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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】光学系及びそれを有する撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/14 20060101AFI20240722BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G02B13/14
G02B13/18
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020108208
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003379
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】道塲 直人
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-037697(JP,A)
【文献】特開2014-002182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0154976(US,A1)
【文献】特開2013-225019(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163831(WO,A1)
【文献】特開2019-008271(JP,A)
【文献】特開平10-301024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長8μm以上の光により物体を結像する光学系であって、
第1レンズと、シリコン材料からなる第1光学素子とを備え、
前記第1光学素子は、非球面を有し、開口絞りとは異なる位置に配置され、
光軸を含む断面において、前記第1光学素子の厚さは軸上から最軸外にかけて単調に増加し、
前記光学系の焦点距離をf、前記第1光学素子の焦点距離をPf1、前記第1光学素子の光軸上での厚さをT[mm]とするとき、
0.0<|f/Pf1|<0.3
0.05≦T≦1.00
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
シリコン材料又はゲルマニウム材料からなる第2光学素子を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
波長8μm以上の光により物体を結像する光学系であって、
第1レンズと、第1光学素子と、シリコン材料又はゲルマニウム材料からなる第2光学素子とを備え、
前記第1光学素子は、非球面を有し、開口絞りとは異なる位置に配置され、
光軸を含む断面において、前記第1光学素子の厚さは軸上から最軸外にかけて単調に増加し、
前記光学系の焦点距離をf、前記第1光学素子の焦点距離をPf1、前記第1光学素子の光軸上での厚さをT[mm]とするとき、
0.0<|f/Pf1|<0.3
0.05≦T≦1.00
なる条件式を満足することを特徴とする光学系。
【請求項4】
前記第1レンズは最も物体側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記第1レンズの焦点距離をf1とするとき、
0.1<|f1/f|<6.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項に記載の光学系。
【請求項6】
前記第1レンズに隣接する第2レンズを備えることを特徴とする請求項4又は5に記載の光学系。
【請求項7】
前記第2レンズの焦点距離をf2とするとき、
0.1<f2/f<20.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第2レンズよりも像側に配置される第3レンズを備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第3レンズの焦点距離をf3とするとき、
0.1<f3/f<5.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項に記載の光学系。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の光学系と、
該光学系からの光を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光に対応する光学系に関し、例えば監視カメラや車載カメラ等の撮像装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
赤外域(波長8μm~14μm程度)の光(赤外光、赤外線)に対応する光学系(赤外用光学系)が知られている。撮像装置に赤外用光学系を適用することで、可視の波長域(波長0.4μm~0.7μm程度)では得ることのできない被写体の温度分布等の熱情報を可視化することができる。赤外用光学系に用いられる赤外域の光を透過する材料(赤外用材料)としては、例えばゲルマニウム(Ge)、ガリウムヒ素(GAAS)、カルコゲナイド、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、シリコン(Si)、樹脂(高密度ポリエチレン等)がある。赤外用光学系は、遠方の被写体の微弱な熱情報を検知するために、高い光学性能(解像力)を有することが望まれる。特許文献1には、諸収差を補正するための非球面を有する赤外用光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-301024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゲルマニウムやシリコンを非球面形状に加工するためには、研削や研磨などの難易度が高い工程が必要になる。特許文献1の光学系では、非球面の加工難易度を下げるために薄い平板状のシリコンからなる平板レンズを採用しているが、高い光学性能を得るための平板レンズの形状については考慮されていない。一方、上述したゲルマニウムやシリコン以外の赤外用材料は、研削や研磨よりも難易度が低い成形加工により非球面を設けることが可能である。しかしながら、そのような成形可能な赤外用材料は分散が大きいため、高い光学性能を得るためには全系及び各レンズの焦点距離を適切に設定する必要がある。
【0005】
本発明は、製造が容易でありながら赤外域において高い光学性能を有する光学系及びそれを有する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学系は、波長8μm以上の光により物体を結像する光学系であって、第1レンズと、シリコン材料からなる第1光学素子とを備え、第1光学素子は、非球面を有し、開口絞りとは異なる位置に配置され、光軸を含む断面において、第1光学素子の厚さは軸上から最軸外にかけて単調に増加し、光学系の焦点距離をf、第1光学素子の焦点距離をPf1、第1光学素子の光軸上での厚さをT[mm]とするとき、
0.0<|f/Pf1|<0.3
0.05≦T≦1.00
なる条件式を満足することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の側面としての光学系は、波長8μm以上の光により物体を結像する光学系であって、第1レンズと、第1光学素子と、シリコン材料又はゲルマニウム材料からなる第2光学素子とを備え、第1光学素子は、非球面を有し、開口絞りとは異なる位置に配置され、光軸を含む断面において、第1光学素子の厚さは軸上から最軸外にかけて単調に増加し、光学系の焦点距離をf、第1光学素子の焦点距離をPf1、第1光学素子の光軸上での厚さをT[mm]とするとき、
0.0<|f/Pf1|<0.3
0.05≦T≦1.00
なる条件式を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造が容易でありながら赤外域において高い光学性能を有する光学系及びそれを有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の光学系の断面図である。
図2】実施例1の光学系のMTF図である。
図3】実施例2の光学系の断面図である。
図4】実施例2の光学系のMTF図である。
図5】実施例3の光学系の断面図である。
図6】実施例3の光学系のMTF図である。
図7】実施例4の光学系の断面図である。
図8】実施例4の光学系のMTF図である。
図9】実施例5の光学系の断面図である。
図10】実施例5の光学系のMTF図である。
図11】実施例6の光学系の断面図である。
図12】実施例6の光学系のMTF図である。
図13】実施例7の光学系の断面図である。
図14】実施例7の光学系のMTF図である。
図15】実施例8の光学系の断面図である。
図16】実施例8の光学系のMTF図である。
図17】実施例9の光学系の断面図である。
図18】実施例9の光学系のMTF図である。
図19】実施例10の光学系の断面図である。
図20】実施例10の光学系のMTF図である。
図21】実施例11の光学系の断面図である。
図22】実施例11の光学系のMTF図である。
図23】実施例12の光学系の断面図である。
図24】実施例12の光学系のMTF図である。
図25】実施例13の撮像装置の一例であるカムコーダーの要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
各実施例の説明におけるシリコン材料やゲルマニウム材料は、シリコンやゲルマニウムを主成分とする材料を示し、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)のみから成るものに限らず、微小量の不純物を含有するものも含む。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例の光学系100の断面図である。光学系100は、焦点距離18mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。なお、ここでの赤外用光学系とは、波長8μm以上の光により物体(被写体)を結像する光学系のことである。光学系100は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる正の屈折力の第1レンズL11、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる(光軸を含む断面において、厚さが軸上から最軸外にかけて単調に増加する)非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板(光学素子)P11、絞り(開口絞り)S1、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL12、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL13、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板(光学素子)P12より構成されている。薄型非球面板P11,P12は、厚さが数百μmと非常に薄いものを想定している。そのため、シュミット補正板を製造する際に行われる加工等の容易な加工で製作可能である。光学系100で導光された赤外域(波長8~14μm)の光は、カバーガラスCG1を透過して赤外線センサIM1で結像する。なお、第1レンズL11と物体との間に窓材を設けてもよいし、カバーガラスCG1がゲルマニウム材料以外の赤外用材料で構成されていてもよい。光学系100の数値データを表1に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0014】
【表1】
【0015】
非球面形状データを表2に示す。
【0016】
【表2】
【0017】
非球面形状は、Zを光軸方向の面頂点からの変位量、hを光軸と垂直な方向の光軸からの高さ、Rを近軸曲率半径、kを円錐係数、A~Fを4~14次の非球面係数とするとき、
【0018】
【数1】
【0019】
で表している。
【0020】
図2は、光学系100のMTF図である。一般的な赤外線センサのピクセルピッチは、数十μmである。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM1を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。このナイキスト周波数で被写体を解像するためには、経験的にMTF値が30%程度あればよい。図2中の11で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、28%である。赤外線センサIM1のナイキスト周波数においてMTF値が30%程度であるため、光学系100の光学性能は良好である。
【0021】
シリコン材料は赤外域において高屈折率かつ低分散であり、シリコン材料からなるレンズの一部に非球面を採用することで高い光学性能を得ることができる。しかしながら、シリコン材料の非球面を有する光学素子を加工するためには研削や研磨などの難易度が高い工程が必要となる。そこで、研削や研磨などの難易度が高い工程を経ることなく、容易に非球面部を加工することができる薄型非球面板が有用となる。薄型非球面板は、薄型のレンズ基板に非球面原器に吸着させることで、非球面原器の形状を転写し、研磨加工することで製造されるシュミット補正板と同様の加工やフォトリソグラフィー加工によって製造することができる。
【0022】
赤外線を透過する材料の屈折率N10及びアッベ数ν10を表3に示す。屈折率N10は、波長10μmにおける屈折率である。アッベ数ν10は、波長8μmでの屈折率をN8、波長12μmでの屈折率をN12とするとき、以下の式(2)により定義される。一般的に、アッベ数は数値が大きいほど波長による屈折率の変化(分散)が小さいことを意味している。なお、各硝材メーカーによって数値が若干異なるため、表3にはおおよその数値が記載されている。特に、カルコゲナイドは、周期表16族の酸素族元素を用いた化合物の種類によって屈折率やアッベ数が大きく変わる。化合物の種類によって、屈折率N10は2.0~4.0、アッベ数ν10は100~800の間で変化する。
【0023】
【表3】
【0024】
【数2】
【0025】
ゲルマニウムやシリコンは、他の材料に比べて屈折率が大きく、分散が非常に小さい。一般的なN枚系の光学系は、色収差を補正するために、以下の式(3)を満足する構成になる。式(3)において、f1,f2,f3,…,fnはそれぞれ第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、・・・、第nレンズの焦点距離であり、ν1,ν2,ν3,…,νnはそれぞれ、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、…、第nレンズのアッベ数である。
【0026】
【数3】
【0027】
レンズのアッベ数は通常、正であるため、色収差を低減するためには少なくとも一つのレンズが負の焦点距離を有することが好ましい。そのため、色収差を補正する光学系は、正レンズと負レンズを組み合せた構成になる。シリコンレンズの分散は非常に小さいため、正の屈折力のシリコンレンズのみでも色収差の発生は小さいが、負レンズの役割を果たす要素があることが好ましい。本実施例では、薄型非球面板が中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を有することで、高精度に色収差を補正することが可能である。なお、焦点距離が短い光学系では、複数画角の光束を収斂させる必要があるため、第1レンズを負レンズとすればよい。
【0028】
また、光学系は、像面湾曲を補正するためには、ペッツバール和を小さくする以下の式(4)を満足する必要がある。ペッツバール和は像面湾曲と相関があるため、ペッツバール和を小さくすることで像面湾曲を小さくすることができる。式(4)において、f1,f2,f3,…,fnはそれぞれ第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、・・・、第nレンズの焦点距離であり、N1,N2,N3,…,Nnはそれぞれ、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、…、第nレンズの屈折率である。
【0029】
【数4】
【0030】
レンズの屈折率は通常、正であるため、ペッツバール和を低減するためには少なくとも一つのレンズが負の焦点距離を有することが好ましい。そのため、像面湾曲を補正する光学系は、正レンズと負レンズを組み合せた構成になる。シリコンレンズの屈折率は非常に大きいため、正の屈折力のシリコンレンズのみでもペッツバール和を小さくできるが、負レンズの役割を果たす要素があることが好ましい。本実施例では、薄型非球面板が中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を設けることで、高精度にペッツバール和を補正することが可能である。なお、焦点距離が短い光学系では、複数画角の光束を収斂させる必要があるため、第1レンズを負レンズとすればよい。
【0031】
また、高い光学性能を得るためには、レンズの瞳径に比例する球面収差を高度に補正することが重要になる。球面収差を各レンズに分担させて補正することが有用である。各実施例では、主な屈折力を有する球面レンズは正レンズであることが好ましい。これにより光線を緩やかに収斂させることが可能になり、球面収差の発生を抑えることができる。なお、焦点距離が短い光学系では、複数画角の光束を収斂させる必要があるため、第1レンズを負レンズとすればよい。
【0032】
また、赤外レンズのようなFナンバーの明るいレンズの場合、良好な結像性能を得るためには、高次の像面湾曲を高精度に補正することが必要になる。そこで、本発明では薄型非球面板P11を絞りS1とは異なる位置に配置することで、薄型非球面板P11の非球面部が高次の像面湾曲を補正している。各実施例では、屈折力の小さい薄型非球面板P12を絞りS1に対して物体側や像側に近い位置に配置することで、高次の像面湾曲や球面収差を補正することができる。つまり、ペッツバール和や色収差補正の条件を主な屈折力を持つ球面レンズで分担し、屈折力の小さい薄型非球面板が高次の球面収差や高次の像面湾曲の補正を担っている。特に、高次の像面湾曲補正は球面レンズのみでは補正が困難であるため、軸上光線と軸外光線が分離している位置に薄型非球面板を配置すればよい。このような構成により、光学系100は、高い光学性能を得ることができる。
【0033】
薄型非球面板の焦点距離は他の球面レンズに比べ、非球面部の作用のみを効果として与えるため、高い屈折力を有する必要はない。そのため、実施例1乃至8の光学系は、光学系の焦点距離をf、薄型非球面板の焦点距離をPf1とするとき、以下の条件式(5)を満足する。
【0034】
0.0<|f/Pf1|<0.3 (5)
なお、条件式(5)の数値範囲を以下の条件式(5a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0035】
0.00<|f/Pf1|<0.25 (5a)
以上説明したように、本実施例の構成によれば、製造が容易でありながら赤外域において高い光学性能を有する光学系を実現することができる。
【0036】
また、実施例1乃至8の光学系において、薄型非球面板はシリコン材料の透過率の観点から薄型形状を有することが好ましい。そのため、中心厚さ(光軸上での厚さ)をT[mm]とするとき、以下の条件式(6)を満足することが好ましい。
【0037】
0.05≦T≦1.00 (6)
中心厚さTが条件式(6)の範囲外になると、透過率が大きく低下し、光学性能が劣化する場合がある。
【0038】
なお、条件式(6)の数値範囲を以下の条件式(6a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0039】
0.05≦T≦0.60 (6a)
また、実施例1乃至4の光学系は、第1乃至第3レンズL11,L12,L13の焦点距離をそれぞれf1,f2,f3とするとき、以下の条件式(7)乃至(9)の少なくとも一つを満足することが好ましい。
【0040】
0.1<|f1/f|<6.0 (7)
0.1<f2/f<20.0 (8)
0.1<f3/f<5.0 (9)
条件式(7)乃至(9)は、実施例1乃至4の光学系が色収差や球面収差、像面湾曲等の諸収差を良好に補正し、高い光学性能を得るためのものである。条件式(7)乃至(9)の上限値を上回る、又は下限値を下回ると、像面湾曲と球面収差の補正バランスが崩れ、光学性能が低下する。
【0041】
なお、条件式(7)乃至(9)の数値範囲を以下の条件式(7a)乃至(9a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0042】
0.1<|f1/f|<5.0 (7a)
0.5<f2/f<15.0 (8a)
0.1<f3/f<4.0 (9a)
実施例1乃至4の条件式に対応する数値を表4に示す。
【0043】
【表4】
【実施例2】
【0044】
図3は、本実施例の光学系200の断面図である。光学系200は、焦点距離14mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系200は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる正の屈折力の第1レンズL21、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P21、中心から周辺にかけて徐々に厚みが薄くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P22、絞りS2、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL22、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL23、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P23より構成されている。薄型非球面板P21,P22,P23は、厚さが数百μmと非常に薄いものを想定している。そのため、シュミット補正板を製造する際に行われる加工等の容易な加工で製作可能である。本実施例では、高次の球面収差を補正するため、薄型非球面板P22を配置している。光学系200で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG2を透過して赤外線センサIM2で結像する。光学系200の数値データを表5に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0045】
【表5】
【0046】
非球面形状データを表6に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0047】
【表6】
【0048】
図4は、光学系200のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM2を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図4中の21で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、43%である。赤外線センサIM2のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系200の光学性能は良好である。
【実施例3】
【0049】
図3は、本実施例の光学系300の断面図である。光学系300は、焦点距離50mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系200は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる正の屈折力の第1レンズL31、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P31、絞りS3、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL32、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P32より構成されている。そのため、シュミット補正板を製造する際に行われる曲げ加工等の容易な加工で製作可能である。薄型非球面板P31,P32は、厚さが数百μmと非常に薄いものを想定している。光学系300で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG3を透過して赤外線センサIM3で結像する。光学系200の数値データを表7に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0050】
【表7】
【0051】
非球面形状データを表8に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0052】
【表8】
【0053】
図6は、光学系300のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM3を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図6中の31で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、32%である。赤外線センサIM3のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系300の光学性能は良好である。
【実施例4】
【0054】
図7は、本実施例の光学系400の断面図である。光学系400は、焦点距離6mm、Fナンバー0.9の赤外用光学系である。光学系400は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL41、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P41、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL42、絞りS4、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL43、中心から周辺にかけて徐々に厚みが厚くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P42より構成されている。そのため、シュミット補正板を製造する際に行われる曲げ加工等の容易な加工で製作可能である。薄型非球面板P41,P42は、厚さが数百μmと非常に薄いものを想定している。光学系400で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG4を透過して赤外線センサIM4で結像する。光学系400の数値データを表9に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0055】
【表9】
【0056】
非球面形状データを表10に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0057】
【表10】
【0058】
図8は、光学系400のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM4を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図8中の41で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、36%である。赤外線センサIM4のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系400の光学性能は良好である。
【実施例5】
【0059】
図9は、本実施例の光学系500の断面図である。光学系500は、焦点距離4.5mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系500は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL51、中心と最周辺との間で厚さが最も薄くなる(光軸を含む断面において、厚さが軸上と最軸外との間で最も薄くなる)非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P51、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL52、絞りS5、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL53より構成されている。薄型非球面板P51,P52は、厚さが数百μmと非常に薄いものを想定している。そのため、シュミット補正板を製造する際に行われる曲げ加工等の容易な加工で製作可能である。光学系500で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG5を透過して赤外線センサIM5で結像する。光学系500の数値データを表11に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0060】
【表11】
【0061】
非球面形状データを表12に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0062】
【表12】
【0063】
図10は、光学系500のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM5を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図10中の51で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、48%である。赤外線センサIM5のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系500の光学性能は良好である。
【0064】
像面湾曲を高精度に補正する方法として、各画角の光線が分離している位置に非球面効果を持つ薄型非球面板を配置する方法がある。各画角の光線が分離している位置は、絞りが配置されている位置とは異なる位置である。各画角の光線のばらつきは、非球面部により補正される。像面湾曲補正では、4次の非球面項まででは不十分であるため、6次以上の非球面項を持つ関数で表される非球面形状である必要がある。また、中心と最周辺との間で厚さが最も薄い形状であることが収差補正上必要となる。
【0065】
薄型非球面板は絞りが配置されている位置とは異なる位置に配置されていることが、像面湾曲補正の観点から好ましい。第1レンズから絞りまでの距離をLP、絞りから像面までの距離をLS、絞りから薄型非球面板までの距離をPZとするとき、薄型非球面板を絞りの物体側に配置する場合は以下の条件式(10)を満足することが好ましい。
【0066】
PZ/LP<0.8 (10)
また、薄型非球面板を絞りの像側に配置する場合は以下の条件式(11)を満足することが好ましい。
【0067】
PZ/LS<0.8 (11)
なお、条件式(10),(11)の数値範囲を以下の条件式(10a),(11a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0068】
0.1<PZ/LP<0.7 (10a)
0.1<PZ/LS<0.7 (11a)
また、実施例5乃至8の光学系は、以下の条件式(12)乃至(14)の少なくとも一つを満足することが好ましい。
【0069】
0.1<|f1/f|<5.0 (13)
0.1<f2/f<10.0 (14)
0.1<f3/f<10.0 (15)
条件式(12)乃至(14)は、実施例5乃至8の光学系が色収差や球面収差、像面湾曲等の諸収差を良好に補正し、高い光学性能を得るためのものである。条件式(12)乃至(14)の上限値を上回る、又は下限値を下回ると、像面湾曲と球面収差の補正バランスが崩れ、光学性能が低下する。
【0070】
なお、条件式(12)乃至(14)の数値範囲を以下の条件式(12a)乃至(14a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0071】
0.1<|f1/f|<3.5 (12a)
0.5<f2/f<7.0 (13a)
0.1<f3/f<4.0 (14a)
実施例5乃至8の条件式に対応する数値を表13,14に示す。
【0072】
【表13】
【0073】
【表14】
【実施例6】
【0074】
図11は、本実施例の光学系600の断面図である。光学系600は、焦点距離4.5mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系600は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL61、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL62、絞りS6、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL63、中心と最周辺との間で厚さが最も薄くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P61より構成されている。光学系600で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG6を透過して赤外線センサIM6で結像する。光学系600の数値データを表15に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0075】
【表15】
【0076】
非球面形状データを表16に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0077】
【表16】
【0078】
図12は、光学系600のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM6を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図12中の61で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、50%である。赤外線センサIM6のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系600の光学性能は良好である。
【実施例7】
【0079】
図13は、本実施例の光学系700の断面図である。光学系700は、焦点距離3mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系700は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL71、絞りS7、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL72、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL73、中心と最周辺との間で厚さが最も薄くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P71より構成されている。光学系700で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG7を透過して赤外線センサIM7で結像する。光学系700の数値データを表17に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0080】
【表17】
【0081】
非球面形状データを表18に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0082】
【表18】
【0083】
図14は、光学系700のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM7を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図14中の71で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、49%である。赤外線センサIM7のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系700の光学性能は良好である。
【実施例8】
【0084】
図15は、本実施例の光学系800の断面図である。光学系800は、焦点距離6mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系800は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL81、絞りS8、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL82、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL83、中心と最周辺との間で厚さが最も薄くなる非球面部を持つシリコン材料からなる薄型非球面板P81より構成されている。光学系800で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG8を透過して赤外線センサIM8で結像する。光学系800の数値データを表19に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0085】
【表19】
【0086】
非球面形状データを表20に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0087】
【表20】
【0088】
図16は、光学系800のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM8を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図16中の81で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、54%である。赤外線センサIM8のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系800の光学性能は良好である。
【実施例9】
【0089】
図17は、本実施例の光学系900の断面図である。光学系900は、焦点距離4.5mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系900は、物体側から像側へ順に配置された、ゲルマニウム材料からなる負の屈折力の第1レンズL91、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL92、絞りS9、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL93、カルコゲナイド材料からなる非球面を有する光学素子(非球面レンズ)ASP91より構成されている。カルコゲナイドは、周期表16族の酸素族元素を用いた化合物を含み、化合物の種類によって屈折率やアッベ数が変わる。本実施例では、カルコゲナイドとしてNHG社(Hubei New Huaguang Information Materials Co., Ltd.)のIRG206を使用するが、周期表16族の酸素族元素を用いた化合物であればこれに限定されない。光学系800で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG9を透過して赤外線センサIM9で結像する。光学系900の数値データを表21に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0090】
【表21】
【0091】
非球面形状データを表22に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0092】
【表22】
【0093】
図18は、光学系900のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM9を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図18中の91で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、57%である。赤外線センサIM9のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系900の光学性能は良好である。
【0094】
シリコン材料やゲルマニウム材料は赤外域において高屈折率かつ低分散であり、シリコン材料やゲルマニウム材料からなるレンズの一部に非球面を採用することで高い光学性能を得ることができる。しかしながら、シリコン材料やゲルマニウム材料の非球面を有する光学素子を加工するためには研削や研磨などの難易度が高い工程が必要となる。
【0095】
一方、カルコゲナイド、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、樹脂(高密度ポリエチレン)等は熱等による成型加工が可能な材料であるが、分散が大きいため色収差の発生量が大きい。この色収差を補正するためにレンズ面に回折構造を設けると、回折構造での散乱により不要な光が赤外線センサに入射し、光学性能を劣化させる場合がある。
【0096】
レンズのアッベ数は通常、正であるため、色収差を低減するためには少なくとも一つのレンズが負の焦点距離を有することが好ましい。カルコゲナイド、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、樹脂(高密度ポリエチレン)等の分散が大きい材料を使用する場合は、レンズの焦点距離を長くする(屈折力を小さくする)ことで色収差の発生を抑えることができる。
【0097】
像面湾曲を高精度に補正する方法として、各画角の光線が分離している位置に非球面を有する光学素子を配置する方法がある。また、主に像面湾曲を補正する場合、像側に非球面レンズを配置することが効果的である。非球面レンズとしてカルコゲナイド、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、樹脂(高密度ポリエチレン)等の成型加工が可能な材料を使用すると、色収差の発生が課題となる。この課題を解決するため、本実施例では焦点距離の長い非球面レンズを採用している。
【0098】
したがって、本実施例では、屈折力の小さい非球面を有する光学素子を絞りとは異なる位置に配置することで、光学性能を向上させることができる。非球面を有する光学素子は、20≦ν10≦2000なる条件式を満たすことが望ましい。ただし、非球面を有する光学素子の製造(成型及び加工)の容易性を向上させるためには、該光学素子を分散が大きい材料で構成することがより好ましい。具体的には、非球面を有する光学素子は、20≦ν10≦800なる条件式を満たすことがより好ましい。
【0099】
分散の大きい材料を使用した非球面レンズでは、球面レンズに比べ、非球面部の作用のみを効果として与えつつ、色収差の発生を抑える必要がある。そのため、非球面レンズの焦点距離をPf2とするとき、以下の式(15)を満足する。
【0100】
0.0<|f/Pf2|<0.3 (15)
なお、条件式(15)の数値範囲を以下の条件式(15a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0101】
0.0<|f/Pf2|<0.1 (15a)
また、条件式(15)の数値範囲を以下の条件式(15b)の数値範囲とすることが更に好ましい。
【0102】
0.00<|f/Pf2|<0.07 (15b)
分散の大きい材料を使用した非球面レンズは、像面湾曲補正の観点から絞りよりも像側に配置することが好ましい。絞りから非球面レンズまでの距離をPZとするとき、以下の式(16)を満足することが好ましい。
【0103】
0.3<PZ/LS<1.0 (16)
なお、条件式(16)の数値範囲を以下の条件式(16a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0104】
0.4<PZ/LS<0.9 (16a)
また、実施例5乃至8の光学系は、以下の条件式(17)乃至(19)の少なくとも一つを満足することが好ましい。
【0105】
0.01<|f1/Pf2|<0.80 (17)
0.01<|f2/Pf2|<0.80 (18)
0.01<|f3/Pf2|<0.80 (19)
条件式(17)乃至(19)は、実施例9乃至12の光学系が色収差や球面収差、像面湾曲等の諸収差を良好に補正し、高い光学性能を得るためのものである。条件式(17)乃至(19)の上限値を上回る、又は下限値を下回ると、像面湾曲と球面収差の補正バランスが崩れ、光学性能が低下する。
【0106】
なお、条件式(17)乃至(19)の数値範囲を以下の条件式(17a)乃至(19a)の数値範囲とすることが好ましい。
【0107】
0.01<|f1/Pf2|<0.50 (17a)
0.01<|f2/Pf2|<0.50 (18a)
0.01<|f3/Pf2|<0.50 (19a)
実施例9乃至12の条件式に対応する数値を表23,24に示す。
【0108】
【表23】
【0109】
【表24】
【実施例10】
【0110】
図19は、本実施例の光学系1000の断面図である。光学系1000は、焦点距離4.5mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系1000は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL101、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL102、絞りS10、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL103、硫化亜鉛材料からなる非球面を有する光学素子(非球面レンズ)ASP101より構成されている。光学系1000で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG10を透過して赤外線センサIM10で結像する。光学系1000の数値データを表25に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0111】
【表25】
【0112】
非球面形状データを表26に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0113】
【表26】
【0114】
図20は、光学系1000のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM10を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図20中の101で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、52%である。赤外線センサIM10のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系1000の光学性能は良好である。
【実施例11】
【0115】
図21は、本実施例の光学系1100の断面図である。光学系1100は、焦点距離4.5mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系1100は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL111、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL112、絞りS11、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL113、セレン化亜鉛材料からなる非球面を有する光学素子(非球面レンズ)レンズASP111より構成されている。光学系1100で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG11を透過して赤外線センサIM11で結像する。光学系1100の数値データを表27に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0116】
【表27】
【0117】
非球面形状データを表28に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0118】
【表28】
【0119】
図22は、光学系1100のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM10を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図22中の111で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、57%である。赤外線センサIM10のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系1100の光学性能は良好である。
【実施例12】
【0120】
図23は、本実施例の光学系1200の断面図である。光学系1200は、焦点距離4.5mm、Fナンバー0.8の赤外用光学系である。光学系1200は、物体側から像側へ順に配置された、シリコン材料からなる負の屈折力の第1レンズL121、シリコン材料からなる正の屈折力の第2レンズL122、絞りS12、シリコン材料からなる正の屈折力の第3レンズL123、樹脂材料からなる非球面を有する光学素子(非球面レンズ)ASP121より構成されている。樹脂材量として、密度が0.942[kg/m]以上のポリエチレンである高密度ポリエチレン(HDPE)等がある。光学系1200で導光された赤外域の光は、カバーガラスCG12を透過して赤外線センサIM12で結像する。光学系1200の数値データを表29に示す。曲率半径及び間隔の単位はmmである。
【0121】
【表29】
【0122】
非球面形状データを表30に示す。非球面形状は、式(1)で表している。
【0123】
【表30】
【0124】
図24は、光学系1200のMTF図である。本実施例では一例として、ピクセルピッチが17μmの赤外線センサIM7を使用する。この場合、ナイキスト周波数は約30lp/mmとなる。図24中の121で表される本実施例のナイキスト周波数におけるMTF値は、43%である。赤外線センサIM12のナイキスト周波数においてMTF値が30%以上であるため、光学系1200の光学性能は良好である。
【実施例13】
【0125】
本実施例では、各実施例の光学系を用いた撮像装置の一例である赤外用のカムコーダー(ビデオカメラ)について説明する。図25は、本実施例のカムコーダーの要部概略図である。カムコーダーは、カメラ本体13、および実施例1乃至12の何れかの光学系により構成された撮像光学系11を有する。カメラ本体13は、撮像光学系11によって形成された被写体像を受光(光電変換)するマイクロボロメータ等の撮像素子(赤外線センサ)12を備える。赤外線センサとしては、例えば酸化バナジウムやアモルファスシリコンを用いて形成されたものが採用される。取得された画像は、表示装置14により確認することができる。表示装置14は、カメラ本体13に組み込まれていてもよいし、無線通信によりカメラ本体13と切り離されていてもよい。なお、各実施例の光学系は、車載カメラや監視カメラ等の撮像装置にも適用できる。
【0126】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、各実施例の条件式を組み合わせても効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0127】
100,200,300,400 光学系
P11,P12,P21,P22,P23,P31,P32,P41,P42 薄型非球面板(光学素子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図24
図25