(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B41J2/175 153
B41J2/175 119
B41J2/175 169
B41J2/175 501
(21)【出願番号】P 2020063664
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】刈田 誠一郎
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-338131(JP,A)
【文献】特開2016-150519(JP,A)
【文献】特開2016-185659(JP,A)
【文献】特表2002-508720(JP,A)
【文献】特開2014-054858(JP,A)
【文献】米国特許第05732751(US,A)
【文献】中国実用新案第2688495(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する筐体を有するカートリッジと、
前記カートリッジを装着する装着部と、
を有する記録装置であって、
前記カートリッジは、前記装着部と連結する中空のニードルを有し、
前記装着部は、液体が外部に漏れることを防ぐ弁ばね機構として、第1バルブと、前記カートリッジが装着された場合に、前記カートリッジと前記装着部との接続部をシールする第1シール部材と、第1コイルバネとを有し、
前記ニードルは、液体が外部に漏れることを防ぐ弁ばね機構として、第2バルブと、第2シール部材と、第2コイルバネとを有
し、
前記装着部は、前記第1シール部材を固定するためのカバーを更に有する、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1コイルバネは、前記第2コイルバネより弱い請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2バルブの先端が凸形状である請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1バルブの先端に突起形状は設けられておらず、前記ニードルの伸長方向における位置に関して、前記第2バルブの前記凸形状が前記ニードルの外壁より突出している請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1バルブの先端に突起形状が設けられており、前記ニードルの伸長方向における位置に関して、前記第2バルブの前記凸形状が前記ニードルの外壁より突出していない請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
前記カートリッジを脱抜する際、前記第1バルブと、前記第1シール部材と、前記ニードルの外壁とで囲われた空間に液体が溜まる
請求項1乃至5の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記カートリッジの脱抜の後、前記カバーの内側に液体がとどまる
請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記カバーにより構成される開口部の径は、前記ニードルの径より大きい
請求項1乃至7の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記カバーは、前記カートリッジの装着時に該カートリッジをガイドするガイド機構としての役割を果たす
請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記ニードルの二端のうち、前記筐体に近い方の一端である基端は、該筐体と連通し、
前記カートリッジが前記装着部に装着された場合、前記筐体に収容されている液体は、前記基端、該基端ではない前記ニードルの一端である先端、前記装着部の順に流れる
請求項1乃至9の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記ニードルは、前記カートリッジの外形の角部を結んだときに形成される空間の内側に配される
請求項1乃至10の何れか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジを装着する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として、インクカートリッジが装着部に対して装着及び脱抜(取り外し)可能なインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置では、例えば、装着部が備える中空のニードルが、インクカートリッジのインク供給口に挿入される。これにより、インクカートリッジ内のインクが、インク供給口及びニードルを介して記録ヘッドへ供給される。また、インク供給口の周囲にはゴム等で構成されたシール部が配置されている。シール部によって、インク供給口とニードルとの間の隙間が封止されている。これにより、隙間からのインクの漏れが防止されている。
【0003】
しかし、インクカートリッジを装着部から脱抜する過程において、ニードルとシール部との接触が解消される際に、インクカートリッジやニードル内のインクがニードルやシール部に引っ張られて外部へ漏れる問題がある。この問題を解決するための技術として、特許文献1に開示の技術が存在する。特許文献1では、インク供給口をカバーで覆う構成とした上で、インクカートリッジを脱抜する際にインクカートリッジを規定位置で停止させる干渉部を設け、ニードル先端をシール部材とインク受け部との間に収めている。このような構成によれば、シール部材を固定させるためのキャップが、インク供給口やニードルから漏れたインクを受けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、インクカートリッジの脱抜により、ニードル先端とシール部材におけるシール部との接触が解消される際に、ニードルとシール部材とバルブとで囲まれた空間に溜まるインクが漏れてしまう可能性がある。
【0006】
そこで本発明の一実施形態は、上記の課題に鑑み、カートリッジの脱抜に起因する液体の漏れを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、液体を収容する筐体を有するカートリッジと、前記カートリッジを装着する装着部と、を有する記録装置であって、前記カートリッジは、前記装着部と連結する中空のニードルを有し、前記装着部は、液体が外部に漏れることを防ぐ弁ばね機構として、第1バルブと、前記カートリッジが装着された場合に、前記カートリッジと前記装着部との接続部をシールする第1シール部材と、第1コイルバネとを有し、前記ニードルは、液体が外部に漏れることを防ぐ弁ばね機構として、第2バルブと、第2シール部材と、第2コイルバネとを有し、前記装着部は、前記第1シール部材を固定するためのカバーを更に有する、ことを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、カートリッジの脱抜に起因する液体の漏れを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、以下に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。また、以下に記載されている技術的特徴の全てが本発明の課題解決に必須のものとは限らない。
【0011】
[第1の実施形態]
<インクカートリッジの装着方法>
以下、本実施形態におけるインクカートリッジ100を液体記録装置に装着する方法について、
図1を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、インク130が収納されたインクカートリッジ100は、液体記録装置(図示せず)に搭載され、インクを貯蔵するインク貯蔵部160に装着される。インク貯蔵部160は、インクカートリッジ100が装着されることで、液体記録装置の記録ヘッドに貯蔵したインク130を供給する仲介部材として機能する。インクカートリッジ100は、筐体110と、蓋120と、ニードル150とを有する。筐体110内部には、インク130が収容されており、蓋120には大気連通口(図示せず)が設けられている。記録装置と連結するためのニードル150は、弁バネ構造等の弁を有する。インク貯蔵部160には、ニードル150との接続部として機能し、インク貯蔵部160にインクを供給する供給部140が連結されている。尚、ここでは、液体記録装置がインクジェット記録装置(以降、記録装置と略記する)であるものとして説明するが、液体はインクに限らない。
【0013】
図1(a)は、インクカートリッジ100を記録装置に装着する前の状態を示し、
図1(b)は、インクカートリッジ100を記録装置に装着した後の状態を示す。インクカートリッジ100の突出部であるニードル150を供給部140に挿入する(突き刺す)ことで、インクカートリッジ100とインク貯蔵部160との間を、供給部140を介してインクが流れるインク流路が実現する。その結果、インクカートリッジ100からインク貯蔵部160にインクが供給される。尚、ニードル150は、
図1(a)中に破線で示すように、インクカートリッジ100外形の角部を結んだときに形成される空間の内側に位置するように設けることが望ましい。このような構成にすることで、ニードルが外部物体に引っかかってしまうことを抑えることができるため、ニードルを保護できる。尚、本明細書では、ニードル150の二端のうち筐体110に近い方の一端を「(ニードルの)基端」と、そうではない一端を「(ニードルの)先端」と呼ぶ。
【0014】
<装着部の構成>
以下、本実施形態におけるインクカートリッジ100の装着部、具体的には、インクカートリッジ100と、インク貯蔵部160とを接続するための構成について、
図2を用いて説明する。
【0015】
図2に示すように、インクカートリッジ100は、外部にインク130が流出しないようにするための機構として、中空のニードル150内部に弁ばね機構を有する。この弁ばね機構は、バルブ151と、シール部材152と、コイルばね153とを含む。尚、インク貯蔵部160側の供給部140にも同様に、バルブ143と、シール部材142と、コイルバネ144とを含む弁ばね機構が設けられている。また本実施形態では、
図2に示すように、ニードル150伸長方向における位置に関して、バルブ151先端の凸形状がニードル150外壁より突出する構成としている。
【0016】
インクカートリッジ100が記録装置に装着されていない場合、ニードル150内のコイルバネ153がバルブ151を押すことで、シール部材152を押す。押されたシール部材152がニードル150内壁の凸部と当接することで、ニードル150内のシールが行われる。
【0017】
インクカートリッジ100を記録装置に装着する際には、まず、インクカートリッジ100側のバルブ151における凸形状の先端が、供給部140側のバルブ143に当接し、該先端が押される。これにより、ニードル150内のシール部材152がニードル150内壁の凸部から離れる結果、ニードル150内のシールが解除され、インクカートリッジ100からインク貯蔵部160にインクを供給することが可能になる。
【0018】
<インクカートリッジの挿抜>
以下、インク貯蔵部160に対するインクカートリッジ100の装着、および、その後の、インク貯蔵部160からインクカートリッジ100の脱抜(これらをまとめてインクカートリッジの挿抜と呼ぶ)について、
図3を用いて説明する。
図3(a)~(e)はそれぞれ、インクカートリッジ100の挿抜時の状態を示す拡大断面図である。
【0019】
図3(a)は、インクカートリッジ100のニードル150が供給部140に挿入された直後の状態を示す。インクカートリッジ100を装着しやすいように、供給部140先端のカバー141は、シール部材142を固定する。また、カバー141は、ニードル150より径が大きい開口部の形状を有し、インクカートリッジ100の装着時にインクカートリッジ100をガイドするガイド機構の役割を果たす。ニードル150の挿入直後の状態では、インクカートリッジ100のニードル150外周が供給部140内のシール部材142の内側に当接することで、供給部140がシールされ、ニードル150内のバルブ151の突出した先端がバルブ143に当接する。このとき、バルブ143とニードル150外壁とシール部材142とで囲われた空間は、密閉された状態である。
【0020】
図3(b)は、
図3(a)の状態から、インクカートリッジ100がさらに押し込まれた状態を示す。ニードル150側のコイルバネ153と比べると、供給部140側のコイルバネ144の方が弱い。このため、
図3(b)に示すように、挿入過程において、ニードル150側のバルブ151が開く前に、供給部140側のバルブ143が開くようになっている。
【0021】
図3(c)は、
図3(b)の状態から、インクカートリッジ100がさらに押し込まれた状態を示す。
図3(c)に示すように、ニードル150側のバルブ151が開くと供に、供給部140側のバルブ143は、
図3(b)の状態から更に押し込まれ移動する。バルブ151が移動して開くことで、インクカートリッジ100内のインク130が、供給部140経由で、インク貯蔵部160に移動することが可能になる。
【0022】
図3(d)は、
図3(c)の状態から、インクカートリッジ100が取り外される途中の状態を示している。インクカートリッジ100が取り外されるとき、インク供給部における弁と、ニードル150における弁とは、インクカートリッジ100挿入時と逆順に動作する。尚、
図3(d)の状態に関して、各構成要素の位置は
図3(a)と同じだが、バルブ143とニードル150とシール部材142とに囲われた密閉空間がインクで満たされている点で
図3(a)と異なる。
【0023】
図3(e)は、インクカートリッジ100のニードル150が供給部140から外れた状態を示している。
図3(e)に示すように、インクカートリッジ100を脱抜した場合に、
図3(d)に示した前述の密閉空間に溜まったインク130は供給部140の開口付近に滞留し、インク130がカバー141の外に飛び散ることを防ぐことができている。但し、インクカートリッジ100の脱抜を何回か繰り返し行った場合には、供給部140の開口付近に滞留するインクが累積するため、インク130がカバー141の外に飛び散ってしまう可能性がある。
【0024】
その場合、インク130はカバー141外に飛び出して、記録装置に搭載されている供給部140の下部に落ちる。しかし、インク130が供給部140の下部に落ちた場合に備えて、吸収体を供給部140近傍に配置する等の措置を予め講じておけば、記録装置外にインク130が流れ出すことはない。一方、インクカートリッジ100の脱抜時にインクカートリッジ100のニードル150に付着しているインク量は、ニードル150自身の形状によって微量である。従って、インクカートリッジ100の脱抜時に、インクカートリッジ100に付着しているインクが落ちることは稀である。
【0025】
[第2の実施形態]
図4は、前述の実施形態と異なる実施形態として、ニードル150側のバルブ151先端の凸形状と、供給部140側のバルブ143先端の形状とを変えた実施形態を示す。本実施形態では
図4に示すように、ニードル150伸長方向における位置に関して、バルブ151先端の凸形状がニードル150外壁より突出しない構成としている。このような構成にすることで、前述の実施形態より、脱抜時にニードル150に付着しているインク量を低減できる。また、このような構成にすることで、ニードル150の先端部に万一物が当たった場合に、インクカートリッジ100からインクが漏れる可能性が、前述の実施形態(
図2、
図3参照)より少なくなる。尚、バルブ151先端の凸形状がニードル150外壁より突出しない構成としたことに応じて、バルブ143側に突起形状を設け、該突起形状によってバルブ151を押す構成とした。
【0026】
図4に示す各弁が、インクカートリッジ100の装着時および脱抜時に第1の実施形態と同様に動作するように(
図3参照)、ニードル150の先端部と、バルブ143側の突起形状との寸法は設定される。44(a)~(e)は
図3(a)~(e)と対応した図であり、
図4(a)~(e)に示す各弁は、第1の実施形態と同じ開閉タイミングで動作する。
【0027】
本実施形態によれば、ニードル先端部においてインクが溜まる可能性がある場所のサイズが第1の実施形態と比べて小さいため、インクカートリッジ100を脱抜する際のインク垂れをさらに抑制できる。
【符号の説明】
【0028】
100 インクカートリッジ
110 筐体
130 インク
140 供給部
142 シール部材
143 バルブ
144 コイルバネ
150 ニードル