(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】記録材判別装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/48 20060101AFI20240729BHJP
B65H 7/02 20060101ALI20240729BHJP
G01N 29/11 20060101ALI20240729BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240729BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20240729BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N29/48
B65H7/02
G01N29/11
G03G21/00 384
G03G15/16
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2020109835
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】門出 昌文
(72)【発明者】
【氏名】熊田 博光
(72)【発明者】
【氏名】藤井 由香
(72)【発明者】
【氏名】石本 瑞樹
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/074061(WO,A1)
【文献】特開2015-210177(JP,A)
【文献】特開2010-018432(JP,A)
【文献】特開2019-148673(JP,A)
【文献】特開2009-173359(JP,A)
【文献】特開2018-135201(JP,A)
【文献】特開2019-119578(JP,A)
【文献】特開2005-024428(JP,A)
【文献】特開2005-162424(JP,A)
【文献】特開2008-213957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0277860(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0228535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
B65H 1/00 - B65H 99/00
G03G 15/00 - G03G 15/36
G03G 21/00 - G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発信する発信手段と、
前記発信手段から超音波を発信させるための駆動信号を出力する駆動手段と、
超音波を受信する受信手段と、
記録材の種類を判別する制御手段と、を備え、
前記駆動手段は、第1のモードにおいては、駆動信号を発信する期間と駆動信号を発信しない期間を交互に繰り返す間欠駆動を行い、第2のモードにおいては、駆動信号を連続して発信する連続駆動を行い、
前記制御手段は、
前記第1のモードにおいて記録材を介した超音波を前記受信手段で受信した第1の値と、
前記第2のモードにおいて記録材を介した超音波を前記受信手段で受信した第2の値と、に基づき、記録材の種類を判別することを特徴とする記録材判別装置。
【請求項2】
前記第1のモードを実行した後、前記第2のモードを実行することを特徴とする請求項1に記載の記録材判別装置。
【請求項3】
前記第2のモードを実行した後、前記第1のモードを実行することを特徴とする請求項1に記載の記録材判別装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記第1のモードにおいては駆動信号をバースト駆動させ、前記第2のモードにおいては駆動信号を連続駆動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録材判別装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の値に基づき記録材の坪量の平均値に関する値を求め、前記第2の値に基づき記録材の坪量の変動率に関する値を求め、前記平均値に関する値と、前記変動率に関する値とに基づき、記録材の種類を判別することを特徴する請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の記録材判別装置。
【請求項6】
記録材に画像を形成する画像形成手段と、
超音波を発信する発信手段と、
前記発信手段から超音波を発信させるための駆動信号を出力する駆動手段と、
超音波を受信する受信手段と、
前記画像形成手段における画像形成条件を制御する制御手段と、を備え、
前記駆動手段は、第1のモードにおいては、駆動信号を発信する期間と駆動信号を発信しない期間を交互に繰り返す間欠駆動を行い、第2のモードにおいては、駆動信号を連続して発信する連続駆動を行い、
前記制御手段は、
前記第1のモードにおいて記録材を介した超音波を前記受信手段で受信した第1の値と、
前記第2のモードにおいて記録材を介した超音波を前記受信手段で受信した第2の値と、に基づき、前記画像形成条件を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成手段は、記録材に画像を転写する転写手段と、画像を記録材に定着する定着手段とを含み、
前記制御手段は、前記画像形成条件として、前記転写手段に印加する転写バイアス、又は前記定着手段の定着温度を制御することを特徴する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1のモードを実行した後、前記第2のモードを実行することを特徴とする請求項
6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第2のモードを実行した後、前記第1のモードを実行することを特徴とする請求項
6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記駆動手段は、前記第1のモードにおいては駆動信号をバースト駆動させ、前記第2のモードにおいては駆動信号を連続駆動させることを特徴とする請求項
6乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第1の値に基づき記録材の坪量の平均値に関する値を求め、前記第2の値に基づき記録材の坪量の変動率に関する値を求め、前記平均値に関する値と、前記変動率に関する値とに基づき、記録材の種類を判別することを特徴する請求項
6乃至10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いる記録材判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像信号に基づいて画像を形成する画像形成装置には、電子写真方式、インクジェット方式など様々な方式の装置がある。このような画像形成装置において、画像が形成される記録材には様々な種類があり、サイズ、坪量、表面性など様々な特徴を備えた記録材が存在する。これらの記録材に適した画像形成を行うため、画像形成装置の内部に記録材の種類を判別するためのセンサを備えているものがある。例えば、特許文献1においては、記録材に超音波を発信し、記録材を透過した超音波を受信することで、記録材の坪量を検知して記録材の種類を判別する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録材の坪量は記録材の全域において均一ではなくムラがある。このムラの影響により記録材を検知する位置によって記録材の検知精度が低下してしまう虞があった。
【0005】
本出願にかかる発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、記録材の検知精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、超音波を発信する発信手段と、前記発信手段から超音波を
発信させるための駆動信号を出力する駆動手段と、超音波を受信する受信手段と、記録材
の種類を判別する制御手段と、を備え、を備え、前記駆動手段は、第1のモードにおいては、駆動信号を発信する期間と駆動信号を発信しない期間を交互に繰り返す間欠駆動を行い、第2のモードにおいては、駆動信号を連続して発信する連続駆動を行い、前記制御手段は、前記第1のモードにおいて記録材を介した超音波を前記受信手段で受信した第1の値と、前記第2のモードにおいて記録材を介した超音波を前記受信手段で受信した第2の値と、に基づき、記録材の種類を判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、記録材の検知精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】坪量の平均値を検知する場合の超音波の駆動信号と受信信号を示した図
【
図4】記録材Pの坪量の実測値と、受信レベルの平均値の関係を示したグラフ
【
図5】紙種F、紙種G、紙種Hの坪量のムラを示すグラフ
【
図6】駆動信号をバースト波にした場合と連続波にした場合の受信信号のばらつきを各紙種で測定したグラフ
【
図7】記録材Pの坪量のムラを検知する場合の超音波の駆動信号と受信信号を示した図
【
図8】バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出し、連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出することを示したタイミングチャート
【
図9】バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出し、連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出することを示したフローチャート
【
図10】連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出し、バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出することを示したタイミングチャート
【
図11】連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出し、バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出することを示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施例1]
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲の発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組合せの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
(第1の実施形態)
[画像形成装置]
図1は、画像形成装置1の概略構成図である。画像形成装置1は、中間転写方式を採用した電子写真方式のフルカラープリンタである。画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する4つの画像形成ステーションを備えている。これらの4つの画像形成ステーションは一定の間隔をおいて一列に配置されている。なお、以下の説明では、参照符号の末尾の英文字Y、M、C及びKは、それぞれ当該部材がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像の形成に関する部材であることを示している。以下の説明において色を区別する必要が無い場合には、末尾の英文字Y、M、C及びKを除いた参照符号を使用することもある。
【0011】
画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の現像剤であるトナーを重ね合わせることでカラー画像を形成するように構成されている。給紙カセット2は、例えば紙である記録材Pを積載する。給紙カセット2に積載された記録材Pは、給紙ローラ4によって給紙される。給紙ローラ4によって給紙された記録材Pは、搬送ローラ対5やレジストローラ対6により搬送される。レジストローラ対6の近傍には、記録材Pの有無を検知するためのレジセンサ34が配置されている。
【0012】
感光体としての感光ドラム11は、アルミニウムのドラム状の基体上に感光層を有しており、駆動装置(不図示)によって図中矢印の方向に所定のプロセススピードで回転駆動される。なお、ここでいうプロセススピードは、感光ドラム11の周速度(表面移動速度)に相当する。帯電ローラ12は、感光ドラム11を一様に所定の電位に帯電する。レーザスキャナ13は、画像情報に対応したレーザ光を照射し、感光ドラム11の表面を露光する。これにより、感光ドラム11の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0013】
プロセスカートリッジ14は、現像ローラ15を備え、プロセスカートリッジ14に収容されたトナーを用いて現像ローラ15により感光ドラム11上に形成された静電潜像を現像する。一次転写ローラ16は、感光ドラム11上に形成した画像を中間転写ベルト17に一次転写する。中間転写ベルト17は、駆動ローラ18によって駆動される。
【0014】
二次転写ローラ19は、中間転写ベルト17上に一次転写された画像を記録材Pに二次転写する。定着器20は、加熱及び加圧することで二次転写された画像を記録材Pに定着する。以上説明した、画像形成に関する感光ドラム11から定着器20が画像形成手段50の一例の構成である。排紙ローラ21は、定着器20によって定着が行われた記録材Pを排紙トレイに排紙する。
【0015】
検知手段としての記録材判別装置30は、記録材Pの坪量を検知する。以下、記録材Pの坪量に基づき、記録材Pを判別する方法と画像形成条件(二次転写条件、定着条件)を制御する方法について説明する。一般的に記録材Pの坪量によって記録材Pの抵抗値が異なるため、坪量に応じてトナーを二次転写するための二次転写バイアスの印加などの二次転写条件を変更する必要がある。また、記録材Pの坪量によって記録材Pの熱容量が異なるため、坪量に応じてトナーを定着するための定着温度や定着時間、記録材Pの搬送速度などの定着条件を変更する必要がある。
【0016】
また記録材Pの坪量は、全面において一様ではなく、一般的に数百マイクロメートルから数ミリメートル周期のムラが混在し、記録材Pの種類(紙種)によってムラの特性が異なる。記録材Pの一枚における平均的な坪量が同じであっても、記録材Pの全面において坪量のムラがより大きい記録材Pの方が、熱容量がより大きい領域を有する。よって、坪量のムラが大きい記録材Pにトナーを定着するためには、坪量のムラが小さい記録材Pより定着温度を高くする必要がある。このように記録材Pの坪量の特性の違いに応じて適切な画像形成条件を設定することで、最適な画像形成を行うことができる。
【0017】
制御部10は、CPU等を備えたMPU、画像形成装置1を制御するのに必要なデータの演算や一時的な記憶等に使われるRAM、画像形成装置1を制御するプログラムや各種データを格納するROM等の記憶部からなる。制御部10は、記録材判別装置30による坪量の検知値に基づき、記録材Pの種類を判断する。そして、記録材Pの種類に応じた画像形成条件を決定し、記録材Pに応じた画像形成条件で画像形成装置1を動作させるように制御する。
【0018】
[記録材判別装置]
図2は、記録材判別装置30に関するブロック図である。記録材判別装置30は、送信制御部42、受信制御部43、超音波を発信する発信部31a、超音波を受信する受信部31bを有する。発信部31aは、入力する任意の信号に応じて周波数40kHzの音波を発信可能な素子である。受信部31bは発信部31aから発信された音波を受信可能な素子であり、受信した音波の音圧に応じた受信信号を出力する。なお、本実施形態では音波の周波数を40kHzとしたものの、記録材Pの坪量の特性値を検知できる周波数であればよく、素子の特定に応じて周波数を設定することができる。また、発信部31aと受信部31bは、記録材Pを介した音波を受信できるように各々記録材Pを搬送する搬送路の近傍に配置されている。
【0019】
送信制御部42は、制御部10からの駆動信号を増幅して発信部31aを駆動する機能を有する回路部である。受信制御部43は、受信部31bからの信号を増幅し半波整流する機能を有する回路部である。受信制御部43で生成された受信信号は、制御部10のADポートに入力され、制御部10は変換されたデジタル値に基づいて受信信号の波形を検知し、そのピーク値を受信レベルとして抽出する。
【0020】
[坪量の平均値の検知]
図3は、坪量の平均値を検知する場合の超音波の駆動信号と受信信号を示した図である。第1のモードである記録材Pの坪量の平均値を算出するための動作概要について
図3を用いて説明する。駆動信号は一定周期のパルス波(以下、バースト波とも称する)であり、周波数を40kHz、パルス数を2パルス、バースト周期を10msecとしている。つまり、所定期間(10msec)において第1の数(2パルス)の駆動信号を発信しているともいえる。駆動信号を出力する期間と出力しない期間が交互にある間欠駆動を行っている。
【0021】
受信制御部43で生成された受信信号は、受信部31bによって受信された音波の音圧に従い、発信部31aの音波の周波数と同じ40kHzの半波毎にピーク値を持つ波形となる。また、受信レベルの波形は、駆動信号のパルス数が2パルスであっても、2つ以上のピークを有する波形となる。これは、発信部31a或いは受信部31bの残響があるためである。
【0022】
制御部10は、受信信号の2番目の波形を検知し、そのピーク値を受信レベルとして抽出する。このとき、2番目の波形の検知は、駆動信号と同期した任意の所定時間の範囲であるT0からT1の間の受信レベルを検知することで行う。ここで、所定時間T0及びT1は、発信部31aと受信部31bとの距離と超音波の音速との関係から予め計算して設定する。制御部10は、記録材Pが発信部31aと受信部31bの間に搬送されている期間において送信制御部42に駆動信号を送信する。そして、記録材Pを搬送させながら受信した記録材を介した超音波の受信レベル(1)、受信レベル(2)、・・・受信レベル(n)を順次抽出する。これらの受信レベルを第1の値と称することもできる。
【0023】
制御部10は、抽出した複数の受信レベルの平均値を演算し、制御部10の記憶部にある受信レベルと坪量の変換テーブル(不図示)、または演算式(不図示)を用いることで、記録材Pの平均的な坪量を算出する。ここで、本実施形態においては駆動信号のパルス数を2パルスとし、受信レベルのピーク値を検知する波形を2番目の波形にしたものの、これに限られるものではない。受信する受信信号の大きさに応じて、駆動信号のパルス数は記録材Pや周囲の部材による外乱の影響の少ない1次波の波形を検知できればよく、例えば1番目の波形を用いてもよく、1番目と2番目の両方を用いてもよい。また、バースト周期を10msecとしたものの、これに限られるものではない。坪量の検知精度を満たすことができればよく、発信部31a及び受信部31bの残響が十分に収まる時間以上に設定すればよい。また、受信レベルの抽出に受信波形のピーク値を用いたものの、これに限られるものではない。例えば、実効値や平均値など、受信信号のレベルを判断できる特性値であればよい。
【0024】
図4は記録材Pの坪量の実測値と、受信レベルの平均値の関係を示したグラフである。異なる坪量の紙種A、紙種B、紙種C、紙種D、紙種Eの各記録材をサンプルとして測定を行った。坪量の実測値は電子秤で測定して算出し、受信レベルの平均値は本実施形態における検知方法により算出した。
図4に示すように、記録材Pの坪量が重くなるに従って、受信レベルが低下していることがわかる。これは、記録材Pの坪量が重くなるに従って、記録材Pを透過する超音波の音圧が減衰するためである。制御部10は、
図4に示す近似線Aの式を用いて、得られた受信レベルの平均値から、記録材Pの平均的な坪量を算出することができる。
【0025】
[坪量のムラの検知]
前述のように、画像形成に用いられる記録材Pには、平滑紙、普通紙、ボンド紙、厚紙、グロス紙、などさまざまな種類があり、坪量の平均値だけではなく、坪量のムラも検知することで、紙種判別の精度を向上させることができる。
図5は、任意の紙種F、紙種G、紙種Hの坪量のムラを示すグラフである。横軸に記録材Pの位置、縦軸は坪量を検知した受信信号を示している。
図5に示すように、記録材Pの種類に応じて坪量のムラは異なり、数百マイクロメートルから数ミリメートルの周期をもつことが分かる。よって、坪量のムラの検知に必要な記録材Pの分解能は、数百マイクロメートルよりも小さく設定することが望ましい。
【0026】
前述したバースト波を用いた複数の受信レベルから坪量を検知する方法を用いて、坪量のムラを検知しようとすると、分解能が十分に得られない場合がある。分解能は、駆動信号のバースト周期と記録材Pの搬送速度で決まる。例えば、記録材Pの搬送速度を80mm/sec、バースト周期を10msecとした場合、坪量を検知可能な最少分解能は0.8mmとなる。また、例えば、生産性を高めるために記録材Pの搬送速度を上げて記録材Pの搬送速度を300mm/sec、バースト周期を10msecとした場合、坪量を検知可能な最少分解能は3mmとなり、大幅な分解能の低下となる。また、超音波が受信部31bに直接到達する1次波の受信レベルを検知するために、発信部31aまたは受信部31bの残響が収まる待ち時間以上の長さにバースト周期を設定する必要がある。これは、通常数msec以上を確保することが望ましい。そのため、バースト周期を短くすることで分解能を高くするには限界がある。このように、例えば記録材Pの搬送速度やバースト周期の条件によって、十分な分解能を得られない場合があった。
【0027】
そこで、本実施形態においては駆動信号をバースト波にするのではなく、連続したパルス波(以下、連続波とも称する)にすることで、分解能を十分に確保して坪量のムラを検知する。ここで、連続波においても、バースト波と同様に坪量のムラを検知可能である理由について説明する。前述したように、駆動信号を連続波にした場合、受信レベルは周囲の部材による外乱の影響を受けてしまう。しかし、外乱の影響が安定した条件においては、受信レベルの変動は、記録材Pのムラの影響が支配的となるため、受信レベルの変動に基づき、坪量のムラを検知できる。
【0028】
図6は、駆動信号をバースト波にした場合と連続波にした場合の受信信号のばらつきを各紙種で測定したグラフである。ばらつきは、抽出した複数の受信レベルから分散と平均値を演算し、分散を平均値で除算して算出した。
図6に示すように、駆動信号を連続波にして算出した場合と、バースト波にして算出した場合のばらつきには、正の相関がある。よって、駆動信号を連続波とした場合においても、バースト波と同等に坪量のばらつきを示す特性値を検知することができる。
図6の近似線Bを用いて、連続波で超音波を発信した場合の坪量のばらつきを示す特性値から、バースト波で超音波を発信した場合の坪量のばらつきを示す特性値を求めることができる。
【0029】
図7は、記録材Pの坪量のムラを検知する場合の超音波の駆動信号と受信信号を示した図である。第2のモードである記録材Pの坪量の変動率を算出するための動作概要について
図7を用いて説明する。なお、先の
図3で記録材Pの坪量の平均値を検知する場合で説明した動作概要と同様の部分については、詳しい説明は省略する。制御部10は、送信制御部42に連続したパルス波(連続波)の駆動信号を送る。つまり、所定期間(10msec)において第1の数よりも多い第2の数(9パルス)の駆動信号を発信しているともいえる。所定期間において、駆動信号を出力し続けている連続駆動を行っている。
【0030】
制御部10は、記録材Pが発信部31aと受信部31bの間に搬送されている期間において、送信制御部42に駆動信号を送信する。そして、記録材Pを搬送させながら受信した記録材を介した超音波の受信レベル(1)、受信レベル(2)、・・・受信レベル(n)を、順次抽出する。これらの受信レベルを第2の値と称することもできる。
【0031】
受信レベルの抽出は、記録材Pや周囲の部材による外乱の影響が安定した条件で行うために、駆動信号の立ち上げを開始した後、一定の待ち時間が経過してから開始する。制御部10は、抽出した複数の受信レベルから分散と平均値を演算し、分散を平均値で除算した値を記録材Pの坪量のムラに関する特性値(以下、変動率とも称する)とする。なお、本実施形態においては変動率の算出に分散を用いたものの、これに限られるものではない。例えば、最大値と最小値の差分であるPP値、周期、傾きなど、記録材Pの坪量のムラによって変動する特性値であれば代用可能である。また、いずれかの特性値を併用しても良い。
【0032】
このように駆動信号を連続波とすることで、分解能を向上させて記録材Pの坪量のムラの特性値を検知することができる。これにより、坪量のばらつきをより精度よく判断することができる。例えば、記録材Pの搬送速度を300mm/secとした場合、坪量のムラを検知可能な最少分解能は7.5μmとなり、連続波にすることで坪量のムラを高分解能で測定ができることが分かる。
【0033】
図8は、バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出し、連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出することを示したタイミングチャートである。まず、記録材Pの到達距離の予測方法と、搬送系の配置の関係について説明する。本実施形態では記録材Pの到達距離はレジセンサ34、レジストローラ対6などの記録材Pを搬送する部材に駆動力を供給する駆動源であるパルスモータ(不図示)、の情報に基づき制御部10により予測している。パルスモータのステップ数とレジストローラ対6の回転距離は比例関係にあるため、カウントしたステップ数からレジストローラ対6を通過後に記録材Pが進んだ距離が予測できる。
【0034】
本実施形態では、記録材Pがレジストローラ対6を通過した位置を基準として、記録材判別装置30に到達するまでに100ステップが必要である。なお、100ステップは一例であり、使用するパルスモータとレジストローラ対6の径などから算出し、設定することができる。また、モータはパルスモータに限定されない。記録材判別装置30が配置された位置に記録材Pが到達したことを予測できればよい。よって、レジセンサ34に記録材Pが到達したタイミングから所定時間が経過したタイミングで記録材Pが到達したと予測することも可能である。
【0035】
図8のタイミングチャートでは、まずレジセンサ34の出力に基づき、記録材Pがレジセンサ34まで搬送されたか否かを判断している。レジセンサ34まで記録材Pが搬送されると、パルスモータを100ステップ駆動させ、記録材Pを記録材判別装置30の検知領域まで搬送させる。記録材Pが記録材判別装置30の検知領域まで搬送されると、100msの期間、バースト駆動することで超音波を発信する。そして、記録材Pを介した超音波を100msの期間、受信する。受信した超音波の受信レベルに応じて、記録材Pの平均坪量の算出を行う。
【0036】
超音波をバースト駆動した後、150msの期間、連続駆動することで超音波を発信する。そして、記録材Pを介した超音波を連続駆動開始から50msが経過してから100msの期間、受信する。受信した超音波の受信レベルに応じて、記録材Pの坪量の変動率の算出を行う。なお、それぞれの超音波の測定期間を100msとしたものの、これに限定されるものではない。画像形成装置の設置環境や、求めたい検知精度などに応じて、測定期間は適宜設定することが可能である。
【0037】
図9は、バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出し、連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出することを示したフローチャートである。S101において、制御部10は印刷指示を受信すると、記録材Pの給紙を開始する。S102において、制御部10は記録材Pがレジセンサ34まで搬送されたか否かを判断する。つまり、レジセンサ34の出力値がHIGH信号からLOW信号に切り替わったか否かを判断する。なお、ここでは一例として記録材Pを検知していない状態でHIGH信号を、検知している状態でLOW信号を出力することを説明した。しかし、これに限られるものではなく、記録材Pを検知していない状態でLOW信号、検知している状態でHIGH信号を出力する構成であってもよい。記録材Pを検知するとS103に進む。
【0038】
S103において、制御部10はステップ数Sのリセットを行う。そして、制御部10はレジセンサ34により記録材Pを検知したことを起点としてパルスモータのステップ数のカウントを開始する。S104において、制御部10はパルスモータのステップ数が100となったか否かを判断する。ステップ数が100に到達するとS105に進む。
【0039】
S105において、制御部10は記録材Pが記録材判別装置30の検知領域に到達したと判断する。そして、記録材Pの坪量の平均値の測定を開始する。まず、制御部10はタイマーカウントTのリセットを行う。そして、バースト駆動の駆動信号の出力を行い、超音波を発信させる。S106において、制御部10はタイマーカウントTが100msとなったか否かを判断する。100msとなっていればS107に進む。S107において、制御部10はバースト駆動の駆動信号を停止する。そして、記録材Pを介した超音波の受信レベルに基づき、記録材Pの坪量の平均値を算出する。
【0040】
S108において、制御部10は記録材Pの坪量の変動率の測定を開始する。まず、制御部10はタイマーカウントTのリセットを行う。そして、連続駆動の駆動信号の出力を行い、超音波を発信させる。S109において、制御部10はタイマーカウントTが50msとなったか否かを判断する。50msとなっていればS110に進む。S110において、制御部10は記録材Pを介した超音波の測定を開始する。S111において、制御部10はタイマーカウントTが50msから、さらに100msが経過したか否かを判断する。100msが経過するまでは超音波の受信を継続し、100msが経過するとS112に進む。S112において、制御部10は連続駆動の駆動信号を停止する。そして、記録材Pを介した超音波の受信レベルに基づき、記録材Pの坪量の変動率を算出する。
【0041】
S113において、制御部10はS107とS112で得られた平均値と変動率に基づき、記録材Pの種類の判別を行う。そして、判別した記録材Pの種類に応じて、二次転写条件や定着条件などの画像形成条件を決定し、記録材Pの種類に応じた条件での画像形成を実行する。なお、ここでは一例として平均値と変動率に基づき、記録材Pの種類の判別を行う方法を説明したが、これに限られるものではない。例えば、記録材Pの種類を直接的に判別しなくても、平均値と変動率から二次転写条件や定着条件などの画像形成条件を決定し、画像形成を実行するように制御してもよい。
【0042】
ここでは、本実施形態における一例として坪量の平均値が200dec、坪量の変動率は9%であった場合の記録材Pの判断について記載する。まず、坪量の平均値が200decであるが、記録材Pのいずれの領域で坪量を検知したかによって、坪量の値は多少変動する可能がある。
図4のグラフを参照するとわかるように、坪量の平均値が200decである記録材Pの種類としては、紙種B、紙種C、紙種Dが候補となる。次に、坪量の変動率が9%であるため、
図6のグラフを参照するとわかるように、坪量の変動率が9%である記録材Pの種類としては、紙種A、紙種Bが候補となる。平均値と変動率から導き出した候補を鑑み、この場合における記録材Pの種類は紙種Bであると判別できる。つまり、坪量の平均値だけでは判別することが難しい平均値の比較的近い紙種であっても、さらに坪量の変動率というパラメータを用いて記録材Pの特性を判断することができ、精度よく記録材Pの種類を判別することができる。
【0043】
このように、駆動信号にバースト波を用いて記録材Pの坪量の平均値を算出し、駆動信号に連続波を用いて記録材Pの坪量の変動率を算出する。そして、坪量の平均値と変動率とを用いて記録材Pの種類を判別する。これにより、坪量の平均値のみを用いる場合は精度よく判別することが難しい記録材Pの種類も、坪量の平均値と変動率を用いて精度よく記録材Pの種類を判別することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
先の第1の実施形態においては、バースト駆動の駆動信号の出力を行って超音波を発信させ坪量の平均値を算出した後、連続駆動の駆動信号の出力を行って超音波の発信をさせ坪量の変動率を算出する方法について説明した。本実施形態においては、連続駆動の駆動信号の出力を行って超音波の発信をさせ坪量の変動率をした後、バースト駆動の駆動信号の出力を行って超音波を発信させ坪量の平均値を算出する方法について説明する。なお、画像形成装置など先の第1の実施形態と同様の構成については、本実施形態においては、詳しい説明は省略する。
【0045】
図10は、連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出し、バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出することを示したタイミングチャートである。
図10のタイミングチャートでは、まずレジセンサ34の出力に基づき、記録材Pがレジセンサ34まで搬送されたか否かを判断している。レジセンサ34まで記録材Pが搬送されると、パルスモータを100ステップ駆動させ、記録材Pを記録材判別装置30の検知領域まで搬送させる。
【0046】
なお、本実施形態においては、記録材Pが記録材判別装置30の検知領域まで搬送されるより80ステップ前から、連続駆動することで超音波を発信する。これは、連続駆動時の測定開始を行うタイミングは、駆動信号を出力するタイミングから待ち時間50msが必要であるからである。そのため、記録材判別装置30の検知領域に記録材Pが到達するタイミングよりも50ms早く駆動信号の出力を開始することで、記録材判別装置30の検知領域に記録材Pが到達するとすぐに超音波の受信信号を測定開始することができる。なお、ステップ数と時間幅の関係は、1ステップあたりの記録材Pの搬送量と記録材Pの搬送速度から求めることができる。本実施形態においては50msの時間幅は80ステップと求めることができる。
【0047】
記録材Pが記録材判別装置30の検知領域まで搬送されると、記録材Pを介した超音波を100msの期間、受信する。受信した超音波の受信レベルに応じて、記録材Pの坪量の変動率の算出を行う。
【0048】
超音波を連続駆動した後、100msの期間、バースト駆動することで超音波を発信する。そして、記録材Pを介した超音波を100msの期間、受信する。受信した超音波の受信レベルに応じて、記録材Pの平均坪量の算出を行う。なお、それぞれの超音波の測定期間を100msとしたものの、これに限定されるものではない。画像形成装置の設置環境や、求めたい検知精度などに応じて、測定期間は適宜設定することが可能である。
【0049】
図11は、連続波で超音波を発信させ記録材Pの坪量の変動率を算出し、バースト波で超音波を発信させ記録材Pの平均的な坪量を算出することを示したフローチャートである。S201において、制御部10は印刷指示を受信すると、記録材Pの給紙を開始する。S202において、制御部10は記録材Pがレジセンサ34まで搬送されたか否かを判断する。つまり、レジセンサ34の出力値がHIGH信号からLOW信号に切り替わったか否かを判断する。なお、ここでは一例として記録材Pを検知していない状態でHIGH信号を、検知している状態でLOW信号を出力することを説明した。しかし、これに限られるものではなく、記録材Pを検知していない状態でLOW信号、検知している状態でHIGH信号を出力する構成であってもよい。記録材Pを検知するとS203に進む。
【0050】
S203において、制御部10はステップ数Sと、タイマーカウントTのリセットを行う。そして、制御部10はレジセンサ34により記録材Pを検知したことを起点としてパルスモータのステップ数のカウントを開始する。S204において、制御部10はパルスモータのステップ数が20となったか否かを判断する。ステップ数が20に到達するとS205に進む。
【0051】
S205において、制御部10は連続駆動の駆動信号の出力を行い、超音波を発信させる。S206において、制御部10はパルスモータのステップ数が100となったか否かを判断する。ステップ数が100に到達するとS207に進む。S207において、制御部10は記録材Pを介した超音波の測定を開始する。S208において、制御部10はタイマーカウントTが100msとなったか否かを判断する。100msとなっていればS209に進む。S209において、制御部10は連続駆動の駆動信号を停止する。そして、記録材Pを介した超音波の受信レベルに基づき、記録材Pの坪量の変動率を算出する。
【0052】
S210において、制御部10は記録材Pの坪量の平均値の測定を開始する。まず、制御部10はタイマーカウントTのリセットを行う。そして、バースト駆動の駆動信号の出力を行い、超音波を発信させる。S211において、制御部10はタイマーカウントTが100msとなったか否かを判断する。100msとなっていればS212に進む。S212において、制御部10はバースト駆動の駆動信号を停止する。そして、記録材Pを介した超音波の受信レベルに基づき、記録材Pの坪量の平均値を算出する
S213において、制御部10はS209とS212で得られた平均値と変動率に基づき、記録材Pの種類の判別を行う。そして、判別した記録材Pの種類に応じて、二次転写条件や定着条件などの画像形成条件を決定し、記録材Pの種類に応じた条件での画像形成を実行する。なお、ここでは一例として平均値と変動率に基づき、記録材Pの種類の判別を行う方法を説明したが、これに限られるものではない。例えば、記録材Pの種類を直接的に判別しなくても、平均値と変動率から二次転写条件や定着条件などの画像形成条件を決定し、画像形成を実行するように制御してもよい。
【0053】
このように、駆動信号にバースト波を用いて記録材Pの坪量の平均値を算出し、駆動信号に連続波を用いて記録材Pの坪量の変動率を算出する。そして、坪量の平均値と変動率とを用いて記録材Pの種類を判別する。これにより、坪量の平均値のみを用いる場合は精度よく判別することが難しい記録材Pの種類も、坪量の平均値と変動率を用いて精度よく記録材Pの種類を判別することができる。さらに、記録材Pが記録材判別装置30の検知領域に到達する前に連続駆動の駆動信号の出力を開始することで、記録材Pの判別にかかる時間を短縮することもできる。
【符号の説明】
【0054】
10 制御部
31a 発信部
31b 受信部
42 送信制御部
43 受信制御部