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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】半導体装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8238 20060101AFI20240731BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 21/331 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 29/732 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 21/8228 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 27/082 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01L27/092 B
H01L29/72 P
H01L27/082 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020087606
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182593
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 翼
(72)【発明者】
【氏名】桑原 英司
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-150731(JP,A)
【文献】特開2014-207361(JP,A)
【文献】特開2005-236084(JP,A)
【文献】特開2011-129562(JP,A)
【文献】特開2001-035932(JP,A)
【文献】特開2006-286678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/8232-21/8238
H01L 21/8249
H01L 27/06
H01L 27/07
H01L 27/085-27/092
H01L 27/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを有する半導体基板を有する半導体装置であって
前記半導体基板は、前記第1面と前記第2面との間に配置された第一導電型の第1半導体領域と、
前記第1面と前記第1半導体領域との間に配置された第一導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の第1領域及び前記第2半導体領域の側部に配置された領域を有する、第二導電型の第3半導体領域と、
前記第1面と前記第1半導体領域との間に配置された第一導電型の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域と前記第1半導体領域との間の第2領域及び前記第4半導体領域の側部に配置された領域を有する、第二導電型の第5半導体領域と、を備え、
前記第3半導体領域と前記第5半導体領域とは分離されており、
前記第3半導体領域の前記第1領域及び前記第5半導体領域の前記第2領域の正味の第二導電型の不純物濃度よりも、前記第2半導体領域及び第4半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度の方が低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度は、前記第4半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度より低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
第1面と第2面とを有する半導体基板を有する半導体装置であって
前記半導体基板は、前記第1面と前記第2面との間に配置された第一導電型の第1半導体領域と、
前記第1面と前記第1半導体領域との間に配置された第一導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の第1領域及び前記第2半導体領域の側部に配置された領域を有する、第二導電型の第3半導体領域と、
前記第1面と前記第1半導体領域との間に配置された第一導電型の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域と前記第1半導体領域との間の第2領域及び前記第4半導体領域の側部に配置された領域を有する、第二導電型の第5半導体領域と、を備え、
前記第3半導体領域と前記第5半導体領域とは分離されており、
前記第2半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度は、前記第4半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度より低く、
前記第1面に対する平面視において、前記第2半導体領域には分離部が配され、前記第2半導体領域、前記分離部、及び前記第3半導体領域の前記第1領域を通る断面において、前記第2半導体領域は、前記分離部の互いに向かい合う2つの側面と接する2つの領域と、前記第3半導体領域の前記第1領域と前記分離部との間に配置された第3領域と、を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記第1面に対する平面視において、前記第2半導体領域には分離部が配され、
前記第2半導体領域、前記分離部、及び前記第3半導体領域の前記第1領域を通る断面において、前記第2半導体領域は、前記分離部の互いに向かい合う2つの側面と接する2つの領域と、前記第3半導体領域の前記第1領域と前記分離部との間に配置された第3領域と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2半導体領域の前記第3領域の正味の第一導電型の不純物濃度は、前記第3半導体領域の前記第1領域の正味の第二導電型の不純物濃度より低いことを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2半導体領域及び前記第4半導体領域には同電位が印加されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2半導体領域と第3半導体領域との間に印加される電圧と前記第4半導体領域と第5半導体領域との間に印加される電圧は異なることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第3半導体領域と前記第5半導体領域とは、それぞれが第一導電型の不純物濃度が異なる領域に配置されことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2半導体領域には第1トランジスタが配置され、前記第3半導体領域には第2トランジスタが配置され、前記第4半導体領域には第3トランジスタが配置され、前記第5半導体領域には第4トランジスタが配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1トランジスタと前記第3トランジスタの動作電圧は異なることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第3半導体領域と前記第5半導体領域とは隣接して配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体基板は、前記第3半導体領域と隣接する第一導電型の第6半導体領域を含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記半導体基板は、前記第5半導体領域と隣接する第一導電型の第7半導体領域を含むことを特徴とする請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第6半導体領域の第一導電型の不純物濃度は第7半導体領域の第一導電型の不純物濃度より低いことを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
バイポーラトランジスタのコレクタ、エミッタ及びベースの少なくともいずれかの電極が前記第2半導体領域と同じ不純物濃度の半導体領域に配置されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
半導体装置の製造方法であって、
第一導電型の第1半導体領域を有する半導体基板を準備する工程と、
前記半導体基板の第一導電型の第2半導体領域を形成すべき領域に不純物を注入する工程と
前記第2半導体領域の側部の第二導電型の第3半導体領域を形成すべき領域に不純物を注入する工程と、
前記半導体基板の第一導電型の第4半導体領域を形成すべき領域に不純物を注入する工程と、
前記第4半導体領域の側部の第二導電型の第5半導体領域を形成すべき領域に不純物を注入する工程と、
前記第一導電型の前記第2半導体領域及び前記第4半導体領域の下の第二導電型の半導体領域を形成すべき領域に不純物を注入する工程と、を含み、
前記第2半導体領域の下の第二導電型の半導体領域及び前記第4半導体領域の下の第二導電型の半導体領域の正味の第二導電型の不純物濃度よりも前記第2半導体領域及び前記第4半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度の方が低くなるように不純物の注入条件が設定されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度は、前記第4半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度より低くなるように不純物濃度の注入条件が設定されることを特徴とする請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
バイポーラトランジスタのコレクタ、エミッタ及びベースの少なくともいずれかの電極となる半導体領域を、前記第2半導体領域を形成するときに形成することを特徴とする請求項16又は17に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリプルウェル構造を備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリプルウェル構造を備えた半導体装置は広範囲に用いられている。例えば、基板の導電型がP型の場合、基板と同じ導電型のPウェルと基板との間に、基板と異なる導電型のNウェルを設ける。これにより、P型基板とPウェルとの間を電気的に分離することが可能となり、Pウェルに形成されたトランジスタの動作電位を独立に設定することができ、回路設計の自由度が向上する。
【0003】
特許文献1では、トリプルウェル構造を採用し、異なる電圧で動作するトランジスタを形成する製造方法が記載されている。特許文献1では、低電圧動作トランジスタのPウェルはNウェルの不純物濃度が薄い領域に形成されており、高電圧動作トランジスタ部のPウェルはNウェルの不純物濃度が濃い領域に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-68873
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トリプルウェル構造を採用すると、異なる複数の電圧で動作するトランジスタなどの素子を同一基板上に混載できる。複数の電圧で動作するトランジスタが配置された半導体領域には様々な電圧が印加されうる。このとき、特にPN接合となる部分に大きな逆バイアス電圧が掛かると空乏層が広がりリーク電流が発生しうる。本発明の目的は、消費電流を低減するのに有利な構造の半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置は、第1面と第2面とを有する半導体基板を有する半導体装置であって前記半導体基板は、前記第1面と前記第2面との間に配置された第一導電型の第1半導体領域と、前記第1面と前記第1半導体領域との間に配置された第一導電型の第2半導体領域と、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の第1領域及び前記第2半導体領域の側部に配置された領域を有する、第二導電型の第3半導体領域と、前記第1面と前記第1半導体領域との間に配置された第一導電型の第4半導体領域と、前記第4半導体領域と前記第1半導体領域との間の第2領域及び前記第4半導体領域の側部に配置された領域を有する、第二導電型の第5半導体領域と、を備え、前記第3半導体領域と前記第5半導体領域とは分離されており、前記第3半導体領域の前記第1領域及び前記第5半導体領域の前記第2領域の正味の第二導電型の不純物濃度よりも、前記第2半導体領域及び第4半導体領域の正味の第一導電型の不純物濃度の方が低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消費電流を低減するのに有利な構造の半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に関わる、半導体装置の構成を示す模式図。
図2】本発明の実施例に関わる、半導体装置の断面図。
図3】本発明の実施例に関わる、半導体装置の断面図。
図4】本発明の実施例に関わる、半導体装置の不純物濃度分布の断面図。
図5】本発明の実施例に関わる、半導体装置の断面図。
図6】本発明の実施例に関わる、半導体装置の不純物濃度分布の断面図。
図7】本発明の実施例に関わる、半導体装置の断面図。
図8】本発明の実施例に関わる、半導体装置の不純物濃度分布の断面図。
図9】本発明の実施例に関わる、半導体装置の断面図。
図10】本発明の実施例に関わる、半導体装置の不純物濃度分布の断面図。
図11】本発明の実施例に関わる、半導体装置の断面図。
図12】本発明の半導体装置の製造方法について説明する図。
図13】本発明の半導体装置の製造方法について説明する図。
図14】本発明の半導体装置の製造方法について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(構成例1)
本発明に関する半導体装置が適用された装置の一例として表示装置を図1に示す。画素アレイ100は二次元状に配列された複数の画素101を有し、各々の画素101は、垂直走査回路102から走査線103を介して制御信号が入力され、信号出力回路104から信号線105を介して輝度信号電圧が入力される。垂直走査回路102および信号出力回路104は制御回路106によって制御される。
【0011】
信号出力回路104は、水平走査回路107と、列DAC回路108と、列ドライバ回路109を有する。水平走査回路107によって走査され各列に入力される画像データを列DAC回路108によってアナログ信号電圧に変換し、列ドライバ回路109で前記アナログ信号電圧に応じた前記輝度信号電圧を出力する。
【0012】
図2は、本構成例における半導体装置に搭載される素子の断面図の一例を示す。トリプルウェル構造は、半導体基板110の半導体領域に形成される。
【0013】
半導体基板110は、シャロートレンチアイソレーション111(以下、STI)により、素子間の分離部を持つ。図2では多数のSTI111が素子間の分離に使用されていることを示している。この素子間の分離部は、シャロートレンチアイソレーションに限定されるものではなく、LOCOS(Local Oxidation Of Silicon)や、ディープトレンチアイソレーション(DTI)、ドーパントによる拡散分離であってもよい。
【0014】
本構成例において、第1導電型はP型、第2導電型はN型として説明するが、第1導電型がN型、第2導電型がP型であってもよい。ここでは半導体基板110は第1導電型とし、第1導電型をP型として説明をする。半導体基板110の内部には回路が、低電圧動作トランジスタ200、中電圧動作トランジスタ300、高電圧動作トランジスタ400、LV-MV素子分離部250、MV-HV素子分離部350などの素子によって構成される。これらが適宜配置されている。
【0015】
低電圧動作トランジスタ200には、低電圧P型トランジスタ(LV-PMOS)と、低電圧N型トランジスタ(LV-NMOS)等が含まれる。低電圧P型トランジスタ(LV-PMOS)は、P型の第1ソースドレイン201と、P型の第1ライトドープ202と、ゲート、ゲート酸化膜を有する。低電圧P型トランジスタ(LV-PMOS)はさらに、N型の第1半導体領域203(NWL1)と、N型の第1半導体領域203(NWL1)にウェル電位を供給するN型の第1ウェルコンタクト領域204を含む。N型の第1半導体領域203(NWL1)と、N型の深部第1半導体領域220(DNW1)とは電気的に導通している。したがってN型の第1ウェルコンタクト領域204を通じてN型の第1半導体領域203(NWL1)の電位を任意に設定することができる。
【0016】
低電圧N型トランジスタ(LV-NMOS)は、N型の第1ソースドレイン211と、N型の第1ライトドープ212と、ゲート、ゲート酸化膜を有する。低電圧N型トランジスタ(LV-NMOS)はさらに、P型の第1半導体領域213(PWL1)と、P型の第1半導体領域213のウェル電位を供給するP型の第1ウェルコンタクト領域214かを含む。P型の第1半導体領域213(PWL1)の側部には、N型の第1半導体領域203(NWL1)が配置されている。P型の第1半導体領域213(PWL1)の底部にはN型の深部第1半導体領域220(DNW1)が配置される。N型の第1半導体領域203(NWL1)とN型の深部第1半導体領域220(DNW1)とがP型の第1半導体領域213(PWL1)を囲んでおり、P型の第1半導体領域213(PWL1)はP型の半導体基板110とは電気的に分離されている。したがって、P型の第1半導体領域213(PWL1)、N型の第1半導体領域203(NWL1)と、P型の半導体基板110とはいずれも独立に電位を制御することが可能である。
【0017】
中電圧動作トランジスタ部300には、中電圧P型トランジスタ(MV-PMOS)と、中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)等が含まれる。中電圧P型トランジスタ(MV-PMOS)は、P型の第2ソースドレイン301と、P型の第2ライトドープ302と、ゲート、ゲート酸化膜を有する。中電圧P型トランジスタ(MV-PMOS)はさらに、N型の第2半導体領域303(NWL2)と、N型の第2半導体領域303のウェル電位を供給するN型の第2ウェルコンタクト領域304を含む。N型の第2半導体領域303(NWL2)と、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)とは電気的に導通している。したがってN型の第2ウェルコンタクト領域304を通じてN型の第2半導体領域303(NWL2)の電位を任意に設定することができる。
【0018】
中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)は、N型の第2ソースドレイン311と、N型の第2ライトドープ312と、ゲート、ゲート酸化膜を有する。中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)はさらに、P型の第2半導体領域313(PWL2)と、P型の第2半導体領域313にウェル電位を供給するP型の第2ウェルコンタクト領域314とを含む。P型の第2半導体領域313(PWL2)の側部にはN型の第2半導体領域303(NWL2)が配置されている。P型の第2半導体領域313(PWL2)の底部にはN型の深部第2半導体領域320(DNW2)が配置されている。N型の第2半導体領域303(NWL2)とN型の深部第2半導体領域320(DNW2)とがP型の第2半導体領域313(PWL2)を囲んでおり、P型の第2半導体領域313(PWL2)と半導体基板110とは電気的に分離されている。したがって、P型の第2半導体領域313(PWL2)、N型の第2半導体領域303(NWL2)と、半導体基板110とはいずれも独立に電位を制御することが可能である。
【0019】
高電圧動作トランジスタ部400は、高電圧P型トランジスタ(HV-PMOS)と、高電圧N型トランジスタ(HV-NMOS)等を含む。高電圧P型トランジスタ(HV-PMOS)には、さらにP型の第3ソースドレイン401と、P型の第3ライトドープ402と、ゲート、ゲート酸化膜、N型の第3半導体領域403(NWL3)が含まれる。高電圧N型トランジスタ(HV-NMOS)は、N型の第3ソースドレイン411と、N型の第3ライトドープ412と、ゲート、ゲート酸化膜とを有する。高電圧N型トランジスタ(HV-NMOS)はさらに、P型の第3半導体領域413(PWL3)と、P型の第3半導体領域413のウェル電位を供給するP型の第3ウェルコンタクト領域414とを含む。P型の第3半導体領域413(PWL3)は、P型の半導体基板110と同電位に設定してもよいし、異なる電位に設定してもよい。なお、P型の第3半導体領域413(PWL3)の底部に、N型の半導体領域を設けて半導体基板110とP型の第3半導体領域413(PWL3)との間をN型の半導体領域で分離してもよい。
【0020】
LV-MV素子分離部250、MV-HV素子分離部350は、P型の第1ウェルコンタクト領域214と、P型の第1半導体領域213(PWL1)らによって、動作電圧の異なる素子間を分離する。素子分離部の分離層は、P型の第1ウェルコンタクト領域214と、P型の第1半導体領域213(PWL1)に限られず、MV-HV素子分離部350の深部のみ、P型の第2半導体領域313(PWL2)によって、異電位の素子を分離してもよい。加えて、素子分離層については、素子の配置に応じて、低電圧―高電圧(LV-HV)素子間に分離部を設けてもよい。
【0021】
図3に、構成例における半導体装置に異なる3電圧で動作する素子を混載した場合の、各端子、半導体領域、基板への印加電圧の一例を図中に示す。以下に示す、LV、MVは、各端子への印加電圧の大小を示し、MV(正電位)>LV(正電位)の関係である。
【0022】
低電圧動作トランジスタ200において、LV-PMOS、LV-NMOSのP型の第1ソースドレイン201、N型の第1ソースドレイン211及び各ゲートにはLV(正電位),GNDの各電位が適宜印加されうる。N型の第1半導体領域203にはLV(正電位)、P型の第1半導体領域213にはGND、更にN型の深部第1半導体領域220にもLV(正電位)が印加され、半導体基板110には、-MV(負電位)を印加する。つまり、半導体基板110と、N型の第1半導体領域203と、P型の第1半導体領域213とはそれぞれ異なる電位が印加される。N型の第1半導体領域203と、P型の第1半導体領域213とは、半導体基板110と独立に電圧制御が可能である。半導体基板110の電位はGNDに限定されず、図3に例示する様に正・負のバイアス電圧によって固定することも可能である。
【0023】
中電圧動作トランジスタ300において、MV-PMOS、MV-NMOSのP型の第2ソースドレイン301、N型の第2ソースドレイン311及び各ゲートにはMV(正電位),GNDの各電位が適宜印加されうる。N型の第2半導体領域303にはMV(正電位)、P型の第2半導体領域313にはGND、更にN型の深部第1半導体領域320にもMV(正電位)が印加され、半導体基板110には、-MV(負電位)を印加する。つまり、半導体基板110と、N型の第2半導体領域303と、P型の第2半導体領域313とはそれぞれ異なる電位が印加される。N型の第2半導体領域303と、P型の第2半導体領域313とは、半導体基板110と独立に電圧制御が可能である。
【0024】
高電圧動作トランジスタ400において、HV-PMOS、HV-NMOSのP型の第3ソースドレイン401、N型の第3ソースドレイン411及び各ゲートにMV(正電位),-MV(負電位)の各電位が適宜印加されうる。N型の第3半導体領域403にはMV(正電位)、P型の第3半導体領域413には-MV(負電位)が印加され、半導体基板110にも-MV(負電位)が印加される。つまり、P型の半導体基板110と、P型の第3半導体領域413とは同電位となり、電源を共通化することが可能である。
【0025】
以上の構成により、半導体領域の電位を独立に設定できるので、トランジスタの動作電圧を独立に制御することが可能となり、回路設計の自由度が向上し、低消費電力な半導体装置を実現することができる。なお、これらの動作電圧の異なるトランジスタは、3電圧に限られるものでない。また、複数の動作電圧の素子を含む回路において、動作点を変更した種々のトランジスタを設けてもよく、趣旨を逸脱しない範囲で変形が可能である。
【0026】
図4(a)に、低電圧N型トランジスタ(LV-NMOS)部のX1-X2断面を、図4(b)中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)部のX1’-X2’断面におけるN型及び、P型の正味の不純物濃度のプロファイルの一例を示す。なお、以下特に断りがないときは、不純物濃度は正味の濃度である。図4(a)において、横軸は半導体基板の表面からの深さ、縦軸はP型の第1半導体領域213(PWL1)、N型の深部第1半導体領域220のSTI下の不純物の濃度分布を示す。深さXaをSTI底部の深さとしたとき、P型の第1半導体領域213の濃度ピークは深さXbにピークを持ち、N型の深部第1半導体領域220(DNW1)の濃度ピークは深さXcにピークを持つ。
【0027】
Xb及び、Xcにおける、不純物濃度を比較すると、P型の第1半導体領域213に比べ、N型の深部第1半導体領域220の方が深い位置に形成され、かつ、不純物濃度が高いことを示している。同様に、図4(b)において、横軸は半導体基板の表面からの深さ、縦軸はP型の第2半導体領域313(PWL2)、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)のSTI下の不純物の濃度分布を示す。P型の第1半導体領域313の濃度ピークは深さXb’にピークを持ち、N型の深部第1半導体領域320の濃度ピークは深さXc’にピークを持つ。Xb’及び、Xc’における、不純物濃度を比較すると、P型の第1半導体領域313に比べ、N型の深部第1半導体領域320の方が深い位置に形成され、かつ、不純物濃度が高いことを示している。
【0028】
図4(a)、図4(b)の関係から、本例では、第1、第2の深部半導体領域に比べ、P型の第1、第2半導体領域の方が、濃度が低くなっている。本願発明の特徴として、P型の半導体基板内にDNW1と、その内部にPWL1を形成するトリプルウェル構造に加え、P型の半導体基板内にDNW2と、その内部にPWL2を形成する2つのトリプルウェル構造を有する。2つのトリプルウェル構造は、上述したように、異なる動作電圧のトランジスタを含む。加えて、不純物濃度の関係が、N型の深部第1半導体領域220(DNW1)又はN型の深部第2半導体領域320(DNW2)より、P型の第1半導体領域213(PWL1)又はP型の第2半導体領域313(PWL2)の方が薄くなるという特徴がある。これらの濃度関係とする理由を次に示す。
【0029】
図5に、中電圧動作トランジスタ300を搭載した回路部の断面の一例を示す。P型の第2半導体領域313は、N型の第2半導体領域303と、N型の深部第2半導体領域320によって、半導体基板110から電気的に分離される。P型の第2半導体領域313にGND電位を、N型の第2半導体領域303にMV電位(正電位)を、N型の深部第2半導体領域320にもMV電位(正電位)を、半導体基板110にーMV電位(負電位)を加える。このように独立に素子のバイアス電位を制御できる。しかしながら、図5に示すように、N型の第2半導体領域303と、N型の深部第2半導体領域320との境界部でオーバーラップ量が小さい場合、この境界部において空乏層が伸びて、N型濃度が低い箇所ではリーク電流が発生してしうる。
【0030】
この原因は、半導体基板110と、N型の深部第2半導体領域320との間にPN接合の逆バイアスが掛かる事と、P型の第2半導体領域313とN型の深部第2半導体領域320との間にも同時にPN接合の逆バイアスが掛かる事にある。このためにN型の深部第2半導体領域320の不純物濃度が低い場合には、N型の深部第2半導体領域320側に空乏層が伸びる。このためにN型の深部第2半導体領域320のポテンシャル障壁が低下し、P型の第2半導体領域313と半導体基板110との間に容易に電流が流れてしまう。また、N型の第2半導体領域303にも空乏層が伸びて、P型の第2半導体領域313から半導体基板110にリーク電流が流れうる。
【0031】
上記のリーク電流を抑制するために、P型の第1半導体領域213や、P型の第2半導体領域313の第1導電型の不純物濃度よりもN型の深部第1半導体領域220、N型の深部第2半導体領域320の不純物濃度を高くする。つまり図4に示すような不純物濃度プロファイルとする。これにより逆バイアス印加時にN型の深部第1半導体領域220又は、N型の深部第2半導体領域320内に空乏層が伸びることを抑制し、P型基板110と表面のP型半導体領域との間のリーク電流を抑制できる。また不純物濃度の調整に加えて、N型の第2半導体領域303の底部とN型の深部第2半導体領域320とのオーバーラップを空乏層の影響が出ない程度にすることでもリーク電流の抑制ができる。オーバーラップの幅としては深部第2半導体領域320の不純物濃度が高い部分(図4のプロファイルで縦軸の不純物濃度が最大の80%になる幅。)の深さ方向の幅と同程度以上が望ましい。側部に配置される第2半導体領域303の底部の全体にわたって深部第2半導体領域320を配置してもよい。
【0032】
以上の不純物濃度の関係により、図5の様にN型の深部第2半導体領域320とN型の第2半導体領域303との境界部でオーバーラップ量が小さい場合においても、多様なバイアス電位に対して、リーク電流及を抑制できる。また適切な電圧を素子に与えることにより消費電流を抑制する半導体装置を実現することが可能となる。
【0033】
(構成例2)
次に、図6図7を参照しながら、本構成例について説明する。本構成例は、P型の第1半導体領域213と、P型の第2半導体領域313の不純物濃度を個別に設計することで、ウェルに流れるリーク電流を抑制する手法を示す。以下、構成例1と異なる構成を中心に説明する。
【0034】
図6に、図2における低電圧N型トランジスタ(LV-NMOS)部のX1-X2断面及び、中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)部のX1’-X2’断面におけるN型及び、P型不純物濃度のプロファイルの一例を示す。図6は、横軸が半導体基板の表面からの深さ、縦軸は不純物濃度を示す。ここではP型の第1半導体領域213(PWL1)、P型の第2半導体領域313(PWL2)、N型の深部第1半導体領域220(DNW1)、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)のSTI下の不純物濃度を示す。
【0035】
P型の第1半導体領域213(PWL1)及び、P型の第2半導体領域313(PWL2)は深さXbに濃度ピークを持つ。N型の深部第1半導体領域220(DNW1)、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)は深さXcに濃度ピークを持つ。Xb及び、Xcにおける、不純物濃度を比較すると、P型の第1半導体領域213(PWL1)に比べ、P型の第2半導体領域313(PWL2)の方がSTI底部での不純物濃度が高いことを示している。一方、N型の深部第1半導体領域220(DNW1)及び、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)の濃度や深さは同じである。
【0036】
P型の第1半導体領域213(PWL1)には低電圧動作トランジスタ200が搭載される。P型の第2半導体領域313(PWL2)には中電圧動作トランジスタ300が搭載される。図6はSTI底部でのP型の不純物濃度について、低電圧部よりも、中電圧部の方が高濃度であることを示している。このようにリーク電流抑制の観点から、低電圧部と中電圧部のP型半導体領域の濃度をコントロールする。以下に理由を示す。
【0037】
中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)300に所定のMV電位(正電位)を印加するまでに電圧を上げる過程での印加電位と、MV-NMOS300内の空乏層の振る舞いを図7に示す。図7(a)に低バイアス時、図7(b)に高バイアス時を示す。図7(a)において、N型の第2ソースドレイン311と、P型の第2半導体領域313とにGND電位が与えられる。N型の第2半導体領域303と、N型の深部第2半導体領域320とに、M/2V電位(正電位)が印加され、半導体基板110に、―MV電位(負電位)が印加されている。M/2V電位(正電位)とは、MV(正電位)の半分の電位を示している。上記のバイアスを印加したときのMV-NMOS300のP型の第2半導体領域313のPN接合界面に形成される空乏層を実線で示す。N型の深部第2半導体領域320とP型の第2半導体領域313の間と、N型の第2ソースドレイン311とP型の第2半導体領域313との間にそれぞれ空乏層がある。
【0038】
次に、図7(b)にN型の第2半導体領域303と、N型の深部第2半導体領域320とに印加する電位をMV電位(正電位)まで変化させたときの空乏層の変化を示す。MV電位(正電位)まで電位を上昇させると、P型の第2半導体領域313におけるN型の深部第2半導体領域320からの空乏層がバイアス電圧に応じ、基板表面方向に伸びて、STI111の底部まで空乏層が到達する。この時、MV-NMOS300内のP型の第2半導体領域313の電位が、STI111とSTI111底部の空乏層とによって阻害され対岸のP型の第2ウェルコンタクト領域314から供給できなくなる。この場合、MV-NMOS300下の半導体領域の電位が不定となり、PN接合間に生ずる内蔵電位が維持できなくなる。このためのP型の第2半導体領域313のポテンシャル障壁が低下して、N型の第2ソースドレイン311とN型の深部第2半導体領域320との間にリーク電流が流れてしまう。
【0039】
これらのメカニズムに基づいて、本発明のトリプルウェル構造において、動作電圧の高い、つまり、PN接合に大きな逆バイアスがかかるP型の第2半導体領域313においてはSTI111底部の空乏層の伸びを抑制するとよい。逆バイアス時の空乏層の伸びは、低濃度側つまり、P型の第2半導体領域313の濃度に強く依存することから、STI111底部のP型の第2半導体領域313の濃度を上昇させることが、中電圧動作トランジスタ300部のリーク電流抑制に有利である。一方、低電圧動作トランジスタ200が配置される、P型の第1半導体領域213においても、同様の現象が起こりうる。しかし、P型の第1半導体領域213にかかる実効的な逆バイアス電位が中電圧動作トランジスタ300に比べて低く、その結果、空乏層の伸びが抑えられ、リーク電流が発生しにくい。
【0040】
加えて、P型の第1半導体領域213の濃度を上げてしまうと、低電圧動作トランジスタ200のチャネル部分にドーパントが拡散し、トランジスタの動作点ばらつきに影響してしまう。以上のことから、STI111底部のP型の第2半導体領域313の濃度をP型の第1半導体領域213よりも高くすることで、リーク電流に起因する、消費電流の増加を抑制しながら、高性能な半導体装置を実現することが可能となる。
【0041】
(構成例3)
次に、図8を参照しながら、本構成例について説明する。本構成例は、大幅な工程を追加することなく、N型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320のキャリア濃度を個別に制御することで、構成例2と同様の効果を得ることができる。以下、構成例2と異なる構成を中心に説明する。
【0042】
図8に、図2における低電圧N型トランジスタ(LV-NMOS)部のX1-X2断面及び、中電圧N型トランジスタ(MV-NMOS)部のX1’-X2’断面におけるN型及び、P型不純物濃度のプロファイルの一例を示す。図8(a)は、横軸が半導体基板の表面からの深さ、縦軸はP型の第1半導体領域213(PWL1)、N型の深部第1半導体領域220(DNW1)のSTI下の不純物濃度を示す。図8(b)は、P型の第2半導体領域313(PWL2)と、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)のSTI下の不純物濃度を示す。
【0043】
図8(a)、(b)に示すように、深さXbにおける、P型不純物の濃度は、実施の形態2で示したように、P型の第1半導体領域213に比べ、P型の第2半導体領域313の方を高濃度とする。次に、深さXcにおける各ドーパントの濃度を比べてみる。N型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)のSTI下の不純物濃度は同じであるが、本例では、点線で示すようにP型の第2半導体領域313が深さXcにおいても導入されている点が異なる。
【0044】
以上の不純物濃度分布を踏まえて、N型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)のSTI下の活性化キャリア濃度分布を図8(c)に示す。深さXcにおいて、P型の第2半導体領域313の濃度が高いために、STI下の活性化キャリア濃度としては、N型の深部第2半導体領域320よりも、N型の深部第1半導体領域220の方が高くなる。つまり、N型の深部第2半導体領域320には、通常よりも、低ドナー濃度のN型の深部第2半導体領域320が形成される。構成例2で説明したように、PN接合に大きな逆バイアスがかかるP型の第2半導体領域313においてはSTI底部の空乏層の伸びを抑制するとよい。空乏層の抑制は、N型の深部第2半導体領域320のキャリア濃度を下げることでも同様の効果を得ることが出来る。また、深さXcにおける半導体領域の濃度調整については、P型の第2半導体領域313と同一の工程で深さXcに相当するエネルギーで、多段のイオン注入を実施することで実現できる。
【0045】
(構成例4)
次に、図9図10を参照しながら、本構成例について説明する。本構成例は、構成例1~3の変形例であり、異電位間の素子分離耐圧を向上する手法を示す。以下、構成例1~3と異なる構成を中心に説明する。
【0046】
図9に、図2のLV-MV素子分離部250にP型の深部第1半導体領域251を、MV-HV素子分離部350にP型の深部第2半導体領域351を追加した例を示す。構成例1では、N型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320との異電位の素子間は、半導体基板110のP型領域によって分離されていた。しかし、N型の深部第1半導体領域220及び、N型の深部第2半導体領域320の不純物濃度を高めた場合にはN型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320との間で、空乏層が伸び、リーク電流が生じる場合がありうる。低電圧動作トランジスタ200と、中電圧動作トランジスタ300の動作電圧によっても、N型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320との間で、空乏層が伸び、リーク電流が生じる場合がある。この場合、P型の深部第1半導体領域251、及び、P型の深部第2半導体領域351を形成することで、異電位間の素子の耐圧を向上させることが可能となる。
【0047】
図10に、図9における低電圧動作トランジスタ200と中電圧動作トランジスタ300とその境界に当たるLV-MV素子分離部250のX3-X4断面におけるN型及び、P型不純物濃度のプロファイルの一例を示す。横軸が半導体基板の横方向の距離、縦軸はN型の深部第1半導体領域220(DNW1)、N型の深部第2半導体領域320(DNW2)と、P型の深部第1半導体領域251(DPW1)の不純物濃度分布を示す。LV-MV素子分離部250のP型の深部第1半導体領域251の不純物濃度を低電圧動作トランジスタ200と中電圧動作トランジスタ300の深部N型半導体領域と同等とする。これによりN型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320との間でのリーク電流を抑制することが可能となる。同様に、横方向に隣接した、N型の第1半導体領域203とP型の第1半導体領域213での横方向の隣接部における不純物濃度は、耐圧上の観点から同等とするとよい。さらに同様に、N型の第2半導体領域303とP型の第2半導体領域313との間、N型の第3半導体領域403とP型の第3半導体領域413との間についても横方向の隣接部における不純物濃度を耐圧上の観点から同等とするとよい。
【0048】
また、本実施例においても、P型の深部第1半導体領域251の深さに限定するものではなく、P型の第1半導体領域213の領域において、STIの底部の深さに濃度ピークを持つように形成してもよい。また、素子分離層については、低電圧―高電圧(LV-HV)素子間や、中電圧―高電圧(MV-HV)に分離部を設けてもよく、種々の組み合わせが可能である。
【0049】
(構成例5)
次に、図11を参照しながら、本構成例について説明する。本構成例は、半導体装置内の一例として、列DAC回路108の参照電圧生成回路に搭載される、バイポーラトランジスタの製造方法を示す。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0050】
図11は、STI111分離型のPNPバイポーラトランジスタ501と、NPNバイポーラトランジスタ502の断面図である。PNPバイポーラトランジスタ501はP型のコレクタ及びエミッタ、N型のベースの各電極を持つ。NPNバイポーラトランジスタ502は、N型のコレクタ及びエミッタ、P型のベースの各電極を持つ。バイポーラトランジスタを構成する各電極及びP型の第1半導体領域213、N型の深部第1半導体領域220等の各構成要素は、低電圧動作トランジスタ200の構成要素と同一であり、同一マスクにて形成することが可能である。特に、N型の第1半導体領域203、P型の第1半導体領域213とのマスクを共有して一緒に形成しうるので、工程を増加させず、特性の良好なバイポーラトランジスタを形成することが可能となる。
【0051】
これは、構成例2で示した通り、STI111底部の濃度をP型の第2半導体領域313よりも、P型の第1半導体領域213の方が低濃度で形成することが有利であることにもよる。更に、P型の第1半導体領域213と横方向に隣接したN型の第1半導体領域203もP型の第1半導体領域213と同等の低濃度で形成できる。以上のことから、STI111底部における、バイポーラトランジスタのベース領域のマスクとなる、第1半導体領域203及び、P型の第1半導体領域213のベース濃度が低減される。このために直流電流増幅率の高いPNPバイポーラトランジスタ501と、NPNバイポーラトランジスタ502を形成することが可能となる。また、バイポーラトランジスタのベース領域のマスクのみ、第1半導体領域203及び、P型の第1半導体領域213と兼用せず、別マスクでイオン注入を実施することで、更に、低濃度のベース領域を形成してもよく、種々の変形が可能である。
【0052】
(半導体装置の製造方法)
以下、図12 (a)~(c)、図13(d)~(f)及び図14(g)を参照しながら半導体装置の製造方法を例示的に説明する。図12図13では、説明を簡単にするために、加工前の部材と加工後の部材に同一の符号を付している。
【0053】
図12(a)に示す工程では、半導体装置に、素子分離部STI111を形成する製造方法の一例を示す。半導体基板を準備する。例えば第1面と第2面を有し、第1導電型として例えばP型の半導体領域を有する半導体基板が準備される。ここでは図1に示したような半導体装置を想定する。画素アレイ100および、低電圧動作トランジスタ200、中電圧動作トランジスタ300、高電圧動作トランジスタ400等のSTI111を形成すべき領域にポリシリコンおよびシリコン窒化膜等の開口パターンを持った、ハードマスクを形成する。そののち、上記のハードマスクを用いて半導体基板110をエッチングすることによってトレンチを形成する。トレンチの深さは、例えば150~900nm程度であり、高電圧動作トランジスタ400に求められる分離耐圧に応じて、調整が可能である。
【0054】
更に、上記のトレンチの側面および底面に溝の内壁に沿って形成された絶縁膜を形成する。具体的には、酸化性ガス雰囲気中での熱酸化により、トレンチの側面および底面に絶縁膜を形成する。その後、溝の内壁に沿って形成された絶縁膜を覆うように溝に充填された絶縁体を形成する。溝に充填された絶縁体は、例えば、高密度プラズマCVD法により形成されるシリコン酸化膜である。溝に充填された絶縁体をエッチングとCMPの組み合わせにより平坦化する。その後、半導体基板110の表面に熱酸化膜を形成する。この熱酸化膜は、イオン注入のチャネリング抑制等の目的で設けられる。以上より、STI111が図12(a)に示されるように所定の箇所に形成される。
【0055】
なおここではSTI111は、画素アレイ100および、低電圧動作トランジスタ200、中電圧動作トランジスタ300、高電圧動作トランジスタ400等の領域に対して、一律の深さでSTI111を形成した例を示した。しかし、例えば、ポリシリコンやシリコン窒化膜等のハードマスクを、個々の領域に対して作り分けることで、領域ごとに、異なる深さを有するSTI111を形成してもよい。
【0056】
図12(b)に示す工程では、レジストにより所定の領域を保護した状態で、多段階のイオン注入によりP型の第1半導体領域213を形成する。多段階のイオン注入は、例えば、加速エネルギー10~2000keV、ドーズ量は1e11~5e13/cm2程度の範囲で調整できる。多段階のイオン注入の深さによってドーズ量を変更してもよく、STI111の底部よりも浅い領域は高濃度に、STI111の底部よりも深い領域は低濃度の半導体領域を形成してもよい。
【0057】
図12(c)に示す工程では、レジストにより所定の領域を保護した状態で、多段階のイオン注入によりN型の第1半導体領域203を形成する。多段階のイオン注入は、例えば、加速エネルギー10~2000keV、ドーズ量は1e11~5e13/cm2程度の範囲で調整できる。多段階のイオン注入の深さによってドーズ量を変更してもよく、STI111の底部よりも浅い領域は高濃度に、STI111の底部よりも深い領域は低濃度の半導体領域を形成してもよい。P型の第1半導体領域213と、N型の第1半導体領域203とは隣接する半導体領域である。隣接する領域については、特にSTI111の底部におけるP型の第1半導体領域213と、N型の第1半導体領域203との不純物濃度が同等となるように、イオン注入の条件を設定する。
【0058】
図13(d)に示す工程では、レジストにより所定の領域を保護した状態で、多段階のイオン注入によりP型の第2半導体領域313とP型の第3半導体領域413とを形成する。多段階のイオン注入は、例えば、加速エネルギー10~3000keV、ドーズ量は1e11~5e13/cm2程度の範囲で調整できる。多段階のイオン注入の深さによってドーズ量を変更してもよく、STI111の底部よりも浅い領域は高濃度に、STI111の底部よりも深い領域は低濃度の半導体領域を形成してもよい。なお、P型の第2半導体領域313とP型の第3半導体領域413とは、図13(d)で示したように、同一レジストマスクで形成する必要はなく、別のマスクで、イオン注入条件を変更してもよい。
【0059】
図13(e)に示す工程では、レジストにより所定の領域を保護した状態で、多段階のイオン注入によりN型の第2半導体領域303を形成する。多段階のイオン注入は、例えば、加速エネルギー10~3000keV、ドーズ量は1e11~5e13/cm2程度の範囲で調整できる。多段階のイオン注入の深さによってドーズ量を変更してもよく、STI111の底部よりも浅い領域は高濃度に、STI111の底部よりも深い領域は低濃度の半導体領域を形成してもよい。P型の第2半導体領域313と、N型の第2半導体領域303、又は、P型の第3半導体領域413と、N型の第3半導体領域403とは互いに隣接する半導体領域である。隣接する領域では、STI111の底部におけるP型の第2半導体領域313と、N型の第半導体領域303、又は、P型の第3半導体領域413と、N型の第3半導体領域403との不純物濃度が同等となるように、イオン注入の条件を設定することが望ましい。
【0060】
図13(f)に示す工程では、レジストにより所定の領域を保護した状態で、イオン注入によりN型の深部第1半導体領域220と、N型の深部第2半導体領域320とを形成する。イオン注入は、例えば、加速エネルギー10~4000keV、ドーズ量は5e11~1e14/cm2程度の範囲で調整できる。N型の深部第1半導体領域220とN型の深部第2半導体領域320とは、同一レジストマスクで形成する必要はなく、別のマスクで、イオン注入条件を変更してもよい。
【0061】
以上の、図12(b)~(c)、図13(d)~(f)の工程を実施したのち、これらのイオン注入したドーパントの活性化熱処理が順次実施される。なお、図12(b)~図13(f)の工程は、必ずしもこの順序で実施する必要はなく、図13(f)から図12(b)の間を逆の工程順でイオン注入を実施してもよい。この場合、高加速のイオン注入プロセスを先に実行することで、デバイスの表面に非晶質層が形成されにくく、イオン注入の制御性があがる。LV-MV素子分離部250や、MV-HV素子分離部350は、P型の第1半導体領域213と同じマスクで形成した例を示したが、別のマスクを兼用、又は、共用して形成してもよい。
【0062】
図14(g)に示すように、以降の工程では、半導体装置の各領域におけるゲート酸化膜、ゲートを形成したのち、各種N型、P型のライトドープ、HALOのイオン注入を実施する。この時、ゲート酸化膜の膜厚や、ゲート長、各種イオン注入の条件は、低電圧動作トランジスタ200、中電圧動作トランジスタ300、高電圧動作トランジスタ400の各領域において個々に変更してもよい。以降の工程は、半導体装置のトランジスタのサイドウォールが形成される。サイドウォールを形成したのち、低電圧動作トランジスタ200、中電圧動作トランジスタ300、高電圧動作トランジスタ400の各領域において、メタルシリサイドの領域を画定するための、酸化膜によるシリサイドプロテクションを形成してもよい。ソースドレイン領域へのイオン注入を実施し、注入後のドーパントの活性化熱処理等を順次実施し、メタルシリサイドを形成する。その後、コンタクトプラグを形成し、多層の配線層等が形成される。
【0063】
以上の製造方法・工程順序で必ずしも形成する必要はなく、様々な工程の入替、変更等が可能である。例えば、トランジスタのソースドレインのイオン注入を実施後に、図12(b)~図14(g)の半導体領域のイオン注入を実行しても良い。その場合は、ゲートのポリシリコン越しに深さの異なる半導体領域が形成可能となる。
【0064】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0065】
110 半導体基板、111 シャロートレンチアイソレーション(STI)、200 低電圧動作トランジスタ、201 P型の第1ソースドレイン、202 P型の第1ライトドープ、203 N型の第1半導体領域(NWL1)、204 N型の第1ウェルコンタクト領域、211 N型の第1ソースドレイン、212 N型の第1ライトドープ、213 P型の第1半導体領域(PWL1)、214 P型の第1ウェルコンタクト領域、220 N型の深部第1半導体領域(DNW1)、250 LV-MV素子分離部、300 中電圧動作トランジスタ、301 P型の第2ソースドレイン、302 P型の第2ライトドープ、303 N型の第2半導体領域(NWL2)、304 N型の第2ウェルコンタクト領域、311 N型の第2ソースドレイン、312 N型の第2ライトドープ、313 P型の第2半導体領域(PWL2)、314 P型の第2ウェルコンタクト領域、320 N型の深部第2半導体領域(DNW2)、350 MV-HV素子分離部、400 高電圧動作トランジスタ、401 P型の第3ソースドレイン、402 P型の第3ライトドープ、403 N型の第3半導体領域(NWL3)、411 N型の第3ソースドレイン、412 N型の第3ライトドープ、413 P型の第3半導体領域(PWL3)、414 P型の第3ウェルコンタクト領域
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