(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】撮像装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03B 9/10 20210101AFI20240726BHJP
G03B 9/08 20210101ALI20240726BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240726BHJP
H04N 23/65 20230101ALI20240726BHJP
【FI】
G03B9/10 D
G03B9/08 B
G03B17/02
H04N23/65
(21)【出願番号】P 2020151512
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩上 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲井 健人
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-149525(JP,A)
【文献】特開2020-003566(JP,A)
【文献】特開2014-236252(JP,A)
【文献】国際公開第2020/129304(WO,A1)
【文献】特開2010-199682(JP,A)
【文献】特開2004-120887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/10
H04N 23/65
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
給電手段と、
給電装置が接続される接続手段と、
前記接続手段に接続された前記給電装置に出力電圧を指示する指示手段と、
前記モータに前記給電手段からの電力を供給するか前記給電装置からの電力を供給するかを切り替える切り替え手段と、
前記モータに前記給電装置からの電力を供給する場合は、前記給電装置からの出力電圧が前記給電装置から前記モータに印加されるようにする制御手段と
、を有
し、
前記給電装置から前記モータに印加する電圧の変更が必要な場合、前記指示手段は、前記電圧の変更が必要なタイミングよりも、前記給電装置に出力電圧を指示してから前記給電装置の出力電圧が前記指示した値に変更されるのに要する変更時間だけ前に、前記給電装置に前記変更される出力電圧を指示することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記指示手段は、前記モータの動作モードに応じた電圧を前記出力電圧として前記給電装置に指示することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記動作モードは、前記モータを低速で駆動させる低速駆動モード、前記モータを前記低速駆動モードよりも高速で駆動させる高速駆動モード、および前記モータへの通電を遮断する前に前記モータを低速で動かすためのプリブレーキモードを含むことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記給電装置が前記接続手段に接続されていない場合は、前記モータに前記給電手段からの電力が供給されるように、前記切り替え手段を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記給電手段は前記撮像装置の内部に配置された電池からの電力を供給し、
前記モータに前記給電手段からの電力が供給される場合、前記制御手段は、PWM制御により前記モータに印加される電圧を変更することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記指示手段は、前記接続手段を介して前記給電装置と通信を行い、前記給電装置に出力電圧の変更を要求することにより前記給電装置に出力電圧を指示し、
前記変更時間は、前記指示手段が前記給電装置に出力電圧の変更を要求するための通信にかかる時間と、前記給電装置が前記要求を受信してから出力電圧を変更するのにかかる時間とを含むことを特徴とする請求項
1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記変更時間が閾値以下の場合には、前記モータに前記給電装置からの電力を供給し、前記変更時間が前記閾値より大きい場合には、前記モータに前記給電手段からの電力を供給するように、前記切り替え手段を制御することを特徴とする請求項
1または
6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記モータは、シャッタを駆動するモータであることを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記指示手段は、静止画の撮影を行う撮影シーケンスにおいて、前記モータに第1の電圧を印可して駆動する場合に前記第1の電圧を前記給電装置に指示し、前記モータに印可する電圧を前記第1の電圧から第2の電圧に変更して駆動する場合に、前記第2の電圧を前記給電装置に指示することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記給電装置はUSB Power Delivery規格のプログラマブルパワーサプライに準拠した給電装置であり、
前記接続手段は、USBケーブルを介して前記給電装置と接続されるか、または、USBケーブルを含む前記給電装置と接続されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
モータと、給電手段と、給電装置が接続される接続手段と、を備える撮像装置の制御方法であって
、
前記接続手段に接続された前記給電装置に出力電圧を指示する指示工程と、
前記モータに前記給電手段からの電力を供給するか前記給電装置からの電力を供給するかを切り替える切り替え工程と、
前記モータに前記給電装置からの電力を供給する場合は、前記給電装置からの出力電圧が前記給電装置から前記モータに印加されるようにする制御工程と
、を有
し、
前記給電装置から前記モータに印加する電圧の変更が必要な場合、前記指示工程では、前記電圧の変更が必要なタイミングよりも、前記給電装置に出力電圧を指示してから前記給電装置の出力電圧が前記指示した値に変更されるのに要する変更時間だけ前に、前記給電装置に前記変更される出力電圧を指示することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電装置からの電力を用いることが可能な撮像装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置においては、例えば、シャッタ等のメカコンポーネントが搭載されている。メカコンポーネントは、例えば、DCモータで電力を動力に変換し、その動力によって駆動される。
【0003】
DCモータの制御方式において、モータドライブ回路を用いたPWM制御がよく知られている。撮像装置においてもモータドライブ回路を用いたPWM制御でDCモータを駆動することにより、連写撮影などが行われる。
【0004】
モータドライブ回路を用いたPWM制御でDCモータを駆動させる際には、電磁ノイズの発生が課題となる。特に撮像装置においては、電磁ノイズが露光および転送中の撮像素子に悪影響をもたらし、撮像画像の画質を劣化させる。
【0005】
この問題の一つの解決策として、撮像素子における露光および転送時間とDCモータの駆動時間の重複を避けるという手法が知られている。しかし、この手法を用いると、画質の劣化を避けることは可能となるが、少なくとも、撮像素子における露光および転送時間とDCモータの駆動時間とを単純に加えた時間がかかるため、静止画撮影シーケンスの時間が長くなるという問題が生じる。つまり、デジタルカメラなどの撮像装置においては、モータドライブ回路を用いたPWM制御は、高画質でかつ高速な連写を妨げる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、外部電源の電圧をシステム内部の状態に応じて変化させる方法が記載されている。しかしながら、特許文献1は、メカコンポーネントを有するシステムを想定したものではない。そのため、特許文献1には、メカコンポーネントを有するシステムの電圧制御方法は記載されていない。
【0008】
そこで、本発明は、外部電源(例えば、給電装置)から供給される電力を用いて高速な連写を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮像装置は、モータと、給電手段と、給電装置が接続される接続手段と、前記接続手段に接続された前記給電装置に出力電圧を指示する指示手段と、前記モータに前記給電手段からの電力を供給するか前記給電装置からの電力を供給するかを切り替える切り替え手段と、前記モータに前記給電装置からの電力を供給する場合は、前記給電装置からの出力電圧が前記給電装置から前記モータに印加されるようにする制御手段と、を有し、前記給電装置から前記モータに印加する電圧の変更が必要な場合、前記指示手段は、前記電圧の変更が必要なタイミングよりも、前記給電装置に出力電圧を指示してから前記給電装置の出力電圧が前記指示した値に変更されるのに要する変更時間だけ前に、前記給電装置に前記変更される出力電圧を指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部電源(例えば、給電装置)から供給される電力を用いて高速な連写を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】撮像装置100の構成要素と給電装置200の構成要素とを説明するためのブロック図である。
【
図2】撮像装置100の構成要素と給電装置200の構成要素とを説明するためのブロック図である。
【
図3】静止画撮影シーケンスの例を説明するためのタイミングチャートである。
【
図4】シャッタ駆動部103およびその周辺部分の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】シャッタチャージに関するタイミングチャートである。
【
図6】給電装置200が撮像装置100に接続されている場合に行われる撮影設定変更処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[実施形態1]
図1および
図2は、実施形態1における撮像装置100の構成要素と給電装置200の構成要素とを説明するためのブロック図である。
図1は、給電装置200が撮像装置100に接続された状態を示す図である。
図2は、給電装置200が撮像装置100に接続されていない状態を示す図である。
【0014】
図1および
図2において、レンズユニット101は、被写体の光学像を撮像素子106の受光面に結像させるためレンズユニットである。
【0015】
シャッタ102は、露光時間に応じて光束を透過させる。シャッタ駆動部103は、例えば、DCモータ104およびモータドライブ回路105等を有し、シャッタ102を駆動するように構成されている。
【0016】
撮像素子106は、CMOSセンサ等からなり、被写体の光学像から画像データを生成する。画像処理部107は、所定の画像処理を行うことにより、撮像素子106で生成された画像データを画質などを調整する。制御部108は、撮像装置100の全体を制御する。
【0017】
シャッタボタン109は、ユーザが扱うことのできる2段式スイッチ(半押し、全押し)を有し、制御部108に対して撮影開始(シャッタ幕走行開始)信号等を入力することができる。
【0018】
電源部110は、制御部108によって制御され、撮像装置100の各構成要素へ電力を供給する。電池111は、撮像装置100の内部に配置された、例えば、リチウムイオン電池などの再充電可能な電池であり、電源部110に電力を供給する。
【0019】
給電装置200は、撮像装置100に接続可能な外部電源であり、出力電圧が調整可能な外部電源である。例えば、USB(Universal Serial Bus) PD(Power Delivery)規格のPPS(プログラマブル パワー サプライ)に準拠したモバイルバッテリおよびそれに準じるものである。
【0020】
制御部201は、給電装置200の全体を制御する。制御部201は、給電装置200の出力電圧を調整することができ(出力電圧を変更可能)、制御部108との通信を制御することができる。
【0021】
電源部202は、制御部201によって制御され、任意の電圧を出力することができる。電池203は、給電装置200の内部に配置された、例えば、リチウムイオン電池などの再充電可能な電池であり、電源部202に電力を供給する。
【0022】
接続部204は、給電装置200に設けられた、例えばUSBポートなどから成り、外部の機器と接続して通信および電力の受け渡しを行う。接続部205は、撮像装置100に設けられた、例えばUSBポートなどから成り、外部の機器と接続して通信および電力の受け渡しを行う。
【0023】
ケーブル206は、例えば、USBケーブルである。ここで示すケーブル206は、接続部205と接続部204を接続する役目を担う。例えば、接続部205と接続部204が直接接続可能な場合は必ずしも必要ではない。給電装置200は、接続部204を持たずケーブル206が直接接続されている場合もある。この場合は、ケーブル206を含む給電装置200が直接接続部205と接続される。
【0024】
セレクタ回路211は、撮像装置100の内部に配置され、制御部108の制御により、シャッタ駆動部103に入力される電源を選択する。
【0025】
次に、
図1を参照して、撮像装置100で行われる撮影準備動作および撮影動作を説明する。
【0026】
シャッタボタン109の全押し動作により、撮影準備動作を開始する。シャッタボタン109の全押し動作がなされた時点で、シャッタ幕が走行した後の状態にある場合、再度シャッタ幕を走行させるために、シャッタ102を走行準備位置に戻す動作(シャッタチャージ)が必要となる。制御部108は、シャッタ駆動部103内のモータドライブ回路105を介してDCモータ104へ通電を行い、DCモータ104の動力によってシャッタチャージを行う。撮影準備動作が完了次第、撮影動作を行う。
【0027】
制御部108は、シャッタ駆動部103を介して、シャッタ102を制御し、所定の露光時間だけ撮像素子106を露光させる。制御部108からの読み出し開始信号に合わせて、撮像素子106では、画素ごとに蓄積されたアナログ電気信号を増幅してデジタル信号に変換する動作(読み出し)を行う。その後、撮像素子106から読み出された画像データが、画像処理部107へ転送される。画像処理部107は、制御部108によって制御され、入力された画像データを所望の静止画あるいは動画フォーマットに変換する。制御部108がシャッタボタン109の全押し動作が継続されていると判定した場合、再度シャッタチャージを行う。
【0028】
DCモータ104には、電池111の一定電圧が直接印加されるか、電池111からの電圧を電源部110で昇降圧した一定電圧が印加される。シャッタチャージの際に、制御部108は、モータドライブ回路105を用いたPWM制御によってDCモータ104に印加される実効電圧を動的に変更し、シャッタ102を制御する。モータドライブ回路105を用いたPWM制御でDCモータ104を駆動させる際には、電磁ノイズの発生が課題となる。電磁ノイズが読み出し中の撮像素子106に悪影響を与え、撮像画像の画質を劣化させる恐れがある。そのため、シャッタチャージを行う時間は、撮像素子106の読み出し時間と重複しないようにすることが推奨される。
【0029】
図1に示すように、給電装置200が撮像装置100に接続された場合、制御部108は、給電装置200からの電力がシャッタ駆動部103に供給されるように、セレクタ回路211を制御する。このとき、シャッタ駆動部103内のDCモータ104には給電装置200の出力電圧が直接印加される。制御部108と制御部201の通信により、制御部108が所望の電圧を給電装置200に出力するように要求する(指示する)ことができる。制御部108からの要求を受けた(受信した)制御部201は、電源部202が要求電圧を出力するように制御する。これにより、DCモータ104に制御部108が要求する所望の電圧を印加することが可能となる。例えば、シャッタチャージの際には、制御部108はPWM制御を行わずに、給電装置200の出力電圧を変更して動的にDCモータ104への印加電圧を変更する。
【0030】
図2に示すように、撮像装置100に給電装置200が接続されていない状態においては、制御部108は、電池111からの電力がシャッタ駆動部103に供給されるように、セレクタ回路211を制御する。このときシャッタ駆動部103内のDCモータ104には、電池111の一定電圧または電池111からの電圧を電源部110で昇降圧した一定電圧が印加される。このため、例えば、シャッタチャージの際にシャッタ102を制御するために、モータドライブ回路105を用いたPWM制御によってDCモータ104に印加する実効電圧を動的に変更する。
【0031】
次に、
図3(a)を参照して、給電装置200が撮像装置100に接続された状態における静止画撮影シーケンスの一例を説明する。
【0032】
制御部108がシャッタボタン109の全押し動作があったと判定すると、撮影準備動作が開始される。例えば、1コマ目のシャッタ幕を走行させる準備としてシャッタチャージが行われる。シャッタチャージが完了すると所定の露光時間だけ撮像素子106を露光するようシャッタ幕が走行される。そしてシャッタ幕の走行終了に伴い、撮像素子106では読み出しが行われる。読み出し完了後には、画像処理部107によって取得画像の処理動作が行われる。
【0033】
図3(a)の静止画撮影シーケンスにおいて、DCモータには給電装置200から出力された所望の電圧が直接印加される。これは、制御部108が制御部201に所望の電圧を要求し、給電装置200が出力電圧を要求電圧まで昇降圧させることで達成される。つまり制御部108はPWM制御と同じように任意のタイミングで任意の時間だけシャッタチャージ中のDCモータ104への印加電圧を変更できる。
【0034】
このように、実施形態1では、PWM制御なしでDCモータ104への印加電圧を変更できるので、撮像素子106の読み出し時間とシャッタチャージの時間を重複させても画質劣化の懸念はない。このことから、2コマ目のシャッタ幕を走行させる準備としてのシャッタチャージは、たとえ撮像素子106からの画像信号の読み出し中であっても、シャッタ幕の走行後すぐに行うことができる。
【0035】
シャッタチャージが完了したこと、画像処理が完了したこと、シャッタボタン109の全押し動作が継続されていることを制御部108が判定すると、2コマ目のシャッタ幕走行が行われる。以降は1コマ目と同じ処理が繰り返される。
【0036】
次に、
図3(b)を参照して、給電装置200が撮像装置100に接続されていない状態における静止画撮影シーケンスの一例を説明する。
図3(b)において、1コマ目のシャッタ幕走行までは
図3(a)の静止画撮影シーケンスと同じである。
【0037】
シャッタ幕の走行終了に伴い、撮像素子106では1コマ目の画像信号の読み出しが行われる。ここで、
図3(b)の静止画撮影シーケンスにおいては、DCモータ104はPWM制御により駆動される。PWM制御は電磁ノイズを発生させ、読み出し中の撮像素子106の信号に悪影響を与える。そのため、2コマ目のシャッタ幕を走行させる準備としてのシャッタチャージは、読み出し時間と重複しないよう1コマ目の画像信号の読み出し完了後に行われる。読み出し完了後には画像処理部107によって取得画像の処理動作が行われる。
【0038】
シャッタチャージが完了したこと、画像処理が完了したこと、シャッタボタン109の全押し動作が継続されていることを制御部108が判定すると、2コマ目のシャッタ幕走行が行われる。以降は1コマ目と同じ処理が繰り返される。
【0039】
図3(a)中の時間301は、給電装置200が撮像装置100に接続された構成における1コマ目のシャッタ幕走行の開始から2マ目のシャッタ幕走行が開始されるまでの時間を示している。
図3(b)中の時間302は、給電装置200が撮像装置100に接続されていない構成における1コマ目のシャッタ幕走行の開始から2マ目のシャッタ幕走行が開始されるまでの時間を示している。
【0040】
時間301および時間302は、短ければ短いほど、単位時間あたりの撮影枚数を増やすことができる。給電装置200が撮像装置100に接続されていない構成においては、DCモータ104をPWM制御しなければならないことが原因となって、時間302は長くなる。これに対して、給電装置200が撮像装置100に接続された状態では、PWM制御をせずにDCモータ104の印加電圧を変更することができる。そのため、シャッタチャージ時間と読み出し時間を重複させることが可能となり、時間301を時間302よりも短くすることができる。
【0041】
つまり、出力電圧を調整可能な給電装置200の出力を、シャッタ102を駆動するDCモータ104に直接印加することにより、高画質を維持しつつ高速連写を実現することが可能となる。
【0042】
次に、
図4を参照して、シャッタ駆動部103およびその周辺部分の構成例を説明する。
【0043】
スイッチ401,402,403,404は、モータドライブ回路105内に配置されたスイッチであり、例えば、トランジスタなどの半導体素子で構成される。制御部108の制御信号により、スイッチ401~404のそれぞれが制御される。スイッチ402およびスイッチ403が同時にONされることにより、DCモータ104は正転動作を行う。スイッチ401およびスイッチ404が同時にONされることにより、DCモータ104は逆転動作を行う。正転動作中にスイッチ402、スイッチ403の片方または両方をOFFにすることにより、DCモータ104の通電を遮断できる。このスイッチの切り替えを任意の周波数で繰り返すことにより、PWM制御がなされる。同様に逆転動作中のPWM制御は、スイッチ401、スイッチ404の切り替えを任意の周波数で繰り返すことにより行われる。
【0044】
次に、
図4を参照して、DCモータ104の制御を説明する。
【0045】
給電装置200が撮像装置100に接続されていない場合、制御部108は、電池111の出力が電源部110を介してシャッタ駆動部103に入力されるように、セレクタ回路211を制御する。そのため、DCモータ104にはシャッタ駆動部103に入力された一定電圧が印加される。制御部108は、モータドライブ回路105内のスイッチ401~404を所望の周波数で制御するPWM制御を行う。DCモータ104に一定電圧を通電させる時間と通電させない時間の比率を変えることにより、DCモータ104に印加される実効電圧を変更することができる。
【0046】
給電装置200が撮像装置100に接続されている場合、制御部108は、給電装置200の出力がシャッタ駆動部103に入力されるように、セレクタ回路211を制御する。DCモータ104を駆動する際、制御部108はスイッチ402およびスイッチ403を常にONとする。これにより、DCモータ104にはシャッタ駆動部103に入力された給電装置200の出力電圧が常に印加されるようになり、DCモータ104が駆動される。ここで、DCモータ104に印加される給電装置200の出力電圧は、制御部108が制御部201に所望の電圧を要求することにより変更することができる。
【0047】
以上の制御により、給電装置200の接続時には、PWM制御を用いることなく、DCモータ104の印加電圧を動的に変化させることが可能となる。
【0048】
次に、
図5を参照して、シャッタチャージにおける給電装置200の出力電圧変更と、制御部108から制御部201に電圧変更を要求するタイミングとを説明する。さらに、
図6を参照して、給電装置200が撮像装置100に接続されている場合に行われる撮影設定変更処理を説明する。
【0049】
図5は、シャッタチャージとその前後の時間における、DCモータへの印加電圧、給電装置200の出力電圧および制御部108から制御部201への電圧変更の要求タイミングの一例を示す図である。
【0050】
制御部108が制御部201に所望の電圧まで出力電圧を変更するよう要求して、実際に給電装置200の出力電圧の変更が完了するまでには一定時間(変更時間)Tを要する。例えば、制御部108と制御部201が通信を行い、制御部201が電源部202を制御して電圧の昇降圧を始めるまでの通信時間Tcと、給電装置200が昇降圧を始めてから要求電圧に変更完了するまでの電圧遷移時間Tsを要する。つまり、T=Tc+Tsとなる。そこで、DCモータ104に所望の電圧を印加して制御するタイミングよりも一定時間Tだけ前のタイミングで、制御部108が制御部201に所望の電圧まで出力電圧を変更するよう要求する。これにより、本来DCモータ104に所望の電圧を印加させたい(所望の動作モードで動作させたい)タイミングでDCモータ104の印加電圧を変更することが可能となる。
【0051】
例えば、DCモータ104の初動で負荷が低く、DCモータ104に流れる電流を抑制するために比較的低電圧で駆動させる場合(低速駆動モード)の電圧をV1とする。DCモータ104に高負荷がかかり、比較的高電圧で駆動させる場合(高速駆動モード)の電圧をV2とする。DCモータ104に電圧を印加するのを止める(ブレーキ)前に、DCモータの動力を弱める場合(プリブレーキモード)の電圧をV3とする。例えば、給電装置200の出力電圧がV3のとき、制御部108が制御部201に電圧V1を要求して給電装置200の出力電圧が実際にV1に変更完了するまでの時間をT1とする。給電装置200の出力電圧がV1のとき、制御部108が制御部201に電圧V2を要求して実際に給電装置200の出力電圧がV2に変更完了するまでの時間をT2とする。さらに、給電装置200の出力電圧がV2のとき、制御部108が制御部201に電圧V3を要求して実際に給電装置200の出力電圧がV3に変更完了するまでの時間をT3とする。
【0052】
これらの電圧と時間とを用いて、シャッタチャージにおけるDCモータ104への印加電圧の変更制御を説明する。
【0053】
シャッタチャージの初動ではDCモータ104を低速駆動させるため、DCモータ104に電圧V1を印加したい時刻のT1前のタイミングで制御部108から制御部201へ電圧変更要求を行う。次に、DCモータ104を高速駆動させるため、DCモータ104に電圧V2を印加したい時刻のT2前のタイミングで制御部108から制御部201へ電圧変更要求を行う。次に、プリブレーキを行うため、DCモータ104に電圧V3を印加したい時刻のT3前のタイミングで制御部108から制御部201へ電圧変更要求を行う。
【0054】
DCモータ104への印加電圧の変更が必要なタイミングで制御部108が電圧変更の要求を出しても、DCモータ104にその電圧が印加されるまでに一定時間Tの遅れが生じてしまう。これに対して、実施形態1では、
図5に示すように、制御部108が電圧変更の要求をしてから給電装置200の出力電圧変更が完了するまでにかかる一定時間Tを見込んで、予め電圧変更の要求をしておく。これによりタイミングのずれなくDCモータ104への印加電圧を変更することが可能となる。
【0055】
図6は、給電装置200の接続に関連して、撮像装置100の設定を変更する制御を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS601において、制御部108は、給電装置200が撮像装置100に接続されているか否かを判定する。給電装置200が撮像装置100に接続されていると判定された場合は、ステップS602に進む。給電装置200が撮像装置100に接続されていないと判定された場合は、ステップS601を繰り返す。
【0057】
ステップS602において、制御部108は、制御部108が制御部201に電圧変更を要求してから給電装置200の出力電圧変更が完了するまでにかかる一定時間Tを計測する。例えば、制御部108が制御部201に電圧変更を要求した時刻をa、給電装置200の出力電圧が要求電圧に到達した時刻をbとして、T=b-aを計測することにより、一定時間Tは導かれる。なお、時間Tは、制御部108内の記憶部などに記憶しておく。レベルの異なる電圧変更に要する時間T1,T2,T3は、それぞれ異なる時間であることが考えられるため、これらをそれぞれ計測してもよい。なお、通信時間Tcは、要求する電圧レベルに関係なく一定で、電圧遷移時間Tsのみが電圧レベルに依存することが考えられる。そこで、通信時間Tcと電圧遷移時間Tsを別々に考え、Tsのみを要求する電圧レベルごとに計測するようにしてもよい。その後ステップS603に進む。
【0058】
時間Tは、撮像装置100の能力だけでなく、給電装置200の能力にも依存する。このため、撮像装置100に接続された給電装置200によっては時間Tが長くなったり、短くなったりする。時間Tが長い場合は、電圧変更に時間がかかりすぎるために、シャッタチャージの中で所望の回数の電圧変更を行うことが不可能となる。そのため、ステップS603では、制御部108は、ステップS602で計測した時間Tが予め設定した閾値Tth以下(閾値以下)か否かを判定する。時間Tが閾値Tth以下と判定された場合は、シャッタチャージの中で所望の回数の電圧変更が可能とみなされ、ステップS604に進む。時間Tが閾値Tthよりも長いと判定された場合は、シャッタチャージの中で所望の回数の電圧変更が不可能とみなされステップS605に進む。
【0059】
シャッタチャージの中で所望の回数の電圧変更が可能である場合、PWM制御なしに所望のタイミングで所望の電圧をDCモータ104に直接印加することができる。つまり給電装置200の接続時に、撮像装置100は、高画質を維持しつつ高速に連写することが可能となる。
【0060】
ステップS604では、制御部108は、給電装置200が撮像装置100に接続された効果、例えば、高画質を維持しつつ高速に連写することが可能となった情報(“高速連写モード”に対応していること)を、表示部等のGUI等を通じてユーザに通知する。その後、ステップS606に進む。
【0061】
シャッタチャージの中で所望の回数の電圧変更が不可能である場合、PWM制御なしに所望のタイミングで所望の電圧をDCモータ104に直接印加することはできない。その場合、給電装置200が撮像装置100に接続されていても、DCモータ104はPWM制御で駆動されることとなるため、読み出し時間とシャッタチャージ時間の重複は画質への影響を考えると許容されない。つまり、給電装置200の接続時でも高画質を維持しつつ高速に連写することは不可能となる。
【0062】
ステップS605では、制御部108は、給電装置200が撮像装置100に接続されたものの、例えば、高画質を維持しつつ高速に連写することが不可能である情報(“高速連写モード”に非対応であること)を、GUI等を通じてユーザ通知する。その後、ステップS607に進む。
【0063】
ステップS606では、制御部108は、撮像装置100の設定を“高速連写モード”に変更する。例えば、シャッタチャージ中のDCモータ104の印加電圧の変更は給電装置200の出力電圧の変更によってなされるように設定する。加えて、静止画撮影時は、シャッタチャージ時間と読み出し時間が重なることを許容する設定とする。これにより単位時間当たりの撮影枚数を増やすことができる。
【0064】
ステップS607では、制御部108は、給電装置200が撮像装置100に接続されていない状態であるか否かを判定する。給電装置200が撮像装置100に接続されていない状態であると判定された場合は、ステップS608に進む。給電装置200が撮像装置100に接続されていない状態でないと判定された場合は、ステップS607を繰り返す。
【0065】
ステップS608では、制御部108は、給電装置200の接続前の撮像装置100の撮影設定に変更する。ステップS606で“高速連写モード”に設定を変更していた場合は、これを給電装置200の接続前の撮影設定に戻す。例えば、シャッタチャージ中のDCモータ104の印加電圧の変更はPWM制御によって行う設定とする。加えて、静止画撮影時は、シャッタチャージ時間と読み出し時間が重なることを避ける設定とする。
【0066】
なお、
図6では、給電装置200が撮像装置100に接続されたタイミングで時間Tを計測し、その時間によって撮像装置100の設定変更を行う制御を説明した。
図6のうち、ステップS602からS606までの制御は、給電装置200が撮像装置100に接続されたタイミング以外でも行われる。例えば、シャッタボタンが半押しされたタイミングでステップS602からS606の制御を行ってもよい。時間Tは、例えば、電池203の残容量の減少を含む給電装置200の状態変化や、ケーブル206の接続状態の変化などにより、時間の経過とともに変化する可能性がある。そのため、実際にシャッタチャージを行う直前で時間Tの計測を行い、撮影設定の変更に反映させることが望ましい。その他、時間Tを計測し、その時間によって撮像装置100の設定変更を行う制御は任意のタイミングで行われてもよい。
【0067】
以上説明したように、実施形態1における撮像装置100は、実際に時間Tを計測することにより、給電装置200が撮影性能の向上に寄与できるか否かを判定する。そして、給電装置200が撮影性能の向上に寄与できる場合は、高画質で高速に連写可能となる。 加えて、ユーザは撮像装置100からの通知により、撮影性能が向上したことを認識することができる。給電装置200がたとえ撮影性能の向上に寄与できないと判定された場合でも、ユーザは撮像装置100からの通知により、撮影性能に変化がないことを認識できる。
【0068】
[実施形態2]
実施形態1で説明した様々な機能、処理または方法は、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)またはマイクロプロセッサがプログラムを実行することによって実現することもできる。以下、実施形態2では、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)またはマイクロプロセッサを「コンピュータX」と呼ぶ。実施形態2では、コンピュータXを制御するためのプログラムであって、実施形態1で説明した様々な機能、処理または方法を実現するためのプログラムを「プログラムY」と呼ぶ。
【0069】
実施形態1で説明した様々な機能、処理または方法は、コンピュータXがプログラムYを実行することによって実現される。この場合において、プログラムYは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を介してコンピュータXに供給される。実施形態2におけるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、ハードディスク装置、磁気記憶装置、光記憶装置、光磁気記憶装置、メモリカード、揮発性メモリ、不揮発性メモリなどの少なくとも一つを含む。実施形態2におけるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、non-transitoryな記憶媒体である。
【符号の説明】
【0070】
100:撮像装置、102:シャッタ、106:撮像素子、108:制御部、110:電源部、111:電池、200:給電装置、201:制御部、202:電源部、203:電池