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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電子部品の実装方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240729BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240729BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20240729BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H05K3/34 505B
B41J2/47 101D
G02B26/12
G02B26/10 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020001342
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021111667
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊輔
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-162047(JP,A)
【文献】特開平02-260596(JP,A)
【文献】特開2018-014437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/34
B41J 2/47
G02B 26/12
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子が一方の辺に沿って少なくとも1つ配置され、第2の端子が前記一方の辺に対向する他方の辺に沿って少なくとも1つ配置された電子部品を、前記第1の端子が半田付けされる第1の銅箔パターンと、前記第2の端子が半田付けされる第2の銅箔パターンと、を有する基板に実装する際のリフロー方式の電子部品の実装方法であって、
前記第1の銅箔パターンに第1のクリーム半田を塗布し、前記第2の銅箔パターンに第2のクリーム半田を塗布する塗布工程を備え、
前記塗布工程において、
前記第1のクリーム半田における前記第2のクリーム半田と対向する一端が、前記第1の銅箔パターンにおける前記第2の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、
前記第2のクリーム半田における前記第1のクリーム半田と対向する一端が、前記第2の銅箔パターンにおける前記第1の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、
前記電子部品は前記第1の端子と前記第2の端子が配置され、前記基板に実装されたときに前記第1の端子が前記第1の銅箔パターンに重なり、前記第2の端子が前記第2の銅箔パターンに重なるように前記基板と向かい合う面を有し、
前記面は前記第1の端子を含む第1の領域と、前記第2の端子を含む第2の領域が露出されるようにレジストによって覆われており、前記第1の領域から前記第2の領域までが前記レジストによって覆われ
前記塗布工程において、
前記第1のクリーム半田の一端が、前記第1の端子における前記第2の端子と対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、
前記第2のクリーム半田の一端が、前記第2の端子における前記第1の端子と対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布されることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項2】
第1の端子が一方の辺に沿って少なくとも1つ配置され、第2の端子が前記一方の辺に対向する他方の辺に沿って少なくとも1つ配置された電子部品を、前記第1の端子が半田付けされる第1の銅箔パターンと、前記第2の端子が半田付けされる第2の銅箔パターンと、を有する基板に実装する際のリフロー方式の電子部品の実装方法であって、
前記第1の銅箔パターンに第1のクリーム半田を塗布し、前記第2の銅箔パターンに第2のクリーム半田を塗布する塗布工程を備え、
前記塗布工程において、
前記第1のクリーム半田における前記第2のクリーム半田と対向する一端が、前記第1の銅箔パターンにおける前記第2の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、
前記第2のクリーム半田における前記第1のクリーム半田と対向する一端が、前記第2の銅箔パターンにおける前記第1の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、
前記電子部品は前記第1の端子と前記第2の端子が配置され、前記基板に実装されたときに前記第1の端子が前記第1の銅箔パターンに重なり、前記第2の端子が前記第2の銅箔パターンに重なるように前記基板と向かい合う面を有し、
前記面は前記第1の端子を含む第1の領域と、前記第2の端子を含む第2の領域が露出されるようにレジストによって覆われており、前記電子部品を前記第1のクリーム半田および前記第2のクリーム半田上に積載した場合に、前記第1のクリーム半田の一端と前記第2のクリーム半田の一端が、前記レジストと重なり、
前記塗布工程において、
前記第1のクリーム半田の一端が、前記第1の端子における前記第2の端子と対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、
前記第2のクリーム半田の一端が、前記第2の端子における前記第1の端子と対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布されることを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項3】
前記第1のクリーム半田の一端と前記第2のクリーム半田の一端との間の距離が、前記第1の銅箔パターンの一端と前記第2の銅箔パターンの一端との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の実装方法。
【請求項4】
前記第1のクリーム半田の一端と前記第2のクリーム半田の一端との間の距離が、前記第1の端子の一端と前記第2の端子の一端との間の距離よりも短いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子部品の実装方法。
【請求項5】
前記第1の端子は、第1のリードフレーム端子であり、
前記第2の端子は、第2のリードフレーム端子であり、
前記第1のクリーム半田の一端と前記第2のクリーム半田の一端との間の距離が、前記第1のリードフレーム端子が前記第1の銅箔パターンと接触する部分における前記第2のリードフレーム端子と対向する一端と、前記第2のリードフレーム端子が前記第2の銅箔パターンと接触する部分における前記第1のリードフレーム端子と対向する一端と、の間の距離よりも短いことを特徴とする請求項に記載の電子部品の実装方法。
【請求項6】
前記第1のクリーム半田の一端と前記第2のクリーム半田の一端との間には、レジスト又は銅箔パターンが形成されていないことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電子部品の実装方法。
【請求項7】
前記電子部品は、光源と、前記光源から出射された光を受光したことに応じて感光体に潜像を形成する基準となる信号を出力する出力手段と、を有する走査光学装置の前記出力手段であり、
前記基板は、前記光源が実装されているレーザ基板であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の電子部品の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装方法に関し、例えば、プリント基板上に精度よく部品をリフロー実装する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザプリンタ等の画像形成装置は、搭載される走査光学装置の以下の動作により被走査面へ画像形成を行っている。走査光学装置は、画像信号に応じて光源から出射されるレーザ光束を光変調し、光変調したレーザ光束を例えば回転多面鏡からなる光偏向器で被走査面へと偏向し走査する。光偏向器で偏向されたレーザ光束は、例えばfθ特性を有する結像光学系などの走査レンズによって、感光性の記録媒体面上にスポット状に結像された状態で走査される。レーザ光束の被走査面への書き出しタイミングは、被走査面上に設置された検出手段が出力する書き出し位置の基準となる同期信号に基づいて制御される。
【0003】
多くの画像形成装置では、検出手段であるビームディテクタ(以下、BDとする)から出力された信号の立ち下がりが検出されると、その所定時間後に画像の書き出しを行う(例えば、特許文献1参照)。BDの取り付け位置のばらつきが、主走査方向の位置のばらつきに影響しないようにする目的で、走査光学装置は以下の構成となっている。すなわち、BDの受光部の主走査方向の上流側を遮光部材で隠し、BDの取り付け位置と関係なく、レーザ光束が遮光部材を通過したタイミングでBDに光が入射する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-222811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来例で説明した走査光学装置においては、BDの取り付け位置を高精度で管理することが困難であるという課題がある。走査光学装置に搭載するBDの受光部のサイズは、BDの取り付け位置のばらつき量より大きい必要がある。BDは受光部のサイズによって製造コストが大きく変わり、受光部のサイズが大きいものほど高価になる。すなわち、受光部のサイズが大きいBDを使用すると走査光学装置自体のコストが高くなるという課題がある。このため、BDの受光部のサイズを大きくすることなく取り付け位置のばらつきを改善するために、BDのような電子部品を基板に実装する際の実装精度を向上させることが求められている。
【0006】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、電子部品を基板に実装する際の実装精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)第1の端子が一方の辺に沿って少なくとも1つ配置され、第2の端子が前記一方の辺に対向する他方の辺に沿って少なくとも1つ配置された電子部品を、前記第1の端子が半田付けされる第1の銅箔パターンと、前記第2の端子が半田付けされる第2の銅箔パターンと、を有する基板に実装する際のリフロー方式の電子部品の実装方法であって、前記第1の銅箔パターンに第1のクリーム半田を塗布し、前記第2の銅箔パターンに第2のクリーム半田を塗布する塗布工程を備え、前記塗布工程において、前記第1のクリーム半田における前記第2のクリーム半田と対向する一端が、前記第1の銅箔パターンにおける前記第2の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、前記第2のクリーム半田における前記第1のクリーム半田と対向する一端が、前記第2の銅箔パターンにおける前記第1の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、前記電子部品は前記第1の端子と前記第2の端子が配置され、前記基板に実装されたときに前記第1の端子が前記第1の銅箔パターンに重なり、前記第2の端子が前記第2の銅箔パターンに重なるように前記基板と向かい合う面を有し、前記面は前記第1の端子を含む第1の領域と、前記第2の端子を含む第2の領域が露出されるようにレジストによって覆われており、前記第1の領域から前記第2の領域までが前記レジストによって覆われ、前記塗布工程において、前記第1のクリーム半田の一端が、前記第1の端子における前記第2の端子と対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、前記第2のクリーム半田の一端が、前記第2の端子における前記第1の端子と対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布されることを特徴とする電子部品の実装方法。
(2)第1の端子が一方の辺に沿って少なくとも1つ配置され、第2の端子が前記一方の辺に対向する他方の辺に沿って少なくとも1つ配置された電子部品を、前記第1の端子が半田付けされる第1の銅箔パターンと、前記第2の端子が半田付けされる第2の銅箔パターンと、を有する基板に実装する際のリフロー方式の電子部品の実装方法であって、前記第1の銅箔パターンに第1のクリーム半田を塗布し、前記第2の銅箔パターンに第2のクリーム半田を塗布する塗布工程を備え、前記塗布工程において、前記第1のクリーム半田における前記第2のクリーム半田と対向する一端が、前記第1の銅箔パターンにおける前記第2の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、前記第2のクリーム半田における前記第1のクリーム半田と対向する一端が、前記第2の銅箔パターンにおける前記第1の銅箔パターンと対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、前記電子部品は前記第1の端子と前記第2の端子が配置され、前記基板に実装されたときに前記第1の端子が前記第1の銅箔パターンに重なり、前記第2の端子が前記第2の銅箔パターンに重なるように前記基板と向かい合う面を有し、前記面は前記第1の端子を含む第1の領域と、前記第2の端子を含む第2の領域が露出されるようにレジストによって覆われており、前記電子部品を前記第1のクリーム半田および前記第2のクリーム半田上に積載した場合に、前記第1のクリーム半田の一端と前記第2のクリーム半田の一端が、前記レジストと重なり、前記塗布工程において、前記第1のクリーム半田の一端が、前記第1の端子における前記第2の端子と対向する一端よりも前記第2の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布され、前記第2のクリーム半田の一端が、前記第2の端子における前記第1の端子と対向する一端よりも前記第1の銅箔パターンに向かってはみ出すように塗布されることを特徴とする電子部品の実装方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子部品を基板に実装する際の実装精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1、2の走査光学装置の概略斜視図
図2】実施例1、2の走査光学装置のBD近傍の要部拡大図
図3】実施例1、2の走査光学装置のレーザ基板の取付けを説明する図
図4】実施例1のBDの説明図
図5】実施例1のリフロー方式の電子部品の実装方法の説明図
図6】実施例1のリフロー方式の電子部品の実装方法の効果の説明図
図7】実施例2のリフロー方式の電子部品の実装方法の説明図
図8】実施例3のレーザビームプリンタの概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を、図面を参照しながら以下に詳しく説明する。なお、走査光学装置から出射された光が偏向装置によって走査される方向を走査方向又は主走査方向という。主走査方向は感光ドラムの回転軸方向でもある。また、主走査方向に直交する方向で感光ドラムの回転方向を副走査方向という。
【実施例1】
【0012】
[走査光学装置]
実施例1の走査光学装置を説明する。図1は実施例1の走査光学装置101の説明図である。走査光学装置101は、レーザ基板1、アナモフィックコリメータレンズ2を備える。アナモフィックコリメータレンズ2は、コリメータレンズ、シリンドリカルレンズ、書き出し位置信号検出レンズ(以下、BDレンズという)14を一体に成形したレンズであり、以下コリメータレンズ2という。走査光学装置101は、開口絞り3、回転多面鏡4、偏向装置5、出力手段であるビームディテクタ(以下、BDという)6、fθレンズ(走査レンズ)7、光学箱9を備える。回転多面鏡4は複数(図1では例えば4面)の反射面12を有する。BD6は、受光部(後述する図2参照)を有し、レーザ光の走査方向における書き出し位置の基準となる信号(以下、同期信号という)を出力するために、レーザ光の入力を受光部により検出する。光学箱9は、上述した光学部材を収容する。感光体である感光ドラム8の表面には、走査光学装置101によって静電潜像が形成される。
【0013】
レーザ基板1には光源である半導体レーザ1aが実装されており、半導体レーザ1aから出射したレーザ光束Lは、コリメータレンズ2によって主走査方向では略平行光又は収束光とされ、副走査方向では収束光とされる。さらにレーザ光束Lは、開口絞り3を通って光束幅が制限された主走査方向に長く伸びる焦線状の光束として回転多面鏡4の反射面12で結像する。回転多面鏡4は偏向装置5によって等速で回転するように制御されており、回転多面鏡4の反射面12で結像したレーザ光束Lが偏向走査されBD6及び感光ドラム8に到達する(図1中一点鎖線)。レーザ光束Lは、コリメータレンズ2のBDレンズ14を通過してBD6に入射する。fθレンズ7は非球面レンズで形成されていて、fθレンズ7を通過した光束が感光ドラム8上でスポットを形成するように集光し、かつ感光ドラム8の表面を走査する速度が等速に保たれるように設計されている。また感光ドラム8が円筒の軸線まわりに回転駆動することによってレーザ光の副走査が行われる。以上のように走査光学装置101は感光ドラム8の表面に静電潜像を形成する。
【0014】
[光学箱の開口とBDの受光部]
図2はBD6の近傍を拡大した図である。BD6は受光部10を有する。BD6はレーザ基板1上に実装されている。レーザ基板1は光学箱9の側板に取り付けられており、光学箱9にはBD6の受光部10に対応する位置に開口部9aが設けられている。BDレンズ14を通過したレーザ光束Lは、BDレンズ14によって円形状のスポットS1を形成し図2中の破線矢印の方向(走査方向)に走査される。BD6の受光部10は、スポットS1の走査方向の上流側の一部が光学箱9によって遮光されている。BD6は、走査されたスポットS1が光学箱9の開口部9aを通過するタイミングで受光部10に光が入射され、信号(以下、水平同期信号という)を出力する。
【0015】
図2(a)(b)(c)は各々、BD6の取り付け位置が走査方向に異なる場合を示す。図2(a)は、BD6が主走査方向の上流側にずれて取り付けられた場合を示す。図2(b)は、BD6が設計上の中心位置付近に取り付けられた場合を示す。図2(c)は、BD6が主走査方向の下流側にずれて取り付けられた場合を示す。上述した通り、走査されたスポットS1が光学箱9の開口部9aを通過するタイミングで受光部10にレーザ光が入射されるため、BD6の取り付け位置の違いによる水平同期信号の出力タイミングの差は生じない。ただし、BD6の受光部10のサイズは、BD6の取り付け位置のばらつき量よりも大きい必要がある。
【0016】
BD6の取り付け位置のばらつきよりも、受光部10の走査方向の長さが短いと、次のような課題が生じる。例えば、図2(a)に示すようにBD6が主走査方向の上流側にずれて取り付けられた場合、取り付け位置のばらつきよりも受光部10の走査方向の長さが短いと、受光部10が光学箱9(開口部9aの左側)に完全に隠れてしまう。そうすると、BD6は受光部10によって光を受光することができず、水平同期信号を出力することができない。逆に、図2(c)に示すようにBD6が主走査方向の下流側にずれて取り付けられた場合、取り付け位置のばらつきよりも受光部10の走査方向の長さが短いと、受光部10の上流側が光学箱9によって遮光されない状態となる。すなわち、スポットS1が開口部9aに到達するタイミングと受光部10に到達するタイミングとがずれてしまう。このため、BD6は、スポットS1が光学箱9の開口部9aを通過するタイミングではなく受光部10の上流側を通過するタイミングで水平同期信号を出力してしまう。実施例1は、BD6の取り付け位置のばらつき量が受光部10のサイズよりも小さくなるように、BD6の取り付け位置精度を向上させることを目的とする。
【0017】
[レーザ基板の取り付け]
図3を用いてBD6の取り付け位置を決める構成要素について説明する。BD6の取り付け位置を決める構成要素には、
(1)光学箱9に対するレーザ基板1の位置ばらつき
(2)レーザ基板1に対するBD6の実装位置ばらつき
がある。図3は光学箱9をレーザ基板1の方向から見た図である。レーザ基板1は光学箱9の側板に外側から取り付けられる。光学箱9には位置決めボス103、位置固定穴102があり、レーザ基板1には取付け基準穴105と、取付け穴104とが設けられている。上述した(1)光学箱9に対するレーザ基板1の位置ばらつきは、取付け基準穴105と位置決めボス103との嵌合、及び、取付け穴104と位置固定穴102との嵌合によって規定される。取付け穴104に貫通した位置固定穴102にはネジ106が螺合され固定される。実際には、取付け基準穴105と位置決めボス103の寸法管理方法が重要であるものの、例えば±0.1mm程度の取り付け公差で通常は管理される。
【0018】
実施例1で改善するのは、上述した(2)レーザ基板1に対するBD6の実装位置ばらつきである。すなわち、電子部品であるBD6を基板であるレーザ基板1に実装する方法を提案する。レーザ基板1には、BD6を含め、半導体レーザ1aや、レーザ制御ドライバIC、チップ抵抗、コネクタ等(いずれも不図示)が実装される。各々の部品は取付け基準穴105を基準に予め決められたマウント座標に自動機によって実装される。図3において、XとYは取付け基準穴105の中心座標を基準として、BD6が実装されるべき位置(例えばBD6の中心位置)の座標を示す。レーザ基板1上の座標X,Yに精度よくBD6を実装するためには、BD6実装用のランドパターンに対してずれなく部品を実装することが重要となる。
【0019】
[BDの形状]
図4を用いてBD6の形状について説明する。実施例1で使用するBD6はCOB(chip on board)タイプで、フォトダイオード406、演算回路405のベアチップが基板410に直接実装される構成となっている。基板410は例えば図4に示すような矩形である。図4(a)はBD6を、ベアチップ実装面(表面)から見た図である。基板410の中央領域にフォトダイオード406と演算回路405のベアチップが実装されていて、金線407により基板410上に設けられたパッド402に接続されている。パッド402はパターン403、スルーホール404を経由して基板410の裏面のパターンに接続されている。
【0020】
図4(b)は、BD6の裏面側を透視した図で、レジスト408で覆われたスルーホール404、パターン403を経由して端子401に接続される。端子401はレジスト408で覆われてない銅箔むき出しの部分を示し、BD6をレーザ基板1に実装する場合の接続部となる。端子401は、基板410の実装面とは反対側の面である裏面に設けられている。また、端子401は、4辺を有する基板410の向かい合う2つの辺に設けられている。実施例1の基板410では、例えば端子401を1つの辺に3つ、合計6つ有するものとする。すなわち、電子部品であるBD6は、第1の端子である端子401aが基板410の一方の辺に沿って少なくとも1つ配置(実施例1では3つ配置)されている。電子部品であるBD6は、第2の端子である端子401bが、基板410の一方の辺に対向する他方の辺に沿って少なくとも1つ配置(実施例1では3つ)されている。図4(c)は、BD6を側面から見た図である。図4(c)に示す通り、ベアチップを実装した箇所を、成型した透明アクリル樹脂409で覆うことでベアチップを保護している。
【0021】
[BDのレーザ基板への実装]
図5はBD6をレーザ基板1にリフロー方式で実装する際の状態を説明する図である。図5(a)の斜視図に示すように、レーザ基板1には、BD6を実装するためのパターンが用意されていて、BD6の端子401側の面(裏面)がレーザ基板1と接する向きで実装される。図5(b)の断面図を用いて実施例1の特徴を説明する。
【0022】
レーザ基板1(基板)は、端子401aが半田付けされる第1の銅箔パターンである銅箔パターン413aと、端子401bが半田付けされる第2の銅箔パターンである銅箔パターン413bと、を有する。銅箔パターン413a、413bを総称して銅箔パターン413ともいう。銅箔パターン413はクリーム半田412を塗布する場所以外はレジスト414によって覆われている。BD6の端子401に対応してクリーム半田412及び銅箔パターン413が設けられている。実施例1のBD6は、基板410の1つの辺に3つの端子401を有し、基板410の他の辺に3つの端子401を有している。レーザ基板1上には、上述した6つの端子401にそれぞれ対応してクリーム半田412及び銅箔パターン413が設けられている。端子401は基板410の向かい合う辺に設けられているため、クリーム半田412及び銅箔パターン413は、図5(a)に示すように互いに対向するようにレーザ基板1上に設けられている。すなわち、銅箔パターン413aに第1のクリーム半田であるクリーム半田412aを塗布し、銅箔パターン413bに第2のクリーム半田であるクリーム半田412bを塗布する(塗布工程)。
【0023】
実施例1の特徴として、クリーム半田412、端子401、銅箔パターン413が以下に説明する位置関係となっている。ここで、
D1:対向するクリーム半田412同士の間の距離
D2:対向する端子401同士の間の距離
D3:対向する銅箔パターン413同士の間の距離
を示している。距離D1、D2、D3は、次の式(1)の関係となっている。
D1<D2≦D3 式(1)
【0024】
距離D1が距離D2、D3より小さいので、クリーム半田412が端子401及び銅箔パターン413よりも内側(基板410の中央側)にはみ出した状態で塗布される。通常は、銅箔パターン413に対してクリーム半田412を積極的にはみ出して塗布することはしない。はみ出して塗布された余分なクリーム半田が、端子間ショート又は半田ボールを発生させる懸念があるためである。しかし、実施例1では、所定の長さ、例えば0.3mmを意図的に銅箔パターン413からはみ出した状態でクリーム半田412を塗布する。クリーム半田412を銅箔パターン413よりもはみ出して塗布することで、リフローしたときのBD6の実装位置の精度が向上する。
【0025】
このように、クリーム半田412aにおけるクリーム半田412bと対向する一端が、端子401aにおける端子401bと対向する一端よりもクリーム半田412bに向かってはみ出すように塗布される。クリーム半田412bにおけるクリーム半田412aと対向する一端が、端子401bにおける端子401aと対向する一端よりもクリーム半田412aに向かってはみ出すように塗布される。クリーム半田412aの一端が、銅箔パターン413aにおける銅箔パターン413bと対向する一端よりもはみ出すように塗布される。クリーム半田412bの一端が、銅箔パターン413bにおける銅箔パターン413aと対向する一端よりもはみ出すように塗布される。
【0026】
式(1)に示すように、クリーム半田412aの一端とクリーム半田412bの一端との間の距離D1が、端子401aの一端と端子401bの一端との間の距離D2よりも短い(D1<D2)。また、クリーム半田412aの一端とクリーム半田412bの一端との間の距離D1が、銅箔パターン413aの一端と銅箔パターン413bの一端との間の距離D3よりも短い(D1<D3)。
【0027】
リフロー時に、はみ出して塗布されたクリーム半田412は溶融し、セルフアライメント効果により銅箔パターン413側に引き寄せられる。このとき、クリーム半田412の上に位置するBD6も銅箔パターン413側に一緒に移動しようとする。実施例1では、式(1)のように距離D2と距離D3とが同じ長さ又は距離D2が距離D3よりも短い関係になっている(D2≦D3)。溶融したクリーム半田412のセルフアライメント効果で、リフロー時にBD6が、端子401の内側ラインと、銅箔パターン413の内側ラインとがぴったり重なる位置、又は、距離D2の中央点と距離D3の中央点とがぴったり重なる位置に移動する。
【0028】
[効果]
実施例1のリフロー方法による効果を検証した結果を図6に示す。図6の結果は、設計上のBD6の実装座標X,Yと、リフロー後に測定したBD6の実装位置の座標とのずれ(±ΔX,±ΔY)を示す。図6(a)は、端子401及び銅箔パターン413に対して、基板410の内側にクリーム半田412がはみ出さない状態で塗布した場合のずれを示す。一方、図6(b)は、端子401及び銅箔パターン413に対して、基板410の内側にクリーム半田412がはみ出した状態で塗布した場合のずれを示す。両条件とも、端子401と銅箔パターン413については、D2=D3の関係とした。
【0029】
図6を比較してわかるように、端子401及び銅箔パターン413に対して内側にクリーム半田412をはみ出して塗布した場合は、X方向、Y方向共に実装位置のばらつきが小さくなっている。具体的には、図6(a)で±0.20mm以上となっていた実装位置ばらつきが、図6(b)では±0.05mm以下に改善していることがわかる。
【0030】
実施例1では、はみ出して塗布した余分なクリーム半田412によって、端子401間ショート又は半田ボールが発生することを抑制するため、次のようにしている。すなわち、BD6とレーザ基板1とが接する面には実装用の銅箔パターン413以外は、レジスト及びパターンを配置しないことを特徴としている。より詳細には、レーザ基板1側に設けられた対向する銅箔パターン413同士の間に、レジスト及びパターンが配置されていない。すなわち、クリーム半田412aの一端とクリーム半田412bの一端との間には、レジスト又は銅箔パターンが形成されていない。BD6とレーザ基板1とが接する面に、銅箔パターン又はレジストを設けると、はみ出して塗布したクリーム半田412が溶融してセルフアライメント効果により銅箔パターン413側に引き寄せられる際の半田の流れが変化する。そして、半田ボールの発生や端子401間ショートの原因となる。
【0031】
以上、説明したように実施例1のリフロー方式の実装方法によりレーザ基板1に対するBD6の実装位置の精度が向上することが可能となり、光学箱9に対するBD6の取り付け精度が向上する。以上、実施例1によれば、電子部品を基板に実装する際の実装精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0032】
[BDのレーザ基板への実装]
実施例2ではリードフレームタイプのBD6を用いた場合を説明する。実施例1と同様の構成のものに関しては同じ符号を用い、説明を省略する。実施例2も、BD6のレーザ基板1上への実装精度を向上させることを目的とする。図7はリードフレームタイプのBD6を実装する際の状態を説明する図である。図7(a)の斜視図に示すように、リードフレームタイプのBD6は、フォトダイオード等のセンサーIC416がリードフレーム上に実装されており、リードフレームごと透明アクリル樹脂409で覆われた構造となっている。リードフレームの一部は透明アクリル樹脂409の外まで出ていて、レーザ基板1に実装する際の接続部となるリードフレーム端子415を形成している。リードフレーム端子415は折り曲げ加工(クリンチ)されている。第1のリードフレーム端子であるリードフレーム端子415aは、透明アクリル樹脂409の一辺に例えば3つ設けられる。第2のリードフレーム端子であるリードフレーム端子415bは、透明アクリル樹脂409の一辺に向かい合う他辺に例えば3つ設けられる。リードフレーム端子415a、415bを総称してリードフレーム端子415ともいう。実施例2では、リードフレーム端子415は計6つある。レーザ基板1には、6つのリードフレーム端子415のそれぞれに対応してクリーム半田412(412a、412b)及び銅箔パターン413(413a、413b)が対向するようにして設けられている。
【0033】
図7(b)は断面図を示す。銅箔パターン413はクリーム半田412を塗布する場所以外はレジスト414によって覆われている。実施例2の特徴として、クリーム半田412、リードフレーム端子415、銅箔パターン413が以下に説明する位置関係となっている。
D1:対向するクリーム半田412同士の間の距離
D2’:対向するリードフレーム端子415同士の、リードフレーム端子がレーザ基板1と接触する箇所(折り曲げ部分)間の距離
D3:対向する銅箔パターン413同士の間の距離
を示している。また、距離D1、D2’、D3が式(2)の関係となっている。
D1<D2’≦D3 式(2)
【0034】
距離D1が距離D2、D3より小さいので、クリーム半田412がリードフレーム端子415(の折り曲げ部)及び銅箔パターン413よりも内側にはみ出した状態で塗布される。通常は銅箔パターン413に対してクリーム半田412を積極的にはみ出して塗布することはしない。はみ出して塗布した余分なクリーム半田412がリードフレーム端子415間ショート、又は半田ボールを発生させる懸念があるためである。しかし、実施例2では、例えば意図的に0.3mm、クリーム半田412をはみ出した状態で塗布する。クリーム半田412をはみ出して塗布することでリフローしたときのBD6の実装位置の精度が向上するためである。
【0035】
このように、クリーム半田412aの一端とクリーム半田412bの一端との間の距離D1が、リードフレーム端子415aの一端とリードフレーム端子415bの一端との間の距離D2’よりも短い(D1<D2’)。ここで、リードフレーム端子415aの一端とは、リードフレーム端子415aが銅箔パターン413aと接触する部分におけるリードフレーム端子415bと対向する一端をいう。また、リードフレーム端子415bの一端とは、リードフレーム端子415bが銅箔パターン413bと接触する部分におけるリードフレーム端子415aと対向する一端をいう。リフロー時に、はみ出して塗布されたクリーム半田412は溶融し、セルフアライメント効果により銅箔パターン413側に引き寄せられる。このとき、クリーム半田412の上に位置するBD6も銅箔パターン413側に一緒に移動しようとする。
【0036】
実施例2では、距離D2’と距離D3とが同じ長さ、又は、距離D2’が距離D3よりも短い関係になっている(D2’≦D3)。溶融したクリーム半田412のセルフアライメント効果で、リフロー時にBD6が、次のように移動する。距離D2’と距離D3とが同じ長さの場合は、リードフレーム端子415がレーザ基板1と接触する箇所の内側ラインと、銅箔パターン413の内側ラインとが、ぴったり重なる位置にBD6が移動する。また、距離D2’が距離D3よりも短い場合は、距離D2の中央点と距離D3の中央点とがぴったり重なる位置にBD6が移動する。また、実施例2でも、クリーム半田412aの一端とクリーム半田412bの一端との間には、レジスト又は銅箔パターンが形成されていない。
【0037】
以上、説明したように実施例2のリフロー方式の実装方法により、リードフレーム端子タイプのBDを用いた場合でも、レーザ基板1に対するBD6の実装位置の精度が向上する。これにより、光学箱9に対するBD6の取り付け精度が向上する。以上、実施例2によれば、電子部品を基板に実装する際の実装精度を向上させることができる。
【実施例3】
【0038】
[レーザビームプリンタの説明]
図8に、実施例1、2の走査光学装置101を備える画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ1000(以下、プリンタ1000という)は、感光ドラム8、走査光学装置101、帯電部1020、現像部1030を備えている。感光ドラム8は、走査光学装置101によって静電潜像が形成される感光体である。帯電部1020は、感光ドラム8を一様に帯電する。現像手段である現像部1030は、感光ドラム8に形成された静電潜像をトナーにより現像することでトナー像を形成する。感光ドラム8上(感光体上)に形成されたトナー像は、カセット1040から供給された記録材としてのシートPに、転写手段である転写部1050によって転写される。シートPに転写された未定着のトナー像は定着器1060によって定着され、シートPはトレイ1070に排出される。この、走査光学装置101、感光ドラム8、帯電部1020、現像部1030、転写部1050が画像形成部である。また、プリンタ1000は、電源装置1080を備え、電源装置1080からモータ等の駆動部と制御部5000へ電力を供給している。制御部5000は、CPU(不図示)を有しており、画像形成部による画像形成動作やシートPの搬送動作等を制御している。なお、本発明の走査光学装置を適用することができる画像形成装置は、図8に例示された構成に限定されない。
【0039】
以上、実施例3によれば、電子部品を基板に実装する際の実装精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザ基板
6 BD
401a、401b 端子
412a、412b クリーム半田
413a、413b 銅箔パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8