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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240722BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240722BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/00 384
G03G15/01 114
G03G15/01 R
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020100558
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021196403
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 勇作
(72)【発明者】
【氏名】八木 靖貴
(72)【発明者】
【氏名】横山 健
(72)【発明者】
【氏名】関 浩行
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116801(JP,A)
【文献】特開2016-145908(JP,A)
【文献】特開2019-105810(JP,A)
【文献】特開2020-034699(JP,A)
【文献】特開平10-247021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 15/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する複数の像担持体と、
複数の前記像担持体から1次転写されるトナー像を記録材に2次転写するために搬送する、イオン導電性を備えた回転可能な無端状の中間転写体と、
複数の前記像担持体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を1次転写する1次転写部をそれぞれ形成し、電圧が印加されることで対応する前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を1次転写させる複数の1次転写部材と、
複数の前記1次転写部材に電圧を印加する第1の印加手段と、
前記中間転写体から記録材にトナー像を2次転写する2次転写部を形成し、電圧が印加されることで前記中間転写体から記録材にトナー像を2次転写させる2次転写部材と、
前記2次転写部材に電圧を印加する第2の印加手段と、
前記第2の印加手段の制御を行う制御手段と、
を有し、
画像情報に基づいて、第1のモードと、複数の前記像担持体のうちトナー像が形成される前記像担持体の数が前記第1のモードよりも少なく、複数の前記1次転写部材のうち電圧が印加される前記1次転写部材の数が前記第1のモードよりも少ない第2のモードとで、画像形成を行うことが可能な画像形成装置において、
前記制御手段は、前記画像情報に基づいて、1枚の記録材に形成する画像の前記2次転写を行う際に前記2次転写部材に印加する電圧を、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率が第1の被覆率である第1の領域が前記2次転写部を通過している際の第1の電圧と、前記被覆率が前記第1の被覆率よりも大きい第2の被覆率である第2の領域が前記2次転写部を通過している際の第2の電圧と、で異ならせる動作を実行可能であり、前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量が、前記第1のモードと前記第2のモードとで異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のモードでは、前記第1の電圧の絶対値は前記第2の電圧の絶対値よりも大きく、前記第2のモードでは、前記第1の電圧の絶対値は前記第2の電圧の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1のモードでは、画像形成時に前記1次転写部に流れる電流の積算値の方が、画像形成時に前記2次転写部に流れる電流の積算値よりも大きく、前記第2のモードでは、画像形成時に前記1次転写部に流れる電流の積算値よりも、画像形成時に前記2次転写部に流れる電流の積算値の方が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1のモードでは、少なくとも4つの前記像担持体にトナー像が形成され、該4つの前記像担持体のそれぞれに対応する前記1次転写部材に電圧が印加され、前記第2のモードでは、1つの前記像担持体にトナー像が形成され、該1つの前記像担持体に対応する前記1次転写部材に電圧が印加されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1のモードにおける前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値と、前記第2のモードにおける前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値と、は異なることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記2次転写を行う画像における前記第1の領域が占める割合が第1の割合の場合の前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値の方が、該割合が前記第1の割合よりも小さい第2の割合の場合の前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記動作において、前記画像情報に基づいて、1枚の記録材に形成する画像の前記1次転写を行う際に前記1次転写部材に印加する電圧を、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率が第3の被覆率である第3の領域が前記1次転写部を通過している際の第3の電圧と、前記被覆率が前記第3の被覆率よりも大きい第4の被覆率である第4の領域が前記1次転写部を通過している際の第4の電圧と、で異ならせ、前記第4の電圧に対する前記第3の電圧の変更量が、前記第1のモードと前記第2のモードとで異なることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー像を担持する複数の像担持体と、
複数の前記像担持体から1次転写されるトナー像を記録材に2次転写するために搬送する、イオン導電性を備えた回転可能な無端状の中間転写体と、
複数の前記像担持体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を1次転写する1次転写部をそれぞれ形成し、電圧が印加されることで対応する前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を1次転写させる複数の1次転写部材と、
複数の前記1次転写部材に電圧を印加する第1の印加手段と、
前記中間転写体から記録材にトナー像を2次転写する2次転写部を形成し、電圧が印加されることで前記中間転写体から記録材にトナー像を2次転写させる2次転写部材と、
前記2次転写部材に電圧を印加する第2の印加手段と、
前記第1の印加手段の制御を行う制御手段と、
を有し、
画像情報に基づいて、第1のモードと、複数の前記像担持体のうちトナー像が形成される前記像担持体の数が前記第1のモードよりも少なく、複数の前記1次転写部材のうち電圧が印加される前記1次転写部材の数が前記第1のモードよりも少ない第2のモードとで、画像形成を行うことが可能な画像形成装置において、
前記制御手段は、前記画像情報に基づいて、1枚の記録材に形成する画像の前記1次転写を行う際に前記1次転写部材に印加する電圧を、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率が第1の被覆率である第1の領域が前記1次転写部を通過している際の第1の電圧と、前記被覆率が前記第1の被覆率よりも大きい第2の被覆率である第2の領域が前記1次転写部を通過している際の第2の電圧と、で異ならせる動作を実行可能であり、前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量が、前記第1のモードと前記第2のモードとで異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記第1のモードでは、前記第1の電圧の絶対値は前記第2の電圧の絶対値よりも小さく、前記第2のモードでは、前記第1の電圧の絶対値は前記第2の電圧の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第1のモードでは、画像形成時に前記1次転写部に流れる電流の積算値の方が、画像形成時に前記2次転写部に流れる電流の積算値よりも大きく、前記第2のモードでは、画像形成時に前記1次転写部に流れる電流の積算値よりも、画像形成時に前記2次転写部に流れる電流の積算値の方が大きいことを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1のモードでは、少なくとも4つの前記像担持体にトナー像が形成され、該4つの前記像担持体のそれぞれに対応する前記1次転写部材に電圧が印加され、前記第2のモードでは、1つの前記像担持体にトナー像が形成され、該1つの前記像担持体に対応する前記1次転写部材に電圧が印加されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第1のモードにおける前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値と、前記第2のモードにおける前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値と、は異なることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記1次転写を行う画像における前記第1の領域が占める割合が第1の割合の場合の前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値の方が、該割合が前記第1の割合よりも小さい第2の割合の場合の前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記被覆率が所定の閾値未満の領域を前記第1の領域とし、前記被覆率が該閾値以上の領域を前記第2の領域として、前記動作の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御手段は、前記被覆率が所定の閾値未満であり、かつ、印字率が所定の別の閾値未満の領域を前記第1の領域とすることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御手段は、前記被覆率の前記所定の閾値を、環境、画像形成モード、記録材の種類の少なくとも1つに基づいて変更することを特徴とする請求項14又は15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記中間転写体に電圧を印加する、前記1次転写部材及び前記2次転写部材とは別に設けられた電圧印加部材を有することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記中間転写体の内周面側から外周面側に流れた電流の積算値に関する第1の情報と、前記中間転写体の外周面側から内周面側に流れた電流の積算値に関する第2の情報と、を取得する取得手段を有し、
前記制御手段は、前記第1の情報が示す電流の積算値と、前記第2の情報が示す電流の積算値と、の差分に基づいて、前記動作の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記制御手段は、前記差分が所定の閾値未満の場合は、前記動作を実行しないことを特徴とする請求項18に記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記制御手段は、前記第1の情報が示す電流の積算値と、前記第2の情報が示す電流の積算値と、が略同一の場合は、前記動作を実行しないことを特徴とする請求項19に記載の画像形成装置。
【請求項21】
前記制御手段は、前記差分が所定の閾値未満の場合は、前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値を第1の値とし、前記差分が該閾値以上の場合は、前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量の絶対値を第1の値よりも大きい第2の値とすることを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記制御手段は、前記差分が小さくなるように、前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量を設定することを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項23】
前記取得手段は、前記中間転写体をその周方向に関して分割した複数の領域ごとに前記第1の情報と前記第2の情報とを取得し、
前記制御手段は、前記中間転写体の前記複数の領域ごとに、前記差分に基づいて前記動作の制御を行うことを特徴とする請求項18乃至22のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置として、像担持体に形成されたトナー像が中間転写体に1次転写された後に記録用紙などの記録材に2次転写される中間転写方式を採用したものがある。中間転写体としては、無端状のベルトで構成された中間転写ベルトが広く用いられている。近年、このような中間転写方式の画像形成装置において、中間転写ベルトの導電剤として、イオン導電性の導電剤(以下、「イオン導電剤」ともいう。)が使用されている。導電形態がイオン導電性の中間転写ベルトは、他の主要な導電形態である電子導電性の中間転写ベルトと比較して、例えば、次のようなメリットがある。つまり、電気抵抗(以下、単に「抵抗」ともいう。)が中抵抗の中間転写ベルトを作製したときに狙いの抵抗値を発現し易い。また、長期の使用による抵抗変動が小さい。一方、イオン導電性の中間転写ベルトでは、継続的に一方向に電流を印加すると、中間転写ベルト内のイオン導電剤の解離や偏在(以下、単に「偏在」ともいう。)が発生することがある。そして、これにより、中間転写ベルトの表面にイオン導電剤がブリードアウトしたり、中間転写ベルトの抵抗が上昇したりすることがある。イオン導電剤がブリードアウトすると、中間転写ベルトの表面に接触する他の部材をイオン導電剤で汚染してしまうことで問題が発生することがある。例えば、中間転写ベルト上に残存したトナーを清掃するために設けられたクリーニングブレードの先端部にイオン導電剤が付着すると、クリーニングブレードのクリーニング性能が低下し、クリーニング不良が発生してしまうことがある。
【0003】
このようなイオン導電剤のブリードアウト現象の対策として、特許文献1や特許文献2に記載されるような技術が知られている。つまり、非画像形成時に画像形成時とは逆極性の電圧を中間転写ベルトに印加する調整動作を実行することで、中間転写ベルトに流れる、画像形成時と同じ方向の順方向積算電流値と、逆方向の逆方向積算電流値と、のバランスを取ることが効果的である。このように中間転写ベルトに流れる電流量の収支を均整化することで、イオン導電剤の偏在を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-247021号公報
【文献】特許第6501543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プリントジョブの連続プリント枚数が多い場合などには、中間転写ベルトに流れる電流量の収支が大きく偏ってしまい、イオン導電剤の偏在が進行してしまうことがある。例えば、後述するように、フルカラーモードで多量の連続プリントを実行した場合には、中間転写ベルトの表面にカチオン性の導電剤の偏在が発生することがある。また、モノクロモードで多量の連続プリントを実行した場合には、中間転写ベルトの表面にアニオン性の導電剤の偏在が発生することがある。
【0006】
このようにイオン導電剤の偏在が進行した場合、特許文献1や特許文献2に記載されるような非画像形成時の調整動作によって十分に電流量の収支を均整化するためには、調整動作を数多く実行することが必要となることがある。しかし、調整動作を数多く実行すると、ダウンタイム(画像を出力できない期間)が増え、プリント生産性が低下すると共に、画像形成装置の稼働時間が増えて装置や部材の寿命が低下することがある。
【0007】
したがって、本発明は、ダウンタイムを抑制しつつ、中間転写体におけるイオン導電剤の解離や偏在を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トナー像を担持する複数の像担持体と、複数の前記像担持体から1次転写されるトナー像を記録材に2次転写するために搬送する、イオン導電性を備えた回転可能な無端状の中間転写体と、複数の前記像担持体のそれぞれに対応して設けられ、対応する前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を1次転写する1次転写部をそれぞれ形成し、電圧が印加されることで対応する前記像担持体から前記中間転写体にトナー像を1次転写させる複数の1次転写部材と、複数の前記1次転写部材に電圧を印加する第1の印加手段と、前記中間転写体から記録材にトナー像を2次転写する2次転写部を形成し、電圧が印加されることで前記中間転写体から記録材にトナー像を2次転写させる2次転写部材と、前記2次転写部材に電圧を印加する第2の印加手段と、前記第2の印加手段の制御を行う制御手段と、を有し、画像情報に基づいて、第1のモードと、複数の前記像担持体のうちトナー像が形成される前記像担持体の数が前記第1のモードよりも少なく、複数の前記1次転写部材のうち電圧が印加される前記1次転写部材の数が前記第1のモードよりも少ない第2のモードとで、画像形成を行うことが可能な画像形成装置において、前記制御手段は、前記画像情報に基づいて、1枚の記録材に形成する画像の前記2次転写を行う際に前記2次転写部材に印加する電圧を、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率が第1の被覆率である第1の領域が前記2次転写部を通過している際の第1の電圧と、前記被覆率が前記第1の被覆率よりも大きい第2の被覆率である第2の領域が前記2次転写部を通過している際の第2の電圧と、で異ならせる動作を実行可能であり、前記第2の電圧に対する前記第1の電圧の変更量が、前記第1のモードと前記第2のモードとで異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ダウンタイムを抑制しつつ、中間転写体におけるイオン導電剤の解離や偏在を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の概略断面図である。
図2】画像形成装置の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。
図3】単位ブロック内の被覆率を説明するための模式図である。
図4】目標電流値変更領域を説明するための模式図である。
図5】実施例1の目標電流値の変更量を決める制御のフローチャート図である。
図6】フルカラーモードとモノクロモードとでの中間転写ベルトに流れる電流量を説明するための模式図である。
図7】実施例2の1次転写電圧値の変更量を決める制御のフローチャート図である。
図8】1次転写電源を共通化した構成の模式図である。
図9】実施例3の画像形成装置の要部の概略断面図である。
図10】中間転写ベルトの周方向の領域ごとに電流量の収支を計算する変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0012】
[実施例1]
(1)画像形成装置
図1は、本実施例の画像形成装置10の概略断面図である。本実施例の画像形成装置10は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することが可能な、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザービームプリンタである。
【0013】
画像形成装置10は、複数の画像形成手段として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)1a、1b、1c、1dを有する。各画像形成部1a~1dは、一定の間隔をおいて1列に配置されている。各画像形成部1a~1dにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のa、b、c、dを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部1は、後述する感光ドラム2(2a、2b、2c、2d)、帯電ローラ3(3a、3b、3c、3d)、露光装置7(7a、7b、7c、7d)、現像装置4(4a、4b、4c、4d)、1次転写ローラ5(5a、5b、5c、5d)、ドラムクリーニング装置6(6a、6b、6c、6d)などを有して構成される。なお、電流、電圧の大小(高低)については、便宜上、その絶対値で比較した場合のものとして説明する。
【0014】
画像形成装置10は、トナー像を担持する像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム2を有する。本実施例では、感光ドラム2は、負帯電性のOPC(有機光導電体)感光体であり、アルミニウム製のドラム基体上に感光層を有している。感光ドラム2は、駆動装置(図示せず)によって図中矢印R1方向(時計回り)に所定の周速度(表面の移動速度)で回転駆動される。本実施例では、この感光ドラム2の周速度が、画像形成装置10のプロセススピードに相当する。画像形成開始信号が発せられると、感光ドラム2は所定のプロセススピードで回転駆動される。
【0015】
回転する感光ドラム2の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ3によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ3は、感光ドラム2の表面に所定の圧接力で接触している。帯電工程時に、帯電ローラ3には、図示しない帯電電圧印加手段としての帯電電源(高圧電源回路)により、所定の帯電電圧が印加される。
【0016】
帯電処理された感光ドラム2の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ装置)7によって、各画像形成部1に対応する色成分の画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム2上に静電潜像(静電像)が形成される。露光装置7は、後述するASIC314(図2)から入力された各画像形成部1に対応する色成分の画像信号を、レーザー出力部にて光信号にそれぞれ変換する。そして、露光装置7は、変換された光信号であるレーザー光により、一様に帯電処理された感光ドラム2の表面を走査露光して、感光ドラム2上に静電潜像を形成する。本実施例では、露光装置7において、後述するホストコンピュータ300(図2)から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光がレーザー出力部から出力される。そして、露光装置7において、このレーザー光が反射ミラーを介して感光ドラム2の表面に照射される。
【0017】
感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム2上にトナー像(トナー画像)が形成される。本実施例では、現像装置4は、1成分接触現像方式のものである。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ8を有する。現像ローラ8は、その上に薄層状にトナーを担持し、駆動装置(図示せず)により回転駆動されることで、感光ドラム2と対向する現像位置にトナーを搬送する。また、現像工程時に、現像ローラ8には、図示しない現像電圧印加手段としての現像電源(高圧電源回路)により、所定の現像電圧が印加される。これにより、トナーが感光ドラム2の表面の電位に応じて静電吸着することで、感光ドラム2上の静電潜像がトナー像として現像される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム2上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム2の帯電極性と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像方式)。本実施例では、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、トナー像を形成するトナーは主に負極性の電荷を有している。なお、各現像装置4a~4dには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。後述するフルカラーモードでは、4つの現像装置4の全ての現像ローラ8が感光ドラム2に当接する。また、後述するモノクロモード(本実施例ではブラック単色モード)では、画像を形成する画像形成部1(本実施例ではブラック用の画像形成部1d)以外の現像装置4の現像ローラ8は感光ドラム2から離間する。これは、現像ローラ8及びトナーの劣化や消耗を抑制するためである。
【0018】
4つの感光ドラム2a~2dに対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト20が配置されている。中間転写ベルト20は、複数の張架ローラ(支持部材)としての駆動ローラ21、クリーニング対向ローラ22及び2次転写対向ローラ23に掛け回され、所定のテンションで張架されている。中間転写ベルト20は、駆動ローラ21が駆動装置(図示せず)によって図中矢印R2方向(反時計回り)に回転駆動されることで、図中矢印R3方向(反時計回り)に、感光ドラム2の周速度と略等速、すなわち、所定プロセススピードで回転(周回移動)する。中間転写ベルト20の内周面(裏面)側には、各感光ドラム2a~2dに対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5a~5dが配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を感光ドラム2に向けて押圧して、感光ドラム2と中間転写ベルト20とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)T1を形成する。上述のようにして感光ドラム2上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している中間転写ベルト20上に1次転写される。1次転写工程時に、1次転写ローラ5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写電源(高圧電源回路)40により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム2a~2d上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト20上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。
【0019】
中間転写ベルト20の外周面(表面)側において、2次転写対向ローラ23に対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ24が配置されている。2次転写ローラ24は、2次転写対向ローラ23に向けて押圧され、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23に当接して、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)T2を形成する。上述のようにして中間転写ベルト20上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ24の作用によって、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24とに挟持されて搬送されている記録用紙などの記録材(転写材、シート)P上に2次転写される。2次転写工程時に、2次転写ローラ24には、2次転写電圧印加手段としての2次転写電源(高圧電源回路)44により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である2次転写電圧が印加される。記録材Pは、記録材収容部としてのカセット11に収容されている。記録材Pは、カセット11から給紙(給送)部材としての給紙ローラ14によって送り出され、搬送部材としての搬送ローラ15によってレジストローラ13まで搬送される。この記録材Pは、搬送部材としてのレジストローラ13によって、中間転写ベルト20上のトナー像の先端が2次転写部T2に移動するタイミングに合わせて2次転写部T2へと搬送される。給紙ローラ14、搬送ローラ15及びレジストローラ13は、記録材供給手段を構成する。
【0020】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置12へと搬送される。定着装置12は、熱源を備えた定着ローラ12Aと、定着ローラ12Aに圧接する加圧ローラ12Bと、を有する。定着装置12は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを定着ローラ12Aと加圧ローラ12Bとによって加熱及び加圧しながら搬送することで、トナー像を記録材P上に定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、画像形成装置10の装置本体の外部へと排出(出力)される。
【0021】
また、1次転写工程後に感光ドラム2上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって、感光ドラム2上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、クリーニング部材としてのウレタンゴムなどの弾性体で形成された板状部材であるドラムクリーニングブレード61と、回収トナー容器と、を有する。ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム2の表面に当接するドラムクリーニングブレード61によって、回転する感光ドラム2上から1次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器に収容する。また、中間転写ベルト20の外周面側において、クリーニング対向ローラ22に対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置32が配置されている。2次転写工程後に中間転写ベルト20上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置32によって、中間転写ベルト20上から除去されて回収される。ベルトクリーニング装置32は、クリーニング部材としてのウレタンゴムなどの弾性体で形成された板状部材であるクリーニングブレード31と、回収トナー容器と、を有する。ベルトクリーニング装置32は、中間転写ベルト20の表面に当接するクリーニングブレード31によって、回転する中間転写ベルト20上から2次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器に収容する。
【0022】
本実施例では、各画像形成部1において、感光ドラム2と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ3、現像装置4及びドラムクリーニング装置6とは、一体的に画像形成装置10の装置本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジを構成している。プロセスカートリッジは、例えば現像装置4内のトナーが無くなった場合、あるいは感光ドラム2が寿命に達した場合に新品に交換される。
【0023】
また、本実施例では、中間転写ベルト20、各張架ローラ21、22、23、各1次転写ローラ5、及びベルトクリーニング装置32は、一体的に画像形成装置10の装置本体に対して着脱可能な中間転写ベルトユニットを構成している。中間転写ユニットは、例えば中間転写ベルト20が寿命に達した場合に新品に交換される。
【0024】
(2)転写構成
本実施例では、中間転写ベルト20の基材のベース樹脂材料としてポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂を用いた。なお、中間転写ベルト20の基材のベース樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン-1、ポリスチレン、ポリアミド、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルニトリル、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリアミド酸などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは混合して2種以上を使用することもできる。
【0025】
また、本実施例では、中間転写ベルト20の基材は、中間転写ベルト20に導電性を付与するために、イオン導電性の導電剤を含んでいる。イオン導電性の導電剤を含有するイオン導電性の中間転写ベルト20を採用することにより、電子導電性の導電剤を含有する電子導電性の中間転写ベルトを用いた場合に比べて、中間転写ベルト20の抵抗の製造公差を小さく抑えることができる。
【0026】
イオン導電性の導電剤としては、多価金属塩や第4級アンモニウム塩などが挙げられる。第4級アンモニウム塩には、カチオン部として、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトライソプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオンなどが挙げられ、アニオン部としては、ハロゲンイオンやフルオロアルキル基の炭素数が1~10個のフルオロアルキル硫酸イオンやフルオロアルキル亜硫酸イオン、フルオロアルキルホウ酸イオンなどが挙げられる。
【0027】
また、イオン導電性の導電剤として、イオン液体を用いてもよい。イオン液体とは、イオンのみからなる液体であって、幅広い温度範囲で液体として存在する塩であり、特に100℃以下の融点を有する塩を指す。上記イオン液体を構成するアニオン種としては、スルホニルイミドイオンなどが挙げられ、カチオン種としては、アンモニウム系イオン、イミダゾリウム系イオン、ピリジニウム系イオン、ピペリジニウム系イオン、ピロリジニウム系イオン、ホスホニウム系イオンなどが挙げられる。
【0028】
上記した各材料成分を熔融混練し、次いで、インフレーション成形、円筒押出し成形、インジェクションストレッチブロー成形などの成形方法を適宜選択して、樹脂組成物としての中間転写ベルト20を得ることができる。
【0029】
中間転写ベルト20は、上述の基材(基層)の表面に保護層を設けるなどして、他の層を有していてもよい。すなわち、中間転写ベルト20は、イオン導電性の導電部材で形成された層を有していればよい。
【0030】
なお、本実施例における中間転写ベルト20は、表面抵抗率は8.0×10Ω/□であり、体積抵抗率は5.0×10Ωcmである。抵抗率は、株式会社三菱化学アナリテック製の抵抗率計であるハイレスタUP及び測定電極であるハイレスタUP専用プローブURSプローブを用い、印加電圧250Vで測定した。
【0031】
1次転写ローラ5としては、例えば、金属ローラや、スポンジゴムなどの弾性部材の層(弾性層)を備えた弾性ローラなどを用いることができる。本実施例では、1次転写ローラ5として、直径6mmの円柱状のSUS(ステンレス鋼)製のローラの表面にニッケルメッキを施した金属ローラを用いた。また、本実施例では、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20の搬送方向(表面の移動方向、回転方向)に関して感光ドラム2に対し下流側に3~10mmだけオフセットされて配置される。本実施例では、中間転写ベルト20の搬送方向に関して、感光ドラム2と中間転写ベルト20との接触部と、中間転写ベルト20と1次転写ローラ5との接触部と、は重ならない。そして、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を内周面(裏面)側から外周面(表面)側に押圧することで、中間転写ベルト20の外周面を感光ドラム2の外周面(表面)に当接させ、中間転写ベルト20と感光ドラム2との接触部に1次転写部T1を形成する。後述するフルカラーモードでは、4つの1次転写ローラ5a~5dの全てが中間転写ベルト20に当接する。また、後述するモノクロモード(本実施例ではブラック単色モード)では、画像を形成する画像形成部1(本実施例ではブラック用の画像形成部1d)以外の1次転写ローラ5は中間転写ベルト20から離間する。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20の移動に伴って従動して回転する。
【0032】
1次転写ローラ5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写電源40、及び1次転写電流検知手段としての1次転写電流検知部(1次転写電流検知回路)50が接続されている。1次転写ローラ5には、1次転写電源40から1次転写電圧が印加される。1次転写電源40は、1次転写ローラ5に正極性の電圧と負極性の電圧とを選択的に印加できるようになっている。1次転写電流検知部50は、1次転写電源40が1次転写ローラ5(1次転写部T1)に電圧を印加している際に1次転写ローラ5(1次転写部T1、1次転写電源40)に流れる電流を検知する。1次転写電流検知部50は、電流の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302へと出力することができる。また、本実施例では、1次転写電源40は、1次転写ローラ5に印加する電圧の定電流制御と定電圧制御とを行うことができる。つまり、1次転写電源40は、1次転写電流検知部50により検知される電流が略一定となるように(目標電流値に近付くように)電圧の出力を調整して、1次転写ローラ5に印加する電圧を定電流制御することができる。また、1次転写電源40は、電圧の出力を略一定となるように(目標電圧値に近付くように)調整して、1次転写ローラ5に印加する電圧を定電圧制御することができる。1次転写電源40は、1次転写電圧検知手段として、1次転写ローラ5に印加している電圧を検知する1次転写電圧検知部(1次転写電圧検知回路)を有していてもよいし、出力する電圧の設定値から該電圧値を検知できるようになっていてもよい。1次転写電源40は、電圧の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302へと出力することができる。
【0033】
2次転写ローラ24としては、例えば、スポンジゴムなどの弾性部材の層(弾性層)を備えた弾性ローラを用いることができる。本実施例では、2次転写ローラ24として、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、NBRヒドリンゴムを肉厚6mmで被覆した弾性ローラを用いた。本実施例における2次転写ローラ24の電気抵抗値は、2次転写ローラ24をアルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、該アルミシリンダを50mm/secの周速度で回転させた状態で1000Vを印加した場合において3.0×10Ωである。そして、2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23と当接して、中間転写ベルト20と2次転写ローラ24との接触部に2次転写部T2を形成する。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20、又は記録材Pの移動に伴って従動して回転する。
【0034】
2次転写ローラ24には、2次転写電圧印加手段としての2次転写電源44、及び2次転写電流検知手段としての2次転写電流検知部(2次転写電流検知回路)54が接続されている。2次転写ローラ24には、2次転写電源44から2次転写電圧が印加される。2次転写電源44は、2次転写ローラ24に正極性の電圧と負極性の電圧とを選択的に印加できるようになっている。2次転写電流検知部54は、2次転写電源44が2次転写ローラ24(2次転写部T2)に電圧を印加している際に2次転写ローラ24(2次転写部T2、2次転写電源44)に流れる電流を検知する。2次転写電流検知部54は、電流の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302へと出力することができる。また、本実施例では、2次転写電源44は、2次転写ローラ24に印加する電圧の定電流制御と定電圧制御とを行うことができる。つまり、2次転写電源44は、2次転写電流検知部54により検知される電流が略一定となるように(目標電流値に近付くように)電圧の出力を調整して、2次転写ローラ24に印加する電圧を定電流制御することができる。また、2次転写電源44は、電圧の出力を略一定となるように(目標電圧値に近付くように)調整して、2次転写ローラ24に印加する電圧を定電圧制御することができる。2次転写電源44は、2次転写電圧検知手段として、2次転写ローラ24に印加している電圧を検知する2次転写電圧検知部(2次転写電圧検知回路)を有していてもよいし、出力する電圧の設定値から該電圧値を検知できるようになっていてもよい。2次転写電源44は、電圧の検知結果を示す信号を後述するエンジン制御部302へと出力することができる。なお、本実施例では、2次転写対向ローラ23は、電気的に接地されている。
【0035】
(3)プリントモード
本実施例では、画像形成装置10は、プリントモード(画像形成モード)として、フルカラーモードと、モノクロモード(本実施例ではブラック単色モード)と、を有している。フルカラーモードでは、4つの画像形成部1a~1dの全てで画像を形成してフルカラー画像を形成することができる。本実施例において、モノクロモードでは、4つの画像形成部1a~1dのうちブラック用の画像形成部1dのみで画像を形成して、ブラック単色画像を形成することができる。モノクロモードにおいて、画像を形成するブラック用の画像形成部1d以外の画像形成部1では、中間転写ベルト20から1次転写ローラ5が離間されて、中間転写ベルト20が感光ドラム2から離間される。また、モノクロモードにおいて、ブラック用の画像形成部1d以外の画像形成部1では、感光ドラム2や現像ローラ8の駆動が停止され、また現像ローラ8が感光ドラム2から離間される。なお、モノクロモードにおいて、ブラック用の画像形成部1d以外の画像形成部1では、1次転写電源40は1次転写ローラ5への電圧の印加は行わない。
【0036】
画像形成装置10は、フルカラーモードとモノクロモードとでの中間転写ベルト20と感光ドラム2との当接・離間の状態の切り替えのために、第1~第3の画像形成部1a~1cの1次転写ローラ5を移動させる1次転写ローラ移動機構(図示せず)を有する。1次転写ローラ移動機構は、1次転写ローラ5を対応する感光ドラム2に対して近付く方向及び遠ざかる方向に移動させることができるように構成されている。そして、1次転写ローラ移動機構は、1次転写ローラ5を感光ドラム2に近付く方向に移動させることで、1次転写ローラ5で中間転写ベルト20を押圧して感光ドラム2に当接させることができる。また、1次転写ローラ移動機構は、1次転写ローラ5を感光ドラム2から遠ざかる方向に移動させることで、1次転写ローラ5を中間転写ベルト20から離間させて、中間転写ベルト20を感光ドラム2から離間させることができる。なお、例えば画像形成装置10がプリントジョブを待機している際などに、全ての画像形成部1において感光ドラム2から中間転写ベルト20を離間させるなどのために、ブラック用の画像形成部1dについても上記同様の1次転写ローラ移動機構が設けられていてよい。
【0037】
また、画像形成装置10は、フルカラーモードとモノクロモードとでの感光ドラム2と現像ローラ8との当接・離間の状態の切り替えのために、第1~第3の画像形成部1a~1cの現像装置4を移動させる現像装置移動機構(図示せず)を有する。現像装置移動機構は、例えば現像装置4を回動(揺動)させることで現像ローラ8を対応する感光ドラム2に対して近付く方向及び遠ざかる方向に移動させることができるように構成されている。そして、現像装置移動機構は、現像に用いる現像装置4の現像ローラ8を感光ドラム2に近付く方向に移動させて感光ドラム2に当接させることができる。また、現像装置移動機構は、現像に用いない現像装置4の現像ローラ8を感光ドラム2から遠ざかる方向に移動させることで、現像ローラ8を感光ドラム2から離間させることができる。なお、例えば画像形成装置10がプリントジョブを待機している際などに、全ての画像形成部1において感光ドラム2から現像ローラ8を離間させるなどのために、ブラック用の画像形成部1dについても上記同様の現像装置移動機構が設けられていてよい。また、現像ローラ8は、現像工程時に感光ドラム2に当接せず、感光ドラム2に近接して配置されるようになっていてもよい。
【0038】
(4)制御態様
図2は、本実施例の画像形成装置10のシステム構成を示す概略ブロック図である。画像形成装置10は、プリンタ制御装置304を有する。プリンタ制御装置304は、大別して、コントローラ部301と、エンジン制御部302と、を有する。プリンタ制御装置304は、コントローラ部301のコントローラインターフェイス305を用いて、外部装置であるホストコンピュータ300と接続され、該ホストコンピュータ300との間での通信を行う。コントローラ部301では、ホストコンピュータ300から受信した情報に基づいて、画像処理部303で文字コードのビットマップ化やグレイスケール画像のハーフトーニング処理などを行う。そして、コントローラ部301は、エンジン制御部302のビデオインターフェイス310へ画像情報を送信する。この画像情報には、露光装置7の点灯タイミングを制御する情報、定着装置12の温調温度や転写電圧などのプロセス条件を制御するプリントモードの情報(後述する記録材情報を含む)、画像サイズ情報などが含まれる。
【0039】
露光装置7の点灯タイミングの情報は、コントローラ部301からASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回路)314に送信される。ASIC314は、露光装置7などの画像形成制御部340が制御している画像形成部1の一部を制御する。
【0040】
一方、プリントモードの情報や画像サイズの情報などの情報は、制御手段としてのCPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)311へ送信される。CPU311は、定着制御部320で定着装置12の加熱制御、給紙搬送制御部330で給紙ローラ14の動作間隔制御、画像形成制御部340でプロセススピードや現像/帯電/転写の制御を行う。CPU311は、斯かる制御において、必要に応じて、記憶手段としてのRAM313に情報をストアし、記憶手段としてのROM312やRAM313に保存されているプログラムを使用し、またROM312又はRAM313に保存されている情報(演算結果や各種センサの検知結果など)を参照する。また、エンジン制御部302には、後述する1次転写電流の積算値、2次転写電流の積算値などを記憶するために、記憶手段としての不揮発性メモリ315が設けられている。
【0041】
また、コントローラ部301は、ユーザーやサービス担当者などの操作者がホストコンピュータ300上で行った操作に基づいて入力される指示に応じて、プリント命令、キャンセル指示などをエンジン制御部302に送信し、印字動作(画像形成動作、プリント動作)の開始や中止などの動作を制御する。
【0042】
ここで、画像形成装置10は、1つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるプリントジョブを実行する。プリントジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、画像形成時のタイミングは、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で異なり、感光ドラム2上や中間転写ベルト20上の画像領域が上記各位置を通過している期間に相当する。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置10の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。より詳細には、非画像形成時のタイミングは、感光ドラム2上や中間転写ベルト20上の非画像領域が、上記静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う各位置を通過している期間に相当する。なお、感光ドラム2上や中間転写ベルト20上の画像領域とは、記録材Pに転写されて画像形成装置10から出力される画像が形成され得る領域であり、非画像領域は画像領域以外の領域である。
【0043】
(5)2次転写電圧の制御方法
次に、本実施例における2次転写電圧の制御方法について説明する。
【0044】
<概要>
本実施例では、中間転写ベルト20上のトナー像を記録材P上に2次転写するために、2次転写電源44から2次転写ローラ24に正極性の2次転写電圧が印加される。本実施例では、2次転写工程において2次転写ローラ24に印加される2次転写電圧は、2次転写電流検知部54により検知される電流値が所定の2次転写目標電流値Iref(T2)になるように定電流制御される。
【0045】
2次転写目標電流値Iref(T2)は、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)の情報である環境情報、記録材Pの種類に関する情報である記録材情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた目標電流値が選択される。
【0046】
つまり、ROM312には、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた2次転写目標電流値に関する情報が記憶されている。また、画像形成装置10には、画像形成装置10の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知する環境検知手段として、例えば温湿度センサで構成される環境センサ(図示せず)が設けられている。CPU311は、この環境センサから環境情報を取得することができる。また、CPU311は、ホストコンピュータ300からコントローラ部301を介して入力されるプリントジョブの情報に含まれる記録材情報を取得することができる。なお、記録材Pの種類に関する情報(記録材情報)とは、普通紙、上質紙、光沢紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズなどの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別可能な任意の情報を包含するものである。また、CPU311は、ホストコンピュータ300からコントローラ部301を介して入力されるプリントジョブの情報に含まれるプリントモード(フルカラーモード、モノクロモードなど)の情報を取得することができる。したがって、CPU311は、上記取得した環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた2次転写目標電流値から対応するものを選択することができる。
【0047】
なお、この2次転写目標電流値Iref(T2)は、記録材Pに対する2次転写工程を実行する前に、上述のようにして環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて決定される。例えば、プリントジョブを開始する際に画像形成前の前回転動作において決定されてもよいし、各記録材Pに対する2次転写工程を実行する前に、前回転動作や紙間動作において決定されてもよい。
【0048】
本実施例の特徴の1つは、2次転写工程において、2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)で固定することなく、記録材Pに2次転写する画像の画像情報に応じて変更することである。また、本実施例の特徴の他の1つは、2次転写目標値電流値の変更量を中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に基づいて変えることである。
【0049】
本実施例における2次転写電圧の制御は、「目標電流値変更領域S(T2)の決定」と、「目標電流値の変更量の決定」と、の2つに大別される。
【0050】
<目標電流値変更領域S(T2)の決定>
まず、「目標電流値変更領域S(T2)の決定」について説明する。
【0051】
・目標電流値変更領域S(T2)の決定の原理
本実施例では、記録材Pに2次転写する画像における、2次転写目標電流値を変更しても許容できないレベルの画像不良が発生しない領域を、目標電流値変更領域S(T2)として決定する。
【0052】
つまり、上述のように、2次転写目標電流値は、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように予め決められる。したがって、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などが同一である同一条件下での2次転写工程において、2次転写目標電流値を変更するということは、2次転写電流値が最適な転写性が得られる最適値からずれることを意味する。例えば、予め決められた2次転写目標電流値から、より低い2次転写目標電流値に変更した場合、ベタ画像などにおいて、転写効率の低下に伴う濃度低下などの画像不良が発生する可能性がある。逆に、予め決められた2次転写目標電流値から、より高い2次転写目標電流値に変更した場合、過剰な電位差による放電現象により、ハーフトーン画像などに放電起因の画像不良が発生する可能性がある。そのため、単純に2次転写目標電流値を変更すると、上述のような画像不良が発生するリスクが高まることになる。そこで、本実施例では、記録材Pに2次転写する画像の画像情報に応じた「目標電流値変更領域S(T2)の決定」を行い、上述のような画像不良が生じるリスクが小さい領域において、2次転写目標電流値を変更する。
【0053】
記録材Pに2次転写する画像が、ベタ画像やハーフトーン画像ではなく、低被覆率の画像の場合は、上述のような画像不良が顕在化しにくいことがわかっている。ここで、「被覆率」とは、所定面積当たりの画像領域(画像部、トナーが載る部分)の占める割合のことをいう。画像情報において、画像の色にかかわらず画像が存在するか否かで判断し、画像が存在する領域を画像領域とする。本実施例では、上記所定面積(単位ブロック)は、24ピクセル(主走査方向)×24ピクセル(副走査方向)の領域とする。なお、主走査方向(露光装置7の主走査方向)は、感光ドラム2の回転軸線と略平行な方向であり、中間転写ベルト20や記録材Pの搬送方向と略直交する方向に相当する。また、副走査方向は、主走査方向と略直交する方向であり、中間転写ベルト20や記録材Pの搬送方向と略平行な方向に相当する。一例として、24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)のうち、画像領域が288ピクセルであった場合には、被覆率は50%となる。
【0054】
例えば、予め決められた2次転写目標電流値から、より低い2次転写目標電流値に変更した場合、低被覆率の画像では、ベタ画像に比べて転写するトナー量、すなわち、転写するトナーの総電荷量が少ないため、転写効率は低下しにくく転写性は維持される。逆に、予め決められた2次転写目標電流値から、より高い2次転写目標電流値に変更した場合も、低被覆率の画像では、放電によって乱されるトナー量自体が少ないため、画像不良として顕在化しにくい。
【0055】
このように、低被覆率の画像では、ベタ画像やハーフトーン画像と比較して、2次転写目標電流値の変更に伴う画像不良の発生するリスクは小さくなる。後述するように、2次転写目標電流値の変更量を、低被覆率の画像において画像不良が発生しない範囲に設定することで、2次転写目標電流値を変更しても画像不良を発生させなくすることが可能となる。
【0056】
以上の理由から、本実施例では、記録材Pに転写する画像の画像情報に基づいて、2次転写目標電流値を変更可能な領域と変更しないことが望ましい領域とを選別する「目標電流値変更領域S(T2)の決定」を行う。
【0057】
・目標電流値変更領域S(T2)の決定方法
次に、具体的な「目標電流値変更領域S(T2)の決定」の方法について説明する。
【0058】
図2に示すように、画像処理部303は、画像解析手段としての画像解析部401と、画像変換処理部402と、ハーフトーニング処理部403と、を有する。画像解析部401は、詳しくは後述するようにして画像を解析することで、「目標電流値変更領域S(T2)の決定」を行う。画像変換処理部402は、文字コードの画像変換を行い、ハーフトーニング処理部403は、グレイスケール画像のハーフトーニング処理などを行い、画像をビットマップ化する。
【0059】
本実施例では、画像変換処理部402による処理は、600dpiの解像度で行われる。また、本実施例では、画像解析部401による計算処理順は、画像変換処理部402による処理が終了し、ハーフトーニング処理403による処理を行う前の画像データに対して行われる。ただし、画像処理の順序はこれに限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0060】
・目標電流値変更領域S(T2)の決定の処理方法
次に、画像解析部401における「目標電流値変更領域S(T2)の決定」の処理方法について説明する。
【0061】
まず、画像解析部401は、元画像(600dpi)を24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)の単位ブロックに分割する。次に、画像解析部401は、全ての単位ブロックにおける被覆率を計算し、各単位ブロックの被覆率が所定の閾値よりも小さいか否かを判断する。画像解析部401は、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が該閾値以上の場合は、該単位ブロックは非低被覆率ブロックであると判断する。一方、画像解析部401は、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が該閾値未満の場合は、該単位ブロックは低被覆率ブロックであると判断する。本実施例では、被覆率の閾値は、30%に設定している。図3は、単位ブロック内における画像領域の占める割合の例を示している。画像解析部401は、図3(a)に示すように、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が30%以上の場合は、該単位ブロックを非低被覆率ブロックとする。一方、画像解析部401は、図3(b)に示すように、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が30%未満の場合は、該単位ブロックを低被覆率ブロックとする。
【0062】
次に、画像解析部401は、各単位ブロックの被覆率の計算結果に基づいて、目標電流値変更領域S(T2)を決定する。一例として、図4は、非低被覆率ブロックと低被覆率ブロックとが混在した画像が転写される記録材上の領域を示している。
【0063】
画像解析部401は、記録材P上の領域が目標電流値変更領域S(T2)であるか否かを、副走査方向に沿って決定していく。本実施例では、画像解析部401は、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」を目標電流値変更領域S(T2)として決定する。ここで、「余白部」とは、記録材P上のトナー像が転写され得る画像形成領域以外の領域である非画像形成領域、記録材P上の画像形成領域におけるベタ白部、及び、記録材P上の画像形成領域におけるベタ白部であるが電子透かし(地紋透かし)のような被覆率の低いドットパターンが形成される領域を含むものである。つまり、「余白部」とは、画像情報が有るが被覆率が閾値未満の部分(画像領域が無く被覆率が0%の部分を含む)、及び画像情報が無い部分を含むものである。ここでは、上記「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」を、いずれにしても所定面積当たり画像領域が占める割合が閾値未満の領域であることから、「低被覆率領域」ともいう。つまり、本実施例では、画像解析部401は、記録材P上の低被覆率領域を目標電流値変更領域S(T2)として決定する。
【0064】
例えば、図4において、領域A及び領域Eは、余白部である。この領域において2次転写目標電流値を変更しても、画像不良は発生しない。そのため、領域A及び領域Eは、目標電流値変更領域S(T2)とすることが可能である。また、図4において、領域Bは、主走査方向に沿って非低被覆率ブロックと低被覆率ブロックとが混在する領域である。この領域において2次転写目標電流値を変更した場合、低被覆率ブロックの領域では問題無いものの、非低被覆率ブロックの領域で画像不良が生じる可能性がある。そのため、領域Bを目標電流値変更領域S(T2)とすることはできない。また、図4において、領域Cは、主走査方向に沿って全て非低被覆率ブロックの領域である。そのため、領域Cを目標電流値変更領域S(T2)とすることはできない。一方、図4において、領域Dは、主走査方向に沿って全て低被覆率ブロックの領域である。そのため、領域Dは、目標電流値変更領域S(T2)とすることが可能である。このように、図4に示す画像の場合、画像解析部401は、主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である(すなわち、低被覆率領域である)、領域A、D、Eを目標電流値変更領域S(T2)として決定する。
【0065】
<目標電流値の変更量の決定>
次に、「目標電流値の変更量の決定」について説明する。
【0066】
・目標電流値の変更量の決定方法
本実施例では、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値の変更量を、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支を均整化するように決定する。これにより、中間転写ベルト20におけるイオン導電剤の偏在(解離や偏在)を抑制し、イオン導電剤のブリードアウトを抑制することが可能となる。
【0067】
本実施例では、エンジン制御部302のCPU311は、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支をモニターするために、1次転写電流の積算値と2次転写電流の積算値とを逐次計算して、それぞれ不揮発性メモリ315(図2)に記憶させる。具体的には、CPU311は、画像形成装置10の稼働が開始されてから100msecごとに、1次転写電流検知部50a~50dの電流検知結果を逐次積算し、Isum(T1)として不揮発性メモリ315に記憶させる。また、CPU311は、画像形成装置10の稼働が開始されてから100msecごとに、2次転写電流検知部54の電流検知結果を逐次積算し、Isum(T2)として不揮発性メモリ315に記憶させる。つまり、不揮発性メモリ315には、Isum(T1)、Isum(T2)を記憶する記憶領域がそれぞれ設けられている。なお、上記画像形成装置10の稼働が開始されるタイミングは、典型的には、画像形成装置10の電源がONとされたり、スリープ状態からの復帰が指示されたりしたタイミングである。
【0068】
例えば、1次転写電流検知部50a~50dのそれぞれが5secの間、+10μAの電流検知結果を得た場合、Isum(T1)は2000となる。その後2secの間、1次転写電流検知部50a~50dのそれぞれが-5μAの電流検知結果を得た場合、Isum(T1)は1600に更新される。同様に、2次転写電流検知部54が5secの間、+20μAの電流検知結果を得た場合、Isum(T2)は1000となる。その後2secの間、2次転写電流検知部54が-10μAの電流検知結果を得た場合、Isum(T2)は800に更新される。
【0069】
ここで、Isum(T1)は、中間転写ベルト20の内周面側から外周面側に流れる電流量の総和を示す。また、Isum(T2)は、中間転写ベルト20の外周面側から内周面側に流れる電流量の総和を示している。そのため、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支を計算し、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合を推測することが可能である。
【0070】
例えば、Isum(T1)がIsum(T2)よりも大きい場合、中間転写ベルト20の内周面側から外周面側に流れる電流量が多いため、中間転写ベルト20の外周面側にカチオン性の導電剤が偏在していることを示唆する。逆に、Isum(T1)がIsum(T2)よりも小さい場合、中間転写ベルト20の外周面側から内周面側に流れる電流量が多いため、中間転写ベルト20の外周面側にアニオン性の導電剤が偏在していることを示唆する。さらに、Isum(T1)とIsum(T2)との差分が大きければ大きいほど、イオン導電剤の偏在度合が大きいことを示唆する。
【0071】
なお、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合をより正しく把握するために、画像形成装置10の画像形成以外の動作中も、Isum(T1)及びIsum(T2)を逐次積算して更新することが好ましい。この画像形成以外の動作としては、前回転動作、紙間動作、後回転動作、及びキャリブレーションなどの特殊動作が挙げられる。また、Isum(T1)及びIsum(T2)は、不揮発性メモリなどに保存し、プリントジョブ終了後のスリープ状態や、画像形成装置10の電源がOFFされた状態でリセットされることなく、保存・更新されることが好ましい。なお、中間転写ベルトユニットや中間転写ベルトが交換された際にはIsum(T1)及びIsum(T2)は初期値(典型的にはゼロ)にリセットされるようになっていてよい。
【0072】
・2次転写目標電流値の変更量を決定する手順
次に、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値の変更量を決定する手順について説明する。図5は、この手順の概略を示すフローチャート図である。なお、目標電流値変更領域S(T2)を単に「領域S(T2)」ともいう。
【0073】
CPU311は、プリントジョブの信号を受信すると、プリントジョブを開始し、画像形成動作における2次転写工程を実行する際に、記録材Pに2次転写する画像に領域S(T2)が存在するか否かを判断する(S101)。CPU311は、この判断を、1枚の記録材Pに2次転写する画像ごとに、画像解析部401から取得した「目標電流値変更領域S(T2)の決定」の結果に関する情報に基づいて行う。画像解析部401は、ホストコンピュータ300から受信した情報に基づいて、1枚の記録材Pに2次転写する画像ごとに、前述のようにして「目標電流値変更領域S(T2)の決定」を行い、その結果に関する情報をCPU311に送信する。CPU311は、画像解析部401から受信したこの情報を、必要に応じてRAM313に記憶させることができ、また必要に応じてRAM313から読み出して用いることができる。
【0074】
CPU311は、S101で領域S(T2)が存在しないと判断した場合は、2次転写目標電流値を、環境情報、記録材情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のままとする(S106)。
【0075】
一方、CPU311は、S101で領域S(T2)が存在すると判断した場合は、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に基づいて、領域S(T2)における2次転写目標電流値を決定する。まず、CPU311は、不揮発性メモリ315から読み出したIsum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、Isum(T1)とIsum(T2)とが同じ値であるか否かを判断する(S102)。なお、ここではIsum(T1)とIsum(T2)とが略同一であるか否かを判断するが、Isum(T1)とIsum(T2)との差分が所定の閾値未満(典型的に本実施例のように差分が略ゼロ)であるか否かを判断するようになっていてよい。
【0076】
CPU311は、S102で同じ値であると判断した場合は、領域S(T2)における2次転写目標電流値を、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のままとする(S106)。この場合は、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に偏りがない状態であると判断できるからである。なお、領域S(T2)以外の領域における2次転写目標電流値についても、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のままとする。
【0077】
また、CPU311は、S102で同じ値ではないと判断した場合(Isum(T1)とIsum(T2)との間に差分が生じる場合)は、Isum(T1)がIsum(T2)よりも大きいか否かを判断する(S103)。Isum(T1)とIsum(T2)との間の大小関係に応じて、領域S(T2)における2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)から変更するためである。
【0078】
CPU311は、S103でIsum(T1)がIsum(T2)よりも大きいと判断した場合は、領域S(T2)における2次転写目標電流値を、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)よりも高い値に設定する(S104)。この場合は、中間転写ベルト20の外周面側にカチオン性の導電剤が偏在していると判断できることから、このイオン導電剤の偏りを抑制するためである。本実施例では、領域S(T2)における2次転写目標電流値をIref(T2)+7μAに変更する。なお、領域S(T2)以外の領域における2次転写目標電流値は、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のままとする。例えば、図4に示す画像の場合、領域B、Cでは2次転写目標電流値をIref(T2)として定電流制御し、領域A、D、Eでは2次転写目標電流値をIref(T2)+7μAとして定電流制御する。
【0079】
一方、CPU311は、S103でIsum(T1)がIsum(T2)よりも小さいと判断した場合は、領域S(T2)における2次転写目標電流値を、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)よりも低い値に設定する(S105)。この場合は、中間転写ベルト20の外周面側にアニオン性の導電剤が偏在していると判断できることから、このイオン導電剤の偏りを抑制するためである。本実施例では、領域S(T2)における2次転写目標電流値をIref(T2)-7μAに変更する。なお、領域S(T2)以外の領域における2次転写目標電流値は、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のままとする。例えば、図4に示す画像の場合、領域B、Cでは2次転写目標電流値をIref(T2)として定電流制御し、領域A、D、Eでは2次転写目標電流値をIref(T2)-7μAとして定電流制御する。
【0080】
そして、CPU311は、1枚の記録材Pごとに、以上のようにして決定した2次転写目標電流値で、2次転写工程を実行する。
【0081】
このように、本実施例では、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に基づいて、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値を変更することで、画像形成時に中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを抑制することが可能となる。
【0082】
<プリントモードによる2次転写目標電流値の変更量の違い>
図6は、プリントモードによる2次転写目標電流値の変更量の違いを説明するための中間転写ベルト20周りの模式図である。図6(a)はフルカラーモードの場合を示し、図6(b)はモノクロモード(ブラック単色モード)の場合を示す。
【0083】
フルカラーモードでは、図6(a)に示すように、4つの1次転写ローラ5a~5dの全てが中間転写ベルト20に当接している。そのため、フルカラーモードで1次転写部T1において中間転写ベルト20に流れる電流量の積算量Isum(T1)は、モノクロモードよりも大きくなる。本実施例では、例えば、温度が23℃、相対湿度が50%、記録材Pが普通紙、フルカラーノーマルプリントモードの条件における、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)は30μAである。なお、フルカラーノーマルプリントモードは、記録材Pとして普通紙が用いられる場合に選択されるフルカラーモードの例である。画像形成装置10には、例えば記録材Pとして厚紙が用いられる場合などに対応するために、上記フルカラーノーマルプリントモードとはプロセス速度などのプロセス条件が異なる他のフルカラーモードが設けられていてよい。また、該条件において、1次転写工程では、1次転写電圧は、1次転写目標電流値Iref(T1)である15μAに対応する1次転写電圧値で定電圧制御される。つまり、本実施例では、画像形成前の前回転動作において、各1次転写電流検知部50a~50dが検知する電流値が1次転写目標電流値Iref(T1)である15μAになるように、各1次転写電源40a~40dから各1次転写ローラ5a~5dに印加される電圧の定電流制御が行われる。そして、1次転写工程では、各1次転写電源40a~40dから各1次転写ローラ5a~5dに印加される1次転写電圧は、上記定電流制御時に検知された電圧値を目標電圧値(1次転写電圧値Vref(T1))として定電圧制御される。
【0084】
電流検知部で検知される電流値は、多少ばらつくものの、簡単のため、仮に1次転写電流検知部50a~50dのそれぞれの検知結果の時間平均値が15μA、2次転写電流検知部54の検知結果の時間平均値が30μAであったものとする。
【0085】
このような条件で連続プリントを繰り返した場合、Isum(T1)には100msecごとに60加算されるのに対し、Isum(T2)には100msecごとに30加算されるため、Isum(T1)はIsum(T2)よりも大きくなる。そのため、本実施例において、フルカラーモードでは、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値は、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)よりも大きい値が選択される。
【0086】
モノクロモードでは、図6(b)に示すように、4つの1次転写ローラ5a~5dのうちブラック用の1次転写ローラは5dのみが中間転写ベルト20に当接している。そのため、モノクロモードで1次転写部T1において中間転写ベルト20に流れる電流量の積算量Isum(T1)は、フルカラーモードよりも小さくなる。
【0087】
本実施例では、例えば、温度が23℃、相対湿度が50%、記録材Pが普通紙、モノクロノーマルプリントモードの条件における、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)は25μAである。なお、モノクロノーマルプリントモードは、記録材Pとして普通紙が用いられる場合に選択されるモノクロモードの例である。画像形成装置10には、例えば記録材Pとして厚紙が用いられる場合などに対応するために、上記モノクロノーマルプリントモードとはプロセス速度などのプロセス条件が異なる他のモノクロモードが設けられていてよい。また、該条件において、1次転写工程では、1次転写電圧は、1次転写目標電流値Iref(T1)である15μAに対応する1次転写電圧値で定電圧制御される。なお、この1次転写電圧値の設定方法は、上記フルカラーモードの場合と同様である。ただし、モノクロモードでは、上述の定電流制御による1次転写電圧値の設定動作は、ブラック用の画像形成部1dのみで行われる。モノクロモードにおける2次転写目標電流値Iref(T2)がフルカラーモードにおける値よりも小さいのは、次の理由によるものである。つまり、モノクロモードでは、中間転写ベルト20上に1次転写されるトナーがブラックトナーのみであり、記録材Pに2次転写されるトナー量がフルカラーモードよりも少ないためである。
【0088】
電流検知部で検知される電流値は、多少ばらつくものの、簡単のため、仮に1次転写電流検知部50a~50dのそれぞれの検知結果の時間平均値が15μA、2次転写電流検知部54の検知結果の時間平均値が25μAであったものとする。
【0089】
このような条件で連続プリントを繰り返した場合、Isum(T1)には100msecごとに15加算されるのに対し、Isum(T2)には100msecごとに25加算されるため、Isum(T1)はIsum(T2)よりも小さくなる。そのため、本実施例において、モノクロモードでは、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値は、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)よりも小さい値が選択される。
【0090】
このように、本実施例では、フルカラーモードとモノクロモードとで、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値の変更量を変えることにより、両モードにおいて適切に中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを抑制することが可能となる。
【0091】
(6)画像出力実験結果
次に、本実施例の効果を検証するために行った、比較例と本実施例とにおける画像出力実験の結果について説明する。画像出力実験は、フルカラーモードとモノクロモードとでそれぞれ行った。
【0092】
<フルカラーモード>
まず、フルカラーモードにおける画像出力実験の結果について説明する。
【0093】
この画像出力実験における比較例は、2次転写工程において2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のまま変更しない例である。画像出力実験としては、以下に示す通紙耐久試験を行い、比較例と本実施例とでベルトクリーニング装置32のクリーニングブレード31のクリーニング性能を比較した。
【0094】
試験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。プリントモードは、フルカラーノーマルプリントモードとして、繰り返し連続プリントを実行した。このモードでは、プロセススピードは300mm/sec、スループットは1分間に55枚である。この条件におけるIref(T1)は15μAであり、Iref(T2)は30μAである。
【0095】
出力画像としては、次のような画像を用いた。記録材Pの搬送方向に関する記録材Pの先端側半分は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像の印字率がそれぞれ2%、かつ、単位ブロック内の被覆率が8%の画像である。後端側半分は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像の印字率が25%、かつ、単位ブロック内の被覆率が100%のベタ画像である。すなわち、この出力画像における目標電流値変更領域S(T2)の占める割合(面積)は50%である。
【0096】
また、この通紙耐久試験では、連続プリント中に所定の頻度で非画像形成時の調整動作を実行し、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを矯正した。すなわち、所定のページ数のプリントを行った際に一度プリントを中断し、非画像形成時の調整動作を実行した。調整動作としては、次のような動作を行った。4つの1次転写ローラ5a~5dに負極性(画像形成時とは逆極性)の電圧を印加し、2次転写ローラ24に正極性の電圧を印加しながら、中間転写ベルト20を2周させる。4つの1次転写ローラ5a~5dに印加する負極性の電圧は、目標電流値-10μAで定電流制御する。2次転写ローラ24に印加する正極性の電圧は、Iref(T2)よりも高い目標電流値40μAで定電流制御する。この調整動作を実行することにより、中間転写ベルト20の外周面側に偏在したカチオン性の導電剤を中間転写ベルト20の内周面側へ移動させる。なお、調整動作1回あたりの所要時間は5secである。
【0097】
また、比較例については、非画像形成時の調整動作の実行頻度が異なる2つの条件で通紙耐久試験を行った。調整動作を50ページ当たり1回実行する条件の比較例を比較例(1)、調整動作を50ページ当たり2回実行する条件の比較例を比較例(2)とする。なお、本実施例では、調整動作は50ページ当たり1回実行する。
【0098】
そして、通紙耐久試験中に出力画像のサンプリングを行い、15万枚のプリントが終了するまでに、出力画像上にクリーニング不良が発生するか否かを観察することで評価した。評価基準は、クリーニング不良が発生しない場合を「○(良好)」、発生する場合を「×(不良)」とした。結果を表1に示す。表1には、本実施例と比較例とにおける、非画像形成時の調整動作の実行頻度、調整動作に伴うダウンタイムの所要時間、及び通紙耐久試験中の画像不良(クリーニング不良)の発生の有無を示している。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示すように、比較例(1)では、プリント枚数が10万枚を超えたあたりから出力画像上に記録材Pの搬送方向に沿って伸びる縦スジ状のクリーニング不良が発生した。クリーニング不良が発生した位置に対応するクリーニングブレード31を観察したところ、ブレードの先端部にブリードアウトしたイオン導電剤起因の不純物が付着しているのが確認された。すなわち、比較例(1)では、中間転写ベルト20内からブリードアウトしたイオン導電剤によって、クリーニング不良が発生しているものと考えられる。
【0101】
非画像形成時の調整動作の実行頻度を比較例(1)の2倍に高めた比較例(2)では、プリント枚数が15万枚に達しても、クリーニング不良が発生しなかった。比較例(2)では、調整動作の実行頻度が高いため、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を矯正する機会が多い。そのため、イオン導電剤のブリードアウトが抑制され、クリーニング不良が発生しなかったものと考えられる。しかし、比較例(2)では、調整動作に伴うダウンタイム時間が、50ページ当たり10secと、比較例(1)に対して2倍に増えてしまった。
【0102】
一方、本実施例では、非画像形成時の調整動作の実行頻度が低いままでも、クリーニング不良が発生しなかった。本実施例では、2次転写工程において、目標電流値変更領域S(T2)の2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)の30μAから、37μAに変更する。そのため、非画像形成時だけでなく画像形成時にも中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができる。これにより、本実施例では、非画像形成時の調整動作の実行頻度を抑え、ダウンタイム時間を抑制しながら、イオン導電剤のブリードアウト起因のクリーニング不良を抑制することができる。
【0103】
<モノクロモード>
次に、モノクロモードにおける画像出力実験の結果について説明する。
【0104】
上述のフルカラーモードにおける画像出力実験と同様、この画像出力実験における比較例は、2次転写工程において2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)のまま変更しない例である。画像出力実験としては、以下に示す通紙耐久試験を行い、比較例と本実施例とでベルトクリーニング装置32のクリーニングブレード31のクリーニング性能を比較した。
【0105】
試験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。プリントモードは、モノクロノーマルプリントモードとして、繰り返し連続プリントを実行した。このモードでは、プロセススピードは300mm/sec、スループットは1分間に55枚である。この条件におけるIref(T1)は15μAであり、Iref(T2)は25μAである。
【0106】
出力画像としては、次のような画像を用いた。記録材Pの搬送方向に関する記録材P先端側半分は、単位ブロック内の被覆率が8%の画像(ブラック)である。後端側半分は、単位ブロック内の被覆率が100%のベタ画像(ブラック)である。すなわち、この出力画像における目標電流値変更領域S(T2)の占める割合(面積)は50%である。
【0107】
また、この通紙耐久試験では、連続プリント中に所定の頻度で非画像形成時の調整動作を実行し、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを矯正した。調整動作としては、次のような動作を行った。ブラック用の1次転写ローラ5dに正極性の電圧を印加し、2次転写ローラ24に負極性(画像形成時とは逆極性)の電圧を印加しながら、中間転写ベルト20を2周させる。ブラック用の1次転写ローラ5dに印加する正極性の電圧は、Iref(T1)よりも高い目標電流値25μAで定電流制御する。2次転写ローラ24に印加する負極性の電圧は、目標電流値-10μAで定電流制御する。この調整動作を実行することにより、中間転写ベルト20の外周面に偏在したアニオン性の導電剤を中間転写ベルト20の内周面側に移動させる。なお、調整動作1回あたりの所要時間は5secである。
【0108】
また、比較例については、非画像形成時の調整動作の実行頻度が異なる2つの条件で通紙耐久試験を行った。調整動作を50ページ当たり1回実行する条件の比較例を比較例(1)、調整動作を50ページ当たり2回実行する条件の比較例を比較例(2)とする。なお、本実施例では、調整動作は50ページ当たり1回実行する。
【0109】
そして、通紙耐久試験中に出力画像のサンプリングを行い、15万枚のプリントが終了するまでに、出力画像上にクリーニング不良が発生するか否かを観察することで評価した。評価基準は、クリーニング不良が発生しない場合を「○(良好)」、発生する場合を「×(不良)」とした。結果を表2に示す。表2には、本実施例と比較例とにおける、非画像形成時の調整動作の実行頻度、調整動作に伴うダウンタイムの所要時間、及び通紙耐久試験中の画像不良(クリーニング不良)の発生の有無を示している。
【0110】
【表2】
【0111】
表2に示すように、比較例(1)では、プリント枚数が13万枚を超えたあたりから出力画像上に記録材Pの搬送方向に沿って伸びる縦スジ状のクリーニング不良が発生した。クリーニング不良が発生した位置に対応するクリーニングブレード31を観察したところ、ブレードの先端部にブリードアウトしたイオン導電剤起因の不純物が付着しているのが確認された。すなわち、比較例(1)では、中間転写ベルト20内からブリードアウトしたイオン導電剤によって、クリーニング不良が発生しているものと考えられる。
【0112】
非画像形成時の調整動作の実行頻度を比較例(1)の2倍に高めた比較例(2)では、プリント枚数が15万枚に達しても、クリーニング不良が発生しなかった。比較例(2)では、調整動作の実行頻度が高いため、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を矯正する機会が多い。そのため、イオン導電剤のブリードアウトが抑制され、クリーニング不良が発生しなかったものと考えられる。しかし、比較例(2)では、調整動作に伴うダウンタイム時間が、50ページ当たり10secと、比較例(1)に対して2倍に増えてしまった。
【0113】
一方、本実施例では、非画像形成時の調整動作の実行頻度が低いままでも、クリーニング不良が発生しなかった。本実施例では、2次転写工程において、目標電流値変更領域S(T2)の2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)の25μAから、18μAに変更する。そのため、非画像形成時だけでなく画像形成時にも中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができる。これにより、本実施例では、非画像形成時の調整動作の実行頻度を抑え、ダウンタイム時間を抑制しながら、イオン導電剤のブリードアウト起因のクリーニング不良を抑制することができる。
【0114】
このように、本実施例では、制御手段311は、画像情報に基づいて、1枚の記録材Pに形成する画像の2次転写を行う際に2次転写部材24に印加する電圧を、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率が第1の被覆率である第1の領域が2次転写部T2を通過している際の第1の電圧と、被覆率が第1の被覆率よりも大きい第2の被覆率である第2の領域が2次転写部T2を通過している際の第2の電圧と、で異ならせる動作を実行可能であり、第2の電圧に対する第1の電圧の変更量が、第1のモード(フルカラーモード)と第2のモード(モノクロモード)とで異なる。
【0115】
以上説明したように、本実施例では、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値を、予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)から変更する。これにより、画像形成時にも中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができ、非画像形成時の調整動作の実行頻度を抑えながら、効果的にイオン導電剤のブリードアウトを抑制することができる。また、本実施例では、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に応じて、2次転写目標電流値の変更量を変える。典型的には、フルカラーモードとモノクロモードとで、2次転写目標電流値の変更量を変える。これにより、プリントモードなどの動作条件の違いによるイオン導電剤の偏在状態に応じて、適切に中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを抑制することが可能となる。このように、本実施例によれば、非画像形成時だけでなく画像形成時にも中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができ、調整動作の実行回数を抑制しつつ、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支を均整化することができる。その結果、イオン導電剤のブリードアウトを抑制し、クリーニングブレード31の良好なクリーニング性能を維持することができる。
【0116】
(7)変形例
本実施例では、低被覆率ブロックと非低被覆率ブロックとの境界を示す被覆率の閾値を30%に設定しているが、この被覆率の閾値は本実施例の値に限定されるものではない。閾値を高く設定すれば、低被覆率ブロックと判別される単位ブロック数が増え、画像中の目標電流値変更領域S(T2)の割合が増加する。それに伴い、イオン導電剤の偏在を抑制する効果は高まり、中間転写ベルト20のブリードアウトの抑制には有利に働く。しかし、被覆率の高い画像においても、2次転写目標電流値を変更することになり、出力画像に画像不良が生じるリスクが高まる可能性がある。したがって、この被覆率の閾値は、画像形成装置10の2次転写性と中間転写ベルト20のブリードアウト性とに鑑みて適宜調整することが好ましい。2次転写性が有利な条件、構成においては閾値を高く設定し、逆にブリードアウト性が有利な条件、構成においては閾値を低く設定することが望ましい。この被覆率の閾値は、例えば、画像形成装置10の構成や個体ごとに変更してもよいし、同じ画像形成装置10においても環境条件、記録材条件(記録材の種類)、プリントモードなど(これらのうち少なくとも1つであってよい。)に応じて変更してもよい。
【0117】
また、本実施例では、単位ブロックの大きさを24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)に設定している。しかし、この単位ブロックの大きさは本実施例の値に限定されるものではなく、画像形成装置10の2次転写性と中間転写ベルト20のブリードアウト性とに鑑みて適宜変更することが好ましい。
【0118】
また、本実施例では、Isum(T1)とIsum(T2)とが異なる場合に、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値の変更量を+7μA又は-7μAに設定している。しかし、この変更量は、本実施例の値に限定されるものではなく、画像形成装置10の2次転写性と中間転写ベルト20のブリードアウト性とに鑑みて適宜調整することが好ましい。2次転写目標電流値の変更量の絶対値が大きいほど、イオン導電剤の偏在を抑制する効果は高まるものの、出力画像に画像不良が生じるリスクが高まる可能性がある。そのため、上記被覆率の閾値の場合と同様、画像形成装置10の構成や、環境条件、記録材条件、プリントモードなどに応じて最適な変更量を選択することが好ましい。
【0119】
また、Iref(T2)に対して、2次転写目標電流値が高い側と低い側とにおける2次転写性の許容度に差がある場合は、変更量の絶対値を、2次転写目標電流値が高い側と低い側とで変更してもよい。例えば、Iref(T2)に対して2次転写目標電流値が低い側における2次転写性の許容度が大きい場合、図5のS104における変更量は+7μAのままにして、図5のS105における変更量を-9μAと大きくしてもよい。逆に、Iref(T2)に対して2次転写目標電流値が高い側における2次転写性の許容度が大きい場合には、該高い側で変更量の絶対値を大きくすることができる。
【0120】
また、2次転写目標電流値の変更量は、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合に応じて変更してもよい。すなわち、イオン導電剤の偏在度合が小さい場合には、2次転写目標電流値の変更量を小さくし、出力画像に画像不良が生じるリスクを更に低くすることが好ましい。例えば、Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、Isum(T1)とIsum(T2)との差分が所定の閾値以上の場合は2次転写目標電流値の変更量を+7μAとする。そして、Isum(T1)とIsum(T2)との差分が該所定の閾値未満の場合は、イオン導電剤の偏在度合が小さいと判断できるため、2次転写目標電流値の変更量を+3μAとする。
【0121】
また、2次転写目標電流値の変更量は、画像に対する目標電流値変更領域S(T2)の占める割合に応じて変更してもよい。すなわち、画像に対する目標電流値変更領域S(T2)の占める割合が大きい場合、2次転写目標電流値の変更量を小さくしても、イオン導電剤の偏在を抑制する効果は大きい。そのため、この場合は、2次転写目標電流値の変更量を小さくし、出力画像に画像不良が生じるリスクを更に低くすることが好ましい。例えば、Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、画像に対する領域S(T2)の占める割合が所定の閾値未満の場合は2次転写目標電流値の変更量を+7μAとする。そして、画像に対する領域S(T2)の占める割合が該所定の閾値以上の場合は2次転写目標電流値の変更量を+5μAとする。
【0122】
また、2次転写目標電流値の変更量は、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」と、「主走査方向に沿って全て余白部である領域」と、で変えてもよい。余白部では、画像不良が発生しないため、より変更量を大きくし、積極的にイオン導電剤の偏在を抑制することが好ましい。
【0123】
また、本実施例では、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」を目標電流値変更領域S(T2)としているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。例えば、低被覆率画像の2次転写性に関する2次転写目標電流値の許容範囲が狭い条件などにおいては、「主走査方向に沿って全て余白部である領域」のみを目標電流値変更領域S(T2)としてもよい。すなわち、画像の存在しない余白部のみで、2次転写目標電流値を変更することとしてもよい。例えば、Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、余白部以外の領域における2次転写目標電流値をIref(T2)とし、余白部のみIref(T2)+7μAとする。これにより、イオン導電剤の偏在抑制効果はやや低下するものの、画像上で2次転写目標電流値を変更しないため、出力画像上に画像不良が生じるリスクを無くすことができる。
【0124】
なお、本実施例では、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、2次転写工程における2次転写目標電流値を、目標電流値変更領域S(T2)とそれ以外の領域とで変更している。2次転写目標電流値が高くなればなるほど、2次転写電源44から2次転写ローラ24に印加される2次転写電圧値も高くなる。そのため、2次転写目標電流値が高いということは、2次転写電圧値も高いことを意味する。
【0125】
また、本実施例では、2次転写工程において2次転写ローラ24に印加する2次転写電圧を定電流制御する例について説明したが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。2次転写工程において2次転写ローラ24に印加する2次転写電圧を定電圧制御する構成においても、本実施例と同様の効果を得ることができる。定電圧制御を採用した構成においては、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、2次転写工程における2次転写電圧値を、本実施例における目標電流値変更領域S(T2)に対応する領域S(T2)と、それ以外の領域と、で変更する。Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、領域S(T2)における2次転写電圧値は、領域S(T2)以外の領域における2次転写電圧値よりも大きくする。一方、Isum(T1)<Isum(T2)の条件において、領域S(T2)における2次転写電圧値は、領域S(T2)以外の領域における2次転写電圧値よりも小さくする。これにより、2次転写工程において定電圧制御を採用した構成においても、本実施例と同様の効果を得ることが可能となる。なお、本実施例では、1次転写電圧を定電圧制御したが、1次転写電圧は定電流制御してもよい。
【0126】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、実施例1における説明を援用し、ここでの再度の詳しい説明は省略する。
【0127】
本実施例では、実施例1と同様に画像形成時に2次転写工程で中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することに加えて、画像形成時に1次転写工程においても中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することを可能とする。
【0128】
(1)1次転写電圧の制御方法
本実施例における1次転写電圧の制御方法について説明する。
【0129】
<概要>
本実施例では、感光ドラム2上のトナー像を中間転写ベルト20上に1次転写するために、1次転写電源40から1次転写ローラ5に正極性の1次転写電圧が印加される。本実施例では、1次転写工程において1次転写ローラ5に印加される1次転写電圧は、1次転写目標電流値Iref(T1)に対応する1次転写電圧値で定電圧制御される。つまり、例えばフルカラーモードの場合、本実施例では、画像形成前の前回転動作において、各1次転写電流検知部50a~50dが検知する電流値が1次転写目標電流値Iref(T1)になるように、各1次転写電源40a~40dから各1次転写ローラ5a~5dに印加される電圧の定電流制御が行われる。そして、1次転写工程では、各1次転写電源40a~40dから各1次転写ローラ5a~5dに印加される1次転写電圧は、上記定電流制御時に検知された電圧値を目標電圧値(1次転写電圧値Vref(T1))として定電圧制御される。なお、モノクロモードの場合の1次転写電圧値の設定方法も、上記フルカラーモードの場合と同様である。ただし、モノクロモードでは、上述の定電流制御による1次転写電圧値の設定動作は、ブラック用の画像形成部1dのみで行われる。
【0130】
1次転写目標電流値Iref(T1)は、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)の情報である環境情報、プリントモードの情報などに応じて最適な転写性が得られるように、予め決められた目標電流値が選択される。
【0131】
つまり、ROM312には、環境情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた1次転写目標電流値に関する情報が記憶されている。また、画像形成装置10には、環境センサ(図示せず)が設けられている。CPU311は、この環境センサから環境情報を取得することができる。また、CPU311は、ホストコンピュータ300からコントローラ部301を介して入力されるプリントジョブの情報に含まれるプリントモード(フルカラーモード、モノクロモードなど)の情報を取得することができる。したがって、CPU311は、上記取得した環境情報、プリントモードの情報などに基づいて、ROM312に記憶されている予め決められた1次転写目標電流値から対応するものを選択することができる。
【0132】
本実施例の特徴の1つは、1次転写工程において、1次転写電圧値を予め決められた1次転写目標電流値Iref(T1)に対応する1次転写電圧値Vref(T1)で固定することなく、中間転写ベルト20に1次転写する画像の画像情報に応じて変更することである。また、本実施例の特徴の他の1つは、1次転写電圧値の変更量を中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に基づいて変えることである。
【0133】
本実施例における1次転写電圧の制御は、「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」と、「1次転写電圧の変更量の決定」と、の2つに大別される。
【0134】
<1次転写電圧変更領域S(T1)の決定>
まず、「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」について説明する。
【0135】
・1次転写電圧変更領域S(T1)の決定の原理
「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」は、実施例1における「目標電流値変更領域S(T2)の決定」と基本的な思想は同様である。本実施例では、中間転写ベルト20に1次転写する画像における、1次転写電圧値を変更しても許容できないレベルの画像不良が発生しない領域を、1次転写電圧変更領域S(T1)として決定する。
【0136】
・1次転写電圧変更領域S(T1)の決定方法
次に、具体的な「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」の方法について説明する。この方法は、実施例1における「目標電流値変更領域S(T2)の決定」の具体的な方法と同様である。なお、本実施例では、「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」における解析対象は、各画像形成部1で感光ドラム2から中間転写ベルト20に1次転写する画像である。ただし、実施例1と同様に、解析対象を記録材Pに2次転写する画像としてもよく、これによっても相応の効果が得られる。
【0137】
まず、画像解析部401は、元画像(600dpi)を24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)の単位ブロックに分割する。次に、画像解析部401は、全ての単位ブロックにおける被覆率を計算し、各単位ブロックの被覆率が所定の閾値よりも小さいか否かを判断する。なお、本実施例では、被覆率の閾値は実施例1と同じく30%に設定している。画像解析部401は、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が30%以上の場合は、該単位ブロックを非低被覆率ブロックとする。一方、画像解析部401は、単位ブロックにおける画像領域が占める割合が30%未満の場合は、該単位ブロックを低被覆率ブロックとする。
【0138】
次に、画像解析部401は、各単位ブロックの被覆率の計算結果に基づいて、1次転写電圧変更領域S(T1)を決定する。本実施例では、実施例1における目標電流値変更領域S(T2)の場合と同様、画像解析部401は、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」を1次転写電圧変更領域S(T1)として決定する。
【0139】
<1次転写電圧の変更量の決定>
次に、「1次転写電圧の変更量の決定」について説明する。
【0140】
・1次転写電圧の変更量の決定方法
本実施例では、1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値の変更量を、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支を均整化するように決定する。これにより、中間転写ベルト20におけるイオン導電剤の偏在(解離や偏在)を抑制し、導電剤のブリードアウトを抑制することが可能となる。
【0141】
本実施例では、実施例1と同様に、エンジン制御部302のCPU311は、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支をモニターするために、1次転写電流の積算値と2次転写電流の積算値とを逐次計算して、それぞれ不揮発性メモリ315に記憶させる。具体的には、CPU311は、画像形成装置10の稼働が開始されてから100msecごとに、1次転写電流検知部50a~50dの電流検知結果、及び2次転写電流検知部54の電流検知結果を積算し、それぞれIsum(T1)とIsum(T2)として不揮発性メモリ315に記憶させる。
【0142】
・1次転写電圧値の変更量を決定する手順
次に、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値の変更量を決定する手順について説明する。図7は、この手順の概略を示すフローチャート図である。なお、1次転写電圧変更領域S(T1)を単に「領域S(T1)」ともいう。
【0143】
CPU311は、プリントジョブの信号を受信すると、プリントジョブを開始し、画像形成動作における1次転写工程を実行する際に、中間転写ベルト20に1次転写する画像に領域S(T1)が存在するか否かを判断する(S201)。CPU311は、この判断を、各画像形成部1で感光ドラム2から中間転写ベルト20に1次転写する1ページの画像ごとに、画像解析部401から取得した「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」の結果に関する情報に基づいて行う。画像解析部401は、ホストコンピュータ300から受信した情報に基づいて、各画像形成部1で感光ドラム2から中間転写ベルト20に1次転写する1ページの画像ごとに、前述のようにして「1次転写電圧変更領域S(T1)の決定」を行い、その結果に関する情報をCPU311に送信する。CPU311は、画像解析部401から受信したこの情報を、必要に応じてRAM313に記憶させることができ、また必要に応じてRAM313から読み出して用いることができる。
【0144】
CPU311は、S201で領域S(T1)が存在しないと判断した場合、1次転写電圧値を、環境情報、プリントモードの情報などに応じて予め決められた1次転写目標電流値Iref(T1)に対応する1次転写電圧値Vref(T1)のままとする(S206)。
【0145】
一方、CPU311は、S201で領域S(T1)が存在すると判断した場合は、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に基づいて、領域S(T1)における1次転写電圧値を決定する。まず、CPU311は、不揮発性メモリ315から読み出したIsum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、Isum(T1)とIsum(T2)とが同じ値であるか否かを判断する(S202)。
【0146】
CPU311は、S202で同じ値であると判断した場合は、領域S(T1)における1次転写電圧値を、Vref(T1)のままとする(S206)。この場合は、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に偏りがない状態であると判断できるからである。なお、領域S(T1)以外の領域における1次転写電圧値についても、Vref(T1)のままとする。
【0147】
また、CPU311は、S202で同じ値ではないと判断した場合(Isum(T1)とIsum(T2)との間に差分が生じる場合)は、Isum(T1)がIsum(T2)よりも大きいか否かを判断する(S203)。Isum(T1)とIsum(T2)との間の大小関係に応じて、領域S(T1)における1次転写電圧値をVref(T1)から変更するためである。
【0148】
CPU311は、S203でIsum(T1)がIsum(T2)よりも大きいと判断した場合は、領域S(T1)における1次転写電圧値を、Vref(T1)よりも低い値に設定する(S204)。この場合は、中間転写ベルト20の外周面側にカチオン性の導電剤が偏在していると判断できることから、このイオン導電剤の偏りを抑制するためである。本実施例では、各画像形成部1で領域S(T1)における1次転写電圧値をVref(T1)-200Vに設定する。なお、領域S(T1)以外の領域における1次転写電圧値は、Vref(T1)のままとする。
【0149】
一方、CPU311は、S203でIsum(T1)がIsum(T2)よりも小さいと判断した場合は、領域S(T1)における1次転写電圧値を、Vref(T1)よりも高い値に設定する(S205)。この場合、中間転写ベルト20の外周面側にアニオン性の導電剤が偏在していると判断できることから、このイオン導電剤の偏りを抑制するためである。本実施例では、各画像形成部1で領域S(T1)における1次転写電圧値をVref(T1)+200Vに設定する。なお、領域S(T1)以外の領域における1次転写電圧値は、Vref(T1)のままとする。
【0150】
そして、CPU311は、各画像形成部1ごとに、以上のようにして決定した1次転写電圧値で、1次転写工程を実行する。
【0151】
このように、本実施例では、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に基づいて、1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値を変更することで、画像形成時に中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを抑制することが可能となる。また、本実施例では、この制御を、実施例1で説明した目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値の変更と組み合わせることにより、より高いイオン導電剤の偏在抑制効果を得ることができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、2次転写目標電流値の変更と1次転写電圧値の変更とのうち1次転写電圧値の変更のみを行ってもよい。
【0152】
(2)画像出力実験結果
次に、本実施例の効果を検証するために行った画像出力実験の結果について説明する。ここでは、実施例1と本実施例とを比較した。また、画像出力実験は、フルカラーモードとモノクロモードとでそれぞれ行った。
【0153】
<フルカラーモード>
まず、フルカラーモードにおける画像出力実験の結果について説明する。
【0154】
画像出力実験としては、以下に示す通紙耐久試験を行い、実施例1と本実施例とでベルトクリーニング装置32のクリーニングブレード31のクリーニング性能を比較した。
【0155】
試験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。プリントモードは、フルカラーノーマルプリントモードとして、繰り返し連続プリントを実行した。このモードでは、プロセススピードは300mm/sec、スループットは1分間に55枚である。この条件におけるIref(T1)は15μAであり、Vref(T1)は1500Vであり、Iref(T2)は30μAである。
【0156】
出力画像としては、次のような画像を用いた。記録材Pの搬送方向に関する記録材Pの先端側半分は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像の印字率がそれぞれ2%、かつ、単位ブロック内の被覆率が8%の画像である。後端側半分は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像の印字率が25%、かつ、単位ブロック内の被覆率が100%のベタ画像である。すなわち、この出力画像における目標電流値変更領域S(T2)の占める割合(面積)、及びこの出力画像における1次転写電圧変更領域S(T1)の占める割合(面積)は、それぞれ50%である。
【0157】
また、この通紙耐久試験では、連続プリント中に所定の頻度で非画像形成時の調整動作を実行し、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを矯正した。すなわち、所定のページ数のプリントを行った際に一度プリントを中断し、非画像形成時の調整動作を実行した。具体的な調整動作の内容は、実施例1のフルカラーモードでの通紙耐久試験に関して説明した調整動作の内容と同一である。
【0158】
そして、通紙耐久試験中に出力画像のサンプリングを行い、15万枚のプリントが終了するまでに、出力画像上にクリーニング不良が発生するか否かを観察することで評価した。評価基準は、クリーニング不良が発生しない場合を「○(良好)」とした。結果を表3に示す。表3には、本実施例と実施例1とにおける、非画像形成時の調整動作の実行頻度、調整動作に伴うダウンタイムの所要時間、及び通紙耐久試験中の画像不良(クリーニング不良)の発生の有無を示している。
【0159】
【表3】
【0160】
表3に示すように、実施例1及び本実施例の何れにおいても、クリーニング不良が発生しなかった。
【0161】
ただし、本実施例の構成では、実施例1の構成と異なり、非画像形成時の調整動作の実行頻度を100ページ当たり1回まで低くした条件においても、クリーニング不良が発生せず、実施例1と同様の良好な結果が得られた。本実施例では、領域S(T2)における2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)から変更する。更に、本実施例では、領域S(T1)における1次転写電圧値をVref(T1)の1500Vから1300Vに変更する。そのため、2次転写工程だけでなく1次転写工程時においても中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができる。これにより、本実施例では、非画像形成時の調整動作の実行頻度を更に下げ、ダウンタイム時間を抑制しながら、イオン導電剤のブリードアウト起因のクリーニング不良を抑制することができる。
【0162】
<モノクロモード>
次に、モノクロモードにおける画像出力実験の結果について説明する。
【0163】
上述のフルカラーモードにおける画像出力実験と同様に、通紙耐久試験を行い、実施例1と本実施例とでベルトクリーニング装置32のクリーニングブレード31のクリーニング性能を比較した。
【0164】
試験環境は、温度を23℃、相対湿度を50%とした。記録材Pとしては、GFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いた。プリントモードは、モノクロノーマルプリントモードとして、繰り返し連続プリントを実行した。このモードでは、プロセススピードは300mm/sec、スループットは1分間に55枚である。この条件におけるIref(T1)は15μAであり、Vref(T1)は1500Vであり、Iref(T2)は25μAである。
【0165】
出力画像としては、次のような画像を用いた。記録材Pの搬送方向に関する記録材Pの先端側半分は、単位ブロック内の被覆率が8%の画像(ブラック)である。後端側半分は、単位ブロック内の被覆率が100%のベタ画像(ブラック)である。すなわち、この出力画像における目標電流値変更領域S(T2)の占める割合(面積)、及びこの出力画像における1次転写電圧変更領域S(T1)の占める割合(面積)は、それぞれ50%である。
【0166】
また、この通紙耐久試験では、連続プリント中に所定の頻度で非画像形成時の調整動作を実行し、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを矯正した。具体的な調整動作の内容は、実施例1のモノクロモードでの通紙耐久試験に関して説明した調整動作の内容と同一である。
【0167】
そして、通紙耐久試験中に出力画像のサンプリングを行い、15万枚のプリントが終了するまでに、出力画像上にクリーニング不良が発生するか否かを観察することで評価した。評価基準は、クリーニング不良が発生しない場合を「○(良好)」とした。結果を表4に示す。表4には、本実施例と実施例1とにおける、非画像形成時の調整動作の実行頻度、調整動作に伴うダウンタイムの所要時間、及び通紙耐久試験中の画像不良(クリーニング不良)の発生の有無を示している。
【0168】
【表4】
【0169】
表4に示すように、実施例1及び本実施例のいずれにおいても、クリーニング不良が発生しなかった。
【0170】
ただし、本実施例の構成では、実施例1の構成と異なり、非画像形成時の調整動作の実行頻度を100ページ当たり1回まで低くした条件においても、クリーニング不良が発生せず、実施例1と同様の良好な結果が得られた。本実施例では、領域S(T2)における2次転写目標電流値を予め決められた2次転写目標電流値Iref(T2)から変更する。更に、本実施例では、領域S(T1)における1次転写電圧値をVref(T1)の1500Vから1700Vに変更する。そのため、2次転写工程だけでなく1次転写工程時においても中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができる。これにより、本実施例では、非画像形成時の調整動作の実行頻度を更に下げ、ダウンタイム時間を抑制しながら、イオン導電剤のブリードアウト起因のクリーニング不良を抑制することができる。
【0171】
このように、本実施例では、制御手段311は、画像情報に基づいて、1枚の記録材Pに形成する画像の1次転写を行う際に1次転写部材5に印加する電圧を、所定面積当たりの画像領域の占める割合を示す被覆率が第1の被覆率である第1の領域が1次転写部T1を通過している際の第1の電圧と、被覆率が第1の被覆率よりも大きい第2の被覆率である第2の領域が1次転写部T1を通過している際の第2の電圧と、で異ならせる動作を実行可能であり、第2の電圧に対する第1の電圧の変更量が、第1のモード(フルカラーモード)と第2のモード(モノクロモード)とで異なる。
【0172】
以上説明したように、本実施例では、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値を変更するだけでなく、1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値を変更する。これにより、画像形成時に、2次転写工程だけでなく1次転写工程においても中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在を抑制することができ、より効果的にイオン導電剤のブリードアウトを抑制することができる。また、本実施例では、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支に応じて、2次転写目標電流値の変更量、及び1次転写電圧値の変更量を変える。典型的には、フルカラーモードとモノクロモードとで、2次転写目標電流値の変更量、及び1次転写電圧値の変更量を変える。これにより、プリントモードなどの動作条件の違いによるイオン導電剤の偏在状態に応じて、適切に中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏りを抑制することが可能となる。
【0173】
(3)変形例
本実施例では、低被覆率ブロックと非低被覆率ブロックとの境界を示す被覆率の閾値を30%に設定しているが、この被覆率の閾値は本実施例の値に限定されるものではない。閾値を高く設定すれば、低被覆率ブロックと判別される単位ブロック数が増え、画像中の1次転写電圧変更領域S(T1)の割合が増加する。それに伴い、イオン導電剤の偏在を抑制する効果は高まり、中間転写ベルト20のブリードアウトの抑制には有利に働く。しかし、被覆率の高い画像においても、1次転写電圧値を変更することになり、出力画像に画像不良が生じるリスクが高まる可能性がある。したがって、この被覆率の閾値は、画像形成装置10の1次転写性と中間転写ベルト20のブリードアウト性とに鑑みて適宜調整することが好ましい。1次転写性が有利な条件、構成においては閾値を高く設定し、逆にブリードアウト性が有利な条件、構成においては閾値を低く設定することが望ましい。この被覆率の閾値は、例えば、画像形成装置10の構成や個体ごとに変更してもよいし、同じ画像形成装置10においても環境条件、プリントモードなどに応じて変更してもよい。
【0174】
また、本実施例では、領域S(T1)を決めるための閾値と、領域S(T2)を決めるための閾値と、を同じ値に設定したが、これらは同じ値に設定することに限定されるものではない。これら領域S(T1)、領域S(T2)を決めるための閾値は、画像形成装置10の1次転写性と2次転写性とに応じて異なる値としてもよい。
【0175】
また、本実施例では、単位ブロックの大きさを24ピクセル×24ピクセル(総ピクセル数=576)に設定している。しかし、この単位ブロックの大きさは本実施例の値に限定されるものではなく、画像形成装置10の1次転写性と中間転写ベルト20のブリードアウト性とに鑑みて適宜変更することが好ましい。
【0176】
また、本実施例では、Isum(T1)とIsum(T2)とが異なる場合に、1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値の変更量を-200V又は+200Vに設定している。しかし、この変更量は、本実施例の値に限定されるものではなく、画像形成装置10の1次転写性と中間転写ベルトのブリードアウト性とに鑑みて適宜調整することが好ましい。1次転写電圧値の変更量の絶対値が大きいほど、イオン導電剤の偏在を抑制する効果は高まるものの、出力画像に画像不良が生じるリスクが高まる可能性がある。そのため、上記被覆率の閾値の場合と同様、画像形成装置10の構成や、環境条件、プリントモードなどに応じて最適な変更量を選択することが好ましい。
【0177】
また、Vref(T1)に対して、1次転写電圧値が高い側と低い側とにおける1次転写性の許容度に差がある場合は、変更量の絶対値を、1次転写電圧値が高い側と低い側とで変更してもよい。例えば、Vref(T1)に対して1次転写電圧値が高い側における1次転写性の許容度が大きい場合、図7のS204における変更量は-200Vのままにして、図7のS205における変更量を+300Vと大きくしてもよい。逆に、Vref(T1)に対して1次転写電圧値が低い側における1次転写性の許容度が大きい場合には、該低い側で変更量の絶対値を大きくすることができる。
【0178】
また、1次転写電圧値の変更量は、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合に応じて変更してもよい。すなわち、イオン導電剤の偏在度合が小さい場合には、1次転写電圧値の変更量を小さくし、出力画像に画像不良が生じるリスクを更に低くすることが好ましい。例えば、Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、Isum(T1)とIsum(T2)との差分が所定の閾値以上の場合は1次転写電圧値の変更量を-200Vとする。そして、Isum(T1)とIsum(T2)との差分が該所定の閾値未満の場合は、イオン導電剤の偏在度合が小さいと判断できるため、1次転写電圧値の変更量を-100Vとする。
【0179】
また、1次転写電圧値の変更量は、画像に対する1次転写電圧変更領域S(T1)の占める割合に応じて変更してもよい。すなわち、画像に対する1次転写電圧変更領域S(T1)の占める割合が大きい場合、1次転写電圧値の変更量を小さくしても、イオン導電剤の偏在を抑制する効果は大きい。そのため、この場合は、1次転写電圧値の変更量を小さくし、出力画像に画像不良が生じるリスクを更に低くすることが好ましい。例えば、Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、画像に対する領域S(T1)の占める割合が所定の閾値未満の場合は1次転写電圧値の変更量を-200Vとする。そして、画像に対する領域S(T2)の占める割合が該所定の閾値以上の場合は2次転写目標電流値の変更量を-150Vとする。
【0180】
また、1次転写電圧値の変更量は、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」と、「主走査方向に沿って全て余白部である領域」と、で変えてもよい。余白部では、画像不良が発生しないため、より変更量を大きくし、積極的にイオン導電剤の偏在を抑制することが好ましい。
【0181】
なお、1次転写電圧値の変更量を高い側に変更する際、1次転写電圧値を極端に高い電圧に設定すると、後述するドラムメモリが発生する可能性がある。1次転写ローラ5に極端に高い電圧を印加すると、1次転写部T1における過剰な放電により感光ドラム2の表面電位に電位ムラが生じる。この表面電位ムラが、その後の帯電工程において一様な電位に均されない場合、感光ドラム2の1周後に表面電位ムラ起因のゴースト画像(「ドラムメモリ」)が発生する。そのため、1次転写電圧値の変更量の上限値に関しては、ドラムメモリが発生する1次転写電圧値の閾値よりも低く設定することが望ましい。
【0182】
また、本実施例では、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」を1次転写電圧変更領域S(T1)としているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。例えば、低被覆率画像の1次転写性に関する1次転写電圧値の許容範囲が狭い条件などにおいては、「主走査方向に沿って全て余白部である領域」のみを1次転写電圧変更領域S(T1)としてもよい。すなわち、画像の存在しない余白部のみで、1次転写電圧値を変更することとしてもよい。例えば、Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、余白部以外の領域における2次転写目標電流値をVref(T1)とし、余白部のみVref(T1)-200Vとする。これにより、イオン導電剤の偏在抑制効果はやや低下するものの、画像上で1次転写電圧値を変更しないため、出力画像上に画像不良が生じるリスクを無くすことができる。
【0183】
なお、本実施例では、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、1次転写工程における1次転写電圧値を、1次転写電圧変更領域S(T1)とそれ以外の領域とで変更している。1次転写電圧値が高くなればなるほど、1次転写電流検知部50が検知する1次転写電流も高くなる。そのため、1次転写電圧値が高いということは、1次転写電流も高いことを意味する。
【0184】
また、本実施例では、1次転写工程において1次転写ローラ5に印加する1次転写電圧を定電圧制御する例について説明したが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。1次転写工程において1次転写ローラ5に印加する1次転写電圧を定電流制御する構成においても、本実施例と同様の効果を得ることができる。定電流制御を採用した構成においては、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、1次転写工程における1次転写目標電流値を、本実施例における1次転写電圧変更領域S(T1)に対応する領域S(T1)と、それ以外の領域と、で変更する。Isum(T1)>Isum(T2)の条件において、領域S(T1)における1次転写目標電流値は、領域S(T1)以外の領域における1次転写目標電流値よりも小さくする。一方、Isum(T1)<Isum(T2)の条件において、領域S(T1)における1次転写目標電流値は、領域S(T1)以外の領域における1次転写目標電流値よりも大きくする。これにより、1次転写工程において定電流制御を採用した構成においても、本実施例と同様の効果を得ることが可能となる。
【0185】
また、本実施例では、各1次転写ローラ5a~5dにそれぞれ1次転写電源40a~40dを接続して、それぞれ個別に1次転写電圧値を印加しているが、1次転写電源40は複数の1次転写ローラ5に対して共通化してもよい。例えば、図8に示すように、イエロー、マゼンタ、シアンの各色用の1次転写ローラ5a~5cを共通の1次転写電源(高圧電源回路)80に接続してもよい。この1次転写電源80は、共通の1次転写電流検知部(1次転写電流検知回路)81を介して上記1次転写ローラ5a~5cに接続されている。この場合、1次転写電源80から上記1次転写ローラ5a~5cに、同時に共通の1次転写電圧が印加される。図8に示す構成の場合、1次転写電源80から上記1次転写ローラ5a~5cに印加する1次転写電圧値を変更する条件は、イエロー、マゼンタ、シアンの全ての色の1次転写部T1に1次転写電圧変更領域S(T1)があるタイミングに限定される。イエロー、マゼンタ、シアンのいずれか1色の1次転写部T1でも領域S(T1)がない場合に共通の1次転写電圧値を変更すると、該色において画像不良が発生する可能性がある。そのため、図8に示す構成では、Isum(T1)及びIsum(T2)に基づいて、1次転写工程における1次転写電圧値を変更する際、イエロー、マゼンタ、シアンの全ての色の1次転写部T1に1次転写電圧変更領域S(T1)があるタイミングにおいてのみ、1次転写電源80から上記1次転写ローラ5a~5cに印加する1次転写電圧値を変更する。
【0186】
[実施例3]
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、実施例1における説明を援用し、ここでの再度の詳しい説明は省略する。
【0187】
本実施例では、画像形成装置10が、1次転写部材及び2次転写部材とは別に、中間転写ベルト20に電圧を印加する(電流を供給する)部材を備えた構成について説明する。本実施例では、該部材として、図9に示すように導電性ブラシ70を備えた構成について説明する。図9は、本実施例の画像形成装置10の要部の概略断面図である。
【0188】
図9に示す構成では、画像形成装置10は、中間転写ベルト20の外周面に当接するクリーニング補助部材としての導電性ブラシ70を有する。導電性ブラシ70は、中間転写ベルト20の搬送方向に関して、クリーニングブレード31よりも下流側、かつ、1次転写部T1(最上流の1次転写部T1a)よりも上流側に位置する。導電性ブラシ70は、後述するように、クリーニングブレード31で回収されなかった2次転写残トナーの一部を静電的に回収するなどして、出力画像上にクリーニング不良起因の画像不良が顕在化することを抑制する役割を有する。
【0189】
本実施例における導電性ブラシ70のブラシ繊維は、材料として導電性を付与したナイロンを使用して構成され、繊度は7デシテックス、パイル長は5mm、密度は70KF/inch、ブラシ幅(中間転写ベルト20の搬送方向における幅)は5mmである。本実施例における導電性ブラシ70の電気抵抗値は、導電性ブラシ70をアルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、該アルミシリンダを50mm/secの周速度で回転させた状態で500Vを印加した場合において1.0×10Ωである。
【0190】
図9に示すように、導電性ブラシ70は、クリーニング電流検知部(クリーニング電流検知回路)71を介して、クリーニング電源(高圧電源回路)72と電気的に接続されている。本実施例では、クリーニング電源72は、導電性ブラシ70に正極性の電圧と負極性の電圧とを選択的に印加できるようになっている。
【0191】
ベルトクリーニング動作時には、導電性ブラシ70には、クリーニング電源72から正極性の直流電圧が印加される。クリーニング電源72は、クリーニング電流検知部71により検知される電流値が予め設定された目標電流値になるように電圧の出力値を調整して、導電性ブラシ70に印加する電圧を定電流制御する。目標電流値にはクリーニングブレード31をすり抜けたトナーを過剰帯電させることなく、また帯電不足によるクリーニング不良を生じさせない値が選択される。本実施例では、ベルトクリーニング動作時に導電性ブラシ70に印加される電圧の目標電流値は20μAである。
【0192】
ベルトクリーニング動作時に、導電性ブラシ70に正極性の電圧が印加されることで、導電性ブラシ70から中間転写ベルト20に向けて正の電界が形成される。これにより、クリーニングブレード31をすり抜けたトナーのうち負極性に帯電したトナーを導電性ブラシ70が静電的に回収すると共に、導電性ブラシと2次転写残トナーとの間での放電により2次転写残トナーを正極性側に帯電させる。導電性ブラシ70によって正極性に帯電させられた2次転写残トナーは、中間転写ベルト20の回転に伴い第1の画像形成部1aの1次転写部T1aへと進む。そして、第1の画像形成部1aの1次転写ローラ5aに印加される正極性の1次転写電圧の作用により、中間転写ベルト20から第1の画像形成部1aの感光ドラム2aに転移(逆転写)させられる。この逆転写は、1次転写と同時に行われ得る。この感光ドラム2aに逆転写されたトナーは、その後第1の画像形成部1aのドラムクリーニング装置6aにより感光ドラム2a上から除去されて回収される。このように、導電性ブラシ70によって、クリーニングブレード31をすり抜けたトナーの一部を静電的に回収すると共に、導電性ブラシ70を通過するトナーを一様に正極性に帯電させて1次転写部T1aで回収する。これにより、クリーニングブレード31をすり抜けたトナーを中間転写ベルト20上から除去することが可能となる。
【0193】
図9に示す構成では、中間転写ベルト20に流れる電流量の収支を考える場合、1次転写部材及び2次転写部材から中間転写ベルト20に流れる電流だけでなく、導電性ブラシ70から中間転写ベルト20に流れる電流についても加味することが好ましい。
【0194】
そこで、本実施例では、エンジン制御部302のCPU311は、実施例1、2で説明したIsum(T1)及びIsum(T2)に加え、導電性ブラシ70に流れる電流の積算値であるIsum(B)を逐次計算して、不揮発性メモリ315に記憶させる。具体的には、CPU311は、画像形成装置10の稼働が開始されてから100msecごとに、クリーニング電流検知部71の電流検知結果を逐次積算し、Isum(B)として不揮発性メモリ315に記憶させる。つまり、不揮発性メモリ315には、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)を記憶する記憶領域がそれぞれ設けられている。
【0195】
そして、本実施例では、CPU311は、実施例1で説明した目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値を決めるにあたって、Isum(T1)及びIsum(T2)だけでなく、Isum(B)についても考慮する。同様に、本実施例では、CPU311は、実施例2で説明した1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値を決めるにあたって、Isum(T1)及びIsum(T2)だけでなく、Isum(B)についても考慮する。
【0196】
例えば、実施例1では、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値を、Isum(T1)とIsum(T2)との大小関係に基づいて決定していた。これに対して、本実施例では、中間転写ベルト20の外周面側から内周面側に流れる電流量の総和である「Isum(T2)+Isum(B)」と、内周面側から外周面側に流れる電流量の総和である「Isum(T1)」とを比較して2次転写目標電流値を決定する。これにより、導電性ブラシ70がイオン導電剤の偏在に与える影響についても加味することができる。具体的には、本実施例では、図5のS102の処理における「Isum(T1)≠Isum(T2)か?」を、「Isum(T1)≠Isum(T2)+Isum(B)か?」とする。また、本実施例では、図5のS103の処理における「Isum(T1)>Isum(T2)か?」を、「Isum(T1)>Isum(T2)+Isum(B)か?」とする。
【0197】
同様に、実施例2で説明した1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値も、「Isum(T2)+Isum(B)」と「Isum(T1)」とを比較して決定する。具体的には、本実施例では、図7のS202の処理における「Isum(T1)≠Isum(T2)か?」を、「Isum(T1)≠Isum(T2)+Isum(B)か?」とする。また、本実施例では、図7のS203の処理における「Isum(T1)>Isum(T2)か?」を、「Isum(T1)>Isum(T2)+Isum(B)か?」とする。
【0198】
このように、1次転写部材及び2次転写部材とは別に、中間転写ベルト20に電圧を印加する(電流を供給する)部材を備えた構成においては、該部材に流れる電流の積算値(本実施例におけるIsum(B))も考慮する。これにより、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合をより正確に把握することができる。そして、イオン導電剤の偏在度合に応じて、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値、あるいは1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値を適正に変更することで、イオン導電剤のブリードアウトを抑制することができる。
【0199】
なお、本実施例では、1次転写部材及び2次転写部材とは別に中間転写ベルト20に電圧を印加する(電流を供給する)部材として導電性ブラシ70を備えた例について説明したが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。電圧印加部材(電流供給部材)としては、例えば、固定配置された導電性ブラシ、回転可能なファーブラシ、弾性部材の層(弾性層)を備えた導電性弾性ローラ、導電性シートなどが挙げられる。
【0200】
また、1次転写部材及び2次転写部材とは別に中間転写ベルト20に電圧を印加する(電流を供給する)部材は、1つであることに限定されるものではなく、複数設けられていてもよい。その際、中間転写ベルトに流れる電流量の収支については、1次転写部材と2次転写部材から中間転写ベルトに流れる電流だけでなく、それ以外の全ての電圧印加部材から流れる電流についても加味することが好ましい。すなわち、中間転写ベルト20の外周面側から内周面側に流れる電流量の総和と、内周面側から外周面側に流れる電流量の総和と、を比較することで、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合をより正確に把握することができる。
【0201】
[その他の実施例]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0202】
上述の実施例では、「主走査方向に沿って、全ての単位ブロックが低被覆率ブロック、又は余白部である領域」を目標電流値変更領域S(T2)や1次転写電圧変更領域S(T1)に設定している。これに対し、被覆率情報だけでなく、印字率情報を用いて、領域S(T2)や領域S(T1)を決定してもよい。例えば、レッド色のテキストのように、低被覆率であっても印字率が高い画像において、2次転写目標電流値や1次転写電圧値を変更すると画像不良が生じる可能性がある条件がある。このような画像では、2次転写性に関する2次転写目標電流値の許容範囲や1次転写性に関する1次転写電圧値の許容範囲が狭い場合があるからである。この場合、被覆率情報だけでなく、印字率情報を用いて領域S(T2)や領域S(T1)を決定してもよい。一例として、主走査方向に沿って、全ての単位ブロックの被覆率が30%未満、かつ、各色の印字率の合計が50%未満の領域を、領域S(T2)や領域S(T1)とする、といった条件としてもよい。
【0203】
また、上述の実施例では、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)は、100msecごとに各電流検知部が検知した電流値を加算した積算値としているが、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。例えば、条件や構成に応じて加算値に重みづけをしてもよい。加算値に重みづけをする理由は、条件や構成の差によって生じるイオン導電剤の偏在に与える影響差を考慮し、偏在度合をより正確に把握するためである。例えば、2次転写部T2を記録材Pが通過している時(「通紙中」)と、通過していない時(「非通紙中」とで、2次転写電流検知部54の電流検知結果が同じだとしても、通紙中の方が非通紙中に比べ、イオン導電剤の偏在の進行度合いが大きい場合がある。この場合は、Isum(T2)への加算値は、非通紙中よりも通紙中のほうが高い値に設定することが好ましい。一例として、非通紙中は100msecごとに2次転写電流値を1.0倍した値を加算するのに対し、通紙中は100msecごとに2次転写電流値を1.1倍した値を加算する。また、2次転写部T2を通過する記録材Pの種類によっても、イオン導電剤の偏在度合が変化する場合がある。この場合は、記録材情報に応じて重みづけの係数を変えてもよい。このように、同じ2次転写電流値でも、イオン導電剤の偏在度合に与える影響が異なる場合は、Isum(T2)へ加算する量を適宜変更することが好ましい。
【0204】
また、環境条件やプロセススピードなどによっても、イオン導電剤の偏在度合が変化する場合は、環境情報やプリントモードなどに応じてIsum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)への加算値を変更することが好ましい。
【0205】
また、1次転写部材、2次転写部材、その他の電圧印加部材のそれぞれにおいて、イオン導電剤の偏在に与える影響度合が異なる場合は、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)のそれぞれの加算値に重みづけをすることが好ましい。例えば、2次転写電流検知部54の電流検知結果と、クリーニング電流検知部71の電流検知結果と、が同じ値の状態において、導電性ブラシ70によるイオン導電剤の偏在に与える影響が、2次転写ローラ24がイオン導電剤の偏在に耐える影響よりも小さい場合がある。この場合は、Isum(T2)への加算値をIsum(B)への加算値よりも高い値に設定することが好ましい。一例として、Isum(T2)には100msecごとに2次転写電流検知部54の検知結果を1.0倍した値を加算するのに対し、Isum(B)には100msecごとにクリーニング電流検知部71の検知結果を0.9倍した値を加算する。このように、同じ電流検知結果でも、イオン導電剤の偏在度合に与える影響が異なる場合には、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)のそれぞれに加算する量を適宜変更することが好ましい。
【0206】
また、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)は、画像形成装置10の停止時間に応じて、減算してもよい。この理由は、画像形成装置10の停止状態において、イオン導電剤の偏在が自然緩和する場合があり、これを加味するためである。例えば、連続プリントと、1ページごとに一定の停止時間をはさむ間欠プリントとで、間欠プリントのほうが所定枚数プリントした後のイオン導電剤の偏在度合が進行していない場合、停止状態における自然緩和を考慮することが好ましい。この場合、停止時間に応じて、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)から所定の値を減算することで、中間転写ベルト20内のイオン導電剤の偏在度合をより正確に把握することが可能となる。
【0207】
また、上述の実施例では、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)の積算は、中間転写ベルト20の全周に対して行った。これに対し、中間転写ベルト20を周方向に分割し、分割した領域ごとに、Isum(T1)、Isum(T2)、Isum(B)を積算してもよい。この理由は、中間転写ベルト20の周方向における局所的なイオン導電剤の偏在度合を考慮するためである。中間転写ベルト20に対して、各電圧印加部材の当接位置が異なるため、条件によっては、中間転写ベルト20の周方向において、ある領域はイオン導電剤の偏在が極端に進行しているのに対し、他の領域ではイオン導電剤がさほど偏在していないなどの偏りが生じる可能性がある。そこで、画像形成装置10は、中間転写ベルト20の周方向の位置を把握して、中間転写ベルト20の周方向の領域ごとのイオン導電剤の偏在度合を把握できるように構成することができる。以下で、図10を参照して、このような構成の一例について説明する。ここでは、実施例3と同様に導電性ブラシ70を備えた構成を例として説明する。
【0208】
例えば、図10に示すように、中間転写ベルト20の周方向の一部に位置指示手段としてのマーカー91を設ける。マーカー91としては、中間転写ベルト20の表面とは反射特性(反射率)が異なる部材(シールなど)を設けたり、中間転写ベルト20の表面に凹凸や傷を付けたりすることができる。また、画像形成装置10に、このマーカー91を読み取る位置検知手段としての位置検知センサ92を設ける。位置検知センサ92としては中間転写ベルト20の表面に向けて光を照射し、中間転写ベルト20又はマーカー91からの反射光を受光し、反射光量の変化に基づいてマーカー91を検知する光学センサを用いることができる。これにより、マーカー91の位置を基準として中間転写ベルト20の周方向の位置を把握することができる。そして、例えば、図10に示すように、マーカー91の位置を基準として、中間転写ベルト20を周方向にN個の領域(図10では9個の領域)に分割する。また、これらN個の領域ごとに、Isum-N(T1)、Isum-N(T2)、Isum-N(B)を逐次積算し、不揮発性メモリ315に記憶させる。つまり、不揮発性メモリ315には、上記N個の領域ごとに、Isum-N(T1)、Isum-N(T2)、Isum-N(B)を記憶する記憶領域がそれぞれ設けられている。例えば、Isum-1(T2)は、中間転写ベルト20の周方向の領域N=1が2次転写部T2を通過している時に2次転写電流検知部54が検知した電流のみを加算する。また、例えば、Isum-2(B)は、中間転写ベルト20の周方向の領域N=2が導電性ブラシ70の当接部を通過している時にクリーニング電流検知部71が検知した電流のみを加算する。このように、中間転写ベルト20の周方向の領域ごとに電流値の積算を行う。
【0209】
そして、目標電流値変更領域S(T2)における2次転写目標電流値、1次転写電圧変更領域S(T1)における1次転写電圧値を、中間転写ベルト20の周方向の各領域におけるIsum-N(T1)、Isum-N(T2)、Isum-N(B)に基づいて決定する。例えば、Isum-N(T1)、Isum-N(T2)、Isum-N(B)の関係が、領域N=1ではIsum-1(T1)>Isum-1(T2)+Isum-1(B)であったものとする。また、領域N=9ではIsum-9(T1)<Isum-9(T2)+Isum-9(B)であったものとする。この場合、2次転写工程において、領域N=1が2次転写部T2を通過している際は、画像中の領域S(T2)における2次転写目標電流値をIref(T2)よりも高くする。また、領域N=9が2次転写部T2を通過している際は、画像中の領域S(T2)における2次転写目標電流値はIref(T2)よりも小さくする。1次転写電圧値の変更に関しても同様である。
【0210】
このように、中間転写ベルト20を周方向に分割した領域ごとに、Isum-N(T1)、Isum-N(T2)、Isum-N(B)を積算し、各領域のイオン導電剤の偏在度合に応じて、2次転写目標電流値や1次転写電圧値を変更する。これにより、中間転写ベルト20の周方向における局所的なイオン導電剤の偏在度合の差を加味して、中間転写ベルト20のブリードアウトを抑制することができる。なお、中間転写ベルト20の周方向の位置を把握する方法は上記例示の方法に限定されるものではない。例えば、中間転写ベルト20が複数回転する間に取得した中間転写ベルト20からの反射光のプロファイルのマッチング結果に応じて、中間転写ベルト20の周方向の位置を検知する技術などが公知である。
【0211】
また、中間転写ベルト20内のイオン導電剤において、カチオン性の導電剤とアニオン性の導電剤とでブリードアウトしやすさが異なる場合、ブリードしやすさに応じて2次転写目標電流値や1次転写電圧値の変更量を変えてもよい。例えば、中間転写ベルト20の外周面からアニオン性の導電剤がブリードアウトしにくく、カチオン性の導電剤のみがブリードアウトしやすい場合を考える。なお、実施例3と同様に導電性ブラシ70を備えた構成を例とする。この場合、Isum(T1)>Isum(T2)+Isum(B)の条件では、2次転写目標電流値や1次転写電圧値を変更する。これに対し、Isum(T1)<Isum(T2)+Isum(B)の条件では、2次転写目標電流値や1次転写電圧値を変更しないようにしてもよい。すなわち、プリントモードに応じて、次のような制御としてもよい。つまり、フルカラーモードでは、領域S(T2)、領域S(T1)において、2次転写目標電流値や1次転写電圧値を変更する。これに対し、モノカラーモードでは領域S(T2)、領域S(T1)において2次転写目標電流値や1次転写電圧値を変更しないようにする。
【0212】
また、上述の実施例では、モノクロモードは、ブラック用の画像形成部1dにおいて画像形成を行うブラック単色モードであったが、他の色用の画像形成部1で単色画像を形成するモードであってもよい。
【0213】
また、上述の実施例では、1次転写部材、2次転写部材は、それぞれローラ状の部材であったが、これらは、例えば、ブラシ状の部材、シート状の部材などであってもよい。
【0214】
また、上述の実施例では、被覆率の閾値は1つだけ設定されていたが、互いに異なる値の複数の閾値を設定して、被覆率に応じて2次転写目標電流値や1次転写電圧値を段階的に変更するようにしてもよい。
【0215】
また、上述の実施例では、画像形成装置には画像形成部は4つ設けられていたが、少なくとも4つ、例えば、5つ以上(例えば6つ)設けられていてもよい。
【0216】
また、上述の実施例における2次転写対向ローラに対応するローラ(内ローラ)を2次転写部材として用いて、これにトナーの正規の帯電極性と同極性の2次転写電圧を印加するようにしてもよい。この場合、上述の実施例における2次転写ローラに対応するローラ(外ローラ)を対向ローラとして用いて、これを電気的に接地すればよい。
【符号の説明】
【0217】
1 画像形成部
2 感光ドラム
3 帯電ローラ
4 現像装置
5 1次転写ローラ
20 中間転写ベルト
24 2次転写ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10