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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】像加熱装置、画像形成装置及びヒータ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240722BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/20 510
H05B3/00 310E
H05B3/00 335
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020025444
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131420
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】植川 英治
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227866(JP,A)
【文献】特開2020-016843(JP,A)
【文献】特開2019-120808(JP,A)
【文献】特開2017-227872(JP,A)
【文献】特開2018-084841(JP,A)
【文献】特開2019-168721(JP,A)
【文献】特開2000-250337(JP,A)
【文献】特開2016-206296(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0257769(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 1/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフィルムと、
基板と、前記基板上に前記基板の長手方向に沿って設けられる第1導電体と、前記基板上の前記第1導電体とは前記長手方向と直交する方向において異なる位置に前記長手方向に沿って設けられる第2導電体と、それぞれ同一形状を有し前記基板上の前記第1導電体と前記第2導電体との間に電気的に並列接続される複数の発熱抵抗体と、を有し、前記フィルムの内部空間に配置されているヒータと、
前記フィルムの外面に接触しており、前記フィルムを介して前記ヒータと共に記録材を搬送するニップ部を前記フィルムとの間に形成する加圧回転体と、
前記ヒータの温度を検知するための複数の温度検知素子と、
前記温度検知素子が検知する温度に基づいて前記発熱抵抗体に供給する電力を制御する制御部と、
を備え、
前記ヒータの熱を利用して記録材に形成された画像を前記ニップ部で加熱する像加熱装置において、
前記複数の温度検知素子は、前記複数の発熱抵抗体のうち最も近接する発熱抵抗体に対する相対位置がそれぞれ同一となる少なくとも2つの温度検知素子を含み、
前記基板の面に垂直な方向に見た平面視形状における、前記少なくとも2つの温度検知素子の重心は、前記発熱抵抗体の重心よりも、前記加圧回転体の回転方向における下流側に位置することを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記第1導電体と、前記第2導電体と、前記複数の発熱抵抗体と、からなる発熱ブロックを、前記長手方向に複数連ねて有し、
前記複数の温度検知素子のうちの一つが、複数の前記発熱ブロックのうちの一つに対応して配置されることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記複数の温度検知素子は、少なくとも、前記長手方向において最も端に配置される温度検知素子を除いて、同一の前記相対位置で配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記複数の温度検知素子は、前記基板において前記第1導電体、前記第2導電体及び前記発熱抵抗体が設けられる面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記複数の温度検知素子は、前記ヒータの外部に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が請求項1~5のいずれか1項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を利用した複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載する定着器、あるいは記録材上の定着済みトナー画像を再度加熱することによりトナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置、などの像加熱装置に関する。また、この像加熱装置に用いられるヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
像加熱装置として、エンドレスベルトやエンドレスフィルム等と称される筒状のフィルムと、該フィルムの内面に接触するヒータと、フィルムを介してヒータとともにニップ部を形成するローラと、を有する装置がある。この像加熱装置を搭載する画像形成装置において、通紙方向(記録材の搬送方向)に直交する方向における最大通紙可能幅より狭い紙サイズを連続プリントする場合がある。この場合において、ニップ部長手方向において紙(記録材)が通過しない領域(以下、非通紙部)の温度が徐々に上昇するという現象(非通紙部昇温)が発生する。像加熱装置としては、非通紙部の温度が装置内の各部材の耐熱温度を超えないようにする必要がある。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、特許文献1に記載のヒータ、および像加熱装置が提案されている。すなわち、図11のようにヒータ基板上に2本の導電体を長手方向に沿って配置し、その導電体間に複数の発熱抵抗体素子(以下、発熱抵抗体)を並列に配置することで、ヒータの短手方向(記録材の搬送方向に平行な方向)に電流が流れるようにする。さらに、導電体と発熱抵抗体の組からなる発熱ブロックを、ヒータの長手方向の記録材サイズに対応する位置で分割し、通紙する記録材のサイズに応じて各発熱ブロックへの通電量を制御する。各発熱ブロックへの通電量を制御するために、各発熱ブロックは、それぞれの発熱ブロックの温度を検知する温度検知素子としての制御サーミスタを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-59508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11で示す発熱ブロック内では、発熱抵抗体が発熱し、発熱抵抗体以外の場所は発熱しないため、発熱ブロック内に温度分布を有する。
【0006】
図12を用い、発熱抵抗体に対する制御サーミスタ(温度検知素子)の相対位置関係の参考例を説明する。図12(a)はヒータの裏面、図12(b)はヒータの表面の模式図であり、各発熱ブロックとそれらに対応した各制御サーミスタの位置関係を示したものである。また、図中のLはヒータの短手方向の中心線である。図12(c)は全発熱ブロックが発熱しているときの、各発熱ブロックにおけるL上の温度分布を模式的に示したものである。
【0007】
図12に示すように、発熱ブロックA1では、制御サーミスタTH1が、発熱抵抗体に対応する位置に配置(基板の面に垂直な方向に見た平面視形状におけるそれぞれの重心位置が重なるように配置)されており、発熱ブロックA1内の温度分布の高いところ(最大値が検知される位置)に位置する。また、発熱ブロックA2では、制御サーミスタTH2が、発熱抵抗体のない位置に配置(基板の面に垂直な方向に見て発熱抵抗体と重ならない
位置に配置)されており、発熱ブロックA2内の温度分布の低いところ(最小値が検知される位置)に位置する。発熱ブロックA3では、制御サーミスタTH3が、基板の面に垂直な方向に見て発熱抵抗体と一部重なる位置(平面視形状の略半分の面積が発熱抵抗体と重なる位置)に配置されており、発熱ブロックA3内の温度分布のほぼ中心(最大値と最小値との間の中間値が検知される位置)に位置する。
【0008】
上記のように、発熱ブロックによって、制御サーミスタと発熱抵抗体の位置関係が異なる場合、同一の温度で温調制御をおこなうと、図12(c)のように、発熱ブロック間で平均温度に差が生じ、定着性やグロスの長手むらを引き起こす可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、精度の高い温調制御を可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の像加熱装置は、
筒状のフィルムと、
基板と、前記基板上に前記基板の長手方向に沿って設けられる第1導電体と、前記基板上の前記第1導電体とは前記長手方向と直交する方向において異なる位置に前記長手方向に沿って設けられる第2導電体と、それぞれ同一形状を有し前記基板上の前記第1導電体と前記第2導電体との間に電気的に並列接続される複数の発熱抵抗体と、を有し、前記フィルムの内部空間に配置されているヒータと、
前記フィルムの外面に接触しており、前記フィルムを介して前記ヒータと共に記録材を搬送するニップ部を前記フィルムとの間に形成する加圧回転体と、
前記ヒータの温度を検知するための複数の温度検知素子と、
前記温度検知素子が検知する温度に基づいて前記発熱抵抗体に供給する電力を制御する制御部と、
を備え、
前記ヒータの熱を利用して記録材に形成された画像を前記ニップ部で加熱する像加熱装置において、
前記複数の温度検知素子は、前記複数の発熱抵抗体のうち最も近接する発熱抵抗体に対する相対位置がそれぞれ同一となる少なくとも2つの温度検知素子を含み、
前記基板の面に垂直な方向に見た平面視形状における、前記少なくとも2つの温度検知素子の重心は、前記発熱抵抗体の重心よりも、前記加圧回転体の回転方向における下流側に位置することを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が本発明の像加熱装置であることを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精度の高い温調制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の断面図
図2】実施例1における像加熱装置の断面図
図3】実施例1におけるヒータ構成図
図4】実施例1におけるヒータ制御回路図
図5】実施例1におけるサーミスタと発熱抵抗体の位置関係図
図6】比較例におけるサーミスタと発熱抵抗体の位置関係図
図7】サーミスタ近傍の温度分布図
図8】各発熱ブロックの平均温度の分布図
図9】実施例1の他形態におけるサーミスタと発熱抵抗体の位置関係図
図10】画像形成装置の断面図
図11】参考例におけるヒータ構成図
図12】参考例におけるヒータの温度分布図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0014】
以下、本発明の実施例1に係るヒータ、像加熱装置及び画像形成装置について、図面を用いて更に詳しく説明する。なお、本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式や静電記録方式を利用したプリンタ、複写機などが挙げられ、ここではレーザプリンタに適用した場合について説明する。
【0015】
(実施例1)
1.画像形成装置の構成
図1は、本発明の実施例1に係る画像形成装置の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用して画像を形成するレーザプリンタである。
【0016】
プリント信号が発生すると、画像情報に応じて変調されたレーザ光をスキャナユニット21が出射し、帯電ローラ16によって所定の極性に帯電された感光ドラム19表面を走査する。これにより感光ドラム19には静電潜像が形成される。この静電潜像に対して現像ローラ17からトナーが供給されることで、感光ドラム19上の静電潜像は、トナー画像(トナー像)として現像される。一方、給紙カセット11に積載された記録材(記録紙)Pはピックアップローラ12によって一枚ずつ給紙され、搬送ローラ対13によってレジストローラ対14に向けて搬送される。さらに、記録材Pは、感光ドラム19上のトナー画像が感光ドラム19と転写ローラ20で形成される転写位置に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ対14から転写位置へ搬送される。記録材Pが転写位置を通過する過程で感光ドラム19上のトナー画像は記録材Pに転写される。その後、記録材Pは定着部(像加熱部)としての定着装置200においてヒータの熱を利用して加熱され、トナー画像が記録材Pに加熱定着される。定着済みのトナー画像を担持する記録材Pは、搬送ローラ対26、27によって画像形成装置100上部のトレイに排出される。
【0017】
なお、ドラムクリーナ18は感光ドラム19に残存するトナーを清掃する。記録材Pのサイズに応じて幅調整可能な一対の記録材規制板を有する給紙トレイ28(手差しトレイ)は、定形サイズ以外のサイズの記録材Pにも対応するために設けられている。ピックアップローラ29は、給紙トレイ28から記録材Pを給紙する。画像形成装置本体100は、定着装置200等を駆動するモータ30を有する。商用の交流電源401に接続されたヒータ駆動手段、通電制御部としての制御回路400は、定着装置200へ電力供給を行
う。
【0018】
上述した、感光ドラム19、帯電ローラ16、スキャナユニット21、現像ローラ17、転写ローラ20が、記録材Pに未定着画像を形成する画像形成部を構成している。また、本実施例では、帯電ローラ16、現像ローラ17を含む現像ユニット、感光ドラム19、ドラムクリーナ18を含むクリーニングユニットが、プロセスカートリッジ15として画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能に構成されている。
【0019】
本実施例の画像形成装置100は、記録材Pの搬送方向と直交する方向における最大通紙幅が215.9mm、最小通紙幅は76.2mmである。給紙カセット11には、Letter紙(215.9mm×279.4mm)、Legal紙(215.9mm×355.6mm)、A4紙(210mm×297mm)、16K紙(195mm×270mm)、Executive紙(184.2mm×266.7mm)、JIS B5紙(182mm×257mm)、A5紙(148mm×210mm)等をセットできる。
【0020】
また、給紙トレイ28から、インデックスカード3インチ×5インチ(76.2mm×127mm)、DL封筒(110mm×220mm)、C5封筒(162mm×229mm)を含む、不定形紙を給紙し、プリントできる。また、本実施例の画像形成装置における記録材Pの通紙基準は中央基準であり、各記録材Pはその搬送方向に直交する方向における中心線がそろった状態で通紙される。
【0021】
2.定着装置(定着部)の構成
図2は、本実施例の像加熱装置としての定着装置200の模式的断面図である。定着装置200は、加熱回転体(加熱部材)としての定着フィルム202と、熱源として定着フィルム202の内面に接触するヒータ300と、定着フィルム202の外面に接触する加圧回転体(加圧部材)としての加圧ローラ208と、金属ステー204と、を有する。加圧ローラ208は、定着フィルム202を介してヒータ300に圧接され、定着フィルム202との間に定着ニップ部Nを形成する。
【0022】
定着フィルム202は、筒状に形成された複層耐熱フィルムであり、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属を基層としている。また、定着フィルム202の表面には、トナーの付着防止や記録材Pとの分離性を確保するため、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等の離型性にすぐれた耐熱樹脂を被覆して離型層を形成してある。
【0023】
加圧ローラ208は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金209と、シリコーンゴム等の材質の弾性層210を有する。ヒータ300は、耐熱樹脂製のヒータ保持部材201に保持されており、定着フィルム202を加熱する。ヒータ保持部材201は、定着フィルム202の回転を案内するガイド機能も有している。金属ステー204は、不図示の加圧力を受けて、ヒータ保持部材201を加圧ローラ208に向けて付勢する。加圧ローラ208は、モータ30から動力を受けて図中矢印方向に回転する。加圧ローラ208が回転することによって、定着フィルム202が従動して回転する。定着ニップ部Nにおいて記録材Pを挟持搬送しつつ定着フィルム202の熱を与えることで、記録材P上の未定着トナー画像は定着処理される。
【0024】
ヒータ300は、セラミック製の基板305上に設けられた発熱抵抗体によって加熱されるヒータである。定着ニップ部Nの側に設けられた表面保護層308は、定着ニップ部Nの摺動性を得るために用いるガラスである。定着ニップ部Nの反対側に設けられた表面保護層307は、発熱抵抗体を絶縁するために用いるガラスである。定着ニップ部Nの反対側に設けられた電極(ここでは代表として電極E4を示してある)と、電気接点(ここ
では代表として電極C4を示してある)が複数設けられており、各電気接点から各電極に給電を行っている。ヒータ300の詳細の説明は図3で行う。
【0025】
また、ヒータ300の異常発熱により作動してヒータ300に供給する電力を遮断するサーモスイッチや温度ヒューズ等の安全素子212が、ヒータ300に直接、若しくは、保持部材201を介して間接的に当接している。
【0026】
3.ヒータの構成
図3を用いて、本実施例に係るヒータ300の構成を説明する。図3(a)はヒータ300の断面図、図3(b)はヒータ300の各層の平面図、図3(c)はヒータ300への電気接点Cの接続方法を説明する図である。
【0027】
図3(b)には、本実施例の画像形成装置100における記録材Pの搬送基準位置Xを示してある。本実施例における搬送基準は中央基準となっており、記録材Pはその搬送方向に直交する方向における中心線が搬送基準位置Xを沿うように搬送される。また、図3(a)は、搬送基準位置Xにおけるヒータ300の断面図となっている。
【0028】
ヒータ300は、セラミックス製の基板305と、基板305上に設けられた裏面層1と、裏面層1を覆う裏面層2と、基板305上の裏面層1とは反対側の面に設けられた摺動面層1と、摺動面層1を覆う摺動面層2と、より構成される。
【0029】
裏面層1は、ヒータ300の長手方向に沿って設けられている第1の導電体301(301a、301b)を有する。導電体301は、導電体301aと導電体301bに分離されており、導電体301bは、導電体301aに対して記録材Pの搬送方向の下流側に配置されている。
【0030】
また、裏面層1は、導電体301a、301bに平行して設けられた第2の導電体303(303-1~303-7)を有する。導電体303は、導電体301aと導電体301bの間にヒータ300の長手方向に沿って設けられている。さらに、裏面層1は、通電により発熱する発熱抵抗体素子(発熱体)として、記録材搬送方向の上流側に発熱抵抗体302a(302a-1~302a-7)、下流側に発熱抵抗体302b(302b-1~302b-7)を有する。
【0031】
発熱抵抗体302a、302bは、それぞれ、基板305の面に垂直な方向に見たときの平面視形状が点対称な平行四辺形で形成され、厚み(基板305からの高さ)は均一に形成されている。また、ヒータ短手方向中央に対し、発熱抵抗体302aは記録材搬送方向の上流側に、発熱抵抗体302bは記録材搬送方向の下流側に、互いに線対称になるように配置される。そして、発熱抵抗体302a、302bは、それぞれ、長手方向に複数並ぶように設けられ、第1の導電体301と第2の導電体303との間で、電気的に並列接続されている。発熱抵抗体302a、302bは、ヒータ300の長手方向、及び短手方向に対して傾いた方向に延びるような平面視形状で配置されている。かかる配置により、分割された複数の発熱抵抗体の間の隙間部の影響を低減し、ヒータ300の長手方向の発熱分布の均一性を改善することができる。
【0032】
導電体301と導電体303と発熱抵抗体302aと発熱抵抗体302bとから構成される発熱部位は、ヒータ300の長手方向に対し7つの発熱ブロックHB(HB1~HB7)に分割されている。すなわち、発熱抵抗体302aは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱抵抗体302a-1~302a-7の7つの領域に分割されている。また、発熱抵抗体302bは、ヒータ300の長手方向に対し、発熱抵抗体302b-1~302b-7の7つの領域に分割されている。各発熱ブロックの発熱抵抗体302a、302bの
本数は、HB1、7は2本、HB2、6は3本、HB3、5は7本、HB4は27本である。
【0033】
さらに、導電体303は、発熱抵抗体302a、302bの分割位置に合わせて、導電体303-1~303-7の7つの領域に分割されている。発熱ブロックHBの分割幅は図3(b)に記載の通り、A5紙・B5紙・A4紙:Letter紙に対応可能な分割幅としている。ただし、分割数や分割の幅はこれに限定されるものではない。
【0034】
裏面層1は、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)を有する。電極E1~E7は、それぞれ導電体303-1~303-7の領域内に設けられており、導電体303-1~303-7を介して発熱ブロックHB1~HB7それぞれに電力供給するための電極である。電極E8-1、E8-2は、ヒータ300の長手方向端部の導電体301に接続するよう設けられており、導電体301を介して発熱ブロックHB1~HB7に電力供給するための電極である。本実施例ではヒータ300の長手方向両端に電極E8-1、E8-2を設けているが、例えば、電極E8-1のみを片側に設ける構成(即ち、電極E8-2を設けない構成)でも構わない。また、導電体301a、301bに対し共通の電極で電力供給を行っているが、導電体301aと導電体301bそれぞれに個別の電極を設け、それぞれ電力供給を行っても構わない。
【0035】
裏面層2は、絶縁性を有する表面保護層307(本実施例ではガラス)により構成されており、導電体301、導電体303、発熱抵抗体302a、302bを覆っている。また、表面保護層307は、電極Eの箇所を除いて形成されており、電極Eに対して、ヒータの裏面層2側から電気接点Cを接続可能な構成となっている。
【0036】
摺動面層1は、基板305において裏面層1が設けられる面とは反対側の面に設けられており、各発熱ブロックHB1~HB7の温度を検知する温度検知素子としてサーミスタTH(TH1~TH7)を有している。サーミスタTHは、PTC特性、若しくはNTC特性を有した材料から成り、その抵抗値を検出することにより、全ての発熱ブロックの温度を検知できる。
【0037】
また、摺動面層1は、サーミスタTHに通電しその抵抗値を検出するため、導電体ET(ET1-1~ET1-4、およびET2-5~ET2-7)と導電体EG(EG1、EG2)とを有している。導電体ET1-1~ET1-4は、それぞれサーミスタTH1~TH4に接続されている。導電体ET2-5~ET2-7は、それぞれサーミスタTH5~TH7に接続されている。導電体EG1は、4つのサーミスタTH1~TH4に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体EG2は、3つのサーミスタTH5~TH7に接続され、共通の導電経路を形成している。導電体ETおよび導電体EGは、それぞれヒータ300の長手に沿って長手端部まで形成され、ヒータ長手端部において不図示の電気接点を介して制御回路400と接続されている。
【0038】
摺動面層2は、摺動性と絶縁性を有する表面保護層308(本実施例ではガラス)により構成されており、サーミスタTH、導電体ET、導電体EGを覆うとともに、定着フィルム202内面との摺動性を確保している。また、表面保護層308は、導電体ETおよび導電体EGに対して電気接点を設けるために、ヒータ300の長手両端部を除いて形成されている。
【0039】
続いて、各電極Eへの電気接点Cの接続方法を説明する。図3(c)は、各電極Eへ電気接点Cを接続した様子をヒータ保持部材201側から見た平面図である。ヒータ保持部材201には、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対応する位置に貫通孔が設けられている。各貫通孔位置において、接触部材としての電気接点C(C1~C7
、およびC8-1、C8-2)が、電極E(E1~E7、およびE8-1、E8-2)に対してバネによる付勢によって電気的に接続されている。
【0040】
電気接点Cは、ヒータ保持部材201上に固定された不図示の導電材料を介して、後述するヒータ300の制御回路400と接続されている。導電材料は、ヒータ保持部材201に形成された不図示のボスに嵌合し、固定されている。なお、電極Eと電気接点Cの接続方法は、バネ等の付勢手段による付勢に限定されず、例えば超音波接合やレーザ溶接等の手段によって、電極Eと電気接点Cを接合しても構わない。
【0041】
4.ヒータ制御回路の構成
図4は実施例1のヒータ300の制御回路400の回路図を示す。画像形成装置100には、商用の交流電源401が接続されている。ヒータ300の電力制御は、トライアック411~トライアック414の通電/遮断により行われる。トライアック411~414は、それぞれ、CPU420からのFUSER1~FUSER4信号に従って動作する。トライアック411~414の駆動回路は省略して示してある。
【0042】
ヒータ300の制御回路400は、4組の発熱ブロックを独立制御可能な回路構成となっている。トライアック411は発熱ブロックHB4を、トライアック412は発熱ブロックHB3と発熱ブロックHB5を、トライアック413は発熱ブロックHB2と発熱ブロックHB6を、トライアック414は発熱ブロックHB1と発熱ブロックHB7を制御することができる。
【0043】
ゼロクロス検知部421は、交流電源401のゼロクロスを検知する回路であり、CPU420にZEROX信号を出力している。ZEROX信号は、トライアック411~トライアック414の位相制御のタイミングの検出等に用いている。
【0044】
ヒータ300の温度検知方法について説明する。サーミスタブロックTB1のサ-ミスタTH1~TH4によって検知される温度は、抵抗451~454との分圧が、Th1-1~Th1-4信号としてCPU420で検知されている。同様に、サーミスタブロックTB2のサ-ミスタTH5~TH7によって検知される温度は、抵抗465~467との分圧が、Th2-5~Th2-7信号としてCPU420で検知されている。
【0045】
CPU420の内部処理では、各発熱ブロックの設定温度(制御目標温度)と、サーミスタの検知温度に基づき、例えばPI制御により、供給するべき電力を算出する。更に供給する電力に対応した位相角(位相制御)、波数(波数制御)の制御レベルに換算し、その制御条件によりトライアック411~414を制御している。
【0046】
リレー430、リレー440は、故障などによりヒータ300が過昇温した場合、ヒータ300への電力遮断手段として用いている。
【0047】
リレー430、及びリレー440の回路動作を説明する。RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ433がON状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに通電され、リレー430の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ433がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー430の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー430の1次側接点はOFF状態になる。同様に、RLON信号がHigh状態になると、トランジスタ443がON状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに通電され、リレー440の1次側接点はON状態になる。RLON信号がLow状態になると、トランジスタ443がOFF状態になり、電源電圧Vccからリレー440の2次側コイルに流れる電流は遮断され、リレー440の1次側接点はOFF状態になる。なお、抵抗434、抵抗444は
電流制限抵抗である。
【0048】
リレー430、リレー440を用いた安全回路の動作について説明する。サーミスタTH1~TH4による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部431はラッチ部432を動作させ、ラッチ部432はRLOFF1信号をLow状態でラッチする。RLOFF1信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ433がOFF状態で保たれるため、リレー430はOFF状態(安全な状態)で保つことができる。尚、ラッチ部432は非ラッチ状態において、RLOFF1信号をオープン状態の出力にしている。
【0049】
同様に、サーミスタTH5~TH7による検知温度の何れか1つが、それぞれ設定された所定値を超えた場合、比較部441はラッチ部442を動作させ、ラッチ部442はRLOFF2信号をLow状態でラッチする。RLOFF2信号がLow状態になると、CPU420がRLON信号をHigh状態にしても、トランジスタ443がOFF状態で保たれるため、リレー440はOFF状態(安全な状態)で保つことができる。同様に、ラッチ部442は非ラッチ状態において、RLOFF信号をオープン状態の出力にしている。
【0050】
5.サーミスタの発熱抵抗体に対する位置の詳細説明
図5は、サーミスタTH1~TH7の詳細な位置と発熱抵抗体302bの位置の関係を説明する図である。図5(a)は、ヒータ300を基板305の面に垂直な方向に見た図であって、サーミスタTH1~TH7の位置を裏面層1に重ねて図示することで、発熱抵抗体との位置関係を示した図である。図5(b)~(d)は、それぞれ図5(a)中のL、C、R部分を拡大した図であり、より詳細にサーミスタと発熱抵抗体との位置関係を示した図である。
【0051】
図5(a)が示すように、サーミスタTH1~TH7の各サーミスタは、それぞれに対応する発熱ブロック内(基板305の面に垂直な方向の平面視において、対応する発熱ブロックと重なる位置)に設置される。ここで、サーミスタTH1~TH7の最近傍の発熱抵抗体を発熱抵抗体302b-k(302b-k1~302b-k7)として、図5(b)~(d)に示す。本実施例では、図5(b)~(d)が示すように、サーミスタTH1~TH7は、それぞれが最も近接する発熱抵抗体302b-kの平行四辺形の対角線の交点、つまり重心位置に配設(それぞれの平面視形状における重心が発熱抵抗体302b-kの平面視形状における重心と一致する位置に配設)される。
【0052】
6.実施例1の効果
図6を用いて比較例の形態を説明する。比較例では、各サーミスタTH1~TH7と、最近傍の発熱抵抗体302b-kとの位置関係が統一されていない状態を示す。図6(a)、(b)、(c)は、実施例1の図5(b)、(c)、(d)に対応し、比較例におけるTH1~TH7と発熱抵抗体302b-kとの位置を示す。比較例におけるサーミスタTH1とサーミスタTH4は、実施例1と同様に、最近傍の発熱抵抗体302b-kの平行四辺形の重心にサーミスタ中心(平面視形状における重心位置)がある。サーミスタTH2、TH7は、発熱抵抗体302b-kの長辺近傍の位置にサーミスタ中心がある。サーミスタTH3、TH5、TH6は、発熱抵抗体がない位置にサーミスタ中心が配置される。
【0053】
図7図8を用い、実施例1と比較例のヒータの長手方向の温度分布について比較を行い、実施例1の効果を説明する。
【0054】
図7にヒータを発熱させた状態における、サーミスタTH1~TH7の温度検知位置と
発熱抵抗体302b-k近傍のヒータ摺動面上での温度分布を示す。平行四辺形の発熱抵抗体に対して通電すると、通電経路の積分により発熱量が変化するため、図7(a)に示すような温度分布が生じる。
【0055】
図8は、ヒータ摺動面上の各発熱ブロックの平均温度を示す。図7(a)に示すように、実施例1では、全サーミスタTH1~TH7が発熱抵抗体302b-kの温度の高いところを検知する。よって、全サーミスタTH1~TH7が同一の温度になるよう温調制御を行なっても、ヒータ長手方向に複数連なった発熱ブロック間で平均温度に差が生じないため、図8のように、全発熱ブロックで同一の温度T1に制御することができる。図7(b)は、比較例において、導電体301、303間に同一の電圧を印可したときの発熱抵抗体302b-kの温度分布である。比較例におけるサーミスタTH1、TH4は、実施例1と同様に、発熱抵抗体302b-kの温度の高いところを検知し、図8の破線で示すように、発熱ブロックHB1、HB4の平均温度は実施例1と同じ温度T1になる。
【0056】
一方、発熱抵抗体による温度分布に対して、各サーミスタは、温度が高い順に設置している場所が異なっている(TH1,TH4>TH7>TH2>TH3,TH5,TH6)。よって、比較例では、各サーミスタが検知する同じ温度に基づいて温調制御すると、各発熱ブロックが図7(c)に示すような温度分布になり、ヒータ長手全体では図8の破線で示す温度分布となる。
【0057】
比較例において、サーミスタTH7は、サーミスタTH1、TH4に比べ、発熱抵抗体302b-k近傍では温度分布の低いところを検知する。ただし、サーミスタTH7が位置するところが温調温度(制御目標温度)になるように温度制御されるため、発熱抵抗体302b-7の温度は発熱抵抗体302b-1、302b-4より高くなる。そのため、図8に破線で示すように、発熱ブロックHB7の平均温度は温度T1より高い温度T2になる。
【0058】
比較例において、サーミスタTH2は、サーミスタTH7に比べ、発熱抵抗体302b-k近傍では温度分布のさらに低いところを検知する。サーミスタTH2が位置するところが温調温度(制御目標温度)になるように温度制御され、発熱抵抗体302b-2の温度は発熱抵抗体302b-7より高くなる。そのため、図8に破線で示すように、発熱ブロックHB7の平均温度は温度T2より高い温度T3になる。
【0059】
比較例において、サーミスタTH3、TH5、TH6は、他のサーミスタに比べ、発熱抵抗体302b-k近傍では温度分布のさらに低いところを検知し、温調する。そのため、図8に破線で示すように、発熱ブロックHB3、HB5、HB6の平均温度は温度T3より高い温度T4になる。上記のように、比較例では、各発熱ブロックの平均温度はT1~T4と様々な温度をとり、発熱ブロック間で温度差が発生する。一方、実施例1では、発熱ブロックの平均温度はT1で統一され、温度差は発生しない。そのため、実施例1の形態は比較例に比べ、定着性やグロスの長手むらは発生しにくくなる。
【0060】
なお、本実施例においては、サーミスタTH1~TH7の位置は発熱抵抗体302b-kの平行四辺形の重心に位置する形態をとったが、発熱抵抗体とサーミスタの位置関係が保たれている条件においては、図9で示す形態のように、重心位置とは異なる位置にあってもよい。すなわち、発熱抵抗体とサーミスタとの相対位置関係を所望の発熱ブロック間において一致させる基準として、本実施例では平面視形状における重心を用いたが、かかる構成に限定されるものではなく、重心とは異なる基準位置を用いてもよい。また、本実施例では、複数の発熱抵抗体やサーミスタがそれぞれ同一形状を有するものとなっているが、所望の発熱ブロック間において平均検知温度の均一化を図ることができるのであれば、異なる形状のものを組み合わせた構成としてもよい。
【0061】
また、発熱抵抗体とサーミスタとの相対位置関係が同一か否かについては、次のように判断してよい。すなわち、発熱抵抗体302b-kに対して任意の2つのサーミスタの位置を比較したとき(第1の発熱抵抗体及び第1のサーミスタの組と、第2の発熱抵抗体及び第2のサーミスタの組とを、発熱抵抗体の位置が一致するように仮想的に重ね合わせて見たときの、第1のサーミスタの位置と第2のサーミスタの位置とを比較したとき)、基準とするサーミスタの存在している範囲に、別のサーミスタの中心位置が存在する場合、これら2つのサーミスタは発熱抵抗体とサーミスタとの相対位置関係が同一であるとみなすことができる。すなわち、製造公差を含めて、前述の範囲に収めることで、本件の性能を満足することができる。図5(e)は、相対位置関係が同一とみなすことができる2つのサーミスタTH-A、TH-Bの関係を示す。図5(e)で示すようにサーミスタTH-Bの中心位置TH-BzはサーミスタTH-Aの存在する範囲内に存在するため、発熱抵抗体とサーミスタとの相対位置関係が同一であるとみなしてよい。ヒータと別部品としてのサーミスタを用いる場合も同様であり、サーミスタがアルミ箔等の集熱部材を有する場合についても、集熱部材同士の位置関係が図5(e)で示すような位置関係にあればよい。
【0062】
また、本実施例において、全てのサーミスタについて、発熱抵抗体の位置関係が同一である形態をとったが、これに限定されるものではない。すなわち、像加熱装置特有の事情に合わせて、発熱ブロック間の温度差を抑制したい発熱ブロックのサーミスタについてのみ、発熱抵抗体の位置関係が同一とする形態であってもよい。例えば、ヒータの端部側の発熱ブロックHB1、HB7は熱の逃げにより温度が下がりやすいために、発熱ブロックHB1、HB7の平均温度を高くなるように制御したい場合がある。その場合、サーミスタTH2~TH6は、実施例1と同様に発熱抵抗体302b-kの平行四辺形の重心に位置に配設する。一方、ヒータ300の長手方向の最も端に配置されるサーミスタTH1、TH7は、発熱ブロックHB1、HB7の平均温度が高くなるように、サーミスタTH2~TH6とは異なる位置に配設してもよい。この場合においても、発熱ブロックHB2~HB6間では長手方向における温度差を抑制することができる。
【0063】
また、本実施例において、TCR特性を有した材料を基板上に薄く印刷形成した、ヒータと一体のサーミスタの形態をとっているが、これに限定されるものではない。例えば、ヒータの外部においてヒータと接触して検知する、ヒータとは別部品としてのサーミスタを用いる場合も、発熱抵抗体との位置関係を規定することで同様の効果が得られる。
【0064】
(実施例2)
本発明の実施例2は、定着フィルムが回転することによる影響を考慮した構成となっている。実施例2の構成において、実施例1と同様の構成については、同一の記号を用いて説明を省略する。
【0065】
図10は、実施例2のサーミスタTH1~TH7の位置と発熱抵抗体302bの位置の関係と温度分布の図を示している。図10(a)~(c)は、サーミスタTH1~TH7の詳細な位置と発熱抵抗体302bの位置を示す。図10(d)は、定着フィルムの回転時(加圧ローラの回転時)の、発熱抵抗体302b-k近傍におけるヒータ300の摺動面層2の温度分布を示す。図10(e)は、ヒータ摺動面上の各発熱ブロックの平均温度の分布を示す。
【0066】
図10(a)~(c)が示すように、サーミスタTH1~TH7は、実施例1よりも定着フィルム回転方向のやや下流側に位置する。加圧ローラ208の回転によって定着フィルム202が回転しているとき、定着ニップ部Nにおける定着フィルム202の温度は、定着フィルム回転方向の上流側よりも下流側の方が高くなる分布となる。つまり、ヒータ
300が発熱している図7(a)のような状態から、定着フィルム202の回転によって、図10(d)の状態のように、温度分布の温度ピーク(最大値)は下流側にずれる。よって、本実施例においては、サーミスタTH1~TH7は、図10(d)の発熱抵抗体302b-k近傍における温度分布の温度ピークを検知できるように配設した。
【0067】
実施例2においても、実施例1と同様に、サーミスタTH1~TH7と発熱抵抗体302b-kの位置関係が各々で同一であるため、図10(e)が示すように、発熱ブロック間の平均温度に差は生じない。これにより、定着性やグロスの長手むらは発生しにくくなる。さらに、実施例2の形態では、定着フィルム202が回転しているときのヒータ300の温度が高いところでサーミスタTH1~TH7が温度検知し、温調制御を行うため、ヒータ300の温度のオーバーシュートを抑えることができる。
【符号の説明】
【0068】
100…画像形成装置、200…像加熱装置、300…ヒータ、301…導電体、302…発熱抵抗体、303…導電体、400…制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12