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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】光電変換装置、撮像システム、移動体
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240729BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20240729BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H04N25/70
H01L27/146 A
H01L27/146 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020026133
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021132095
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷田 達人
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016667(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169883(WO,A1)
【文献】特開2012-114197(JP,A)
【文献】特開2019-125907(JP,A)
【文献】特開2018-195977(JP,A)
【文献】特開2016-033978(JP,A)
【文献】特開2016-058555(JP,A)
【文献】特開2016-032053(JP,A)
【文献】特開2018-046039(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有効画素を有する有効画素領域と、前記有効画素領域の外部に設けられた周辺領域とを有する光電変換装置であって、前記光電変換装置は、
配線層と、
上部電極と、
前記有効画素領域と前記周辺領域とに渡って設けられた光電変換膜と、
を有し、
前記複数の有効画素の各々は、深さ方向において、前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された画素電極を有し、
前記周辺領域は、前記深さ方向において前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された導電層を備え、
前記上部電極と前記導電層が同電位であり、
前記導電層と前記画素電極とは、同一の材料で形成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記上部電極と前記導電層とは、電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
複数の有効画素を有する有効画素領域と、前記有効画素領域の外部に設けられた周辺領域とを有する光電変換装置であって、前記光電変換装置は、
配線層と、
上部電極と、
前記有効画素領域と前記周辺領域とに渡って設けられた光電変換膜と、
を有し、
前記複数の有効画素の各々は、深さ方向において、前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された画素電極を有し、
前記周辺領域は、前記深さ方向において前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された導電層を備え、
前記上部電極と前記導電層が接続されており、
前記導電層と前記画素電極とは、同一の材料で形成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項4】
前記配線層に対して前記導電層が存在する方向と反対に、さらに周辺回路を備え、
前記導電層は、前記上部電極を介する前記周辺回路への光を遮光するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
複数の有効画素を有する有効画素領域と、前記有効画素領域の外部に設けられた周辺領域とを有する光電変換装置であって、前記光電変換装置は、
配線層と、
上部電極と、
前記有効画素領域と前記周辺領域とに渡って設けられた光電変換膜と、
を有し、
前記複数の有効画素の各々は、深さ方向において、前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された画素電極を有し、
前記周辺領域は、前記深さ方向において前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された導電層を備え、
前記上部電極と前記導電層が、同電位であり、または、接続されており、
前記配線層に対して前記導電層が存在する方向と反対に、さらに周辺回路を備え、
前記導電層は、前記上部電極を介する前記周辺回路への光を遮光するように配置されている、
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項6】
前記周辺回路は、列信号処理回路を含む、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記周辺回路は、列アンプ回路を含む、
ことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記導電層は矩形の枠状に広がっており、
前記矩形の4辺において、前記導電層と前記上部電極が電気的に接続される領域を有する辺と、前記導電層と前記上部電極が電気的に接続されない領域を有する辺とが少なくとも存在する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
複数の有効画素を有する有効画素領域と、前記有効画素領域の外部に設けられた周辺領域とを有する光電変換装置であって、前記光電変換装置は、
配線層と、
上部電極と、
前記有効画素領域と前記周辺領域とに渡って設けられた光電変換膜と、
を有し、
前記複数の有効画素の各々は、深さ方向において、前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された画素電極を有し、
前記周辺領域は、前記深さ方向において前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された導電層を備え、
前記上部電極と前記導電層が、同電位であり、または、接続されており、
前記導電層は矩形の枠状に広がっており、
前記矩形の4辺において、前記導電層と前記上部電極が電気的に接続される領域を有する辺と、前記導電層と前記上部電極が電気的に接続されない領域を有する辺とが少なくと
も存在する、
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項10】
前記導電層と前記画素電極とは、いずれも前記配線層上に配置されている、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記光電変換装置は、外部からバイアスが供給されるパッドを備え、
前記周辺領域は、前記有効画素領域と前記パッドとの間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記導電層を有する領域の少なくとも一部に、カラーフィルタまたはマイクロレンズをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記光電変換膜への光を遮光する遮光膜が配置された画素であり、前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された画素電極を有する遮光画素を有する遮光画素領域を含み、
前記有効画素領域と前記周辺領域との間に、前記遮光画素領域が配されている、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
前記画素電極を有する領域であって、前記画素電極に一定の電圧が印加されている第2画素領域をさらに含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記有効画素領域と前記遮光画素領域の間に、前記上部電極を有する第3画素領域をさらに含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記上部電極と前記導電層とが前記光電変換膜を挟む領域において、前記導電層と前記光電変換膜の間に絶縁層を備える、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する処理装置と、
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項18】
移動体であって、
請求項1から16のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
移動装置と、
前記光電変換装置から出力される信号から情報を取得する処理装置と、
前記情報に基づいて前記移動装置を制御する制御装置と、
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換装置、撮像システム、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置(光電変換装置)の構成として、光電変換膜が基板上に積層されており、受光部を含む画素を備えた構成が知られている。特許文献1に記載された撮像装置では、画素領域、および画素領域から延在する周辺領域(画素領域の周辺の領域)に光電変換膜が形成されている。周辺領域における光電変換膜上には、画素領域から延在する上部電極が形成されている。また、周辺領域において、金属からなる配線が配置され、配線の上を覆っている光電変換膜と配線とは接触して電気的に接続される。このとき、配線は、上部電極より高い電圧に接続されている。
【0003】
特許文献1の撮像装置によれば、周辺領域では、光電変換膜内において入射光が電荷に変換されても、電界により当該電荷は配線に引き寄せられ、配線を介して外部に排出される。このため、周辺領域で発生した電荷が画素領域へ入り込むこと(画素領域における電荷に混入すること)による画素信号への影響の可能性を低減できるため、画質劣化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-114197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような撮像装置(光電変換装置)では、配線は、上部電極より高い電位(電圧)に接続されている。従って、例えば、光電変換膜に欠陥があることによって配線と上部電極において短絡した場合には、過電流による発熱が影響して、撮像装置(光電変換装置)が故障する可能性がある。
【0006】
本発明は、画質劣化を抑制し、かつ、光電変換装置の故障の可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、
複数の有効画素を有する有効画素領域と、前記有効画素領域の外部に設けられた周辺領域とを有する光電変換装置であって、前記光電変換装置は、
配線層と、
上部電極と、
前記有効画素領域と前記周辺領域とに渡って設けられた光電変換膜と、
を有し、
前記複数の有効画素の各々は、深さ方向において、前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された画素電極を有し、
前記周辺領域は、前記深さ方向において前記配線層と前記光電変換膜との間に配置された導電層を備え、
前記上部電極と前記導電層が同電位であることを特徴とする光電変換装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画質劣化を抑制し、かつ、光電変換装置の故障の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る撮像装置の平面図である。
図2】実施形態1に係る撮像装置のA-A’線での断面図である。
図3】実施形態1に係る撮像装置のB-B’線での断面図である。
図4】印加電圧と光電流の関係を示す図、列アンプ回路の構成図である。
図5】実施形態1に係る他の撮像装置の断面図である。
図6】実施形態1に係る導電層および周辺回路を示す平面図である。
図7】実施形態1に係る画素回路の等価回路図および駆動を説明する図である。
図8】実施形態1に係る光電変換膜の構成の一例を示す図である。
図9】実施形態2に係る撮像装置の平面図である。
図10】実施形態2に係る撮像装置のC-C線での断面図である。
図11】実施形態3に係る撮像装置のA-A’線での断面図である。
図12】実施形態3に係る画素回路の回路図である。
図13】実施形態3に係る画素回路の回路図である。
図14】実施形態4および実施形態5に係る撮像装置の平面図である。
図15】実施形態4に係る撮像装置のD-D’線での断面図である。
図16】実施形態4に係る撮像装置のE-E’線での断面図である。
図17】実施形態5に係る撮像装置のF-F’線での断面図である。
図18】実施形態6に係る撮像装置のA-A’線での断面図である。
図19】実施形態7に係る撮像システムの構成例を表す図である。
図20】実施形態8に係る撮像システムおよび移動体の構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態を説明する。なお、上述した各実施形態は、矛盾が生じない限り任意に組み合わせることができる。
【0011】
<実施形態1>
以下では、実施形態1に係る撮像装置1(光電変換装置)の構成について説明する。本実施形態によれば、画質劣化を抑制し、かつ、撮像装置1の故障の可能性を低減することができる。
【0012】
[撮像装置の構成について]
図1は、撮像装置1を上方から見た(平面視した)平面図である。図2は、図1が示す撮像装置1のA-A’線での断面図である。撮像装置1は、半導体基板2、画素領域3、導電層4、パッド5、光電変換膜6、上部電極7を有する。ここで、本実施形態では、上部とは、撮像装置1の各構成の積層方向(深さ方向)であって、光電変換膜6に対して、上部電極7が存在する方向である。
【0013】
半導体基板2には、各画素から信号を読み出すための回路や配線(不図示)が設けられている。画素領域3は、半導体基板2の上に配置されている。画素領域3の詳細な構成については後述する。
【0014】
導電層4は、半導体基板2(後述する配線層11)の上に、画素領域3を囲うように配置されている。また、図2が示すように、周辺領域(画素領域3の周辺の領域;画素領域3の外の領域)において、導電層4と上部電極7とが光電変換膜6とを挟むような領域が存在する。
【0015】
複数のパッド5は、平面視において、導電層4を囲うように配置されている。パッド5は、ワイヤーボンディングによって、周辺領域に設けられた回路や配線と外部とを接続する。複数のパッド5の一部は、光電変換装置の外部からバイアスが供給されるパッドである。
【0016】
光電変換膜6は、光電変換膜6に入射した光を電荷に光電変換する。なお、光電変換膜6の少なくとも一部が、光電変換を行うことができればよい。光電変換は、例えば、フォトダイオードなどの光電変換部によって実現できる。光電変換膜6は、導電層4の上および画素領域3において(に渡って)延在しており、導電層4に積層した領域を有する。なお、遮光画素(OB画素)において光電変換膜6が光電変換することにより取得した信号と、有効画素において光電変換膜6が光電変換することにより取得した信号(画像信号)との差分をとることで、暗電流の直流分を除去する補正処理ができる。
【0017】
なお、光電変換膜6の製造工程において、光電変換膜6は半導体基板2全面に成膜された後、所望の領域においてパターニングがされる。その際、光電変換膜6のエッジ部(端部)はパターニングによるダメージを受けて特性が変動してしまう可能性がある。この特性の変動を防ぐために、周辺領域(画素領域3の外部)にも光電変換膜6を延在させる。このことで、画素領域3から光電変換膜6のエッジ部(端部)を離すことができるので、製造工程においてダメージを受けていない良好な特性の光電変換膜6を画素領域3にて形成することができる。
【0018】
上部電極7は、導電部材であり、また光を透過する。上部電極7は、光電変換膜6の上に積層される。また、上部電極7は、図2が示すように、周辺領域(画素領域外)において、光電変換膜6と接していない領域を有しており、この領域において上部電極7は導電層4と接触している。このことによって、上部電極7と導電層4とは電気的に接続されている。本実施形態では、矩形の枠状の導電層4の4辺において、導電層4と上部電極7が電気的に接続している。
【0019】
[画素領域の構成]
以下では、画素領域3の詳細な構成について、図2を用いて説明する。画素領域3は、画素回路9、画素電極12、光電変換膜6、上部電極7、保護膜13、カラーフィルタ14、マイクロレンズ15を含む。
【0020】
画素回路9は、画素ごとに配置された回路であり、光電変換膜6で生じた電荷に基づく信号を読み出す。画素回路9は、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタ、電荷蓄積部などを有するトランジスタ層10を有する。また、画素回路9は、トランジスタ層10の上部に、複数の絶縁膜と配線とを含む配線層11を有する。
【0021】
画素電極12は、光電変換膜6において発生した電荷を画素毎に分離して捕集する。画素電極12は、配線層11の上に(配線層11と光電変換膜7との間に)画素毎に配置される。光電変換膜6は、平面視において画素領域3において画素電極12を覆うように配置されている。上部電極7は、画素領域3において光電変換膜6の上に配置されている。つまり、画素領域3において、上部電極7と画素電極12との間に、光電変換膜6が配置される。保護膜13は、上部電極7の上に配置されている。
【0022】
カラーフィルタ14は、R,G,BまたはC,M,Yのいずれかの光を透過するフィルタである。カラーフィルタ14とマイクロレンズ15は、保護膜13の上に設けられている。
【0023】
[画素の配置について]
画素領域3は、有効画素領域30と遮光画素領域31(オプティカルブラック画素領域)とダミー画素領域32とダミー画素領域32’を含む。例えば、画素領域3の中心部には有効画素領域30が配置され、画素領域3の周辺部には遮光膜8が配置された遮光画素領域31が配置される。なお、二次元で配置される画素の信号補正を行うためには、図1が示すように、画素領域3の互いに直交する2辺沿いに遮光画素領域31が配置されることが好ましい。
【0024】
有効画素領域30は、光電変換膜6に光が入射する画素領域である。有効画素領域30は、遮光膜8を含まない有効画素30aを有する。また、有効画素30aにおける光電変換膜6の光電変換によって取得した信号は、被写体を撮像した画像信号として扱われる。
【0025】
遮光画素領域31(OB画素領域)は、遮光膜8によって光電変換膜6への光が遮光されている画素領域である。遮光画素領域31は、上部電極7の上に遮光膜8が配置された遮光画素31a(OB画素)を有する。遮光画素31aの構成は、遮光膜8を備えること以外、有効画素30aの構成と同一である。また、遮光画素31aにおける光電変換膜6の光電変換によって取得した信号は、画像信号から暗電流の直流分を除去する補正処理に用いられる。
【0026】
ダミー画素領域32は、画素領域3の端部、かつ遮光画素領域31に隣接して配置される。ダミー画素領域32は、ダミー遮光画素32bを有する。ダミー画素領域32’は、有効画素領域30と遮光画素領域31の間に配置される。ダミー画素領域32’は、ダミー画素32aおよびダミー遮光画素32bを有する。
【0027】
ダミー画素32aは有効画素領域30に隣接して配置され、ダミー遮光画素32bは遮光画素領域31に隣接して配置される。すなわち、有効画素領域30を囲うようにダミー画素32aが配置され、遮光画素領域31を囲うようにダミー遮光画素32bが配置される。ダミー画素32aは有効画素30aと同一の構成であり、ダミー遮光画素32bは遮光画素31aと同一の構成である。
【0028】
なお、ダミー画素32aにおける光電変換膜6が取得した信号は画像信号として扱われず、ダミー遮光画素31bにおける光電変換膜6が取得した信号は暗電流の直流分を除去する補正処理には用いられない。また、有効画素30a、遮光画素31a、ダミー画素32aおよびダミー遮光画素32bのいずれの画素においても、画素の各々は画素電極12を有し、画素電極12と画素回路9とは電気的に接続されている。
【0029】
このように、遮光膜8を有しないダミー画素32aが有効画素30aを囲うことによって、有効画素30aの周囲にダミー画素32aが配置された構造になるため、レイアウト起因による特性変動を抑制できる。具体的には、製造バラつき起因で遮光膜8の位置がずれてしまっても、有効画素領域30と遮光画素領域31の間にダミー画素領域32’(ダミー画素32a)が存在することによって、有効画素30aの光電変換膜6に入射光が到達することができる。
【0030】
また、遮光膜8を有するダミー遮光画素32bが遮光画素31aを囲うことで、遮光膜8の端部から入射光が入り込んでも、遮光画素31aの光電変換膜6には入射光が入らない。つまり、遮光画素31aの光電変換膜6に光が入射してしまう可能性を低減できる。
【0031】
なお、図2の例では、有効画素領域30を囲うダミー画素32aと、遮光画素領域31を囲うダミー遮光画素31bは、1画素分であるが2画素以上でもよい。
【0032】
図3は、図1が示した撮像装置1のB-B’線での断面図である。図2とは異なり、当
該断面では、遮光画素領域31が配置されていない。画素領域3の端部には、有効画素領域30に隣接して、ダミー画素領域32’’が配置される。ここで、ダミー画素領域32’’は、有効画素領域30を囲う。ダミー画素領域32’’はダミー画素32aを有する。このことによって、図2が示す場合と同様に、有効画素30aの光電変換膜6に十分に入射光が到達することができる。
【0033】
図4Aは、一定の光が入射される場合の光電変換膜6における印加電圧Vと光電流Iの関係を示す。印加電圧がゼロの場合には、光電変換膜6を流れる電流は、ほぼゼロである。これは、電子が発生していても電界がゼロであるので、直ぐにホールと再結合するためである。
【0034】
本実施形態では、導電層4と上部電極7とは接触しているため、導電層4と上部電極7によって挟まれた領域の光電変換膜6では印加電圧がゼロである。このため、当該領域の光電変換膜6にて発生する電流はほぼゼロである。すなわち、導電層4の上の光電変換膜6から画素領域3に移動する電荷が抑制され、画質の劣化を防ぐことができる。また、この構成によれば、撮像装置1の動作中に、上部電極7の電位を変更した場合においても追従して導電層4の電位も同様に変わり、光電変換膜6への印加電圧がゼロに保たれるので、画質の劣化抑制の効果が得られる。
【0035】
また、本実施形態では、導電層4と上部電極7とが接触している構成であるが、導電層4と上部電極7が同電位であればよい。例えば、図2が示す断面図のような構成の代わりに、図5が示す断面図に示すような構成であってもよい。具体的には、上部電極7と接した第1の部分41と、上部電極7と接しない第2の部分42とから導電層4が構成されており、第1の部分41と第2の部分42とが配線層11における配線で電気的に接続された構成でもよい。つまり、配線層11を介して、導電層4と上部電極7とが電気的に接続されていてもよい。また、導電層4と上部電極7とが電気的に接続されていない場合でも、第1の部分41と第2の部分42がそれぞれ異なるパッド5に接続された構成とし、第1の部分41と第2の部分42とに同じ値の電圧が外部電源から入力されていてもよい。
【0036】
このように、導電層4と上部電極7が同電位の場合には、例えば、光電変換膜6に欠陥があり経年劣化によって短絡したとしても電流が流れない。このため、発熱や熱による破壊の可能性が減少するため、撮像装置1の信頼性が低下しにくい。
【0037】
さらに、導電層4と画素電極12はいずれも、配線層11と光電変換膜6との間に、配線層11上(配線層上)に配置されている。このように、周辺領域において、画素電極12と同一の層(積層位置)に導電層4を配置することで、上部電極7を成膜する際に生ずる基板の段差を緩和することができる。このため、上部電極7の高抵抗化や段切れを防止し、撮像画像のムラを抑制することが可能である。また、画素電極12と導電層4とが同一の層に配置されることによれば、画素電極12と導電層4とを同一の工程において容易に形成可能である。
【0038】
[導電層について]
図6は、本実施形態における導電層4および周辺領域(画素領域3の周辺の領域)を示す平面図の一例である。
【0039】
周辺領域には、トランジスタで構成された列信号処理回路16や行制御回路17、列アンプ回路18などの周辺回路が配置され、その上に複数の絶縁膜と配線を含む配線層11が配置される。周辺回路は、配線層11に対して導電層4が存在する方向と反対(配線層11に対して下方向)に配置されている。
【0040】
導電層4は、平面視において、列信号処理回路16や行制御回路17などの周辺回路の少なくとも一部を覆うように配置される。また、導電層4は、配線層11の上に配置されている。なお、周辺回路の誤動作を防ぐために、周辺回路に光が入射しないようにする必要があるが、このように周辺回路に入射する光を遮光するように導電層4が配置されることによって、周辺回路に入射する光を配線層11が遮光する必要がなくなる。このため、配線層11のレイアウトの自由度が上がり、撮像装置1の小型化ができる。なお、周辺回路の中でも、列信号処理回路16、特には列アンプ回路18への光は遮断する必要がある。
【0041】
列アンプ回路18は、画素回路9からの信号電圧を2つのキャパシタの大きさの比率で増幅する。また、列アンプ回路18は、キャパシタをスイッチで切り替えて増幅率を変更する機能を有する。
【0042】
(列アンプ回路について)
図4Bは、列アンプ回路18の構成の一例を示している。列アンプ回路18はオペアンプ19を備え、オペアンプ19のマイナス入力端子にキャパシタ20の一端子が接続されている。なお、キャパシタ20の他方の端子には画素からの信号が入力される。また、オペアンプ19のマイナス入力端子には、トランジスタスイッチ21a,21b,21c,21dの一端子も接続される。
【0043】
トランジスタスイッチ21a~21dの他方の端子には、それぞれキャパシタ22a~22dの一端子が接続される。キャパシタ22a~22dの他方の端子、およびトランジスタスイッチ21eの他方の端子は、オペアンプ19の出力端子に接続される。オペアンプ19のプラス入力端子には基準電圧VREFが供給される。
【0044】
ここで、列アンプ回路18を駆動する前に、トランジスタスイッチ21eをオンして、オペアンプ19のマイナス入力端子と出力端子とを短絡することにより、キャパシタ22a~22dに蓄積された電荷がリセット(初期化)される。トランジスタスイッチ21a~21dのいずれかがオンにされることにより、キャパシタ22a~22dのいずれかがオペアンプ19と電気的に接続され、列アンプ回路18の増幅率を変更できる。
【0045】
なお、増幅するためにはキャパシタ22a~22dが信号電圧を保持する必要があるが、列アンプ回路18に光が入射すると、トランジスタスイッチ21a~21dにおいて光によるリーク電流が発生してしまう。これに対して、本実施形態のように、導電層4が遮光することによって、トランジスタスイッチ21a~21dにおける光によるリーク電流を抑制し、キャパシタ22a~22dによる増幅率の変動を抑制することが可能である。
【0046】
また、導電層4が周辺回路を覆うことによって、光電変換膜6の製造過程におけるパターニング時の製造プロセスダメージが周辺回路に及ぶことを防ぐことができる。なお、導電層4は、画素電極12と同一の工程、同一の材料(素材)によって形成することが可能であるため容易に形成することができる。また、列アンプ回路18などの周辺回路に光が入射することを防ぐために、遮光画素領域31に配置される遮光膜8を周辺領域における導電層4の上に延在して配置してもよい。
【0047】
[画素回路について]
以下に、本実施形態の画素回路9について説明する。
【0048】
図7Aは、画素電極12のそれぞれに対応して設けられた画素回路9の等価回路図を示している。画素電極12は、第1のフローティングディフュージョン(FD)420を介して、第1の増幅トランジスタ430のゲートに接続されている。FD420には、リセ
ットトランジスタ410を介して、リセット電位VRESが書き込めるように構成されている。第1の増幅トランジスタ430のソースは、トランジスタ440を介して、グランド電位に接続されている。また、第1の増幅トランジスタ430のドレインは、基準電位SVDDに接続されている。第1の増幅トランジスタ430のソースは、トランジスタ450と、第2のFD460を介して、第2の増幅トランジスタ470のゲートに接続されている。第2の増幅トランジスタ470のドレインは、基準電位SVDDに接続されている。第2の増幅トランジスタ470のソースは選択トランジスタ480を介して、出力線492に接続されている。第2のFD460には保持容量Cが接続されている。
【0049】
また、図7Aにおいて、PSELは選択トランジスタ480のゲートに入力される電位、PBIASはトランジスタ440のゲートに入力される電位、PRESはリセットトランジスタ410のゲートに入力される電位である。また、PSHはトランジスタ450のゲートに入力される電位である。
【0050】
図7Bを用いて、図7Aの画素回路の駆動について説明する。時刻t0は、電荷蓄積が開始されている任意の時刻である。時刻t1において、PSELとPBIASをLowレベル(Lレベル)からHigh(Hレベル)に変化させ、選択トランジスタ480とトランジスタ440をオンにする。これにより、第2のFD460に対応した電位であるノイズレベルの電位(N信号)が、第2の増幅トランジスタ470と選択トランジスタ480を介して、出力線492に出力される。トランジスタ440は、電流源として動作させるため、所望の電流値となるように、PBIASのHレベルを設定する。
【0051】
次に、時刻t2において、PSHをLレベルからHレベルに変化させ、トランジスタ450をオンにし、時刻t3において、PSHをHレベルからLレベルに変化させ、トランジスタ450をオフにする。これらの駆動により、第1のFD420で蓄積された電荷に対応した信号レベルの電位が第2のFD460に転送され、第2のFD460に対応した電位である信号レベルの電位(S信号)が、出力線492に出力される。
【0052】
次に、t4において、PRESをLレベルからHレベルに変化させ、リセットトランジスタ410をオンにする。これにより、第1のFD420に、リセット電位VRESが書き込まれる。
【0053】
次に、時刻t5において、PRESをHレベルからLレベルに変化させ、リセットトランジスタをオフにし、PSHをLレベルからHレベルに変化させ、トランジスタ450をオンにする。これにより、第1のFD420に対応した電位であるノイズレベルの電位が、第2のFD460に転送される。このノイズレベルの電位は保持容量Cに保持される。
【0054】
最後に、時刻t6において、PRES、PBIAS、PSHのそれぞれをHレベルからLレベルに変化させ、リセットトランジスタ410、トランジスタ440、トランジスタ450をオフにする。これにより、電荷蓄積が再開される。電荷蓄積の間は、容量Cにノイズレベルの電位が保持されている。
【0055】
なお、図7Aでは、2段の増幅トランジスタを有する画素回路を示したが、必ずしも2段の増幅トランジスタを備える必要はなく、1つの増幅トランジスタを備える画素回路を用いてもよい。
【0056】
[各構成の部材について]
次に、撮像装置1の各構成の部材(材料)について説明する。
【0057】
配線層11の絶縁膜には、例えば酸化シリコン、BPSG、PSG、BSG、窒化シリ
コン、炭化シリコンを用いることができる。また、配線層11の配線には、銅、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、ポリシリコンなどの導電材料を用いることができる。
【0058】
画素電極12は、薄膜電極である。画素電極12は、例えば、ITOやアルミニウムなどの透明、または不透明の導電性部材から形成される。
【0059】
上部電極7は、光の透過率が高い導電部材から構成される。光の透過率が高い導電部材とは、例えば、ITO(IndiumTinOxide)などのインジウムまたはスズを含む化合物、ZnOなどの化合物などである。このような構成によれば、多くの光を光電変換膜6に入射させることができ、光電変換膜6の感度を向上させることができる。なお、光を透過し得るように薄く形成されたポリシリコンまたは金属を、上部電極7として用いてもよい。金属の電気抵抗は低いため、上部電極7の材料に金属を用いた場合には、さらなる低消費電力化および高速化を実現し得る。
【0060】
光電変換膜6は、真性のアモルファスシリコン(以下、a-Siと称する)、低濃度のP型のa-Si、低濃度のN型のa-Siなどの半導体材料で形成され得る。または、光電変換膜6は、化合物半導体材料で形成されてもよい。例えば、光電変換膜6は、BN、GaAs、GaP、AlSb、GaAlAsPなどのIII-V族化合物半導体、CdSe、ZnS、HdTeなどのII-VI族化合物半導体、PbS、PbTe、CuOなどのIV-VI族化合物半導体で形成される。または、光電変換膜6は、有機半導体材料で形成されてもよい。例えば、有機半導体材料として、フラーレン、クマリン6(C6)、ローダミン6G(R6G)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、キナクリドン、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物などを用いることができる。さらに、上述の半導体材料で構成された量子ドットを含む層を光電変換膜6に用いることができる。このとき、量子ドットは、20.0nm以下の粒径を有する粒子であることが望ましい。
【0061】
なお、光電変換膜6が半導体材料で構成される場合には、当該半導体材料は、低濃度の不純物でドープされた材料、または真性半導体であることが望ましい。このような構成によれば、光電変換膜6における空乏層を十分に広げることができるため、高感度化、ノイズ低減などの効果を得ることができる。
【0062】
図8は、光電変換膜6の構成を示す一例である。光電変換膜6は、例えば、光電変換層60に加えて、画素電極12から光電変換層60に電荷が注入されるのを抑制する電荷ブロッキング層や密着層などの第1の機能層61を、光電変換層60と画素電極12との間に有することができる。また、光電変換膜6は、光電変換層60と上部電極7との間においても、上部電極7から光電変換層60に電荷が注入されるのを抑制する電荷ブロッキング層などの第2の機能層62を有することができる。
【0063】
画素電極12は、金属などの導電部材から構成される。画素電極12には、配線を構成する導電部材、または、外部と接続するためのパッド電極を構成する導電部材と同じ材料が用いられ得る。例えば、画素電極12には、Al、Cu、TiNなどの材料を適宜用いることができる。このような構成によれば、画素電極12と、配線層11の配線を構成する導電部材またはパッド電極とを同時に形成することができる。したがって、製造プロセスを簡略化することができる。
【0064】
遮光膜8は、光を遮光する材料であれば何でもよい。遮光膜8には、配線と同様に、銅、アルミニウム、タングステン、タンタル、チタン、または、その合金などの金属材料が好適に使用できる。
【0065】
カラーフィルタ14は、R,G,BまたはC,M,Yのいずれかの光を透過するフィルタである。カラーフィルタ14は、RGBまたはCMYの波長の光を透過する白色のフィルタやIRのフィルタであってもよい。なお、複数の種類のカラーフィルタ14が設けられることによってカラーフィルタ間に段差ができる場合には、カラーフィルタ14の上に平坦化層を設けてもよい。
【0066】
マイクロレンズ15は、樹脂などの材料を用いて形成される。なお、例えば、1つのマイクロレンズ15が設けられている領域を1画素として画定することもできる。
【0067】
なお、カラーフィルタ14やマイクロレンズ15は画素領域3だけではなく、周辺領域に配置されていてもよい。例えば、図2が示すように、周辺領域の画素領域3に隣接する領域において、カラーフィルタ14’やマイクロレンズ15’が、導電層4や光電変換膜6の上に配置されていてもよい。これによって、カラーフィルタやマイクロレンズが画素領域3から周辺領域に亘って延在して配置されるため、画素領域3に配置されるカラーフィルタ14やマイクロレンズ15の均一性が向上できる。つまり、撮像装置1における歩留まり向上、遮光画素領域31における遮光性向上が実現できる。
【0068】
<実施形態2>
以下、実施形態2に係る撮像装置1について説明する。なお、実施形態1と同様の構成についての説明は省略する。
【0069】
図9は、実施形態2に係る撮像装置1を上方から見た平面図である。図10は、図9が示す撮像装置1のC-C’線での断面図である。本実施形態に係る撮像装置1は、実施形態1と同様に、平面視において、画素領域3を囲うように導電層4が配置されており、光電変換膜6は導電層4の上および画素領域3に延在している。
【0070】
一方、図9図10が示すように、撮像装置1は、実施形態1とは異なり、矩形の枠状の導電層4において、導電層4と上部電極7が電気的に接続している辺と、導電層4と上部電極7とが電気的に接続していない辺を備える。より詳細には、図10が示すように、左右の辺(C-C’線での断面)では、導電層4の上に光電変換膜6が配置されており、光電変換膜6の上に上部電極7が配置されているが、上部電極7と導電層4は接触していない。
【0071】
このように、本実施形態では、導電層4の2辺において、導電層4と上部電極7が電気的に接続される領域が無いため、その分だけ撮像装置1を小型化にすることができる。なお、導電層4と上部電極7が電気的に接続される領域は2辺であるが、これに限らずに1辺や3辺でもよい。
【0072】
<実施形態3>
以下、実施形態3に係る撮像装置1について説明する。なお、実施形態1と同様の構成についての説明は省略する。実施形態3に係る撮像装置1は、実施形態1と同様に図1が示すような平面図によって示される。
【0073】
図11は、図1のA-A’線における実施形態3に係る撮像装置1の断面図である。撮像装置1では、実施形態1と同様に、画素領域3を囲うように導電層4が配置されており、光電変換膜6は導電層4の上および画素領域3に延在している。
【0074】
実施形態3に係る撮像装置1では、実施形態1におけるダミー画素領域32の代わりにバッファ画素領域33が配置され、ダミー画素領域32’の代わりにバッファ画素領域33’が配置されている。
【0075】
バッファ画素領域33は、画素領域3の端部、かつ遮光画素領域31に隣接して配置され、バッファ遮光画素33bを有する。バッファ画素領域33’は、有効画素領域30と遮光画素領域31の間に配置され、バッファ画素33aおよびバッファ遮光画素33bを有する。バッファ画素33aは遮光膜8を有さず、バッファ遮光画素33bは遮光膜8を有する。
【0076】
バッファ画素33aは有効画素領域30に隣接して配置され、バッファ遮光画素33bは遮光画素領域31に隣接して配置される。すなわち、有効画素領域30を囲うようにバッファ画素33aが配置され、遮光画素領域31を囲うようにバッファ遮光画素33bが配置される。これによって、実施形態1と同様に、有効画素領域30の光電変換膜6への十分な光の入射を可能にし、遮光画素領域31の光電変換膜6への光の入射量を十分に低減することを可能にする。
【0077】
なお、図11が示す例では、有効画素領域30を囲うバッファ画素33aと遮光画素領域31を囲うバッファ遮光画素33bとは1画素分であるが2画素以上でもよい。
【0078】
ここで、バッファ画素33aとバッファ遮光画素33bでは、画素電極12が電荷を収集できるように一定の電圧が印加される。図12A,B、図13はいずれも、バッファ画素33aとバッファ遮光画素33bの画素回路9の構成例を示している。
【0079】
図12Aが示す、図7Aが示す回路を変形させた画素回路9の構成では、リセットトランジスタ410を常時オンさせている。例えば、リセットトランジスタ410のゲートを、基準電位SVDDに接続することにより、Hレベルの信号が常時入力された状態である。こうして、FD420にリセット電位VRESを常時書き込んでいる。
【0080】
図12Bが示す、図7Aが示す回路を変形させた画素回路9の構成では、リセットトランジスタ410を備えず、FD420にリセット電位VRESを電気的に接続した構成である。
【0081】
図13が示す構成は、画素回路9と画素電極12とは接続されておらず、画素電極12にリセット電位VRESを電気的に接続した構成である。
【0082】
本実施形態によれば、バッファ画素33aとバッファ遮光画素33bにおいて、画素電極12にリセット電位VRESを常に接続した状態にできるため、光電変換膜6で発生した電荷が画素電極12に収集できる。従って、有効画素領域30や遮光画素領域31に不要な電荷が移動する可能性が低減できる。このため、画質の劣化を抑制することが可能である。
【0083】
なお、バッファ画素33aおよびバッファ遮光画素33bは、上述した画素回路9を有する構成に限らず、バッファ画素33aとバッファ遮光画素33bにおける光電変換膜6で発生した電荷が画素電極12に収集できる構成であればよい。
【0084】
<実施形態4>
以下、実施形態4に係る撮像装置1について説明する。なお、実施形態1と同様の構成についての説明は省略する。
【0085】
図14Aは、実施形態4に係る撮像装置1を上方から見た平面図である。図15は、図14Aが示す撮像装置1のD-D’線での断面図である。本実施形態においても、撮像装置1では、画素領域3を囲うように導電層4が配置されている。しかし、実施形態1とは
異なり、導電層4が画素領域3の内側まで延在している。
【0086】
図15が示すように、画素領域3には、有効画素領域30と遮光画素領域31とダミー画素領域32’とNULL画素領域34が配置される。有効画素領域30と遮光画素領域31とダミー画素領域32’は、実施形態1と同様に構成される。
【0087】
NULL画素領域34は、画素領域3の端部に配置される。NULL画素領域34には、上部電極7と電気的に接続された導電層4が配置されている。また、NULL画素領域34は、遮光画素領域31に隣接して配置されている。NULL画素領域34は、NULL画素34aを有する。NULL画素34aには、遮光膜8が含まれていてもよい。なお、NUL画素領域34における導電層4と上部電極7とは電気的に接続されている必要はなく、同電位であればよい。
【0088】
なお、NULL画素領域34は、図14Aが示す平面視において画素領域3と導電層4とが重畳する領域に対応している。なお、NULL画素34aにおける画素回路9は、有効画素領域30における画素回路9と同一の構成であるが、画素電極12と接続されておらず、光電変換膜6からの信号電荷を読み出さない。
【0089】
なお、ダミー画素領域32’の代わりに、実施形態3のようにバッファ画素領域33’(バッファ画素33a、バッファ遮光画素33b)を配置してもよい。
【0090】
図16は、図14Aが示す撮像装置1のE-E’線での断面図である。当該断面では、図15と異なり、遮光画素領域31が配置されていない。画素領域3の端部には、NULL画素領域34”が配置される。NULL画素領域34”は、NULL画素34aを有する。有効画素領域30に隣接して、NULL画素領域34”が配置される。
【0091】
このように、NULL画素34aにおける導電層4と上部電極7によって挟まれた光電変換膜6では印加電圧がゼロであるため、電子が発生してもすぐにホールと再結合してしまい暗電流や光電流がほとんど発生しない。このため不要な電荷が、有効画素領域30に移動することがなく、画質の劣化を抑制することが可能である。
【0092】
<実施形態5>
以下、実施形態5に係る撮像装置1について説明する。なお、実施形態4と同様の構成についての説明は省略する。
【0093】
図14Bは、実施形態5に係る撮像装置1を上方から見た平面図である。図17は、図14Bが示す撮像装置1のF-F’線での断面図である。撮像装置1では、画素領域3を囲うように導電層4が配置され、実施形態4と同様に、導電層4が画素領域3の内側まで延在している。なお、実施形態3とは異なり、平面視において、導電層4は、画素領域3の端部だけでなく、遮光画素領域31を囲うように配置されている。
【0094】
図17が示すように、画素領域3は、有効画素領域30と遮光画素領域31とNULL画素領域34とNULL画素領域34’を含む。有効画素領域30と遮光画素領域31とNULL画素領域34は、実施形態4と同一の構成である。
【0095】
NULL画素領域34’は、有効画素領域30と遮光画素領域31の間に配置され、上部電極7と電気的に接続された導電層4がNULL画素領域34’に含まれる。NULL画素領域34とNULL画素領域34’は、遮光画素領域31に隣接して配置される。NULL画素領域34とNULL画素領域34’は、NULL画素34aを有する。NULL画素34aには、遮光膜8が含まれていてもよい。
【0096】
なお、NULL画素領域34、およびNULL画素領域34’は、図14Bにおける画素領域3において導電層4に覆われる領域に対応している。
【0097】
なお、図示していないが、有効画素30aとNULL画素34aの間にダミー画素32aが配置されてもよい。また、遮光画素31aとNULL画素34aの間にダミー遮光画素31bが配置されてもよい。
【0098】
実施形態4と同様に、NULL画素34aにおいて導電層4と上部電極7によって挟まれた光電変換膜6では印加電圧がゼロのため、電子が発生してもすぐにホールと再結合して暗電流や光電流がほとんど発生しない。このため不要な電荷が有効画素領域30や遮光画素領域31に移動することがなく、画質の劣化を抑制することが可能である。
【0099】
<実施形態6>
以下、実施形態6に係る撮像装置1について説明する。なお、実施形態1と同様の構成についての説明は省略する。実施形態6に係る撮像装置1は、実施形態1と同様に図1が示すような平面図によって示される。
【0100】
図18は、図1のA-A’線における実施形態6に係る撮像装置1の断面図である。実施形態1とは異なり、周辺領域(上部電極7と導電層4とが光電変換膜6を挟む領域)において、導電層4と光電変換膜6との間に絶縁層23が配置されている。つまり、周辺領域において、導電層4、絶縁層23、光電変換膜6、上部電極7の順に積層されている領域が存在する。絶縁層23として、例えば、酸化シリコン、BPSG、PSG、BSG、窒化シリコン、炭化シリコンを用いることができる。絶縁層21の厚さが、10nm~300nmが好適であれば、より好適には50nm~200nmであれば、導電層4と上部電極7によって光電変換膜6に効果的にバイアス(電圧)を与え得る。
【0101】
なお、本実施形態では、図8が示すように、電荷ブロッキング層や密着層などの第1の機能層61が、光電変換層60と画素電極12の間に配置される。実施形態1の構成では、第1の機能層61が低抵抗であった場合には、第1の機能層61を介して導電層4から、有効画素領域30や遮光画素領域31の画素電極12に電流が流れ、画質の劣化を引き起こす可能性がある。これに対して、本実施形態のように、絶縁層23を配置することで第1の機能層61を介した電流を抑制することができ、画質の劣化を抑制できる。
【0102】
<実施形態7>
本発明の実施形態7による撮像システムについて、図19を用いて説明する。図19は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【0103】
上記実施形態1~実施形態6で述べた撮像装置1(光電変換装置)は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星、医療用カメラなどの各種の機器が挙げられる。また、レンズなどの光学系と光電変換装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。図19にはこれらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0104】
撮像システム500は、図19に示す、光電変換装置100、撮像光学系502、CPU510、レンズ制御部512、撮像装置制御部514、画像処理部516、絞りシャッタ制御部518、表示部520、操作スイッチ522、記録媒体524を備える。
【0105】
撮像光学系502は、被写体の光学像を形成するための光学系であり、レンズ群、絞り504等を含む。絞り504は、その開口径を調節することで撮影時の光量調節を行なう機能を備えるほか、静止画撮影時には露光秒時調節用シャッタとしての機能も備える。レンズ群及び絞り504は、光軸方向に沿って進退可能に保持されており、これらの連動した動作によって変倍機能(ズーム機能)や焦点調節機能を実現する。撮像光学系502は、撮像システムに一体化されていてもよいし、撮像システムへの装着が可能な撮像レンズでもよい。
【0106】
撮像光学系502の像空間には、その撮像面が位置するように光電変換装置100が配置されている。光電変換装置100は、実施形態1~実施形態6で説明した撮像装置1であり、CMOSセンサ(画素部)とその周辺回路(周辺回路領域)とを含んで構成される。光電変換装置100は、複数の光電変換部を有する画素が2次元配置され、これらの画素に対してカラーフィルタが配置されることで、2次元単板カラーセンサを構成している。光電変換装置100は、撮像光学系502により結像された被写体像を光電変換し、画像信号や焦点検出信号として出力する。
【0107】
レンズ制御部512は、撮像光学系502のレンズ群の進退駆動を制御して変倍操作や焦点調節を行うためのものであり、その機能を実現するように構成された回路や処理装置により構成されている。絞りシャッタ制御部518は、絞り504の開口径を変化して(絞り値を可変として)撮影光量を調節するためのものであり、その機能を実現するように構成された回路や処理装置により構成される。
【0108】
CPU510は、カメラ本体の種々の制御を司るカメラ内の制御装置であり、演算部、ROM、RAM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイス回路等を含む。CPU510は、ROM等に記憶されたコンピュータプログラムに従ってカメラ内の各部の動作を制御し、撮像光学系502の焦点状態の検出(焦点検出)を含むAF、撮像、画像処理、記録等の一連の撮影動作を実行する。CPU510は、信号処理部でもある。
【0109】
撮像装置制御部514は、光電変換装置100の動作を制御するとともに、光電変換装置100から出力された信号をA/D変換してCPU510に送信するためのものであり、それら機能を実現するように構成された回路や制御装置により構成される。A/D変換機能は、光電変換装置100が備えていてもかまわない。画像処理部516は、A/D変換された信号に対してγ変換やカラー補間等の画像処理を行って画像信号を生成するためのものであり、その機能を実現するように構成された回路や制御装置により構成される。表示部520は、液晶表示装置(LCD)等の表示装置であり、カメラの撮影モードに関する情報、撮影前のプレビュー画像、撮影後の確認用画像、焦点検出時の合焦状態等を表示する。操作スイッチ522は、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチ等で構成される。記録媒体524は、撮影済み画像等を記録するためのものであり、撮像システムに内蔵されたものでもよいし、メモリカード等の着脱可能なものでもよい。
【0110】
このようにして、実施形態1~実施形態6による撮像装置1(光電変換装置)を適用した撮像システム500を構成することにより、高性能の撮像システムを実現することができる。
【0111】
<実施形態8>
本発明の実施形態8による撮像システム及び移動体について、図20A及び図20Bを用いて説明する。図20A及び図20Bは、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
【0112】
図20Aは、車載カメラに関する撮像システム600の一例を示したものである。撮像システム600は、光電変換装置610を有する。光電変換装置610は、上述の実施形態1~実施形態6に記載の撮像装置1(光電変換装置)のいずれかである。撮像システム600は、光電変換装置610により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う処理装置である画像処理部612を有する。撮像システム600は、光電変換装置610により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う処理装置である視差取得部614を有する。また、撮像システム600は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する処理装置である距離取得部616と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する処理装置である衝突判定部618と、を有する。ここで、視差取得部614や距離取得部616は、対象物までの距離情報等の情報を取得する情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部618はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。上述した各種の処理装置は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールに基づいて演算を行う汎用のハードウェアによって実現されてもよい。また、処理装置は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0113】
撮像システム600は、車両情報取得装置620と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU630が接続されている。すなわち、制御ECU630は、距離情報に基づいて移動体を制御する移動体制御手段の一例である。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置640とも接続されている。例えば、衝突判定部618の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU630はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置640は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0114】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム600で撮像する。図20Bに、車両前方(撮像範囲650)を撮像する場合の撮像システム600を示した。車両情報取得装置620は、撮像システム600を動作させ撮像を実行させるように指示を送る。上述の実施形態1~実施形態6の撮像装置1(光電変換装置)を光電変換装置610として用いることにより、本実施形態の撮像システム600は、測距の精度をより向上させることができる。
【0115】
以上の説明では、他の車両と衝突しないように制御する例を述べたが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、撮像システムは、自動車等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(輸送機器)に適用することができる。移動体(輸送機器)における移動装置はエンジン、モーター、車輪、プロペラなどの各種の移動手段である。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
1:撮像装置(光電変換装置)、3:画素領域、4:導電層、
6:光電変換膜、12:画素電極、7:上部電極、30:有効画素領域
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