屈折率膜4119の屈折率は、低屈折率膜4119よりも基板4101の側に配され、かつ、低屈折率膜4119と接して配された部材の屈折率よりも低い。低屈折率膜4119よりも基板4101側に配され、かつ、低屈折率膜4119と接して配された部材は、低屈折率膜4119が形成される前の時点で、露出している部材である。本実施形態において、誘電体部材4118がこの部材に相当する。このため、本実施形態において、誘電体部材4118の屈折率よりも、低屈折率膜4119の屈折率の方が低い屈折率を有する。本実施形態において、低屈折率膜4119は酸窒化シリコンを用いて形成される。酸窒化シリコンの屈折率は約1.72である。低屈折率膜4119は、必ずしも設けなくてもよい。低屈折率膜4119を設けない場合、図4(D)に示す工程は省略できる。
【0244】
次いで、図24(E)に示すように、誘電体材料膜4129のうち周辺領域4104の上に形成された領域を除去する除去工程を行う。この除去工程において、周辺領域4104の上に配された誘電体材料膜4129のうち、配線パターン4112bの少なくとも一部の上に配された部分を、層間絶縁膜4113eが露出するように除去する。この部分には、後述する工程によって、配線パターン4112bと構造体4127の外部とを電気的に接続するためのコンタクトプラグが配される。図24(E)に示すように、周辺領域4104の上に形成された誘電体材料膜4129を全て除去してもよい。また、図24(E)に示す構成のように、誘電体材料膜4129の上に低屈折率膜4119が配されている場合、誘電体材料膜4129と同様の部分の低屈折率膜4119も除去する。除去の方法は、周知の方法を用いることができる。本実施形態において、エッチングすることによって、誘電体材料膜4129及び低屈折率膜4119のうち周辺領域4104の上に配され
た領域を除去する。また、この除去工程で、撮像領域4103に配された誘電体材料膜4129の一部が除去されてもよい。光導波路のコア部を構成するために成膜された誘電体材料膜4129のうち、少なくとも孔4116に配された部分が残存することによって、光電変換部4105に入射する光の量を増やすことができる。
【0245】
及び低屈折率膜4119の周辺領域4104の上に形成された部分をエッチングによって除去した後、残渣を除去するために剥離処理を行う。その後、図24(F)に示すように、誘電体材料膜4129、低屈折率膜4119及び層間絶縁膜4113eを覆うように層間絶縁膜4120を形成する。層間絶縁膜4120は、撮像領域4103及び周辺領域4104の上に形成される。層間絶縁膜4120は、層間絶縁膜4113eと同じ材料で形成されてもよい。必要に応じて、層間絶縁膜4120の上面は平坦化されうる。
【0246】
層間絶縁膜4120の形成後、図24(F)に示すように、層間絶縁膜4120の配線パターン4112bの所定の部分と重なる位置にスルーホール4121が形成される。スルーホール4121は、例えば、層間絶縁膜4120及び層間絶縁膜113eをエッチングすることによって形成される。
【0247】
次いで、図24(G)に示される工程によって、配線パターン4112c及び層内レンズ4123を形成する。まず、スルーホール4121にコンタクトプラグ4122を形成する。コンタクトプラグ4122は配線パターン4112bの所定の部分と、コンタクトプラグ4122の形成後に構造体4127の外部に配される配線パターン4112cの所定の部分とを電気的に接続する。コンタクトプラグ4122には、例えばタングステンが用いられる。コンタクトプラグ4122を構成する材料は、タングステンに限られることはなく、導電性の材料であればよい。
【0248】
次に、配線パターン4112cを形成する。本実施形態において、配線パターン4112cには、アルミニウムが用いられる。配線パターン4112cを形成する方法は、上述の配線パターン4112a及び4112bを形成する工程で説明した方法が適宜用いられる。配線パターン4112cは、アルミニウムに限られることはなく、導電性の材料であればよい。また、この工程において、複数の層内レンズ4123が形成される。層内レンズ4123のそれぞれは、複数の光電変換部4105のそれぞれに対応して配される。層内レンズ4123は、例えば、窒化シリコンによって形成される。層内レンズ4123を形成する方法は、周知の方法を用いることができる。
【0249】
図24(G)に示される構成では、層内レンズ4123を形成する材料が周辺領域4104にも配される。しかしながら、層内レンズ4123を形成する材料は、撮像領域4103のみに配されてもよい。また、層内レンズ4123と層間絶縁膜4120との間に、両者の中間の屈折率を有する中間膜4128が配されてもよい。本実施形態において、酸窒化シリコンを用いた中間膜4128が、層内レンズ4123と層間絶縁膜4120との間に配さる。層内レンズ4123に用いられるシリコン窒化膜は約2.00、中間膜4128に用いられる酸窒化シリコンは約1.72、層間絶縁膜4120に用いられる酸化シリコンは約1.45の屈折率をそれぞれ有する。このような構成を有することによって、反射率を低減することが可能である。
【0250】
中間膜4128の効果について簡単に説明する。一般に、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質に光が進む場合、n1とn2との差が大きいほど反射率が大きくなる。層内レンズ4123と層間絶縁膜4120との間に、両者の中間の屈折率を有する中間膜4128が配されることによって、界面での屈折率の差が小さくなる。結果として、層内レンズ4123と層間絶縁膜4120とが互いに接して配された場合に比べて、層内レンズ4123から層間絶縁膜4120へ光が入射する場合の反射率を小さくできる。同様に層間絶
縁膜4120と、誘電体部材4118との間に、両者の中間の屈折率を有する低屈折率膜4119が配されることによって、界面での屈折率の差が小さくなる。結果として、層間絶縁膜4120から誘電体部材4118によって構成される光導波路のコア部へ光が入射する場合の反射率を小さくすることができる。
【0251】
中間膜4128が配されたことによる反射率の低減の度合いは、中間膜4128の膜厚d、屈折率N、及び、入射光の波長pの関係によって変化する。これは、複数の界面からの多重反射光が互いに打消しあうからである。理論的には、kが0以上の任意の整数である場合、式(1)の条件の場合、反射率が最も低減される。
【数1】
【0252】
すなわち、中間膜4128の膜厚が、p/4Nの奇数倍の場合、理論的には最も反射率が低減される。したがって、上記の式(1)に基づいて、中間膜4128の膜厚を設定すればよい。特に、中間膜4128の膜厚は以下の式(2)を満足するとよい。さらに、式(2)においてk=0であるとよい。
【数2】
【0253】
例えば、層間絶縁膜4120の屈折率が1.45、中間膜4128の屈折率が1.72、層内レンズ4123の屈折率が2.00、撮像装置4100に入射する光の波長が550nmの場合を考える。この場合、中間膜4128の膜厚を80nmとすると、層内レンズ4123から層間絶縁膜4120へ透過する光の透過率は約1.00である。これに対して、層内レンズ4123と層間絶縁膜4120とが互いに接して配された場合、透過率は約0.97である。
【0254】
層内レンズ4123の形成後、図24(H)に示される工程によって、カラーフィルター4125a、4125b、マイクロレンズ4126が形成される。まず、層内レンズ4123の上に層間絶縁膜4124を形成する。層間絶縁膜4124は、例えば、有機材料によって形成された絶縁膜である。必要に応じて層間絶縁膜4124の上面は平坦化される。例えば、層間絶縁膜4124を構成する有機材料を塗布することによって、上面が平坦化された層間絶縁膜4124を形成することができる。
【0255】
次いで、カラーフィルター4125a、4125bを形成する。カラーフィルター4125a、4125bは、それぞれ光電変換部4105に対応して配される。カラーフィルター4125aを透過する光の波長と、カラーフィルター4125bを透過する光の波長とが、互いに異なってもよい。続いて、カラーフィルター4125a、4125bの上にマイクロレンズ4126を形成する。マイクロレンズ4126を形成する方法は周知の方法を用いることができる。カラーフィルター4125a、4125bやマイクロレンズ4126などの光学部材は、一括露光によって形成されることが望ましい。
【0256】
上述した工程によって、撮像装置が製造される。
【0257】
[露光処理]
上記の製造工程における露光処理について説明する。
【0258】
図25は、撮像装置の構造を簡略して示した図である。上記の説明と同一の部材には同一の符号を付している。基板4101に光電変換部(受光領域)4105が形成されてい
る。光電変換部4105の光入射側には絶縁体層4111が形成されている。絶縁体層4111の中に、配線パターン4201,4202、誘電体部材4118が形成されている。なお、ここでは、基板4101上の絶縁体層と配線層間の層間絶縁膜を区別せずに絶縁体層4111と称している。絶縁体層、配線パターン、導波路を含む構造体上に、マイクロレンズ4126が形成されている。
【0259】
本実施形態において、配線パターン4201は、基板4101の上に配された絶縁体層4111を含むウエハの上に、複数の部分パターンを繋ぎ合わせた複数回の露光(繋ぎ露光、分割露光)処理によって形成される。配線パターン4201は、図25では一層として描いているが、図24等に示すように複数層であってもよい。
【0260】
誘電体部材4118のパターニングは一括露光により形成される。すなわち、導波路用の孔の形成が、一括露光によって行われる。この孔の形成が、配線形成後の絶縁体層の加工に相当する。開口形成後に、孔に誘電体部材を充填(配置)することにより誘電体部材4118が形成される。
【0261】
なお、上述した製造工程における貫通電極用の開口形成も、配線形成後の絶縁体層の加工に相当する。これらのパターニングの一部または全部は一括露光によって行われてもよい。
【0262】
本実施形態では、誘電体部材4118の上層に、配線パターン4202が一括露光により形成されてもよい。配線パターン4202は誘電体部材4118に対応する開口を有する。配線パターン4202も複数層であってもよい。
【0263】
絶縁体層4111の上に、マイクロレンズ4126が一括露光により形成される。マイクロレンズ4126以外の光学部材が絶縁体層4111の上に一括露光により形成されてもよい。
【0264】
このように、本実施形態では、配線層4202とマイクロレンズ4126がともに一括露光により形成されるので、配線層4202のパターンが有する開口とマイクロレンズ4126のアライメントズレを最小限に抑えることができる。したがって、入射光の配線層4202によるケラレの影響を小さくできる。さらに、誘電体部材4118とマイクロレンズ4126がともに一括露光で形成されるので、これらの間のアライメント精度を十分に確保でき、入射光をより効率良く光電変換部4105へ導くことが可能となる。これらの要因により、本実施形態による製造方法によれば撮像装置の感度の向上が期待できる。
【0265】
ここでは、下層の配線層4201を繋ぎ露光で形成し、上層の配線層4202を一括露光で形成する例を示したが、両方を繋ぎ露光で形成してもよい。また、配線層が3層以上である場合も同様である。また、図24で示したように、誘電体部材4118とマイクロレンズ4126の間に配線層が形成されなくてもよい。このような場合でも、誘電体部材4118とマイクロレンズ4126をともに一括露光により形成することで、アライメント精度の向上に伴うセンサ感度向上の効果が得られる。
【0266】
また、誘電体部材4118のパターニングを繋ぎ露光で行ってもよい。この場合、同じく複数回露光によってパターニングされる配線パターン4201とのアライメント精度を十分に確保できる。誘電体部材4118のパターニング時に金属配線と干渉することによって金属配線の断線のリスクが解消され、配線歩留まりの向上が期待できる。誘電体部材4118のパターニングを繋ぎ露光にて行う場合、配線歩留りの向上効果に関しては、誘電体部材4118に必ずしも絶縁体層よりも高い屈折率材料を埋め込む必要はない。
【0267】
<第5実施形態>
本実施形態は、半導体装置の製造プロセス時の異物混入に起因する金属配線の溶解を抑制する製造方法を提供する。
【0268】
本発明者は、撮像装置の光導波路形成のプロセスにおいて、次のような課題があることを見出した。すなわち、成膜中に取り込まれる異物が金属配線を露出させるクラックを生じさせ、後工程で金属配線の溶解が生じて品質不良が発生することを見いだした。より詳細には、次のような現象により品質不要が発生する。
【0269】
光導波路の材料を成膜する際、異物が発生し、材料膜の中に異物として取り込まれる場合がある。この影響で、たとえば、異物を起点とした、層間絶縁膜中に配置された金属配線に到達するようなクラックが生じ、層間絶縁膜中に配置された金属配線パターンが露出する場合がある。この金属配線が露出した状態で、薬液処理、たとえば成膜時に発生する異物を取り除くための洗浄処理やレジスト保剥離処理等を行った場合、発生したクラックから薬液が浸透して金属配線に到達し、金属配線が溶解し、品質不良になる可能性がある。上述した工程を経由した後には、デバイスを保護する膜を形成するため、クラックを含め欠陥は覆われる。したがって、品質不良に対する対応が必要な工程は光導波路形成後、保護膜で欠陥を被覆するまでの工程である。
【0270】
本実施形態は、光導波路を有する撮像装置において金属配線の溶解により発生する不良を抑制する技術を提供する。
【0271】
[概要]
本実施形態における撮像装置(半導体装置)の製造方法は、第4実施形態において図24を参照して説明した製造方法と基本的に同様である。以下、本実施形態において特徴的な工程について説明する。また、図26(A)~図26(D)は本実施形態によって抑制可能な不良を説明する図である。なお、図26(A)~図26(D)においては、基板4101の記載は省略している。
【0272】
撮像装置の製造工程は第4の実施形態で説明したので、ここでは本実施形態に特に関連する工程を簡単に説明する。まず、絶縁体層を加工して孔4116を形成する工程(図24B)、および、孔に誘電体部材4118を充填するための誘電体材料膜4129を成膜する工程(図24C)、誘電体材料膜4129の洗浄工程および平坦化工程(図24D)が、この順で行われる。その後、誘電体材料膜4129の一部を除去する工程、絶縁膜4120を形成する工程、配線層(導電層)が露出するように絶縁膜4120にスルーホール4121を形成する工程(図24F)を含む。
【0273】
上述のように、誘電体部材(誘電体材料膜)の成膜中に生じた異物によって、金属配線が露出するクラックが生じる可能性がある。そこで、本実施形態では、誘電体材料膜の成膜後(誘電体部材の孔への充填後)であって、貫通電極(ビア)用の孔形成のような金属配線が露出するように絶縁膜を加工する工程の前に、防腐剤(防蝕剤)を含有する液体(薬液)でウエハを処理する。例えば、防腐剤入りの薬液を誘電体部材に塗布したり、防腐剤入りの薬液でウエハを洗浄したり、防腐剤入りのスラリーを用いてウエハにCMP処理を行う。より詳細には、本実施形態では、導波路用の孔4116に誘電体部材4118を充填する工程の後に誘電体部材4118に対して配線の防腐剤を含む薬液を塗布する。誘電体部材4118に対して配線の防腐剤を含む薬液を塗布するのは、コンタクトプラグ4122用のスルーホール4121を形成して配線パターン4112を露出させる工程の前である。更に別の表現をすれば、本実施形態は、金属配線の露出を意図しないが、異物混入に伴うクラックによって金属配線が露出する可能性がある工程の後であり、金属配線の露出を意図する工程の前に、誘電体部材に対して防腐剤を含む薬液を塗布する工程を含む
【0274】
本実施形態によれば、このような塗布工程を含むことにより、金属配線を露出するようなクラックが生じていても、その後の工程における金属配線の溶解を抑制できる。この目的のために、本実施形態の防腐剤入りの薬液の塗布工程は、クラックが生じている可能性のある誘電体材料に対する、金属配線を溶解させる成分を含む薬液処理の前に行われる。
【0275】
本実施形態において用いる防腐剤は、気化性防腐剤を所定の濃度に調整した混合液である。気化性防腐剤の種類には、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、モノエタノールアミンベンゾエートなどがあげられる。調整は、水を溶媒として用い、濃度は0.01wt%~2.0wt%の範囲で用いることができる。
【0276】
[実施例5-1]
本実施例に係る撮像装置(半導体装置)の製造方法について、第4実施形態における図24を参照して説明した参考例に係る製造方法との相違点について主に説明する。
【0277】
本実施例では、図24(C)に示す誘電体材料膜4129の成膜後(孔への充填処理後)、誘電体材料膜4129の成膜中の異物を除去するための洗浄工程の前に、誘電体材料膜4129への防腐剤入りの薬液塗布を行う。誘電体材料膜4129の成膜を複数回に分けて行い、その都度洗浄処理を行う場合、すべての洗浄処理の前に行う。本実施例では、例えば、薬液として、水溶媒によって濃度0.05wt%に調整したベンゾトリアゾールを用いる。
【0278】
前述したように、誘電体材料膜4129の成膜中に異物が取り込まれた場合、その取り込まれた異物の影響で応力が変化し、異物を起点としたクラックが形成されることがある。そして、場合によってはクラックが下層の配線に到達して、配線が露出してしまう可能性がある。図26(A)は、異物4130を含む誘電体材料膜4129を示す。異物4130を起点としてクラック4131が発生している。クラック4131によって配線パターン4112dが露出した場合、前述した洗浄処理時に、クラック4131から洗浄薬液が浸透し配線パターン4112dに到達する。そうすると、配線パターン4112dの溶解が発生し、導通不良や電流密度の増加が起きる可能性がある。図26(B)は、洗浄処理によって配線パターン4112dの一部が消失した状態を示す。点線領域4150が、この洗浄処理によって消失した配線パターン4112dを示す。
【0279】
本実施例においては、クラックが発生した場合、クラックを介して配線の露出が発生する可能性があるが、その後に配線の防腐剤を塗布することで、露出した配線表面が保護される。したがって、洗浄処理においてクラックから洗浄薬液が浸透して配線まで到達した場合でも、配線の溶解を抑制することができる。
【0280】
[実施例5-2]
本実施例では、図24(C)に示す誘電体材料膜4129の成膜処理および洗浄処理の後であって、誘電体材料膜4129の平坦化工程の前に、誘電体材料膜4129への防腐剤入りの薬液塗布を行う。使用する薬液は実施例5-1と同じである。
【0281】
前述したように、誘電体材料膜4129の成膜中の異物が誘電体材料膜4129の膜中に取り残される場合がある。この異物が、成膜後の洗浄工程において抜け落ちる際に、図26(B)に示すように導波路側壁を破壊し、下層の金属配線が露出してしまう可能性がある。図26(C)には、異物4130が抜け落ちる際に生じる空隙4133が示される。空隙4133は、異物4130が抜け落ちる際に導波路側壁を破壊した際に生じる破壊痕とも捉えられる。
【0282】
金属配線が露出した状態で、平坦化処理(たとえばCMP処理)を行った場合、その際に使用する薬液が露出した金属配線に到達し、金属配線の溶解が発生し、導通不良が起きる可能性がある。図26(C)は、平坦化処理によって金属の配線パターン4112dの一部が消失した状態を示す。点線領域4151が、この平坦化処理により消失した配線パターン4112dを示す。
【0283】
本実施例においては、異物の抜け落ちにより金属配線の露出が発生する可能性があるが、その後に金属配線の防腐剤を塗布することで、露出した金属配線表面が保護される。したがって、平坦化処理において薬液が浸透して配線まで到達した場合でも、金属配線の溶解を抑制することができる。
【0284】
[実施例5-3]
本実施例では、図24(E)に示す、誘電体部材4118のうち周辺領域4104の上に形成された領域を除去する除去処理の後、残渣を除去するための剥離処理の前に、誘電体材料膜4129への防腐剤入りの薬液塗布を行う。使用する薬液は実施例5-1と同じである。
【0285】
前述したように、誘電体材料膜4129の成膜中の異物が誘電体材料膜4129の膜中に取り残される場合がある。異物が取り残された状態で平坦化処理を行うと、異物が抜け落ち、平坦化後に凹状の欠陥が生じる。図26(C)に示すように、周辺領域4104の誘電体材料膜4129に生じる凹状欠陥4134が示される。
【0286】
その後、誘電体材料膜4129の上に低屈折率膜4119を成膜し、周辺領域4104の上に形成された誘電体部材4118および低屈折率膜4119の除去が行われる。具体的には、ウエハ上の周辺領域4104以外の領域にレジストパターンを配置した後、エッチングにより誘電体部材4118および低屈折率膜4119を除去する。凹状欠陥4134によって誘電体材料膜4129の膜厚が実効的に薄くなる。したがって、この部分において、誘電体材料膜4129および低屈折率膜4119だけではなく、その下の層間絶縁膜4113e、拡散防止膜4115までエッチングが進行し、下層の配線パターンが露出してしまう可能性がある。その後、レジストパターンの剥離(除去)処理の際の薬液により、配線パターンの溶解が発生し、導通不良が起きる可能性がある。図26(D)は、洗浄処理によって金属(例えば銅)の配線パターン4112dの一部が消失した状態を示す。点線領域4152が、この洗浄処理により消失した配線パターン4112dを示す。
【0287】
本実施例においては、エッチングの進行により配線パターン(導電層)の露出が発生する可能性があるが、その後に金属配線に防腐剤を塗布することで、露出した金属配線表面が保護される。したがって、その後の剥離処理において、露出した金属配線表面に対して洗浄薬液が接触した場合でも、金属配線の溶解を抑制することができる。
【0288】
[効果]
上記実施例ごとの、配線の溶解欠陥個数をまとめたものを表1に記載する。金属配線の溶解欠陥個数は、KLAテンコール社製の明視野欠陥検査装置(KLA2367)で検出した欠陥画像の中で、金属配線が溶解した欠陥を抽出して算出している。また、金属配線の溶解欠陥は、撮像領域4103で発生したもの、周辺領域4104で発生したもので、それぞれ別々に算出している。なお、参考例は、防腐剤塗布工程を有しない製造方法である。
【表1】
【0289】
明視野欠陥検査装置の測定は、ピクセルサイズ0.62μmとして、欠陥面積が1平方μm以上の比較的大きなサイズの欠陥のみ抽出するような測定条件において行った。表1により、実施例5-1,5-2の手法は撮像領域4103において金属配線の溶解欠陥抑制に効果的であり、実施例5-3は周辺領域4104において金属配線の溶解欠陥抑制に効果的であることが分かる。
【0290】
上述の実施例5-1,5-2,5-3は適宜組み合わせて実施してもよい。また、本実施形態は、第4実施形態の製造方法(図24(A)-図24(H))とは異なる製造方法においても適用可能である。本実施形態とその他の実施形態と組み合わせて実施してもよい。なお、第4、5実施形態では、撮像装置を例にして孔に誘電体材料を埋め込んで、孔の中に誘電体部材を配置する形態を説明したが、孔に導電体材料を埋め込んで、孔の中に導電体部材を配置してもよい。特開2015-2193号公報には、孔に誘電体材料を埋め込む形態と、導電体材料を埋め込む形態の両方が開示されているので、これを参考にすることができる。
【0291】
<第6実施形態>
本実施形態は、半導体製造装置の製造方法に関し、特に、フォトリソグラフィー工程における露光方法及びレチクルに関する。
【0292】
半導体装置の製造工程には、ウエハ表面上にレジストをスピンコート等により塗布し、露光装置を用いて所望のパターンをレジストに転写するフォトリソグラフィー工程が含まれる。このフォトリソグラフィーに関する技術として、対象となる領域を複数に分割し、各領域に対応するパターンのレチクルを用いて露光する「繋ぎ露光」が用いられる。
【0293】
このような繋ぎ露光では、露光ショットを繋ぎ合わせる領域(繋ぎ合わせ領域)をチップ間のスクライブ領域とすることが一般的である。しかしながら、スクライブ領域を重ね合わせて繋ぎ露光することから、スクライブ領域へのアクセサリの配置に制限があるという課題がある。また、繋ぎ露光実施時にレチクル枚数と露光ショット数が増大するため、露光装置のスループットが低下するという課題がある。
【0294】
[概要]
本実施形態は、ウエハから複数のチップを製造する半導体装置の製造方法に関する。本実施形態に係る製造方法は、ウエハの上にフォトレジストを露光する露光工程と、フォトレジストを現像する現像工程を含む。露光工程の少なくとも一部では、繋ぎ露光が用いられる。
【0295】
本実施形態では、繋ぎ露光で用いるレチクルパターンの少なくとも1つは、隣接する2つのチップの部分パターンと、チップ境界のスクライブ領域パターンとを含むパターンを有する。本実施形態では、このパターンを用いて2つのチップに対して同時に露光する。すなわち、第1チップの第1の部分パターンと、第2チップの第2の部分パターンと、両
チップの間のスクライブ領域パターンとが、1回の露光ショット(第1の露光ショット)によってフォトレジスト上に露光される。別の表現をすると、本実施形態では、少なくともいずれかの方向に平行なチップ境界(スクライブ領域)の少なくとも一部は、繋ぎ露光ではなく1回の露光によって形成される。また、チップの他の領域には、少なくとも1回の別の露光ショット(第2の露光ショット)によって第3の部分パターンがフォトレジスト上に露光される。
【0296】
このようなレチクルパターンを用いてフォトレジスト上にパターンを露光する個ことで、レチクル枚数と露光ショット数の抑制が可能であり、露光装置のスループット向上が図れる。また、スクライブ領域へのアクセサリ配置の自由度が向上するという効果も得られる。
【0297】
[実施例6-1]
図27(A)に、本実施例において露光が行われるウエハおよびウエハ中央部の拡大図を示す。ウエハ6007はシリコン等のウエハであり、ウエハ6007に複数のチップ6008が含まれる。各チップの最外周であるチップ境界6004を含む領域がスクライブ領域6002であり、ウエハを個々のチップにダイシングする際にブレードが当てられる。スクライブ領域6002の内側が有効領域6005にあたり、この部分に半導体装置を構成する素子、配線層等が作り込まれる。繋ぎ領域6003は、隣接するショットが重複して露光される領域である。ショットの重複は、ショット端部においてアライメントずれ等に起因して露光出来ない領域が生じないようにするために行われる。アクセサリ6006は、露光時の重ね合せ基準となるアライメントマークや、製造された半導体装置の出来栄えを工程管理するためのアライメントや線幅等の計測マークが該当する。ショット6001は、露光装置の1回の露光によって露光される領域である。ショット6001の内部にはスクライブ領域6002が配置されており、ショット端はチップの有効領域6005内にある。
【0298】
図27(B)は参考例の露光方法で用いられるレチクルパターンの一例を示し、図27(C)は本実施例の露光方法で用いられるレチクルパターンの一例を示す。図27(B)および図27(C)において、上段には露光工程と現像工程を経てウエハ6007上に形成されるレジストパターンのレイアウトを示し、下段にはこのウエハ6007上のパターンを形成するために作成されたレチクルのレイアウトを示している。
【0299】
図27(B)に示す参考例の露光方法では、1つのレチクルパターン6101が用いられる。レチクルパターン6101は、1つのチップの有効領域6005全体の回路パターンと、その周囲のスクライブ領域6002のパターンを含む。1つのチップの有効領域6005の回路パターンは1回のショットにより露光され、ショットはチップ境界のスクライブ領域6002で重ね合わされる。
【0300】
図27(C)に示す本実施例の露光方法においても、1つのレチクルパターン6102が用いられる。参考例と異なる点は、レチクルパターン6102が、左側チップの右側領域6005Rに対応する部分パターン6102Rと、右側チップの左側領域6005Lに対応する部分パターン6102Lと、その間のスクライブ領域6002を含む点である。すなわち、レチクルパターン6102は、左側チップ(第1チップ)の右側領域(第1領域)に含まれる部分パターン(第1の部分パターン)と、右側チップ(第2チップ)の左側領域(第2領域)に含まれる部分パターン(第2の部分パターン)を含む。レチクルパターン6102は、また、チップ境界のスクライブ領域パターンを含む。
【0301】
本実施例では、1回の露光ショット(第1の露光ショット)にて、スクライブ領域6002を挟んで2つのチップの部分領域のフォトレジストに部分パターンが同時に露光され
る。すなわち、第1の露光ショットにより、第1チップの右側領域の部分パターン(第1の部分パターン)と、第2チップの左側領域の部分パターン(第2の部分パターン)と、その間のスクライブ領域パターンとが、フォトレジスト上に同時に露光される。第1の露光ショットの後、同じレチクルを用いて更に第2の露光ショットが行われる。ここでは、第2チップの右側領域に含まれる部分パターン(第3の部分パターン)、第3チップ(第2チップの更に右側のチップ)の左側領域に含まれる部分パターン(第4の部分パターン)、および両チップ間のスクライブ領域パターンが同時に露光される。このように、本実施例では、レチクルパターン6102を繋ぎ合わせた露光により、1つのチップに対するパターンが形成される。具体的には、繋ぎ合わせは有効領域6005の中央で行われ、1つのチップの有効領域6005全体の露光は2ショットで行われる。また、本実施例では、X方向に平行なスクライブ領域のパターンは繋ぎ露光により形成されるが、Y方向に平行なスクライブ領域(チップの4隅部分を除く)のパターンは繋ぎ露光ではなく1回の露光によって形成される。
【0302】
レチクルパターン内のアクセサリ6006は、半導体装置本体としての性能に寄与しないことから、有効領域外であるスクライブ領域6002に配置されることが一般的である。その際、参考例においては重複して露光されるレチクルパターンのうち片方にアクセサリが配置されていた場合、隣接するレチクルパターンの対応位置にアクセサリを配置できず、配置に制限が生じることとなる。対して本実施例においては配置に制限がなく、例えば大面積のパターンや、形状が複雑なパターンについて、制限が少なくアクセサリを配置することが可能となる。アクセサリそのものの形状の自由度も向上するため、より最適化されたアクセサリパターンを配置及び使用することが可能であり、半導体装置の製造に際して、適切にアライメントや計測等の工程管理を行うことが出来る。
【0303】
[実施例6-2]
実施例6-1では、チップ境界部をパターン内部に含むショットのみの露光としていたが、本実施形態はこれに限られるものではない。図28(A)に、チップ境界部をパターン内部に配置しない露光ショットを加えた方法を示す。図中横方向において、実施例6-1同様、ショット6001の内部にはスクライブ領域6002が配置され、ショット端はチップの有効領域6005内にある。これに対し、チップ境界部をパターン内部に配置しないショット6010ではスクライブ領域はショット端部(上下端)に配置されているのみで、ショット内には配置されない。
【0304】
図28(B)は参考例の露光方法におけるレチクルパターンの一例を示す。参考例では、チップの左端領域に対応するレチクルパターン6201L、チップの中央領域に対応するレチクルパターン6201C、チップの右端領域に対応するレチクルパターン6201Rからなる3つのパターンを有するレチクルが用いられる。両端に対するレチクルパターン6201L,6201Rにはスクライブ領域のパターンも含まれる。参考例では、これら3つのパターンを用いて、3回の露光により1つのチップのパターンが形成される。
【0305】
図28(B)は本実施例の露光方法におけるレチクルパターンの一例を示す。本実施例では、の右端領域と左側領域とスクライブ領域に対応するパターン6202RLと、チップの中央領域に対応するパターン6202Cからなる2つのレチクルパターンを有するレチクルが用いられる。パターン6202RLにはY方向に平行なスクライブ領域のパターンが含まれるが、パターン6202CにはY方向に平行なスクライブ領域のパターンは含まれない。
【0306】
本実施例では、パターン6202RLを用いた1回の露光ショット(第1の露光ショット)により、チップ境界を挟んで2つのチップの右端領域と左端領域のフォトレジストに部分パターンが同時に露光される。すなわち、第1の露光ショットにより、第1の露光シ
ョットにより、左側チップの右端領域の部分パターン(第1の部分パターン)と、右側チップの左端領域の部分パターン(第2の部分パターン)とが、フォトレジスト上に同時に露光される。また、その間のスクライブ領域パターンも第1の露光ショットにより同時に露光される。
【0307】
パターン6202RLを用いた第1の露光ショットの後に、異なるパターン6202Cを用いた別の露光ショット(第3の露光ショット)が行われる。第3の露光ショットでは、右側チップ(第2チップ)の中央領域に含まれる部分パターン(第5の部分パターン)がレジスト上に露光される。
【0308】
その後、第1の露光ショットと同じパターン6202RLを用いた露光ショット(第2の露光ショット)が行われる。ここでは、右側チップの右端領域に含まれる部分パターン(第3の部分パターン)と、更に右側のチップ(第3チップ)の左端領域に含まれる部分パターン(第4の部分パターン)、および両チップ間のスクライブ領域パターンが同時に露光される。
【0309】
このように、パターン6202RLを用いた露光ショットと、パターン6202Cを用いた露光ショットを繋ぎ合わせることで、ウエハ内の各チップに対するパターンの形成が行われる。
【0310】
参考例によれば1チップ当たりに3回の露光ショットが必要であるのに対し、本実施例では、平均して1チップ当たりに2回の露光ショットでよく、合計ショット数を削減させることができる。また、露光中の装置内におけるレチクル入れ替え時間が低減されることから露光装置のスループットを向上させることが出来る。
【0311】
本実施形態では、パターン6202Cを用いた第3の露光ショットは1つのチップに対して1回のみ行うものとして説明したが、部分パターンが繋ぎ合うように第3の露光ショットを複数回行ってもよい。
【0312】
[実施例6-3]
図29は、本実施例における露光パターンを説明する図である。ウエハ6007上のチップ6008は、複数のショット6301,6302,6303,6304によって露光されてパターン形成される。ショット6301および6302はチップ6008の上側Uを露光し、ショット6303および6304はチップ6008の下側Lを露光する。実施例6-2と同様に、ショット6301および6303の内部にはスクライブ領域6002が配置され、左右に隣接するチップの左端Lと右端Rを同時に露光する。また、ショット6302および6304は、チップ境界部をパターン内部(パターン周縁部以外)に含まない。ショット6302および6304のスクライブ領域はショット端部(露光ショットで形成されるパターン6102の上端および露光ショットで形成されるパターン6202の下端)に配置されているのみで、ショット内には配置されない。
【0313】
チップの上側Uは、レチクル6310を用いて露光される。レチクル6310は、ショット6301に対応するレチクルパターン6311と、ショット6302に対応するレチクルパターン6312を有する。パターン6311は、チップ右端領域の回路パターン6311R、チップ左端領域の回路パターン6311L、およびこれらの間のスクライブ領域のパターンが含まれる。レチクルパターン6311の内部にはY方向に平行なスクライブ領域のパターンが含まれるが、レチクルパターン6312にはY方向に平行なスクライブ領域のパターンは含まれない。
【0314】
同様に、チップの下側Lは、レチクル6320を用いて露光される。レチクル6320
は、ショット6303に対応するレチクルパターン6321と、ショット6304に対応するレチクルパターン6322を有する。パターン6321は、チップ右端領域の回路パターン6321R、チップ左端領域の回路パターン6321L、およびこれらの間のスクライブ領域のパターンが含まれる。レチクルパターン6321の内部にはY方向に平行なスクライブ領域のパターンが含まれるが、レチクルパターン6322にはY方向に平行なスクライブ領域のパターンは含まれない。
【0315】
なお、本実施形態においては、Y方向に平行なスクライブ領域のパターンは、露光ショット6301と6303が重ね合わされる部分では繋ぎ露光(複数回の露光)によって形成されるが、その他の部分では1回の露光によって形成される。
【0316】
チップの上側Uに着目すると、露光工程は、以下の3つの露光ショットを含む。第1の露光ショットは、レチクル6310のパターン6311を用いた、第1チップと第2チップの同時の露光である。第2の露光ショットは同じパターン6311を用いた、第2チップと第3チップの同時の露光である。第3の露光ショットは、レチクルパターン6312を用いた、第2チップの中央領域に含まれる部分パターン(第5の部分パターン)の露光である。第3の露光ショットは複数回、図29の例では4回行われる。
【0317】
チップの下側Lについても同様に、露光工程は3つの露光ショットを含む。すなわち、レチクル5320のパターン6321を用いた第1チップと第2チップの露光ショットと、同じパターン6321を用いた第2チップと第3チップの露光ショットと、パターン6322を用いた第2チップの露光ショットである。これらの露光ショット(第4の露光ショット)において第2チップに露光される部分パターン(第6の部分パターン)は、チップ上側Uの部分パターンとY方向に並ぶ。例えば、レチクルパターン6321の回路パターン6321Lによって露光されるパターンは、レチクルパターン6311の回路パターン6311Lによって露光されるパターン(第2の部分パターン)とY方向に並ぶ。また、レチクルパターン6321の回路パターン6321Rによって露光されるパターンは、レチクルパターン6311の回路パターン6311Rによって露光されるパターン(第3の部分パターン)とY方向に並ぶ。また、レチクルパターン6322によって露光されるパターンは、レチクルパターン6312によって露光されるパターン(第5の部分パターン)とY方向に並ぶ。
【0318】
本実施例においても、合計ショット数の削減、およびレチクル入れ替え時間の低減に伴う露光装置のスループット向上の効果が得られる。
【0319】
[その他の実施例]
以上、3つの実施例を説明したが、レチクルパターンの配置はこれらに限定されるものではない。上記の実施例ではいずれも図中の横方向についてのみ、チップ領域境界がパターン内部に配置されている。しかしながら、縦横の両方向について、チップ領域境界がパターン内部に配置されてもよい。
【0320】
チップ形状についても、上記の方法にて露光を実施するのであれば矩形に限定されるものではなく、例えば平行四辺形状であっても問題はない。また、実施例6-2,6-3において、チップ境界部をパターン内部に配置しないショットCは唯一、かつ一括で露光するとは限定されず、複数のパターンを露光する形でも問題はない。
【0321】
<その他の実施形態>
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好
ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【0322】
上述した実施形態を適用可能な半導体装置は、光電変換装置や撮像装置に限らない。例えば、上述した実施形態を適用可能な半導体装置は、有機EL素子や液晶素子を有する表示装置、DRAMセルやフラッシュメモリセルを有する記憶装置、CPUやGPUなどの処理装置(演算装置)、ASICなどの制御装置である。また、上述した実施形態の半導体装置を適用可能な機器は、カメラ等の撮影機器に限らない。たとえば、半導体装置を適用可能な機器は、テレビ等の表示機器、モバイル端末等の電子機器、内視鏡やCTなどの医療機器、プリンタやスキャナ、複写機などの事務機器、ロボットや製造装置、検査装置等の産業機器、車両や船舶、飛行機などの輸送機器である。半導体装置を備えた機器は、半導体装置の他に、半導体装置に接続された周辺装置を含みうる。周辺装置は、光電変換装置や撮像装置、表示装置、記憶装置、処理装置(演算装置)、制御装置など様々である。
【0323】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0324】
1005a,1005b:部分パターン
1006a,1006b:露光ショット
1040a,1041a,1042a,1040b,1041b,1043b:検査マーク
1120:重ね合わせ検査装置、1330:CCDカメラ、1331:コンピュータ
図1
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