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特許7530216放射線撮像システム、および、放射線撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】放射線撮像システム、および、放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240731BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020098882
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191391
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸一
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-138829(JP,A)
【文献】特開2020-038228(JP,A)
【文献】特開2018-175125(JP,A)
【文献】特開2017-202034(JP,A)
【文献】特開2020-088765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0366755(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、前記照射停止信号を受信した場合、前記照射停止信号の受信に応じて前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項2】
前記放射線撮像装置は、前記第1時間が経過後、前記照射停止信号を受信するまで第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像システム。
【請求項3】
前記放射線撮像装置は、前記第1時間が経過後、かつ、前記複数の画素に対して予め設定された蓄積時間が経過するまでの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像システム。
【請求項4】
前記放射線撮像装置は、前記蓄積時間が経過するまでの期間において、
前記照射停止信号を受信した場合、前記照射停止信号の受信に応じて前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始し、
前記照射停止信号を受信しない場合、前記蓄積時間が経過した後に、前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像システム。
【請求項5】
前記検出部は、放射線の照射の停止を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記第1時間の経過後に、前記蓄積時間の経過、および、前記検出部による放射線の照射の停止の検出のうち先に起きる事象までの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信することを特徴とする請求項3に記載の放射線撮像システム。
【請求項6】
前記放射線撮像装置は、前記事象が起きるまでの期間において、
前記照射停止信号を受信した場合、前記照射停止信号の受信に応じて前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始し、
前記照射停止信号を受信しない場合、前記事象が起きた後に、前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする請求項に記載の放射線撮像システム。
【請求項7】
前記検出部は、放射線の照射の停止を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記第1時間が経過後、かつ、前記検出部が放射線の照射の停止を検出するまでの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像システム。
【請求項8】
前記放射線撮像装置は、前記検出部が放射線の照射の停止を検出するまでの期間において、
前記照射停止信号を受信した場合、前記照射停止信号の受信に応じて前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始し、
前記照射停止信号を受信しない場合、前記検出部が放射線の照射の停止を検出した後に、前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする請求項に記載の放射線撮像システム。
【請求項9】
前記第1時間と前記第2時間とが、同じ長さであることを特徴とする請求項2乃至の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項10】
前記検出部は、放射線の照射の開始を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから、前記検出部が放射線の照射の開始を検出するまでの時間に基づいて、前記第1時間を制御することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項11】
前記検出部は、放射線の照射の開始を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから、前記検出部が放射線の照射の開始を検出するまでの時間に基づいて、前記第1時間および前記第2時間を制御することを特徴とする請求項2乃至の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項12】
前記放射線撮像装置は、予め計測された前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置との間の通信時間に基づいて、前記第1時間を制御することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項13】
前記放射線撮像装置は、予め計測された前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置との間の通信時間に基づいて、前記第1時間および前記第2時間を制御することを特徴とする請求項2乃至の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項14】
前記検出部は、放射線の照射の開始を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから第3時間が経過するまでに、前記検出部が放射線の照射の開始を検出しない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信することを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項15】
前記無線通信が、無線LANを用いた通信であることを特徴とする請求項1乃至14の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項16】
前記放射線撮像装置は、前記複数の画素が配された撮像領域を含み、
前記検出部が、前記撮像領域に配されることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項17】
放射線画像データを取得するための複数の画素と、放射線の照射中に露出制御を行うための検出部と、を含む放射線撮像装置であって、
無線通信によって外部装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記外部装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記外部装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、前記照射停止信号を受信した場合、前記照射停止信号の受信に応じて前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項18】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、
前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記第1時間が経過後、かつ、前記複数の画素に対して予め設定された蓄積時間が経過するまでの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記照射停止信号の受信の有無に関わらず、前記蓄積時間が経過した後に、前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項19】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、
前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記第1時間が経過後、かつ、前記複数の画素に対して予め設定された蓄積時間が経過するまでの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記検出部は、放射線の照射の停止を検出し、
前記放射線撮像装置は、
前記第1時間の経過後に、前記蓄積時間の経過、および、前記検出部による放射線の照射の停止の検出のうち先に起きる事象までの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記照射停止信号の受信の有無に関わらず、前記事象が起きた後に、前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項20】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記検出部は、放射線の照射の停止を検出し、
前記放射線撮像装置は、
前記第1時間が経過後、かつ、前記検出部が放射線の照射の停止を検出するまでの期間において、前記照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記照射停止信号の受信の有無に関わらず、前記検出部が放射線の照射の停止を検出した後に、前記放射線画像データを前記複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項21】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記検出部は、放射線の照射の開始を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから、前記検出部が放射線の照射の開始を検出するまでの時間に基づいて、前記第1時間を制御することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項22】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、
前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記第1時間が経過後、前記照射停止信号を受信するまで第2時間ごとに前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記検出部は、放射線の照射の開始を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから、前記検出部が放射線の照射の開始を検出するまでの時間に基づいて、前記第1時間および前記第2時間を制御することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項23】
放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、
前記放射線撮像装置と前記放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、前記放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、
前記検出部は、放射線の照射の開始を検出し、
前記放射線撮像装置は、前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから第3時間が経過するまでに、前記検出部が放射線の照射の開始を検出しない場合、再び前記放射線制御装置に放射線の照射の開始を指示する信号を送信することを特徴とする放射線撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像システム、および、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療画像診断や非破壊検査において、半導体材料によって構成される平面検出器(フラットパネルディテクタ:FPD)を用いた放射線撮像装置が広く使用されている。こうした放射線撮像装置において、放射線撮像装置に入射する放射線をモニタすることが知られている。放射線量をリアルタイムで検出することによって、放射線の照射の開始や終了の検出や、放射線の照射中に入射した放射線の積算線量を把握し自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)を行うことが可能となる。特許文献1には、放射線画像撮影装置が、放射線の照射中に、検出した放射線の線量を示す線量情報を所定の送信タイミングごとにインターフェース装置に送信する放射線画像撮影システムが示されている。インターフェース装置は、無線通信の遅延によって生じる誤差を減じるように、線量情報を調整することによって、無線通信の遅延の影響を抑制した露出制御が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-090863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信の環境は、常に安定した環境ではなく、他の無線通信機器やマイクロ波治療器などの医療機器の動作に伴い発生するノイズによって大きく変化し、無線通信の接続が断続的に切断される場合や、通信速度が低下する場合などが発生しうる。特許文献1の放射線画像撮影システムにおいて、露出制御の機能を使用中に無線通信の接続が不安定になると、複数回送信される線量情報のうち一部の線量情報や、個々の線量情報のうち一部の情報がインターフェース装置に到達しない場合が考えられる。インターフェース装置に線量情報が到達しない場合、露出制御の精度が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、無線通信を用いて露出制御用の信号の授受を行う放射線撮像システム、および、放射線撮像装置において、通信の不具合による露出制御の精度の低下を抑制するのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態に係る放射線撮像システムは、放射線画像データを取得するための複数の画素および放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む放射線撮像装置と、放射線撮像装置に放射線を照射する放射線源を制御する放射線制御装置と、を含む放射線撮像システムであって、放射線撮像装置と放射線制御装置とは、無線通信によって露出制御に関わる信号を伝送し、放射線撮像装置は、放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信し、照射停止信号を受信した場合、照射停止信号の受信に応じて放射線画像データを複数の画素から読み出す読出動作を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記手段によって、無線通信を用いて露出制御用の信号の授受を行う放射線撮像システム、および、放射線撮像装置において、通信の不具合による露出制御の精度の低下を抑制するのに有利な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る放射線撮像システムの構成例を示す図。
図2図1の放射線撮像システムに配される放射線撮像装置の構成例を示す図。
図3図2の放射線撮像装置の制御部の構成例を示す図。
図4図1の放射線撮像システムの撮影動作を示すタイミング図。
図5図1の放射線撮像システムの撮影動作を示すタイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、本発明における放射線には、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線なども含みうる。
【0011】
図1~5を参照して、本実施形態による放射線撮像システムの構成、および、動作について説明する。図1は、本実施形態における放射線撮像システム10の構成例を示す図である。本実施形態において、放射線撮像システム10は、放射線を被写体に照射し、放射線画像の撮像を行う放射線室1、および、放射線室1の近傍に設置される制御室2に配されている。
【0012】
放射線室1には、放射線撮像システム10のうち、放射線撮像装置300、無線アクセスポイント320、インターフェースボックス323、放射線制御装置324、放射線源325が配されている。また、放射線室1には、エントリー装置322、および、各構成間を接続するケーブルが配されている。制御室2には、放射線撮像システム10のうち、主制御装置310、放射線照射スイッチ311、表示装置313、入力装置314、院内LAN315が配されている。
【0013】
放射線撮像装置300は、バッテリなどで構成される電源制御部301、無線通信ユニット302、スイッチ303を含む。放射線撮像装置300は、被写体306を透過した放射線を検出して、放射線画像データを生成する。また、放射線撮像装置300は、放射線の照射中に露出制御を行うための検出部を含む。
【0014】
無線アクセスポイント320は、IEEE802.11に代表される無線LANなどの無線通信を行うためのアクセスポイントであり、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302と無線通信を行う。放射線撮像システム10において、無線アクセスポイント320は、放射線撮像装置300と、主制御装置310および放射線制御装置324と、の通信を中継するために用いられうる。
【0015】
エントリー装置322は、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302と通信を行う。インターフェースボックス323は、無線アクセスポイント320、放射線制御装置324、主制御装置310のそれぞれの間で通信ができるように制御する。また、インターフェースボックス323は不図示のケーブルを介しての放射線撮像装置300への電源供給機能や有線通信インターフェースなどを備えていてもよい。インターフェースボックス323は、放射線制御装置324と専用のインターフェースケーブルで接続されていてもよい。インターフェースボックス323は、放射線制御装置324側がとりうるインターフェースにより、イーサネットのような汎用の通信インターフェースで接続してもよい。インターフェースボックス323は、個別のスイッチングHUB、放射線制御装置324のインターフェースボックス、電源ボックスなど複数の装置で置き換えてもよい。
【0016】
放射線制御装置324は、放射線源325を制御し被写体306に放射線を照射する。放射線制御装置324は、所定の条件に基づいて放射線を照射するように放射線源325を制御する放射線源制御部3241と、放射線撮像装置300からの照射の開始または停止を示す信号によって放射線源325の放射線の発生を制御する発生制御部3242と、を含む。図1に示される構成では、放射線源制御部3241と発生制御部3242とは、一体の構成で示されているが、放射線源制御部3241と発生制御部3242とは、それぞれ別体で構成されていてもよい。また、放射線制御装置324は、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302と無線通信を行うための無線用ユニット326を備える。無線用ユニット326は、放射線制御装置324に組み込まれたものであってもよいし、図1に示されるように、放射線制御装置324とは別体であってもよい。
【0017】
主制御装置310は、放射線撮像装置300および放射線制御装置324を制御する。主制御装置310は、インターフェースボックス323を介して放射線制御装置324(発生制御部3242)、放射線撮像装置300と通信し、放射線撮像システム10の全体を統括制御しうる。
【0018】
放射線照射スイッチ311は、操作者312の操作によって、放射線照射のタイミングを入力する。入力装置314は、操作者312からの指示の入力を行う装置であり、キーボードやタッチパネルなどの種々の入力デバイスが用いられる。表示装置313は、画像処理された放射線画像データやGUIの表示を行う装置であり、ディスプレイなどが用いられる。院内LAN315は、院内の基幹ネットワークである。例えば、病院情報システム(Hospital Information Systems)や放射線科情報システム(Radiology Information Systems)でありうる。本実施形態において、放射線撮像システム10をローカルネットワークで構築し、院内LAN315と切り離したシステム構築例を示しているが、放射線撮像システム10は、院内LAN315に直接接続されたネットワークで構築されていてもよい。
【0019】
次に、放射線撮像システム10の動作について説明する。まず、操作者312は、放射線撮像システム10への放射線撮像装置300の登録作業を行う。操作者312によって放射線撮像装置300のスイッチ303が押下されると、エントリー装置322を介した放射線撮像装置300と主制御装置310との間の通信が開始される。
【0020】
主制御装置310は、エントリー装置322を介して、無線アクセスポイント320を介した通信を行うための情報を放射線撮像装置300に送信する。つまり、エントリー装置322を介した通信は、無線アクセスポイント320を介した通信を行うための設定情報を伝送する。設定情報とは、無線アクセスポイント320を介した通信が、無線LANを用いた通信を行う場合、例えば、IEEE802.11nなどの通信方式、物理チャネル、ESSID、暗号鍵などや、放射線撮像装置300に設定するIPアドレスなどの情報を含む。また、設定情報は、無線用ユニット326を介して放射線撮像装置300と放射線制御装置324との間の通信を行うための情報を含んでいてもよい。また、放射線撮像装置300は、エントリー装置322を介した通信を用いて、放射線撮像装置300の装置情報を主制御装置310に送信してもよい。装置情報は、例えば、放射線撮像装置300を特定するためのユニークなID、MACアドレス、実施可能な撮影モード、使用履歴、故障状態などの情報を含む。これらの装置情報を元に、放射線撮像装置300は、放射線撮像システム10へ登録されうる。例えば、放射線撮像システム10とは別の放射線撮像システムにおいて放射線撮像装置300を使用する場合、都度、上述の登録作業を実施する。
【0021】
登録作業のトリガの機能を果たすスイッチ303は、必ずしも放射線撮像装置300に備わっている必要はなく、エントリー装置322に備わっていてもよい。また、主制御装置310が表示装置313に表示するGUI上に備えるようにしてもよい。
【0022】
撮像動作によって生成される放射線画像データは、非圧縮のRAWデータである場合が多く、データ量は数~数十メガバイトにもなることがある。放射線画像データは、放射線撮像装置300から主制御装置310に送信され、表示装置313に表示されるため、大容量のデータを高速に送信する必要性がある。このため、無線アクセスポイント320を介した無線通信には、無線LANなどの高速な通信が用いられうる。
【0023】
放射線撮像装置300は、主制御装置310から受信した設定情報に従って、無線通信ユニット302の構成を設定する。これによって、放射線撮像装置300は、無線アクセスポイント320と無線通信ユニット302との間での無線通信の接続を確立する。
【0024】
無線通信ユニット302は、複数の種類の無線通信に対応していてもよい。例えば、無線通信ユニット302は、無線アクセスポイント320と無線LANを用いて通信を行い、エントリー装置322や無線用ユニット326と無線LAN以外の通信方法で無線通信を行ってもよい。例えば、無線通信ユニット302は、Bluetooth(登録商標)や赤外線を用いた通信をエントリー装置322や無線用ユニット326との間で行ってもよい。
【0025】
本実施形態において、上述のように、放射線撮像装置300と主制御装置310との無線アクセスポイント320を介した通信は、エントリー装置322を介した通信を用いて確立されるが、これに限られることはない。例えば、直接、放射線撮像装置300と主制御装置310とが、無線アクセスポイント320を介して設定情報や装置情報の伝送を行ってもよい。また、放射線撮像装置300と放射線制御装置324との通信は、無線通信ユニット302および無線用ユニット326を介して行われるのに限られることはない。例えば、放射線撮像装置300と放射線制御装置324との通信は、インターフェースボックス323および無線アクセスポイント320を介して行われてもよい。放射線撮像装置300、主制御装置310および放射線制御装置324の間の通信のすべてが、インターフェースボックス323を介して行われる場合、放射線撮像システム10にエントリー装置322や無線用ユニット326が配されていなくてもよい。
【0026】
次いで、操作者312は、主制御装置310に被写体306のID、名前、生年月日などの被写体情報や被写体306の撮影部位を入力する。撮影部位を入力後、操作者312は、被写体306の姿勢、および、放射線撮像装置300を固定する。撮影準備が完了すると、操作者312は、放射線照射スイッチ311を押下する。放射線照射スイッチ311が押下されると、放射線源325から被写体306に向かい放射線が照射されうる。
【0027】
放射線撮像装置300は、放射線制御装置324(発生制御部3242)と無線通信を行い、放射線照射の開始や終了などの制御を行いうる。被写体306に照射された放射線は、被写体306を透過して放射線撮像装置300に入射する。放射線撮像装置300は、例えば、入射した放射線を可視光に変換し、光電変換素子で放射線画像信号として検出する。
【0028】
放射線撮像装置300は、光電変換素子を駆動して放射線画像信号を読み出し、AD変換回路でアナログ信号をデジタル信号に変換してデジタル放射線画像データを得る。放射線撮像装置300は、取得した放射線画像データを、無線通信を介して主制御装置310に伝送する。本実施形態において、放射線撮像装置300と主制御装置310とは、無線通信を介して放射線画像データの伝送を行う例を示しているが、これに限られることはない。インターフェースボックス323は、放射線撮像装置300と接続するケーブルなどを備え、放射線画像データが、有線通信で放射線撮像装置300から主制御装置310に伝送されてもよい。
【0029】
主制御装置310は、受信した放射線画像データを画像処理する。主制御装置310は、画像処理した放射線画像データに基づく放射線画像を表示装置313に表示する。このように主制御装置310は、画像処理装置および表示制御装置として機能してもよい。以上が、操作者312が放射線撮像システム10へ放射線撮像装置300を登録してから、表示装置313に被写体306の放射線画像が表示されるまでの放射線撮像システムの動作である。
【0030】
ここで、図2を用いて、放射線撮像装置300の構成について説明する。図2に示されるように、放射線撮像装置300は、放射線検出器100を有する。放射線検出器100は、照射された放射線を検出する機能を備える。放射線検出器100は、複数の行および複数の列を構成するように配された、放射線画像データを取得するための複数の画素を有する。以下の説明では、放射線検出器100における複数の画素が配置された領域を撮像領域とする。複数の画素は、放射線画像を取得するための複数の撮像画素101と、放射線の照射をモニタするための検知画素121と、を含む。放射線の照射中に露出制御を行うための検出部として、検知画素121が使用される。つまり、露出制御を行うための検出部が、撮像領域(放射線検出器100)に配される。
【0031】
撮像画素101は、放射線を電気信号に変換する変換素子102と、列信号線106と変換素子102との間に配されたスイッチ103と、を含む。検知画素121は、放射線を電気信号に変換する変換素子122と、検知信号線125と変換素子122との間に配されたスイッチ123と、を含む。検知画素121は、複数の撮像画素101の一部と同じ列に配される。
【0032】
本実施形態において、変換素子102および変換素子122は、放射線を光に変換するシンチレータおよび光を電気信号に変換する光電変換素子とで構成される。シンチレータは、例えば、撮像領域を覆うようにシート状に形成され、複数の画素によって共有される。また、変換素子102および変換素子122は、放射線を直接に電気信号に変換する変換素子で構成されていてもよい。
【0033】
スイッチ103およびスイッチ123は、例えば、非晶質シリコンまたは多結晶シリコンなどの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含む。本実施形態において、活性領域には、多結晶シリコンが用いられうる。
【0034】
放射線撮像装置300は、複数の列信号線106および複数の駆動線104を含む。それぞれの列信号線106は、撮像領域における複数の列のうちの1つの列に対応する。それぞれの駆動線104は、撮像領域における複数の行のうちの1つの行に対応する。駆動線104は、駆動用回路221によって駆動される。
【0035】
変換素子102の2つの電極のうち一方は、スイッチ103の主電極の一方に接続され、変換素子102の2つの電極のうち他方は、バイアス線108に接続される。ここで、バイアス線108は、列方向に沿って延在し、列方向に配された複数の変換素子102の電極に共通に接続される。
【0036】
バイアス線108には、素子用電源回路226からバイアス電圧Vsが供給される。電源制御部301は、バッテリ、DC/DCコンバータなどを含み構成される。電源制御部301は、素子用電源回路226を含み、アナログ回路用電源と駆動制御や無線通信などを行うためのデジタル回路用電源とを生成する。
【0037】
1つの列を構成する複数の撮像画素101のスイッチ103の主電極の他方は、列信号線106に接続される。1つの行を構成する複数の撮像画素101のスイッチ103の制御電極は、共通の駆動線104に接続される。複数の列信号線106は、読出用回路222に接続される。ここで、読出用回路222は、検知部132、マルチプレクサ134、アナログデジタル変換器(AD変換器)136を含む。
【0038】
複数の列信号線106のそれぞれは、読出用回路222に配された複数の検知部132のうち対応する検知部132に接続される。ここで、1つの列信号線106は、1つの検知部132に対応する。検知部132は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ134は、複数の検知部132を所定の順番で選択し、選択した検知部132からの信号をAD変換器136に供給する。AD変換器136は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0039】
変換素子122の2つの電極のうち一方は、スイッチ123の主電極の一方に接続され、変換素子122の2つの電極のうち他方は、バイアス線108に接続される。スイッチ123の主電極の他方は、検知信号線125に接続される。スイッチ123の制御電極は、駆動線124に電気的に接続される。
【0040】
放射線撮像装置300には、1つの検知信号線125が配されていてもよいし、図2に示されるように、複数の検知信号線125が配されていてもよい。1つの検知信号線125には、1または複数の検知画素121が接続される。駆動線124は、駆動用回路241によって駆動される。1つの駆動線124には、1または複数の検知画素121が接続される。検知信号線125は、読出用回路242に接続される。ここで、読出用回路242は、検知部142、マルチプレクサ144、AD変換器146を含む。
【0041】
複数の検知信号線125のそれぞれは、読出用回路242の複数の検知部142のうち対応する検知部142に接続される。ここで、1つの検知信号線125は、1つの検知部142に対応する。検知部142は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ144は、複数の検知部142を所定の順番で選択し、選択した検知部142からの信号をAD変換器146に供給する。AD変換器146は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。読出用回路242(AD変換器146)の出力は、信号処理部224に供給され、信号処理部224によって処理される。信号処理部224は、読出用回路242(AD変換器146)の出力に基づいて、放射線撮像装置300に対する放射線の照射を示す情報を出力する。具体的には、信号処理部224は、例えば、放射線撮像装置300に対する放射線の照射を検知したり、放射線の照射量および/または積算照射量を演算し、露出制御に用いたりする。
【0042】
制御部225は、信号処理部224からの情報や主制御装置310からの制御コマンドに基づいて、駆動用回路221、駆動用回路241および読出用回路222、242など、放射線撮像装置300の各構成を制御する。
【0043】
次に、放射線撮像装置300を用いた放射線撮像システム10の露出制御の動作について説明する。操作者312は、主制御装置310に、線量、最大照射時間、管電流、管電圧、放射線をモニタすべき領域である放射線検知領域(ROI)、部位情報などを入力する。主制御装置310は、入力された放射線の照射条件、放射線検知領域(ROI)、部位情報などを、放射線撮像装置300および放射線制御装置324(発生制御部3242)へ送信する。撮影準備が完了し、操作者312が放射線照射スイッチ311を押下すると、放射線が照射される。照射された放射線は、被写体306を透過して放射線撮像装置300に入射する。放射線撮像装置300は、放射線検知領域(ROI)に入射した放射線を検知画素121で検出し、信号処理部224にて検出した線量(到達線量)の積算値である積算照射量を演算する。ここで、制御部225は、信号処理部224からの積算照射量情報と操作者312が入力した部位情報や撮影条件などとから適正線量を算出し、放射線の照射を停止させるタイミングを決定する。
【0044】
放射線撮像装置300は、決定された放射線の照射を停止するタイミングに基づき、無線通信ユニット302および無線用ユニット326を介して放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信する。放射線制御装置324(発生制御部3242)は、通知された放射線の照射を停止するタイミングに基づき、放射線源325からの放射線の照射を停止させる。本実施形態において、放射線撮像装置300が、放射線の照射量を算出し、放射線の照射の停止のタイミングを通知しているが、これに限られることはない。放射線撮像装置300が、検出結果として所定の時間ごとの到達線量を放射線制御装置324送信し、放射線制御装置324(発生制御部3242)が、到達線量の積算値を算出するような構成であってもよい。
【0045】
放射線撮像装置300で決定した放射線の照射を停止するタイミングに対して、放射線撮像装置300から放射線制御装置324へ伝送される露出制御に関する信号は、遅延を抑制することが必要である。放射線撮像システム10における無線通信環境において、様々な理由で電磁的なノイズが存在する場合があり、これらは無線の通信を阻害する要因となりえる。また、例えば、無線LANを使用した通信システムにおいて、別の無線LAN通信システムのチャネル設定ポリシーが合わない場合、お互いの使用する無線周波数帯が干渉して通信を阻害する場合がある。このような影響を受けると、放射線の照射を停止するタイミングを指示する露出制御の信号が、放射線制御装置324に想定するタイミングで到達しない可能性がある。
【0046】
図3は、放射線撮像装置300の制御部225の構成例を示す図である。図3に示されるように、制御部225は、駆動制御部400、CPU401、メモリ402、照射情報処理部403、画像データ制御部404を含む。制御部225は、さらに、通信制御部405、スイッチ303、無線通信ユニット302を含む。通信制御部405は、無線通信ユニット302を介して、放射線制御装置324などの外部装置と無線通信が可能であり、放射線制御装置324などとの間で各種情報の送受信が可能である。
【0047】
駆動制御部400は、信号処理部224からの情報や主制御装置310から受信したコマンドに基づいて、駆動用回路221、駆動用回路241、読出用回路222を制御する。CPU401は、メモリ402に格納されたプログラムや各種のデータを用いて、放射線撮像装置300全体の制御を行う。メモリ402は、例えば、CPU401が処理を実行する際に用いるプログラムや各種のデータを保存する。また、メモリ402には、CPU401の処理により得られた各種のデータや放射線画像データが保存されうる。無線通信ユニット302は、操作者312がスイッチ303を押下すると、エントリー装置322との無線通信を開始し、上述の設定情報などを受け取る。受け取った情報はメモリ402に保存され、適宜、上述のように、無線アクセスポイント320と通信を行うための無線通信ユニット302の設定に用いられる。
【0048】
照射情報処理部403は、信号処理部224からの情報や駆動制御部400からの情報に基づき、放射線制御装置324との無線通信を制御する。照射情報処理部403と放射線制御装置324とは、放射線制御装置324の制御に関する情報(例えば、放射線の照射開始、停止の通知、放射線の照射量、積算照射量など。)の伝送を無線通信ユニット302および無線用ユニット326を介して行う。照射情報処理部403と放射線制御装置324とは、放射線制御装置324の制御に関する情報の伝送を無線通信ユニット302、無線アクセスポイント320およびインターフェースボックス323を介して行ってもよい。画像データ制御部404は、読出用回路222からの画像データをメモリ402に保存すると共に、主制御装置310との無線通信を制御する。画像データ制御部404と主制御装置310とは、放射線画像データや制御に関する情報(例えば、制御コマンドなど。)の伝送を無線通信ユニット302、無線アクセスポイント320およびインターフェースボックス323を介して行う。
【0049】
図4は、本実施形態の動作を示すタイミング図である。図中の実線矢印が、無線通信ユニット302および無線アクセスポイント320を介した通信、破線矢印が無線通信ユニット302およびエントリー装置322、または、無線通信ユニット302および無線用ユニット326を介した通信を表している。操作者312が放射線撮像装置300のスイッチ303を押下することによって、放射線撮像装置300の放射線撮像システム10への登録作業(エントリー動作)が開始される。放射線撮像装置300と主制御装置310との間で、上述のように無線通信ユニット302およびエントリー装置322を介して設定情報や装置情報が伝送される。これによって、放射線撮像装置300と主制御装置310との間の無線通信ユニット302および無線アクセスポイント320を介した通信を確立する。また、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302と放射線制御装置324の無線用ユニット326との間の通信を確立する。
【0050】
操作者312は、撮像を開始する際に、主制御装置310、表示装置313、入力装置314を操作して、GUI上のスイッチを選択・押下するなどして撮影を開始する指示を出す。この指示は、無線アクセスポイント320と無線通信ユニット302とを経由し放射線撮像装置300へ、レディ状態への遷移指示のコマンドとして送信される。レディ状態とは、電源制御部301から放射線検出器100、駆動用回路221、駆動用回路241などに電源を供給し、準備駆動などを実施して、放射線撮像装置300が撮像を実施できる状態を指す。ここで、放射線撮像装置300は、主制御装置310から受信したコマンドに対して適宜、応答(ACK)を返す。放射線撮像装置300がレディ状態になったことは、表示装置313のGUIや放射線撮像装置300に配された不図示の表示部などによって操作者312へ通知される。
【0051】
操作者312は、被写体306および放射線撮像装置300のセッティングを終えた後、放射線照射スイッチ311を押下する。放射線照射スイッチ311の押下に応答し、放射線制御装置324は、インターフェースボックス323、無線アクセスポイント320を介して、照射要求を放射線撮像装置300へ送信する。放射線撮像装置300は、照射要求を受けると撮像準備動作を行う。撮像準備動作が完了すると、放射線撮像装置300は、無線アクセスポイント320または無線用ユニット326を介して照射許可信号を放射線制御装置324へ送信し、撮像領域に配された撮像画素101は蓄積状態へ遷移し、また、検出部である検知画素121を用いた露出制御動作が開始される。放射線撮像装置300は、状態遷移が発生したことを主制御装置310へ通知する。
【0052】
放射線制御装置324は、照射許可信号を受けて放射線源325に放射線の照射を開始させる。放射線撮像装置300は、上述の露出制御を行い、放射線の照射の停止を指示する信号を、無線用ユニット326を介して放射線制御装置324へ送信する。放射線制御装置324は、照射の停止を指示する信号を受信すると、放射線源325に放射線の照射を停止させ、無線用ユニット326を介して放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号(ACK)を放射線撮像装置300へ送信する。照射停止信号に応じて、放射線撮像装置300は、撮像画素101での蓄積動作および検知画素121を用いた露出制御を終了し、撮像画素101に蓄積された電荷を読み出して放射線画像データを生成する。その後、放射線撮像装置300は、無線通信ユニット302および無線アクセスポイント320を介して放射線画像データを主制御装置310へ送信する。ここで、放射線の照射の停止を指示する信号および照射停止信号は、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302と放射線制御装置324の無線用ユニット326とを介して伝送されるとして説明したが、これに限られることはない。放射線の照射の停止を指示する信号および照射停止信号は、無線通信ユニット302、無線アクセスポイント320およびインターフェースボックス323を介して伝送されてもよい。
【0053】
ここで、放射線撮像装置300から放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信したときに、放射線撮像装置300と放射線制御装置324との間の通信に不具合が発生した場合、以下のような不具合が生じてしまうこととなる。放射線の照射の停止を指示する信号の到達が遅れてしまった場合、余分な放射線が被写体306へ照射されてしまう。また、信号が到達しない場合、露出制御の機能が動作せず、放射線の照射停止と撮像画素101に蓄積された電荷の読み出しのタイミングが合わず、画像にアーチファクトが発生する可能性がある。また、露出制御の機能が動作しないことによって、適正量よりも多くの放射線が放射線撮像装置300に入力することによって、得られる放射線画像が白飛びするなど、画質が低下してしまう可能性がある。
【0054】
また、放射線撮像装置300と放射線制御装置324との間の通信の不具合によって、放射線制御装置から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合が考えられる。換言すると、放射線撮像装置300から放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号は正しく届いたが、放射線制御装置324から放射線撮像装置300に照射停止信号が到達しない場合である。この場合、放射線の照射の停止後に、余分な待ち時間が発生してしまい、撮像画素101に蓄積された電荷の読み出しが開始できず、撮像画素101に余分なバックグラウンドノイズが蓄積されてしまい、得られる放射線画像の画質が低下してしまう可能性がある。
【0055】
このような問題を抑制するために、露出制御に関わる放射線撮像装置300から放射線制御装置324への放射線の照射の停止を指示する信号および放射線制御装置324から放射線撮像装置300への照射停止信号は、確実に伝わる必要性がある。図5を用いて、放射線撮像装置300と放射線制御装置324との間で、無線通信によって露出制御に関わる信号を、より確実に伝送する方法について説明する。
【0056】
上述のように、放射線制御装置324から照射停止信号(照射停止ACK)が到達することで、放射線撮像装置300は、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始する。しかしながら、照射停止信号が受信できない場合、放射線撮像装置300は、読出動作を通常の動作において開始できない。このため、放射線撮像装置300は、放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから第1時間が経過するまでに、放射線制御装置324から放射線の照射を停止したことを示す照射停止信号を受信できない場合、再び放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信する。図5に示されるように、S101において、放射線撮像装置300は、放射線の照射の停止を指示する信号を放射線制御装置324に送信する。次いで、放射線制御装置324から照射停止信号が受信できた場合(S102のYES)、放射線撮像装置300は、読出動作を開始する。放射線制御装置324から照射停止信号が受信できない場合、所定の時間経過後に、放射線撮像装置300は、再度、放射線の照射の停止を指示する信号を放射線制御装置324に送信する(S102のNO、S103のYES)。例えば、放射線撮像装置300は、照射停止信号が受信できない場合、10ミリ秒ごとに放射線の照射の停止を指示する信号の再送信を行う。
【0057】
例えば、放射線撮像装置300は、第1時間が経過後、照射停止信号を受信するまでに第2時間ごとに放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信してもよい。しかしながら、通信の状況によっては、放射線撮像装置300が照射停止信号を受信できない可能性も考えられる。そこで、例えば、所定の期間が経過した場合、放射線撮像装置300は、放射線画像の撮像をタイムアウトし、読出動作を開始してもよい(S104のNO)。例えば、放射線撮像装置300は、第1時間が経過後、かつ、複数の画素(撮像画素101)に対して予め設定された蓄積時間が経過するまでの期間において、照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信してもよい。
【0058】
この場合、放射線撮像装置300は、蓄積時間が経過するまでの期間において、照射停止信号を受信した場合、照射停止信号の受信に応じて放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。一方、放射線撮像装置300は、照射停止信号を受信しない場合、蓄積時間が経過した後に、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。また、例えば、放射線撮像装置300は、照射停止信号の受信の有無に関わらず、蓄積時間が経過した後に、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。
【0059】
ここで、最初に放射線の照射の停止を指示する信号を送信してから照射停止信号を受信するまでに待機する第1時間と、その後、放射線の照射の停止を指示する信号の再送信を繰り返す第2時間とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2時間は、一定であってもよいし、放射線の照射の停止を指示する信号の送信を繰り返す間に変化してもよい。また、例えば、検知画素121を用いた検出部は、放射線の照射の開始を検出し、放射線撮像装置300は、放射線制御装置324に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから、検出部が放射線の照射の開始を検出するまでの時間に基づいて、第1時間を制御してもよい。同様に、放射線撮像装置300は、放射線制御装置324に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから、検出部が放射線の照射の開始を検出するまでの時間に基づいて、第2時間を制御してもよい。また、例えば、放射線撮像装置300は、放射線画像の撮像前に予め計測された放射線撮像装置300と放射線制御装置324との間の通信時間に基づいて、第1時間や第2時間を制御してもよい。例えば、放射線撮像装置300と放射線制御装置324との間の通信時間を基づいて、無線通信の環境が悪い場合(通信時間が長い場合)、上述の第2時間は、無線通信の環境が良い場合よりも短くしてもよい。この無線通信の環境が悪い場合、上述の第1時間は、無線通信の環境が良い場合よりも長くしてもよいし、短くしてもよい。また、例えば、無線通信の環境が悪い場合、放射線撮像装置300は、放射線の照射の停止を指示する信号の再送信を行わず、蓄積時間が経過するまで待機してもよい。
【0060】
上述では、露出制御のタイムアウトを蓄積時間に基づいて設定することを説明したが、これに限られることはない。検知画素121を用いた検出部が、放射線の照射の停止を検出可能な場合、放射線撮像装置300は、第1時間が経過後、かつ、検出部が放射線の照射の停止を検出するまでの期間において、照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに放射線制御装置324に放射線の照射の停止を指示する信号を送信してもよい。この場合、放射線撮像装置300は、検出部が放射線の照射の停止を検出するまでの期間において、照射停止信号を受信した場合、照射停止信号の受信に応じて放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。一方、放射線撮像装置300は、照射停止信号を受信しない場合、検出部が放射線の照射の停止を検出した後に、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。また、例えば、放射線撮像装置300は、照射停止信号の受信の有無に関わらず、検出部が放射線の照射の停止を検出した後に、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。
【0061】
さらに、蓄積時間と検出部による放射線の照射の停止を検出とを組み合わせてもよい。つまり、放射線撮像装置300は、第1時間の経過後に、蓄積時間の経過、および、検出部による放射線の照射の停止の検出のうち先に起きる事象までの期間において、照射停止信号を受信するまで、第2時間ごとに放射線制御装置に放射線の照射の停止を指示する信号を送信してもよい。この場合、放射線撮像装置300は、上述の事象が起きるまでの期間において、照射停止信号を受信した場合、照射停止信号の受信に応じて放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。一方、放射線撮像装置300は、照射停止信号を受信しない場合、上述の事象が起きた後に、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。また、例えば、放射線撮像装置300は、照射停止信号の受信の有無に関わらず、上述の事象が起きた後に、放射線画像データを複数の画素(撮像画素101)から読み出す読出動作を開始してもよい。
【0062】
本実施形態において、放射線撮像装置300は、放射線制御装置324から照射停止信号を受信できない場合、放射線の照射の停止を指示する信号を放射線制御装置324に再送信する。言い換えると、放射線制御装置324などの外部装置から照射停止信号を少なくとも受信するまでは、放射線の照射の停止を指示する信号を外部装置に再送信する。これによって、無線通信を用いて露出制御用の信号の授受を行う放射線撮像システム10において、通信に不具合があった場合であっても、露出制御の精度の低下を抑制することが可能となる。これによって、常に状況が変化しうる無線通信の環境において、露出制御を用いた撮像をより安定して行うことが可能となる。結果として、被写体306に対する不要な被爆を低減することができ、また、得られる放射線画像の画質の低下が抑制される。つまり、使い勝手のよい放射線撮像装置300および放射線撮像システム10が実現できる。
【0063】
以上、放射線撮像装置300から放射線制御装置324への放射線の照射の停止を指示する信号、および、放射線制御装置324から放射線撮像装置300への照射停止信号が届かなかった場合について記載した。一方、放射線撮像装置300から放射線制御装置324への照射許可信号も同様に、放射線制御装置324へ到達しなかった場合、放射線源325から放射線が照射されず、例えば、放射線撮像装置300の蓄積時間のタイムアウトまで待つことになってしまう。そこで、例えば、検知画素121を用いた検出部は、放射線の照射の開始を検出し、放射線撮像装置300は、放射線制御装置324に放射線の照射の開始を指示する信号を送信した後、かつ、放射線の照射の開始を指示する信号を送信してから第3時間が経過するまでに、検出部が放射線の照射の開始を検出しない場合、再び放射線制御装置324に放射線の照射の開始を指示する信号を送信してもよい。これによって、無線通信の環境が悪化し撮像が実行されない場合を抑制でき、より有用な放射線撮像装置300および放射線撮像システム10が実現できる。
【0064】
放射線画像の撮像後、放射線画像データの送信は、データ全体を一度に送ってもよい。また、まず、取得した放射線画像データのうち一部のデータを間引いた間引きデータを送信し、主制御装置310で画像処理を施し、表示装置313にできるだけ早く画像を表示してもよい。また、無線通信の環境が悪化し放射線画像データの送信ができない場合、または、非常に時間がかかる場合などに備え、放射線画像データは、放射線撮像装置300内部の不揮発のメモリ402に保持されてもよい。
【0065】
登録作業(エントリー動作)によって放射線撮像装置300に設定された、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302の設定は、放射線撮像装置300内部のメモリ402に保持されてもよい。これによって、放射線撮像装置300をオフ状態とした後に、再度、オン状態にした際に、改めての登録作業(エントリー動作)は不要となる。
【0066】
放射線撮像システム10の他に、放射線撮像システム10と同様のシステムが複数ある病院などの施設で放射線撮像装置300運用する場合、放射線撮像装置300を放射線撮像システム10とは別の放射線撮像システムへ持ち込んで使用する場合がある。別のシステムへ持ち込んだ場合には、改めて別のシステム内で放射線撮像装置300を登録する作業(エントリー動作)が実施される。これによって、新しいシステム内において、放射線撮像装置300の無線通信ユニット302を介した通信を確立させるための情報が取得できる。無線通信を確立させるための情報は、放射線撮像装置300のメモリ402に、1つだけ保持するように登録作業(エントリー動作)をするたびに上書きするようにしてもよいし、複数を保持しておくようにしてもよい。
【0067】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0068】
10:放射線撮像システム、300:放射線撮像装置、324:放射線制御装置、325:放射線源
図1
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