(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2020093137
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 充
(72)【発明者】
【氏名】緒方 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 泰靖
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020933(JP,A)
【文献】特開2000-089607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を定着させる定着装置であって、
無端状で回転可能なベルトと、
前記ベルトを張架すると共に、3本以上である複数のハロゲンヒータを有し前記ベルトを加熱する加熱ローラと、
前記加熱ローラの一端に設けられ、前記加熱ローラを回転させる回転力を伝達する駆動伝達部材と、
前記ベルトと協働して、記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、
前記ベルトの内面に接し、前記加圧部材と前記ニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記加熱ローラまたは前記ベルトの温度検知する温度検知部材と、
前記温度検知部材の出力に基づいて各々のハロゲンヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、
前記加熱ローラは、
記録材の搬送方向と直交する前記加熱ローラの長手方向において、前記駆動伝達部材が設けられている側の発熱量が他端側の発熱量よりも大きく、発熱部の中央に対して発熱分布が非対称であるハロゲンヒータと、
前記長手方向において発熱部の中央に対して発熱分布が対称であるハロゲンヒータと、を有し、
前記対称であるハロゲンヒータの数は、前記非対称であるハロゲンヒータの数よりも大きい、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記駆動伝達部材はギアである
ことを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱ローラの前記駆動伝達部材が設けられている側の端部の温度を検知する端部温度検知部材を有し、前記制御部は前記端部温度検知部材の出力に基づいて前記非対称のハロゲンヒータの通電を制御する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱ローラは、前記長手方向において、前記駆動伝達部材が設けられていない側の端部の発熱量が、前記駆動伝達部材が設けられている側の端部の発熱量よりも大きいハロゲンヒータを有していない、
ことを特徴とする、請求項1ないし3の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記非対称であるハロゲンヒータは、前記駆動伝達部材側の端部の発熱量が中央の発熱量よりも大きい、
ことを特徴とする請求項
1乃至4
の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記非対称であるハロゲンヒータは、前記他端側の端部の発熱量と中央の発熱量は等しい、
ことを特徴とする、請求項
1乃至5
の何れか1項に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に担持されたトナー像を記録材に定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置として、ローラの内側に複数のハロゲンヒータを配置し、ローラの幅方向に関して各ヒータの配光分布を異ならせた構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ヒータにより加熱されるローラを含む回転体の熱容量の分布が幅方向に関して非対称となる場合がある。例えば、ローラの幅方向一端部に駆動源からの駆動を伝達するためのギアなどの回転伝達部が設けられている場合、幅方向一端側の方が他端側よりも熱容量が大きくなる。このように回転体の熱容量が幅方向に関して非対称である場合に、例えばヒータの出力分布が幅方向に関して対称であると、回転体の熱容量が大きい側の温度が十分に上昇せずに定着不良が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、回転体の熱容量が幅方向に関して非対称であっても定着不良の発生を抑制できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、記録材に画像を定着させる定着装置であって、無端状で回転可能なベルトと、前記ベルトを張架すると共に、3本以上である複数のハロゲンヒータを有し前記ベルトを加熱する加熱ローラと、前記加熱ローラの一端に設けられ、前記加熱ローラを回転させる回転力を伝達する駆動伝達部材と、前記ベルトと協働して、記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、前記ベルトの内面に接し、前記加圧部材と前記ニップ部を形成するニップ形成部材と、前記加熱ローラまたは前記ベルトの温度検知する温度検知部材と、前記温度検知部材の出力に基づいて各々のハロゲンヒータへの通電を制御する制御部と、を備え、前記加熱ローラは、記録材の搬送方向と直交する前記加熱ローラの長手方向において、前記駆動伝達部材が設けられている側の発熱量が他端側の発熱量よりも大きく、発熱部の中央に対して発熱分布が非対称であるハロゲンヒータと、前記長手方向において発熱部の中央に対して発熱分布が対称であるハロゲンヒータと、を有し、前記対称であるハロゲンヒータの数は、前記非対称であるハロゲンヒータの数よりも大きい、ことを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転体の熱容量が幅方向に関して非対称であっても定着不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【
図2】第1の実施形態に係る定着装置の概略構成断面図。
【
図3】(a)第1の実施形態に係る加熱ローラを長手方向に切断した概略構成断面図、(b)同じく加圧ローラの概略構成平面図。
【
図4】第1の実施形態に係るハロゲンヒータの温度制御に関するブロック図。
【
図5】第1の実施形態に係るハロゲンヒータの長手方向に関する配光分布を比較例と共に示す図。
【
図6】第1の実施形態に係るハロゲンヒータの長手方向に関する配光分布及び温度分布を比較例と共に示す図。
【
図7】第2の実施形態に係るハロゲンヒータの温度制御に関するブロック図。
【
図8】第2の実施形態に係るハロゲンヒータの長手方向に関する配光分布を示す図。
【
図9】第2の実施形態に係るヒータの温度制御を示すフローチャート。
【
図10】第2の実施形態に係るヒータの温度とヒータのON/OFFの関係を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、
図1ないし
図6を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0012】
[画像形成装置]
画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられた4つの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを後述する中間転写ベルト204の回転方向に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置1は、画像形成装置本体3に接続された画像読取部(原稿読取装置)2又は画像形成装置本体3に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材に形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
【0013】
画像形成装置1は、画像読取部2と画像形成装置本体3とを備える。画像読取部2は、原稿台ガラス21上に置かれた原稿を読み取るもので、光源22から照射された光が原稿で反射し、レンズなどの光学系部材23を介してCCDセンサ24に結像される。このような光学系ユニットは矢印の方向に走査することにより、原稿をライン毎の電気信号データ列に変換する。CCDセンサ24により得られた画像信号は、画像形成装置本体3に送られ、制御部30で後述する各画像形成部に合わせた画像処理がなされる。また、制御部30は画像信号としてプリントサーバなどの外部のホスト機器からの外部入力も受ける。
【0014】
画像形成装置本体3は、複数の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを備え、各画像形成部では、上述の画像信号に基づいて画像形成が行われる。即ち、画像信号は制御部30によりPWM(パルス幅変調制御)されたレーザービームに変換される。露光装置としてのポリゴンスキャナ31は、画像信号に応じたレーザービームを走査する。そして、各画像形成部Pa~Pdの像担持体としての感光ドラム200a~200dにレーザービームが照射される。
【0015】
なお、Paはイエロー色(Y)の画像形成部、Pbはマゼンタ色(M)の画像形成部、Pcはシアン色(C)の画像形成部、Pdはブラック色(Bk)の画像形成部で、それぞれ対応する色の画像を形成する。画像形成部Pa~Pdは略同一なので、以下にYの画像形成部Paの詳細を説明して、他の画像形成部の説明は省略する。画像形成部Paにおいて、感光ドラム200aは、次述するように、画像信号に基づいて表面にトナー画像が形成される。
【0016】
1次帯電器としての帯電ローラ201aは、感光ドラム200aの表面を所定の電位に帯電させて静電潜像形成の準備を施す。ポリゴンスキャナ31からのレーザービームによって、所定の電位に帯電された感光ドラム200aの表面に静電潜像が形成される。現像器202aは、感光ドラム200a上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。1次転写ローラ203aは、中間転写ベルト204の背面から放電を行いトナーと逆極性の一次転写バイアスを印加し、感光ドラム200a上のトナー像を中間転写ベルト204上へ転写する。転写後の感光ドラム200aは、クリーナー207aでその表面を清掃される。
【0017】
また、中間転写ベルト204上のトナー像は次の画像形成部に搬送され、Y、M、C、Bkの順に、順次それぞれの画像形成部にて形成された各色のトナー像が転写され、4色の画像がその表面に形成される。そして、中間転写ベルト204の回転方向最下流にあるBkの画像形成部Pdを通過したトナー像は、2次転写ローラ対205、206で構成される2次転写部に搬送される。そして、2次転写部おいて、中間転写ベルト204上のトナー画像と逆極性の2次転写電界が印加されることにより、記録材に2次転写される。
【0018】
記録材は、カセット9に収容されており、カセット9から給送された記録材は、例えば1対のレジストレーションローラで構成されるレジ部208に搬送され、レジ部208で待機する。その後、レジ部208は、中間転写ベルト204上のトナー像と用紙の位置を合わせるためにタイミングが制御され、記録材を2次転写部に搬送する。
【0019】
2次転写部でトナー像が転写された記録材は、定着装置8に搬送され、定着装置8において、加熱、加圧されることで、記録材に担持されたトナー像が記録材に定着される。定着装置8を通過した記録材は、排出トレイ7に排出される。なお、記録材の両面に画像形成を行う場合には、記録材の第一面(表面)へのトナー像の転写及び定着が終了すると、反転搬送部10を経て記録材の表裏を逆転し、記録材の第二面(裏面)へのトナー像の転写及び定着を行い、排出トレイ7上に積載される。
【0020】
なお、制御部30は、上述のように画像形成装置1全体の制御を行う。また、制御部30は、画像形成装置1が有する操作部4や表示部5からの入力に基づいて、各種設定などが可能である。操作部4や表示部5は、画像形成装置1に備えられており、例えば、タッチ操作が可能なタッチパネルやボタンなどである。
【0021】
このような制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0022】
[定着装置]
次に、
図2を用いて本実施形態における定着装置8の構成について説明する。本実施形態では、無端状のベルトを用いたベルト加熱方式の定着装置を採用している。
図2において、記録材は、矢印αで示すように、右から左方向に搬送される。定着装置8は、無端状で回転可能なベルトとしての定着ベルト310を有する加熱ユニット300と、定着ベルト310に当接し、定着ベルト310と共にニップ部Nを形成する加圧回転体としての加圧ローラ330を有する。
【0023】
加熱ユニット300は、上述の定着ベルト310と、ニップ部形成部材及びパッド部材としての定着パッド320、張架ローラとしての加熱ローラ340及びステアリングローラ350を有する。加圧ローラ330は、定着ベルト310の外周面に当接して回転し、定着ベルト310に駆動力を付与する駆動ローラでもある。
【0024】
無端状のベルトである定着ベルト310は、熱伝導性や耐熱性等を有しており、例えば外形120mmで薄肉の円筒形状である。本実施形態においては、基層、基層の外周に弾性層、その外周に離型層を形成した3層構造としている。そして、基層は厚さ60μmで材質はポリイミド樹脂(PI)を、弾性層は厚さ300μmでシリコーンゴムを、離型層は厚さ30μmでフッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。このような定着ベルト310は、定着パッド320、加熱ローラ340、ステアリングローラ350によって張架される。
【0025】
ニップ部形成部材としての定着パッド320は、定着ベルト310の内側に、定着ベルト310を挟んで加圧ローラ330と対向するように配置されると共に、定着ベルト310と加圧ローラ330との間で記録材を挟持搬送するニップ部Nを形成する。本実施形態では、定着パッド320は、定着ベルト310の幅方向(定着ベルト310の回転方向と交差する長手方向、加熱ローラ340の回転軸線方向)に沿って長い、略板状の部材である。定着パッド320が定着ベルト310を挟んで加圧ローラ330に押圧されることで、ニップ部Nが形成される。定着パッド320の材質は、LCP(液晶ポリマー)樹脂を用いている。
【0026】
定着パッド320は、ニップ部Nを形成する部分の少なくとも一部が平面状に形成されている。即ち、定着ベルト310の内周面と後述する潤滑シート370を介して接触する部分がほぼ平面形状に形成され、ニップ部の形状を略フラット状としている。このように構成することで、特に、記録材として封筒にトナー像を定着する場合に、封筒に皺や画像ずれが発生することを抑制できる。
【0027】
定着パッド320は、定着ベルト310の内側に配置された支持部材としてのステイ360により支持されている。即ち、ステイ360は、定着パッド320の加圧ローラ330と反対側に配置され、定着パッド320を支持する。このようなステイ360は、定着ベルト310の長手方向に沿って長い剛性を有する補強部材であり、定着パッド320に当接して、定着パッド320をバックアップする。即ち、ステイ360は、定着パッド320が加圧ローラ330から押圧された際に、定着パッド320に強度を持たせてニップ部Nにおける加圧力を確保するものである。
【0028】
ステイ360は、ステンレス鋼などの金属製であり、定着ベルト310の回転方向と交差するステイ360の長手方向に直交する断面(横断面)が略矩形状である。例えば、ステイ360は、肉厚3mmのSUS304(ステンレス鋼)の引き抜き材を用い、横断面を略ロの字の中空に成形することで強度を確保している。なお、ステイ360は、複数の板金を組み合わせ、溶接などにより互いに固定することで、断面略矩形状に形成しても良い。また、ステイ360の材質は強度が担保できればステンレスに限らない。
【0029】
定着パッド320と定着ベルト310の間には、潤滑シート370を介在させている。本実施形態では、潤滑シート370として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしたPI(ポリイミド)シートを用いていて、厚みを100μmとしている。PIシートには、1mm間隔で100μmの突起形状を形成していて、定着ベルト310との接触面積を減らすことにより摺動抵抗を低減させている。
【0030】
また、定着ベルト310の内周面には潤滑剤を塗布しており、定着ベルト310は、潤滑シート370に覆われた定着パッド320に対して滑らかに摺動するようになっている。潤滑材としてはシリコーンオイルを用いている。
【0031】
図2に示すように、加熱ローラ340は、定着ベルト310の内側に配置され、定着パッド320及びステアリングローラ350と共に定着ベルト310を張架する。上述のように、定着ベルト310の内周面には潤滑剤が塗布されているため、加熱ローラ340は、この潤滑剤を介して定着ベルト310を張架する。また、加熱ローラ340は、定着ベルト310の回転方向に関して、定着パッド320の下流側、且つ、ステアリングローラ350の上流側に配置されている。これにより、加熱ローラ340の駆動力により、ニップ部Nを抜けた定着ベルト310を途中に張架ローラを介さずに直接、引っ張る構成としている。
【0032】
加熱ローラ340は、アルミニウムやステンレスなどの金属により円筒状に形成され、その内部に定着ベルト310を加熱するためのヒータとしてのハロゲンヒータ341、342、343が配設されている。そして、加熱ローラ340は、ハロゲンヒータ341、342、343により所定の温度まで加熱される。
【0033】
本実施形態では、加熱ローラ340は、厚み2mmのステンレス製のパイプにより形成されている。また、ハロゲンヒータは、1本でも良いが、加熱ローラ340の長手方向(回転軸線方向)の温度分布制御を鑑みると複数本あることが望ましい。本実施形態では3本のハロゲンヒータ341、342、343を配置している。なお、ヒータは、ハロゲンヒータに限らず、例えばカーボンヒータなど加熱ローラ340を加熱可能な他のヒータであっても良い。定着ベルト310は、ハロゲンヒータ341、342、343により加熱された加熱ローラ340よって加熱され、温度検知手段としてのサーミスタ390による温度検知に基づき、記録材の種類に応じた所定の目標温度に制御される。サーミスタ390は、加熱ローラ340に接触配置される。
【0034】
また、加熱ローラ340は、定着装置8の定着フレーム380によって回転自在に支持されており、回転軸線方向の一端部にギア345(
図3(a)など参照)が固定され、ギア345を介して、駆動源としてのモータM1に接続されて回転駆動される。そして、定着ベルト310は、加熱ローラ340の回転により駆動力が付与される。ここで加熱ローラ340から定着ベルト310に与えられる力を補助駆動力とする。なお、加熱ローラ340は、後述する加圧ローラ駆動源としてのモータM0に接続されて回転駆動される構成であっても良い。また、モータからの駆動伝達機構は、ギア以外の、例えばプーリとベルト、外部からモータに駆動されるローラを押し当てる機構など他の機構であっても良い。何れにしても本実施形態では、加熱ローラ340の周速を、加圧ローラ330の周速よりも速くしている。
【0035】
ステアリングローラ350は、定着ベルト310の内側に配置され、定着パッド320及び加熱ローラ340と共に定着ベルト310を張架して、定着ベルト310に従動回転する。ステアリングローラ350は、加熱ローラ340の回転軸線方向(長手方向)に対して傾動することで、この回転軸線方向に関する定着ベルト310の位置(寄り位置)を制御する。即ち、ステアリングローラ350は、ステアリングローラ350の回転軸線方向(長手方向)中央に回動中心を有し、この回動中心を中心として揺動することで、加熱ローラ340の長手方向に対して傾動する。これにより、定着ベルト310の長手方向の一方側と他方側とでテンション差を発生させ、定着ベルト310を長手方向に移動させる。
【0036】
定着ベルト310は、張架するローラの外径精度や各ローラ間のアライメント精度などによって、回転中に何れかの端部に寄ってしまう。このため、ステアリングローラ350によりこのような寄りを制御している。なお、ステアリングローラ350は、モータなどの駆動源により揺動させても良いし、自動調心により揺動する構成であっても良い。また、回動中心は、本実施形態のように長手方向の中央でも良いし、長手方向の端部であっても良い。
【0037】
また、本実施形態の場合、ステアリングローラ350は、加熱ユニット300のフレームによって支持されたばねによって付勢されており、定着ベルト310に所定の張力を与えるテンションローラでもある。なお、ステアリングローラ350の位置に配置される張架ローラは、このようなステアリング機能を有さないローラであっても良い。例えば、定着ベルト310にテンションを付与するテンションローラであっても良いし、単に、定着ベルト310を張架する張架ローラであっても良い。
【0038】
駆動ローラとしての加圧ローラ330は、定着ベルト310の外周面に当接して回転し、定着ベルト310に駆動力を付与する。本実施形態では、加圧ローラ330は、軸の外周に弾性層を、その外周に離型性層を形成したローラである。また、軸はステンレスを、弾性層は厚さ5mmで導電シリコーンゴムを、離型性層は厚さ50μmでフッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)をそれぞれ用いている。加圧ローラ330は、定着装置8の定着フレーム380によって回転自在に支持されており、片端部にはギアが固定され、ギアを介して加圧ローラ駆動源としてのモータM0に接続されて、回転駆動される。
【0039】
定着フレーム380は、加熱ユニット位置決め部381、加圧フレーム383、加圧ばね384が設けられている。加熱ユニット300は、加熱ユニット位置決め部381にステイ360が挿入され、不図示の固定手段によりステイ360が加熱ユニット位置決め部381に固定されることで、定着フレーム380に位置決めされる。ここで、加熱ユニット位置決め部381は、加圧ローラ330に対向する加圧方向規制面381aと、加熱ユニット300の挿入方向の突き当て面である搬送方向規制面381bとを有する。ステイ360は、加圧方向規制面381aと搬送方向規制面381bに移動が規制された状態で固定される。この際、加圧ローラ330は、定着ベルト310から離間している。
【0040】
加圧ローラ330は、加熱ユニット300が加熱ユニット位置決め部381に位置決めされた後、不図示の駆動源とカムにより加圧フレーム383が移動することで定着ベルト310に当接する。そして、加圧ローラ330が定着ベルト310を介して定着パッド320に対して加圧される。即ち、本実施形態では、加圧ローラ330は、定着ベルト310に向けて加圧される加圧部材でもある。本実施形態では、画像形成時の加圧力は980Nである。
【0041】
また、本実施形態の場合、ニップ部Nの記録材搬送方向下流側に、記録材を定着ベルト310から分離する分離部材(本実施形態では分離板)401を有する分離装置400を設けている。分離部材401は、定着ベルト310の外周面と隙間をあけて配置され、ニップ部Nを通過した記録材を定着ベルトから分離する。具体的には、分離部材401は、定着ベルト310の外周面のうち、定着パッド320と加熱ローラ340との間で張架された部分に近接して配置されている。また、分離部材401は、ブレード状に形成され、先端を定着ベルト310の外周面に対向させている。また、分離部材401には摺動による記録材のトナー付着や画像傷等を防ぐために金属板にフッ素系テープが貼付されている。本実施形態では、このように分離部材401を定着ベルト310の外周面と隙間をあけて配置すべく、ステイ360に対して記録材の搬送方向(ステイ360の短手方向、X方向)の位置決めをするようにしている。
【0042】
上述のように構成される定着装置8は、定着ベルト310と加圧ローラ330との間に形成されるニップ部Nにおいて、トナー像を担持した記録材Pを挟持し、搬送しながらトナー像を加熱する。これにより、トナー像が溶融され、記録材に定着される。
【0043】
[加熱ローラ]
次に、本実施形態の加熱ローラ340について更に
図3(a)を用いて説明する。上述したように、接触回転部としての加熱ローラ340は、定着ベルト310を張架するローラである。即ち、加熱ローラ340は、定着ベルト310の回転方向に交差する幅方向(長手方向、主走査方向)に沿って定着ベルト310の内周面に接触する。本実施形態では、幅方向は加熱ローラ340の回転軸線方向と略平行である。このような加熱ローラ340は、ベアリング344によって、両端部が定着フレーム380(
図2)に回転自在に支持されている。また、加熱ローラ340の回転軸線方向一端部(幅方向一端部)には、回転伝達部としてのギア345が設けられている。ギア345は、駆動源としてのモータM1から駆動が伝達されて加熱ローラ340と共に回転する。言い換えれば、加熱ローラ340は、ギア345を介してモータM1と接続している。
【0044】
本実施形態では、加熱ローラ340と、両端部のベアリング344と、一端部のギア345とで、回転体としての加熱ローラユニット500を構成する。このような加熱ローラユニット500は、幅方向中央Aを起点として幅方向一端側(即ち、ギア345側)の方が他端側よりも熱容量が大きい。即ち、加熱ローラ340と両端部のベアリング344とで構成される部分は、幅方向中央Aを起点としたほぼ対称の形状を有するため、熱容量もほぼ同じである。但し、ギア345は、幅方向一端部のみにあり他端部にはないため、ギア345を含む加熱ローラユニット500として見た場合、幅方向中央Aを起点としてギア345が存在する幅方向一端側(駆動側)の方が、他端側よりも熱容量が大きくなる。
【0045】
ここで、加熱ローラ340は、定着ベルト310の内周面と接触しており、定着ベルト310は、ニップ部Nを通過する記録材と接触する。したがって、定着装置8に使用可能な最大幅の記録材に対応する最大幅領域は加熱ローラ340の範囲内に存在する。本実施形態では、記録材の幅方向中央と定着ベルト310の幅方向中央とを略一致させて記録材をニップ部Nに通過させる中央基準で定着を行っている。このため、最大幅領域の幅方向中央は、加熱ローラ340の幅方向中央Aと略一致する。したがって、加熱ローラユニット500は、最大幅領域の幅方向中央を起点とした場合でも、幅方向一端側の方が他端側よりも熱容量が大きい。即ち、加熱ローラユニット500の幅方向中央Aを中心とした熱容量分布は非対称であり、
図3(a)に示すように、幅方向中央Aを中心とした加熱ローラユニット500の駆動側総熱容量は、非駆動側総熱容量よりも大きい。
【0046】
[加圧ローラ]
加圧ローラ330は、定着ベルト310の回転方向に交差する幅方向(長手方向、主走査方向)に沿って定着ベルト310の外周面に接触する。このような加圧ローラ330についても、加熱ローラ340と同様に、幅方向一端部からモータM0の駆動が伝達されるようになっている。即ち、
図3(b)に示すように、ベアリング511によって、両端部が加圧フレーム383(
図2)に回転自在に支持されている。また、加圧ローラ330の回転軸線方向一端部(幅方向一端部)には、ギア512が設けられている。ギア512は、駆動源としてのモータM0から駆動が伝達されて加圧ローラ330と共に回転する。
【0047】
本実施形態では、加圧ローラ330と、両端部のベアリング511、一端部のギア512とで、駆動回転体としての加圧ローラユニット510を構成する。このような加圧ローラユニット510は、幅方向中央B起点として幅方向一端側(即ち、ギア512側)の方が他端側よりも熱容量が大きい。即ち、加圧ローラ330と両端部のベアリング511とで構成される部分は、幅方向中央Bを起点としたほぼ対称の形状を有するため、熱容量もほぼ同じである。但し、ギア512は、幅方向一端部のみにあり他端部にはないため、ギア512を含む加圧ローラユニット510として見た場合、幅方向中央Bを起点としてギア512が存在する幅方向一端側(駆動側)の方が、他端側よりも熱容量が大きくなる。即ち、加圧ローラユニット510の幅方向中央Bを中心とした熱容量分布は非対称であり、
図3(b)に示すように、幅方向中央Bを中心とした加圧ローラユニット510の駆動側総熱容量は、非駆動側総熱容量よりも大きい。
【0048】
[ハロゲンヒータ]
続いて、ハロゲンヒータ341、342、343について、
図3ないし
図6を用いて説明する。上述のように、加熱ローラ340の内側には、複数のハロゲンヒータ341、342、343が、それぞれ加熱ローラ340の回転軸線方向(幅方向)に沿って配置されている。
図4に示すように、各ハロゲンヒータ341、342、343は、加熱ローラ340の幅方向中央部外周面上に当接されたサーミスタ390で検知された温度に基づき、制御部30による制御の下、通電することにより発熱する。
【0049】
ハロゲンヒータ341、342、343は、それぞれ筒部内にタングステン製のフィラメントを備えて構成され、筒部内にはそれぞれ所定の濃度のハロゲンガスが封入されている。本実施形態では、ハロゲンヒータ341、342、343の各配光分布(出力分布)は同じであり、同時点灯(オン)、同時消灯(オフ)を行う温度制御を採用しており、同時点灯時のハロゲンヒータ配光分布は、
図5の下部のグラフのように設定されている。
【0050】
即ち、ハロゲンヒータ341、342、343の幅方向に関する出力分布は、それぞれ加熱ローラ340の幅方向中央Aを起点として非対称であり、幅方向中央Aよりも幅方向一端側の第1領域の出力が、幅方向他端側の第2領域の出力よりも大きい。即ち、3本のハロゲンヒータ341、342、343を全てオンにした場合の幅方向に関する出力分布も、
図5の下部のグラフとなる。本実施形態では、ハロゲンヒータ341、342、343は、それぞれ定格1000Wに設定した。
【0051】
ここで、
図5のヒータ配光(ii)が本実施形態で設定したハロゲンヒータ341、342、343の配光分布であり、ヒータ配光(i)は比較例として、幅方向中央Aを中心に対称な配光分布の場合を示している。ヒータ配光量(出力)は幅方向中央Aの位置での配光量を100%としており、本実施形態では、ヒータ配光(ii)は幅方向中央Aの位置からギア345側に向けて線形増加させ、終端の配向量を115%となるよう設定した。一方、比較例のヒータ配光(i)は全域100%の配光分布とした。
【0052】
即ち、本実施形態の場合、ハロゲンヒータ341、342、343は、それぞれ第1領域の出力分布の最大個所が、第2領域の出力分布の最大個所よりも大きい。これは、ハロゲンヒータ341、342、343を全てオンにした場合も同様である。また、ハロゲンヒータ341、342、343の第1領域において、幅方向の第1位置の出力は、第1位置よりも幅方向中央側の第2位置の出力よりも大きい。これについても、ハロゲンヒータ341、342、343を全てオンにした場合も同様である。
【0053】
[加熱ローラの幅方向温度分布]
図6は、加熱ユニット300(
図2)を駆動した場合の、加熱ローラ340の幅方向のヒータ配光分布と温度分布を示した図である。加熱ユニット300の駆動時には、ハロゲンヒータ341、342、343に通電し発熱させ、モータM1からギア345に駆動力を付与し回転動作させる。そして、サーミスタ390が170℃になるよう温度制御している。温度制御は、サーミスタ390が170℃以上を検知したら全てのハロゲンヒータ341、342、343への通電を停止し、168℃以下を検知したら通電を開始するいわゆるOFF/ON制御とした。
【0054】
本制御実行の結果、比較例であるヒータ配光(i)での設定では、加熱ローラ340の幅方向温度分布は、幅方向中央Aの位置から一端側(ギア345側)に向けて、約10℃程度減少方向への傾きが生じた。一方、本実施形態のヒータ配光(ii)での設定では、幅方向における画像領域内において、170℃で一様な温度分布を形成することが可能となった。なお、画像領域とは、装置に使用可能な最大幅の記録材に対して最大の画像を形成した場合に、その画像と対応する領域内であり、上述の最大幅領域と同じ、或いは、若干小さい領域である。
【0055】
比較例の場合、画像領域内において幅方向一端側で加熱ローラ340の温度が低下しているため、この温度低下した部分で定着不良が発生する虞がある。これに対して本実施形態の場合、画像領域内で温度分布を一様にできるため、このような定着不良の発生を抑制できる。即ち、本実施形態の場合、回転体としての加熱ローラユニット500の熱容量が幅方向に関して非対称であっても定着不良の発生を抑制できる。言い換えれば、ハロゲンヒータ341、342、343の幅方向の配光分布を、加熱ローラ340の熱容量の分布を考慮して設定する事で、加熱ローラ340の幅方向における表面温度分布を一様にすることが可能である。この結果、定着不良の発生を抑制できる。
【0056】
また、本実施形態の場合、加圧ローラ330を含む加圧ローラユニット510の幅方向の熱容量についても、加熱ローラユニット500と同様に、幅方向一端側の方が大きい。このため、比較例のような画像領域内の幅方向一端側での温度低下がより生じ易くなる。これに対して本実施形態では、加圧ローラユニット510の熱容量の分布も考慮して、ハロゲンヒータ341、342、343の幅方向の配光分布を設定することで、幅方向一端側での温度低下を抑制し、定着不良の発生を抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、定着部材をベルト構成とした場合について説明したが、加圧部材がベルトであってもよいし、両方がベルトであってもよい。また、本実施形態では、ハロゲンヒータ341、342、343の3本としたが、2本以上の複数本であれば限定されるものではない。また、各ヒータの配光分布は同じとしたが、全点灯した際、
図5のような配光分布になっていれば、それぞれ異なる配光分布、或いは、何れか1つを異なる配光分布としても良い。
【0058】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、
図2を参照しつつ、
図7ないし
図10を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、3本のハロゲンヒータ341~343の配光分布を同じとし、1つのサーミスタ390により温度制御を行った例について説明した。これに対して本実施形態の場合、複数のヒータのうちの少なくとも1つにヒータの配光分布を異ならせ、更に、2つのサーミスタを用いて温度制御を行う。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成には同じ符号を付し、説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0059】
ニップ部Nに連続して記録材を通過させる画像形成ジョブを長時間が続ける場合や、画像形成ジョブの間隔が比較的短い間欠ジョブを多く実行すると、定着装置8は暖気していく。なお、画像形成ジョブとは、記録材に画像形成するプリント信号(画像形成信号)に基づいて、画像形成を開始してから画像形成が完了するまでの期間である。
【0060】
定着装置8がある程度暖気されると、例えば加熱ローラ340を所定の温度で温調するのに必要な加熱量は、暖気される以前より小さくなる。加熱ローラ340の幅方向の温度分布を一様にするために、幅方向中央Aの位置を境界として、ギア345側への必要加熱量と反対側への必要加熱量の差分は、暖気前より暖気後の方が小さくなる。本実施形態では、定着装置8が暖気される前、された後どちらでも加熱ローラ340の幅方向の温度分布を一様にできる構成を説明する。
【0061】
本実施形態の場合、
図7及び
図8に示すように、第1の実施形態の構成に対して、加熱ローラ340の幅方向に関して一端側の画像領域の端部に当接するサーミスタ391を増設した。また、ハロゲンヒータ341a、342a、343aのそれぞれの配光分布を、
図8の下部のグラフのように設定した。各ハロゲンヒータ341a、342a、343aの定格電力は1000Wである。
【0062】
本実施形態の場合、複数のハロゲンヒータ341a、342a、343aのうちの少なくとも1つのヒータであるハロゲンヒータ(第1ヒータ)343aの幅方向に関する出力分布は、幅方向中央Aを起点として非対称である。また、ハロゲンヒータ343aは、幅方向中央Aよりも幅方向一端側の第1領域の出力が、幅方向他端側の第2領域の出力よりも大きい。一方、複数のハロゲンヒータ341a、342a、343aのうちの他のヒータであるハロゲンヒータ(第2ヒータ)341a、342aの幅方向に関する出力分布は、第1ヒータであるハロゲンヒータ343aの出力分布と異なる。
【0063】
具体的には、
図8の下部のグラフに示すように、第2ヒータとしてのハロゲンヒータ341a、342aの幅方向に関する出力分布(配光分布)は、幅方向中央Aを中心に対称であり、全域で同じ出力としている。一方、第1ヒータとしてのハロゲンヒータ343aの幅方向に関する出力分布(配光分布)は、幅方向中央Aの位置からギア345側に向けて線形増加させている。即ち、ハロゲンヒータ343aは、第1領域の出力分布の最大個所が、第2領域の出力分布の最大個所よりも大きい。また、ハロゲンヒータ343aの第1領域において、幅方向の第1位置の出力は、第1位置よりも幅方向中央側の第2位置の出力よりも大きい。
【0064】
また、本実施形態の場合、第1温度検知手段としてのサーミスタ390は、接触回転部としての加熱ローラ340の幅方向中央部の温度を検知する。具体的には、サーミスタ390は、加熱ローラ340の外周面の幅方向中央Aの位置に設けられている。また、第2温度検知手段としてのサーミスタ391は、加熱ローラ340の幅方向中央よりも一端側の温度を検知する。具体的には、サーミスタ391は、加熱ローラ340の外周面の幅方向一端側の画像領域の端部の位置に設けられている。
【0065】
図7に示すように、制御部30は、サーミスタ390、391の温度検知結果に基づいて、ハロゲンヒータ341a、342a、343aを制御する。本実施形態では、ハロゲンヒータ341a、342aは、サーミスタ390により検知した温度が第1閾値(例えば170℃)に達したら出力がオフされる。一方、ハロゲンヒータ343aは、サーミスタ391により検知した温度が第2閾値(例えば170℃)に達したら出力がオフされる。第1閾値と第2閾値とは同じ値でも良いし、異なっていても良い。
【0066】
[温度制御]
次に、本実施形態のハロゲンヒータ341a、342a、343aの温度制御について具体的に説明する。まず、制御部30は、サーミスタ390の検知温度を基にハロゲンヒータ341a、342aに通電し、目標温度(第1閾値)に到達するまで発熱させる。また、制御部30は、サーミスタ391の検知温度を基にハロゲンヒータ343aに通電し、目標温度(第2閾値)に到達するまで発熱させる。制御方法は、第1の実施形態と同様で、目標温度に到達するまで通電ONを継続し、到達したら通電をOFFにする。なお、温度が低下し、目標温度から2℃を下回ったら再度通電をONにし、目標温度近傍の温度で安定させる。
【0067】
定着装置8の立上げ時から画像形成ジョブの初期では、定着装置8が暖気されていないため、ハロゲンヒータ341a、342a、343aは、ほぼ連動して通電ON/OFF制御が実施される。但し、定着装置8が徐々に暖気されるにつれて、ハロゲンヒータ343aの通電OFF時間が増加していく。この制御によって、定着装置8が駆動開始時、及び、駆動開始後、定着装置8が暖気されているような温度状態でも、幅方向温度分布を一様に制御する事が可能となる。
【0068】
このような本実施形態の具体例について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態の連続して記録材をニップ部に通過させる連続画像形成ジョブ時の温度制御のフローチャートを示す。連続画像形成ジョブの条件は、記録材として使用紙種:OKトップコート(王子製紙:坪量157g/m
2)、紙サイズ:A4を用い、目標温度はサーミスタ390、391共に170℃、1分間に80枚通紙されるとした。
【0069】
制御部30は、連続画像形成ジョブを受け付けると(S1)、ジョブの種類に応じて、加熱ローラ340の目標温度を取得する(S2)。目標温度は、サーミスタ390、391の検知温度に対する目標温度と定義される。次いで、制御部30は、定着装置8の回転駆動動作の開始と、ハロゲンヒータ341a、342a、343aに通電を開始する(S3)。
【0070】
制御部30は、サーミスタ390、391の温度検知結果を取得し、検知温度と目標温度を比較する(S4、S5)。そして、サーミスタ390の検知温度が目標温度を上回っていたら(S4のY)、制御部30は、通紙開始許可を発令し、ニップ部Nへの通紙を開始する(S6)。一方、S5において、サーミスタ391の検知温度が目標温度を上回っていたら(S5のY)、ハロゲンヒータ343aの通電をOFFにする(S7)。
【0071】
次いで、制御部30は、サーミスタ390、391の温度検知結果を取得し、検知温度と目標温度を比較する(S8、S9)。そして、検知温度が目標温度を上回っていたら(S8のY、S9のY)、ハロゲンヒータ341a、342aへの通電をOFF(S10)、又は、ハロゲンヒータ343aへの通電をOFF(S11)にする。制御部30は、更に、サーミスタ390、391の温度検知結果を取得し、検知温度と目標温度を比較する(S12、S13)。検知温度が目標温度から2℃を下回ったら(S12のY、S13のY)、画像形成ジョブが終了したか確認する(S14)。ジョブが終了したら制御を終了し、終了していなかったらS6へ移行する。
【0072】
図10に、上述した連続画像形成ジョブの時間推移とサーミスタ390、391の温度推移、各ヒータのOFF/ONタイミングをまとめた。まず、サーミスタ390の検知温度が目標温度である170℃に到達するまでハロゲンヒータ341a、342a、343aは全て点灯している。目標温度に到達したタイミングで、記録材の通紙が開始され、記録材がニップ部Nへ供給される。それと同時に、定着ベルト310が記録材に熱を奪われる事で温度低下し、加熱ローラ340も同様に熱を奪われ温度の低下が始まる。上述した温度制御が開始され、サーミスタ390、サーミスタ391のそれぞれの温度に応じて、ハロゲンヒータ341a、342a、343aもそれぞれOFF/ON動作を実行する。
【0073】
上記温度制御によって、サーミスタ390、391の温度は目標温度近傍で制御されている事が分かる。よって、加熱ローラ340の幅方向温度分布は一様な状態を継続できている事が示された。
【0074】
図10の下側の各ヒータのOFF/ONのタイミングチャートで示されている通り、立上げ時から画像形成ジョブ前半までは、ハロゲンヒータ341a、342a、343aは同じ動作をしている。一方、連続画像形成ジョブ後半では、ハロゲンヒータ343aのON時間が少なくなっている事が分かる。このことから、ハロゲンヒータ343aの非対称配光ヒータを適宜制御する事で、幅方向に熱容量分布が非対称な定着装置であっても、加熱ローラ340の幅方向温度分布を一様に制御する事が可能となる。また、定着動作の開始時から終了まで幅方向の温度分布を一様に維持しやすい。それによって、定着装置に通紙される記録材上トナー画像を均一に加熱する事が可能となり、幅方向端部、定着不良画像の発生を防止することが可能になる。
【0075】
なお、本実施形態の各ヒータの配光分布は、
図8のように幅方向に非対称なヒータが含まれていて、且つ、それ以外のヒータは主走査方向に対称であり、全点灯した際に幅方向に非対称な配光分布になっていれば良い。このため、これを満たせば、本実施例と異なる配光分布の組み合わせをしていても良い。
【0076】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、ヒータが配置される回転体が、加熱ローラ340及びギア345を有する加熱ローラユニットである場合について説明した。但し、加圧ローラ330内にヒータを有する構成の場合も、ヒータの出力特性を上述のようにすることが好ましい。この場合、加圧ローラ330が接触回転部、ギア512が回転伝達部にそれぞれ相当する。
【0077】
また、本発明は、上述のようなベルトを用いた定着装置以外に、定着ローラと加圧ローラとで記録材を通過させるニップ部を形成する定着装置にも適用可能である。この場合、定着ローラの一端部にギアなどの回転伝達部がある場合、定着ローラ及び回転伝達部により回転体を構成するため、上述の加熱ローラユニット500と同様に、熱容量が一端側で大きくなる。このため、定着ローラ内の配置するヒータの構成を上述の各実施形態のようにする。即ち、本発明は、ヒータにより加熱されるローラなどの回転部材と、この回転部材に回転を伝達するための回転伝達部とを有し、回転伝達部が回転部材の一端部に設けられることで、幅方向一端側で他端側よりも熱容量が大きくなるような構成に適用できる。なお、熱容量が幅方向一端側の方が大きくなる構成であれば、回転部材の一端部に回転伝達部が設けられた構成以外の構成であっても、本発明を適用可能である。
【0078】
また、上述の各実施形態では、加熱ローラ340内に複数のヒータを設けた構成について説明したが、ヒータは1つであっても良い。この場合、この1つのヒータの配光分布を第1の実施形態で説明したような分布とする。更に、1ないし複数のヒータは、加熱ローラなどの回転部材の外部にあっても良い。例えば、定着ベルトや加熱ローラを外部から加熱する外部加熱構成において、外部加熱のヒータの出力分布を第1又は第2の実施形態のようにする。
【0079】
また、上述の各実施形態では、加圧ローラ用のモータM0と補助駆動ローラ用のモータM1をそれぞれ独立して設けた。但し、加圧ローラ用のモータと補助駆動ローラ用のモータを共通としても良い。即ち、加圧ローラと補助駆動ローラとを共通の駆動源により駆動するようにしても良い。この場合、1個のモータと何れかのローラとの間に変速機構を設け、加熱ローラ340の周速を加圧ローラ330の周速よりも速くする。
【0080】
また、上述の各実施形態では、定着ベルト310の回転方向に関して、加熱ローラ340を定着パッド320の下流でステアリングローラ350の上流に配置した。但し、加熱ローラ340の位置とステアリングローラ350の位置とを入れ替えても良い。即ち、定着ベルト310の回転方向に関して、加熱ローラ340をステアリングローラ350の下流で定着パッド320の上流に配置しても良い。
【0081】
また、上述の各実施形態では、補助駆動ローラに定着ベルトを加熱するためのヒータとしてのハロゲンヒータを設けた構成について説明した。但し、ヒータは、補助駆動ローラに設けずに、ステアリングローラなどの他の張架部材に設けても良い。また、パッド部材に設けても良い。例えば、パッド部材の定着ベルト側にセラミックヒータなどの板状の発熱部材を設けても良い。いずれにしても、熱容量が幅方向中央を起点として非対称となる部材をヒータにより加熱する場合に、ヒータの出力分布もこれに合わせて非対称とする。
【0082】
また、上述の各実施形態では、ニップ部形成部材を定着パッド320としたが、ニップ部形成部材は、ローラなどの回転体であっても良い。また、上述の各実施形態では、駆動回転体を加圧ローラ330としたが、駆動回転体は回転駆動されるベルトであっても良い。
【符号の説明】
【0083】
8・・・定着装置/310・・・定着ベルト(ベルト)/330・・・加圧ローラ(駆動回転体)/340・・・加熱ローラ(接触回転部)/341、342、343・・・ハロゲンヒータ(ヒータ)/341a、342a・・・ハロゲンヒータ(ヒータ、第2ヒータ)/343a・・・ハロゲンヒータ(ヒータ、第1ヒータ)/345・・・ギア(回転伝達部)/350・・・ステアリングローラ(張架ローラ)/500・・・加熱ローラユニット(回転体)/510・・・加圧ローラユニット