(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20240729BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240729BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H04N1/407 780
G06T1/00 310A
B41J29/393 105
(21)【出願番号】P 2020058462
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】中田 有一
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055852(JP,A)
【文献】特開2012-103225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/40- 1/409
G06T 1/00
B41J 29/38-29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザからの指示に基づいて、所定の局所パターンに対応する領域における欠陥の検出感度を設定する第1設定手段と、
印刷物の検査基準である基準画像の前記領域において、前記所定の局所パターンに対応する欠陥の検出感度を、前記設定された検出感度から下げる調整を行う調整手段と、
検査対象の画像を表す画像データを取得する取得手段と、
前記基準画像と前記調整された検出感度とに基づいて、前記検査対象の画像を検査する処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記局所パターンは線状のパターンを含み、
前記調整手段は、前記線状のパターンに対応する領域において、線状の欠陥に対する検出感度が下がるように、前記検出感度を調整することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記局所パターンは点状のパターンを含み、
前記調整手段は、前記点状のパターンに対応する領域において、点状の欠陥に対する検出感度が下がるように、前記検出感度を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記
調整手段は、前記基準画像と前記検査対象の画像との差分画像を生成し、前記局所パターンに対応する領域において、前記局所パターンを前記差分画像上で強調することで、前記検出感度を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記局所パターンは、背景とのコントラストが互いに異なる複数の局所パターンを含み、
前記調整手段は、背景とのコントラストが高いほど欠陥の検出感度が下がるように、前記検出感度を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
点状欠陥に対応する第1検出感度と、前記第1検出感度よりも低い線状欠陥に対応する第2検出感度とを取得する取得手段と、
検査対象の画像における線状のパターンに対応する領域を、前記第1検出感度と前記第2検出感度とを用いて検査する処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
点状欠陥に対応する第1検出感度と、前記第1検出感度よりも高い線状欠陥に対応する第2検出感度とを取得する取得手段と、
検査対象の画像における点状のパターンに対応する領域を、前記第1検出感度と前記第2検出感度とを用いて検査する処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
検査対象の画像を表す画像データを取得する第1取得手段と、
ユーザによって指定された、欠陥に対する第1検査感度を取得する第2取得手段と、
前記画像における前記欠陥に類似する特定のパターンに対応する第1領域を前記第1検査感度よりも低い第2検査感度で検査し、前記画像における前記特定のパターンに対応しない第2領域を前記第1検査感度で検査する処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
前記処理手段は、印刷物の検査基準である基準画像を用いて検査を行うことを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記処理手段は、前記検査対象の画像と、前記基準画像との差分を表す差分画像の画素値と閾値とを用いて、前記検査対象の画像を検査することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記処理手段は、検査感度が高いほど、前記閾値を小さい値に設定することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記特定のパターンは、線状のパターンであり、
前記線状のパターンに類似する欠陥は、線状の欠陥であることを特徴とする請求項
8乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記特定のパターンは、点状のパターンであり、
前記点状のパターンに類似する欠陥は、点状の欠陥であることを特徴とする請求項
8乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記処理手段による検査において合格となった印刷物は第1のトレーに出力され、
前記処理手段による検査において不合格となった印刷物は前記第1のトレーとは異なる第2のトレーに出力されることを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
コンピュータを請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
ユーザからの指示に基づいて、所定の局所パターンに対応する領域における欠陥の検出感度を設定する設定ステップと、
印刷物の検査基準である基準画像の前記領域において、前記所定の局所パターンに対応する欠陥の検出感度を、前記設定された検出感度から下げる調整を行う調整ステップと、
検査対象の画像を表す画像データを取得する取得ステップと、
前記基準画像と前記調整された検出感度とに基づいて、前記検査対象の画像を検査する処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
点状欠陥に対応する第1検出感度と、前記第1検出感度よりも低い線状欠陥に対応する第2検出感度とを取得する取得ステップと、
検査対象の画像における線状のパターンに対応する領域を、前記第1検出感度と前記第2検出感度とを用いて検査する処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
点状欠陥に対応する第1検出感度と、前記第1検出感度よりも高い線状欠陥に対応する第2検出感度とを取得する取得ステップと、
検査対象の画像における点状のパターンに対応する領域を、前記第1検出感度と前記第2検出感度とを用いて検査する処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
検査対象の画像を表す画像データを取得する第1取得ステップと、
ユーザによって指定された、欠陥に対する第1検査感度を取得する第2取得ステップと、
前記画像における前記欠陥に類似する特定のパターンに対応する第1領域を前記第1検査感度よりも低い第2検査感度で検査し、前記画像における前記特定のパターンに対応しない第2領域を前記第1検査感度で検査する処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物を検査するための画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置により出力される印刷物において、インクやトナー等の色材が意図しない箇所に付着して汚れが生じる場合がある。あるいは、画像を形成すべき箇所に十分な色材が付着せず、本来よりも色が薄くなってしまう色抜けが生じる場合がある。こうした汚れや色抜けといった印刷物における欠陥は、印刷物の品質を低下させるものである。そのため、印刷物における欠陥の有無を検査することによって、印刷物の品質を保証することが求められる。印刷物における欠陥の有無を目視で検査する目視検査は、多くのコストを必要とするため、自動で検査を行う検査システムが開発されている。このような検査システムでは、例えば事前に登録した印刷物の検査基準となる基準画像と、検査対象となる印刷物をスキャンして得られる検査対象画像と、の差分に基づき欠陥の有無を判定する。特許文献1は、基準画像から抽出したエッジの近傍領域において検査閾値を緩和するように補正し、基準画像と検査対象画像との差分と、補正した検査閾値と、に基づき印刷物を検査する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、検査対象画像において、エッジなどの特徴を含む領域の近傍に存在する欠陥を検出できない場合があった。
【0005】
そこで本発明は、検査対象画像における特徴を含む領域の近傍に対する検査の精度を向上させるための処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、ユーザからの指示に基づいて、所定の局所パターンに対応する領域における欠陥の検出感度を設定する第1設定手段と、印刷物の検査である基準画像の前記領域において、前記所定の局所パターンに対応する欠陥の検出感度を、前記設定された検出感度から下げる調整を行う調整手段と、検査対象の画像を表す画像データを取得する取得手段と、前記基準画像と前記調整された検出感度とに基づいて、前記検査対象の画像を検査する処理手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検査対象画像における特徴を含む領域の近傍に対する検査の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】画像処理装置を含む印刷システムの構成を示す図
【
図3】画像処理装置が実行する処理を示すフローチャート
【
図7】局所パターン領域を抽出する処理を示すフローチャート
【
図9】検出感度を調整する処理を示すフローチャート
【
図13】局所パターン領域を抽出する処理を示すフローチャート
【
図15】検出感度を調整する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態は本発明を必ずしも限定するものではない。また、本実施形態において説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
[第1実施形態]
本実施形態においては、基準画像から局所パターンに対応する領域を抽出し、局所パターンに類似する欠陥の検出感度を下げて検査処理を行う。尚、本実施形態における検査は、目標となる印刷結果を表す画像(基準画像)と、検査対象である画像(検査対象画像)と、の差分の絶対値に基づいて行われる。
【0011】
<印刷システムの構成>
図1は、画像処理装置100を含む、印刷物の出力と検査とを行う印刷システム全体の構成例を示す図である。本実施形態における印刷システムは、画像処理装置100と、印刷用サーバ180と、印刷装置190と、を有する。印刷用サーバ180は、印刷する原稿の印刷ジョブを生成し、印刷装置190へ印刷ジョブを投入する。印刷装置190は、印刷用サーバ180から投入された印刷ジョブに基づき、記録媒体(印刷用紙)上に画像を形成する。印刷装置190は給紙部191を有しており、ユーザは予め印刷用紙を給紙部191にセットしておく。印刷装置190は印刷ジョブが投入されると、給紙部191にセットされた印刷用紙を搬送路192に沿って搬送しながら、その表面(片面又は両面)に画像を形成し、画像処理装置100へと送る。本実施形態における印刷装置190は、電子写真方式の印刷装置であるが、オフセット印刷方式やインクジェット方式の印刷装置であってもよい。
【0012】
画像処理装置100は、印刷が行われた検査対象の印刷物に対して欠陥の検査を行う。印刷装置190が印刷用紙上に画像を形成することにより得られる検査対象の印刷物は、搬送路192に沿って搬送され、画像処理装置100により検査される。画像処理装置100は検査処理装置として機能する。画像処理装置100は、CPU101、RAM102、ROM103を有する。また、画像処理装置100は、記憶装置104、画像読取装置105、印刷インターフェース(I/F)106、汎用インターフェース(I/F)107、ユーザインターフェース(UI)パネル108、メインバス109を有する。さらに、画像処理装置100は、印刷装置190の搬送路192と接続された印刷物の搬送路110、検査において合格した印刷成果物の出力トレー111、欠陥が発見され検査不合格となった印刷物の出力トレー112を有する。尚、印刷物の分類は合格と不合格との2種類だけでなく、さらに細かく分類する構成であってもよい。また、印刷システムにおいて、記憶装置104、画像読取装置105、UIパネル108、搬送路110、出力トレー111、出力トレー112は、画像処理装置100の外部に設けられていてもよい。
【0013】
CPU101は、画像処理装置100の各部を統括的に制御するプロセッサである。RAM102は、CPU101の主メモリ、ワークエリア等として機能する。ROM103は、CPU101によって実行されるプログラム群を格納している。記憶装置104は、CPU101によって実行されるアプリケーションや、画像処理に用いられるデータ等を記憶する。画像読取装置105は、スキャナであり、印刷装置190から送られてきた印刷物の片面又は両面を、搬送路110上で読み取り、画像データとして取得する。
【0014】
印刷I/F106は、印刷装置190と接続されており、画像処理装置100と印刷装置190とにおける印刷物の処理タイミングの同期や、互いの稼働状況の通知を行うためのインターフェースである。汎用I/F107は、USBやIEEE1394等のシリアルバスインターフェースであり、ユーザがログ等のデータを持ち運ぶことを可能にする。UIパネル108は、液晶ディスプレイ等の表示装置であり、現在の画像処理装置100の状況や設定をユーザに伝えるためのユーザインターフェースとして機能する。また、UIパネル108は、タッチパネル又はボタン等の入力装置を備えていてもよく、検査等に関してユーザからの指示を受け付けることができる。尚、入力装置は、マウスやキーボードのようにUIパネル108とは別に設けられていてもよい。メインバス109は、画像処理装置100の各モジュールを接続する伝送路である。
【0015】
画像処理装置100は、印刷装置190から送られてきた印刷物を搬送路110で搬送しつつ、画像読取装置105において読み取った印刷物の画像データに基づき、以下に説明する検査処理を行う。印刷物は、検査合格であれば合格の出力トレー111に搬送され、検査不合格であれば不合格の出力トレー112に搬送される。これにより、品質の基準を満たすことが確認された印刷物だけを納品用の印刷物として出力トレー111に集めることができる。
【0016】
<画像処理装置の機能構成>
画像処理装置100の機能構成を
図2に示す。画像処理装置100は、基準画像設定部201、領域設定部202、検出感度設定部203、局所パターン抽出部204、検出感度調整部205、画像取得部206、検査処理部207を有する。
【0017】
基準画像設定部201は、RAM102あるいは記憶装置104に記録された画像データが表す画像を基準画像として設定する。領域設定部202は、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示に基づいて、基準画像に対して検査領域を設定する。検出感度設定部203は、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示に基づいて、各検査領域の欠陥に対する検出感度を設定する。本実施形態における検出感度は、欠陥の種別毎に設定される。本実施形態における欠陥の種別は、点状の欠陥(以下、点状欠陥と呼ぶ)と、線状の欠陥(以下、線状欠陥と呼ぶ)と、の2種類である。局所パターン抽出部204は、基準画像から特定の局所パターンに対応する領域を抽出する。本実施形態における抽出対象の局所パターンは線状のパターンであり、局所パターン抽出部204は、基準画像から線状のパターンに対応する領域を抽出する。検出感度調整部205は、局所パターンに対応する領域において、局所パターンに類似する欠陥に対する検出感度を下げる。本実施形態における検出感度調整部205は、線状のパターンに対応する領域において、線状欠陥に対する検出感度を下げる。画像取得部206は、搬送路110上の印刷物を画像読取装置105が読み取って得られる、検査対象画像を表す検査対象画像データを取得する。取得された検査対象画像データはRAM102あるいは記憶装置104に保持される。検査処理部207は、基準画像と検査対象画像との差分と、検出感度と、に基づいて検査対象画像に対する検査処理を行い、検査結果を出力する。
【0018】
<画像処理装置が実行する処理>
図3は画像処理装置100が実行する処理を示すフローチャートである。以下、各ステップ(工程)は符号の前にSを付けて表す。S301において、基準画像設定部201は、基準画像を設定する。基準画像の例を
図4(a)に示す。基準画像を表す基準画像データは、印刷装置190が出力した印刷物を読み取って得られるスキャン画像を基に予め作成され、RAM102あるいは記憶装置104に記録されているものとする。
【0019】
S302において、領域設定部202は、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示に基づいて、基準画像に対して検査領域を設定する。検査領域の例を
図5に示す。本実施形態における領域設定部202は、基準画像に対して検査領域Aと検査領域Bとを設定する。S303において、検出感度設定部203は、UIパネル108を介して取得したユーザからの指示に基づいて、各検査領域の欠陥に対する検出感度を設定する。本実施形態における検出感度設定部203は、各検査領域における点状欠陥と線状欠陥とに対する検出感度を高,中,低の3段階で設定する。検出感度が高いほど、背景とのコントラストが低い欠陥やサイズが小さい欠陥が検出される。検出感度の例を
図6に示す。検査領域Aにおいては点状欠陥及び線状欠陥に対する検出感度が高に設定され、検査領域Bにおいては点状欠陥及び線状欠陥に対する検出感度が中に設定される。
【0020】
S304において、局所パターン抽出部204は、基準画像において局所パターンに対応する領域を抽出する。
図7は、局所パターンに対応する領域を抽出する処理を示すフローチャートである。以下、局所パターンに対応する領域を抽出する処理の詳細について説明する。S701において、局所パターン抽出部204は、基準画像に対して線強調フィルタを適用し、基準画像に含まれる線状のパターンを強調する。線強調フィルタにより、線状のパターンに対応する画素ほど画素値が大きくなる。以下、参照画像に対して線強調フィルタを適用して得られる画像を線強調画像と呼ぶ。本実施形態における線強調フィルタは公知のSobelフィルタであるが、Prewittフィルタなどの公知の二次元フィルタを用いてもよい。S702において、局所パターン抽出部204は、線強調画像において線状のパターンに対応する領域を抽出する。本実施形態においては、線状のパターンに対応する領域としてエッジ領域が抽出される。
図8(a)にエッジ領域の例を示す。具体的には、局所パターン抽出部204は、線強調画像の各画素に対して閾値処理を行い、閾値より画素値が大きい画素をエッジ領域を構成するエッジ画素として抽出する。尚、抽出したエッジ領域に対して公知のモルフォロジー処理などを適用して、エッジ領域を補正してもよい。
【0021】
S305において、検出感度調整部205は、局所パターンに対応する領域において、局所パターンに類似する欠陥に対する検出感度を下げる。
図9は、検出感度を調整する処理を示すフローチャートである。以下、検出感度を調整する処理の詳細について説明する。S901において、検出感度調整部205は、エッジ領域に基づいて検査領域を分割する。
図8(b)に分割された検査領域の例を示す。本実施形態においては、検査領域Aにおけるエッジ領域を領域Aeとし、検査領域Aにおける非エッジ領域を領域Anとする。また、検査領域Bにおけるエッジ領域を領域Beとし、検査領域Bにおける非エッジ領域をBnとする。S902において、検出感度調整部205は、エッジ領域において、線状のパターンに類似する欠陥である線状欠陥に対する検出感度を下げる。具体的には、検出感度調整部205は、領域Aeにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度よりも低く設定し、点状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度と同じになるように設定する。また、検出感度調整部205は、領域Beにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度よりも低く設定し、点状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度と同じになるように設定する。尚、領域Anについての検出感度は検査領域Aについて設定されている検出感度と同じになるように設定され、領域Bnについての検出感度は検査領域Bについて設定されている検出感度と同じになるように設定される。
図10(a)に調整された検出感度の例を示す。
【0022】
S306において、画像取得部206は、検査対象画像を表す検査対象画像データを取得する。検査対象画像の例を
図4(b)に示す。S307において、検査処理部207は、基準画像と検査対象画像との差分と、検出感度と、に基づいて検査対象画像に対する検査処理を行い、検査結果を出力する。検査処理の詳細は後述する。S308において、検査処理部207は、印刷装置190からの印刷情報やUIパネル108を介して取得したユーザからの指示などに基づいて、処理を終了するか否かを判定する。処理を終了しないと判定された場合はS306に進む。
【0023】
<検査処理>
図11は、検査処理を示すフローチャートである。また、
図12は、検査処理の概要を示す図である。以下、検査処理の詳細について説明する。S1101において、検査処理部207は、基準画像と検査対象画像とに基づいて、基準画像と検査対象画像との対応する画素間で輝度値の差分の絶対値を算出し、各画素に輝度値の差分の絶対値を有する差分画像を生成する。S1102において、検査処理部207は、差分画像に含まれる処理対象の欠陥を強調することにより、欠陥強調画像を生成する。処理対象の欠陥が線状欠陥である場合は、差分画像に対して線強調フィルタを適用する。線強調フィルタにはSobelフィルタを用いる。処理対象の欠陥が点状欠陥である場合は、差分画像に対して点強調フィルタを適用する。点強調フィルタには、公知の二次元LoG(Laplacian of Gaussian)フィルタを用いる。尚、点強調フィルタには、DoG(Difference of Gaussian)フィルタなどの公知の二次元フィルタを用いてもよい。
【0024】
S1103において、検査処理部207は、処理対象の検査領域と処理対象の欠陥とに対応する検出感度に基づいて、検査に用いる閾値を設定する。本実施形態においては、欠陥強調画像の画素値と閾値Th1とを比較することにより、欠陥領域を構成する欠陥画素を検出する。さらに、欠陥領域が十分な面積を有するか否かを判定するため、連結した欠陥画素群から成る欠陥領域の面積と閾値Th2とを比較する。そこで、S1103における検査処理部207は、閾値Th1と閾値Th2とを設定する。具体的には、検査処理部207は、検出感度が高いほど背景とのコントラストが低い欠陥やサイズが小さい欠陥を検出できるように閾値を設定する。検査処理部207は、検出感度が高いほど閾値Th1を小さい値に設定し、検出感度が高いほど閾値Th2を小さい値に設定する。例えば本実施形態においては、線状欠陥に対する検出感度は領域Aeよりも領域Anの方が高いため、閾値Th1は領域Aeよりも領域Anの方が小さく設定され、閾値Th2は領域Aeよりも領域Anの方が小さく設定される。
【0025】
S1104において、検査処理部207は、閾値Th1を用いて、欠陥強調画像の画素値に対して閾値処理を行う。検査処理部207は、閾値処理により、欠陥強調画像の画素のうち画素値が閾値Th1以上の画素を欠陥画素として検出する。S1105において、検査処理部207は、閾値Th2を用いて、欠陥強調画像における欠陥領域の面積に対して閾値処理を行う。検査処理部207は、閾値処理により、画素の連結数が閾値Th2よりも小さい欠陥領域の画素を、S1104において検出された欠陥画素から除去する。
【0026】
S1106において、検査処理部207は、処理対象の検査領域と欠陥領域とで共通する領域を特定する。これにより、処理対象の検査領域における欠陥領域のみを検出することができる。S1107において、検査処理部207は、未処理の検査領域があるか否かを判定する。未処理の検査領域がある場合は処理対象の検査領域を更新してS1103に進む。未処理の検査領域がない場合はS1108に進む。
【0027】
S1108において、検査処理部207は、各検査領域の欠陥領域を統合する。これにより、処理対象の欠陥に対応する欠陥領域を取得することができる。S1109において、検査処理部207は、未処理の欠陥種別があるか否かを判定する。未処理の欠陥種別がある場合は処理対象の欠陥を更新してS1102に進む。未処理の欠陥種別がない場合はS1110に進む。S1110において、検査処理部207は、検査結果を出力する。検査結果は、全ての欠陥種別に対して欠陥領域がない場合は合格とし、いずれかの欠陥種別に対して欠陥領域がある場合は不合格とする。
【0028】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態における画像処理装置は、目標の印刷結果である基準画像を設定する。複数種類の欠陥に対する検出感度を設定する。基準画像から局所パターンに対応する領域を抽出する。局所パターンに対応する領域において、局所パターンに類似する欠陥に対する検出感度を下げるように、検出感度を調整する。検査対象の画像を表す画像データを取得する。基準画像と調整された検出感度とに基づいて、検査対象の画像を検査する。これにより、検査対象画像における特徴を含む領域の近傍に対する検査の精度を向上させることができる。
【0029】
<変形例>
本実施形態における領域設定部202は、検査領域Aと検査領域Bとの2つの領域を検査領域として設定したが、検査領域の設定方法はこれに限られない。例えば、基準画像全体を単一の検査領域として設定してもよい。また、3つ以上の領域を検査領域として設定してもよい。また、欠陥の検出を行わない非検査領域を設定してもよい。非検査領域を設定する場合、S1101において生成された差分画像において非検査領域の画素値を0にすることにより、非検査領域における欠陥を検出しないようにすることができる。
【0030】
また、本実施形態における検出感度設定部203は、検出感度を3段階で設定しているが、検出感度の設定方法はこれに限られない。例えば、検出感度を2段階で設定してもよいし、4段階以上で設定してもよい。また、いずれかの欠陥に対する検出感度を固定してもよい。
【0031】
また、本実施形態における局所パターン抽出部204は、局所パターンに対応する領域として線状のパターンに対応する領域を抽出したが、点状のパターンに対応する領域を抽出してもよい。この場合、S701において、局所パターン抽出部204は、基準画像に対して点強調フィルタを適用し、基準画像に含まれる点状のパターンを強調する。点強調フィルタにより、点状のパターンに対応する画素ほど画素値が大きくなる。以下、参照画像に対して点強調フィルタを適用して得られる画像を点強調画像と呼ぶ。点強調フィルタには二次元LoGフィルタを用いる。S702において、局所パターン抽出部204は、点強調画像において点状のパターンに対応する領域を抽出する。点状のパターンに対応する領域としてドット領域が抽出される。
図8(c)にドット領域の例を示す。具体的には、局所パターン抽出部204は、点強調画像の各画素に対して閾値処理を行い、閾値より画素値が大きい画素をドット領域を構成するドット画素として抽出する。尚、抽出したドット領域に対して公知のモルフォロジー処理などを適用して、ドット領域を補正してもよい。
【0032】
S901において、検出感度調整部205は、ドット領域に基づいて検査領域を分割する。
図8(d)に分割された検査領域の例を示す。検査領域Aにおけるドット領域を領域Adとし、検査領域Aにおける非ドット領域を領域Anとする。また、検査領域Bにおけるドット領域を領域Bdとし、検査領域Bにおける非ドット領域をBnとする。S902において、検出感度調整部205は、ドット領域において、点状のパターンに類似する欠陥である点状欠陥に対する検出感度を下げる。具体的には、検出感度調整部205は、領域Adにおいて、点状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度よりも低く設定し、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度と同じになるように設定する。また、検出感度調整部205は、領域Bdにおいて、点状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度よりも低く設定し、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度と同じになるように設定する。尚、領域Anについての検出感度は検査領域Aについて設定されている検出感度と同じになるように設定され、領域Bnについての検出感度は検査領域Bについて設定されている検出感度と同じになるように設定される。
図10(b)に調整された検出感度の例を示す。
【0033】
また、本実施形態における欠陥の種別は、点状欠陥と線状欠陥との2種類であるが、例えば縦線状欠陥や横線状欠陥など方向が異なる線状欠陥を異なる欠陥種別として検出してもよい。処理対象の欠陥が縦線状欠陥である場合は、S1102において、検査処理部207は、差分画像に対して縦方向の線を強調する縦線強調フィルタを適用する。処理対象の欠陥が横線状欠陥である場合は、S1102において、検査処理部207は、差分画像に対して横方向の線を強調する横線強調フィルタを適用する。
【0034】
また、本実施形態の検査処理においては、画素値に対する閾値処理と面積に対する閾値処理とを行うが、画素値に対する閾値処理のみで欠陥領域を検出してもよい。この場合、検出感度に対応する閾値は、画素値に対する閾値のみ設定すればよい。
【0035】
また、本実施形態においては、検査対象画像は合格であるか不合格であるかをユーザに通知するが、不合格となった検査対象画像の欠陥領域をUIパネル108に表示してもよい。
【0036】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、基準画像から局所パターンに対応する領域として線状のパターンに対応する領域を抽出し、線状欠陥に対する検出感度を下げた。本実施形態においては、基準画像から複数種類の局所パターンそれぞれに対応する領域を抽出し、各局所パターンに類似する欠陥に対する検出感度を下げる。尚、本実施形態における印刷システムの構成及び画像処理装置100の機能構成は第1実施形態のものと同等であるため、説明を省略する。以下において、本実施形態と第1実施形態とで異なる処理である、S304及びS305の処理を主に説明する。尚、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0037】
<局所パターンに対応する領域を抽出する処理>
S304において、局所パターン抽出部204は、基準画像において複数種類の局所パターンそれぞれに対応する領域を抽出する。本実施形態においては、複数種類の局所パターンとして、線状のパターンに対応する領域と、点状のパターンに対応する領域と、が抽出される。
図13は、複数種類の局所パターンそれぞれに対応する領域を抽出する処理を示すフローチャートである。以下、複数種類の局所パターンそれぞれに対応する領域を抽出する処理の詳細について説明する。
【0038】
S1301において、局所パターン抽出部204は、基準画像に含まれる処理対象の局所パターンを強調する。処理対象の局所パターンが線状のパターンである場合は、局所パターン抽出部204は、基準画像に対して線強調フィルタを適用する。処理対象の局所パターンが点状のパターンである場合は、局所パターン抽出部204は、基準画像に対して点強調フィルタを適用する。S1302において、局所パターン抽出部204は、局所パターンが強調された画像において局所パターンに対応する領域を抽出する。処理対象の局所パターンが線状のパターンである場合は、局所パターン抽出部204は、線強調画像の各画素に対して閾値処理を行い、閾値より画素値が大きい画素をエッジ画素として抽出する。処理対象の局所パターンが点状のパターンである場合は、局所パターン抽出部204は、点強調画像の各画素に対して閾値処理を行い、閾値より画素値が大きい画素をドット画素として抽出する。
【0039】
S1303において、局所パターン抽出部204は、未処理の局所パターンがあるか否かを判定する。未処理の局所パターンがある場合は処理対象の局所パターンを更新してS1301に進み、未処理の局所パターンがない場合はS1304に進む。S1304において、局所パターン抽出部204は、複数種類の局所パターンそれぞれに対応する領域を統合する。具体的には、局所パターン抽出部204は、エッジ領域とドット領域との両方に含まれる画素をいずれか一方の領域に属する画素に置き換える。本実施形態における局所パターン抽出部204は、エッジ領域とドット領域との両方に含まれる画素をエッジ領域を構成するエッジ画素に置き換える。S1304の処理により抽出される局所パターンに対応する領域の例を
図14(a)に示す。
【0040】
<検出感度を調整する処理>
S305において、検出感度調整部205は、エッジ領域において線状欠陥に対する検出感度を下げ、ドット領域において点状欠陥に対する検出感度を下げる。
図15は、検出感度を調整する処理を示すフローチャートである。以下、検出感度を調整する処理の詳細について説明する。S1501において、検出感度調整部205は、処理対象の局所パターンに対応する領域に基づいて検査領域を分割する。
図14(b)に分割された検査領域の例を示す。検出感度調整部205は、検査領域Aにおけるエッジ領域を領域Aeとし、ドット領域を領域Adとし、その他の領域をAnとする。また、検査領域Bにおけるエッジ領域を領域Beとし、ドット領域をBdとし、その他の領域をBnとする。
【0041】
S1502において、検出感度調整部205は、処理対象の局所パターンに対応する領域において、処理対象の局所パターンに類似する欠陥に対する検出感度を下げる。処理対象の局所パターンが線状のパターンである場合は、検出感度調整部205は、エッジ領域において線状欠陥に対する検出感度を下げる。具体的には、検出感度調整部205は、領域Aeにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度よりも低く設定し、領域Beにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度よりも低く設定する。処理対象の局所パターンが点状のパターンである場合は、検出感度調整部205は、ドット領域において点状欠陥に対する検出感度を下げる。具体的には、検出感度調整部205は、領域Adにおいて、点状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度よりも低く設定し、領域Bdにおいて、点状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度よりも低く設定する。
図16(a)に調整された検出感度の例を示す。
【0042】
S1503において、検出感度調整部205は、未処理の局所パターンがあるか否かを判定する。未処理の局所パターンがある場合は処理対象の局所パターンを更新してS1502に進み、未処理の局所パターンがない場合はS305の処理を終了する。
【0043】
<第2実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態における画像処理装置は、複数種類の局所パターンそれぞれに対応する領域を抽出し、抽出した領域に応じて検出感度を調整した。これにより、検査対象画像における特徴を含む領域の近傍に対する検査の精度を向上させることができる。
【0044】
<変形例>
本実施形態においては、局所パターンに対応する領域としてエッジ領域とドット領域とを抽出したが、局所パターンはこれらに限られない。例えば、同一種別、かつ、背景とのコントラストが異なる局所パターンを別々に抽出してもよい。この場合、背景とのコントラストが高い局所パターンに対応する領域ほど検出感度が低くなるように調整を行う。例として、高コントラストエッジ領域と、低コントラストエッジ領域と、を別々に抽出する場合について説明する。まず、高コントラストエッジ領域に対応する閾値ThEHと低コントラストエッジ領域に対応する閾値ThELとが設定される。ThEHはThELよりも大きい値とする。
【0045】
S1302において、局所パターン抽出部204は、処理対象の局所パターンが高コントラストエッジである場合は、線強調画像の各画素に対して閾値処理を行い、閾値ThEHより画素値が大きい画素を高コントラストエッジ領域の画素として抽出する。処理対象の局所パターンが低コントラストエッジである場合は、線強調画像の各画素に対して閾値処理を行い、閾値ThELより画素値が大きい画素を低コントラストエッジ領域の画素として抽出する。S1304において、局所パターン抽出部204は、低コントラストエッジ領域の画素のうち、高コントラストエッジ領域の画素と重複する画素を高コントラストエッジ領域の画素に置き換える。
【0046】
S1501において、検出感度調整部205は、検査領域Aにおける高コントラストエッジ領域を領域Ae
Hとし、低コントラストエッジ領域をAe
Lとし、その他の領域をAnとする。また、検査領域Bにおける高コントラストエッジ領域を領域Be
Hとし、低コントラストエッジ領域をBe
Lとし、その他の領域をBnとする。S1502において、検出感度調整部205は、エッジ領域において線状欠陥に対する検出感度を下げる。具体的には、検出感度調整部205は、処理対象の局所パターンが高コントラストエッジである場合は、領域Ae
Hにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度よりも低く設定する。また、領域Be
Hにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度よりも低く設定する。検出感度調整部205は、処理対象の局所パターンが低コントラストエッジである場合は、領域Ae
Lにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Aについて設定されている検出感度よりも低く設定する。また、領域Be
Lにおいて、線状欠陥に対する検出感度を検査領域Bについて設定されている検出感度よりも低く設定する。
図16(b)に調整された検出感度の例を示す。
【0047】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0048】
100 画像処理装置
201 基準画像設定部
203 検出感度設定部
204 局所パターン抽出部
205 検出感度調整部
206 画像取得部
207 検査処理部