(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/028 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
H04N1/028 A
(21)【出願番号】P 2020034679
(22)【出願日】2020-03-02
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019080009
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】赤木 太輔
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-074673(JP,A)
【文献】特開2012-228451(JP,A)
【文献】特開平11-122431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に光を照射する発光部と、
所定の方向に配列され、前記原稿により反射された光を受光する複数の受光素子を備えるラインセンサ、及び前記ラインセンサに含まれる受光素子の受光結果に対応するアナログ信号を増幅する増幅器を備える読取手段と、
前記読取手段の温度を検出する温度検出手段と、
前記増幅器から出力される前記アナログ信号の値をサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によってサンプリングされた値をデジタル値に変換する変換手段と、
前記変換手段によって変換されたデジタル値に基づいて、前記原稿の画像を表す画像データを生成する生成手段と、を備え、
前記サンプリング手段は、
第1の原稿を読み取る場合、前記温度検出手段によって検出された温度が第1の温度であ
れば、前記第1の原稿を読み取る期間において第1のタイミングで前記複数の受光素子に含まれる第1の受光素子に対応する前記アナログ信号
をサンプリングし、
前記第1の原稿とは異なる第2の原稿を読み取る場合、前記温度検出手段によって検出された温度が前記第1の温度
とは異なる第2の温度で
あれば、サンプリングのタイミングを前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングに切り替えて、前記第2の原稿を読み取る期間において前記第2のタイミングで前記第1の受光素子に対応する前記アナログ信号
をサンプリング
し、
前記第2の温度は前記第1の温度よりも高く、前記第2のタイミングは前記第1のタイミングよりも遅いことを特徴とする、
画像読取装置。
【請求項2】
前記増幅器は、第1の周期で前記アナログ信号を出力し、
前記サンプリング手段は、前記原稿1ページ分の画像に対応するアナログ信号の値のサンプリングを開始する前に、前記アナログ信号の値をサンプリングするタイミングを変更し、
前記サンプリング手段は、前記原稿1ページ分の画像に対応するアナログ信号の値をサンプリングする期間は、第2の周期で前記アナログ信号の値をサンプリングすることを特徴とする、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1の周期は、前記第2の周期と同じ周期であることを特徴とする、
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記第1の周期は、前記第2の周期と略同一周期であることを特徴とする、
請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
原稿を搬送する原稿搬送部をさらに備え、
前記読取手段は、前記原稿搬送部によって搬送されている原稿の画像を読み取り、
前記サンプリング手段は、前記原稿搬送部から原稿が所定枚数搬送される毎に、前記温度検出手段によって検出された温度に基づいて、前記アナログ信号の値をサンプリングするタイミングを変更する、
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記サンプリング手段は、前記原稿搬送部から原稿が1枚搬送される毎に、前記温度検出手段によって検出された温度に基づいて、前記アナログ信号の値をサンプリングするタイミングを変更する、
請求項5記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記増幅器は、第1の周期で前記アナログ信号を出力し、
前記サンプリング手段は、前記原稿1ページ分の画像に対応するアナログ信号の値のサンプリングを開始する前に、前記アナログ信号の値をサンプリングするタイミングを変更し、
前記サンプリング手段は、前記原稿1ページ分の画像に対応するアナログ信号の値をサンプリングする期間は、第2の周期で前記アナログ信号の値をサンプリングすることを特徴とする、
請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記第1の周期は、前記第2の周期と同じ周期であることを特徴とする、
請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記第1の周期は、前記第2の周期と略同一周期であることを特徴とする、
請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記温度検出手段は、前記読取手段と同一基板に実装されることを特徴とする、
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記温度検出手段は、前記増幅器の温度を検出するための温度検出手段であることを特徴とする、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項12】
前記増幅器が前記アナログ信号を出力する周期は、前記サンプリング手段が前記アナログ信号をサンプリングする周期と同じ周期であることを特徴とする、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項13】
前記増幅器が前記アナログ信号を出力する周期は、前記サンプリング手段が前記アナログ信号をサンプリングする周期と略同一周期であることを特徴とする、
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項14】
前記ラインセンサはCMOSイメージセンサであることを特徴とする、
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項15】
前記サンプリング手段は、前記アナログ信号が安定する期間に前記アナログ信号をサンプリングするように、前記アナログ信号の値をサンプリングするタイミングを変更することを特徴とする、
請求項1記載の画像読取装置。
【請求項16】
原稿に光を照射する発光部と、
所定の方向に配列され、前記原稿により反射された光を受光する複数の受光素子を備えるラインセンサ、及び前記ラインセンサに含まれる受光素子の受光結果に対応するアナログ信号を増幅する増幅器を備える読取手段と、
前記読取手段の温度を検出する温度検出手段と、
前記増幅器から出力される前記アナログ信号の値をサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によってサンプリングされた値をデジタル値に変換する変換手段と、
前記変換手段によって変換されたデジタル値に基づいて、前記原稿の画像を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された画像データに基づいて、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、を備え、
前記サンプリング手段は、
第1の原稿を読み取る場合、前記温度検出手段によって検出された温度が第1の温度であ
れば、前記第1の原稿を読み取る期間において第1のタイミングで前記複数の受光素子に含まれる第1の受光素子に対応する前記アナログ信号
をサンプリングし、
前記第1の原稿とは異なる第2の原稿を読み取る場合、前記温度検出手段によって検出された温度が前記第1の温度
とは異なる第2の温度で
あれば、サンプリングのタイミングを前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングに切り替えて、前記第2の原稿を読み取る期間において前記第2のタイミングで前記第1の受光素子に対応する前記アナログ信号
をサンプリング
し、
前記第2の温度は前記第1の温度よりも高く、前記第2のタイミングは前記第1のタイミングよりも遅いことを特徴とする、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿に形成された画像(以下、「原稿画像」という。)を読み取る画像読取装置及び当該画像読取装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置は、光源から原稿に光を照射し、その反射光をイメージセンサで読み取ることで原稿画像を読み取る。原稿は、画像読取装置の原稿台ガラスに読取対象面を下向きにして載置される。原稿台ガラスに載置された原稿の画像を読み取る場合、画像読取装置は、原稿台ガラスの下部で光源を一方向に沿って移動させながら原稿をスキャンすることで、原稿画像を読み取る。画像読取装置は、原稿を搬送するADF(Auto Document Feeder)を用いて、搬送中の原稿から原稿画像を読み取ることもできる。
【0003】
画像読取装置が有するイメージセンサは、原稿の幅方向に線状に配置される複数の画素を有する。原稿の幅方向が読み取り時の主走査方向となる。このようなイメージセンサには、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサがある。CMOSイメージセンサは、一般的に、CCDイメージセンサよりも低消費電力である。またCMOSイメージセンサは、画素のランダムアクセスが可能である。
【0004】
CMOSイメージセンサは、光を受光することによって各画素に蓄えられた電荷を画素毎に電圧に変換し、変換された電圧をアナログ信号(以下、「アナログ画像信号」として出力アンプを通じて出力する。アナログ画像信号は、AFE(Analog Front End)等でAD変換等の所定の処理が行われて画像読取装置から出力される。AFEは、所定の周期でアナログ画像信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0005】
主走査方向に多数の画素を有するCMOSイメージセンサは、出力アンプが主走査方向におけるCMOSイメージセンサの端部に配置されることが多い。このような構成では、CMOSイメージセンサの第1の画素から出力アンプまでの距離がCMOSイメージセンサの第2の画素から出力アンプまでの距離とは異なる。その結果、第1の画素から出力されるアナログ画像信号が出力アンプから出力されるまでに要する時間(出力時間)が、第2の画素から出力されるアナログ画像信号が出力アンプから出力されるまでの時間とは異なってしまう。
【0006】
出力時間が画素毎にばらつくと、アナログ画像信号の信号レベルが安定した状態においてアナログ画像信号がサンプリングされない可能性がある。具体的には、アナログ画像信号の信号レベルが変動しているタイミングにおいてアナログ画像信号がサンプリングされてしまう可能性がある。特許文献1は、CMOSイメージセンサの画素の位置に応じてAFEによるサンプリングタイミングを変更することで、画素の位置に起因する出力時間のばらつきによる影響を抑制する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
出力時間は、画素の位置のみならず、CMOSイメージセンサの温度によっても変動する。これは、CMOSイメージセンサ内の出力アンプの温度特性が大きな要因となっている。CMOSイメージセンサの温度は、画像読取装置の稼働状況や設置環境によって変化する。即ち、CMOSイメージセンサの使用環境によっては、アナログ画像信号の出力レベルが安定している状態においてアナログ画像信号がサンプリングされない可能性がある。その結果、原稿の画像の読み取り精度が低下してしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、原稿の画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像読取装置は、原稿に光を照射する発光部と、所定の方向に配列され、前記原稿により反射された光を受光する複数の受光素子を備えるラインセンサ、及び前記ラインセンサに含まれる受光素子の受光結果に対応するアナログ信号を増幅する増幅器を備える読取手段と、前記読取手段の温度を検出する温度検出手段と、前記増幅器から出力される前記アナログ信号の値をサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段によってサンプリングされた値をデジタル値に変換する変換手段と、前記変換手段によって変換されたデジタル値に基づいて、前記原稿の画像を表す画像データを生成する生成手段と、を備え、前記サンプリング手段は、第1の原稿を読み取る場合、前記温度検出手段によって検出された温度が第1の温度であれば、前記第1の原稿を読み取る期間において第1のタイミングで前記複数の受光素子に含まれる第1の受光素子に対応する前記アナログ信号をサンプリングし、前記第1の原稿とは異なる第2の原稿を読み取る場合、前記温度検出手段によって検出された温度が前記第1の温度とは異なる第2の温度であれば、サンプリングのタイミングを前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングに切り替えて、前記第2の原稿を読み取る期間において前記第2のタイミングで前記第1の受光素子に対応する前記アナログ信号をサンプリングし、前記第2の温度は前記第1の温度よりも高く、前記第2のタイミングは前記第1のタイミングよりも遅いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿の画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】アナログ画像信号とサンプルホールドタイミング信号との相関を表す図。
【
図7】アナログ画像信号の遅延時間と出力アンプの温度との相関図。
【
図9】複数枚の原稿を連続して読み取る場合の画像読取処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(画像読取装置)
図1は、本実施形態の画像読取装置1の構成図である。また、
図2は、画像読取装置1の内部構成図である。画像読取装置1は、読取装置100及びカバー103を備える。カバー103は、読取装置100に対して開閉(回動)自在に取り付けられる。
図1は、読取装置100に対してカバー103が開状態である。
図2は、読取装置100に対してカバー103が閉状態である。
【0015】
読取装置100は、読取対象となる原稿101が載置される原稿台ガラス102を備える。カバー103の原稿台ガラス102側の面には、カバー103が閉状態のときに原稿台ガラス102上に載置された原稿101を原稿台ガラス102にむけて押圧するための、白色の押圧板104が設けられている。読取装置100は、原稿台ガラス102と同じ面に流し読みガラス207を備える。原稿台ガラス102と流し読みガラス207との間のフレーム106の読取装置100内部には、シェーディング補正に用いられる基準部材である白基準板が設けられる。
【0016】
原稿台ガラス102下部の読取装置100内部には、原稿画像を読み取るための読取部105Aが設けられる。読取部105Aは、略直方体の光学センサであり、長手方向を主走査方向として原稿101から原稿画像を読み取る。原稿台ガラス102に載置された原稿101を読み取る場合、読取部105Aは、不図示のモータにより主走査方向に直交する副走査方向に移動しながら原稿101を読み取る。
【0017】
カバー103は、原稿搬送部107を備える。原稿搬送部107は、カバー103が閉状態のときに複数枚の原稿を流し読みガラス207上へ順次搬送することができる。読取部105Aは、原稿搬送部107により流し読みガラス207へ搬送された原稿を読み取る場合、流し読みガラス207の直下において、搬送される原稿を読み取る。
【0018】
原稿搬送部107は、原稿101が積載される原稿トレイ201及び画像読取後に原稿101が排出される排紙トレイ215を備える。原稿トレイ201は、複数枚の原稿101を積載することが可能である。原稿搬送部107は、ピックアップローラ202、分離ローラ203、204、前搬送ローラ205、リードローラ206、押さえローラ212、216、後搬送ローラ213、及び排紙ローラ214を備える。
【0019】
ピックアップローラ202は、原稿トレイ201に積載された原稿の最上位に載置される原稿101から順に給送する。分離ローラ203、204は、複数枚が同時に給紙されることを防止するために、原稿を1枚ずつ分離する。例えば、分離ローラ203が原稿を搬送する方向に回転し、分離ローラ204が回転しないことで、原稿が1枚ずつ分離される。
【0020】
分離ローラ203、204は、分離後の原稿101を前搬送ローラ205へ搬送する。前搬送ローラ205は、一対のローラであり、原稿101をリードローラ206へ搬送する。リードローラ206は、一対のローラであり、原稿101を読取部105Aによる読取位置Aへ搬送する。読取位置Aは、カバー103が閉状態のときに流し読みガラス207の上部に位置する。読取部105Aは、流し読みガラス207を介して、読取位置Aを搬送される原稿101の第1面の画像を読み取る。原稿101の搬送方向で読取位置Aの上流側には、原稿101の搬送方向の先端を検知する原稿先端検知センサ211が設けられる。読取部105Aは、原稿先端検知センサ211が原稿101の先端を検知したタイミングから所定時間後に、原稿画像の読み取りを開始する。
【0021】
読取位置Aは、押さえローラ212と押さえローラ216との間に設けられる。押さえローラ212、216は、原稿101が流し読みガラス207から浮かないように、原稿101を流し読みガラス207に向けて押さえつける。
【0022】
後搬送ローラ213は、一対のローラであり、読取位置Aを通過した原稿101を読取位置Bへ搬送する。原稿搬送部107は、読取部105Bを備える。読取部105Bは、流し読みガラス207を介して、読取位置Bを搬送される原稿101の第2面の画像を読み取る。読取部105Bは、原稿先端検知センサ211が原稿101の先端を検知したタイミングから所定時間後に、原稿画像の読み取りを開始する。
排紙ローラ214は、一対のローラであり、原稿101を排紙トレイ215へ排出する。排紙トレイ215には、読取後の原稿101が載置される。
【0023】
読取装置100の内部に設けられる読取部105Aは、光源となる発光部208、イメージセンサ(本実施形態ではCMOSイメージセンサ)209、及び光学部品群を備える。発光部208は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を備え、原稿101に対して主走査方向にライン状の光を照射する。原稿101に照射された光は、反射されて光学部品群によりCMOSイメージセンサ209に導かれる。CMOSイメージセンサ209は、主走査方向に複数の画素(受光素子)がライン状に配列されたラインセンサである。光学部品群により導かれた原稿101による反射光は、各画素に受光される。CMOSイメージセンサ209は、各画素で受光した反射光に応じて、アナログ信号である電気信号(アナログ画像信号)を出力する。このアナログ画像信号は、例えば主走査方向の各位置の輝度値を表す。すべての画素のアナログ画像信号により、原稿画像の主走査方向の1ラインの輝度値が表される。
【0024】
読取部105Aは、アナログ画像信号に基づいて、原稿画像の1ラインを表すデジタル信号である画像データを生成する。読取部105Aは、読取処理を行わない場合に、ホームポジションに待機する。ホームポジションは、例えば流し読みガラス207(読取位置A)の直下である。なお、読取部105Bの構成及び読取処理は読取部105Aと同様であるため、説明を省略する。
【0025】
上記の通り、読取装置100の内部には、流し読みガラス207と原稿台ガラス102との間に、白基準板が設けられる。白基準板は、シェーディング補正に用いるシェーディングデータを取得する際の基準部材である。
【0026】
(画像形成装置)
本実施形態では、画像読取装置1によって読み取られた画像に基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成装置401が画像読取装置1の下部に設けられる。本実施形態で用いられる画像形成装置401はモノクロの電子写真方式の複写機であるが、画像形成装置は複写機に限定されず、例えば、ファクシミリ装置、印刷機、プリンタ等であっても良い。また、記録方式は、電子写真方式に限らず、例えば、インクジェット等であっても良い。更に、画像形成装置の形式はモノクロ及びカラーのいずれの形式であっても良い。
【0027】
画像形成装置401の内部には、シート収納トレイ402、404が設けられている。シート収納トレイ402、404には、それぞれ異なる種類の記録媒体を収納することができる。例えば、シート収納トレイ402にはA4サイズの普通紙が収納され、シート収納トレイ404にはA4サイズの厚紙が収納される。なお、記録媒体とは、画像形成装置によって画像が形成されるものであって、例えば、用紙、樹脂シート、布、OHPシート、ラベル等は記録媒体に含まれる。
【0028】
シート収納トレイ402に収納された記録媒体は、ピックアップローラ403によって給送されて、搬送ローラ406によってレジストレーションローラ408へ送り出される。また、シート収納トレイ404に収納された記録媒体は、ピックアップローラ405によって給送されて、搬送ローラ407及び406によってレジストレーションローラ408へ送り出される。
【0029】
画像読取装置1から出力された画像データは、半導体レーザ及びポリゴンミラーを含む光走査装置411に入力される。また、感光ドラム409は、帯電器410によって外周面が帯電される。感光ドラム409の外周面が帯電された後、画像読取装置1から光走査装置411に入力された画像信号に応じたレーザ光が、光走査装置411のポリゴンミラーからミラー412、413を経由し、感光ドラム409の外周面に照射される。この結果、感光ドラム409の外周面に静電潜像が形成される。
【0030】
続いて、静電潜像が現像器414内のトナーによって現像され、感光ドラム409の外周面にトナー像が形成される。感光ドラム409に形成されたトナー像は、感光ドラム409と対向する位置(転写位置)に設けられた転写帯電器415によって記録媒体に転写される。レジストレーションローラ408は、転写帯電器415によって記録媒体に画像が転写される転写タイミングに合わせて記録媒体を転写位置へ送り込む。
【0031】
前述の如くして、トナー像が転写された記録媒体は、搬送ベルト417によって定着器418へ送り込まれ、定着器418によって加熱加圧されて、トナー像が記録媒体に定着される。このようにして、画像形成装置401によって記録媒体に画像が形成される。
【0032】
片面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器418を通過した記録媒体は、排紙ローラ419、424によって、不図示の排紙トレイへ排紙される。また、両面印刷モードで画像形成が行われる場合は、定着器418によって記録媒体の第1面に定着処理が行われた後に、記録媒体は、排紙ローラ419、搬送ローラ420、及び反転ローラ421によって、反転パス425へと搬送される。その後、記録媒体は、搬送ローラ422、423によって再度レジストレーションローラ408へと搬送され、前述した方法で記録媒体の第2面に画像が形成される。その後、記録媒体は、排紙ローラ419、424によって不図示の排紙トレイへ排紙される。
【0033】
また、第1面に画像形成された記録媒体がフェースダウンで画像形成装置401の外部へ排紙される場合は、定着器418を通過した記録媒体は、排紙ローラ419を通って搬送ローラ420へ向かう方向へ搬送される。その後、記録媒体の後端が搬送ローラ420のニップ部を通過する直前に搬送ローラ420の回転が反転することによって、記録媒体の第1面が下向きになった状態で、記録媒体が排紙ローラ424を経由して、画像形成装置401の外部へ排出される。
【0034】
以上が画像形成装置401の構成および機能についての説明である。
【0035】
(読取部)
図3は、画像読取装置1の動作を制御するコントローラ300の説明図である。コントローラ300には、読取部105A、読取部105Aを副走査方向に移動させるスキャンモータ302、原稿搬送部107内の各種ローラを駆動する搬送モータ303、原稿先端検知センサ211、及び操作部301が接続される。
操作部301は、入力装置と出力装置とが組み合わされたユーザインタフェースである。入力装置には、入力キー、テンキー、タッチパネル等があり、ユーザの操作によりコントローラ300に指示等を入力する。出力装置には、ディスプレイ、スピーカ等があり、コントローラ300からの指示により画像の表示や音の出力を行う。
なお、コントローラ300には、読取部105Bや画像形成装置401を制御するコントローラ(不図示)も接続されている。
【0036】
コントローラ300は、CPU(Central Processing Unit)304、シェーディング部314、及び画像処理部315を備える。
CPU304は、所定のコンピュータプログラムを実行することで、画像読取装置1の動作を制御する。CPU304は、操作部301から画像読取指示が入力されると、画像読取装置1による画像読取処理の制御を開始する。
シェーディング部314は、読取部105Aが白基準板を読み取ることによって得られた画像データに基づいて、発光部208の光量不均一性やCMOSイメージセンサ209の各画素の感度バラツキ等を補正する。
画像処理部315は、シェーディング部314でシェーディング処理された画像データに対して、ノイズ除去等の画像処理を行い、処理後の画像データを、例えば、画像形成装置401のコントローラなどの外部機器に出力する。
【0037】
読取部105Aは、発光部208及びCMOSイメージセンサ209の他に、AFEとして、アナログ画像信号を画像データに変換するAD変換器305を備える。読取部105Aの構成について詳細に説明する。
【0038】
CMOSイメージセンサ209は、複数の画素(受光素子)からなる画素部306、ラインバッファ307、シフトレジスタ308、出力アンプ309、及びサーミスタ310を備える。
画素部306は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の光を検出可能であり、原稿101に記録されたカラー画像の読み取りが可能である。本実施形態のCMOSイメージセンサ209は、R、G、Bの各画素が例えば7500個用意されている。各画素は、光を電荷に変換する光電変換素子で構成されており、受光結果として、受光した光の強度に応じた電荷を蓄積する。
【0039】
各画素にはラインバッファ307が接続される。ラインバッファ307は、各画素に蓄積された電荷を電圧に変換して格納する。
ラインバッファ307にはシフトレジスタ308が接続される。シフトレジスタ308は、ラインバッファ307に格納された各画素の電圧を3画素ずつ順に読み出して出力アンプ309に送信する。
出力アンプ309は、シフトレジスタ308から送信される電圧を増幅する増幅器であり、増幅結果をアナログ画像信号として所定の周期でAD変換器305に送信する。
【0040】
サーミスタ310は、CMOSイメージセンサ209の温度検出用に設けられ、CMOSイメージセンサ209と同一基板上の出力アンプ309近傍に実装される。同一基板上とは、例えば、画素部306、ラインバッファ307、シフトレジスタ308、出力アンプ309等が設けられている面と同一面にサーミスタ310が設けられている状態が含まれる。また、同一基板上とは、例えば、シリコン基板上に複数の層が積載されている構成において、これらの層とは異なる層であって且つこれらの層と同一のシリコン基板上にサーミスタ310が設けられている状態が含まれる。シリコン基板上に積載される複数の層は、画素部306が設けられる層、ラインバッファ307が設けられる層、シフトレジスタ308が設けられる層、出力アンプ309である。
【0041】
サーミスタ310は、検出した温度に応じた出力電圧をCPU304に送信する。温度検出の詳細は後述するが、サーミスタ310は出力アンプ309の温度を検出する用途で用いられる。
図4はサーミスタ310の特性例示図であり、検出した温度と出力電圧との関係を示す。温度に対して出力電圧はリニアな関係にあり、温度が高いほど電圧値が高い出力電圧が出力される。なお、この特性は一例である。
【0042】
AD変換器305は、サンプリング部311、変換部312、及びパルス生成部313を備える。
出力アンプ309から出力されたアナログ画像信号はサンプリング部311に入力される。
パルス生成部313は、サンプリング部311によるサンプリングのタイミングを制御するパルス信号であるタイミング信号を、サンプリング部311に送信する。なお、タイミング信号は所定の周期を有する。本実施形態では、タイミング信号の周期は、例えば、出力アンプ309がアナログ画像信号をAD変換器305に送信する周期と略同一周期である。本実施形態では、略同一周期とは、タイミング信号の周期と出力アンプ309がアナログ画像信号をAD変換器305に送信する周期との差が、タイミング信号の周期の±10%以内の周期とする。
サンプリング部311はアナログ画像信号をタイミング信号に応じてサンプリングして変換部312へ送信する。
変換部312は、サンプリング部311でサンプリングされたアナログ画像信号の値をデジタル値である画像データにAD変換する。
【0043】
図5は、アナログ画像信号のサンプリングタイミングの説明図である。本実施形態では、タイミング信号がハイ(High)に遷移したタイミングでアナログ画像信号のサンプリングが行われる。なお、本実施形態では、CMOSイメージセンサ209が駆動された後の最初にタイミング信号がハイになるタイミング(以下、開始タイミングと称する)は、以下のように設定されている。具体的には、開始タイミングは、CMOSイメージセンサ209が駆動されてから所定時間が経過したタイミングに予め設定されている。所定時間は、実験によって予め求められた時間である。例えば所定時間は、サーミスタ310の出力が25℃を示している状態において、CMOSイメージセンサ209が駆動されてから最初に出力アンプ309から出力されるアナログ画像信号が安定するまでに要する時間に予め設定されている。
【0044】
図6は、アナログ画像信号とタイミング信号との相関を表す図である。出力アンプ309は、温度が上昇するにつれて、アナログ画像信号を出力するタイミングが遅延するという特性を有する。
例えば、出力アンプ309の温度が25℃である状態においては、予め設定された開始タイミングから所定の周期でアナログ画像信号のサンプリングを行うと、アナログ画像信号が安定した状態においてアナログ画像信号のサンプリングが行われる。
【0045】
一方、例えば、出力アンプ309の温度が40℃である状態においては、予め設定された開始タイミングから所定の周期でアナログ画像信号のサンプリングを行うと、アナログ画像信号が不安定な状態においてアナログ画像信号のサンプリングが行われてしまう。その結果、原稿の画像の読み取り精度が低下してしまう。
そこで、本実施形態では、以下の構成が適用されることによって、原稿の画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制する。
【0046】
図7は、アナログ画像信号の遅延時間と出力アンプ309の温度との相関図である。
図7は、出力アンプ309の温度が上昇するにつれて、アナログ画像信号の遅延時間が大きくなるという特性を表す。具体的には、
図7は、サーミスタ310によって検出された温度が25℃より高い場合は出力遅延時間が正の値となり、25℃より低い場合は出力遅延時間が負の値となるという特性を表す。
【0047】
CPU304には、出力アンプ309の温度とアナログ画像信号の遅延時間との関係が予めプログラミング(記憶)されている。CPU304は、サーミスタ310の出力電圧に応じた遅延時間をパルス生成部313に出力する。
【0048】
パルス生成部313は、遅延時間分だけサンプリングタイミングを調整する。即ち、パルス生成部313は、遅延時間が正の値である場合はサンプリングタイミングが遅れるようにタイミング信号を生成する。また、パルス生成部313は、遅延時間が負の値である場合はサンプリングタイミングが早まるようにタイミング信号を生成する。この結果、出力アンプ309の温度が変動することに起因してアナログ画像信号が出力されるタイミングが変動したとしても、サンプリングタイミングを適正化することができる。即ち、アナログ画像信号の電圧が安定したタイミングにおいてサンプリングされる。この結果、原稿画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制することができる。なお、パルス生成部313は、サンプリングタイミングを調整する際、タイミング信号がハイになるタイミングを調整する。即ち、タイミング信号の周期は変更されない。
【0049】
図8は、このような構成の画像読取装置1により行われる画像読取処理を表すフローチャートである。このフローチャートの処理は、操作部301からCPU304に画像読取指示が入力されると、CPU304によって実行される。
【0050】
CPU304は、画像読取指示を受け付けるとCMOSイメージセンサ209の駆動を開始する(S601)。CMOSイメージセンサ209は、CPU304の制御により駆動開始すると、アナログ画像信号を出力アンプ309からAD変換器305に入力し始める。その結果、出力アンプ309の温度が上昇し始める。
【0051】
次に、CPU304は、この状態で所定時間、本実施形態では200ミリ秒間待機する(S602)。この待機時間は、出力アンプ309の温度が安定するのに十分な時間に設定される。
待機時間が経過すると、CPU304は、サーミスタ310から出力される出力電圧を取得する(S603)。CPU304は、取得した出力電圧をデジタル信号に変換する。
【0052】
その後、CPU304は、サーミスタ310の出力電圧に対応する遅延時間をパルス生成部313に出力する(S604)。この結果、サーミスタ310の出力電圧が示す温度に応じたサンプリングタイミングが設定される。
【0053】
サンプリングタイミングの設定後にCPU304は、発光部208を点灯させる(S605)。
次に、CPU304は、シェーディング部314にシェーディング補正を行わせる(S606)。そのためにCPU304は、スキャンモータ302により読取部105Aを白基準板の直下に移動させて、読取部105Aに白基準板を読み取らせる。読取部105Aは、白基準板を読み取って生成した画像データをシェーディング部314に送信する。シェーディング部314は、白基準板の読取結果により生成された該画像データに基づいてシェーディング補正を行う。
【0054】
シェーディング補正が終了すると、CPU304は、原稿101の読取処理を実行する(S607)。以上により画像読取処理が終了する。
【0055】
以上のように本実施形態のCPU304は、CMOSイメージセンサ209内部に設けられる出力アンプ309の温度を検出し、検出結果に基づいてアナログ画像信号の遅延時間を決定する。パルス生成部313は、決定された遅延時間に応じてサンプリングタイミングを調整する。その結果、出力アンプ309の温度が変動することに起因してアナログ画像信号が出力されるタイミングが変動したとしても、サンプリングタイミングを適正化することができる。即ち、アナログ画像信号の電圧が安定したタイミングにおいてサンプリングされる。この結果、原稿画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0056】
図8の画像読取処理は、1枚の原稿101(原稿1ページ分)を読み取る際の処理である。複数枚の原稿101を連続して読み取る場合には、原稿間でサンプリングタイミングを調整する必要がある。これは、連続して画像読取処理が行われることで、CMOSイメージセンサ209の出力アンプ309の温度が上昇するためである。
図9は、複数枚の原稿101を連続して読み取る場合の画像読取処理を表すフローチャートである。このフローチャートの処理は、操作部301からCPU304に画像読取指示が入力されと、CPU304によって実行される。
【0057】
CMOSイメージセンサ209の駆動開始からシェーディング補正を行うまでの処理(S701~S706)は、
図6のS601~S606までの処理と同様の処理であるため説明を省略する。
シェーディング補正が終了すると、CPU304は、搬送モータ303を駆動して、原稿搬送部107による原稿搬送を開始する(S707)。
次に、原稿101の搬送開始後に原稿先端検知センサ211が原稿101を検知すると、CPU304は、読取部105A、105Bに原稿101から原稿画像を読み取らせる(S708)。
【0058】
その後、CPU304は、読取部105A、105Bから取得する画像データに基づいて、1枚の原稿101の読み取りが完了したか否かを判断する(S709)。
1枚の原稿101の読み取りが完了したと判断した場合(S709:Y)、CPU304は、原稿トレイ201上に次の原稿が載置されているか否かを判断する(S710)。原稿トレイ201には、載置される原稿の有無を検知するセンサが設けられる。CPU304は、該センサの検知結果に基づいて原稿トレイ201上の原稿の有無を判断することができる。次の原稿がない場合(S710:N)、CPU304は、画像読取処理を終了する。
【0059】
次の原稿がある場合(S710:Y)、CPU304は、サーミスタ310から検出温度に応じた出力電圧を取得する(S711)。CPU304は、取得した出力電圧をデジタル信号に変換する。
CPU304は、サーミスタ310の出力電圧に対応する遅延時間をパルス生成部313に出力する(S712)。この結果、サーミスタ310の出力電圧が示す温度に応じたサンプリングタイミングが設定される。
その後、CPU304は、S707以降の処理を、原稿トレイ201上の原稿がなくなるまで繰り返し行う。以上により画像読取処理が終了する。
【0060】
このようにCPU304は、連続して搬送される原稿と原稿との間で逐次サンプリングタイミングを制御する。この結果、複数枚の原稿101を連続して読み取る際にサーミスタ310によって検出された温度が変動したとしても、サンプリングタイミングを適正化することができる。即ち、アナログ画像信号の電圧が安定したタイミングにおいてサンプリングされる。この結果、原稿画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0061】
以上のような本実施形態の画像読取装置1は、CMOSイメージセンサ209の温度に応じてサンプリングタイミングを設定することで、アナログ画像信号の出力レベルが安定したタイミングにおいてサンプリングを行うことができる。その結果、画像読取装置1は、アナログ画像信号を正確にAD変換して画像データを生成することができる。即ち、原稿画像の読み取り精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、CPU304は、連続して搬送される原稿と原稿との間で逐次サンプリングタイミングを制御したが、この限りではない。例えば、CPU304は、所定枚数(例えば10枚)分の原稿が搬送される毎にサンプリングタイミングを制御してもよい。