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特許7527791波面計測装置、波面計測方法および光学系の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】波面計測装置、波面計測方法および光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
G01M11/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020003529
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110673
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 智洋
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-240168(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239845(WO,A1)
【文献】特開昭62-092242(JP,A)
【文献】特開2005-134116(JP,A)
【文献】特開2011-247687(JP,A)
【文献】特開2004-233638(JP,A)
【文献】特開2019-191121(JP,A)
【文献】特開2015-184620(JP,A)
【文献】特開平06-026986(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037448(WO,A1)
【文献】特開2015-102539(JP,A)
【文献】特開2020-012782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-11/08
G01N 21/00-21/958
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検光学系に、該被検光学系の複数の画角に対応する複数の光を入射させる光源系と、
前記被検光学系を透過した前記複数の光を受光する複数の受光部と、
前記複数の受光部のそれぞれから出力された信号を用いて、前記被検光学系を透過した前記複数の光の波面を取得する取得手段とを有し、
前記被検光学系と前記複数の受光部のうち少なくとも一つの受光部との間に回折素子が配置され、
前記回折素子は、前記被検光学系を透過した前記複数の光を少なくとも二つの互いに異なる回折次数の光に分離し、
前記互いに異なる回折次数の光のそれぞれは、前記複数の受光部のうちの異なる受光部に導光されることを特徴とする波面計測装置。
【請求項2】
被検光学系に、該被検光学系の複数の画角に対応する複数の光を入射させる光源系と、
前記被検光学系を透過した前記複数の光を受光する複数の受光部と、
前記複数の受光部のそれぞれから出力された信号を用いて、前記被検光学系を透過した前記複数の光の波面を取得する取得手段とを有し、
前記被検光学系と前記複数の受光部のうち少なくとも一つの受光部との間に回折素子が配置され、
前記回折素子は、前記被検光学系を透過した前記複数の光少なくとも二つの互いに異なる回折次数の光に分離し、該少なくとも二つの互いに異なる回折次数の光のそれぞれを前記複数の受光部のうちの異なる受光部に受光させることを特徴とする波面計測装置。
【請求項3】
前記回折素子は、前記複数の光をそれぞれ異なる受光部に向かうように偏向することを特徴する請求項1に記載の波面計測装置。
【請求項4】
前記複数の受光部が、前記複数の光のそれぞれを受光するように該複数の光の数と同数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の波面計測装置。
【請求項5】
前記複数の受光部は、マイクロレンズアレイを備えることを特徴する請求項1からのいずれか一項に記載の波面計測装置。
【請求項6】
前記複数の受光部は、ハルトマンマスクを備えることを特徴する請求項1からのいずれか1項に記載の波面計測装置。
【請求項7】
被検光学系に、該被検光学系の複数の画角に対応する複数の光を入射させ、前記被検光学系を透過した前記複数の光を複数の受光部に受光させるステップと、
前記複数の受光部のそれぞれから出力された信号を用いて、前記被検光学系を透過した前記複数の光の波面を取得するステップとを有し、
前記被検光学系と前記複数の受光部のうち少なくとも一つの受光部との間に回折素子を配置し、
前記回折素子は、前記被検光学系を透過した前記複数の光を少なくとも二つの互いに異なる回折次数の光に分離し、
前記互いに異なる回折次数の光のそれぞれは、前記複数の受光部のうちの異なる受光部に導光されることを特徴とする波面計測方法。
【請求項8】
請求項に記載の波面計測方法を用いて前記被検光学系としての光学系の評価を行うステップと、
該評価の結果を用いて前記光学系を調整するステップとを有することを特徴とする光学系の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の透過波面を計測する波面計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光学素子を含む光学系を製造する際には、該光学系の複数の画角の透過波面を計測し、複数の光学素子のそれぞれの位置を調整する。特許文献1には、被検光学系から射出した複数の画角の光を折り返し平面鏡とウェッジプリズムとを用いて1つの波面センサに導き、上記複数の画角の光の波面を計測する装置が開示されている。特許文献2には、被検光学系を透過した複数の第1光を、光軸方向に互いに異なる角度で配置した複数の部分透過反射面で反射し、再度、被検光学系を透過した複数の第2光を波面センサで受光することで、被検光学系の複数の画角の波面を計測する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6125131号公報
【文献】特開2019-66428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された波面計測装置では、被検光学系から射出した複数の画角の光が被検光学系の直後で重なっているため、被検光学系と折り返し平面鏡との間に複数の画角の光を分離させるための距離を確保する必要がある。その結果、波面計測装置が大型化する。また特許文献2に開示された波面計測装置では、複数の画角の光を波面センサに導く導光光学系の構成が複雑であり、装置のセットアップが難しい。
【0005】
本発明は、小型かつ簡易な構成により、被検光学系を透過した複数の画角の光の波面を計測することが可能な波面計測装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての波面計測装置は、被検光学系に、該被検光学系の複数の画角に対応する複数の光を入射させる光源系と、被検光学系を透過した上記複数の光を受光する複数の受光部と、複数の受光部のそれぞれから出力された信号を用いて、被検光学系を透過した複数の光の波面を取得する取得手段とを有する。被検光学系と複数の受光部のうち少なくとも一つの受光部との間に回折素子が配置され、前記回折素子は、前記被検光学系を透過した前記複数の光を少なくとも二つの互いに異なる回折次数の光に分離し、前記互いに異なる回折次数の光のそれぞれは、前記複数の受光部のうちの異なる受光部に導光されることを特徴とする。
【0007】
また本発明の他の一側面としての波面計測方法は、被検光学系に、該被検光学系の複数の画角に対応する複数の光を入射させ、被検光学系を透過した上記複数の光を複数の受光部に受光させるステップと、複数の受光部のそれぞれから出力された信号を用いて、被検光学系を透過した複数の光の波面を取得するステップとを有する。被検光学系と複数の受光部のうち少なくとも一つの受光部との間に回折素子を配置し、前記回折素子は、前記被検光学系を透過した前記複数の光を少なくとも二つの互いに異なる回折次数の光に分離し、前記互いに異なる回折次数の光のそれぞれは、前記複数の受光部のうちの異なる受光部に導光されることを特徴とする。なお、上記波面計測方法を用いた光学系の製造方法も、本発明の他の一側面を構成する。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検光学系を透過した複数の光の波面を小型かつ簡易な構成によって計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の波面計測装置の構成を示す図。
図2】実施例1における被検光学系の波面の計測手順を示すフローチャート。
図3】実施例2の波面計測装置の構成を示す図。
図4】実施例3の波面計測装置の構成を示す図。
図5】実施例4の波面計測装置の構成を示す図。
図6】各実施例の波面計測装置を用いた光学系の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1である波面計測装置1の構成を示している。波面計測装置1は、光源系120、透過型回折素子40、41、42、レンズ50a、50b、51a、51b、52a、52b、複数の受光部としての波面センサ90、91、92および取得手段としてのコンピュータ100を有する。被検光学系30は、複数のレンズを組み合せて構成された光学系であり、光源系120と複数の波面センサ90、91、92との間に設置される。
【0012】
光源系120は、光源10、11、12とファイバ20、21、22により構成され、被検光学系30の複数(3つ)の画角に対応する複数の光(以下、単に複数の画角の光または複数の画角の被検光という)を射出する。波面計測装置1は、被検光学系30を透過した上記複数の画角の被検光の波面を計測する。
【0013】
各光源は、レーザ(ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザ等)やLED等により構成されている。光源10、11、12から発せられ、ファイバ20、21、22を通過して発散光として出射した被検光200a、201a、202aが上記複数の画角の光として被検光学系30に入射する。被検光学系30に入射した被検光200a、201a、202aはそれぞれ、被検光学系30を透過することで平行光としての被検光(透過光)200b、201b、202bとなる。
【0014】
本実施例では、ファイバ20、21、22の端面、すなわち光源系120からの複数の被検光200a、201a、202aの出射点は同一平面120a上に配置されている。また、ファイバ20、21、22から出射する発散光としての被検光200a、201a、202aの開口数は、被検光学系30の開口数(=1/2Fナンバー)より大きい。
【0015】
被検光学系30を透過した直後の被検光200b、201b、202bは互いに重なり合っているため、被検光学系30と複数の波面センサ90、91、92との間に配置された回折素子40での回折を利用して互いに異なる方向に進むように分離される。回折素子40は、例えば、振幅型回折格子、位相型回折格子、CGH(Computer Generated Hologram)である。
【0016】
被検光200bの一部は、回折素子40にて進行方向が変えられることなく(偏向されずに)そのまま透過して0次回折光としての被検光200cとなる。また被検光201bの一部は、回折素子40での回折により偏向されて+1次回折光としての被検光201cとなる。さらに被検光202bの一部は、回折素子40での回折により偏向されて-1次回折光としての被検光202cとなる。本実施例では被検光200c、201c、202cを0次および±1次回折光としているが、他の次数の回折光であってもよい。
【0017】
被検光200cは、レンズ50a、50bを通って波面センサ90により受光される。被検光201cは、回折素子41により回折されて-1次回折光となり、レンズ51a、51bを通って波面センサ91により受光される。被検光202cは、回折素子42により回折されて+1次回折光となり、レンズ52a、52bを通って波面センサ92により受光される。回折素子41、42は、波面計測装置1を小型化するための偏向素子として用いられている。回折素子41、42に代えて、プリズムやフレネルプリズムを用いてもよい。
【0018】
波面センサ90、91、92はそれぞれ、受光した被検光200c、201c、202cが形成する光学像を撮像(光電変換)して該被検光200c、201c、202cに対応する信号をコンピュータ100に出力する。本実施例では、波面センサ90、91、92が被検光200c、201c、202cの数と同数設けられている。このことは、後述する他の実施例でも同様である。
【0019】
コンピュータ100は、被検光200c、201c、202cに対応する信号を用いて、被検光学系30を透過した複数の画角の被検光200c、201c、202cの波面を算出する。
【0020】
本実施例では、シャックハルトマンの原理を利用して波面を算出する。すなわち波面センサ90、91、92は、マイクロレンズアレイを備えたシャックハルトマンセンサである。波面収差がない平行光がシャックハルトマンセンサに入射すると、マイクロレンズアレイの周期と同じ周期のスポット配列像が撮像される。一方、波面収差を有する光がシャックハルトマンセンサに入射すると、スポット配列像のそれぞれのスポット位置が各マイクロレンズに入射した光の波面の傾きに比例してシフトする。このスポット位置のシフト量に基づいて波面が算出される。
【0021】
図2のフローチャートは、本実施例における被検光学系30の波面の計測手順(波面計測方法)を示している。まずステップS10において、計測者は波面計測装置1に被検光学系30を設置して被検光学系30のフォーカスを調整する。フォーカス調整は、例えば、被検光学系30の光軸上を透過して波面センサ90に入射する光が平行光となるように調整すればよい。
【0022】
次にステップS20において、光源10、11、12を発光させて被検光学系30を透過した複数の画角の被検光を波面センサ90、91、92に受光させる。
【0023】
最後にステップS30において、コンピュータ100が、波面センサ90、91、92から出力された信号を用いて被検光学系30を透過した複数の画角の被検光の波面を算出する。
【0024】
一般に、被検光学系を透過した複数の画角の光(図1に示す被検光200b、201b、202b)は、被検光学系の射出側の近傍において重なり合う。このため、従来の波面計測装置では、被検光学系の焦点距離に応じて、重なり合った光を分離するための距離を確保したり、該距離の確保を省くために重なり合った光のまま複数の反射面で反射するダブルパス光学系を用いたりしている。
【0025】
上記距離の確保が必要な光学系では、望遠レンズのような焦点距離の長い被検光学系を計測するためには、重なり合った光を分離するために数mの距離を確保しなければならず、波面計測装置の設置に広い空間が必要である。このような広い空間に設置された波面計測装置は振動、熱膨張および空気揺らぎの影響を受けやすく、計測精度が低下するおそれがある。
【0026】
一方、ダブルパス光学系を用いると、複数の光を波面センサまで導くための導光光学系の構成が複雑になるため、波面計測装置の組立調整が難しい。しかも複数の反射面を含むダブルパス光学系を用いると、様々な面での不要な反射光が受光センサに入射して受光センサからの信号にノイズが混入することで、計測精度が低下し易い。
【0027】
これに対して、本実施例によれば、被検光学系を透過して重なり合った光を回折素子によって短い距離で分離することができる。このため、装置の設置のための広い空間や複雑構成の導光光学系を不要とし、小型、堅牢で組立調整が容易なシングルパスの波面計測装置を実現することができる。
【0028】
本実施例では、被検光学系30の複数の画角の光として3つの画角の光を例示したが、より多くの画角の光の波面を計測できるように光源系、回折素子、レンズおよび波面センサを設けてもよい。また図1では複数の画角の光を2次元的に分離する場合を示したが、3次元的に分離することもできる。
【0029】
被検光学系30がズーム(変倍)可能な光学系である場合は、各ズーム状態における複数の画角の被検光の波面を計測することもできる。この場合、ズーム状態によって被検光学系30から出射する被検光の角度が異なるので、その角度に応じて回折素子、レンズおよび波面センサを配置すればよい。ズーム状態ごとの被検光の出射角度の差が小さい場合には、回折素子40による偏向度合いを適切に設定することで複数の画角の被検光を良好に分離することができる。例えば、格子周期が異なる回折素子を複数枚並べたものを回折素子40として使用したり、回折光の出射角度を選択できるCGHを使用したりすればよい。
【0030】
本実施例では、レンズ50a、50bのセット、レンズ51a、51bのセットおよびレンズ52a、52bのセットがそれぞれ、ビームエキスパンダの機能と瞳結像レンズの機能とを有する。ビームエキスパンダ機能によって、被検光学系30を透過した被検光が波面センサの受光面上で適切なサイズになるように調整される。一方、瞳結像レンズ機能によって、被検光学系30の瞳と波面センサとが共役関係に設定される。
【0031】
本実施例では、波面センサ90、91、92として、マイクロレンズアレイを備えたシャックハルトマンセンサを用いているが、他の波面センサを用いてもよい。例えば、ハルトマンマスクを備えたシアリング干渉計(タルボ干渉計)を用いてもよい。ハルトマンマスクは、2次元位相型回折格子または2次元振幅型回折格子のいずれでもよい。シアリング干渉計では、ハルトマンマスクの後方にできる自己像の歪みから、フーリエ変換法によって波面を算出することができる。また、ハルトマンマスクとして、ピンホールアレイであって1つのピンホールを透過した光と隣接するピンホールを透過した光との干渉が無視できるようにピンホール同士が離れているものを用いて、シャックハルトマンセンサと同様の原理で波面を算出することもできる。
【0032】
また、被検光の強度情報を用いてその波面を算出する方法を用いてもよい。その方法は次の通りである。まずレンズ50b、51b、52bを取り除く。そしてレンズ50a、51a、52aのそれぞれによる集光点付近に、直進ステージ上に固定されたイメージセンサを配置する。直進ステージを駆動しながら集光点付近の像を複数、撮像する。コンピュータ100は、撮像された複数の像の強度情報を用いて被検光学系30を透過した複数の画角の被検光の波面を算出する。強度情報から波面を算出する方法としては、強度輸送方程式を用いる方法や、特定の波面の初期値に基づいて最適化計算を行う方法や、波面と像の強度情報との関係を機械学習させた人工知能(AI)を用いて波面を算出する方法を用いることができる。
【0033】
本実施例では、光源系120に複数の光源を用いているが、1つの光源からの光を分岐させて複数の画角の光を出射するように光源系を構成してもよい。また、光源系に波長が互いに異なる複数の光源を用いることにより、被検光学系30を透過した被検光の波面の波長依存性を計測することもできる。ただし、回折素子は波長が変わると回折角が変化するので、必要に応じてレンズや波面センサの配置の調整を行う。
【0034】
本実施例では、被検光学系30を透過した被検光が平行光(物体位置が無限遠)の状態で計測するが、収束光(物体位置が有限)の状態で計測してもよい。その場合は、レンズ50a、51a、52aを省き、レンズ50b、51b、52bを適切な開口数と焦点距離のレンズに交換すればよい。
【0035】
また本実施例では、回折素子40として透過型のものを用いているが、反射型の回折素子を用いても実施例と同様の効果を有する波面計測装置を実現することができる。
【実施例2】
【0036】
図3は、本発明の実施例2である波面計測装置2の構成を示している。波面計測装置2は、光源系121、回折素子40、レンズ50a、50b、51a、51b、52a、52b、53a、53b、54a、54b、複数の波面センサ90、91、92、93、94およびコンピュータ100を有する。光源系121は、単一の光源10とファイバ20、21、22、23、24とにより構成されており、被検光学系30の複数の画角の被検光を出射する。波面計測装置2は、被検光学系30を透過した上記複数の画角の被検光の波面を計測する。本実施例の波面計測装置2は、実施例1の波面計測装置1よりも複数の画角の被検光の数が多い場合に用いられる。
【0037】
光源10から出射した光は複数に分割されてファイバ20、21、22、23、24に入射する。ファイバ20、21、22、23、24からは複数(5つ)の画角の被検光200a、201a、202a、203a、204aが出射して被検光学系30に入射する。被検光200aは被検光学系30の軸上の光であり、被検光201a、202aは被検光学系30の小さい画角の光であり、被検光203a、204aは被検光学系30の大きい画角の光である。
【0038】
被検光学系30を透過した複数の被検光200b、201b、202b、203b、204bのうち大きい画角の被検光203b、204bは、被検光学系30から短い距離を伝搬するだけで他の被検光から分離する。このため、被検光203b、204bは、それぞれに対応する受光系(レンズ53a、53bと波面センサ93のセットおよびレンズ54a、54bと波面センサ94のセット)にてそのまま受光される。一方、軸上の被検光200bと小さい画角の被検光201b、202bは、回折素子40による回折によって分離される。これにより被検光学系30から長い距離を伝搬して分離させることが不要となる。
【0039】
回折素子40で回折された被検光200c、201c、202cは、それぞれに対応する受光系(レンズ50a、50bと波面センサ90のセット、レンズ51a、51bと波面センサ91のセットおよびレンズ52a、52bと波面センサ92のセット)にて受光される。
【0040】
被検光200c、201c、202c、203b、204bをそれぞれ受光した波面センサ90、91、92、93、94からの該被検光に対応する信号は、コンピュータ100に出力される。コンピュータ100は、複数の被検光に対応する信号を用いて、被検光学系30を透過した複数の画角の被検光200c、201c、202c、203b、204bの波面を算出する。
【0041】
本実施例では、大きい画角の被検光203b、204bを回折素子40の外側を通過させているが、回折素子40の有効径を大きくして回折素子40を0次回折光として透過させてもよい。被検光203b、204bは、被検光200b、201b、202bから分離されればよいので、0次回折光に限らず、他の次数の回折光を用いてもよい。
【実施例3】
【0042】
図4は、本発明の実施例3である波面計測装置3の構成を示している。波面計測装置3は、光源系122、回折素子40、レンズ50、50b、51b、52b、ミラー71、72、複数の波面センサ90、91、92およびコンピュータ100を有する。
【0043】
光源系122は、光源10、11、12とピンホールアレイ25とにより構成されており、被検光学系30の複数の画角の被検光を出射する。波面計測装置3は、被検光学系30を透過した上記複数の画角の被検光の波面を計測する。本実施例では、被検光学系30を透過した直後において重なり合った複数の被検光を回折素子40とレンズ50とミラー71、72とを用いて分離する。
【0044】
光源10、11、12から出射した光はそれぞれ、ピンホールアレイ25の複数のピンホールを透過して発散波としての複数(3つ)の被検光200a、201a、202aとなり、被検光学系30に入射する。被検光学系30を透過した複数の被検光200b、201b、202bはそれぞれ、回折素子40から0次回折光としての被検光200c、-1次回折光としての被検光201c、+1次回折光としての被検光202cとなって出射する。本実施例における被検光201c、202cは、実施例1、2と正負が逆の次数の回折光である。
【0045】
被検光200c、201c、202cは重り合ったままレンズ50に入射し、該レンズ50を透過した後の集光点付近にて互いに分離する。被検光200cはそのまま直進して、レンズ50bを通って波面センサ90にて受光される。一方、被検光201c、202cはそれぞれ、集光点付近に配置されたミラー71、72によって反射されてレンズ51b、52bを通って波面センサ91、92にて受光される。
【0046】
被検光200c、201c、202cをそれぞれ受光した波面センサ90、91、92からの該被検光に対応する信号は、コンピュータ100に出力される。コンピュータ100は、複数の被検光に対応する信号を用いて、被検光学系30を透過した複数の画角の被検光200c、201c、202cの波面を算出する。
【実施例4】
【0047】
図5は、本発明の実施例4である波面計測装置4の構成を示している。波面計測装置4は、光源系123、回折素子41、42、43、44、複数の波面センサ90、91、92およびコンピュータ100を有する。光源系123は、単一の光源10とファイバ20、21、22によって構成されており、被検光学系30の複数の画角の被検光を出射する。波面計測装置4は、被検光学系30を透過した上記複数の画角の被検光の波面を計測する。本実施例では、被検光学系30として広角ズームレンズを用いており、回折素子を用いて、互いに異なるズーム状態の波面計測において波面センサを共用する。
【0048】
光源10から出射した光は複数に分割されてファイバ20、21、22に入射する。ファイバ20、21、22からは複数(3つ)の画角の被検光200a、201a、202aが出射して被検光学系30に入射する。被検光学系30を透過した複数の被検光は、被検光学系30のズーム状態に応じて異なる角度で射出される。本実施例では、焦点距離が長い状態での複数の被検光を図中に実線200b、201b、202bで示し、焦点距離が短い状態での複数の被検光を破線200B、201B、202Bで示している。
【0049】
まず、焦点距離が長い状態での複数の被検光200b、201b、202bの光路について説明する。軸上の被検光200bは、直接、波面センサ90にて受光される。軸外の被検光201bは、回折素子41で回折して-1次回折光としての被検光201cとなって波面センサ91にて受光される。もう一方の軸外の被検光202bは、回折素子42で回折して+1次回折光としての被検光202cとなって波面センサ92にて受光される。
【0050】
次に、焦点距離が短い状態での複数の被検光200B、201B、202Bの光路について説明する。軸上の被検光200Bは、直接、波面センサ90にて受光される。軸外の被検光201Bは、回折素子43で回折されて-1次回折光となり、さらに回折素子41を透過して0次回折としての被検光201Cとなって波面センサ91にて受光される。もう一方の軸外の被検光202Bは、回折素子44で回折して+1次回折光となり、さらに回折素子42を透過して0次回折光としての被検光202Cとなって波面センサ92にて受光される。
【0051】
本実施例において、回折素子43、44はそれぞれ、被検光201B、202Bを波面センサ91、92に向けて偏向するために用いられている。このため、回折素子43、44を、プリズム、フレネルプリズムまたはミラー等に置き換えてもよい。
【0052】
被検光200b、201c、202cまたは被検光200B、201C、202Cをそれぞれ受光した波面センサ90、91、92からの該被検光に対応する信号は、コンピュータ100に出力される。コンピュータ100は、複数の被検光に対応する信号を用いて、被検光学系30を透過した複数の画角の被検光200b、201c、202cまたは被検光200B、201C、202Cの波面を算出する。
【0053】
実施例1~4にて説明した波面計測装置によれば、小型かつ簡易な構成で、被検光学系を透過した複数の画角の被検光の波面(透過波面)を計測することができる。
【実施例5】
【0054】
図6のフローチャートは、本発明の実施例5としての光学系の製造方法を示す。実施例1~4で説明した波面計測装置1~4のいずれかを用いて計測された波面の結果を、光学系(被検光学系30)の製造方法にフィードバックすることが可能である。
【0055】
まずステップS101において、製造者は、複数の光学素子(レンズ等)を用いて光学系を組み立てて、各光学素子の位置を調整する。
【0056】
次にステップS102において、製造者(計測者)は、組立調整された光学系の精度や性能を評価する。この際、波面計測装置1~4のいずれかを用いて光学系を透過した複数の被検光の波面を計測し、その結果を用いて評価を行う。満足する評価結果が得られなければステップS101に戻って、再度、光学系の組立てや調整を行う。一方、満足する評価結果が得られた場合は、本製造方法による光学系の製造を終了する。
【0057】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,2,3,4 波面計測装置
30 被検光学系
40,41,41,42,43,44 回折素子
90,91,92,93,94 波面センサ
100 コンピュータ(取得手段、算出手段)
120 光源系
図1
図2
図3
図4
図5
図6