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特許7527788無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20240729BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20240729BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20240729BHJP
   H04M 1/72505 20210101ALI20240729BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W36/08
H04W88/08
H04M1/72505
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020000635
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111817
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】岩田 聡大
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0141685(US,A1)
【文献】特開2009-267594(JP,A)
【文献】特開2015-070571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04M 1/00
H04M 1/72- 1/72516
H04M 11/00-11/10
H04L 12/28
H04L 12/44-12/46
G06F 3/09- 3/12
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線親機として動作する無線通信装置であって、
無線子機として動作するクライアント端末と無線で通信する通信手段と、
前記通信手段が前記クライアント端末と無線で接続中に、当該クライアント端末が無線親機として利用する無線通信装置を切り替えるための切り替え要求を当該クライアント端末から前記通信手段が受信した場合に、前記クライアント端末が新たに無線親機として利用することを要求する被要求無線通信装置が前記クライアント端末に接続することを促すために、当該無線通信装置が前記クライアント端末との接続で使用している無線接続情報であって、少なくとも当該無線通信装置のSSID及びPreSharedKeyのうちのいずれかを含む無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信する送信手段と
前記通信手段が前記切り替え要求を受信すると、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを判断する判断手段と、
前記被要求無線通信装置が無線親機として動作不可能な場合に、前記クライアント端末に前記被要求無線通信装置が無線親機として動作不可能なことを通知する通知手段と
を備え
前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能な場合に、前記送信手段は、無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信し、
前記判断手段は、前記通信手段が前記切り替え要求を受信すると、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを前記被要求無線通信装置に問い合わせ、問い合わせから一定時間以内に前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能であることを示す応答を前記被要求無線通信装置から受信した場合に、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能であると判断する
とを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記無線接続情報は、少なくとも前記無線通信装置の認証方式及びIPアドレスのうちのいずれかを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記送信手段が前記無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信した後に、前記通信手段は、前記クライアント端末に対する無線親機としての動作を停止する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記被要求無線通信装置の候補として当該無線通信装置とネットワークで接続された無線通信装置の一覧を前記クライアント端末に提供する提供手段
をさらに備えることを特徴とする
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記クライアント端末からの要求に応答して、前記提供手段は前記一覧を前記クライアント端末に提供する
ことを特徴とする請求項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線親機として動作する無線通信装置であって、
無線子機として動作するクライアント端末が他の無線通信装置である旧利用無線通信装置を無線親機として無線で接続中に、前記旧利用無線通信装置から前記旧利用無線通信装置が前記クライアント端末との接続で使用している無線接続情報であって、少なくとも前記旧利用無線通信装置のSSID及びPreSharedKeyのうちのいずれかを含む無線接続情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が前記無線接続情報を受信した場合に、前記無線接続情報を用いて、前記クライアント端末と無線で通信する通信手段と
を備え
前記無線接続情報は、少なくとも前記旧利用無線通信装置の認証方式及びIPアドレスのうちのいずれかを含み、
前記通信手段は、前記旧利用無線通信装置が前記クライアント端末に対する無線親機としての動作を停止したことを確認した後に、前記無線接続情報を用いて、前記クライアント端末と無線で通信する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
当該無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果を前記旧利用無線通信装置に通知する通知手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
無線親機として動作する無線通信装置であって、
無線子機として動作するクライアント端末が他の無線通信装置である旧利用無線通信装置を無線親機として無線で接続中に、前記旧利用無線通信装置から前記旧利用無線通信装置が前記クライアント端末との接続で使用している無線接続情報であって、少なくとも前記旧利用無線通信装置のSSID及びPreSharedKeyのうちのいずれかを含む無線接続情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が前記無線接続情報を受信した場合に、前記無線接続情報を用いて、前記クライアント端末と無線で通信する通信手段と、
当該無線通信装置が過去に使用した過去の無線接続情報または当該無線通信装置に固有の無線接続情報を記憶する記憶手段
え、
前記通信手段が前記クライアント端末に対する無線親機としての動作を停止した後に、前記通信手段は、前記過去の無線接続情報または前記固有の無線接続情報を用いた無線親機としての動作が可能な状態になる
ことを特徴とする線通信装置。
【請求項9】
無線接続情報を前記記憶手段に書き込む書き込み手段をさらに備え、
前記記憶手段は、当該無線通信装置が使用する無線接続情報を記憶する接続情報領域と、前記過去の無線接続情報または前記固有の無線接続情報を記憶するバックアップ領域とを有し、
前記書き込み手段は、前記通信手段が前記クライアント端末に対する無線親機として動作する前に、前記過去の無線接続情報または前記固有の無線接続情報を前記接続情報領域から読み出して、前記バックアップ領域に書き込んだ後、前記旧利用無線通信装置から受信した前記無線接続情報を前記接続情報領域に書き込み、
前記書き込み手段は、前記通信手段が前記クライアント端末に対する無線親機としての動作を停止した後に、前記過去の無線接続情報または前記固有の無線接続情報を前記バックアップ領域から読み出して、前記接続情報領域に書き込む
ことを特徴とする請求項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の無線通信装置と、
請求項からのいずれか1項に記載の無線通信装置と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
無線子機として動作するクライアント端末に対して無線親機として無線で通信することと、
前記クライアント端末と無線で接続中に、当該クライアント端末が無線親機として利用する無線通信装置を切り替えるための切り替え要求を当該クライアント端末から受信することと、
前記切り替え要求を当該クライアント端末から受信した場合に、前記クライアント端末が新たに無線親機として利用することを要求する被要求無線通信装置が前記クライアント端末に接続することを促すために、当該無線通信装置が前記クライアント端末との接続で使用している無線接続情報であって、少なくとも当該無線通信装置のSSID及びPreSharedKeyのうちのいずれかを含む無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信することと
前記切り替え要求を受信すると、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを判断する判断することと、
前記被要求無線通信装置が無線親機として動作不可能な場合に、前記クライアント端末に前記被要求無線通信装置が無線親機として動作不可能なことを通知することと
を有し、
前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能な場合に、無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信し、
前記切り替え要求を受信すると、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを前記被要求無線通信装置に問い合わせ、問い合わせから一定時間以内に前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能であることを示す応答を前記被要求無線通信装置から受信した場合に、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能であると判断する
とを特徴とする無線通信方法。
【請求項12】
無線親機として動作する無線通信装置のための無線通信方法であって、
無線子機として動作するクライアント端末が他の無線通信装置である旧利用無線通信装置を無線親機として無線で接続中に、前記旧利用無線通信装置から前記旧利用無線通信装置が前記クライアント端末との接続で使用している無線接続情報であって、少なくとも前記旧利用無線通信装置のSSID及びPreSharedKeyのうちのいずれかを含む無線接続情報を受信することと、
前記無線接続情報を受信すると、前記無線接続情報を用いて、前記クライアント端末に対して無線親機として無線で通信することと
を有し、
前記無線接続情報は、少なくとも前記旧利用無線通信装置の認証方式及びIPアドレスのうちのいずれかを含み、
前記旧利用無線通信装置が前記クライアント端末に対する無線親機としての動作を停止したことを確認した後に、前記無線接続情報を用いて、前記クライアント端末と無線で通信する
とを特徴とする無線通信方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1からのいずれか1項に記載された無線通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、請求項からのいずれか1項に記載された無線通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無線接続を容易に行うため、通信装置が第1のAP(無線親機、アクセスポイント)に接続した際に、第1のAPと同一ネットワーク上にある第2のAPの無線接続情報を通信装置が取得し、第2のAPとの接続に利用する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-23441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、クライアント端末が利用する無線親機をクライアント端末が容易に切り替えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る無線通信装置の一態様は、無線親機として動作する無線通信装置であって、無線子機として動作するクライアント端末と無線で通信する通信手段と、前記通信手段が前記クライアント端末と無線で接続中に、当該クライアント端末が無線親機として利用する無線通信装置を切り替えるための切り替え要求を当該クライアント端末から前記通信手段が受信した場合に、前記クライアント端末が新たに無線親機として利用することを要求する被要求無線通信装置が前記クライアント端末に接続することを促すために、当該無線通信装置が前記クライアント端末との接続で使用している無線接続情報であって、少なくとも当該無線通信装置のSSID及びPreSharedKeyの内のいずれかを含む無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信する送信手段と、前記通信手段が前記切り替え要求を受信すると、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを判断する判断手段と、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作不可能な場合に、前記クライアント端末に前記被要求無線通信装置が無線親機として動作不可能なことを通知する通知手段とを備える。前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能な場合に、前記送信手段は、無線接続情報を前記被要求無線通信装置に送信する。前記判断手段は、前記通信手段が前記切り替え要求を受信すると、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能か否かを前記被要求無線通信装置に問い合わせ、問い合わせから一定時間以内に前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能であることを示す応答を前記被要求無線通信装置から受信した場合に、前記被要求無線通信装置が無線親機として動作可能であると判断する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの例を示すブロック図。
図2】本発明の実施形態に係る無線通信装置であるネットワークカメラのブロック図。
図3】実施形態に係る無線通信システムの動作の例を示すシーケンス図。
図4】実施形態に係る無線通信システムの動作の他の例を示すシーケンス図。
図5】クライアント端末であるモバイル端末に表示されるネットワークカメラの切り替え案内画面の例を示す図。
図6】ネットワークカメラの切り替えができない場合に、モバイル端末に表示される通知画面の例を示す図。
図7】モバイル端末が現在APとして利用しているネットワークカメラが他のネットワークカメラに無線接続情報を引き渡す動作の例を示すフローチャート。
図8】クライアント端末に表示される切り替え可能カメラ一覧に必要な情報をネットワークカメラが生成する動作の例を示すフローチャート。
図9】ユーザーが次にAPとして利用するのを希望するネットワークカメラが実行する動作の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下の説明では、無線親機として動作する無線通信装置の例として、ネットワークに接続されたネットワークカメラを説明する。
以下に説明する実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態では、無線子機として動作するクライアント端末が、無線親機として使用するネットワークカメラを切り替えるための切り替え要求を、現在クライアント端末が接続中のネットワークカメラに送信する。切り替え要求を受信したネットワークカメラは、使用中の無線接続情報を他のネットワークカメラに送信し、無線接続情報を受信したネットワークカメラが当該無線接続情報を用いて、クライアント端末と無線で通信する。
【0008】
(無線通信システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成の例を示すブロック図である。無線通信システムは、複数のネットワークカメラ1a,1b…、モバイル端末3、情報端末4、無線ネットワーク5、およびネットワーク6を有する。
ネットワークカメラ1a,1b…の各々は、撮像機能だけでなく、無線LAN(Local Area Network)機能(例えば、Wi-Fi機能)を搭載しており、特にAP(無線親機、アクセスポイント)モードで動作する機能を有する。各ネットワークカメラは、接続されたネットワークを介して、撮像した映像を他の装置に送信することができ、他の装置から各種の内部パラメータの設定コマンドおよび操作コマンドを受信することができる。受信した設定コマンドに従って、各ネットワークカメラは内部パラメータを設定する。また、受信した操作コマンドに従って、各ネットワークカメラは、撮像方向または撮像倍率を変更する。
【0009】
モバイル端末3は、例えばスマートフォンまたはタブレット端末である。モバイル端末3は、APモードで起動したネットワークカメラ1a,1b…のいずれかに無線子機、すなわちクライアント端末として接続する。モバイル端末3のユーザーは、ネットワークカメラ1a,1b…のいずれをAPとして利用するかを選択することができる。
モバイル端末3は、表示装置と表示装置を制御するウェブブラウザを有しており、APであるネットワークカメラから供給される映像ならびにネットワークカメラの内部パラメータの設定画面およびAPであるネットワークカメラの操作画面を表示装置に表示することができる。モバイル端末3のユーザーは、APであるネットワークカメラの簡易的な設定(例えば画質調整)を行うとともに、撮像方向および撮像倍率を変更することができる。
情報端末4は、複数のネットワークカメラ1a,1b…にメイン管理装置として常時接続する。情報端末4は、表示装置を有しており、ネットワークカメラ1a,1b…の各々から供給される映像ならびにネットワークカメラの内部パラメータの設定画面を表示装置に表示することができる。情報端末4のユーザーは、情報端末4を用いて、映像の処理および各ネットワークカメラの包括的な設定を行うことができる。
【0010】
無線ネットワーク5は、無線LANであって、モバイル端末3にAPとして利用されるネットワークカメラ1a,1b…のいずれかとモバイル端末3を接続する。
ネットワーク6は、複数のネットワークカメラ1a,1b…と情報端末4を接続する。以下の説明では、ネットワーク6は有線LANであるが、ネットワーク6での通信形態は、無線であってもよい。
【0011】
(ネットワークカメラの構成)
図2は、本発明の実施形態に係る各ネットワークカメラの構成の例を示すブロック図である。ネットワークカメラは、撮像部11、画像処理部12、映像出力部13、システム制御部14、記憶部15、有線通信処理部17、無線通信処理部16、およびシリアル通信処理部18を有する。
撮像部11は、レンズおよび撮像素子を有し、被写体の撮像および撮像で得られた画像信号の電気信号への変換を行う。
画像処理部12は、撮像部11によって変換された電気信号に画像処理、圧縮符号化処理を行い、画像データを生成する。
映像出力部13は、画像処理部12によって生成された画像データを外部の表示装置(モバイル端末3および情報端末4の表示装置)に適合する形式に変換する。その形式とは、例えばHDMI(High-Definition Multimedia Interface)またはSDI(Serial Digital Interface)(登録商標)といった映像出力インターフェースに適合する形式である。
【0012】
システム制御部14は、ネットワークカメラの統括的な制御部であって、例えばCPU(Central Processing Unit)である。システム制御部14は、ネットワークカメラに伝達されたコマンドを解析し、コマンドに応じた処理を行う。例えば、システム制御部14は、無線通信処理部16を制御し、APモードを起動する。これにより、ネットワークカメラはモバイル端末3にAPとして利用される。
記憶部15は、不揮発性メモリーであり、画質調整、撮像方向および撮像倍率のパラメータ、ならびにネットワーク上のネットワークカメラの設定のための設定値などを記憶する。システム制御部14は、ネットワークカメラを再起動などした場合でも、記憶部15に記憶された以前のパラメータおよび設定値を読み出して使用することが可能である。
記憶部15のメモリー領域は、接続情報領域とバックアップ領域を有する。接続情報領域は、当該ネットワークカメラがAPとして動作する場合に使用する無線接続情報を記憶する。バックアップ領域は、当該ネットワークカメラがAPとして過去に使用した過去の無線接続情報または当該ネットワークカメラに固有の無線接続情報を記憶する。
また、記憶部15は、システム制御部14が処理を実行するために必要なプログラムを記憶する。つまり、システム制御部14は、記憶部15から必要なプログラムを読み出して、読み出されたプログラムを実行することで各種の機能動作を実現する。但し、プログラムは、パラメータおよび設定値を記憶する記憶部15と異なるメモリー装置に記憶してもよい。
【0013】
無線通信処理部16は、無線LAN、すなわち無線ネットワーク5によるネットワーク通信の送受信処理を行う。無線通信処理部16は、AP機能を実行するAPモードと、STA(無線子機、クライアント)機能を実行するSTAモードで動作することが可能である。APモードが起動されると、無線通信処理部16は、無線子機として動作するモバイル端末3と無線で通信する。ネットワークカメラがAPモードで起動することにより、ユーザーは、ネットワークカメラの初期設置時でも複雑なネットワーク環境構築や配線を気にすることなく、ネットワークカメラにアクセスすることができる。すなわち、モバイル端末3のユーザーは、容易にネットワークカメラで撮像された映像の確認ならびにネットワークカメラの設定および操作をすることができる。
有線通信処理部17は、ネットワーク6がイーサネット(登録商標)である場合に使用される。有線通信処理部17は、イーサネットによるネットワーク通信の送受信処理を行う。
シリアル通信処理部18は、ネットワーク6がシリアル通信に対処するネットワークである場合に使用される。シリアル通信処理部18は、例えばRS―232Cといったシリアル通信インターフェースを用いて、ネットワーク通信の送受信処理を行う。
【0014】
以上の構成の下、ネットワークカメラは、無線通信処理部16を用いて、無線ネットワーク5を介してモバイル端末3と無線通信を行い、有線通信処理部17またはシリアル通信処理部18を用いて、ネットワーク6を介して情報端末4と有線通信を行う。
【0015】
(無線通信システムでの概略動作)
図3および図4を参照して、実施形態に係る無線通信システムにおけるモバイル端末3が利用するネットワークカメラを切り替える動作の手順を説明する。この動作は、ネットワークカメラがAPモードで動作し、無線子機としてのモバイル端末3と無線で接続中に実行される。
以下の説明では、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラをネットワークカメラ1aとする。
【0016】
まず、モバイル端末3は、モバイル端末3がAPとして利用するネットワークカメラを切り替えるための切り替え要求をネットワークカメラ1aに送信する(S1)。切り替え要求には、モバイル端末3が次にAPとして利用することを要求する被要求無線通信装置であるネットワークカメラが指定されている。切り替え要求は、無線ネットワーク5を介して、モバイル端末3からネットワークカメラ1aに送信される。以下の説明では、モバイル端末3のユーザーが次にAPとして利用するのを希望するネットワークカメラをネットワークカメラ1bとする。
【0017】
ネットワークカメラ1aは、切り替え要求を受信すると、切り替え要求で指定された被要求無線通信装置であるネットワークカメラ1bにネットワーク6を介してAPモード起動可否問い合わせを送信する(S2)。APモード起動可否問い合わせは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動可能であるか否かをネットワークカメラ1bに問い合わせる。
APモード起動可否問い合わせを受信すると、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1b自身がAPモードを起動可能であるか否かを確認する(S3)。例えば、情報端末4のユーザーが管理者権限によってAPモードの起動を禁止するようネットワークカメラ1bを設定した場合、ネットワークカメラ1bはAPモードを起動することが不可能である。このような設定は、ネットワークカメラ1bの記憶部15の特定のメモリー領域に記憶されている。ネットワークカメラ1bは、このメモリー領域を参照することにより、ネットワークカメラ1b自身がAPモードを起動可能であるか否かを確認することができる。
【0018】
ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが不可能である場合、ネットワークカメラ1bは、ネットワーク6を介して、そのことを示すAPモード起動可否応答をネットワークカメラ1aに返信する(S4)。この結果を受信すると、ネットワークカメラ1aは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが不可能であると判断し、無線ネットワーク5を介して、モバイル端末3に切り替え不可通知を送信する(S5)。
また、S2の後、一定時間以内に、ネットワークカメラ1aがAPモード起動可否応答を受信しなかった場合にも、ネットワークカメラ1aは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが不可能であると判断する。したがって、ネットワークカメラ1aは、無線ネットワーク5を介して、モバイル端末3に切り替え不可通知を送信する。例えば、ネットワークカメラ1bの電源が入っていない場合、またはネットワークカメラ1bがネットワーク6に接続されていない場合には、ネットワークカメラ1bは、APモード起動可否問い合わせを受信せず、APモード起動可否応答を送信することもない。
切り替え不可通知を受信すると、モバイル端末3は、ユーザーが希望するネットワークカメラ1bがAPとして利用不可能であることをユーザーに通知する。
【0019】
一方、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが可能である場合、ネットワークカメラ1bは、ネットワーク6を介して、そのことを示すAPモード起動可否応答をネットワークカメラ1aに返信する(図4のS6)。S2の後、一定時間以内に、この結果を受信すると、ネットワークカメラ1aは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが可能であると判断し、ネットワーク6を介して、ネットワークカメラ1bに無線接続情報を送信する(S7)。
【0020】
但し、ネットワークカメラ1aによるネットワークカメラ1bのAPモード起動可否の上記の判断手法は一例であり、この例には限定されない。例えば、ネットワーク6がシリアル通信に対処するネットワークである場合に、シリアル通信のためのネットワークカメラ制御用プロトコルを使用してもよい。具体的には、ネットワークカメラ1bから送信される信号の特定のビットを判断フラグとして用いて、ネットワークカメラ1aは、ネットワークカメラ1bのAPモード起動可否を判断してもよい。
あるいは、ネットワークカメラ1aは、ネットワーク6を介して、情報端末4にネットワークカメラ1bのAPモード起動可否を問い合わせてもよい。例えば、問い合わせに応答して、情報端末4のユーザーがネットワークカメラ1bをモバイル端末3のためのAPとして起動することを許可または拒否し、その結果を情報端末4がネットワークカメラ1aに送信してもよい。
【0021】
S7で送信される無線接続情報とは、ネットワークカメラ1aがモバイル端末3との接続で使用しているネットワークカメラ1aの無線接続情報である。無線LANを介して機器同士が通信を行うためには、機器同士で登録処理を行い、無線通信経路を構築する必要がある。また、必要に応じてデータ暗号化を行うための情報交換処理(ペアリング)を伴う場合がある。本実施形態における無線接続情報は、登録処理のための情報とペアリングのための情報を含む。本実施形態における無線接続情報は、少なくともネットワークカメラ1aのSSID、PreSharedKey、無線認証方式、IPアドレスを含む。このようにして、ネットワークカメラ1aは、ネットワークカメラ1bがネットワークカメラ1aの代わりに新たにAPとしてモバイル端末3に接続することを促す。
無線接続情報をネットワークカメラ1aから受信すると、ネットワークカメラ1bは、記憶部15の特定のメモリー領域(接続情報領域)にネットワークカメラ1aの無線接続情報を書き込む(S8)。上記の通り、接続情報領域は、ネットワークカメラがAPとして動作する場合に使用する無線接続情報を記憶する。
【0022】
S7の後、ネットワークカメラ1aは、APモードを停止し(S9)、ネットワーク6を介して、ネットワークカメラ1aがAPモードを停止したことをネットワークカメラ1bに通知する(S10)。この通知を受信すると、ネットワークカメラ1bは、S8で記憶部15に書き込んだネットワークカメラ1aの無線接続情報を用いて、APモードを起動する(S11)。そして、ネットワークカメラ1bは、APとしてモバイル端末3と無線ネットワーク5を介して無線接続し、無線通信を開始する(S12)。したがって、ネットワークカメラ1aの無線接続情報がネットワークカメラ1bに円滑に引き継がれる。そして、無線子機であるモバイル端末3におけるユーザーによる無線接続情報の設定操作をすることなく、モバイル端末3はネットワークカメラ1bと無線接続を確立することができる。このようにして、モバイル端末3はAPを容易に切り替えることが可能であり、ユーザーの利便性を高めることができる。
【0023】
ネットワークカメラ1aがAPモードを停止したことを確認した後に、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動するのは、同じ無線接続情報(例えばSSID)を用いた2つのAPが同時に存在することを防止するためである。ネットワークカメラ1bによるネットワークカメラ1aのAPモード停止を確認する上記の手法は一例であり、この例には限定されない。例えば、ネットワーク6がシリアル通信に対処するネットワークである場合に、シリアル通信のためのネットワークカメラ制御用プロトコルを使用してもよい。具体的には、ネットワークカメラ1aから送信される信号の特定のビットを判断フラグとして用いて、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1aのAPモード停止を確認してもよい。
あるいは、ネットワークカメラ1bは、ネットワーク6を介して、情報端末4にネットワークカメラ1aがAPモードを停止したか否かを問い合わせてもよい。
【0024】
モバイル端末3との無線通信終了後、ネットワークカメラ1bは、APモードを停止し(S13)、旧設定に復帰する(S14)。すなわち、ネットワークカメラ1bは、カメラ1aの無線接続情報を使用する前にカメラ1bが使用した過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を用いたAPとしての動作が可能な状態になる。具体的には、ネットワークカメラ1bは、記憶部15のバックアップ領域から過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を読み出して、記憶部15の接続情報領域に書き込む。これにより、記憶部15の接続情報領域に記憶されていたカメラ1aの無線接続情報は、過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報で上書きされる。したがって、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1aから引き継がれた無線接続情報を廃棄し、その無線接続情報が引き継がれる前の状態に復帰する。
過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報は、S8の前に、ネットワークカメラ1bによって記憶部15の接続情報領域から読み出されて、バックアップ領域に書き込まれている。これにより、S8でネットワークカメラ1bが過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を完全に失うことが防止される。S14では、ネットワークカメラ1bは、バックアップ領域から過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を読み出して、接続情報領域に記憶されていたカメラ1aの無線接続情報を過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報で置換する。
【0025】
(ネットワークカメラの切り替え案内画面)
図5は、モバイル端末3の表示装置に表示されるネットワークカメラの切り替え案内画面の例を示す。この切り替え案内画面はS1(図3および図4参照)の前に表示される。カメラの切り替え案内画面は、切り替え可能カメラ一覧20と切り替えボタン21を有する。
切り替え可能カメラ一覧20は、モバイル端末3がAPとして利用可能なネットワークカメラの候補を列挙する。ネットワークカメラの候補は、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラとネットワーク6で接続された他のネットワークカメラである。
切り替え可能カメラ一覧20は、個々のネットワークカメラの候補を識別するために、カメラIDのほか、カメラのMAC(Media Access Control)アドレスおよび機種名といった項目を有する。但し、図示の切り替え可能カメラ一覧20は一例であり、個々のネットワークカメラの候補を識別できる情報であれば、切り替え可能カメラ一覧20に含まれる項目の内容は限定されない。
【0026】
モバイル端末3のユーザーは、ウェブブラウザを用いて、切り替え可能カメラ一覧20に提示されたカメラの候補の1つ(新たにAPとして利用することを要求するネットワークカメラ)を選択し、切り替えボタン21を押す。これにより、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラ(例えば、ネットワークカメラ1a)にモバイル端末3から上記の切り替え要求が送信される。
モバイル端末3で切り替え可能カメラ一覧20を表示するために必要な情報は、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラ(例えば、ネットワークカメラ1a)から提供される。この情報は、例えばモバイル端末3からの要求に応答して、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラから提供される。この情報の生成方法の詳細については後述する。
【0027】
(ネットワークカメラの切り替えができないことを通知する画面)
図6は、ネットワークカメラの切り替えができない場合に、モバイル端末3の表示装置に表示される通知画面の例を示す。この画面は、モバイル端末3が切り替え不可通知(図3のS5)を受信すると、表示される。このようにして、モバイル端末3は、ユーザーがAPとして利用するのを希望するネットワークカメラ(例えば、ネットワークカメラ1b)がAPとして利用不可能であることをユーザーに通知する。
但し、図示の通知画面は一例であり、所望のネットワークカメラがAPとして利用不可能であることを他の手法でユーザーに通知してもよい。例えば、モバイル端末3に搭載されたLED(light emitting diode)の点滅パターンによって、ユーザーに通知してもよい。あるいは、モバイル端末3ではなく、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラまたは新たにAPとして利用することを要求するネットワークカメラに搭載されたLEDの点滅パターンによって、ユーザーに通知してもよい。
【0028】
(ネットワークカメラが他のネットワークカメラに無線接続情報を引き渡す動作)
図7は、モバイル端末3から受信した切り替え要求に従って、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラが実行する動作の例を示す。この動作は、モバイル端末3がAPとしてのネットワークカメラに無線で接続中に実行される。この動作は、当該ネットワークカメラのシステム制御部14が無線通信処理部16および有線通信処理部17またはシリアル通信処理部18を制御することによって実行される。
以下の説明では、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラをネットワークカメラ1aとする。
【0029】
ネットワークカメラ1aがモバイル端末3から切り替え要求を受信したと判断すると(S20)、動作はS21に進む。S21で、ネットワークカメラ1aは、切り替え要求で指定された(モバイル端末3のユーザーに選択された)カメラがAPモードを起動可能であるか否かを判断する。この判断の手法は上記の通りである。
S21の判断が否定であれば、ネットワークカメラ1aは、無線ネットワーク5を介して、モバイル端末3に切り替え不可通知を送信し(S22)、新たな切り替え要求の受信を待つ。
S21の判断が肯定であれば、ネットワークカメラ1aは、ネットワーク6を介して、モバイル端末3のユーザーに選択されたカメラ(例えばネットワークカメラ1b)に、現在使用中の無線接続情報を送信する(S23)。
この後、ネットワークカメラ1aは、APモードを停止し(S24)、ネットワーク6を介して、ネットワークカメラ1aがAPモードを停止したことをネットワークカメラ1bに通知する(S25)。
【0030】
この後、ネットワークカメラ1aは、旧設定があるか否か判断する(S26)。すなわち、ネットワークカメラ1aは、カメラ1aが使用した過去の無線接続情報またはカメラ1aに固有の無線接続情報が記憶部15のバックアップ領域に記憶されているか否か判断する。S26の判断を行うのは、ネットワークカメラ1aが他のネットワークカメラの無線接続情報を引き継いで、APとしてモバイル端末3と無線で接続している可能性があるからである。S26の判断が否定であれば、動作は終了する。
S26の判断が肯定であれば、ネットワークカメラ1aは、旧設定に復帰する(S27)。具体的には、ネットワークカメラ1aは、記憶部15のバックアップ領域から過去の無線接続情報またはカメラ1aに固有の無線接続情報を読み出して、記憶部15の接続情報領域に書き込む。これにより、記憶部15の接続情報領域に記憶されていた他のカメラの無線接続情報は、過去の無線接続情報またはカメラ1aに固有の無線接続情報で上書きされる。したがって、ネットワークカメラ1aは、他のネットワークカメラから引き継がれた無線接続情報を廃棄し、その無線接続情報が引き継がれる前の状態に復帰する。すなわち、ネットワークカメラ1aは、他のカメラの無線接続情報を使用する前にカメラ1aが使用した過去の無線接続情報またはカメラ1aに固有の無線接続情報を用いたAPとしての動作が可能な状態になる。この後、動作は終了する。
【0031】
(切り替え可能カメラ一覧に必要な情報の生成)
図8は、上記の切り替え可能カメラ一覧20(図3参照)を表示するために必要な情報を生成する動作を示す。この動作は、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラによって、S1(図3および図4参照)の前に実行される。この動作は、当該ネットワークカメラのシステム制御部14が無線通信処理部16および有線通信処理部17またはシリアル通信処理部18を制御することによって実行される。
以下の説明では、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラをネットワークカメラ1aとする。
【0032】
モバイル端末3のユーザーは、ウェブブラウザを用いて、切り替え可能カメラ一覧要求をネットワークカメラ1aに送信するようモバイル端末3に指示することができる。
ネットワークカメラ1aがモバイル端末3から切り替え可能カメラ一覧要求を受信したと判断すると(S30)、動作はS31に進む。S31で、ネットワークカメラ1aは、ネットワーク6に対して、カメラ探索コマンドをブロードキャストする。
ネットワーク6を介してカメラ探索コマンドを受信した他のネットワークカメラの各々は、当該ネットワークカメラ自身のMACアドレスおよび機種名といったネットワークカメラを識別できる情報を応答として返す。
【0033】
S31の後、カメラ探索コマンドへの応答受信期間完了後(S32)、ネットワークカメラ1aは、カメラ探索コマンドへの応答の有無を判断する(S33)。応答受信期間は、ネットワーク6でのコマンド送信から応答受信に必要な期間より長い一定期間である。
S33の判断が肯定であれば(1以上のネットワークカメラからネットワークカメラ1aが応答を受信すれば)、ネットワークカメラ1aは、応答を返した他のネットワークカメラを切り替え可能カメラ一覧の情報に登録する(S34)。切り替え可能カメラ一覧の情報では、各カメラのカメラIDに当該カメラを識別できる情報が関連付けられている。
この後、ネットワークカメラ1aは、切り替え可能カメラ一覧要求の送信元であるモバイル端末3に切り替え可能カメラ一覧の情報を送信する(S35)。この情報を受信すると、モバイル端末3は、1以上の切り替え可能なAP候補であるネットワークカメラを示す切り替え可能カメラ一覧20を含むネットワークカメラの切り替え案内画面(図5参照)を表示装置に表示する。
【0034】
S33の判断が否定である場合(ネットワークカメラ1aが応答を受信しない場合)にも、ネットワークカメラ1aは、切り替え可能カメラ一覧要求の送信元であるモバイル端末3に切り替え可能カメラ一覧の情報を送信する(S35)。この場合には、切り替え可能カメラ一覧の情報は、実質的な情報を含まない。この情報を受信すると、モバイル端末3は、切り替え可能なAP候補であるネットワークカメラが存在しないことを示す切り替え可能カメラ一覧20を含むネットワークカメラの切り替え案内画面(図5参照)を表示装置に表示する。
S35の後、動作は終了する。
【0035】
図8の動作は一例であり、この例には限定されない。例えば、図8の動作では、ネットワークカメラは、切り替え可能カメラ一覧要求とかかわりなく、一定周期で他のネットワークカメラを探索してもよい。この場合、ネットワークカメラは、探索の結果得られた切り替え可能カメラ一覧の情報を記憶部15に記憶しておき、モバイル端末3から切り替え可能カメラ一覧要求を受信すると、モバイル端末3に切り替え可能カメラ一覧の情報を送信してよい。
【0036】
(ユーザーが次にAPとして利用するのを希望するネットワークカメラが実行する動作)
図9は、モバイル端末3のユーザーが次にAPとして利用するのを希望するネットワークカメラが実行する動作の例を示す。この動作は、当該ネットワークカメラのシステム制御部14が無線通信処理部16および有線通信処理部17またはシリアル通信処理部18を制御することによって実行される。
以下の説明では、モバイル端末3が現在APとして利用しているネットワークカメラをネットワークカメラ1aとし、モバイル端末3のユーザーが次にAPとして利用するのを希望するネットワークカメラをネットワークカメラ1bとする。
【0037】
ネットワークカメラ1bがAPモード起動可否問い合わせを受信したと判断すると(S40)、動作はS41に進む。S41で、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1b自身がAPモードを起動可能であるか否かを確認する。
S41の判断が否定であれば、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが不可能であることを示すAPモード起動可否応答をネットワークカメラ1aに返信し(S42)、動作は終了する。
【0038】
一方、S41の判断が肯定であれば、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動することが可能であることを示すAPモード起動可否応答をネットワークカメラ1aに返信する(S43)。
この後、ネットワークカメラ1bは、無線接続情報をすでに保有しているか否かを判断する(S44)。具体的には、ネットワークカメラ1bは、記憶部15の接続情報領域にカメラ1bが使用した過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報が記憶されているか否か判断する。
S44の判断が肯定であれば、ネットワークカメラ1bは、過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を記憶部15の接続情報領域から読み出して、バックアップ領域に書き込む(S45)。
【0039】
次に、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1bがAPモードを起動中であるか否か判断する(S46)。つまり、ネットワークカメラ1bがモバイル端末3以外のクライアント端末のためのAPとして当該クライアント端末と無線で接続中であるか否かをネットワークカメラ1bは判断する。
S46の判断が肯定であれば、ネットワークカメラ1bは、接続中のクライアント端末に接続を切断することを通知して、APモードを停止する(S47)。切断の通知を受信したクライアント端末は、いずれかの手法でクライアント端末のユーザーに切断を通知する。例えば、クライアント端末の表示装置でポップアップを表示してもよいし、クライアント端末に搭載されたLEDを点滅させてもよい。あるいは、クライアント端末に通知せずに、ネットワークカメラ1bに搭載されたLEDの点滅パターンによって、ユーザーに接続の切断を通知してもよい。
【0040】
S47の後、動作はS48に進む。また、S44の判断が否定である場合およびS46の判断が否定である場合も、動作はS48に進む。
S48で、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1aからネットワークカメラ1aの無線接続情報の受信を待つ。ネットワークカメラ1aから無線接続情報を受信すると、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1aの無線接続情報を記憶部15の接続情報領域に書き込む(S49)。
【0041】
この後、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1aからネットワークカメラ1aがAPモードを停止したことの通知を受信することを待つ(S50)。この通知を受信して、ネットワークカメラ1aのAPモードの停止を確認した後に、ネットワークカメラ1bはS49で記憶したネットワークカメラ1aの無線接続情報を用いて、APモードを起動する(S51)。
そして、ネットワークカメラ1bは、APとしてモバイル端末3と無線ネットワーク5を介して無線接続し、無線通信を開始する(S52)。
【0042】
モバイル端末3との無線通信終了後(S53)、ネットワークカメラ1bは、APモードを停止し(S54)、旧設定があるか否か判断する(S55)。すなわち、ネットワークカメラ1bは、カメラ1bが使用した過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報が記憶部15のバックアップ領域に記憶されているか否か判断する。
S55の判断が否定であれば、動作は終了する。S55の判断が肯定であれば、ネットワークカメラ1bは旧設定に復帰する(S56)。具体的には、ネットワークカメラ1bは、記憶部15のバックアップ領域から過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を読み出して、記憶部15の接続情報領域に書き込む。これにより、記憶部15の接続情報領域に記憶されていたカメラ1aの無線接続情報は、過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報で上書きされる。したがって、ネットワークカメラ1bは、ネットワークカメラ1aから引き継がれた無線接続情報を廃棄し、その無線接続情報が引き継がれる前の状態に復帰する。すなわち、ネットワークカメラ1bは、カメラ1aの無線接続情報を使用する前にカメラ1bが使用した過去の無線接続情報またはカメラ1bに固有の無線接続情報を用いたAPとしての動作が可能な状態になる。この後、動作は終了する。S55の判断を省略し、ネットワークカメラ1bが必ず旧設定に復帰するようにしてもよい。
【0043】
本実施形態によれば、モバイル端末3がAPとして利用しているネットワークカメラが他のネットワークカメラに、使用中の無線接続情報を送信し、無線接続情報を受信したネットワークカメラが当該無線接続情報を使用して、モバイル端末3と無線で接続する。このようにして、無線接続情報がネットワークカメラから他のネットワークカメラに円滑に引き継がれ、モバイル端末3が無線接続情報の設定操作をすることなく、モバイル端末3は新たなネットワークカメラと無線接続を確立することができる。したがって、モバイル端末3がAPを容易に切り替えることが可能であり、ユーザーの利便性を高めることができる。
本実施形態によれば、ネットワークカメラのメイン管理装置である情報端末4ではなく、モバイル端末3に表示される映像を確認しながら、無線子機であるモバイル端末3によって複数のAPであるネットワークカメラを次々と操作することが容易である。したがって、本実施形態は、撮像現場にある複数のネットワークカメラが情報端末4から遠隔にある場合、例えば、演劇等の人の実演を複数のネットワークカメラで撮像する場合に特に便利である。
【0044】
本発明は、上記の実施形態のシステム制御部14の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記録媒体を介してシステム制御部14に供給し、システム制御部14における1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理で実現可能である。この場合、記録媒体から読み出されたプログラム(プログラムコード)自体が実施形態の機能を実現することになる。また、当該プログラムを記録した記録媒体は本発明を構成することができる。
図示したシステム制御部14は一例であり、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックを構成するようにしてもよいし、何れかの機能ブロックが複数の機能を行うブロックに分かれてもよい。また、機能ブロックの少なくとも1つがハードウェアとして実装されてもよい。ハードウェアにより実装する場合、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各ステップを実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてGate Array回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現するようにしてもよい。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されず、その技術的範囲において種々の変形及び変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、無線通信装置としてネットワークカメラを例示したが、無線通信装置は、無線通信機能を有する他の装置、例えばロボット、自動走行車両などであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1a,1b…ネットワークカメラ、3…モバイル端末、14…システム制御部、16…無線通信処理部、17…有線通信処理部、18…シリアル通信処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9