(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】給送装置、記録装置及び給送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65H 19/10 20060101AFI20240724BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B65H19/10 A
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2020043332
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張替 亮
(72)【発明者】
【氏名】島村 健史
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-217139(JP,A)
【文献】特開2011-225320(JP,A)
【文献】特開平03-227860(JP,A)
【文献】米国特許第06024321(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/10
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段を備え、
前記第一の位置と前記第二の位置とは、これらの間を前記シートの先端が通過することにより前記搬送経路に該先端が導入されるように設定され、かつ、前記第二の位置は、前記第一の位置から前記所定の回転方向に離間した位置に設定され、
前記第二の駆動手段は、
前記搬送経路に前記シートの先端を導入する場合に、前記第一の位置と前記第二の位置との間に前記シートの弛みが形成される方向に、前記先端が前記第二の位置を通過するまで、前記回転体を回転させる、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項2】
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段を備え、
前記当接部は、前記ロールシートの回転に従動して回転する少なくとも一つの自由回転体を備える、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の給送装置であって、
前記第二の駆動手段は、
前記搬送経路に前記シートの先端を導入する場合に、前記ロールシートの一周分だけ、前記回転体を回転させる、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項4】
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段と、
前記シートの先端が前記第二の位置を通過したことを検知する第一の検知手段
と、を備え、
前記第二の駆動手段は、前記第一の検知手段の検知結果に基づいて前記回転体の回転を停止する、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の給送装置であって、
前記搬送経路に前記シートの先端を導入する前に、前記ロールシートの外周面上の前記先端を検知する第二の検知手段を備え、
前記第一の駆動手段は、前記第二の検知手段の検知結果に基づいて、前記先端が前記第二の位置から前記所定の回転方向に離間した位置に位置するように、前記ロールシートを回転させる、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項6】
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段と、
前記回転体を支持する支持部材
と、を備え、
前記支持部材は、前記シートを前記搬送経路に案内するガイド部を有し、
前記回転体は、前記ガイド部の前記ロールシートの側の端部に支持されている、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の給送装置であって、
前記回転体は、前記ガイド部の、前記シートの幅方向に偏った位置で支持され、
前記ガイド部の前記ロールシート側の前記端部は、前記幅方向で前記回転体に近い側から遠い側へ向かって、前記ロールシートから離間するように傾斜している、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項8】
請求項
6又は請求項
7に記載の給送装置であって、
前記支持部材は、前記回転体が前記ロールシートの外周面に当接する作動位置と、前記回転体が前記ロールシートの外周面から離間した退避位置とに回動させる第三の駆動手段を備え、
前記第三の駆動手段は、
前記搬送経路に前記シートの先端を導入する場合に、前記支持部材を前記退避位置から前記作動位置へ回動し、
前記搬送経路に前記先端を導入した後、前記支持部材を前記作動位置から前記退避位置へ回動する、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の給送装置であって、
前記第二の駆動手段と前記第三の駆動手段は、共通の駆動源としてモータを備え、
前記モータを一方の方向に回転させると、前記支持部材が前記作動位置へ回動し、前記回転体が前記シートの弛みが形成される前記方向に回転し、
前記モータを逆方向に回転させると、前記支持部材が前記退避位置へ回動する、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項10】
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段と、
前記ロール支持手段に支持された前記ロールシートを覆うカバー部材
と、を備え、
前記当接部はアーム部材を介して前記カバー部材に支持され、かつ、弾性部材によって前記ロールシートの外周面に付勢される、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項11】
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段を備え、
前記当接部は、前記回転体よりも高い位置に位置し、
前記当接部と前記回転体との間の高さに、前記搬送経路の入口が位置している、
ことを特徴とする給送装置。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の給送装置と、
前記給送装置から給送されたシートに画像を記録する記録手段と、を備える、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路にシートを送り出す第一の駆動手段と、前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置の制御方法であって、
前記回転体を第二の駆動手段で前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる工程と、
前記先端が前記第二の位置を通過した後に前記第二の駆動手段による前記回転体の回転を停止させる工程と、を備える、
ことを特徴とする給送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロールシートの給送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールシートからシートを引き出して装置内へ導入する際、ユーザの手を煩わせることを軽減するために、給送動作の一部を自動化する技術が提案されている。特許文献1には、ロールシートの先端が、ロールシートの外周面から自重で分離したことを検知したことを契機として、ロールシートをシートの送り出し方向に回転させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置による方法は、シートの先端がロールシートから自重によって剥離しにくい方向からシートを搬送経路に搬送する場合に適用できない。
【0005】
本発明は、ロールシートの先端をより確実に搬送経路に導入可能な技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
シートがロール状に巻かれたロールシートを回転可能に支持するロール支持手段と、
前記ロール支持手段で支持された前記ロールシートを所定の回転方向に回転させて搬送経路に前記シートを送り出す第一の駆動手段と、
前記ロールシートの外周面に第一の位置で当接可能に設けられた当接部と、
前記外周面に前記第一の位置と異なる第二の位置で当接可能に設けられた回転体と、を備え、
前記第一の駆動手段で前記ロールシートを前記所定の回転方向に回転させ、前記第一の位置と前記第二の位置との間を通過した前記シートの先端を前記搬送経路に導入する給送装置であって、
前記回転体を前記第一の位置と前記第二の位置との間にシートの弛みが形成される方向に回転させる第二の駆動手段を備え、
前記第一の位置と前記第二の位置とは、これらの間を前記シートの先端が通過することにより前記搬送経路に該先端が導入されるように設定され、かつ、前記第二の位置は、前記第一の位置から前記所定の回転方向に離間した位置に設定され、
前記第二の駆動手段は、
前記搬送経路に前記シートの先端を導入する場合に、前記第一の位置と前記第二の位置との間に前記シートの弛みが形成される方向に、前記先端が前記第二の位置を通過するまで、前記回転体を回転させる、
ことを特徴とする給送装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロールシートの先端をより確実に搬送経路に導入可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の外観図。
【
図10】給送装置の制御処理例を示すフローチャート。
【
図12】(A)及び(B)は別の給送装置の説明図。
【
図14】(A)及び(B)は給送不良を解消する構造の説明図。
【
図15】(A)及び(B)は給送不良を解消する構造の説明図。
【
図16】(A)及び(B)は給送不良を解消する構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<記録装置の概要>
図1は本実施形態における記録装置1の外観図である。
図2は記録装置1の内部構造を示す模式図である。図中、Xは記録装置1の幅方向(左右方向)を示し、Yは記録装置1の奥行き方向(前後方向)を示し、Zは上下方向を示す。本実施形態では、シリアル型のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では記録対象である「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、シート状の布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0012】
記録装置1は、一対の脚部5に支持されている。記録装置1の奥側(後ろ側)には給送装置2が備えられ、手前側(前側)に排紙トレイ3が備えられている。記録装置1の上面にはユーザが様々な設定やコマンドを入力したり、情報を確認したりするための操作パネル6が設けられている。
【0013】
記録装置1は、ロールシート100からシートSを引き出して画像を記録可能な装置である。シートSは連続した一枚のシートであり、ロールシート100は、筒状の芯材にシートSがロール状に巻かれたものである。ロールシート100はシートSのうち、特にロール状の部分を指す。
【0014】
給送装置2は、ロールシート100を回転可能に支持するロール支持ユニット20を備える。ロールシート100の両端部には、その回転中心軸(X方向の軸)を規定するホルダ7が脱着可能に取り付けられる。ユーザはホルダ7が装着されたロールシート100を保持部20aにセットすることで、ロールシート100を記録に使用できる。ロール支持ユニット20はホルダ7のスプール軸を回転自在に支持する左右の保持部20aを有する。保持部20aは谷型の溝であり、その底部にホルダ7の軸部を回転自在に保持する。
【0015】
給送装置2は、ロール支持ユニット20に支持されたロールシート100を覆うカバー部材4を備える。カバー部材4は断面円弧形状の部材であり、ロールシート100を覆うカバー位置(例えば
図2の位置)と、ロールシート100を外部に露出させる退避位置(例えば
図1の位置)との間で開閉可能に設けられている。カバー部材4によりロールシート100をゴミの付着から保護したり、記録中にユーザがロールシート100に触れて記録画像が乱れることを防ぐことができる。
【0016】
給送装置2は、ロール支持ユニット20に支持されたロールシート100を回転させて搬送経路RTに送り出す給送駆動ユニット25を備える。駆動ユニット25は、駆動源である給送モータ25aと、給送モータ25aの駆動力をホルダ7のスプールギヤに伝達する歯車機構等の伝達機構とを備える。給送モータ25aの回転により、ロールシート100のシートSを搬送経路RTに送り出すことができる。
【0017】
ロールシート100をロール支持ユニット20にセットした段階では、シートSの先端を搬送経路RTに導入することが必要となる。給送装置2は、シートSの先端をロールシート100の周面から分離して搬送経路RTへ自動的に導入するための分離ユニットSUを備える。分離ユニットSUの詳細は後述する。
【0018】
搬送経路RTは、上側のガイド部材25Bと下側のガイド部材25Aとの間の空間として形成されている。搬送経路RTの下流端には、搬送ローラ9と従動ローラ10のニップ部が位置している。記録装置1は搬送ローラ9を回転させる駆動ユニット18を備える。駆動ユニット18は、駆動源である搬送モータ18aと、搬送モータ18aの駆動力を搬送ローラ9に伝達する歯車機構等の伝達機構とを備える。搬送モータ18aの駆動により、記録の際、シートSは搬送ローラ9と従動ローラ10に挟持されつつ、これらの回転によって、記録ヘッド13に対向して配置されたプラテン11上に搬送される。
【0019】
プラテン11は、シートSを下側から支持し、記録ヘッド13とシートSとの隙間を保証する。プラテン11には、複数の吸気孔が形成されており、複数の吸気孔はダクト15を介して吸引ファン52に接続されている。吸引ファン17を駆動することにより、プラテン11の吸気孔に吸引負圧が発生し、シートSをプラテン11上に吸着保持することができる。
【0020】
記録ヘッド13はキャリッジ12に搭載されている。キャリッジ12は、X方向に延在する走査ガイドとしてのキャリッジシャフト14に沿ってX方向(主走査方向)に往復移動可能に支持されている。キャリッジ12は、キャリッジモータ12a(
図3)を駆動源とした駆動機構により往復移動される。
【0021】
記録ヘッド13には、インクを吐出する吐出口(ノズル)が設けられている。インクは不図示のインク貯留部から記録ヘッド13に供給される。キャリッジ12が移動している間に記録ヘッド13からインクがシートS上に吐出される。記録ヘッド13の吐出動作とキャリッジ12の移動によって1ライン分の画像を記録することができる。このような画像の記録と、搬送ローラ9によるシートSの間欠的なY方向(副走査方向)の搬送とを交互に繰り返すことで、頁単位の画像を記録することができる。シートSの搬送方向で記録ヘッド13及びプラテン11よりも下流側にはカッタ16が配置されている。カッタ16は、シートSをX方向に切断する。これによりロールシート100から、画像が記録されたカットシートを得られる。
【0022】
記録装置1は開閉可能な上面カバー8を備えており、上面カバー8を開放することで、キャリッジ12やカッタ16の周辺の機構が外部に露出し、これらのメンテナンスを行うことができる。
【0023】
<制御装置>
図3を参照して記録装置1の制御装置について説明する。制御装置は、主制御部30と記録制御部34とを備える。主制御部30は、ホスト装置200から画像データとその記録指示を受信し、記録動作を実行する。主制御部30は、処理部31、記憶部32、インタフェース部(I/F部)33を備え、記録装置1の全体を制御する。処理部31はCPUに代表されるプロセッサであり、記憶部32に記憶されたプログラムを実行する。記憶部32はRAMやROM等の記憶デバイスであり、プログラムやデータを記憶する。センサ群SRの検知結果に基づく主制御部30の指示のもと、記録制御部34は搬送モータ18a、吸引ファン17、キャリッジモータ12a、記録ヘッド13、カッタ16、給送モータ25a及び分離モータ
26a等を制御する。センサ群SRには、後述するセンサ19、27等が含まれる。
【0024】
<分離ユニット>
図4を参照して分離ユニットSUを説明する。分離ユニットSUは、回転体23、回転体23を支持する支持部材24及び駆動ユニット26を備える。回転体23は、X方向の軸周りに回転自在に支持部材24に支持されている。回転体23は、例えば、周面にゴムが被覆されたローラであり、ロールシート100の外周面に当接可能に設けられている。ロールシート100のセット後にシートSの先端を搬送経路RTに導入する際、回転体23がロールシート100の外周面に圧接しつつ回転することにより、シートSの捲り上げを行い、これにより、シートSの先端を搬送経路RTに導入する。
【0025】
支持部材24は、一方の端部にガイド部24a及び回転体23を有し、他方の端部において回動軸24bの周りに回動自在に支持されたアーム部材である。ガイド部24aは、搬送経路RTの方向に延設されており、ロールシート100のセット後にシートSの先端を搬送経路RTに導入する際、シートを搬送経路RTに案内する。回転体23がガイド部24aに隣接しているため、回転体23の回転により巻き上げられたシートSの先端をガイド部24aの案内によりスムーズに搬送経路RTに導入できる。
【0026】
駆動ユニット26は、回転体23の回転を行う駆動機構26Aと、支持部材24の回動を行う駆動機構26Bとを含み、これらは共通の駆動源である分離モータ26aを共有している。駆動機構26Aは、分離モータ26aの出力軸に固定されたプーリ26bと、回転体23の軸に固定されたプーリ26dと、これらプーリ26b、26dに巻きかけられたタイミングベルト26cとを含む。分離モータ26aを駆動することにより、回転体23が回転する。
【0027】
駆動機構26Bは、分離モータ26aの出力軸に固定された駆動ギヤ26eと、駆動ギヤ26eと噛み合う従動ギヤ26fを備える。従動ギヤ26fの内部には、従動ギヤ26fと回動軸24bとの間の駆動を断続するトルクリミッタが設けられている。トルクリミッタの設定トルクまでは、従動ギヤ26fと回動軸24bは一体で回動し、設定トルク以上では、従動ギヤ26fが回動軸24bに対し空転する。トルクリミッタの設定トルクは、支持部材24の回動に必要とする最大トルク以上の範囲で、従動ギヤ26fが空転するように設定する。回動軸24bの回転によって、後述する退避位置から作動位置に支持部材24を回動させる際、回転体23がロールシート100に圧接するまでは支持部材24が回動する。その後は従動ギヤ26fが空転して、回転体23とロールシート100との圧接状態を維持することができる。
【0028】
<ロールシートのセット>
図5(A)~
図5(C)を参照して、ユーザによるロールシート100のセット操作及びセット後の分離ユニットSU及びカバー部材4の構成の配置について説明する。
【0029】
本実施形態のカバー部材4は、X方向の両端部で記録装置本体に回動可能に支持され、回動中心は断面方向から見たときに保持部20aのスプール軸受けの軸中心と略同じ位置に設定されている。この回動中心回りに回動して、カバー部材4は上述したカバー位置と、退避位置とに移動可能である。
図5(A)及び(B)はカバー部材4が退避位置に位置している状態を示し、
図5(C)はカバー部材4がカバー位置に位置している状態を示している。
【0030】
カバー部材4が退避位置にある場合、ユーザはロールシート100を保持部20aにセット可能である。ユーザは
図5(A)に示す状態で、
図5(B)に示すようにロールシート100を保持部20aにセットし、
図5(C)に示すようにカバー部材4をカバー位置に手動操作で移動してセットが完了する。
【0031】
カバー部材4の内面には、当接部21がアーム部材22を介して支持されている。当接部21は、ロールシート100の外周面に当接可能に設けられている。本実施形態の場合当接部21は、
図5(C)に示すようにカバー部材4がカバー位置に位置している場合にロールシート100の外周面に当接する。本実施形態の当接部21とアーム部材22の組が、X方向に離間して複数組、配置されている。各組の当接部21は、ロールシート100の回転に従動して回転する二つのニップローラであり、自由回転体である。二つのニップローラは、X方向の軸周りに回転自在にアーム部材22に支持され、かつ、ロールシート100の周方向に配列されている。本実施形態では、各当接部21を二つのニップローラとしたが、一つのニップローラでもよく、或いは、三以上のニップローラでもよい。また、当接部21はローラに限られず、例えば、ボールキャスタや、先端が球形状或いは円弧形状のピンであってもよい。
【0032】
アーム部材22は、カバー部材4にX方向の軸周りに回動自在に支持されており、その根元部分にはねじりコイルバネ等の弾性部材22aが設けられている。弾性部材22aは、当接部21がロールシート100の外周面に圧接する方向にアーム部材22を付勢する。なお、当接部21をロールシート100の外周面に圧接するために、アーム部材22が弾性部材であってもよい。
【0033】
カバー部材4の内面には、また、補助部28がアーム部材29を介して支持されている。補助部28及びアーム部材29の構成は、本実施形態の場合、当接部21、アーム部材22と同じである。アーム部材29は弾性部材29aにより付勢されるが、弾性部材29aも弾性部材22aと同様の構成である。補助部28は、ロールシート100の周方向で、当接部21と反対側の位置(略180度の位置)に位置している。
【0034】
当接部21と補助部28とでロールシート100の外周面を挟み込むようにすることで、シートSをより安定して送り出すことができる。アーム部材22及び29は、ロールシート100の巻径の変化に対応可能な角度以上、回動するように構成されている。
図5(B)及び
図5(C)は最大巻径のロールシート100がロール支持ユニット20にセットされた状態を示し、
図6(A)及び
図6(B)は最小巻径のロールシート100がロール支持ユニット20にセットされた状態を示す。いずれの場合にも、当接部21及び補助部28がロールシート100の外周面に圧接するように構成されている。また、当接部21とロールシート100の外周面との接線は、
図5(C)、
図6(B)のいずれの場合にも、搬送経路RTの方向を向くように構成されている。
【0035】
給送装置2は、ロールシート100の外周面上の、シートSの先端を検知するセンサ27を備えている。本実施形態の場合、センサ27はアーム部材29に支持されている。センサ27をアーム部材29に支持したことにより、ロールシート100の巻径の変化に関わらず、シートSの先端を検知できる。センサ27は、シートSの端部が通過する前後で出力が変化するセンサであり、例えば光学式センサや、反射型PIセンサ、フラグ式PIセンサを使用することができる。光学式センサは、例えば、発光素子と受光素子とを備える。発光素子はロールシート100の外周面に光を照射し、受光素子がその反射光を受光する。受光量は、センサ27とロールシート100の外周面との距離によって変化する。よって、シートSの端部の通過をセンサ27で検知できる。
【0036】
当接部21と回転体23との配置について説明する。
図5(C)及び
図6(B)は、当接部21がロールシート100の外周面に当接し、かつ、支持部材24が作動位置に回動して回転体23がロールシート100の外周面に当接した状態を示している。
【0037】
当接部21は、位置P1においてロールシート100の外周面に当接する。位置P1はロールシート100の巻径に応じて多少の変化をする。回転体23は、位置P2においてロールシート100の外周面に当接する。位置P2もロールシート100の巻径に応じて多少の変化をする。
【0038】
位置P1と位置P2とは、これらの間をシートSの先端が通過することにより搬送経路RTにシートSの先端が導入されるように設定されている。換言すると、搬送経路RTは位置P1と位置P2との間の高さに位置している。位置P1と位置P2とは、搬送経路RTの入口を跨るように配置されており、位置P1は入り口の一端側の位置(上側の位置)であり、位置P2は入り口の他端側の位置(下側の位置)である。また、シートSを送り出す際のロールシート100の回転方向をD1とすると、位置P2は、位置P1からD1方向に離間した位置に設定されている。このような配置関係によって、以下に述べるようにロールシート100がセットされた際、シートSの端部の搬送経路RTへの導入を自動化する。
【0039】
<自動導入動作>
本実施形態では、
図5(C)や
図6(B)に示したように、ロールシート100をユーザがセットすると自動的にシートSの先端を搬送経路RTに導入する導入動作を行う。
図7(A)~
図9(C)は、この自動導入動作の動作例を示している。また、
図10は主制御部30の処理例を示すフローチャートである。
【0040】
図10のS1ではロールシート100がロール支持ユニット20にセットされたか否かを判定する。ロールシート100のセットは不図示のセンサ、又は、操作パネル6に対するユーザのセット完了操作に基づき判定することができる。ロールシート100がセットされたと判定した場合、S2以下の自動導入動作に関わる処理を実行する。
【0041】
図10のS2では
図7(A)、
図7(B)に示すように、駆動ユニット25によりロールシート100をD2方向に回転する。D2方向はD1方向と逆方向(シートSを巻き取る方向)である。ロールシート100の回転中、センサ27の検知結果を監視して、シートSの
先端LEがセンサ27により検知されたか否かを判定する(
図10のS3)。
【0042】
ロールシート100を一周分、回転させれば、先端LEはセンサ27を通過する。したがって、シートSの
先端LEがセンサ27により検知されていない場合、
図10のS11においてロールシート100を一周分、回転させたか否かを判定する。ロールシート100の回転量は例えば給送モータ25aの回転量から判定することができる。ロールシート100を一周分、回転させていない場合はS3へ戻り、回転させていた場合は
図10のS12へ進む。
【0043】
図10のS12では、シートSの先端LEを検知できないため、ユーザに手動導入を促す報知を行う。報知は例えば操作パネル6の表示により行う。なお、先端LEを検知できない場合としては、ロールシート100として、シートSがなく芯管のみのものがセットされていた場合、先端LEがテープ等でロールシート100の外周面に止められていた場合等が想定される。
【0044】
図7(C)に示すように先端LEがセンサ27で検知されると、
図10のS4へ進む。先端LEがセンサ27で検知されたとき、先端LEの位置はセンサ27とほぼ同じ位置にある。回転体23がロールシート100に当接する位置P2とセンサ27との間の距離(角度
位相)は特定可能である。S4では、先端LEが位置P2の手前となる位置まで、ロールシート100のD2方向の回転を継続して停止する。なお、位置P2の手前の位置は位置P2を超えない位置であればよく、正確な位置決めは必須ではない。
【0045】
図10のS5では分離モータ26aの駆動を開始する。ここでは分離モータ26aを一方の方向(この方向を正転とする)に回転させる。これにより、
図8(A)に示すように、支持部材24が作動位置に回動し、また、回転体23がd1方向に回転する。支持部材24は回転体23がロールシート100に圧接するまで回動し、その後、トルクリミッタの働きにより回転体23がロールシート100の外周面に圧接する状態が維持される。
【0046】
回転体23がd1方向に回転することにより、シートSにはロールシート100のD2方向に送り出す力が作用するが、ロールシート100の外周面には当接部21が当接している。このため、
図8(B)に示すように、位置P1と位置P2との間にシートSの弛み(ループ)が形成される。回転体23の回転が進むと、
図8(C)に示すように、シートSの先端LEが位置P2を通過して、当接部21と回転体23との間に抜け出る。位置P1と位置P2との間にシートSの弛みを形成することで、先端LEをより確実に当接部21と回転体23との間に導入できる。つまり、搬送経路RTへ先端LEをより確実に導入することができる。
【0047】
図10のS6では先端LEが回転体23を超えたか否かを判定する。先端LEが回転体23を超えたと判定した場合はS7へ進み、そうでない場合はS6の判定を繰り返す。この判定は、例えば、回転体23よりも搬送経路RT側に設けたセンサの検知結果により判定することができる。
図9(A)はその一例として支持部材24のガイド部24aにセンサ19を配置した例を示している。センサ19はセンサ27と同様のセンサを用いることができる。センサ19によりシートSが検知されると、先端LEが回転体23を超えたと判定する。また、別の例として、回転体23を規定量回転させた段階で、先端LEが回転体23を超えたとみなしてもよい。規定量としては、例えば、S4で先端LEを停止する位置と、位置P2との間のロールシート100の周長に相当する回転量以上であればよい。
【0048】
図10のS7では分離モータ26aを逆転する。これにより
図9(B)に示すように、支持部材24が退避位置に回動し、回転体23がロールシート100の外周面から離間する。
図10のS8では駆動ユニット25によりロールシート100をD1方向に回転し、
図9(C)に示すようにシートSを搬送経路RTに送り出す。
図10のS9では搬送ローラ9と従動ローラ10とのニップ部にシートSの先端LEが到達したか否かを判定する。この判定はニップ部近傍に配置された不図示のセンサの検知結果に基づいて行われる。シートSの先端LEがニップ部に到達したと判定した場合はS10へ進み、ロールシート100の回転を停止する。これにより記録装置1は、記録動作の待機状態となる。
【0049】
なお、本実施形態では、
図10のS2~S4においてロールシート100をD2方向に回転してシートSの先端LEを所定の位置に位置させる制御を行った。しかし、これらの処理を省略してS5の処理を実行してもよい。この場合、回転体23の回転量は、ロールシート100の一周分の回転量であればよい。ロールシート100は巻径によって外周面の周長が変化するが、規定量としては最大巻径の周長分であってもよい。また、この場合、回転体23はセンサ19(図
9(A))でシートSの先端LEが検知されるまで
回転されてもよい。
【0050】
<第二実施形態>
給送装置2は、上下二段でロールシート100をセット可能な構成であってもよく、また、搬送経路RTがロールシート100の回転中心よりも上側にあってもよい。
図11(A)はその一例を示す。図示の例では、上段と下段にそれぞれカバー部材4、分離ユニットSU等が配置され、搬送経路RTは上流側で二股に分岐している。
図11(B)はロールシート100を下段の保持部20aにセットした状態を示している。ロールシート100の回転中心は搬送経路RTよりも低い位置にある。
【0051】
図11(C)は下段のロールシート100の自動導入動作を行った状態を示している。第一実施形態と同様の原理でシートSの先端LEの自動導入を行える。特に図示しないが、上段も同様である。
図12(A)及び
図12(B)は巻径が小さいロールシート100を下段にセットした例を示している。この場合も第一実施形態と同様の原理でシートSの先端LEの自動導入を行える。
【0052】
<第三実施形態>
一般に、給送動作においてシートSの剛性が低いと、シートSの給送不良が生じる場合がある。本実施形態の場合、支持部材24がシートSに対してX方向で偏った位置に位置していると、シートSの反対側においてカール等を生じて自動導入がうまくいかない場合がある。
図13(A)及び
図13(B)はその一例を示す。
【0053】
図13(A)及び
図13(B)は、支持部材24がシートSの幅方向の端部に位置している構成例を示している。シートSの剛性が低いと、その自重によって先端LEが垂れ下がる場合がある。シートSのうち、ガイド部24aに着地している部分はガイド部24aに支持されるが、反対側では支持されないため垂れ下がったり、カールする。ガイド部材25A上に先端LEが着地せず、このままロールシート100を回転するとジャムが発生してしまう。
【0054】
図14(A)、
図14(B)はその対策として、支持部材24のガイド部24aをX方向に延長し、シートSの幅の略全域を支持可能とした構成である。回転体23は、ガイド部24aの、シートSの幅方向(X方向)に偏った位置で支持されており、図示の例では特にX方向の一端部に支持されている。この構成例では
図13(A)及び
図13(B)に例示した給送不良の改善に一定の効果がある。しかし、回転体23がX方向に偏った位置に位置するため、ジャムの発生の可能性はある。
【0055】
つまり、自動導入の際、回転体23があるX方向の一端側は、シートSの先端LEがガイド部24aに着地するが、回転体23が設けられていないため他端側ではシートSがガイド部24aに着地せずに、その手前で座屈する場合がある。このままロールシート100を回転するとジャムが発生してしまう。
【0056】
その対策として、回転体23として他端側までX方向の全域に延ばした長いローラを用いる、或いは、複数の回転体23をX方向に離間して設けてもよい。これによりジャムの発生を抑制できる。
【0057】
別の対策として、
図15(A)に示すように、ガイド部24aのロールシート側の端部24cを、X方向で回転体23に近い側から遠い側へ向かって、ロールシート100から離間するように傾斜してもよい。図示の例では、端部24cとロールシート100の外周面との距離は、回転体23の近傍に対して、X方向の反対側の端部では、距離Wだけ離間している。これに加えて、ガイド部24aの表面をX方向で回転体23の側の端部から反対側の端部へ向かってひねられた面としてもよい。
【0058】
図15(B)から
図16(B)にシートSの挙動を示す。端部24cを傾斜させたことで、回転体23の捲り上げによりシートSの幅方向の一方端部がガイド部24a上に載り上げた後、先端LEがシートSの幅方向の他方端部に向けて、ガイド部24a上に掬い上げられながら載り上がる。これによりジャムの発生を抑制できる。
【0059】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0060】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0061】
1 記録装置、2 搬送装置、21 当接部、23 回転体