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特許7527966ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)を含む局所製剤ならびに治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)を含む局所製剤ならびに治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240729BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20240729BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20240729BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 31/10 20060101ALI20240729BHJP
   A61K 33/14 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/46
A61Q1/00
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/08
A61P37/08
A61K31/10
A61K33/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020555348
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 IL2019050386
(87)【国際公開番号】W WO2019198067
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】62/654,540
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520388398
【氏名又は名称】ヌーン エスセティック エム.アール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン,エラン
(72)【発明者】
【氏名】ミンキン,マシャ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-502505(JP,A)
【文献】特表2006-521342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270358(US,A1)
【文献】特表2006-525951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0038219(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 1/00-43/00
A61K31/00-31/327
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロンチウム塩、およびメチルスルホニルメタン(MSM)の組み合わせと、
局所投与のための生理学的に許容される担体と、を含む、皮膚用組成物であって、
前記皮膚用組成物中のストロンチウム塩の濃度が、0.1重量/重量%~10重量/重量%の範囲にあり、
前記皮膚用組成物中のMSMの濃度が、0.1重量/重量%~20重量/重量%の範囲にある、
皮膚用組成物。
【請求項2】
前記皮膚用組成物中のストロンチウム塩の濃度が、5重量/重量%~10重量/重量%の範囲にあり、
前記皮膚用組成物中のMSMの濃度が、5重量/重量%~10重量/重量%の範囲にある、
請求項1に記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
前記ストロンチウム塩が、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、および塩化ストロンチウム六水和物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の皮膚用組成物。
【請求項4】
少なくとも1つの追加の活性成分をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚用組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加の活性成分が、アルファヒドロキシ酸(AHA)、ベータヒドロキシ酸(BHA)、レチノール、アルファケト酸、ジカルボン酸、アルブチン、ビタミンC、アゼライン酸、およびグリコール酸からなる群から選択される、請求項4に記載の皮膚用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚用組成物を含む、化粧製品または医薬。
【請求項7】
乳酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸、アゼライン酸、ピルビン酸、レチノール、ビタミンC、アルファアルブチンまたはベータアルブチンのうちの1つまたは複数を含む、請求項6に記載の化粧製品または医薬。
【請求項8】
(a)ピーリング製品、
(b)にきび治療用の製品、
(c)皮膚の外観を改善する製品、
(d)抗加齢用の製品、
(e)マスク、または
(f)石鹸
のうちの少なくとも1つとして処方される、請求項6または7に記載の化粧製品または医薬。
【請求項9】
(a)前記ピーリング製品が、乳酸、グリコール酸もしくはサリチル酸のうちの少なくとも1つを含み、
(b)前記にきび治療用の製品が、アゼライン酸および/もしくは乳酸を含み、
(c)前記皮膚の外観を治療する製品が、(i)最大25%の量のアゼライン酸、(ii)ビタミンC、ならびに/もしくは(iii)アルファアルブチンおよび/もしくはベータアルブチン、のうちの少なくとも1つを含み、または
(d)前記抗加齢用の製品が、レチノールを含む、
請求項8に記載の化粧製品または医薬。
【請求項10】
軟膏、クリーム、ローション、油、溶液、乳濁液、ゲル、ペースト、乳液、エアゾール、粉末、または泡の形態である、請求項6~9のいずれか一項に記載の化粧製品または医薬。
【請求項11】
美容処置の方法であって、ストロンチウム塩、およびメチルスルホニルメタン(MSM)の組み合わせ、ならびに局所投与のための生理学的に許容される担体を含む組成物を対象の皮膚に投与することを含み、
前記組成物中のストロンチウム塩の濃度が、0.1重量/重量%~10重量/重量%の範囲にあり、
前記組成物中のMSMの濃度が、0.1重量/重量%~20重量/重量%の範囲にあり、
ストロンチウム塩およびMSMの組み合わせが、ストロンチウム塩、MSMのそれぞれ単独により提供される効果と比較して、美容処置において相乗効果を提供する、
方法。
【請求項12】
(a)前記ストロンチウム塩が、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、および塩化ストロンチウム六水和物からなる群から選択される、ならびに/または
(b)前記組成物が、アルファヒドロキシ酸(AHA)、ベータヒドロキシ酸(BHA)、レチノール、アルファケト酸、ジカルボン酸、アルブチン、ビタミンC、アゼライン酸、およびグリコール酸からなる群から選択される、追加の活性成分を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記追加の活性成分が、乳酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸、アゼライン酸、ピルビン酸、レチノール、ビタミンC、アルファアルブチン、およびベータアルブチンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)刺激および紅斑の軽減、
(b)炎症および紅斑の予防、
(c)皮膚疾患に関連する刺激および紅斑の緩和、ならびに
(d)以下からなる群から選択される少なくとも1つの状態に関連する感覚、状態または感触の治療または予防:
(i)皮膚刺激性製品または化学物質との局所接触、
(ii)神経性炎症、
(iii)温度変化に関連する皮膚の刺痛、掻痒、火照り、紅斑、および
(iv)pH変化に関連する皮膚の刺痛、掻痒、火照り、紅斑
からなる群から選択される処置における使用のための、
請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚用組成物、または請求項6~10のいずれか1項に記載の化粧製品または医薬。
【請求項15】
前記皮膚疾患が、アトピー性皮膚炎、湿疹、脂漏症、酒さ、または乾癬である、請求項14に記載の皮膚用組成物、化粧製品または医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)を含む局所製剤ならびに治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
局所化粧品および医薬品に高濃度の活性成分を使用すると、通常、低pHが用いられる場合、望ましい結果が得られ、これは、刺痛、火照り、掻痒、浮腫、他の不快な感覚、発赤などを含む刺激などの副作用を引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、ストロンチウム、メチルスルホニルメタン(MSM)および皮膚科学的に許容される担体を含む局所化粧品製剤または医薬品製剤である。
【0004】
別の態様では、本発明は、ストロンチウム、MSMおよび皮膚科学的に許容される担体を含む局所製剤の局所投与を含む美容療法である。
【0005】
さらに別の態様では、本発明は、化粧品製剤または医薬品製剤中にストロンチウムおよびMSMを含む、局所化粧品製剤もしくは医薬品製剤または他の化学刺激剤の皮膚刺激作用を軽減する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部分で具体的に指摘され、明確に請求されている。しかしながら、本発明は、添付の図面と併せて読む場合、その目的、特徴、および利点とともに構成および操作方法の両方に関して、以下の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解することができる。
【0007】
図1】本発明の製剤による皮膚発赤(デルタa)への影響を示す実施例Iの比較臨床データを示す。
図2】本発明の製剤による全体的な皮膚色(デルタE)への影響を示す実施例Iの比較臨床データを示す。
図3】本発明の製剤による皮膚刺激レベルへの影響を示す実施例Iの比較臨床データを示す。
図4】表1に示すデータの比較を示す。
図5】表1に示すデータのベースラインからの改善の比較を示す。
図6】本発明の製剤による皮膚発赤(デルタa)への影響を示す実施例IIの比較臨床データを示す。
図7】本発明の製剤による全体的な皮膚色(デルタE)への影響を示す実施例IIの比較臨床データを示す。
図8】本発明の製剤による皮膚刺激レベルへの影響を示す実施例IIの比較臨床データを示す。
図9】表2に示すデータの比較を示す。
図10】表2に示すデータのベースラインからの改善の比較を示す。
【0008】
例示を単純かつ明確にするために、図に示される要素は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことが理解されよう。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確にするために、他の要素に対して誇張される場合がある。さらに、適切と考えられる場合、参照番号は、対応する要素または類似の要素を示すために、図の間で繰り返される場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的詳細を記載する。しかしながら、本発明はこれらの具体的詳細なしに実施され得ることが当業者に理解されるであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の方法、手順、および構成要素を詳細に記載していない。
【0010】
本発明の実施形態は、ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)を含む製剤を対象とする。ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)との組み合わせは、本出願では「組み合わせ」と呼ばれる場合がある。
【0011】
本発明のさらなる実施形態は、温度の変化、火傷、またはpHの変化による、皮膚刺激性製品、化学物質、刺激の方法および他の理由、またはそのような感情に関連する、刺痛、掻痒、火照り、紅斑および他の感覚および感触、ならびにそれらの進行を治療または予防する方法を対象とし、この方法は、ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)を含む製剤を投与することを含む。
【0012】
本発明は、局所用製品製剤におけるストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)の組み合わせが、皮膚治療製品のさまざまな成分によって引き起こされる刺激および神経性炎症を含む、局所適用される皮膚刺激剤に関連する刺激および紅斑の進行、発症および重症度を低減するのに役立つという驚くべき発見に関する。
【0013】
このストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)の効果は相乗効果である。相乗効果は、各原料の効果の単純な合計よりも強い効果を有する2つの原料の組み合わせにより特徴付けられる。これは、以下の実施例の節ならびに表1および2でさらに説明する。
【0014】
相乗効果により、単独では効果的でないまたは非常に効果が低い少量のストロンチウムおよびMSMを使用することもできる。
【0015】
本発明により、ストロンチウムおよびMSMを化粧品製剤に添加することにより、通常は低pHであるが、化学的刺激剤または低pHに起因する典型的な刺激および副作用(発赤など)を伴わずに、化粧品に高濃度の活性化粧成分を使用することができる。
【0016】
ストロンチウムとMSMの組み合わせは、活性化粧成分を含む製剤および/または製品に使用できる、または局所化粧製品の使用の前後もしくは皮膚治療(例えば、レーザー治療もしくは他の治療)を行う前後もしくは日光暴露後もしくは火傷後に使用できる。組み合わせが製品の一部ではない場合ならびに組み合わせが製品または治療または日光暴露の前後に適用される場合、刺激および紅斑を軽減する望ましい効果を得るために、組み合わせを時間的に近接して使用すべきである。
【0017】
本発明により、典型的な副作用(発赤、掻痒、火傷、刺痛など)なしに、皮膚治療にさらに有効な製品が可能になる。副作用がない場合または副作用が軽度である場合、対象は処方された通りに製品を使用する可能性が高いため、製品の有効性が高まる。さらに、顧客/患者が罹患していないまたは不快でない場合、治療を行う/適用するエステティシャン/医師は、製品をより長く継続する可能性が高い。例えば、刺激が少ない場合は、治療部位に化学ピーリングをより長く残すことができるため、製品に具現化された十分な効果を享受できる。さらに、刺激および発赤の副作用が解消または軽減されるため、対象または医師は活性成分の量を増やすことができる。
【0018】
副作用の軽減に加えて、活性成分の有効性はストロンチウムおよびMSMの添加で害されない、または損なわれない。
【0019】
いくつかの実施形態では、組み合わせは、アトピー性皮膚炎、湿疹、脂漏症、酒さおよび乾癬などの皮膚疾患に関連する刺激および紅斑を緩和するために使用できる。
【0020】
いくつかの実施形態では、組み合わせは、環境条件の結果としての「冬季痒疹」などの乾燥肌の治療に使用できる。
【0021】
いくつかの実施形態では、組み合わせは、にきび治療用の製品に使用される。
【0022】
いくつかの実施形態では、組み合わせは、抗加齢用の製品に使用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、ストロンチウムおよびMSMは、別個の製品に存在する場合があり、刺激および紅斑を軽減する所望の効果を達成するために交互に適用される。いくつかの実施形態では、ストロンチウムが適用され、直後にMSMが適用される。いくつかの実施形態では、MSMが適用され、直後にストロンチウムが適用される。
【0024】
いくつかの実施形態では、製剤は、1つ以上の追加の活性化粧成分をさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、追加の活性化粧成分は、アルファヒドロキシ酸(AHA)(グリコール酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、リンゴ酸およびクエン酸を含む)、ベータヒドロキシ酸(BHA)(サリチル酸およびクエン酸を含む)、レチノール、アルファケト酸(ピルビン酸など)、ジカルボン酸(アゼライン酸など)、アルブチン(アルファおよびベータアルブチンなど)またはビタミンCである。
【0026】
一実施形態では、活性化粧成分はアゼライン酸である。
【0027】
一実施形態では、活性化粧成分はグリコール酸である。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明は、皮膚の美容治療として有効な局所製品におけるストロンチウムおよびMSMの組み合わせに関し、治療中の皮膚の消炎および皮膚の鎮静、ならびに皮膚の全体的な鎮静を支持し、皮膚の外観を改善するなど、皮膚に美容効果を提供する。皮膚に局所塗布する場合、この組み合わせは皮膚の外観を改善する。
【0029】
実験により、ストロンチウムとMSMの組み合わせが皮膚に局所適用されると、刺痛、掻痒、火照り、紅斑の感覚および他の感覚、ならびに皮膚刺激性製品、温度変化、火傷、pH変化、とりわけ化学的刺激剤、例えば、高濃度のAHAもしくはBHAピーリング、またはレチノールもしくはアルファケト酸(ピルビン酸など)もしくはジカルボン酸(アゼライン酸など)を含む製品、または例えば髭剃り後の皮膚への海水の適用に伴う感触を即座にかつ効果的に防止することが証明された。
【0030】
ストロンチウムおよびMSMの組み合わせを含む製剤は、進行の防止および刺激を惹起できる構成要素を含む製品に関連する刺激の抑制に効果的である。
【0031】
いくつかの実施形態では、ストロンチウムおよびメチルスルホニルメタン(MSM)の組み合わせが皮膚に局所適用される場合、即座に、効果的に、ならびに長期間にわたって、刺痛、掻痒、火照り、紅斑および他の感覚、ならびに皮膚刺激性化学物質、製品および他の種類の神経性炎症に関連する感触を防止する。
【0032】
この組み合わせは、化学物質、温度変化、とりわけ火傷、低pH、例えばAHAおよびBHA(アルファ/ベータヒドロキシ酸)ピーリング、レチノールおよびアルファケト酸(ピルビン酸など)、ジカルボン酸(アゼライン酸など)、他の種類のケミカルピーリング、ならびに局所刺激を引き起こす他の種類の医薬品および化粧品によって惹起される感覚および神経性炎症の治療にも有効である。ストロンチウムおよびMSMの組み合わせは、抗刺激効果の持続時間を単独での各時間に比べて有意に延長する。抗刺激効果は即時かつリアルタイムであり、組成物を適用する時間とそれが効果を及ぼし始める時間との間に待つ必要はない。
【0033】
いくつかの実施形態では、元素ストロンチウム濃度は、製剤の0.1~10重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の2~8重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の2~4重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の4~6重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の6~8重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の5~7重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の2~5重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の7~10重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の8~10重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の0.1~2重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の0.1~15重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の10~15重量/重量%の範囲にある。
【0034】
いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の0.1~10重量/重量%の範囲にある。
【0035】
いくつかの実施形態では、ストロンチウム濃度は、製剤の2~8重量/重量%の範囲にある。
【0036】
いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の0.1~20重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の5~10重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の5~7重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の7~10重量/重量%である。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の6~8重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の6~9重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の0.1~5重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の10~20重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の10~15重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の15~20重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の0.1~3重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の3~5重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の0.1~40重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の20~40重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の20~30重量/重量%の範囲にある。いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の30~40重量/重量%の範囲にある。
【0037】
いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の0.1~20重量/重量%の範囲にある。
【0038】
いくつかの実施形態では、MSM濃度は、製剤の5~10重量/重量%の範囲にある。
【0039】
化粧活性成分の濃度が高いほど、高濃度のストンチウムおよびMSMの組み合わせが推奨される。
【0040】
いくつかの実施形態では、ストロンチウムカチオンの対アニオンは、ハロゲンである。
【0041】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)またはヨウ化物(I-)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、ハロゲンは塩化物である。
【0043】
いくつかの実施形態では、対アニオンは、カルボン酸、アルコキシレート、アミノ酸(特に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、およびシステイン)、ペプチド、飽和および不飽和の有機酸、ならびに飽和および不飽和の脂肪酸などの有機物である。
【0044】
いくつかの実施形態では、有機対アニオンは、酢酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、葉酸塩、アスパラギン酸塩、フタル酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸、ラウリル硫酸塩、ラノリン脂肪酸塩、ミリスチン酸塩、ベヘン酸塩、カゼイン塩、シクラミン酸塩、パントテン酸塩、EDTA、または他のポリアミノポリカルボン酸塩、サッカリン、チオグリコール酸塩、ラウリン酸塩、メチルパラベン、プロピルパラベン、リシノール酸塩またはソルビン酸塩のアニオンである。
【0045】
いくつかの実施形態では、ストロンチウムは、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウムまたは硝酸ストロンチウムの形態である。
【0046】
いくつかの実施形態では、ストロンチウムは、塩化ストロンチウム六水和物の形態である。
【0047】
いくつかの実施形態では、製剤は、皮膚科学的に許容される担体をさらに含む。本明細書で使用される「皮膚科学的に許容される担体」とは、担体がケラチン組織への局所適用に適し、製剤中の活性物質と相溶性があることを意味し、これにより、安全性または毒性の懸念を生じないであろう。皮膚科学的に許容される担体の例は、当技術分野では周知であり、化粧品製剤の約0.1~99.1%を構成し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、患者の皮膚組織への投与を可能にする任意の医薬品製剤または化粧品製剤で投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物または局所医薬は担体を含む。本発明の実施形態によれば、担体は、軟膏、クリーム、ローション、油、溶液(いくつかの実施形態では水溶液)、乳濁液、ゲル、ペースト、乳液、エアゾール、粉末、または泡の形態である。いくつかの実施形態では、担体は、水性の担体(例えば、ゲル、水中油型乳濁液または水中油型クリーム、水溶液、泡、ローション、スプレー)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、製剤は、マスク、ピーリング、石鹸(液体または固体)、シャンプー、髭剃りクリーム、アフターシェーブ、日焼け止め、香水、脱臭剤、抗加齢およびしわ取り、人工の日焼け、メイクアップ、メイク落とし、ベビー用品などの製品で投与される。
【0051】
いくつかの実施形態では、製剤は局所経口製剤の形態である。いくつかの実施形態では、製剤は、口内洗浄液またはトローチなどの製品で投与される。本明細書で使用される局所投与のための生理学的に許容される担体には、上記で定義された皮膚科学的に許容される担体、および口内への局所投与に適合した担体が含まれる。
【0052】
製剤/製品の典型的な適用様式は、指、ブラシ、スティック、綿棒、組織もしくは布などの物理的アプリケーターを含み、または布マスクなど、製剤を既に含有する調製アプリケーターを適用もしくは付着することによる。
【0053】
いくつかの実施形態では、製剤は、乳化剤、溶媒、界面活性剤、防腐剤、保湿剤、香料、染料/着色剤、粘度調整剤、皮膚軟化剤、結合剤、吸収剤、緩衝剤、キレート剤、コンディショニング剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0054】
本発明の製剤はすべて、局所用製品の主要活性を維持しながら、製剤の抗刺激および抗紅斑活性により患者に利益をもたらすことができる。
【実施例
【0055】
実施例I-グリコール酸50%(pH0.9)
グリコール酸50%(pH0.9)を含む化粧ピーリング剤を、23歳~64歳(平均45歳)の15人のボランティアに投与した。ピーリング剤を処置領域に10分間保持した。紅斑および刺激(掻痒、刺痛、および火照り)を、製品の適用前および製品の適用10分後に評価した。
【0056】
ピーリング剤はさらに、塩化ストロンチウムとMSMとの以下の組み合わせのうちの1つを含んだ。
-塩化ストロンチウム無添加およびMSM無添加、
-10%MSMのみ、
-5%塩化ストロンチウムのみ(これは約2.75%の元素ストロンチウムに相当する)、または
-5%塩化ストロンチウム+10%MSM。
【0057】
異なる種類の肌の色調(フィッツパトリック)および条件(脂性、普通など)が試験に加わった。
【0058】
紅斑は、CIE-L座標を用いて値を提供する比色計装置を使用して評価した。
【0059】
刺激は、0~10の標準化された視覚的アナログ尺度(VAS)を用いて評価した。
【0060】
結果を以下の表1に示す。ここで、デルタaは、ピーリング前およびピーリング10分後の測定間の発赤の差異であり、デルタEは、ピーリング前およびピーリング10分後の測定間の全体的な肌の色調の差異である。
【0061】
表の第一行は、「ベース」行であり、ここでは化粧ピーリング剤がストロンチウムおよび/またはMSMなしで投与された。表の最後3列は、ベースラインと比較したデルタa、デルタEおよび刺激の変化を比較している。例えば、10%MSMが投与された2行目では、デルタaは5.62(参加対象の平均)であり、列4に示すように、ベース行のデルタaよりも6.53%低い。
【表1】
【0062】
組み合わせの相乗効果は、表1の結果から明確に理解できる。10%MSM単独のデルタaは5.62であり、ベースと比較した減少は6.53%であり、5%塩化ストロンチウム単独のデルタaは5.44であり、ベースと比較した減少は9.57%である一方、10%MSMと5%塩化ストロンチウムの組み合わせのデルタaは3.47であり、ベースと比較して42.33%の減少である。この減少は、それぞれの単独での減少の合計よりも大きいため、相乗効果を証明している。
【0063】
組み合わせの効果は、図でも説明され、以下に記載する。
【0064】
図1は、本発明の製剤による皮膚発赤(デルタa)に及ぼす効果を示す実施例Iの比較臨床データを示す。デルタa%は、前の色と比較して、ピーリング適用後の皮膚の発赤増加の百分率を表す。グラフは、ボランティア15人それぞれのこの変化を示す。理解できるように、上位3線グラフには、下記の3つの組み合わせを含む。塩化ストロンチウム無添加およびMSM無添加、10%MSMのみおよび5%塩化ストロンチウムのみでは、約30~35%の発赤の増加を示す一方、5%塩化ストロンチウムと10%MSMの組み合わせでは、平均で僅か約20%の増加を示す。
【0065】
図2は、本発明の製剤による全体的な皮膚色(デルタE)への影響を示す実施例Iの比較臨床データを表す。デルタEは、ピーリング前およびピーリング後の測定間の全体的な肌の色調の差異を表す。グラフは、ボランティア15人それぞれのこの変化を示す。理解できるように、5%塩化ストロンチウムと10%MSMの組み合わせの全体的な肌の色調変化は、他の3つの組み合わせよりも少なかった。
【0066】
図3は、本発明の製剤による皮膚刺激レベルへの影響を示す実施例Iの比較臨床データを示す。グラフは、ピーリング剤の適用10分後に測定されたボランティア15人のそれぞれの刺激レベルを示す。理解できるように、5%塩化ストロンチウムと10%MSMの組み合わせの刺激レベルは、他の3つの組み合わせのレベルよりも低かった。
【0067】
図4は、表1の列1~3に示すデータの比較を示し、他の3つの組み合わせと比較して、5%塩化ストロンチウムおよび10%の組み合わせのデルタa、デルタEおよび刺激の3つのパラメータすべてにおいて値が低いことを証明する。
【0068】
図5は、表1の列4~6に示すデータのベースライン(塩化ストロンチウム無添加およびMSM無添加)からの改善の比較を示し、他の2つの組み合わせと比較して、5%の塩化ストロンチウムおよび10%の組み合わせのデルタa、デルタE、および刺激の3つのパラメータすべてにおいて、ベースラインと比較した減少率が高いことを証明する。
【0069】
実施例II-アゼライン酸25%(pH3.5)
アゼライン酸25%(pH3.5)を含む化粧品が、23歳~64歳(平均45歳)の15人のボランティアに投与された。紅斑および刺激(掻痒、刺痛、および火照り)を、製品の適用前および製品の適用10分後に評価した。
【0070】
この製品は、塩化ストロンチウムとMSMの下記の組み合わせのうちの1つをさらに含む。
-塩化ストロンチウム無添加およびMSM無添加、
-10%MSMのみ、
-5%塩化ストロンチウムのみ(これは約2.75%の元素ストロンチウムに相当する)、または
-5%塩化ストロンチウム+10%MSM。
【0071】
異なる種類の肌の色調(フィッツパトリック)および状態(脂性、普通など)が試験に加わった。
【0072】
紅斑は、CIE-L座標を用いて値を提供する比色計装置を使用して評価した。
【0073】
刺激は、0~10の標準化された視覚的アナログ尺度(VAS)を用いて評価した。
【0074】
結果を以下の表2に示す。ここで、デルタaは、製品の適用前および製品の適用10分後の測定間の発赤の差異であり、デルタEは、製品の適用前および製品の適用10分後の測定間の全体的な肌の色調の差異である。
表の第一行は、「ベース」行であり、ここでは化粧製品がストロンチウムおよび/またはMSMなしで投与された。表の最後3列は、ベースラインと比較したデルタa、デルタEおよび刺激の変化を比較している。例えば、10%MSMが投与された2行目では、デルタaは4.35であり、列4に示すように、ベース行のデルタaよりも3.77%低い。
【表2】
【0075】
組み合わせの相乗効果は、表2の結果から明確に理解できる。10%MSM単独のデルタaは4.35であり、ベースと比較した減少は3.77%であり、5%塩化ストロンチウム単独のデルタaは4.12であり、ベースと比較した減少は8.83%である一方、10%MSMと5%塩化ストロンチウムの組み合わせのデルタaは2.6であり、ベースと比較して42.47%の減少である。この減少は、それぞれの単独での減少の合計よりも大きいため、相乗効果を証明している。
【0076】
組み合わせの効果は図でも証明される。
【0077】
図6は、本発明の製剤による皮膚発赤(デルタa)への影響を示す実施例IIの比較臨床データを示す。デルタa%は、製品を適用後の皮膚の発赤が以前の色と比較して増加する割合を表す。グラフは、ボランティア15人それぞれのこの変化を示す。理解できるように、上位3つの線グラフには、下記の3つの組み合わせを含み、塩化ストロンチウム無添加およびMSM無添加、10%MSMのみおよび5%塩化ストロンチウムのみでは、約20~25%の発赤の増加を示す一方、5%塩化ストロンチウムと10%MSMの組み合わせでは、平均で僅か約10~15%の増加を示す。
【0078】
図7は、本発明の製剤による全体的な皮膚色(デルタE)への影響を示す実施例IIの比較臨床データを示す。デルタEは、製品前と製品後の測定の間の全体的な肌の色調の差異を表す。グラフは、ボランティア15人それぞれのこの変化を示す。理解できるように、5%塩化ストロンチウムと10%MSMの組み合わせの全体的な肌の色調変化は、他の3つの組み合わせよりも少なかった。
【0079】
図8は、本発明の製剤による皮膚刺激レベルへの影響を示す実施例IIの比較臨床データを示す。グラフは、製品の適用10分後に測定された15人のボランティアそれぞれの刺激レベルを示す。理解できるように、5%塩化ストロンチウムと10%MSMの組み合わせの刺激レベルは、他の3つの組み合わせのレベルよりも低かった。
【0080】
図9は、表2の列1~3に示すデータの比較を示し、他の3つの組み合わせと比較して、5%塩化ストロンチウムと10%の組み合わせのデルa、デルタEおよび刺激の3つのパラメータすべてにおいて値が低いことを証明する。
【0081】
図10は、表2の列4~6に示すデータのベースライン(塩化ストロンチウム無添加およびMSM無添加)からの改善の比較を示し、他の2つの組み合わせと比較して、5%の塩化ストロンチウムと10%の組み合わせのデルタa、デルタE、および刺激の3つのパラメータすべてにおいて、ベースラインと比較した減少率が高いことを証明する。
【0082】
本明細書では本発明の特定の特徴を説明し記載したが、当業者には多くの修正、置換、変更、および同等物が思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨に含まれるこのようなすべての修正および変更を網羅することを意図すると理解されたい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10