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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ろう付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/14 20060101AFI20240729BHJP
   B23K 1/19 20060101ALN20240729BHJP
   C22C 19/05 20060101ALN20240729BHJP
   C22C 19/07 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
B23K1/14 A
B23K1/19 J
C22C19/05 C
C22C19/07 H
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018002283
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2018167324
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-01-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】15/410,460
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・レシル・ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エー・クック
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジェームス・ドリーティ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・ジェームス・ウィムス
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】大山 健
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-86182(JP,A)
【文献】特表2008-503353(JP,A)
【文献】特開平8-112668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/14
B23K 1/19
C22C 19/05
C22C 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超合金組成物ギャップ(10)を所定の幾何学形状に機械加工するステップであって、前記ギャップ(10)が、第1の部分(12)と第2の部分(14)との間に形成され、前記第1の部分(12)と前記第2の部分(14)が、前記超合金組成物で形成され、前記ギャップ(10)が、単一の構成要素内に形成される、前記ステップと、
非発泡金属マトリックス(24)を前記ギャップ(10)の幾何学形状に適用可能な幾何学形状および輪郭となるように切断するステップと、
切断された前記非発泡金属マトリックス(24)を機械加工されたギャップ(10)に配置するステップと、
前記超合金組成物とろう付け合金組成物とを真空炉内に配置するステップと、
前記ろう付け合金組成物をろう付け温度に加熱して溶融ろう付け合金材料(16)を形成する誘導加熱を行うステップと、
前記溶融ろう付け合金材料(16)が前記ギャップ(10)を充填するために毛細管現象により前記ギャップ(10)に流入して前記非発泡金属マトリックス(24)を通り、冷却して固体ろう材(18)を前記ギャップ(10)に形成するように前記溶融ろう付け合金材料(16)を前記ギャップ(10)に適用するステップとを含む、ろう付け方法。
【請求項2】
前記ギャップ(10)が、タービン構成要素の高温ガス経路表面に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非発泡金属マトリックス(24)が、織り合わされた金属繊維の繊維マトリックスであり、
前記非発泡金属マトリックス(24)が、前記ギャップ(10)に流入する前記溶融ろう付け合金材料(16)のための毛細管フィールドを提供する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記非発泡金属マトリックス(24)が、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、および鉄基超合金からなる群から選択される材料を含む、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記非発泡金属マトリックス(24)が、約15μm~約100μm(約0.6ミル~約3.9ミル)の範囲のメッシュサイズを有する、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ギャップ(10)が、前記ギャップ(10)に前記非発泡金属マトリックス(24)が存在しないと前記溶融ろう付け合金材料(16)が前記ギャップ(10)全体に毛細管現象によって流れないようなギャップサイズを有する、請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、ろう付けマトリックス、ろう付け方法、およびろう付けされた物品に関する。より具体的には、本実施形態は、ギャップのろう付け材料の毛細管流を促進する材料および方法、ならびにこのような材料および方法によって製造されたろう付けされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付けは、金属品の亀裂または他の特徴のような金属品の空隙空間、または2つ以上の金属品の間の空隙空間を充填するプロセスであり、典型的には2つの金属品を共に接合する。フィラーろう付け金属材料が加熱されて溶融し、2つの金属品の間の接合部または金属品内の亀裂またはギャップに流入する。フィラーろう付け金属材料は、ろう付けプロセス中に金属品が溶融しないように金属品より低い融点を有するが、場合によっては合金元素がろう付け材料に加えられて故意に基材の表面の融点を低下させることで、基材の薄いフィルムがろう付けプロセスの間に溶融することが可能になる。フィラーろう付け金属材料は、理想的には毛細管現象により接合部、亀裂、またはギャップに流入する。フィラー金属は、適切な雰囲気、通常はフラックス中でその溶融(液相線)温度よりわずかに高い温度まで加熱され、溶融して流れ、次いで冷却して亀裂またはギャップを充填するか、または2つの金属品を共に接合する。ろう付けは、同じまたは異なる金属をかなりの強度で接合することができる。
【0003】
ろう付けは、空隙空間の寸法が小さい場合に良好に機能する。空隙空間の少なくとも一部において毛細管現象によってもはやフィラーろう付け材料が流れない程度に空隙空間が十分に大きい場合、最適ではないろう付けが発生する場合がある。このようなろう付けされた接合部は、ろう付けの強度を低下させる凝固したろう付け材料の1つまたは複数の部分に1つまたは複数の望ましくない空隙または共晶相を含み得る。
【0004】
ろう付けが望ましいが、空隙空間の寸法が毛細管現象のみにより流れるには大きすぎる条件に対処するために、ワイドギャップろう付け技術が開発されている。このようなワイドギャップろう付け技術には、特別なワイドギャップろう付け合金組成物の使用、およびろう付け前に空隙空間の寸法を縮小するためのフィラー粉末、メッシュ粉末またはシムのギャップへの挿入が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9227274号明細書
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、ろう付け方法は、非発泡マトリックスをギャップに配置することと、溶融ろう付け材料が前記ギャップを充填するために毛細管現象により前記ギャップに流入して前記非発泡マトリックスを通り、冷却して固体ろう材を前記ギャップに形成するように前記溶融ろう付け材料を前記ギャップに適用することとを含む。
【0007】
別の実施形態では、ろう付けされた物品は、ギャップを画定する少なくとも1つの構成要素と、前記ギャップの非発泡マトリックスと、前記非発泡マトリックスに介在する固体ろう材とを含む。前記非発泡マトリックスおよび前記固体ろう材は、前記ギャップを充填する。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の原理を例示により示した添付の図面を伴って、以下に行うより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ろう付けプロセスの概略断面図である。
図2図1のろう付けプロセスからのろう付けされた物品の概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態におけるギャップに挿入されているろう付けマトリックスの概略部分断面図である。
図4】本開示の一実施形態におけるろう付けマトリックスを含むギャップに適用されている溶融ろう付け材料の概略部分断面図である。
図5】本開示の一実施形態におけるろう付けされた物品の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
可能な限り、同一の参照符号が同一の部品を表すために図面の全体にわたって使用される。
【0011】
ギャップのろう付け材料の毛細管流を促進する材料および方法、ならびにこのような材料および方法によって製造されたろう付けされた物品が提供される。
【0012】
本開示の実施形態は、たとえば、本明細書に開示される特徴の1つまたは複数を含まない概念と比較して、空隙を含まないワイドギャップろう付けを提供し、共晶相を含まないワイドギャップろう付けを提供し、完全な毛細管フィールドを欠くギャップに完全な毛細管フィールドを提供し、ギャップに高品質のろう付けを提供し、溶接不可能な材料の修復中に形成された最も複雑なろう付けされた接合部に固有の再加工を低減または排除し、またはそれらの組合せを含む。
【0013】
「ギャップ」は、本明細書で使用する場合、たとえば物品内の亀裂もしくは開口、または2つ以上の物品の間の接合部などの空隙体積を指し、対向する表面の間のギャップ距離は、ギャップに他の材料が存在しない場合には、溶融ろう付け材料のギャップへの適用時に毛細管現象のみによりギャップが溶融ろう付け材料で充填されず、溶融ろう付け材料のギャップへの適用時にギャップに空隙または凝固したろう付け材料を有さずにギャップが溶融ろう付け材料で充填されず、または溶融ろう付け材料のギャップへの適用時に凝固したろう付け材料に共晶相を有さずにギャップが溶融ろう付け材料で充填されないように十分に大きい。
【0014】
「ろう付けマトリックス」は、本明細書で使用する場合、溶融ろう付け材料が毛細管現象によりマトリックス材料全体に流れるように毛細管フィールドを提供する任意のマトリックス材料を指す。
【0015】
いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックスは、ガスタービン発電構成要素に使用される。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックスは、ステンレス鋼合金、ニッケル基超合金および/またはコバルト基超合金をろう付けするのに使用される。
【0016】
図1および図2を参照すると、溶融ろう付け材料16が第1の部分12と第2の部分14との間のギャップ10に適用されると、第1の部分12の表面から第2の部分14の表面までのギャップ距離はギャップ10全体に溶融ろう付け材料16の毛細管流を可能にするには大きすぎるので、得られる固体ろう材18はギャップ10の1つまたは複数の位置に空隙20および共晶相22を含み得る。空隙20と共晶相22の両方は、第1の部分12と第2の部分14との間に形成されたろう付けを弱める。図1および図2に示すギャップ10は、第1の構成要素と第2の構成要素との間に形成されてもよいし、あるいは単一の構成要素内に形成されてもよい。
【0017】
本開示の方法では、ろう付けマトリックス24が第1の部分12と第2の部分14との間のギャップ10に挿入される。図3は、ギャップ10に挿入されているろう付けマトリックス24を示す。あるいは、第1の部分12および第2の部分14は、単一の構成要素の一部であってもよい。ギャップ10は、ギャップ10全体に溶融ろう付け材料16の毛細管流を可能にするには大きすぎるが、ギャップ10のろう付けマトリックス24は毛細管フィールドを提供し、それにより溶融ろう付け材料16がギャップ10に適用されると、図4に示すように、溶融ろう付け材料16が毛細管現象によりギャップ10を充填する。
【0018】
図5に示すように、ろう付けマトリックス24および固体ろう材18は、ろう付けされた物品30を形成するために空隙20がないように、第1の部分12と第2の部分14との間のギャップ10を共に充填する。いくつかの実施形態では、第1の部分12は第1の構成要素であり、第2の部分14は第2の構成要素である。あるいは、第1の部分12および第2の部分14は、単一の構成要素の一部であってもよい。固体ろう材18は、共晶相22を含まない。ろう付けは、予め配置された、または予め充填されたろう付け粉末をろう付けギャップに含まずに達成される。ろう付けマトリックス24は、ギャップ10内の溶融ろう付け材料16の毛細管運動のために大きく改善された表面張力効果を提供する。図5のろう付けは、図2に示すろう付けより高品質である。ろう付けのより高い品質は、これらに限定されないが、共晶形成の低減または排除、および3%未満、あるいは2%未満、あるいは1%未満、またはそれらの間の任意の範囲または部分範囲である多孔度を含む。従来のワイドギャップろう付けは、大きな共晶相体積および3%より大きい多孔度を有するマクロ空隙形成を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の部分12および第2の部分14は、同じまたは異なる超合金組成物で形成される。いくつかの実施形態では、超合金組成物は、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、または鉄基超合金である。いくつかの実施形態では、第1の部分12および/または第2の部分14は、溶接不可能な合金であると考えられる、ガスタービン産業で使用される材料で形成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の部分12および/または第2の部分14の超合金組成物は、R108、Mar-M-247、H282、Nimonic 263、Inconel 625、またはInconel 600である。
【0021】
本明細書で使用する場合、「R108」は、重量で、約9%~約10%のコバルト(Co)、約9.3%~約9.7%のタングステン(W)、約8.0%~約8.7%のクロム(Cr)、約5.25%~約5.75%のアルミニウム(Al)、約2.8%~約3.3%のタンタル(Ta)、約1.3%~約1.7%のハフニウム(Hf)、約0.9%以下のチタン(Ti)(たとえば、約0.6%~約0.9%のTi)、約0.6%以下のモリブデン(Mo)(たとえば、約0.4%~約0.6%のMo)、約0.2%以下の鉄(Fe)、約0.12%以下のケイ素(Si)、約0.1%以下のマンガン(Mn)、約0.1%以下の銅(Cu)、約0.1%以下の炭素(C)(たとえば、約0.07%~約0.1%のC)、約0.1%以下のニオブ(Nb)、約0.02%以下のジルコニウム(Zr)(たとえば、約0.005%~約0.02%のZr)、約0.02%以下のホウ素(B)(たとえば、約0.01%~約0.02%のB)、約0.01%以下のリン(P)、約0.004%以下の硫黄(S)、偶発的不純物、および残部のニッケル(Ni)の組成物を含む合金を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「Mar-M-247」は、重量で、約9.3%~約9.7%のW、約9.0%~約9.5%のCo、約8.0%~約8.5%のCr、約5.4%~約5.7%のAl、約0.25%以下のSi、約0.1%以下のMn、約0.06%~約0.09%のC、偶発的不純物、および残部のNiの組成物を含む合金を指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「H282」は、重量で、約18.5%~約20.5%のCr、約9%~約11%のCo、約8%~約9%のMo、約1.9%~約2.3%のTi、約1.38%~約1.65%のAl、約1.5%以下のFe、約0.3%以下のMn、約0.15%以下のSi、約0.1%以下のCu、約0.04%~約0.08%のC、約0.02%以下のジルコニウム(Zr)、約0.015%以下のP、約0.015%以下のS、約0.003%~約0.01%のB、偶発的不純物、および残部のNiの組成物を含む合金を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「Nimonic 263」は、重量で、約19%~約21%のCo、約19%~約21%のCr、約5.6%~約6.1%のMo、約1.9%~約2.4%のTiと約0.6%以下のAlとを含む約2.4%~約3.8%のAlとTiの組合せ、約0.7%以下のFe、約0.6%以下のMn、約0.4%以下のSi、約0.2%以下のCu、約0.04%~約0.08%のC、偶発的不純物、および残部のNiの組成物を含む合金を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「Inconel 625」は、重量で、約20%~約23%のCr、約8%~約10%のMo、約5%以下のFe、約3.2%~約4.2%のNb+Ta、約1%以下のCo、約0.5%以下のMn、約0.5%以下のSi、約0.4%以下のAl、約0.4%以下のTi、約0.1%以下のC、偶発的不純物、および残部(少なくとも58%)のNiの組成物を含む合金を指す。
【0026】
本明細書で使用する場合、「Inconel 600」は、重量で、約14%~約17%のクロム(Cr)、約6%~約10%の鉄(Fe)、約1%以下のマンガン(Mn)、約0.5%以下のケイ素(Si)、約0.5%以下の銅(Cu)、約0.15%以下の炭素(C)、約0.015%以下の硫黄(S)、偶発的不純物、および残部のニッケル(Ni)とコバルト(Co)の組成物を含む合金を指し、残部は、合金の少なくとも72%である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1の部分12を第2の部分14に仮溶接して、溶融ろう付け材料16をギャップ10に適用する前にギャップ10の寸法を設定することができる。
【0028】
これに限定されないが、任意の従来のろう付け組成物を含む任意のろう付け組成物を、ろう付け方法に使用することができる。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24のメッシュサイズに応じて、高溶融ろう付け合金と低溶融ろう付け合金の異なる割合を組み合わせて、ろう付け組成物の性質を調整する。ろう付け組成物の溶融温度は、第1の部分12および第2の部分14の溶融温度より低い。ろう付け組成物の溶融温度はまた、ろう付けマトリックス24の溶融温度より低い。
【0029】
溶融ろう付け材料16が毛細管現象により流れることができる最大寸法は、溶融ろう付け材料16の物理的性質に依存するので、ろう付けされた物品30がろう付け方法から恩恵を受ける最小ギャップ距離は、少なくともろう付け条件およびろう付け材料の組成物に依存する。この最小ギャップ距離は、多くの従来のろう付け条件およびろう付け材料について、約50μm~約380μm(約2ミル~約15ミル)の範囲である。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24を使用するろう付け用の広いろう付けギャップ10は、約200μm~約1.27cm(約8ミル~約500ミル)、あるいは約250μm~約1.27cm(約10ミル~約500ミル)、あるいは約380μm~約1.27cm(約15ミル~約500ミル)の範囲、またはそれらの間の任意の範囲もしくは部分範囲の最小ギャップ距離を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ギャップ10は円筒形状であり、ギャップ距離はギャップ10の直径である。いくつかの実施形態では、ギャップ10は平面形状であり、ギャップ距離はギャップ10にわたる幅である。
【0031】
ろう付け方法は、たとえば、溶接不可能なタービンノズルおよびタービンバケットの再調整がろう付けを含む任意のギャップ10で利用されてもよい。ギャップ10は、第1の部分12を第2の部分14の隣に配置することによって形成されてもよく、構成要素の使用中に形成されてもよく、または使用中に形成された特徴の位置で機械加工されてもよい。ギャップ10は、1つの端部または部分で閉鎖されてもよく、あるいは複数の端部または部分で開放されてもよい。ギャップ10が機械加工によって形成される場合、ギャップ10は、たとえばスロットまたは円筒幾何学形状のような、機械加工によって形成可能な任意の幾何学形状を有することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24は、溶融ろう付け材料16が連続的に流れることを望む毛細管フィールドを提供する。毛細管フィールドは、溶融ろう付け材料16と充填すべき隣の空のポケットとの間に一定の引力を提供する。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24は、ギャップ10の幅にわたって溶融ろう付け材料16の超伝導を与える。
【0033】
ろう付けマトリックス24は、マトリックスに形成することができる任意の材料で形成することができる。ろう付けマトリックス24の材料は、ろう付け材料の溶融温度より高い溶融温度を有することが好ましい。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24は、織り合わされたマトリックス材料である。いくつかの実施形態では、織り合わされたマトリックス材料は、織り合わされた金属マトリックスである。いくつかの実施形態では、織り合わされた金属マトリックスは、超合金組成物である。いくつかの実施形態では、超合金組成物は、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、または鉄基超合金である。ろう付けマトリックス24の超合金組成物は、第1の部分12および第2の部分14の超合金組成物と同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24の超合金組成物は、R108、Mar-M-247、H282、Nimonic 263、Inconel 625、またはInconel 600である。
【0035】
ろう付けマトリックス24は、所定の同等のメッシュサイズを有する三次元マトリックス構造を提供する任意の方法によって製造することができる。ろう付けマトリックス24は、発泡体として形成されていない非発泡マトリックスであることが好ましい。いくつかの実施形態では、非発泡マトリックスは、非金属マトリックスである。いくつかの実施形態では、非発泡マトリックスは、セラミックマトリックスである。他の実施形態では、非発泡マトリックスは、金属マトリックスである。いくつかの実施形態では、非発泡マトリックスは、繊維で形成された繊維マトリックスである。繊維は、所定の最大空隙空間サイズを提供するために織り合わされることが好ましい。繊維マトリックスの繊維は、断面積が実質的に均一であり、長さも同様であることが好ましい。いくつかの実施形態では、繊維は、実質的に円形の断面である。いくつかの実施形態では、繊維は、実質的に矩形の断面である。繊維は、所定の同等のメッシュサイズを有するろう付けマトリックス24を形成するために、任意の方法で織り合わされてもよい。いくつかの実施形態では、繊維マトリックスの繊維は、金属繊維である。
【0036】
所定の同等のメッシュサイズを画定する最大孔径は、約10μm~約250μm(約0.4ミル~約10ミル)、あるいは約10μm~約50μm(約0.4ミル~約2ミル)、あるいは約50μm~約100μm(約2ミル~約4ミル)、あるいは約100μm~約250μm(約4ミル~約10ミル)、あるいは約10μm(約0.4ミル)、あるいは約100μm(約4ミル)、あるいは約250μm(約10ミル)の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24は、これに限定されないが、Mott Corporation(Plainville、CT)から市販されている特定の織物焼結フィルタを含む金属繊維から形成された特定のフィルタと同様の方法で形成される。
【0038】
織り合わされたマトリックス材料は、100μm(3.9ミル)のメッシュサイズ、あるいは約15μm~約100μm(約0.59ミル~約3.9ミル)の範囲のメッシュサイズ、あるいは約80μm~約100μm(約3.1ミル~約3.9ミル)の範囲のメッシュサイズ、あるいは約60μm~約80μm(約2.4ミル~約3.1ミル)の範囲のメッシュサイズ、あるいは約40μm~約60μm(約1.6ミル~約2.4ミル)の範囲のメッシュサイズ、あるいは約20μm~約40μm(約0.79ミル~約1.6ミル)の範囲のメッシュサイズ、あるいは約15μm~約20μm(約0.59ミル~約0.79ミル)の範囲のメッシュサイズ、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲の等価物を有してもよい。
【0039】
ろう付けマトリックス24は、多くの構成要素および構成要素群の多くのギャップ10の幾何学形状に適用可能な非常に多様な複雑な幾何学形状および輪郭に切断することができる。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24は、ギャップ10の幾何学形状に相補的な幾何学形状を有するように形成される。いくつかの実施形態では、ギャップ10は所定の幾何学形状に機械加工され、ろう付けマトリックス24はギャップ10の所定の幾何学形状に相補的な所定の幾何学形状を有するように形成される。
【0040】
ギャップ10は、少なくとも0.38mm(15ミル)、あるいは少なくとも0.64mm(25ミル)、あるいは約0.64mm~約4.1mm(約25ミル~約160ミル)の範囲、あるいは約0.64mm~約1.3mm(約25ミル~約50ミル)の範囲、あるいは約1.3mm~約3.0mm(約50ミル~約120ミル)の範囲、あるいは約2.0mm~約2.5mm(約80ミル~約100ミル)の範囲、またはそれらの間の任意の値、範囲、もしくは部分範囲の最大幅または直径を有することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ろう付け方法が、ガスタービンの高温ガス経路の構成要素に適用される。たとえば、ろう付け方法は、第1のタービンノズルセットの1つまたは複数の特徴に対処し、従来のろう付け方法より良好な接合部強度を提供することができる。いくつかの実施形態では、ろう付け方法は、ガスタービンの高温ガス経路壁に適用される。
【0042】
いくつかの実施形態では、ろう付けされる構成要素は、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、または鉄基超合金を含む組成物を有する。たとえば、合金は、重量で、約9%~約10%のコバルト(Co)、約9.3%~約9.7%のタングステン(W)、約8.0%~約8.7%のクロム(Cr)、約5.25%~約5.75%のアルミニウム(Al)、約2.8%~約3.3%のタンタル(Ta)、約1.3%~約1.7%のハフニウム(Hf)、約0.9%以下のチタン(Ti)(たとえば、約0.6%~約0.9%のTi)、約0.6%以下のモリブデン(Mo)(たとえば、約0.4%~約0.6%のMo)、約0.2%以下の鉄(Fe)、約0.12%以下のケイ素(Si)、約0.1%以下のマンガン(Mn)、約0.1%以下の銅(Cu)、約0.1%以下の炭素(C)(たとえば、約0.07%~約0.1%のC)、約0.1%以下のニオブ(Nb)、約0.02%以下のジルコニウム(Zr)(たとえば、約0.005%~約0.02%のZr)、約0.02%以下のホウ素(B)(たとえば、約0.01%~約0.02%)、約0.01%以下のリン(P)、約0.004%以下の硫黄(S)、偶発的不純物、および残部のニッケル(Ni)の組成物を有してもよい。
【0043】
種々の加熱方法を使用して、ろう付け材料をろう付け温度に加熱することができる。いくつかの実施形態では、ギャップ10のろう付けマトリックス24のろう付けアセンブリおよびろう付け材料は、真空炉内に配置される。いくつかの実施形態では、ろう付け方法は、ろう付け材料を溶融するために誘導加熱を用いたワイドギャップろう付けを可能にする。いくつかの実施形態では、ろう付けマトリックス24は、溶融ろう付け材料16がギャップ10の底部からはみ出ることを防止する。
【0044】
いくつかの実施形態では、適切なろう付け温度は、少なくとも約815℃(約1500°F)、あるいは少なくとも約1090℃(約2000°F)、あるいは少なくとも約1150℃(約2100°F)、あるいは少なくとも約1175℃(約2150°F)、あるいは少なくとも約1190℃(約2175°F)、あるいは約815℃~約1230℃(約1500°F~約2250°F)の範囲、あるいは約815℃~約1090℃(約1500°F~約2000°F)の範囲、あるいは約1090℃~約1370℃(約2000°F~約2500°F)の範囲、あるいは約1150℃~約1290℃(約2100°F~約2350°F)の範囲、あるいは約1175℃~約1230℃(約2150°F~約2250°F)の範囲、あるいは約1190℃~約1230℃(約2175°F~約2250°F)の範囲、またはそれらの任意の組合せ、部分組合せ、範囲、もしくは部分範囲である。
【0045】
いくつかの実施形態では、適切なろう付け時間は、約15分、あるいは約15分以下、あるいは約10分~約20分、あるいは約5分~約25分、またはそれらの任意の組合せ、部分組合せ、範囲、もしくは部分範囲である。
【0046】
本発明を1つまたは複数の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その要素を種々変更させることができ、均等物で置換することができることは当業者によって理解されるであろう。さらに、特定の状況または材料に適応させるために、その本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内に属するすべての実施形態を含むことになることを意図している。さらに、詳細な説明で識別されたすべての数値は、正確な値と近似の値の両方が明確に識別されているかのように解釈されるものとする。
[実施態様1]
非発泡マトリックス(24)をギャップ(10)に配置することと、
溶融ろう付け材料(16)が前記ギャップ(10)を充填するために毛細管現象により前記ギャップ(10)に流入して前記非発泡マトリックス(24)を通り、冷却して固体ろう材(18)を前記ギャップ(10)に形成するように前記溶融ろう付け材料(16)を前記ギャップ(10)に適用することとを含む、ろう付け方法。
[実施態様2]
前記非発泡マトリックス(24)を前記ギャップ(10)に配置する前に、前記ギャップ(10)を所定の幾何学形状に機械加工することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
ろう付け組成物をろう付け温度に加熱して前記溶融ろう付け材料(16)を形成することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様4]
前記ギャップ(10)が、第1の構成要素(12)と第2の構成要素(14)との間に形成された開放接合部である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様5]
前記非発泡マトリックス(24)が、前記ギャップ(10)に流入する前記溶融ろう付け材料(16)のための毛細管フィールドを提供する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様6]
前記非発泡マトリックス(24)が、織り合わされた金属繊維の繊維マトリックスである、実施態様1に記載の方法。
[実施態様7]
前記非発泡マトリックス(24)が、約15μm~約100μm(約0.6ミル~約3.9ミル)の範囲のメッシュサイズを有する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様8]
前記ギャップ(10)が、約0.64mm~約4.1mm(約25ミル~約160ミル)の範囲の幅を有する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
前記ギャップ(10)が、前記ギャップ(10)に前記非発泡マトリックス(24)が存在しないと前記溶融ろう付け材料(16)が前記ギャップ(10)全体に毛細管現象によって流れないようなギャップサイズを有する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様10]
前記非発泡マトリックス(24)が、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、および鉄基超合金からなる群から選択される材料を含む、実施態様1に記載のろう付け方法。
[実施態様11]
前記ギャップ(10)が、タービン構成要素の高温ガス経路表面に配置される、実施態様1に記載の方法。
[実施態様12]
前記非発泡マトリックス(24)が、前記ギャップ(10)の幅にわたって前記溶融ろう付け材料(16)の超毛細管伝導を促進する、実施態様1に記載の方法。
[実施態様13]
ギャップ(10)を画定する少なくとも1つの構成要素と、
前記ギャップ(10)の非発泡マトリックス(24)と、
前記非発泡マトリックス(24)に介在する固体ろう材(18)とを含み、前記非発泡マトリックス(24)および前記固体ろう材(18)は、前記ギャップ(10)を充填する、ろう付けされた物品(30)。
[実施態様14]
前記少なくとも1つの構成要素が、第1の構成要素(12)と、第2の構成要素(14)とを含み、前記ギャップ(10)が、前記第1の構成要素(12)と前記第2の構成要素(14)との間の開放接合部である、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
[実施態様15]
前記非発泡マトリックス(24)が、前記ギャップ(10)に流入する前記溶融ろう付け材料(16)のための毛細管フィールドを提供する、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
[実施態様16]
前記非発泡マトリックス(24)が、約15μm~約100μm(約0.6ミル~約3.9ミル)の範囲のメッシュサイズを有する、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
[実施態様17]
前記ギャップ(10)が、約0.64mm~約4.1mm(約25ミル~約160ミル)の範囲の幅を有する、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
[実施態様18]
前記非発泡マトリックス(24)が、コバルト基超合金、ニッケル基超合金、および鉄基超合金からなる群から選択される材料を含む、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
[実施態様19]
前記非発泡マトリックス(24)と共に前記ギャップ(10)に形成された前記固体ろう材(18)は、実質的に空隙(20)を含まず、実質的に共晶相(22)を含まない、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
[実施態様20]
前記ギャップ(10)が、タービン構成要素の高温ガス経路表面に配置される、実施態様13に記載のろう付けされた物品(30)。
【符号の説明】
【0047】
10 ギャップ
12 第1の部分、第1の構成要素
14 第2の部分、第2の構成要素
16 溶融ろう付け材料
18 固体ろう材
20 空隙
22 共晶相
24 ろう付けマトリックス、非発泡マトリックス
30 ろう付けされた物品
図1
図2
図3
図4
図5