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特許7526225画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/30 20170101AFI20240724BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20240724BHJP
   G06V 10/24 20220101ALI20240724BHJP
【FI】
G06T7/30
G01N21/892 A
G06V10/24
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022075363
(22)【出願日】2022-04-28
(65)【公開番号】P2023164056
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 有一
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-065647(JP,A)
【文献】特開2015-130658(JP,A)
【文献】特開2000-132662(JP,A)
【文献】特開2014-074711(JP,A)
【文献】特開2013-036815(JP,A)
【文献】特開2005-227142(JP,A)
【文献】特開2004-199542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/30
G06T 7/00
G01N 21/892
G06V 10/24
H04N 1/00
B41J 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の印刷ジョブに関連する第1の原稿画像と、前記第1の原稿画像に基づく印刷物を読み取って得られる第1の読取画像と、の間の局所的な位置ずれを表す第1の情報を取得する取得手段と、
第2の印刷ジョブに関連する第2の原稿画像に前記第1の情報に従う局所的な位置ずれを付加して得られる基準画像を生成する生成手段と、
前記第2の原稿画像に基づく印刷物の検査のために、前記第2の原稿画像に基づく印刷物を読み取って得られる第2の読取画像と、前記基準画像と、の比較を行う検査手段と、を備え、
前記第1の原稿画像は、前記局所的な位置ずれを特定するためのパターンを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の情報は、前記第1の原稿画像上の着目点にあるオブジェクトと、前記第1の読取画像上の対応する点にあるオブジェクトとが一致するように、前記第1の原稿画像上の前記着目点と前記第1の読取画像上の前記対応する点との対応付けを示すことを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の情報は、複数の領域の1つに含まれる前記第1の原稿画像上の点の座標と前記第1の読取画像上の対応する点の座標との関係を、前記領域ごとに設定されたパラメータセットを用いて表すことを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の情報は、前記第1の原稿画像上の点の座標と前記第1の読取画像上の対応する点の座標との関係を、前記第1の原稿画像上の点の近傍にある点と前記第1の読取画像上の対応する点との対応付けに基づいて表すことを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検査手段は、前記第2の読取画像上のオブジェクトと前記基準画像上のオブジェクトとを位置合わせするように、少なくとも一方が変形された前記第2の読取画像と前記基準画像とを比較することを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2の原稿画像と前記基準画像との少なくとも一方の変形は、画像全体に対する一様な変換により行われることを特徴とする、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記検査手段は、前記基準画像と前記第2の読取画像とを、局所的に位置合わせしてから比較することを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記基準画像は、前記第2の原稿画像に前記第1の情報に従う局所的な変形を付加して得られる原稿領域と、前記原稿領域を取り囲む余白領域とを有し、
前記原稿領域内の画像は、前記第2の原稿画像に前記第1の情報に従う局所的な変形を付加し及び前記原稿領域の形状に合わせて変形して得られる画像であることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記原稿領域の形状は、前記第2の原稿画像に基づく印刷が行われる印刷媒体の形状に対応することを特徴とする、請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1の原稿画像と前記第2の原稿画像とが同一の画像であることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第1の情報は、
印刷領域内における局所的な位置ずれを、前記印刷領域内における前記第1の原稿画像上の各点と、前記第1の読取画像上の対応する点と、の対応付けに基づいて表し、
印刷領域外における局所的な位置ずれを、前記印刷領域内における前記第1の原稿画像上の各点と、前記第1の読取画像上の対応する点と、の対応付けに基づいて表す
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記基準画像は、前記第2の原稿画像に対応する媒体サイズに応じたサイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記生成手段は、前記第1の原稿画像中の、前記第2の原稿画像に対応する媒体サイズと略一致するサイズを有する領域についての局所的な位置ずれに基づいて、前記基準画像を生成することを特徴とする、請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記第1の原稿画像に対応する媒体サイズが前記第2の原稿画像に対応する媒体サイズとは異なることを特徴とする、請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記検査手段は、前記印刷物の検査において欠陥の検出頻度が高い領域を判定し、
前記生成手段は、前記欠陥の検出頻度が高い領域について前記基準画像を補正することを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記取得手段は、前記欠陥の検出頻度が高い領域における局所的な位置ずれを示す第2の情報を取得し、
前記生成手段は、前記第2の情報に基づいて前記基準画像を補正することを特徴とする、請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記取得手段は、前記第2の原稿画像と前記第2の読取画像との間の前記欠陥の検出頻度が高い領域における局所的な位置ずれを示す第2の情報を取得し、
前記生成手段は、前記第2の原稿画像に対して、前記第1の情報及び前記第2の情報に従う局所的な位置ずれを付加して得られる基準画像を生成する
ことを特徴とする、請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記検査手段は、前記印刷物の検査において欠陥の検出頻度が高い領域を判定し、
前記画像処理装置は、前記欠陥の検出頻度が高い領域の存在をユーザに通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項19】
画像処理装置が行う画像処理方法であって、
第1の印刷ジョブに関連する第1の原稿画像と、前記第1の原稿画像に基づく印刷物を読み取って得られる第1の読取画像と、の間の局所的な位置ずれを表す第1の情報を取得する工程と、
第2の印刷ジョブに関連する第2の原稿画像に前記第1の情報に従う局所的な位置ずれを付加して得られる基準画像を生成する工程と、
前記第2の原稿画像に基づく印刷物の検査のために、前記第2の原稿画像に基づく印刷物を読み取って得られる第2の読取画像と、前記基準画像と、の比較を行う検査工程と、を含み、
前記第1の原稿画像は、前記局所的な位置ずれを特定するためのパターンを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項20】
コンピュータを、請求項1から18のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関し、特に印刷物を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置により出力される印刷物において、インク又はトナー等の色材が意図しない箇所に付着することによる汚れが生じている場合がある。あるいは、画像を形成すべき箇所に十分な色材が付着しないことにより、本来よりも色が薄くなってしまう色抜けが生じる場合がある。こうした汚れ及び色抜けのような印刷物における欠陥は、印刷物の品質を低下させる。そこで、印刷物の品質を保証するために、印刷物における欠陥の検査が行われている。欠陥の有無を目視で検査することは多くのコストを必要とするため、自動で検査を行う検査システムが開発されている。
【0003】
このような検査システムは、例えば、事前に登録された印刷物の検査基準として用いられる基準画像と、検査対象の印刷物を読み取って得られる検査対象画像と、の差分に基づいて欠陥の有無を判定することができる。特許文献1は、印刷される画像データから作成した基準画像が検査対象画像と完全に一致しないことを踏まえて、基準画像と検査対象画像とを比較するために、これらを位置合わせする技術を提案している。具体的には、特許文献1の方法によれば、画像全体が複数のブロックに分割され、画像周辺部の複数の領域で第1の位置合わせを行うことで、各ブロックの位置ずれ量が算出される。その後、各ブロックの位置ずれ量に応じてずらした検査対象画像のブロックと、基準画像のブロックとの位置合わせが、これらをさらに微小にずらしながら行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-186562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された技術によれば、基準画像と検査対象画像との局所的な位置ずれが大きい場合には、ブロックの十分な位置合わせを行うことができず、検査精度が低下する場合があった。また、特許文献1においては検査対象の印刷物ごとに上記のような位置合わせが行われるため、ブロックの位置合わせにおいてブロックをずらす範囲を広げると、検査速度が低下する場合があった。
【0006】
本発明は、原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果と、原稿画像と、の比較によって行う印刷物の検査精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る画像処理装置は以下の構成を備える。すなわち、
第1の原稿画像と、前記第1の原稿画像に基づく印刷物を読み取って得られる第1の読取画像と、の間の局所的な位置ずれを表す第1の情報を取得する取得手段と、
第2の原稿画像に前記第1の情報に従う局所的な位置ずれを付加して得られる基準画像を生成する生成手段と、
前記第2の原稿画像に基づく印刷物の検査のために、前記第2の原稿画像に基づく印刷物を読み取って得られる第2の読取画像と、前記基準画像と、の比較を行う検査手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果と、原稿画像と、の比較によって行う印刷物の検査精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る印刷システムの構成を示す図。
図2】一実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図。
図3】一実施形態に係る画像処理方法のフローチャート。
図4】原稿画像、読取画像、及び基準画像の例を示す図。
図5】変形した検査対象画像と差分画像の例を示す図。
図6】変形情報を取得する処理を詳細に示すフローチャート。
図7】読取画像と原稿画像との対応付けの概要を示す図。
図8】読取画像から原稿画像への変換の概要を示す図。
図9】基準画像と読取画像との対応付けの概要を示す図。
図10】基準画像から原稿画像への変換の概要を示す図。
図11】印刷領域内格子点と印刷領域外格子点の例を示す図。
図12】基準画像と読取画像との対応付けの概要を示す図。
図13】基準画像と読取画像との対応付けの概要を示す図。
図14】基準画像から原稿画像への変換の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
本発明の一実施形態に係る画像処理装置は、第1の原稿画像(以下では校正用原稿画像と呼ぶ)と、第1の原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果である第1の読取画像(以下では校正用読取画像と呼ぶ)との関係を示す変形情報を取得する。この画像処理装置はさらに、変形情報に従って第2の原稿画像(以下では検査対象の原稿画像、又は単に原稿画像と呼ぶ)を変形することで基準画像を生成する。そして、この画像処理措置は、第2の原稿画像に基づく印刷物(以下では検査対象の印刷物と呼ぶ)の読み取り結果である第2の読取画像(以下では検査対象画像と呼ぶ)と基準画像との比較に基づいて、この印刷物の検査を行う。このように変形情報を用いて原稿画像を変形することで、印刷又は読取による局所的な位置ずれ(局所的な変形とも呼べる)が付与された基準画像を生成することができる。
【0012】
<印刷システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置100を含む、印刷物の出力及び検査を行う印刷システム全体の構成例を示す。本実施形態に係る印刷システムは、画像処理装置100と、印刷用サーバ180と、印刷装置190とを有する。印刷用サーバ180は、印刷原稿を印刷するための印刷ジョブ(通常印刷ジョブ)及び校正用印刷原稿を印刷するための印刷ジョブ(校正用印刷ジョブ)を生成し、印刷装置190へこれらの印刷ジョブを投入する。以下、この電子データのことを印刷データと呼ぶことがある。印刷装置190は、印刷用サーバ180から投入された印刷ジョブに基づき、記録媒体(例えば紙)上に画像を形成する。この例では、記録媒体として印刷用紙が用いられる。印刷装置190は給紙部191を有しており、ユーザはあらかじめ印刷用紙を給紙部にセットしておくことができる。印刷装置190は、印刷ジョブが投入されると、給紙部191にセットされた印刷用紙を搬送路192に沿って搬送しながら、その表面又は両面に印刷ジョブに従う画像を形成し、画像処理装置100へと送る。以下に説明する実施形態における印刷装置190は電子写真方式の印刷装置であるが、印刷方式は特に限定されず、印刷装置190がオフセット印刷方式又はインクジェット方式の印刷装置であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る画像処理装置100は、印刷物に対する検査を行う。この例では、画像処理装置100は、印刷装置190によって画像が形成され、搬送路192を通じて送られてきた印刷用紙、すなわち印刷物に対して、異常の有無を調べる検査処理を行う。このように、画像処理装置100は検査処理装置として機能する。
【0014】
画像処理装置100は、CPU101、RAM102、ROM103、主記憶装置104、及び画像読取装置105を有する。画像処理装置100は、さらに印刷装置インタフェース(I/F)106、汎用インタフェース(I/F)107、ユーザインタフェース(UI)パネル108、及びメインバス109を有する。画像処理装置100はさらに、印刷装置190の搬送路192と接続された印刷物の搬送路110、異常が発見されず検査に合格した印刷物を排出する出力トレー111、及び異常が発見された検査に不合格だった印刷物を排出する出力トレー112を有する。なお、画像処理装置100は、印刷物を合格した印刷物と不合格の印刷物の2種類に分類するだけでなく、さらに細かく分類する構成を有していてもよい。また、印刷システムにおいて、主記憶装置104、画像読取装置105、UIパネル108、搬送路110、出力トレー111、出力トレー112は、画像処理装置100の外部に設けられていてもよい。例えば、画像処理装置100は、画像読取装置105から読取画像を取得し、図3に示すような処理を行うことにより、搬送路110における印刷物の搬送動作を制御してもよい。
【0015】
CPU101はプロセッサであり、画像処理装置100内の各部を統括的に制御することができる。RAM102は、CPU101のための主メモリ又はワークエリア等として機能することができる。ROM103は、CPU101によって実行されるプログラム群を格納している。主記憶装置104は、CPU101によって実行されるアプリケーション、及び画像処理に用いられるデータ等を記憶する。CPU101のようなプロセッサが、RAM102、ROM103、又は主記憶装置104のようなメモリに格納されたプログラムを実行することにより、後述する図2等に示される各部の機能を実現することができる。
【0016】
画像読取装置(スキャナ)105は、印刷装置190から送られてきた印刷物の片面又は両面を、搬送路110上で読み取り、画像データ(印刷画像)として取得することができる。印刷装置I/F106は印刷装置190と接続されている。印刷装置I/F106は印刷装置190との通信のために用いられる。例えば、画像処理装置100は、印刷装置I/F106を介して、印刷装置190から送られてきた印刷物に関連する情報(印刷ジョブ、原稿画像(又は印刷に用いる画像データ)、及び用紙サイズ情報などを含む)を受け取ることができる。また、画像処理装置100は、印刷装置I/F106を介して、印刷装置190との間で印刷物の処理タイミングを同期すること、及び稼働状況を互いに通信することができる。
【0017】
汎用I/F107は外部装置を接続するためのインタフェースである。汎用I/F107は、例えばUSB又はIEEE1394等のシリアルバスインタフェースであり、ユーザがログ等のデータを持ち出すために用いることができる。UIパネル108は、画像処理装置100のユーザインタフェースである。UIパネルは例えば液晶ディスプレイであり、画像処理装置100の現在の状況又は設定をユーザに伝えるために表示することができる。また、UIパネル108は、タッチパネル方式のディスプレイ又はボタンを備えることができ、これらの入力装置を介してユーザからの指示(例えば検査又は校正に関する指示)を受け付けることができる。なお、マウス又はキーボードのような入力装置が、UIパネル108とは別に設けられていてもよい。メインバス109は画像処理装置100の各部分を接続する伝送路である。
【0018】
画像処理装置100は、印刷装置190から送られた検査対象の印刷物を搬送路110で搬送しつつ、画像読取装置105で読み取った検査対象の印刷物の画像データ(検査対象画像)に基づき、以下に説明する検査処理を行う。印刷物は、検査に合格すれば(すなわち、所定の品質基準を満たしていれば)出力トレー111まで搬送され、そうでなければ出力トレー112に搬送される。こうして、品質基準を満たすことが確認された印刷物のみを、納品用の印刷物として、出力トレー111に集めることができる。
【0019】
<画像処理装置の機能構成>
【0020】
図2は、本実施形態に係る画像処理装置100の機能構成を示す。上述のように、図2に示される画像処理装置100の機能は、プロセッサとメモリとを備えるコンピュータにより実現することができるが、画像処理装置100が有する一部又は全部の機能が専用のハードウェアによって実現されてもよい。また、本発明の一実施形態に係る画像処理装置は、例えばネットワークを介して接続された複数の情報処理装置によって構成されていてもよい。
【0021】
画像処理装置100は、画像取得部201、変形情報取得部202、基準画像生成部203、及び検査処理部204を有する。
【0022】
画像取得部201は、原稿画像及び読取画像を取得する。原稿画像は印刷装置I/F106から得ることができ、読取画像は搬送路110上の印刷物を画像読取装置105が読み取ることにより得ることができる。画像取得部201は、このように校正用原稿画像及び校正用読取画像を取得することができる。校正用読取画像は校正用印刷ジョブに対応する原稿画像であり、校正用読取画像は校正用原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果である。この印刷物は、印刷装置190が校正用原稿画像に基づく印刷を媒体上に行うことにより得られている。また、画像取得部201は、このように検査対象の原稿画像及び検査対象画像を得ることができる。検査対象の原稿画像は検査対象の印刷ジョブに対応する原稿画像であり、検査対象画像は検査対象の原稿画像に基づく検査対象の印刷物の読み取り結果である。検査対象の印刷物は、印刷装置190が検査対象の原稿画像に基づく印刷を媒体上に行うことにより得られている。画像取得部201は、こうして取得した画像データをRAM102又は主記憶装置104に保持することができる。
【0023】
変形情報取得部202は、校正用原稿画像と校正用読取画像との間の局所的な位置ずれを表す変形情報を取得する。変形情報取得部202は、校正用原稿画像及び校正用読取画像に基づいて、印刷物の印刷及び/又は読取により生じた変形を表す、このような変形情報を取得することができる。
【0024】
基準画像生成部203は、検査対象の原稿画像に変形情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示す基準画像を生成する。基準画像生成部203は、変形情報に基づいて、検査対象の原稿画像に対し、印刷物の印刷及び/又は読取により生じる局所的な位置ずれを付与することができる。この基準画像は、印刷物の検査において基準として用いられる画像データである。
【0025】
検査処理部204は、検査対象の原稿画像に基づく印刷物の検査を行うために、検査対象画像と基準画像との比較を行う。検査処理部204は、このように検査対象の印刷物に対応する読取画像(検査対象画像)を基準画像と比較することで検査処理を行い、検査結果を出力することができる。
【0026】
<画像処理装置が実行する処理>
図3は、画像処理装置100が行う画像処理方法の一例を示すフローチャートである。以下、各ステップ(工程)は、先頭にSが付けられた符号で表す。
【0027】
S301において、画像取得部201は、校正用原稿画像と校正用読取画像とを取得する。校正用原稿画像の例を図4(A)、校正用読取画像の例を図4(B)にそれぞれ示す。校正用原稿画像は、印刷用紙全体に対応し、印刷用紙全体への印刷パターンを示している。本実施形態で用いられる校正用原稿画像は、印刷装置190が印刷可能な領域にランダムパターンが配置された画像データであり、画像処理装置100が予め保持している。もっとも、校正用原稿画像の種類は特に限定されず、例えば校正用原稿画像と校正用読取画像とのマッチングを容易にする特徴的なオブジェクトを含んでいてもよい。校正用読取画像は、校正用原稿画像に基づく印刷装置190による印刷により得られた印刷物を読み取ることにより得られた画像であり、印刷及び/又は読取に起因する局所的な位置ずれを含んでいる。
【0028】
S302において、変形情報取得部202は変形情報を取得する。本実施形態において、変形情報取得部202は、校正用原稿画像と校正用読取画像とに基づいて変形情報を生成する。本実施形態において、変形情報は、式(1)に示す読取画像から原稿画像への変換fとして表される。
【数1】
式(1)において、(x′,y′)は読取画像上の座標であり、(x′′,y′′)は原稿画像上の座標を表す。この変換fは、読取画像上の各座標に対応する原稿画像上の座標を示すものであり、読取画像上のオブジェクトの、原稿画像からの局所的な位置ずれを示すことができる。
【0029】
本実施形態において、変形情報取得部202は、さらに式(1)に示す基準画像から原稿画像への変換hを取得する。式(1)において、(x,y)は基準画像上の座標である。変形情報取得部202は、さらに式(1)に示す基準画像から読取画像への変換gを取得し、変換f及び変換gに基づいて変換hを取得する。変換hは、基準画像上の各座標に対応する原稿画像上の座標を示すものであり、原稿画像を基準画像に変換する際に用いることができる。これらの処理の詳細は後述する。
【0030】
S303において、画像取得部201は、検査対象の原稿画像を取得する。原稿画像の例を図4(C)に示す。原稿画像は、印刷用紙全体に対応し、印刷用紙全体への印刷パターンを示している。
【0031】
S304において、基準画像生成部203は、変形情報と原稿画像に基づいて基準画像を生成する。基準画像の例を図4(D)に示す。本実施形態において、基準画像生成部203は、検査対象の原稿画像に変形情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示す基準画像を生成する。この処理により、原稿画像に対して印刷及び/又は読取に起因する局所的な位置ずれが付与された画像である、基準画像が得られる。なお、本実施形態において、検査対象の原稿画像に対応する媒体サイズ(例えば用紙サイズ)と、校正用原稿画像に対応する媒体サイズ(例えば用紙サイズ)とは同じである。
【0032】
本実施形態において、基準画像は原稿領域と背景領域とを有している。原稿画像に局所的な位置ずれを付加することにより画像端部も変形するかもしれないが、このように基準画像に背景領域を設けることにより、画像端部における検査を行うことが容易になる。本実施形態において、基準画像は所定の解像度を有し、背景領域のサイズ(例えば幅)は予め定められている。また、原稿領域の形状は、検査対象の原稿画像に基づく印刷が行われる印刷媒体の形状に対応していてもよい。例えば、原稿領域のサイズは、原稿画像に対応する媒体サイズと一致するように設定することができる。本実施形態で用いる基準画像は、検査対象の原稿画像に変形情報に従う局所的な位置ずれを付加し、さらに原稿領域に合わせて変形することにより得られた画像を、原稿領域に有している。後述するように、原稿領域に合わせた変形のためには、射影変換のような画像全体に対する一様な変形を行うことができる。このような変形により得られた原稿領域内の画像は、依然として検査対象の原稿画像に変形情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示している。
【0033】
本実施形態において、基準画像生成部203は、上記の変換hを用いて原稿画像から基準画像への変形を行う。詳しくは後述するが、変換hを用いた変形によれば、変形情報に従う局所的な位置ずれを付加し、さらにその結果を原稿領域の形状に合わせて変形することができる。変形情報取得部202は、このような基準画像の解像度及び原稿領域を考慮して変換hを取得することができる。基準画像生成部203は、式(1)に従って、基準画像の画素iに対応する座標(xi,yi)から、基準画像上の画素iに対応する原稿画像上の座標(xi′′,yi′′)を算出する。そして、基準画像生成部203は、変換hに基づいて基準画像の全画素について対応する原稿画像上の座標を算出し、算出された座標の画素値を原稿画像の近傍画素の画素値を用いた補間により算出する。
【0034】
S305において、画像取得部201は、検査対象画像を取得する。汚れを含まない検査対象画像の例を図4(E)、汚れを含む検査対象画像の例を図4(F)に示す。
【0035】
S306において、検査処理部204は、検査対象画像と基準画像との比較に基づいて、検査対象の印刷物の検査を行う。このとき、検査処理部204は、比較の前に検査対象画像と基準画像との少なくとも一方を変形することができる。例えば、検査処理部204は、基準画像上のオブジェクトと検査対象画像上のオブジェクトとを位置合わせするように、検査対象画像と基準画像との少なくとも一方を変形することができる。このような変形により、検査対象画像と基準画像との全体的な形状が一致するように、検査対象画像と基準画像とを位置合わせすることができる。ここでの位置合わせは、並進位置合わせだけでなく、射影変換のような画像全体に対する一様な変換を含むことができる。例えば、検査対象画像と基準画像との少なくとも一方の変形は、全領域について、変形前の座標と変形後の座標との関係を共通のパラメータセットを用いて表す変換を用いて行ってもよい。
【0036】
本実施形態において、検査処理部204は、まず検査対象画像を基準画像に合わせて変形する。例えば、検査処理部204は、基準画像と検査対象画像との間の特徴点(例えば画像の頂点付近に設けられた4つの位置合わせマーク)の対応に基づいて、検査対象画像に対して射影変換を行うことができる。欠陥を含まない検査対象画像を変形した例を図5(A)、欠陥を含む検査対象画像を変形した例を図5(B)に示す。
【0037】
そして、検査処理部204は、変形した検査対象画像と基準画像との間で、対応する画素間の色情報の差分を画素値として有する差分画像を生成する。欠陥を含まない検査対象画像に対応する差分画像の例を図5(C)、欠陥を含む検査対象画像に対応する差分画像の例を図5(D)に示す。差分としては、例えば画素値から算出した輝度の差の絶対値などを使用することができる。そして、検査処理部204は、検査感度に基づいて設定された閾値と差分画像の画素値とを比較し、画素値が閾値以上の画素を欠陥画素として示す欠陥マップを生成する。検査処理部204は、欠陥マップが欠陥画素の存在を示さない場合は印刷物が検査に合格したと判定し、欠陥マップが欠陥画素の存在を示す場合は印刷物が検査に不合格であると判定することができる。検査結果の判定方法はこのような方法には限定されず、例えば基準画像の全画素数に対する異常画素数の割合が所定の値以上である場合に、検査処理部204は印刷物が検査に不合格であると判定してもよい。
【0038】
検査処理部204は、このような印刷結果を出力することができる。検査処理部204が出力した検査結果は、例えば、印刷物の排出先を出力トレー111と出力トレー112との間で切り替える処理のために用いることができる。
【0039】
S307において、検査処理部204は、次の検査対象画像があるか否かの判定を行う。ある場合に処理はS305へ進み、ない場合に処理はS308へ進む。
【0040】
S308において、検査処理部204は、次の原稿画像があるか否かの判定を行う。ある場合に処理はS303へ進み、ない場合に処理はS309へ進む。
【0041】
S309において、検査処理部204は、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示などに基づいて、検査又は校正を継続する否かの判定を行う。検査又は校正を継続する場合、処理はS301へ進み、しない場合、処理は終了する。
【0042】
<変形情報取得処理>
図6は、S302において、変形情報取得部202が変形情報を取得する処理を詳細に示すフローチャートである。本処理では、まず変形情報取得部202は、校正用原稿画像と校正用読取画像とに基づいて上述の変換fを算出する。その後、変形情報取得部202は、基準画像及び読取画像に設定した基準点に基づいて基準画像から読取画像への変換gを算出する。最後に、変形情報取得部202は、変換f及び変換gに基づいて基準画像から原稿画像への変換hを算出する。
【0043】
S601において、変形情報取得部202は、校正用読取画像と校正用原稿画像の対応付けを行う。変形情報取得部202は、校正用原稿画像上の各点と、校正用読取画像上の対応する点と、の対応付けを示す情報を取得することができる。図7は読取画像と原稿画像との対応付けの概要を示す。本実施形態で、変形情報取得部202は、まず校正用読取画像に対して所定の間隔で格子点を配置する。そして、変形情報取得部202は、各格子点に対応する校正用原稿画像上の点を判定する。具体的には、変形情報取得部202は、校正用読取画像の格子点にある画像特徴と同様の画像特徴を有する校正用原稿画像上の点を、格子点に対応する点として判定することができる。
【0044】
例えば、変形情報取得部202は、校正用読取画像の格子点近傍領域をテンプレートとして、テンプレートと校正用原稿画像とのマッチングを行うことができる。このマッチングによれば、テンプレートとの一致度が高い校正用原稿画像の部分領域を検出することができる。このようなマッチングにより、変形情報取得部202は、図7(B)に示すような校正用読取画像上の格子点の座標(x′g,y′g)に対応する、図7(A)に示すような校正用原稿画像上の座標(x′′g,y′′g)を判定することができる。
【0045】
S602において、変形情報取得部202は、S601で対応付けられた格子点の座標に基づいて、読取画像から原稿画像への変換fを算出する。図8は、読取画像から原稿画像への変換の概要を示す。本実施形態において、変換fは、格子点の対応付けに基づく疑似アフィン変換である。読取画像820上の座標(x′,y′)を原稿画像810上の座標(x′′,y′′)に変換する変換fは、式(2)により表すことができる。
【数2】
式(2)において、(x′g0,y′g0)、(x′g1,y′g1)、(x′g2,y′g2)、及び(x′g3,y′g3)は、読取画像上の座標(x′,y′)近傍の4つの格子点g′0、g′1、g′2、及びg′3の座標をそれぞれ示す。また、(x′′g0,y′′g0)、(x′′g1,y′′g1),(x′′g2,y′′g2)、及び(x′′g3,y′′g3)は、格子点g′0、g′1、g′2、及びg′3にそれぞれ対応する原稿画像上の点g′′0、g′′1、g′′2、及びg′′3の座標をそれぞれ示す。
【0046】
言い換えれば、変換fは、校正用原稿画像上の点の座標と校正用読取画像上の対応する点の座標との関係を、校正用原稿画像上の点の近傍にある点(例えば格子点)と校正用読取画像上の対応する点との対応付けに基づいて表している。また、複数の領域の1つに含まれる校正用原稿画像上の点の座標と校正用読取画像上の対応する点の座標との関係は、領域ごとに設定されたパラメータセットを用いて表すことができる。上記の例においては、格子点によって区切られた領域が複数の領域に対応し、g′′0、g′′1、g′′2、及びg′′3の座標がパラメータセットに対応する。
【0047】
また、変形情報取得部202は、さらに原稿画像から読取画像への変換f-1を算出する。読取画像上の座標(x′′,y′′)を原稿画像上の座標(x′,y′)に変換する変換f-1は、式(3)により表すことができる。
【数3】
【0048】
S601で得られた、校正用読取画像と校正用原稿画像の対応付けを示す情報は、校正用読取画像と校正用原稿画像との間の局所的な位置ずれを表す変形情報として用いることができる。また、S602で得られた変換f及びf-1も、校正用読取画像と校正用原稿画像との間の局所的な位置ずれを表す変形情報として用いることができる。上記のような画像特徴に基づく対応付けのために、これらの変形情報は、校正用原稿画像上の着目点にあるオブジェクトと、校正用読取画像上の対応する点にあるオブジェクトとが一致するような、着目点と対応する点との対応付けを示す。なお、本実施形態においては、変形情報としては変換fが用いられる。一方で、本実施形態においては、検査対象の原稿画像に対して変形情報に従う局所的な変形を付加し、さらにこれを変形して得られる基準画像が、印刷物の検査のために用いられる。S603~S606では、変形情報を用いて、検査対象の原稿画像を基準画像に変換するために用いる変換hの算出が行われる。
【0049】
S603において、変形情報取得部202は、基準画像と読取画像との対応付けを行う。図9は基準画像と読取画像の対応付けの概要を示す。本実施形態において変形情報取得部202は、基準画像における基準点と読取画像における基準点との対応付けを行う。ここで、基準点としては例えば媒体である矩形の印刷用紙の頂点を用いることができる。
【0050】
本実施形態における基準画像における基準点は、基準画像における印刷用紙の頂点であり、すなわち原稿領域の頂点である。上述のように、本実施形態において、基準画像の解像度及び背景領域のサイズは予め定められている。変形情報取得部202は、基準画像930における印刷用紙の頂点に対応する基準点c0、c1、c2、及びc3の座標を、基準画像の解像度、背景領域のサイズ、及び原稿画像に対応する媒体サイズに基づいて算出することができる。
【0051】
本実施形態における読取画像における基準点は、読取画像に写っている印刷用紙の頂点に相当する。本実施形態において、変形情報取得部202は、変換f-1を用いて読取画像における基準点の座標を算出する。例えば、変形情報取得部202は、原稿画像910における印刷用紙の頂点に対応する基準点c′′0、c′′1、c′′2、及びc′′3の座標を算出することができる。具体的には、原稿画像の四隅の座標を、原稿画像における基準点の座標として用いることができる。そして、変形情報取得部202は、変換f-1を用いて、基準点c′′0、c′′1、c′′2、及びc′′3の座標から、読取画像920における基準点c′0、c′1、c′2、及びc′3に対応する座標を算出することができる。最後に、変形情報取得部202は、基準画像930における基準点c0、c1、c2、及びc3と、読取画像920における基準点c′0、c′1、c′2、及びc′3と、を対応付ける。
【0052】
S604において、変形情報取得部202は、S603における基準画像と読取画像との対応付けに基づいて、基準画像から読取画像への変換gを算出する。本実施形態において、基準画像から読取画像への変換gは、基準画像における基準点と読取画像における基準点との対応に基づく射影変換である。例えば、基準画像930上の座標(x,y)を読取画像920上の座標(x′,y′)に変換する変換gは、式(4)により表すことができる。
【数4】
式(4)において、a~aは射影変換パラメータを表す。射影変換パラメータは、基準画像における基準点と読取画像における基準点との対応付けに基づいて、最小二乗法により算出することができる。
【0053】
S605において、変形情報取得部202は、基準画像から原稿画像への変換hを算出する。図10は基準画像から原稿画像への変換の概要を示す。基準画像1030上の座標(x,y)から原稿画像1010上の座標(x′′,y′′)を算出する変換hは、読取画像から原稿画像への変換fと基準画像から読取画像への変換gとに基づいて、式(5)により表すことができる。
【数5】
【0054】
以上説明したような本実施形態によれば、検査対象の原稿画像を用いて、検査対象の印刷物の検査を行うことができる。具体的には、検査対象の原稿画像に対して局所的な位置ずれを付加した結果と、検査対象の印刷物の読み取り結果である検査対象画像と、の比較により検査が行われる。このような実施形態によれば、検査対象画像中に写る印刷物の位置が全体的にずれている場合に加え、印刷物又は読取画像上の画像が原稿画像と比較して局所的に変形している場合であっても、精度良く検査を行うことができる。例えば、印刷装置190及び/又は画像処理装置100による印刷及び/又は読取時における媒体搬送速度の微小なばらつきなどにより、各印刷物又は読取画像に共通した微小な局所的変形が存在する可能性がある。このような微小な局所的変形は、品質に影響をほとんど与えない場合であっても検査結果に影響を与える可能性があるが、本実施形態のように局所的な位置ずれが付加された基準画像を検査のために用いることにより、検査精度を向上させることができる。また、本実施形態においては、変形情報を取得する際には校正用原稿画像と校正用読取画像との間の局所的な位置合わせが行われるものの、複数の印刷物のそれぞれに対する検査を行う際に局所的な位置合わせを行うことは必須ではない。このため、検査速度が向上することも期待される。
【0055】
<変形例>
上述の実施形態では、校正用原稿画像として予め保持されている画像が用いられた。しかしながら、その他の原稿画像が校正用原稿画像として用いられてもよい。例えば、後で検査のために用いられる検査対象の原稿画像が校正用原稿画像として用いられてもよい。すなわち、校正用原稿画像と検査対象の原稿画像とが同一であってもよいし、一方で校正用原稿画像と検査対象の原稿画像とが異なっていてもよい。別の例として、校正用原稿画像は複数の原稿画像から画像取得部201によって選択されてもよい。画像取得部201は、印刷パターンを参照して複数の原稿画像から校正用原稿画像として選択してもよく、例えば、大きくランダムな印刷パターンを有する原稿画像を選択することができる。
【0056】
上述の実施形態では、校正用原稿画像及び検査対象の原稿画像は印刷用紙全体に対応し、印刷用紙全体への印刷パターンを示していた。一方で、校正用原稿画像及び検査対象の原稿画像が印刷用紙の一部に対応し、印刷用紙の一部への印刷パターンを示していてもよい。例えば、印刷時に印刷パターンの周囲に余白領域が生じるように、原稿画像に基づく媒体への印刷か行われてもよい。この場合、校正用原稿画像及び検査対象の原稿画像の周囲に余白領域を追加することにより、上述の実施形態と同様の処理を行うことができる。
【0057】
上述の実施形態で基準画像生成部203は、S304において変形情報に基づいて原稿画像を変形することによって基準画像を生成した。しかしながら、基準画像の生成方法はこの方法に限られない。例えば、原稿画像と読取画像との色空間が異なる場合は、基準画像生成部203はさらに原稿画像に対する色変換処理を行ってもよい。また、基準画像生成部203は、基準画像を生成する際に、印刷及び/又は読取によるノイズを付与してもよい。その他、原稿画像を読取画像に近づけるための任意の処理を、基準画像を生成するために用いることができる。
【0058】
上述の実施形態では、基準画像は、検査対象の原稿画像を変形情報に従って変形し、さらに原稿領域に合わせて変形することにより得られる画像に相当する。そして、検査対象画像を基準画像に合わせて変形してから、基準画像との比較が行われた。しかしながら、このような処理を行うことは必須ではない。例えば、基準画像は、検査対象の原稿画像を変形情報に従って変形して得られる画像(例えば変換fを適用して原稿画像を変形することにより得られる画像)であってもよい。この場合、検査処理部204は、基準画像と検査対象画像とをそのまま比較してもよいし、基準画像と検査対象画像とを並進位置合わせしてから比較してもよい。このような並進位置合わせは、基準画像と検査対象画像との間の特徴点(例えば位置合わせマーク)の対応に基づいて行うことができる。もっとも、検査処理部204は、上述の実施形態と同様に、検査対象画像と基準画像との少なくとも一方を変形してから比較を行ってもよい。
【0059】
また、上述の実施形態において、読取画像から原稿画像への変換fは疑似アフィン変換であったが、変換fの種類はこれに限られない。変換fとしては、その他の印刷及び/又は読取による局所的な位置ずれを表すことができる変形処理が用いられてもよい。例えば、対応付けられた格子点の座標に基づくbスプライン補間などによる変形処理、又は自由形状変形などの非線形な変形処理が用いられてもよい。
【0060】
上述の実施形態のS603において、変形情報取得部202は、原稿画像から読取画像への変換f-1を用いて、読取画像における基準点の座標を算出したが、読取画像における基準点の座標の算出方法はこの方法に限られない。例えば、変形情報取得部202は、読取画像における基準点の座標として、読取画像における媒体(印刷用紙)の頂点に対応する座標を取得してもよい。具体例として、変形情報取得部202は、印刷用紙の頂点に対応する予め用意されたテンプレート画像と、読取画像とのマッチングにより、印刷用紙の頂点に対応する座標を算出することができる。あるいは、変形情報取得部202は、読取画像から印刷用紙の輪郭を表す画素を抽出し、この画素の位置に基づいて印刷用紙の頂点に対応する座標を算出してもよい。
【0061】
また、S603においては、印刷用紙の頂点が基準点として用いられたが、別の点が基準点として用いられてもよい。例えば、印刷用紙の頂点から用紙の内側に所定の距離だけ離れた箇所が、基準点として用いられてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態において、基準画像から読取画像への変換gとしては射影変換が用いられたが、変換gの種類はこれに限られない。例えば、変換gとしては、基準画像と読取画像との間の基準点の対応に基づくアフィン変換を用いてもよいし、自由形状変形などの非線形な変形処理を用いてもよい。変換gは、画像全体に対するその他の一様な変形であってもよい。
【0063】
また、上述の実施形態のS306において、検査処理部204は、射影変換によって検査対象画像を基準画像に合わせて変形したが、変形方法はこの方法に限られない。例えば、基準画像と検査対象画像との間の特徴点の対応に基づくアフィン変換を用いてもよいし、自由形状変形などの非線形な変形処理を用いてもよい。検査処理部204は、画像全体に対するその他の一様な変形を行うこともできる。
【0064】
また、検査処理部204は、基準画像と検査対象画像とを、局所的に位置合わせしてから比較してもよい。例えば、検査処理部204は、変形した検査対象画像と基準画像との差分画像を生成する際に、検査対象画像と基準画像との間で局所的な位置合わせを行ってもよい。具体例として、検査処理部204は、検査対象画像上の着目画素に対応する基準画像上の画素の近傍領域から、着目画素との色情報の差分が最小となる画素を探索することができる。この場合、検査処理部204は、着目画素に対応する画素が、着目画素と探索された画素との間の色情報の差分を有するように、差分画像を生成することができる。このような構成によれば、印刷及び/又は読取による局所的な位置ずれが読取画像ごとに変動する場合であっても、精度よく印刷物を検査することができる。一方で、このような構成においても、局所的な位置ずれが付加された基準画像を検査のために用いることにより、基準画像と検査対象画像との局所的な位置ずれが小さくなることが期待される。したがって、局所的な位置合わせにおける探索範囲が小さくても局所的な位置合わせの精度が高まり、検査精度又は検査速度が向上することが期待される。
【0065】
<印刷外領域についての変形情報>
上述の実施形態においては、変形情報は校正用原稿画像と校正用読取画像の対応、より具体的には読取画像と原稿画像との格子点の対応付けによって示された。そして、変換fに従う原稿画像から読取画像への変換は、読取画像上の点に対応する原稿画像上の点の座標を、読取画像上の近傍の格子点に対応する原稿画像上の格子点の座標を用いて算出することにより行うことができた。一方で、印刷領域外における原稿画像から読取画像への変換fは、近傍の印刷領域内における校正用原稿画像と校正用読取画像の対応に基づいて行われてもよい。
【0066】
ここでは、印刷領域内についての変形情報を近傍の校正用原稿画像と校正用読取画像との対応に基づいて表し、印刷領域外についての変形情報を近傍の印刷領域内の校正用原稿画像と校正用読取画像の対応に基づいて表す場合について説明する。ここで、印刷領域とは、原稿画像に含まれる印刷パターンが印刷装置190により印刷されている領域である。印刷領域外の領域は、原稿画像に含まれる印刷パターンが印刷されていない領域であり、例えば余白領域である。もっとも、印刷領域の内側に、印刷領域外の領域が存在していてもよい。
【0067】
この場合、S601において、変形情報取得部202は、まず校正用読取画像の印刷領域を示す情報を取得する。また、変形情報取得部202は、上述の実施形態と同様に校正用読取画像に格子点を配置する。ここで、格子点は、印刷領域内にある印刷領域内格子点と、印刷領域内にない印刷領域外格子点とに分類される。なお、この例において、校正用読取画像は印刷用紙に対して印刷パターンの位置がずれている印刷位置ずれを含んでいるものとする。印刷領域内格子点及び印刷領域外格子点の例を図11に示す。図11には、読取画像について、原稿領域1120、原稿領域1120内の印刷領域1110、及び原稿領域1120外の背景領域1130が示されている。また、印刷領域内格子点は丸(○)で、印刷領域外格子点は二重丸(◎)で示されている。
【0068】
印刷領域を示す情報を取得するために、変形情報取得部202はまず、校正用読取画像における原稿領域を判定することができる。例えば、変形情報取得部202は、印刷用紙が写っていない背景領域と印刷用紙が写っている原稿領域とを区別するように設定された閾値を用いて校正用読取画像を二値化することにより、原稿領域を判定することができる。さらに、変形情報取得部202は、原稿領域内から印刷領域を検出することができる。例えば、変形情報取得部202は、印刷用紙が写っている部分と印刷パターンが写っている部分を区別するように設定された閾値を用いて原稿領域内の校正用読取画像を二値化することにより、印刷パターンが写っている印刷領域を判定することができる。一方で、印刷領域の判定方法はこのような方法には限られず、校正用読取画像に対して印刷領域が予め設定されていてもよい。
【0069】
S602において、変形情報取得部202は、印刷領域内における読取画像と原稿画像の対応付けを行う。変形情報取得部202は、各印刷領域内格子点に対応する校正用原稿画像上の点を算出することができる。具体的には、変形情報取得部202は、上述の実施形態と同様に、各印刷領域内格子点の座標(x′g、y′g)に対応する校正用原稿画像上の座標(x′′g、y′′g)を判定することができる。
【0070】
さらに、変形情報取得部202は、印刷領域外における読取画像と原稿画像の対応付けを行う。変形情報取得部202は、各印刷領域外格子点に対応する校正用原稿画像上の点を判定することができる。具体的には、変形情報取得部202は、各印刷領域外格子点に対して、最近傍の印刷領域内格子点を対応付ける。そして、変形情報取得部202は、最近傍の印刷領域内格子点に対応する校正用原稿画像上の点の座標を用いて、印刷領域外格子点に対応する校正用原稿画像上の点の座標を算出することができる。この処理は、例えば式(6)に従って行うことができる。
【数6】
式(6)において、(x′*,y′*)は印刷領域外格子点の座標であり、(x′′*,y′′*)はこの格子点に対応する校正用原稿画像上の座標である。また、(x′gn,y′gn)は最近傍の印刷領域内格子点の座標であり、(x′′gn,y′′gn)は最近傍の印刷領域内格子点に対応する校正用原稿画像上の座標である。また、αは読取画像と原稿画像との解像度の比を表す。
【0071】
以降の処理は、上述の実施形態と同様に行うことができる。この場合、上記のような対応付けに従って、印刷領域内における局所的な位置ずれを、印刷領域内における校正用原稿画像上の各点と、校正用読取画像上の対応する点と、の対応付けに基づいて表す、変換fのような変形情報を得ることができる。一方で、この変形情報は、印刷領域外における局所的な位置ずれを、印刷領域内における校正用原稿画像上の各点と、校正用読取画像上の対応する点と、の対応付けに基づいて表すことになる。
【0072】
本実施形態における基準画像と校正用読取画像との対応付けの例を図12に示す。図12には、図9と同様の原稿画像1210における基準点と基準画像1230における基準点とが示されている。校正用読取画像1220における基準点c′0、c′1、c′2、及びc′3は、印刷領域に対する印刷位置ずれがない場合の印刷用紙の頂点に対応する座標である。
【0073】
S602で行われるようなテンプレートマッチングなどによる校正用原稿画像と校正用読取画像との対応付けは、パターンの印刷が行われない印刷領域外においては、全体的な印刷位置ずれの影響を受けやすい。このため、校正用読取画像が印刷位置ずれを含む場合に、印刷領域外においては印刷及び/又は読取による局所的な位置ずれを判定しにくい可能性がある。この変形例によれば、印刷領域外における読取画像と原稿画像の対応付けは、印刷領域内における読取画像と原稿画像の対応に基づいて行われるため、印刷位置ずれによる影響が抑制される。より具体的には、格子点の対応付けに与える印刷位置ずれの影響を抑制することができる。このため、校正用読取画像が印刷位置ずれを含む場合であっても、精度よく印刷物を検査することができる。
【0074】
<媒体サイズに応じた基準画像の生成>
ここまで、検査対象の原稿画像に対応する媒体サイズと、校正用原稿画像に対応する媒体サイズとが同じ場合について説明した。一方で、検査対象の原稿画像に対応する媒体サイズと、校正用原稿画像に対応する媒体サイズとは異なっていてもよい。以下では、原稿画像に対応する媒体サイズに応じて基準画像と読取画像との対応付けを行うことにより、媒体サイズに応じた、基準画像から読取画像への変換を得る方法について説明する。以下では媒体が印刷用紙の場合について説明し、媒体サイズのことを用紙サイズと呼ぶ。
【0075】
この例において、基準画像生成部203は、検査対象の原稿画像の用紙サイズに応じた基準画像を生成する。このために、変形情報取得部202は、用紙サイズに応じて基準画像と読取画像との対応付けを行う。図13は基準画像と読取画像の対応付けの概要を示す。本実施形態では、印刷用紙の頂点が基準画像における基準点として用いられ、変形情報取得部202は基準画像における基準点と校正用読取画像における基準点の対応付けを行う。
【0076】
以下の説明において、校正用原稿画像1310に対応する用紙サイズはA3である。また、基準画像に対応する用紙サイズはA4又はA3である。基準画像の解像度及び背景領域サイズは予め定められている。また、基準画像の原稿領域サイズは、用紙サイズと一致するように定めることができる。すなわち、基準画像は、検査対象の原稿画像に対応する媒体サイズに応じたサイズを有することができる。
【0077】
図13には、A4の原稿画像に対応し、A4の印刷物の検査に用いられる基準画像1380(A4基準画像)が示されており、A4基準画像における基準点はc00、c01、c02、及びc03である。図13にはまた、A3の原稿画像に対応し、A3の印刷物の検査に用いられる基準画像1330(A3基準画像)が示されており、A3基準画像における基準点は、c10、c11、c12、及びc13である。このような基準点の座標は、用紙サイズ、基準画像の解像度、及び背景領域のサイズに基づいて算出される。
【0078】
以下では、変形情報取得部202が、複数の用紙サイズのそれぞれについて、基準画像における基準点と校正用読取画像における基準点の対応付けを行う場合について説明する。以下の処理によれば、複数の用紙サイズのそれぞれについての、基準画像から読取画像への変換を得ることができる。この場合、S603~S605の処理は、複数の用紙サイズのそれぞれについて繰り返される。一方で、変形情報取得部202が、複数の用紙サイズのそれぞれについて変換を算出する必要はなく、1つの用紙サイズについての変換gを算出してもよい。
【0079】
S603において、変形情報取得部202は、対象とする用紙サイズに基づいて、校正用原稿画像における基準点の座標を算出する。一実施形態においては、校正用原稿画像中の、検査対象の原稿画像に対応する印刷サイズと略一致するサイズを有する領域についての局所的な位置ずれに基づいて、基準画像が生成される。このために、変形情報取得部202は、基準画像と校正用原稿画像との間で基準点に囲まれた領域の面積が略一致するように、校正用原稿画像における基準点の座標を算出することができる。例えば、図13に示すように、A3基準画像1330から原稿画像への変換を得る場合、校正用原稿画像1310における基準点をc′′0、c′′1、c′′2、及びc′′3とすることができる。また、A4基準画像1380から原稿画像への変換を得る場合、校正用原稿画像1310における基準点をc′′0、c′′1、c′′4、及びc′′5とすることができる。図13の例では、校正用原稿画像の四隅の画素がc′′0、c′′1、c′′2、及びc′′3である。また、c′′0とc′′2との中点がc′′4、c′′1とc′′3との中点がc′′5である。
【0080】
そして、変形情報取得部202、原稿画像から読取画像への変換f-1に基づいて、校正用原稿画像における基準点の座標から、読取画像における基準点に対応する座標を算出する。図13の例では、A3基準画像1330から原稿画像への変換を得る場合の校正用読取画像1320における基準点はc′0、c′1、c′2、及びc′3である。また、A4基準画像1380から原稿画像への変換を得る場合の校正用読取画像1320における基準点はc′0、c′1、c′4、及びc′5である。
【0081】
最後に、変形情報取得部202は、基準画像における基準点と校正用読取画像における基準点とを対応付ける。変形情報取得部202は、A3基準画像から原稿画像への変換を得る場合には、A3基準画像1330における基準点c10、c11、c12、及びc13と、校正用読取画像1320における基準点c′0、c′1、c′2、及びc′3とを対応付ける。また、変形情報取得部202は、A4基準画像から原稿画像への変換を得る場合には、A4基準画像1380における基準点c00、c01、c02、及びc03と、校正用読取画像1320における基準点c′0、c′1、c′4、及びc′5と、を対応付ける。
【0082】
S604において、変形情報取得部202は、対象とする用紙サイズについての、S603における基準画像と読取画像との間の基準点の対応付けに基づいて、基準画像から読取画像への変換を算出する。本実施形態で、変形情報取得部202は、A3サイズに対応し、射影変換を表す変換gを、c10、c11、c12、及びc13とc′0、c′1、c′2、及びc′3との対応に基づいて得ることができる。また、変形情報取得部202は、A4サイズに対応し、射影変換を表す変換gを、c00、c01、c02、及びc03とc′0、c′1、c′4、及びc′5の対応に基づいて得ることができる。具体的な変換g及び変換gの算出方法は、上述の変換gの算出方法と同様である。
【0083】
S605において、変形情報取得部202は、対象とする用紙サイズについての、基準画像から原稿画像への変換hを算出する。図14は、基準画像から原稿画像への変換の概要を示す。変形情報取得部202は、A4基準画像1480からA4サイズに対応する原稿画像1460への変換hを算出し、A3基準画像1430からA3サイズに対応する原稿画像1410への変換hを算出する。基準画像上の座標(x,y)から原稿画像上の座標(x′′,y′′)を算出する変換hは、読取画像から原稿画像への変換fと基準画像から読取画像への変換gとに基づいて、式(7)により表すことができる。ここでは、変形情報取得部202は、対象とする用紙サイズがA3の場合には変換f及び変換gを用いて変換hを算出し、対象とする用紙サイズがA4の場合には変換f及び変換gを用いて変換hを算出する。
【数7】
【0084】
その後、基準画像生成部203は、検査対象の原稿画像の用紙サイズに対応する変形情報と、検査対象の原稿画像とを用いて、検査対象の原稿画像の用紙サイズに対応する基準画像(例えばA3基準画像又はA4基準画像)を生成することができる。具体的な基準画像の生成手法は、上述の実施形態と同様である。
【0085】
以上の変形例によれば、検査対象の原稿画像に対応する用紙サイズに応じて基準画像と読取画像との対応付けを行うことにより、用紙サイズに応じた変形情報が得られる。このような構成によれば、校正用原稿画像に対応する用紙サイズと、原稿画像に対応する用紙サイズが異なる場合であっても、精度よく印刷物の検査を行うことができる。特に、複数の用紙サイズのそれぞれに応じた変形情報を得ることにより、検査対象の印刷物が様々な用紙サイズを有する場合にも、効率よく検査を行うことができる。
【0086】
なお、校正用原稿画像における基準点の座標の算出方法は上記の方法に限られない。例えば、校正用印刷画像における基準点は印刷用紙の頂点であってもよい。この場合、位置関係が一致するように、基準画像における基準点に対応する、校正用原稿画像における基準点の座標を決定してもよい。このとき、A4基準画像に対応する校正用原稿画像における基準点c′′0、c′′1、c′′4、及びc′′5の座標は、A3基準画像に対応する校正用原稿画像における基準点c′′0、c′′1、c′′2、及びc′′3の座標と等しくなる。この方法を用いる場合、検査対象の原稿画像に対応する用紙サイズは、校正用原稿画像の用紙サイズよりも大きくてもよい。
【0087】
なお、検査対象の原稿画像が有する局所的な位置ずれと、この原稿画像の用紙サイズに対応する基準点により囲まれる領域において校正用読取画像が有する局所的な位置ずれと、が類似していると、印刷物の検査精度が向上する。このような観点から、印刷装置190の印刷機構及び画像読取装置105の読み取り機構を考慮して、校正用原稿画像における基準点を選択してもよい。例えば、校正用原稿画像における2つの基準点間を結ぶ直線と、基準画像における対応する2つの基準点間を結ぶ直線とが、同じ走査方向を示すように、校正用原稿画像における基準点の座標を決定することにより、印刷物の検査精度が向上することが考えられる。具体例として、c00-c01が副走査方向を示す場合はc′′0-c′′1も副走査方向を示すように、校正用原稿画像における基準点の座標を決定することができる。同様に、c00-c01が主走査方向を示す場合はc′′0-c′′1も主走査方向を示すように、校正用原稿画像における基準点の座標を決定することができる。
【0088】
上記の例では、校正用原稿画像に対応する用紙サイズはA3、基準画像に対応する用紙サイズはA4又はA3であるが、用紙サイズはこれらに限られない。例えば、校正用原稿画像に対応する用紙サイズはB3などの他のサイズでもよいし、基準画像に対応する用紙サイズがB5を含んでいてもよい。
【0089】
<基準画像の補正>
S305~S307において検査対象画像に対する検査を行っている際に、特定領域における欠陥発生頻度が高い場合には、基準画像の補正を行ってもよい。具体的には、原稿画像と読取画像とに基づいて補正された変形情報に基づいて、基準画像を補正することができる。このような補正によれば、印刷及び/又は読取による局所的な位置ずれが特定箇所において変化した場合であっても、精度よく印刷物を検査することができる。以下、このような実施形態について説明する。
【0090】
このような実施形態において、S306の後に検査処理部204は、印刷物の検査において欠陥の検出頻度が高い領域を判定する。具体的には、検査処理部204は、複数の検査対象画像に対してS306で作成した欠陥マップに基づき、欠陥画素の発生頻度を画素値として有する欠陥発生頻度マップを生成することができる。検査処理部204は、この欠陥発生頻度マップに基づいて、欠陥発生頻度が所定の閾値よりも高い領域(特定領域)を判定することができる。
【0091】
特定領域が検出された場合には、基準画像の補正を行うことができる。具体的には、基準画像生成部203は、特定領域について基準画像を補正することができる。このために、変形情報取得部202は、特定領域における局所的な位置ずれを示す補正情報を取得し、基準画像生成部203は、この補正情報に基づいて基準画像を補正することができる。
【0092】
具体的にはまず、変形情報取得部202は、基準画像から原稿画像への変換hを補正する。この実施形態において、変形情報取得部202は、変換hを補正するために、特定領域における読取画像と原稿画像との対応付けを行う。本実施形態では、検査対象画像と検査対象の原稿画像とを用いて、この対応付けが行われる。変形情報取得部202は、まず、S601と同様に、検査対象画像に対して格子点を配置する。次に、変形情報取得部202は、配置した格子点のうち、特定領域に対応する格子点(例えば特定領域に含まれる格子点、又は格子状に区切られた矩形領域のうち、特定領域と重複する矩形領域の頂点にある格子点など)を検出する。なお、欠陥発生頻度マップは基準画像中の特定領域を示すが、基準画像から読取画像への変換gを用いることにより、検査対象画像中の対応する特定領域を判定することができる。
【0093】
さらに、変形情報取得部202は、検査対象画像中の特定領域に対応する格子点に対応する、検査対象の原稿画像上の点を判定する。この処理は、S601と同様の方法で、例えばテンプレートマッチングを用いて行うことができる。このように、変形情報取得部202は、検査対象画像と検査対象との間の特定領域における局所的な位置ずれを示す補正情報を取得することができる。
【0094】
上述のように、S601では、読取画像上の格子点と原稿画像上の対応する点の座標とが関連付けられている。この実施形態において、変形情報取得部202は、読取画像(検査対象画像)中の特定領域に対応する格子点については、対応付ける座標を、この格子点に対応する検査対象の原稿画像上の点の座標で更新する。このように、この実施形態では、読取画像と原稿画像との対応付けが、検査対象画像と検査対象との間の特定領域における局所的な位置ずれを示す情報に従って補正される。
【0095】
そして、変形情報取得部202は、補正された読取画像と原稿画像との対応付けに従って、S602と同様に変換fを算出する。このとき、変形情報取得部202は、特定領域外の格子点については、S601で得られた読取画像上の格子点と原稿画像上の対応する点の座標との対応付けを示す情報を用いることができる。また、変形情報取得部202は、算出された変換f及び変換gを用いてS605と同様に変換hを算出する。なお、S603~S604と同様に変換gを再度算出してもよいし、変換gの算出を省略し、変換hを算出するために過去に算出した変換gを用いてもよい。その後のS305において、基準画像生成部203は、こうして得られた変換hと検査対象の原稿画像とを用いて基準画像を生成することができる。このように、基準画像生成部203は、検査対象の原稿画像に対して、S601で取得した変形情報及び上記のように得られた補正情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示す基準画像を生成することができる。
【0096】
以上のように、この実施形態においては、特定領域における読取画像と原稿画像との対応付けに基づいて、読取画像と原稿画像との対応付け及び変換fが補正され、これを用いて変換h及び基準画像も補正される。特定領域における欠陥発生頻度の高さは、この特定領域における印刷及び/又は読取による局所的な位置ずれの態様が変化したことによる過検出の影響を受けていると考えられる。以上の処理によれば、印刷及び/又は読取による局所的な位置ずれの変化を反映するように基準画像が補正されるため、局所的な位置ずれが変化した場合であっても、精度よく印刷物を検査することができる。
【0097】
なお、別の実施形態において、画像取得部201は、特定領域における欠陥発生頻度が高い場合に、欠陥の検出頻度が高い領域の存在をユーザに通知してもよい。例えば、画像取得部201は、UIパネル108などを介してユーザに対して変形情報及び/又は基準画像の再取得を行うように報知することができる。この場合、ユーザ操作に従って、図3に示す処理を再度行ってもよいし、上記のような基準画像の補正処理を行ってもよい。
(その他の実施例)
【0098】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0099】
本明細書の開示は、以下の画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムを含む。
【0100】
(項目1)
第1の原稿画像と、前記第1の原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果である第1の読取画像と、の間の局所的な位置ずれを表す変形情報を取得する取得手段と、
第2の原稿画像に前記変形情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示す基準画像を生成する生成手段と、
前記第2の原稿画像に基づく印刷物の検査のために、前記第2の原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果を示す第2の読取画像と、前記基準画像と、の比較を行う検査手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【0101】
(項目2)
前記変形情報は、前記第1の原稿画像上の着目点にあるオブジェクトと、前記第1の読取画像上の対応する点にあるオブジェクトとが一致するように、前記第1の原稿画像上の前記着目点と前記第1の読取画像上の前記対応する点との対応付けを示すことを特徴とする、項目1に記載の画像処理装置。
【0102】
(項目3)
前記変形情報は、複数の領域の1つに含まれる前記第1の原稿画像上の点の座標と前記第1の読取画像上の対応する点の座標との関係を、前記領域ごとに設定されたパラメータセットを用いて表すことを特徴とする、項目1から2のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0103】
(項目4)
前記変形情報は、前記第1の原稿画像上の点の座標と前記第1の読取画像上の対応する点の座標との関係を、前記第1の原稿画像上の点の近傍にある点と前記第1の読取画像上の対応する点との対応付けに基づいて表すことを特徴とする、項目1から3のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0104】
(項目5)
前記検査手段は、前記第2の読取画像上のオブジェクトと前記基準画像上のオブジェクトとを位置合わせするように、少なくとも一方が変形された前記第2の読取画像と前記基準画像とを比較することを特徴とする、項目1から4のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0105】
(項目6)
前記第2の原稿画像と前記基準画像との少なくとも一方の変形は、画像全体に対する一様な変換により行われることを特徴とする、項目5に記載の画像処理装置。
【0106】
(項目7)
前記検査手段は、前記基準画像と前記第2の読取画像とを、局所的に位置合わせしてから比較することを特徴とする、項目1から6のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0107】
(項目8)
前記基準画像は、前記第2の原稿画像に前記変形情報に従う局所的な変形を付加した結果を示す原稿領域と、前記原稿領域を取り囲む余白領域とを有し、
前記原稿領域内の画像は、前記第2の原稿画像に前記変形情報に従う局所的な変形を付加し及び前記原稿領域の形状に合わせて変形して得られる画像であることを特徴とする、項目1から7のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0108】
(項目9)
前記原稿領域の形状は、前記第2の原稿画像に基づく印刷が行われる印刷媒体の形状に対応することを特徴とする、項目8に記載の画像処理装置。
【0109】
(項目10)
前記第1の原稿画像と前記第2の原稿画像とが同一の画像であることを特徴とする、項目1から9のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0110】
(項目11)
前記変形情報は、
印刷領域内における局所的な位置ずれを、前記印刷領域内における前記第1の原稿画像上の各点と、前記第1の読取画像上の対応する点と、の対応付けに基づいて表し、
印刷領域外における局所的な位置ずれを、前記印刷領域内における前記第1の原稿画像上の各点と、前記第1の読取画像上の対応する点と、の対応付けに基づいて表す
ことを特徴とする、項目1から10のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0111】
(項目12)
前記基準画像は、前記第2の原稿画像に対応する媒体サイズに応じたサイズを有することを特徴とする、項目1から11のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0112】
(項目13)
前記生成手段は、前記第1の原稿画像中の、前記第2の原稿画像に対応する媒体サイズと略一致するサイズを有する領域についての局所的な位置ずれに基づいて、前記基準画像を生成することを特徴とする、項目12に記載の画像処理装置。
【0113】
(項目14)
前記第1の原稿画像に対応する媒体サイズが前記第2の原稿画像に対応する媒体サイズとは異なることを特徴とする、項目12又は13に記載の画像処理装置。
【0114】
(項目15)
前記検査手段は、前記印刷物の検査において欠陥の検出頻度が高い領域を判定し、
前記生成手段は、前記欠陥の検出頻度が高い領域について前記基準画像を補正することを特徴とする、項目1から14のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0115】
(項目16)
前記取得手段は、前記欠陥の検出頻度が高い領域における局所的な位置ずれを示す補正情報を取得し、
前記生成手段は、前記補正情報に基づいて前記基準画像を補正することを特徴とする、項目15に記載の画像処理装置。
【0116】
(項目17)
前記取得手段は、前記第2の原稿画像と前記第2の読取画像との間の前記欠陥の検出頻度が高い領域における局所的な位置ずれを示す補正情報を取得し、
前記生成手段は、前記第2の原稿画像に対して、前記変形情報及び前記補正情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示す基準画像を生成する
ことを特徴とする、項目15又は16に記載の画像処理装置。
【0117】
(項目18)
前記検査手段は、前記印刷物の検査において欠陥の検出頻度が高い領域を判定し、
前記画像処理装置は、前記欠陥の検出頻度が高い領域の存在をユーザに通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする、項目1から17のいずれか1項目に記載の画像処理装置。
【0118】
(項目19)
画像処理装置が行う画像処理方法であって、
第1の原稿画像と、前記第1の原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果である第1の読取画像と、の間の局所的な位置ずれを各位置のそれぞれについて表す変形情報を取得する工程と、
第2の原稿画像に前記変形情報に従う局所的な位置ずれを付加した結果を示す基準画像を生成する工程と、
前記第2の原稿画像に基づく印刷物の読み取り結果を示す第2の読取画像と、前記基準画像と、の比較に基づいて、前記第2の原稿画像に基づく印刷物の検査を行う工程と、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【0119】
(項目20)
コンピュータを、項目1から18のいずれか1項目に記載の画像処理装置として機能させるためのプログラム。
【0120】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0121】
100:画像処理装置、105:画像読取装置、190:印刷装置、201:画像取得部、202:変形情報取得部、203:基準画像生成部、204:検査処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14