(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電子機器、電子機器の制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G09G 5/36 20060101AFI20240729BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240729BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20240729BHJP
H04N 13/239 20180101ALI20240729BHJP
H04N 13/339 20180101ALI20240729BHJP
H04N 13/344 20180101ALI20240729BHJP
H04N 13/359 20180101ALI20240729BHJP
【FI】
G09G5/36 500
G09G5/00 550C
G09G5/37 300
G09G5/37 600
H04N13/239
H04N13/339
H04N13/344
H04N13/359
(21)【出願番号】P 2019220357
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 稜介
(72)【発明者】
【氏名】村上 新
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121858(JP,A)
【文献】特開2015-23435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0130699(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 - 5/42
H04N 13/00 - 13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに視差を有する第1の画像と第2の画像とを有する画像セットを取得する第1の取得手段と、
前記第2の画像を表示することなく前記第1の画像を表示する第1の表示モードの場合には、前記第1の画像を天頂補正して表示手段に表示し、
前記第1の画像と前記第2の画像とをともに表示する第2の表示モードの場合には、前記第1の画像と前記第2の画像とを、前記天頂補正せずに前記表示手段に表示するように制御する制御手段と
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記画像セットの傾き情報を取得する第2の取得手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記第1の画像を天頂補正する場合には、前記画像セットの傾き情報に基づいて前記第1の画像を天頂補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記画像セットは、撮像装置によって撮像された画像セットであって、
前記撮像装置は、前記電子機器に含まれておらず、
前記傾き情報は、
前記画像セットに付加された傾き情報、または前記画像セットの特徴に基づく傾き情報である
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の表示モードの場合であ
る場合、前記傾き情報に基づいて前記第1の画像を天頂補正して前記第1の画像を表示手段に表示するように制御する
ことを特徴とする請求項
3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の画像を天頂補正する場合には、
前記傾き情報の傾きに対応する前記第1の画像における方向と、前記表示手段の上下方向とを平行にするように前記第1の画像を天頂補正して前記第1の画像を前記表示手段に表示するように制御する
ことを特徴とする請求項3
または4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1の画像を天頂補正する場合には、
前記傾き情報の傾きに対応する前記第1の画像における方向と、前記表示手段の左右方向とを平行にするように前記第1の画像を天頂補正して前記第1の画像を前記表示手段に表示するように制御する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1の画像を天頂補正する場合には、
前記傾き情報の傾きに対応する前記第1の画像における方向と、前記表示手段への表示時の重力方向とを平行にするように前記第1の画像を天頂補正して前記表示手段に表示するように制御する
ことを特徴とする請求項3
または4に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の画像を天頂補正する場合には、
前記傾き情報の傾きに対応する前記第1の画像における方向と、前記表示手段への表示時の水平方向とを平行にするように前記第1の画像を天頂補正して前記表示手段に表示するように制御する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第2の表示モードは、前記第1の画像と前記第2の画像を並べて表示する表示モードであり、
前記第2の表示モードにおいて、前記第1の画像はユーザーの右目および左目のうちの一方により観賞するための画像であり、前記第2の画像はユーザーの右目および左目のうちの他方により観賞するための画像である、
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1の表示モードは、1つの前記第1の画像のみを表示する第1の表示態様と、同一の前記第1の画像を2つ並べて表示する第2の表示態様との少なくともいずれかの表示を行う表示モードである
ことを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記制御手段は、ユーザーの入力に応じて、前記第2の表示態様と前記第2の表示モードとを切り替えることが可能である
ことを特徴とする請求項
10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記制御手段は、画像を2つ並べて表示する場合には、前記第2の表示態様と前記第2の表示モードとのいずれかをユーザーに選択させるためのガイド表示を行う
ことを特徴とする請求項
11に記載の電子機器。
【請求項13】
前記第1の表示モードは、複数の前記画像セットのそれぞれの前記第1の画像を表示するモード、1つの前記第1の画像を仮想球体にマッピングする変形を行って表示するモード、前記変形を行わずに1つの前記第1の画像を表示するモード、の少なくともいずれかである、
ことを特徴とする請求項1から
12のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項14】
互いに視差を有する第1の画像と第2の画像とを有する画像セットを取得する取得工程と、
前記第2の画像を表示することなく前記第1の画像を表示する第1の表示モードの場合には、前記第1の画像を天頂補正して表示手段に表示し、
前記第1の画像と前記第2の画像とをともに表示する第2の表示モードの場合には、前記第1の画像と前記第2の画像とを、前記天頂補正せずに前記表示手段に表示するように制御する制御工程と
を有することを特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1乃至
13のいずれか1項に記載された電子機器の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1乃至
13のいずれか1項に記載された電子機器の各手段として機能させるためのプログラムを格納したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
を有することを特徴とする電子機器である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VR画像の表示を制御する電子機器、電子機器の制御方法、プログラム、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの光学系を用いて視差のある広角画像を得て、仮想球体上にマッピングして表示することで立体感のあるVR(Virtual Reality)画像を表示する技術が知られている。視差のある画像を撮像するための二眼VRカメラは、同じ方向に向いた2つの光学系を有しており、1度の撮像操作により、視差のある2枚の画像を撮像する。二眼VRカメラとして、特に各光学系において上下左右180度(半球、画像中心から全方向に90度)以上の広範囲を撮像するものが知られている。また、VR表示の方法として、VR画像を仮想球体にマッピングする変形を行って1つの画像を表示する「一眼VR表示」や、左眼用と右眼用のVR画像を左右の区域に並べて表示する「二眼VR表示」が知られている。
【0003】
特許文献1には、VRカメラが撮像したVR画像を表示する際に、ユーザーの観賞の行いやすくするために、天頂補正(VRカメラのピッチ角とロール角の補正)とVRカメラのヨー角の補正を制御する電子機器が提案されている。ここで、電子機器は、VRカメラの設置場所や移動速度や揺れなどの条件に応じて、天頂補正などの制御を行っている。
【0004】
ここで、天頂補正が行われなければ、VR画像内の天頂とユーザーの認識がずれ、VR画像の識別や観賞がしにくく、また、VR画像を用いた操作が行いにくいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二眼VRカメラが傾いた状態でVR画像を撮像すると、左右の光学系が異なる高さで撮像を行うことになるため、センサに結像される左右の被写体像に重力方向(鉛直方向)の視差が生じる。このため、二眼VR表示を行う場合に撮像したVR画像(二眼VR画像)に天頂補正を施すと、VR画像の傾きは補正されるが、立体物の知覚を妨げる重力方向の視差は解消されず、ユーザーには二重像として知覚される。このような二重像を感じさせるVR画像は、ユーザーにVR酔いと呼ばれる頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こす原因になる。このように、傾いて撮像された二眼VR画像の二眼VR表示を行う場合に天頂補正を行えば、不快感を伴う二重像が生じる課題がある。そして、このような課題について特許文献1では考慮されていない。
【0007】
そこで本発明は、複数の光学系を用いて撮像されたVR画像を、より好適に表示することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、
互いに視差を有する第1の画像と第2の画像とを有する画像セットを取得する第1の取得手段と、
前記第2の画像を表示することなく前記第1の画像を表示する第1の表示モードの場合には、前記第1の画像を天頂補正して表示手段に表示し、
前記第1の画像と前記第2の画像とをともに表示する第2の表示モードの場合には、前記第1の画像と前記第2の画像とを、前記天頂補正せずに前記表示手段に表示するように制御する制御手段と
を有することを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の光学系を用いて撮像されたVR画像を、より好適に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るVRカメラを説明する図である。
【
図2】実施形態に係る表示制御装置を説明する図である。
【
図3】実施形態に係る天頂補正を説明する図である。
【
図4】実施形態に係る表示モードを説明する図である。
【
図5】実施形態に係る表示制御の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。まず、以下では、VR画像について説明し、その後、本実施形態に係る表示制御装置について説明する。
【0012】
[VR画像について]
VR画像とは、VR表示(表示モード「VRビュー」で表示)をすることのできる画像である。VR画像には、全方位カメラ(全天球カメラ)で撮像した全方位画像(全天球画像)や、表示部に一度に表示できる表示範囲より広い映像範囲(有効映像範囲)を持つパノラマ画像などが含まれる。VR画像には、静止画だけでなく、動画やライブビュー画像(カメラからほぼリアルタイムで取得した画像)も含まれる。VR画像は、最大で上下方向(垂直角度、天頂からの角度、仰角、俯角、高度角、ピッチ角)360度、左右方向(水平角度、方位角度、ヨー角)360度の視野分の映像範囲(有効映像範囲)を持つ。
【0013】
また、VR画像は、上下360度未満、左右360度未満であっても、通常のカメラで撮像(撮影)可能な画角よりも広い広範な画角(視野範囲)、あるいは、表示部に一度に表示できる表示範囲より広い映像範囲(有効映像範囲)を持つ画像も含む。例えば、左右方向(水平角度、方位角度)360度、天頂(zenith)を中心とした垂直角度210度の視野分(画角分)の被写体を撮像可能な全天球カメラで撮像された画像はVR画像の一種である。また、例えば、左右方向(水平角度、方位角度)180度、水平方向を中心とした垂直角度180度の視野分(画角分)の被写体を撮像可能なカメラで撮像された画像はVR画像の一種である。即ち、上下方向と左右方向にそれぞれ160度(±80度)以上の視野分の映像範囲を有しており、人間が一度に視認できる範囲よりも広い映像範囲を有している画像はVR画像の一種である。
【0014】
このVR画像をVR表示(表示モード「VRビュー」で表示)すると、左右回転方向に表示装置(VR画像を表示する表示装置)の姿勢を変化させることで、左右方向(水平回転方向)には継ぎ目のない全方位の映像を観賞(鑑賞)することができる。上下方向(垂直回転方向)には、真上(天頂)から±105度の範囲では継ぎ目のない全方位の映像を観賞することができるが、真上から105度を超える範囲は映像が存在しないブランク領域となる。VR画像は、「映像範囲が仮想空間(VR空間)の少なくとも一部である画像」とも言える。
【0015】
VR表示(VRビュー)とは、VR画像のうち、表示装置の姿勢に応じた視野範囲の映
像を表示する、表示範囲を変更可能な表示方法(表示モード)である。表示装置であるヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して観賞する場合には、ユーザーの顔の向きに応じた視野範囲の映像を表示することになる。例えば、VR画像のうち、ある時点で左右方向に0度(特定の方位、例えば北)、上下方向に90度(天頂から90度、すなわち水平)を中心とした視野角(画角)の映像を表示しているものとする。この状態から、表示装置の姿勢を表裏反転させると(例えば、表示面を南向きから北向きに変更すると)、同じVR画像のうち、左右方向に180度(逆の方位、例えば南)、上下方向に90度(水平)を中心とした視野角の映像に、表示範囲が変更される。ユーザーがHMDを観賞している場合で言えば、ユーザーが顔を北から南に向ければ(すなわち後ろを向けば)、HMDに表示される映像も北の映像から南の映像に変わるということである。このようなVR表示によって、ユーザーに、視覚的にあたかもVR画像内(VR空間内)のその場にいるような感覚(没入感)を提供することができる。VRゴーグル(ヘッドマウントアダプター)に装着されたスマートフォンは、HMDの一種と言える。
【0016】
なお、VR画像の表示方法は上記に限るものではない。姿勢変化ではなく、タッチパネルや方向ボタンなどに対するユーザー操作に応じて、表示範囲を移動(スクロール)させてもよい。VR表示時(表示モード「VRビュー」時)において、姿勢変化による表示範囲の変更に加え、タッチパネルへのタッチムーブ、マウスなどへのドラッグ操作、方向ボタンの押下などに応じて表示範囲を変更できるようにしてもよい。
【0017】
ここで、左右方向(水平角度、方位角度)180度、水平方向を中心とした垂直角度180度の視野分(画角分)の被写体を撮像可能なカメラ(撮像装置)には、例えば、
図1(a)が示すVRカメラ100がある。VRカメラ100は、ユーザーがシャッターボタン103を押下したことに応じて、レンズ101,102を介してカメラ前方の180度を撮像することができる。VRカメラ100を用いれば、レンズ101,102の2つの箇所(光学系)から被写体を撮像することができるため、視差がある2つのVR画像を同時に(セットで)取得することができる。ここで、
図1(a)に示すようにVRカメラ100においてレンズ101,102が水平に位置する状態では、VRカメラ100の上下方向104と重力方向105とは一致する。しかし、
図1(b)に示すようにVRカメラ100においてレンズ101,102が水平に位置しない状態では、VRカメラ100の上下方向104と重力方向105とは一致しない。このため、
図1(b)が示す状態で撮像された2つのVR画像に対して天頂補正がされて二眼VR表示がされると、撮像時における重力方向105の視差の影響によって二重像が発生する可能性がある。
【0018】
[表示制御装置について]
図2(a)に、電子機器の一種である表示制御装置200の外観図の例を示す。ディスプレイ205は、画像や各種情報を表示する表示部である。ディスプレイ205は、後述するようにタッチパネル206aと一体的に構成されており、ディスプレイ205の表示面へのタッチ操作を検出できるようになっている。表示制御装置200は、VR画像(VRコンテンツ)をディスプレイ205においてVR表示することが可能である。
【0019】
操作部206は、図示のようにタッチパネル206a、操作部206b,206c,206d,206eを含む。操作部206bは、表示制御装置200の電源のオンとオフを切り替える操作を受け付ける電源ボタンである。操作部206cと操作部206dは、音声出力部222から出力する音声のボリュームを増減するボリュームボタンである。操作部206eは、ディスプレイ205にホーム画面を表示させるためのホームボタンである。
【0020】
音声出力端子212aは、イヤホンジャックであり、イヤホンや外部スピーカなどに音声を出力する部品である。スピーカ212bは、音声を発音する本体内蔵スピーカである
。
【0021】
図2(b)に、表示制御装置200の構成の一例を示す。本実施形態に係る表示制御装置200は、スマートフォンなどの表示装置を用いて構成可能である。内部バス250に対してCPU201、メモリ202、不揮発性メモリ203、画像処理部204、ディスプレイ205、操作部206、記憶媒体I/F207、外部I/F209、および、通信I/F210が接続されている。また、内部バス250に対して音声出力部212と姿勢検出部213も接続されている。内部バス250に接続される各部は、内部バス250を介して互いにデータのやりとりを行うことができるように構成されている。
【0022】
CPU201は、表示制御装置200の全体を制御する制御部であり、少なくとも1つのプロセッサまたは回路からなる。メモリ202は、例えばRAM(半導体素子を利用した揮発性のメモリなど)からなる。CPU201は、例えば不揮発性メモリ203に格納されるプログラムに従い、メモリ202をワークメモリとして用いて、表示制御装置200の各部を制御する。不揮発性メモリ203には、画像データや音声データ、その他のデータ、CPU201が動作するための各種プログラムなどが格納される。不揮発性メモリ203は例えばフラッシュメモリやROMなどで構成される。
【0023】
画像処理部204は、CPU201の制御に基づいて、不揮発性メモリ203や記憶媒体208に格納された画像や、外部I/F209を介して取得した映像信号、通信I/F210を介して取得した画像などに対して各種画像処理を施す。画像処理部204が行う画像処理には、A/D変換処理、D/A変換処理、画像データの符号化処理、圧縮処理、デコード処理、拡大/縮小処理(リサイズ)、ノイズ低減処理、色変換処理などが含まれる。また、全方位画像あるいは全方位ではないにせよ広範囲のデータを有する広範囲画像であるVR画像のパノラマ展開やマッピング処理、変換などの各種画像処理も行う。画像処理部204は、特定の画像処理を行うための専用の回路ブロックで構成してもよい。また、画像処理の種別によっては画像処理部204を用いずにCPU201がプログラムに従って画像処理を行うことも可能である。
【0024】
ディスプレイ205は、CPU201の制御に基づいて、画像やGUI(Graphical User Interface)を構成するGUI画面などを表示する。CPU201は、プログラムに従い表示制御信号を生成し、ディスプレイ205に表示するための映像信号を生成してディスプレイ205に出力するように表示制御装置200の各部を制御する。ディスプレイ205は、出力された映像信号に基づいて映像を表示する。なお、表示制御装置200自体が備える構成としてはディスプレイ205に表示させるための映像信号を出力するためのインターフェースまでとし、ディスプレイ205は外付けのモニタ(テレビなど)で構成してもよい。
【0025】
操作部206は、ユーザー操作を受け付けるための入力デバイスである。操作部206は、キーボードなどの文字情報入力デバイスや、マウスやタッチパネルといったポインティングデバイス、ボタン、ダイヤル、ジョイスティック、タッチセンサ、タッチパッドなどを含む。なお、タッチパネルは、ディスプレイ205に重ね合わせて平面的に構成され、接触された位置に応じた座標情報が出力されるようにした入力デバイスである。
【0026】
記憶媒体I/F207は、メモリーカードやCD、DVDといった記憶媒体208が装着可能である。記憶媒体I/F207は、CPU201の制御に基づき、装着された記憶媒体208からのデータの読み出しや、記憶媒体208に対するデータの書き込みを行う。外部I/F209は、外部機器と有線ケーブルや無線によって接続し、映像信号や音声信号の入出力を行うためのインターフェースである。通信I/F210は、外部機器やインターネット211などと通信して、ファイルやコマンドなどの各種データの送受信を行
うためのインターフェースである。
【0027】
音声出力部212は、動画や音楽データの音声や、操作音、着信音、各種通知音などを出力する。音声出力部212には、イヤホンなどを接続する音声出力端子212a、スピーカ212bが含まれるものとするが、無線通信などで音声出力を行ってもよい。
【0028】
姿勢検出部213は、重力方向に対する表示制御装置200の姿勢や、ヨー、ロール、ピッチの各軸に対する姿勢の傾きを検知する。姿勢検出部213で検知された姿勢に基づいて、表示制御装置200が横に保持されているか、縦に保持されているか、上に向けられたか、下に向けられたか、斜めの姿勢になったかなどを判別可能である。姿勢検出部213としては、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、方位センサ、高度センサなどのうち少なくとも1つを用いることができ、複数を組み合わせて用いることも可能である。
【0029】
なお、操作部206には、タッチパネル206aが含まれる。CPU201は、タッチパネル206aへの以下の操作、あるいは状態を検出できる。
・タッチパネル206aにタッチしていなかった指やペンが新たにタッチパネル206aにタッチしたこと、すなわち、タッチの開始(以下、タッチダウン(Touch-Down)と称する。)
・タッチパネル206aを指やペンがタッチしている状態であること(以下、タッチオン(Touch-On)と称する)
・指やペンがタッチパネル206aをタッチしたまま移動していること(以下、タッチムーブ(Touch-Move)と称する)
・タッチパネル206aへタッチしていた指やペンがタッチパネル206aから離れたこと、すなわち、タッチの終了(以下、タッチアップ(Touch-Up)と称する)
・タッチパネル206aに何もタッチしていない状態(以下、タッチオフ(Touch-Off)と称する)
【0030】
タッチダウンが検出されると、同時にタッチオンも検出される。タッチダウンの後、タッチアップが検出されない限りは、通常はタッチオンが検出され続ける。タッチムーブが検出された場合も、同時にタッチオンが検出される。タッチオンが検出されていても、タッチ位置が移動していなければタッチムーブは検出されない。タッチしていた全ての指やペンがタッチアップしたことが検出されると、タッチオフが検出される。
【0031】
これらの操作・状態や、タッチパネル206a上に指やペンがタッチしている位置座標は内部バスを通じてCPU201に通知される。CPU201は、通知された情報に基づいてタッチパネル206a上にどのような操作(タッチ操作)が行われたかを判定する。タッチムーブに関して、タッチパネル206a上で移動する指やペンの移動方向について、位置座標の変化に基づいて、タッチパネル106a上の垂直成分・水平成分ごとに判定できる。ここで、所定距離以上のタッチムーブが検出された場合には、スライド操作が行われたと判定される。
【0032】
なお、タッチパネル206a上に指をタッチしたままある程度の距離だけ素早く動かして、そのまま離すといった操作をフリックと呼ぶ。フリックは、言い換えればタッチパネル206a上を指ではじくように素早くなぞる操作である。所定距離以上を、所定速度以上でタッチムーブしたことが検出され、そのままタッチアップが検出されるとフリックが行われたと判定できる(スライド操作に続いてフリックがあったものと判定できる)。さらに、複数箇所(例えば2点)を同時にタッチして、互いのタッチ位置を近づけるタッチ操作をピンチイン、互いのタッチ位置を遠ざけるタッチ操作をピンチアウトと称する。ピンチアウトとピンチインを総称してピンチ操作(あるいは単にピンチ)と称する。
【0033】
タッチパネル206aは、抵抗膜方式や静電容量方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、画像認識方式、光センサ方式等、様々な方式のタッチパネルのうちいずれの方式のものを用いてもよい。タッチパネルに対する接触があったことでタッチがあったと検出する方式や、タッチパネルに対する指やペンの接近があったことでタッチがあったと検出する方式があるが、いずれの方式でもよい。
【0034】
図2(c)に、表示制御装置200を装着可能なVRゴーグル(ヘッドマウントアダプタ)230の外観図を示す。表示制御装置200は、VRゴーグル230に装着することで、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)として使用することも可能である。
【0035】
挿入口231は、表示制御装置200を差し込むための挿入口である。ディスプレイ205の表示面を、VRゴーグル230をユーザーの頭部に固定するためのヘッドバンド232側(すなわちユーザ側)に向けて表示制御装置200の全体をVRゴーグル230差し込むことができる。こうして、ユーザーはVRゴーグル230を頭部に装着した状態で、ユーザーが手で表示制御装置200を保持することなく、表示制御装置200のディスプレイ205を視認することができる。この場合、ユーザーが頭部または体全体を動かすと、表示制御装置200の姿勢も変化する。姿勢検出部213は、表示制御装置200の姿勢の変化を検出し、この姿勢の変化に基づいてCPU201がVR表示処理を行う。この場合に姿勢検出部213が表示制御装置200の姿勢を検出することは、ユーザーの頭部の姿勢(ユーザの視線が向いている方向)を検出することと同等である。なお、表示制御装置200自体が、VRゴーグル無しでもユーザーの頭部に装着可能な装着部を有するHMDであってもよい。
【0036】
[天頂補正について]
表示制御装置200では、ユーザーの画像の見やすさを考慮して、CPU201が画像処理部204を制御して、表示方向(表示領域)を補正する天頂補正をしてVR画像を表示することが可能である。なお、表示制御装置200は、天頂補正を行った表示も可能であるし、天頂補正を行わない表示も可能である。そこで、
図3(a)~
図3(c)を用いて、VR画像を表示する際の天頂補正について説明する。
【0037】
図3(a)は、VRカメラ100による撮像(撮影)時の状況の模式図である。
図3(a)は、被写体である家301と犬302に対して、VRカメラ100がVR画像(広範囲画像)を撮像している様子を示す。ここで、VRカメラ100から見て方向D(例えば北)に家301が位置しており、VRカメラ100から見て方向Dよりも右に90度の方向(例えば東)に犬302が位置している。VRカメラ100は、重力方向105に対して右にやや傾いて構えられており、重力方向105とVRカメラ100の上下方向104(上下軸)は平行でない。この状況で、VRカメラ100の撮像レンズを家301に向けてVR画像(動画または静止画)の撮像を行い、VRカメラ100は撮像結果を画像Aとして記録したものとする。
【0038】
図3(b)は、
図3(a)の状況で撮像された画像Aを、表示制御装置200が天頂補正することなく再生(表示)した場合の模式図である。表示制御装置200(CPU201)は、VRカメラ100の記憶媒体から無線あるいは有線でのファイル転送によって、あるいは表示制御装置200に装着されたメモリーカード等の記憶媒体208から、画像Aを取得する。
【0039】
また、
図3(b)は、画像Aにおける一部の領域を表示制御装置200の姿勢に応じて表示するVR表示(VRビュー)をした場合のディスプレイ205の表示例を示している。
図3(b)の左側では、表示制御装置200を装着したVRゴーグル230をユーザー
が頭部に装着しており、ユーザーが画像AをVR表示で観賞している。画像Aは、VRカメラ100が傾いた状態で撮像されたVR画像である。このため、天頂補正をしない場合は、VRカメラ100の撮像時の重力方向105に対する右への傾きと逆側の左に傾いた被写体(画像)がディスプレイ205に表示される。すなわち、天頂補正をしない場合、画像Aでは家301が傾いて表示される。より詳細には、VR表示において、撮像時のVRカメラ100の上下方向104に対応する画像Aにおける方向を、表示制御装置200の姿勢検出部213が検出している重力方向303(天頂を通る軸方向)と平行にするように画像Aが表示される。なお、VR表示以外の表示方法であれば、撮像時のVRカメラ100の上下方向104に対応する画像Aにおける方向を、表示制御装置200におけるディスプレイ205の上下方向と平行にするように画像Aが表示される。
【0040】
図3(b)の右側は、
図3(b)の左側の状態から、ユーザーが水平方向に対して右を向いた場合のディスプレイ205の表示例を示している。ユーザーが右を向く姿勢の変化に基づいて画像Aのうち表示される範囲(方向)が変更され、犬302が写る範囲(向き)が表示される。この状況では、犬302も傾いて表示される。また、ユーザーが向く位置を水平方向に対して左右に変更すると、表示制御装置200は、撮像時のVRカメラ100の上下方向104を軸として回転移動することにより画像Aの表示範囲を変更する。このため、ユーザーが視認する表示において、実際には家301と同程度の高さに見えるはずの犬302の上下方向の位置がずれてしまう。
【0041】
図3(c)は、
図3(a)の状況で撮像された画像Aを、表示制御装置200が天頂補正して表示(再生)した場合の模式図である。
図3(c)は、
図3(b)と同様に、表示方法をVR表示(VRビュー)とした場合の例である。
図3(c)の左側では、表示制御装置200を装着したVRゴーグル230をユーザーが頭部に装着して、ユーザーはVR表示で画像Aを観賞している。
【0042】
図3(c)では、画像Aを撮像していた際にVRカメラ100が検出していた重力方向105を再生時の上下方向と平行にするように、画像Aの向き(表示)が補正(天頂補正)されている。より詳しくは、撮像時の重力方向105(VRカメラ100が検出していた重力方向)に対応する画像Aにおける方向を、表示制御装置200の姿勢検出部213が検出している重力方向303と平行にするように、画像Aが補正されて表示される。すなわち、天頂補正をした場合、画像Aにおいて家301が傾かないように表示される。なお、VR表示以外の表示方法であれば、撮像時の重力方向105に対応する画像Aにおける方向を、表示制御装置200におけるディスプレイ205の上下方向と平行にするように画像Aが表示される。いずれにおいても、重力方向105(天頂を通る軸方向)に対して傾いた撮像時のVRカメラ100の上下方向104と、画像Aを撮像していた際にVRカメラ100で検出していた重力方向105とのズレ量を打ち消すような表示向きの補正が行われる。
【0043】
図3(c)の右側は、
図3(c)の左側の状態から、水平方向に対してユーザーが右を向いた場合のディスプレイ205の表示例を示している。ユーザーが右を向く姿勢の変化に基づいて画像Aのうち表示される範囲(方向)が変更され、犬302が写る領域が表示される。この状況では、犬302も傾かずに表示される。また、VR表示において、現実と同様に、家301と同程度の高さに犬302が見える。
【0044】
[表示モードについて]
表示制御装置200は、表示するVR画像に対して、天頂補正を行うか否かを表示モード(表示態様)に応じて決定する。本実施形態では、表示モードとして、
図4(a)に示すサムネイル表示モード、
図4(b)に示す平面画像表示モード、
図4(c)に示す一眼VR表示モード、
図4(e)および
図4(f)に示す二眼VR表示モードの4つのモード
が存在する。なお、以下では、
図4(a)~
図4(f)を用いて、VRカメラ100が撮像した、重力方向および水平方向に視差がある2つのVR画像(左右眼用画像)のセット(画像セット)を用いた表示について説明する。ここで、サムネイル表示モード、平面画像表示モード、一眼VRモードでは、画面全体の表示をユーザーは左右の両方の眼によって見ることが想定される。一方、二眼VR表示モードでは、画面の領域の左右に並べて表示された2つの画像における、右側の画像を右目で見て、左側の画像を左目で見ることが想定される。
【0045】
図4(a)に示すサムネイル表示モードは、一画面に複数の画像を並べて表示するモードである。サムネイル表示モードは、観賞のために表示させるVR画像(画像セット)をユーザーに選択させるためのモードである。ここで、サムネイル表示モードで複数表示される1つ1つの画像は、記憶媒体208に記録された1つの画像セットに含まれる一方のVR画像である。画面410は、サムネイル表示モードでのディスプレイ205の画面である。画像411~414は、記録されているVR画像の領域のうちの一部または全体を示す。ユーザーは、画像411~414のいずれかに対してタッチ操作をすることで、観賞したいVR画像(画像セット)を選択することができる。また、フリック操作をすることで、サムネイル表示モードにおいて表示するVR画像(画像セット)を変更することができる。ボタン415はユーザーが操作を行うためのソフトウェアボタンであり、ユーザーはボタン415を選択することで、VR画像の表示を終了することができる。なお、このモードでは、天頂補正が行われた画像411~414が表示される。ユーザーの左右の眼のいずれもが同じ表示を見るため立体視による二重像の発生の可能性もなく、天頂補正によってユーザーの画像の見やすさが向上できる。
【0046】
図4(b)に示す平面画像表示モードは、サムネイル表示モードにおいてユーザーが選択した1つのVR画像の画像セットに含まれる一方のVR画像を全体を一画面に表示するモードである。画面420は、サムネイル表示モードにおいてユーザーが選択したVR画像が一画面(平面画像)表示されたディスプレイ205の画面である。ボタン421~424はユーザーが各操作を行うためのソフトウェアボタンである。ボタン421~424のいずれかをユーザーが選択することで、選択したボタンに割り当てられた機能を実行することができる。具体的には、ボタン421をユーザーがタッチすることで前の表示に戻ることができ、ボタン422をユーザーがタッチすることで、表示中のVR画像を一眼VR表示させる(一眼VR表示モードに遷移させる)ことができる。ボタン423,424には、その他の機能が割り当てられる。例えば、ボタン423には外部装置(他のユーザー)とVR画像を共有する機能が割り当てられ、ボタン424には記憶媒体208からVR画像を削除する機能が割り当てられる。なお、このモードでは、天頂補正が行われた画像411が表示されている。このモードでは、ユーザーの左右の眼のいずれもが同じ表示を見るため立体視による二重像の発生の可能性もなく、天頂補正によってユーザーの画像の見やすさが向上できる。
【0047】
図4(c)に示す一眼VR表示モードは、直前に平面画像表示していたVR画像の画像セットに含まれる一方のVR画像に仮想球体にマッピングする変形を行って、その一部領域を表示するモードである。一眼VR表示モードでは、ユーザーによる表示範囲の変更操作に応じて表示範囲を変更することができる。画面430は、一眼VR表示でのディスプレイ205の画面である。ボタン432はユーザーが操作を行うためのソフトウェアボタンであり、ボタン432をユーザーがタッチすることで、表示中のVR画像を二眼VR表示させる(二眼VR表示モードに遷移させる)ことができる。このモードでは、天頂補正がされた画像411の一部の領域が表示されている。このモードでは、ユーザーの左右の眼のいずれもが同じ表示を見るため立体視による二重像の発生の可能性もなく、天頂補正によってユーザーの画像の見やすさが向上できる。
【0048】
図4(d)は、二眼VR表示をユーザーが指示した際に表示する天頂補正に関するガイド表示画面440を示している。ガイド表示441は、二眼VR表示時の天頂補正の実行を有効にするか無効にするかをユーザーに問う(確認する)表示である。ボタン442,443は、ユーザーが操作を行うためのソフトウェアボタンである。ボタン442をユーザーがタッチすると、二眼VR表示時の天頂補正が有効になり、
図4(e)の画面がディスプレイ205に表示される。一方、ボタン443をユーザーがタッチすると、二眼VR表示時の天頂補正が無効になり、
図4(f)の画面がディスプレイ205に表示される。
【0049】
図4(e)および
図4(f)に示す二眼VR表示モードは、直前に一眼VR表示していたVR画像の画像セットを仮想球体にマッピングする変形を行って、その一部領域を並べて表示するモードである。二眼VR表示モードでは、ユーザーによる表示範囲の変更操作に応じて表示範囲を変更することができる。画面450a,450bはそれぞれ、二眼VR表示でのディスプレイ205の画面である。
【0050】
図4(e)に示す画面450aにおける画像451a,452aはともに、VRカメラ100の左光学系で撮像した同一のVR画像であり、天頂補正を施した画像である。つまり、
図4(e)に示す二眼VR表示モードでは、画像セットに含まれるいずれか一方のVR画像が並べて表示される。画像451aが、ユーザーの左目が見るためのVR画像であり、画像452aが、ユーザーの右目が見るためのVR画像である。なお、画像451a,452aには、VRカメラ100の右光学系で撮像したVR画像を利用してもよい。ここで、画像451a,452aは、同じ表示であるため互いに視差を有しない。
図4(e)に示す二眼VR表示では、視差を有さない2枚の画像が表示されるため、ユーザーは立体視を行うことはできない。しかし、ユーザーの左右の眼のいずれもが同じ画像を見るので、2枚のVR画像の間の視差による二重像が発生しないため、天頂補正によってユーザーの画像の見やすさが向上する。
【0051】
図4(f)に示す画面450bにおける、画像451bはVRカメラ100の左光学系で撮像したVR画像であり、画像452bはVRカメラ100の右光学系で撮像したVR画像である。
図4(e)に示す二眼VR表示モードでは、画像セットの両方のVR画像が並べて表示される。つまり、画面450bにおける画像の一方(画像451b)はユーザーの左目により観賞するためのVR画像であり、他方(画像452b)はユーザーの右目により観賞するためのVR画像である。この2つの画像は互いに視差を有するが、天頂補正が施されていない画像である。天頂補正していないので、2つの画像の間に観賞時の重力方向の視差が生じず、二重像などの立体視に関する問題が生じにくい。また、互いに視差を有する画像であるため、立体視が可能である。
【0052】
このように、表示制御装置200は、4つの表示モードのうち二眼VR表示モードの場合以外では、表示するVR画像に対し天頂補正を施し、二眼VR表示モードの場合には、表示するVR画像に対し天頂補正を施すか否かをユーザーに選択させる。より詳細には、本実施形態では、表示制御装置200は、ユーザーの左右の眼が同一の表示を見る場合には天頂補正をVR画像に施し、ユーザーの左右の眼が互いに異なる表示を見る場合には天頂補正をVR画像に施さない。
【0053】
[表示制御の処理について]
以下、表示制御装置200の表示制御の処理について
図5のフローチャートを用いて説明する。表示制御装置200の操作部206に対する、所定のユーザー操作によりVR画像の表示が指示されると、
図5のフローチャートの処理が開始する。
図5のフローチャートおける各処理は、CPU201が不揮発性メモリ203に格納されたプログラムをメモリ202に展開して実行することにより実現される。また、本実施形態では、VRカメラ100が撮像(取得)した画像セット(画像ファイル)に対して、表示制御装置200が
表示制御をすることを想定する。
【0054】
S501において、CPU201は、VRカメラ100が撮像した複数の画像セット(画像ファイル)を記憶媒体208から読み出す(取得する)。本実施形態では、CPU201は、
図4(a)に示すようにサムネイル表示をするために、4つの画像セットを記憶媒体208から読み出す(取得する)。
【0055】
S502において、CPU201は、S501にて読み出した複数の画像セットのそれぞれについての詳細情報を記憶媒体208から読み出す(取得する)。ここで、詳細情報は、例えば、画像セットの傾き情報、撮像時のVRカメラ100の重力方向、撮像時のVRカメラ100の上下方向などの情報である。例えば、撮像時におけるVRカメラ100の上下方向104の重力方向105に対する傾き(撮像時のVRカメラ100の傾き情報)が、画像セットの傾き情報として画像セットにVRカメラ100により付加されて記憶媒体208に記憶される。VRカメラ100は、撮像時におけるVRカメラ100の上下方向104の重力方向105に対する傾きを、VRカメラ100のジャイロセンサなどで取得するとよい。なお、画像セットの傾き情報は、画像セットの撮像時の水平方向に対するVRカメラ100の2つの光学系(レンズ101,102)を結んだ方向の傾きの情報であるとも言える。
【0056】
S503において、CPU201は、読み出した複数の画像セットのそれぞれについて、傾き情報に基づき、傾きのある画像セットであるか否かを判定する。ここで、傾きのある画像セットとは、重力方向105と、VRカメラ100の上下方向104とが平行でない状態で撮像された画像セット(VR画像)である。または、傾きのある画像セットとは、水平方向と、VRカメラ100の2つの光学系(レンズ101,102)を結んだ方向とが平行でない状態で撮像された画像セット(VR画像)である。したがって、CPU201は、VRカメラ100の撮像時の重力方向105と、VRカメラ100の撮像時の上下方向104とが平行であるかによって傾きの有無を判定してもよい。複数の画像セットのうち傾きのある画像セットについては、S504に進み、そうでない画像セットについてはS505に進む。
【0057】
なお、CPU201は、画像セットの傾き情報をVR画像(画像セット)の特徴から求めてもよい。例えば、VR画像に対し既知の直線抽出手法を用いることで直線の特徴を抽出して、直線が多く交わる2点の座標を算出し、この2点を結ぶ線分の位置と傾きでVRカメラの傾きを取得する方法がある。
【0058】
S504において、CPU201は、画像処理部204を制御して、S503にて判定した傾きのある画像セットに含まれるいずれかのVR画像に対して天頂補正を施して、ディスプレイ205にサムネイル表示を行う。S504におけるサムネイル表示では、例えば、
図4(a)の画像411のように正距円筒図法での歪んだ画像が表示される。画像411では、VR画像の全体が表示されている(収まっている)ので表示範囲の変更はできない。画像411は、VR画像の全体が画面に収まったものではなく、正距円筒図法で描かれた長方形のVR画像の中心から所定の正方形の範囲を切り出したものでもよい。
【0059】
S505において、CPU201は、S503にて判定した傾きのない画像セットに含まれるいずれかのVR画像をサムネイル表示でディスプレイ205に表示する。ここで、CPU201は、VR画像に対して天頂補正を施さない。例えば、S505におけるサムネイル表示では、
図4(a)の画像412~414などが表示される。
【0060】
つまり、S503~S505の処理は、複数の画像セットそれぞれについて別々に実行される。より詳細には、S503において、CPU201は、S501にて読み出された
複数の画像セットのそれぞれに対して、傾きのある画像セットであるか否かを判定する。そして、複数の画像セットのそれぞれについて、傾きのある画像セットに対してはS504にて天頂補正がされてサムネイル表示における1つの画像として表示される。傾きのない画像セットに対しては天頂補正がされずにサムネイル表示における1つの画像として表示される。
【0061】
S506において、CPU201は、サムネイル表示モードの終了をユーザーが指示したか否かを判定する。ここで、CPU201は、
図4(a)のボタン415をユーザーが押下した場合に、サムネイル表示モードの終了を指示したと判定できる。サムネイル表示モードの終了をユーザーが指示した場合には、
図5のフローチャートの処理が全て終了し、そうでない場合にはS507に進む。
【0062】
S507において、CPU201は、サムネイル表示された複数のVR画像(
図4(a)では画像411~画像414)のうちのいずれかのVR画像を選択するタッチ操作があったか否かを判定する。当該タッチ操作は、タッチダウン操作やタッチアップ操作である。タッチ操作があった場合にはS508に進み、そうでない場合にはS506に進む。なお、以下では、S507にてユーザーが選択したVR画像を「選択画像」とし、選択画像の画像セットを「選択画像セット」として説明する。
【0063】
S508において、CPU201は、選択画像セットの傾き情報に基づき、選択画像セットが傾きのある画像セットであるか否かを判定する。選択画像セットが傾きのある画像セットである場合にはS509に進み、そうでない場合にはS510に進む。
【0064】
S509において、CPU201は、画像処理部204を制御して、
図4(b)に示すように、選択画像に対して天頂補正を施してディスプレイ205に平面表示を行う。
図4(b)では、正距円筒図法での歪んだVR画像が表示されている。ここでは、VR画像の全体が画面に収まって表示されているので表示範囲の変更はできない。
【0065】
S510において、CPU201は、選択画像に対して天頂補正を施さずディスプレイ205に平面表示を行う。
【0066】
S511において、CPU201は、ユーザーによる一眼VR表示の指示があったか否かを判定する。CPU201は、例えば、
図4(b)のボタン422へのユーザーのタッチがあった場合に、一眼VR表示の指示があったと判定できる。一眼VR表示の指示があった場合にはS513に進み、そうでない場合にはS512に進む。
【0067】
S512において、CPU201は、ユーザーによる平面表示の終了の操作があったか否かを判定する。例えば、CPU201は、
図4(b)のボタン421へのユーザーのタッチがあった場合には、平面表示の終了の操作があったと判定できる。平面表示の終了の操作があった場合にはS503に進み、そうでない場合にはS511に進む。
【0068】
S513において、CPU201は、選択画像セットが傾きのある画像セットか否かを判定する。選択画像セットが傾きのある画像セットである場合にはS514に進み、そうでない場合にはS515に進む。
【0069】
S514において、CPU201は、画像処理部204を制御して、
図4(c)に示すように、選択画像に対して天頂補正を施して、ディスプレイ205に一眼VR表示を行う。
図4(c)では、仮想天球にマッピングされたVR画像を表示するといった画像を変形する処理を施したVR画像の一部が表示されており、歪みが除去されている。
【0070】
S515において、CPU201は、選択画像に対して天頂補正を施さずディスプレイ205に一眼VR表示を行う。
【0071】
S516において、CPU201は、ユーザーによる表示範囲の変更操作があったか否かを判定する。表示範囲の変更操作は、タッチパネル206aによるフリック操作や表示制御装置200の姿勢の変更である。表示範囲の変更操作があった場合にはS517に進み、そうでない場合にはS518に進む。
【0072】
S517において、CPU201は、画像処理部204を制御して、ディスプレイ205に表示する選択画像の範囲を変更する。
【0073】
S518において、CPU201は、ユーザーによる二眼VR表示の指示があったか否かを判定する。CPU201は、例えば、
図4(c)のボタン432へのユーザーのタッチがあった場合に、二眼VR表示の指示があったと判定できる。二眼VR表示の指示があった場合にはS520に進み、そうでない場合にはS519に進む。
【0074】
S519において、CPU201は、ユーザーによる一眼VR表示の終了の操作があったか否かを判定する。例えば、CPU201は、
図4(c)のボタン421へのユーザーのタッチがあった場合には、一眼VR表示の終了の操作があったと判定できる。一眼VR表示の終了の操作があった場合にはS508に進み、そうでない場合にはS516に進む。
【0075】
S520において、CPU201は、選択画像セットが傾きのある画像セットか否かを判定する。選択画像セットが傾きのある画像セットである場合にはS521に進み、そうでない場合にはS524に進む。
【0076】
S521において、CPU201は、
図4(d)に示すように、選択画像に対し天頂補正を施すか否かをユーザーに選択させるためのガイド表示441をディスプレイ205に行う。
【0077】
S522において、CPU201は、ガイド表示441に対するユーザー入力を判定する。操作部206によりユーザーが天頂補正をする選択を行った場合はS523に進み、ユーザーが天頂補正をしない選択を行った場合はS524に進む。
【0078】
なお、S521,S522の処理は必須ではなく、例えば、S520において選択画像セットが傾きのある画像セットである場合(S520Yes)には、S523に進んでもよい。
【0079】
S523において、CPU201は、画像処理部204を制御して、選択画像に対して天頂補正を施して、ディスプレイ205に二眼VR表示を行う(
図4(e))。S523における二眼VR表示では、左右の眼で知覚するためのVR画像は視差がない同じ画像である。なお、S523において左右同じ画像が表示されるため立体視はできないが、二重像が見えるなどの視認性の破綻がないという効果がある。
【0080】
S524において、CPU201は、選択画像セットの両方の画像に対して天頂補正を施さずディスプレイ205に二眼VR表示を行う(
図4(f))。S524における二眼VR表示では、左右の眼で視差が生ずる異なるVR画像が左右に表示される。このように表示することによれば、視差あり画像なので立体視できることに加えて、天頂補正していないため視認性の破綻もないという効果がある。
【0081】
S525において、CPU201は、ユーザーによる表示範囲の変更操作があったか否かを判定する。表示範囲の変更操作は、タッチパネル206aによるフリック操作や表示制御装置200の姿勢変更である。表示範囲の変更操作があった場合にはS526に進み、そうでない場合にはS527に進む。
【0082】
S526において、CPU201は、画像処理部204を制御して、ディスプレイ205に表示するVR画像の範囲を変更する。
【0083】
S527において、CPU201は、二眼VR表示を終了するためのユーザーによる操作があったか否かを判定する。CPU201は、例えば、
図4(e)または
図4(f)のボタン421へのユーザーのタッチがあった場合には、二眼VR表示の終了の操作があったと判定できる。二眼VR表示の終了の操作があった場合にはS513に進み、そうでない場合にはS525に進む。
【0084】
以上の制御フローによれば、ユーザーが二眼VR表示モードを指示した場合のみ、表示するVR画像の天頂補正を施すか否かをユーザーに選択させる。したがって、本実施形態によれば、傾いて撮像されたVR画像を再生モードごとにユーザーが最も見やすくなるように表示することができる。平面表示モード、サムネイル表示モード、一眼VR表示モードの場合、天頂を補正したVR画像を提示できユーザーが観賞や操作を行いやすくなる。また、視差ある画像を並べて表示するような二眼VR表示モードの場合、天頂補正によって生じる不快感を伴う二重像を解消することができる。このことにより、傾いて撮像されたVR画像を再生場面ごとにユーザーが最も見やすくなるように表示を制御する表示制御装置(電子機器)を実現することができる。
【0085】
また、本実施形態では、VR画像に対して天頂補正をしないのは、二眼VR表示モードの場合のみである。ここで、二眼VR表示モードでは、ユーザーがVRゴーグル230(HMD)を装着している場合に、ユーザーの左右の眼がそれぞれ、画面の左右のVR画像のうち対応する画像を見ることができる。つまり、ユーザーがVRゴーグル230を装着している場合に、VR画像に天頂補正がされると、二重像の発生の可能性がある。従って、表示制御装置200またはVRゴーグル230における装着検知部がVRゴーグル230のユーザーの装着を検知した場合には、CPU201は、VR画像に天頂補正を施さず、それ以外の場合にはVR画像に天頂補正を施すようにしてもよい。ここで、装着検知部は、例えば、ディスプレイ205(表示制御装置200)からユーザーの眼までの距離が所定距離以内にあれば、VRゴーグル230の装着を検知してもよい。また、装着検知部は、例えば、VRゴーグル230とユーザーの頭部との接触を検知すると、VRゴーグル230の装着を検知してもよい。なお、CPU201は、装着検知部がVRゴーグル230の装着を検知した場合には表示モードを、左右で視差ある画像を表示する二眼VR表示モードに切り替えてもよい。CPU201は、装着検知部がVRゴーグル230の装着を検知していない場合には表示モードを、左右で視差ある画像を表示する二眼VR表示モード以外の表示モードに切り替えてもよい。
【0086】
なお、CPU201が行うものとして説明した上述の各種制御は1つのハードウェアが行ってもよいし、複数のハードウェア(例えば、複数のプロセッサや回路)が処理を分担することで、装置全体の制御を行ってもよい。
【0087】
また、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0088】
また、上述した実施形態においては、本発明を表示制御装置に適用した場合を例にして説明したが、これはこの例に限定されずユーザーの左右の眼のそれぞれのためのVR画像を表示可能である表示装置を制御する電子機器であれば適用可能である。すなわち、本発明は、パーソナルコンピュータやPDA、携帯電話端末や携帯型の画像ビューワ、ヘッドマウントディスプレイ、ディスプレイを備えるプリンタ装置、デジタルフォトフレーム、音楽プレーヤー、ゲーム機、電子ブックリーダーなどに適用可能である。
【0089】
なお、上記の各実施形態の各機能部は、個別のハードウェアであってもよいし、そうでなくてもよい。2つ以上の機能部の機能が、共通のハードウェアによって実現されてもよい。1つの機能部の複数の機能のそれぞれが、個別のハードウェアによって実現されてもよい。1つの機能部の2つ以上の機能が、共通のハードウェアによって実現されてもよい。また、各機能部は、ASIC、FPGA、DSPなどのハードウェアによって実現されてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、装置が、プロセッサと、制御プログラムが格納されたメモリ(記憶媒体)とを有していてもよい。そして、装置が有する少なくとも一部の機能部の機能が、プロセッサがメモリから制御プログラムを読み出して実行することにより実現されてもよい。
【0090】
(その他の実施形態)
本発明は、上記の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0091】
200:表示制御装置、201:CPU、205:ディスプレイ