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特許7530291接合構造、半導体装置および接合構造の形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】接合構造、半導体装置および接合構造の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240731BHJP
   H01L 21/58 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240731BHJP
【FI】
H01L21/52 A
H01L21/52 C
H01L21/58
H01L25/04 C
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020541140
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033221
(87)【国際公開番号】W WO2020050077
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018167642
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】富士 和則
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129352(JP,A)
【文献】特開2015-144228(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209191(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向において互いに離間した素子主面および素子裏面を有し、前記素子主面に第1電極および第2電極が形成され且つ前記素子裏面に裏面電極が形成された半導体素子と、
前記素子主面と同じ方向を向く搭載面を有し、前記搭載面と前記素子裏面とが対向した姿勢で前記半導体素子を支持する第1導電体と、
前記第1電極に電気的に接続される第2導電体と、
前記搭載面に配置された絶縁層上に配置されつつ、前記第1電極と電気的に接続され、且つ前記第1導電体と電気的に絶縁されつつ、前記第2導電体と電気的に接続された第3導電体と、
前記絶縁層上に配置されつつ、前記第2電極と電気的に接続され、且つ前記第1導電体、前記第2導電体および前記第3導電体と電気的に絶縁された第4導電体と、
前記半導体素子を前記第1導電体に接合し、かつ、前記裏面電極と前記第1導電体とを導通させる焼結金属層と、
を備えており、
前記搭載面は、粗化処理された粗化領域を含んでおり、
前記焼結金属層は、前記粗化領域の上に形成されており、
前記半導体素子は、前記第1方向の一方の第1端縁が前記素子主面に繋がり、かつ、前記第1方向の他方の第2端縁が前記素子裏面に繋がる素子側面を、さらに有しており、
前記焼結金属層は、前記素子側面のうち前記素子裏面に繋がる側の一部を覆うフィレット部を含んでおり、
前記フィレット部は、前記第1方向に見て、前記第2端縁に沿って前記半導体素子を囲んでいる、
接合構造。
【請求項2】
前記粗化領域は、前記第1方向に見て、前記搭載面のうち、前記絶縁層が配置される領域に重ならない、
請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記粗化領域には、前記搭載面から前記第1方向に窪んだ窪みが形成されている、
請求項1または請求項2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記窪みは、前記第1方向に見て、各々が前記第1方向に直交する第2方向に延び、かつ、前記第1方向に直交しかつ前記第2方向に交差する第3方向に配列された複数の第1線状溝を含んでいる、
請求項3に記載の接合構造。
【請求項5】
前記窪みは、前記第1方向に見て、各々が前記第3方向に延び、かつ、前記第2方向に配列された複数の第2線状溝をさらに含んでおり、
前記複数の第2線状溝は、前記第1方向に見て、前記複数の第1線状溝に交差する、
請求項4に記載の接合構造。
【請求項6】
前記複数の第1線状溝の各々は、前記第1方向に見て、前記第2方向に沿う直線状であり、
前記複数の第2線状溝の各々は、前記第1方向に見て、前記第3方向に沿う直線状である、
請求項5に記載の接合構造。
【請求項7】
前記複数の第1線状溝と前記複数の第2線状溝とは、前記第1方向に見て、略直交している、
請求項6に記載の接合構造。
【請求項8】
前記粗化領域は、前記第1方向に見て、前記第1線状溝および前記第2線状溝の両方に重なる交差部と、前記第1方向に見て、前記第1線状溝あるいは前記第2線状溝のいずれか一方にのみ重なる非交差部とを含んでおり、
前記交差部の前記第1方向の寸法は、前記非交差部の前記第1方向の寸法よりも大きい、
請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項9】
前記窪みの表面には、前記粗化領域において前記窪みによって形成される凹凸よりも、微細な凹凸が形成されている、
請求項3ないし請求項8のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項10】
前記粗化領域は、表面に銀めっきされている、
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項11】
前記焼結金属層は、焼結銀から構成される、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項12】
前記焼結金属層は、複数の孔を有する多孔質である、
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項13】
前記第1導電体は、銅を含む素材から構成される、
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項14】
前記半導体素子は、炭化ケイ素を構成材料とするトランジスタまたはダイオードである、
請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載の接合構造。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の接合構造を備える半導体装置であって、
前記半導体素子としての第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子を支持する、前記第1導電体としての第1導電部材と、
前記第1スイッチング素子と前記第1導電部材とを導通接合する、前記焼結金属層としての第1接合層と、
前記第1スイッチング素子、前記第1導電部材の少なくとも一部、および、前記第1接合層を覆う封止樹脂と、
を備えており、
前記第1導電部材には、前記粗化領域としての第1領域を含んでおり、
前記第1領域は、前記第1方向に見て、前記第1接合層に重なる、
半導体装置。
【請求項16】
前記第1スイッチング素子に導通する第1端子と、
前記第1スイッチング素子に導通し、前記第2導電体としての第2端子と、を備えており、
前記第1端子は、前記第1導電部材に接合されており、前記第1導電部材を介して前記第1スイッチング素子に導通する、
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1端子と前記第1導電部材とには、レーザ溶接による溶接痕が形成されている、請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記溶接痕は、前記第1端子から前記第1導電部材に跨っており、
前記溶接痕の前記第1方向の前記他方の端部は、前記第1導電部材の前記第1方向の途中に位置する、
請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第1端子は、前記封止樹脂から露出した第1端子部を含んでおり、
前記第2端子は、前記封止樹脂から露出した第2端子部を含んでいる、
請求項16ないし請求項18のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1端子は、前記第1端子部に繋がり且つ前記封止樹脂に覆われた第1パッド部を含み、
前記第2端子は、前記第2端子部に繋がり且つ前記封止樹脂に覆われた第2パッド部を含み、
前記第1パッド部および前記第2パッド部の少なくとも一方には、前記粗化領域と異なる端子粗化領域が形成されており、
前記端子粗化領域は、前記封止樹脂に接する、
請求項19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記第1スイッチング素子と異なる、前記半導体素子としての第2スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子を支持する第2導電部材と、
前記第2スイッチング素子と前記第2導電部材とを導通接合する、前記焼結金属層としての第2接合層と、をさらに備えており、
前記封止樹脂は、前記第2スイッチング素子、前記第2導電部材の少なくとも一部、および、前記第2接合層を、さらに覆っており、
前記第2導電部材には、前記粗化領域としての第2領域を含んでおり、
前記第2領域は、前記第1方向に見て、前記第2接合層に重なる、
請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記第2スイッチング素子に導通する第3端子をさらに備えており、
前記第3端子は、前記第2導電部材に接合されており、前記第2導電部材を介して前記第2スイッチング素子に導通し、
前記第2スイッチング素子は、前記第1導電部材に導通している、
請求項21に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記第3端子は、前記封止樹脂から露出した第3端子部を含んでいる、
請求項22に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記第1方向において、前記第2端子部と前記第3端子部との間に挟まれた絶縁部材をさらに備えており、
前記絶縁部材の一部は、前記第1方向に見て、前記第2端子部および前記第3端子部に重なる、
請求項23に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記第1方向に見て、前記第2端子部の周縁および前記第3端子部の周縁は、前記絶縁部材の周縁よりも内方に配置されている、
請求項24に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記第1スイッチング素子と前記第2導電部材とを電気的に接続する板状接続部材をさらに備える、
請求項21ないし請求項25のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項27】
第1方向において互いに離間した素子主面および素子裏面を有し、前記素子主面に第1電極および第2電極が形成され且つ前記素子裏面に裏面電極が形成された半導体素子と、
前記素子主面と同じ方向を向く搭載面を有し、前記搭載面と前記素子裏面とが対向した姿勢で前記半導体素子を支持する第1導電体と、
前記第1電極に電気的に接続される第2導電体と、
前記搭載面に配置された絶縁層上に配置されつつ、前記第1電極と電気的に接続され、且つ前記第1導電体と電気的に絶縁されつつ、前記第2導電体と電気的に接続された第3導電体と、
前記絶縁層上に配置されつつ、前記第2電極と電気的に接続され、且つ前記第1導電体、前記第2導電体および前記第3導電体と電気的に絶縁された第4導電体と、
前記半導体素子を前記第1導電体に接合し、かつ、前記裏面電極と前記第1導電体とを導通させる焼結金属層と、
を備え、
前記半導体素子は、前記第1方向の一方の第1端縁が前記素子主面に繋がり、かつ、前記第1方向の他方の第2端縁が前記素子裏面に繋がる素子側面を、さらに有しており、
前記焼結金属層は、前記素子側面のうち前記素子裏面に繋がる側の一部を覆うフィレット部を含んでおり、
前記フィレット部は、前記第1方向に見て、前記第2端縁に沿って前記半導体素子を囲んでいる、接合構造の形成方法であって、
前記第1導電体を準備する工程と、
前記搭載面の少なくとも一部に、粗化領域を形成する粗化処理工程と、
前記粗化領域の少なくとも一部に焼結用金属ペースト材を塗布するペースト塗布工程と、
前記素子裏面を前記搭載面に向かい合わせて、前記焼結用金属ペースト材の上に前記半導体素子を載置するマウント工程と、
熱処理によって、前記焼結用金属ペースト材を前記焼結金属層にする焼結処理工程と、を有する接合構造の形成方法。
【請求項28】
前記粗化処理工程では、前記搭載面にレーザ光を照射することにより、前記粗化領域を形成する、
請求項27に記載の接合構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体素子と導電体とを備える接合構造、当該接合構造を備えた半導体装置、および、接合構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を導電体に接合する際の接合材として、使い勝手の良さなどから鉛はんだが用いられていた。しかしながら、人体保護および環境負荷軽減の観点から、鉛を用いない接合材に置き換えられつつある。たとえば、特許文献1には、接合材として焼結金属を用いた半導体装置が開示されている。特許文献1に記載の半導体装置は、半導体素子(Siチップ)、導電体(リードフレーム)、接合材(焼結層)、および、封止樹脂(エポキシ樹脂)を備えている。導電体は、たとえば銅を含む金属からなり、ダイパッド部を含んでいる。半導体素子は、接合材により、ダイパッド部に導通接合されている。接合材は、たとえば焼結銀から構成される。封止樹脂は、半導体素子、導電体の一部、および、接合材を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-249257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置において、半導体素子への通電により、半導体素子が発熱する。この発熱によって、半導体素子と導電体との熱膨張率の差に起因する熱応力が接合材にかかる。はんだは、焼結金属よりも比較的延性が高いため、接合材としてはんだを用いた場合、当該はんだが上記熱応力を緩和させる緩衝材として機能する。一方、接合材として焼結金属を用いた場合、緩衝材としての効果があまり得られず、熱応力による負荷が大きくなる。その結果、接合材と半導体素子との接合界面、および、接合材と導電体との接合界面において、接合材が剥離したり、接合材に破壊(たとえば亀裂)が生じたりすることがあった。この剥離や破壊は、半導体装置における導通性および放熱性の低下を招く。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、熱に対する信頼性の向上を図った接合構造を提供することにある。また、その接合構造を備える半導体装置、および、接合構造の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される接合構造は、第1方向において互いに離間した素子主面および素子裏面を有し、前記素子裏面に裏面電極が形成された半導体素子と、前記素子主面と同じ方向を向く搭載面を有し、前記搭載面と前記素子裏面とが対向した姿勢で前記半導体素子を支持する導電体と、前記半導体素子を前記導電体に接合し、かつ、前記裏面電極と前記導電体とを導通させる焼結金属層と、を備えており、前記搭載面は、粗化処理された粗化領域を含んでおり、前記焼結金属層は、前記粗化領域の上に形成されている。
【0007】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記粗化領域には、前記搭載面から前記第1方向に窪んだ窪みが形成されている。
【0008】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記窪みは、前記第1方向に見て、各々が前記第1方向に直交する第2方向に延び、かつ、前記第1方向に直交しかつ前記第2方向に交差する第3方向に配列された複数の第1線状溝を含んでいる。
【0009】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記窪みは、前記第1方向に見て、各々が前記第3方向に延び、かつ、前記第2方向に配列された複数の第2線状溝をさらに含んでおり、前記複数の第2線状溝は、前記第1方向に見て、前記複数の第1線状溝に交差する。
【0010】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記複数の第1線状溝の各々は、前記第1方向に見て、前記第2方向に沿う直線状であり、前記複数の第2線状溝の各々は、前記第1方向に見て、前記第3方向に沿う直線状である。
【0011】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記複数の第1線状溝と前記複数の第2線状溝とは、前記第1方向に見て、略直交している。
【0012】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記粗化領域は、前記第1方向に見て、前記第1線状溝および前記第2線状溝の両方に重なる交差部と、前記第1方向に見て、前記第1線状溝あるいは前記第2線状溝のいずれか一方にのみ重なる非交差部とを含んでおり、前記交差部の前記第1方向の寸法は、前記非交差部の前記第1方向の寸法よりも大きい。
【0013】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記窪みの表面には、前記粗化領域において前記窪みによって形成される凹凸よりも、微細な凹凸が形成されている。
【0014】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記粗化領域は、表面に銀めっきされている。
【0015】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記半導体素子は、前記第1方向の一方の端縁が前記素子主面に繋がり、かつ、前記第1方向の他方の端縁が前記素子裏面に繋がる素子側面を、さらに有しており、前記焼結金属層は、前記素子側面のうち前記素子裏面に繋がる側の一部を覆うフィレット部を含んでいる。
【0016】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記焼結金属層は、焼結銀から構成される。
【0017】
前記接合構造の好ましい実施の形態においては、前記導電体は、銅を含む素材から構成される。
【0018】
本開示の第2の側面によって提供される半導体装置は、前記第1の側面によって提供される接合構造を備える半導体装置であって、前記半導体素子としての第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子を支持する、前記導電体としての第1導電部材と、前記第1スイッチング素子と前記第1導電部材とを導通接合する、前記焼結金属層としての第1接合層と、前記第1スイッチング素子、前記第1導電部材の少なくとも一部、および、前記第1接合層を覆う封止樹脂と、を備えており、前記第1導電部材には、前記粗化領域としての第1領域を含んでおり、前記第1領域は、前記第1方向に見て、前記第1接合層に重なる。
【0019】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、各々が、前記第1スイッチング素子に導通する第1端子および第2端子をさらに備えており、前記第1端子は、前記第1導電部材に接合されており、前記第1導電部材を介して前記第1スイッチング素子に導通する。
【0020】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1端子は、前記封止樹脂から露出した第1端子部を含んでおり、前記第2端子は、前記封止樹脂から露出した第2端子部を含んでいる。
【0021】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1スイッチング素子と異なる、前記半導体素子としての第2スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子を支持する、前記導電体としての第2導電部材と、前記第2スイッチング素子と前記第2導電部材とを導通接合する、前記焼結金属層としての第2接合層と、をさらに備えており、前記封止樹脂は、前記第2スイッチング素子、前記第2導電部材の少なくとも一部、および、前記第2接合層を、さらに覆っており、前記第2導電部材には、前記粗化領域としての第2領域を含んでおり、前記第2領域は、前記第1方向に見て、前記第2接合層に重なる。
【0022】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第2スイッチング素子に導通する第3端子をさらに備えており、前記第3端子は、前記第2導電部材に接合されており、前記第2導電部材を介して前記第2スイッチング素子に導通し、前記第2スイッチング素子は、前記第1導電部材に導通している。
【0023】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第3端子は、前記封止樹脂から露出した第3端子部を含んでいる。
【0024】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1方向において、前記第2端子部と前記第3端子部との間に挟まれた絶縁部材をさらに備えており、前記絶縁部材の一部は、前記第1方向に見て、前記第2端子部および前記第3端子部に重なる。
【0025】
本開示の第3の側面によって提供される接合構造の形成方法は、第1方向において互いに離間した素子主面および素子裏面を有し、前記素子裏面に裏面電極が形成された半導体素子と、前記素子主面と同じ方向を向く搭載面を有し、前記搭載面と前記素子裏面とが対向した姿勢で前記半導体素子を支持する導電体と、前記半導体素子を前記導電体に接合し、かつ、前記裏面電極と前記導電体とを導通させる焼結金属層と、を備えた接合構造の形成方法であって、前記導電体を準備する工程と、前記搭載面の少なくとも一部に、粗化領域を形成する粗化処理工程と、前記粗化領域の少なくとも一部に焼結用金属ペースト材を塗布するペースト塗布工程と、前記素子裏面を前記搭載面に向かい合わせて、前記焼結用金属ペースト材の上に前記半導体素子を載置するマウント工程と、熱処理によって、前記焼結用金属ペースト材を前記焼結金属層にする焼結処理工程とを有する。
【0026】
前記接合構造の形成方法の好ましい実施の形態においては、前記粗化処理工程では、前記搭載面にレーザ光を照射することにより、前記粗化領域を形成する。
【発明の効果】
【0027】
本開示の接合構造および本開示の半導体装置によれば、熱に対する信頼性を向上させることができる。さらに、本開示の接合構造の形成方法によれば、上記接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態にかかる接合構造を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1の領域IIIを拡大した部分拡大平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6】レーザ照射装置の一例を示す模式図である。
図7】第1実施形態にかかるレーザ光の照射パターンを示す図である。
図8】第1実施形態にかかる接合構造において、熱サイクル試験後の焼結金属層の状態を示す断面模式図である。
図9】従来の接合構造において、熱サイクル試験後の焼結金属層の状態を示す断面模式図である。
図10】第2実施形態にかかる接合構造を示す平面図(半導体素子および焼結金属層を省略)である。
図11図10の領域XIを拡大した部分拡大平面図である。
図12図11のXII-XII線に沿う断面図である。
図13】第3実施形態にかかる接合構造を示す平面図(半導体素子および焼結金属層を省略)である。
図14図13の領域XIVを拡大した部分拡大平面図である。
図15図14のXV-XV線に沿う断面図である。
図16】第4実施形態にかかる接合構造を示す平面図(半導体素子および焼結金属層を省略)である。
図17図16の領域XVIIを拡大した部分拡大平面図である。
図18図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
図19】第5実施形態にかかる接合構造を示す平面図(半導体素子および焼結金属層を省略)である。
図20図19の領域XXを拡大した部分拡大平面図である。
図21図20のXXI-XXI線に沿う断面図である。
図22】変形例にかかる接合構造を示す断面図である。
図23】半導体装置を示す斜視図である。
図24図23に示す斜視図において封止樹脂を省略した図である。
図25】半導体装置を示す平面図である。
図26図25に示す平面図において、封止樹脂を想像線で示した図である。
図27図26の一部を拡大した部分拡大図である。
図28】半導体装置を示す正面図である。
図29】半導体装置を示す底面図である。
図30】半導体装置を示す左側面図である。
図31】半導体装置を示す右側面図である。
図32図26のXXXII-XXXII線に沿う断面図である。
図33図26のXXXIII-XXXIII線に沿う断面図である。
図34図33の一部を拡大した要部拡大断面図である。
図35】平面視における溶接痕の一例を示す図である。
図36】半導体装置の他の実施形態を示す斜視図である。
図37】半導体装置の他の実施形態を示す斜視図である。
図38】半導体装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の接合構造、半導体装置および接合構造の形成方法の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0030】
まず、本開示の第1実施形態にかかる接合構造について、図1図5を参照して、説明する。第1実施形態の接合構造A1は、半導体素子91、導電体92および焼結金属層93を備えている。図1は、接合構造A1を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、図1の領域IIIを拡大した部分拡大平面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
【0031】
説明の便宜上、図1図5において、互いに直交する3つの方向を、第1の軸方向z0、第2の軸方向x0、第3の軸方向y0と定義する。第1の軸方向z0は、接合構造A1の厚さ方向である。第2の軸方向x0は、接合構造A1の平面図(図1参照)における左右方向である。第3の軸方向y0は、接合構造A1の平面図(図1参照)における上下方向である。
【0032】
半導体素子91は、半導体材料からなる素子である。半導体素子91の構成材料は、たとえばSi(ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、GaAs(ヒ化ガリウム)あるいはGaN(窒化ガリウム)などであるが、これらに限定されない。半導体素子91は、たとえばトランジスタ、ダイオード、抵抗器、コンデンサあるいは集積回路(IC)などである。半導体素子91は、たとえば、第1の軸方向z0に見て、略矩形状であって、特に、略正方形である。説明の便宜上、各々が第1の軸方向z0に直交する2つの方向を、直交方向m1,m2と定義する。第1の軸方向z0に見て、直交方向m1は、第2の軸方向x0から反時計回りに45°傾いており、直交方向m2は、第2の軸方向x0から時計回りに45°傾いている。直交方向m1と直交方向m2とは、互いに直交する。本実施形態においては、半導体素子91が第1の軸方向z0に見て略正方形であり、直交方向m1,m2はそれぞれ、第1の軸方向z0に見たときの、半導体素子91の2つの対角線が延びる各方向に重なる。なお、第1の軸方向に見たときの半導体素子91の2つの対角線が延びる各方向を、2つの直交方向m1,m2と定義してもよい。この場合、半導体素子91が第1の軸方向z0に見て略長方形であれば、2つの直交方向m1,m2は互いに直交しない。
【0033】
半導体素子91は、図1および図2に示すように、素子主面91a、素子裏面91bおよび複数の素子側面91cを有している。素子主面91aおよび素子裏面91bは、第1の軸方向z0において、互いに反対側を向き、かつ、離間している。素子主面91aおよび素子裏面91bはそれぞれ、略平坦である。複数の素子側面91cの各々は、第1の軸方向z0の一方の端縁が素子主面91aに繋がり、第1の軸方向z0の他方の端縁が素子裏面91bに繋がっている。各素子側面91cは、素子主面91aおよび素子裏面91bにそれぞれ略直交している。半導体素子91は、第2の軸方向x0において離間しかつ互いに反対側を向く一対の素子側面91cと、第3の軸方向y0において離間しかつ互いに反対側を向く一対の素子側面91cとを有している。
【0034】
半導体素子91は、図2に示すように、主面電極911および裏面電極912を含んでいる。主面電極911および裏面電極912は、半導体素子91における端子である。主面電極911は、素子主面91aから露出している。主面電極911は、たとえば図示しないボンディングワイヤあるいはリード部材などが接続されうる。裏面電極912は、素子裏面91bから露出している。裏面電極912は、第1の軸方向z0に見て、素子裏面91bの大半にわたっている。裏面電極912は、焼結金属層93を介して、導電体92に導通している。
【0035】
導電体92は、半導体素子91を支持する。導電体92は、たとえば金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえば、Cu(銅)あるいはCu合金である。導電体92の第1の軸方向z0の寸法(厚さ)は、特に限定されないが、たとえば0.4~3mm程度である。導電体92は、半導体素子91が搭載された搭載面92aを有している。搭載面92aは、第1の軸方向z0の一方(本実施形態においては、図2の上方)を向く面である。搭載面92aは、半導体素子91の素子裏面91bに対向する。
【0036】
焼結金属層93は、半導体素子91と導電体92との間に介在し、これらを接合する。よって、半導体素子91は、焼結金属層93を介して、導電体92に搭載されている。焼結金属層93は、半導体素子91と導電体92との間に介在する部分において、その第1の軸方向z0の寸法が、たとえば30~120μm程度である。
【0037】
焼結金属層93は、焼結処理によって形成された焼結金属からなる。焼結金属層93の構成材料は、たとえば焼結銀であるが、これに限定されず、焼結銅などの他の焼結金属であってもよい。焼結金属層93は、多数の微細孔を有する多孔質である。本実施形態においては、焼結金属層93は、複数の微細孔が空隙であるが、複数の微細孔にたとえばエポキシ樹脂が充填されていてもよい。つまり、焼結金属層93は、エポキシ樹脂を含有していてもよい。ただし、エポキシ樹脂の含有量が多いと、焼結金属層93の導電性を低下させるため、半導体素子91への電流量を考慮してエポキシ樹脂の含有量を調整すればよい。これらは、後述する焼結処理工程で用いる焼結用金属ペースト材930の組成に依存する。
【0038】
焼結金属層93は、フィレット部931を含んでいる。フィレット部931は、素子裏面91bから各素子側面91cに跨るように形成されている。フィレット部931は、各素子側面91cにおいて、素子裏面91bに繋がる端縁を含む一部分を覆っている。フィレット部931のうち、半導体素子91の第2の軸方向x0の両側に配置された部分は、第2の軸方向x0に見て、当該第2の軸方向x0を向く素子側面91cに重なる。同様に、フィレット部931のうち、半導体素子91の第3の軸方向y0の両側に配置された部分は、第3の軸方向y0に見て、当該第3の軸方向y0を向く素子側面91cに重なる。焼結金属層93は、フィレット部931を含んでいなくてもよい。
【0039】
接合構造A1において、導電体92の搭載面92aは、粗化領域95を含んでいる。粗化領域95は、導電体92の搭載面92aのうち、粗化処理された領域である。粗化処理は、たとえば導電体92の搭載面92aにレーザ光を照射することで行われる。すなわち、粗化領域95は、レーザ光の照射によって形成されている。粗化領域95は、搭載面92aのうち粗化処理されていない未粗化領域よりも粗面である。
【0040】
粗化領域95は、レーザ光が照射されて形成された窪み950を含んでいる。窪み950は、搭載面92aから第1の軸方向z0に窪んだ部分である。窪み950の表面には、微細な凹凸(図示略)が形成されている。当該凹凸は、窪み950によって形成される凹凸よりも微細である。窪み950の表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、たとえば0.5~3.0μm程度である。窪み950は、上記するようにレーザ光の照射によって形成されているため、これらの表面にはレーザ溶接による溶接痕(たとえば溶接ビードなど)が形成されうるが、図1図5においてはその図示を省略する。上記微細な凹凸の少なくとも一部は、当該溶接痕による凹凸である。窪み950は、第1の軸方向z0に見て、所定のパターンに従って形成されている。窪み950は、たとえば、第1の軸方向z0に見て、メッシュ格子状のパターンに従って形成されている。窪み950のパターンは、後述するレーザ光の照射パターンに応じて、適宜変更されうる。窪み950は、複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952を有している。
【0041】
複数の第1線状溝951の各々は、図3に示すように、第1の軸方向z0に見て、直交方向m1に沿って延びる直線状である。各第1線状溝951は、直交方向m2の寸法(線幅)W951図3参照)がたとえば4~20μm程度である。複数の第1線状溝951は、第1の軸方向z0に見て、直交方向m2に平行かつ等間隔に配列されている。直交方向m2において隣り合う2つの第1線状溝951は、これらの離間距離P951図3参照)がたとえば4~40μm程度である。複数の第1線状溝951における各離間距離P951は、すべて同じ値でなくてもよい。また、線幅W951と離間距離P951とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0042】
複数の第2線状溝952の各々は、図3に示すように、第1の軸方向z0に見て、直交方向m2に沿って延びる直線状である。各第2線状溝952は、直交方向m1の寸法(線幅)W952図3参照)がたとえば4~20μm程度である。複数の第2線状溝952は、第1の軸方向z0に見て、直交方向m1に平行かつ等間隔に配列されている。直交方向m1において隣り合う2つの第2線状溝952は、これらの離間距離P952図3参照)がたとえば4~40μm程度である。複数の第2線状溝952における各離間距離P952は、すべて同じ値でなくてもよい。また、線幅W952と離間距離P952とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0043】
複数の第1線状溝951と複数の第2線状溝952とは、第1の軸方向z0に見て、交差している。本実施形態において、2つの直交方向m1,m2が略直交しているので、複数の第1線状溝951と複数の第2線状溝952とは、略直交している。
【0044】
窪み950は、図3図5に示すように、溝第1部950a、溝第2部950b、溝第3部950cおよび平坦部950dを含んでいる。溝第1部950aは、第1の軸方向z0に見て、第1線状溝951に重なり、第2線状溝952には重ならない部分である。溝第2部950bは、第1の軸方向z0に見て、第1線状溝951には重ならず、第2線状溝952に重なる部分である。溝第3部950cは、第1線状溝951および第2線状溝952の両方に重なる部分である。平坦部950dは、第1線状溝951にも第2線状溝952にも重ならない部分である。平坦部950dは、第1線状溝951および第2線状溝952の形成時のレーザ光による発熱により、搭載面92aよりも第1の軸方向z0に起伏している。
【0045】
溝第1部950aの第1の軸方向z0の寸法(深さ)D950a図4参照)と溝第2部950bの第1の軸方向z0の寸法(深さ)D950b図4参照)とは略同じである。溝第1部950aの深さD950aと溝第2部950bの深さD950bとは異なっていてもよい。溝第3部950cの第1の軸方向z0の寸法(深さ)D950c図4参照)は、溝第1部950aの深さD950aおよび溝第2部950bの深さD950bのいずれよりも大きい。溝第3部950cの深さD950cは、たとえば11.06μm程度であり、溝第1部950aの深さD950aおよび溝第2部950bの深さD950bは、たとえば5.94μm程度である。これらの各深さD950a,D950b,D950cは、上記した値に限定されない。平坦部950dは、第1の軸方向z0において、搭載面92aと略同じ位置である。
【0046】
接合構造A1において、図2に示すように、粗化領域95上に焼結金属層93が形成されている。粗化領域95のうち、焼結金属層93に接する部分において、窪み950(複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952)には、焼結金属層93が充填されている。
【0047】
粗化領域95において、各第1線状溝951の表層および各第2線状溝952の表層は、酸化物層(図示略)である。当該酸化物層は、導電体92の素材の酸化物から構成される。よって、導電体92において、レーザ光が照射され、一度溶融した部分の表層は、導電体92の素材の酸化物となっている。本願発明者が導電体92の表面分析を行った結果、導電体92の搭載面92aのうち粗化領域95でない領域においては、防錆剤(たとえばベンゾトリアゾール)の成分が検出され、搭載面92aのうち粗化領域95である領域においては、その防錆剤の成分が検出されなかった。酸化物層の厚さは、特に限定されないが、たとえば20nm程度である。
【0048】
次に、本開示の第1実施形態にかかる接合構造A1の形成方法について、図6および図7を参照して説明する。
【0049】
まず、搭載面92aを有する導電体92を準備する。たとえば、導電体92として、構成材料がCuあるいはCu合金である金属板を準備する。金属板の厚みは、特に限定されない。
【0050】
次いで、導電体92の搭載面92aの少なくとも一部を粗化処理し、搭載面92aに粗化領域95を形成する。形成する粗化領域95の範囲は、第1の軸方向z0に見た半導体素子91の大きさよりも大きい。搭載面92aの一部を粗化する工程(粗化処理工程)においては、たとえば、レーザ光を搭載面92aに照射する。これにより、レーザ光を照射した部分に窪みができる。このとき、レーザ光が照射された部分は、レーザ光のエネルギーによって発熱し、この熱によって、昇華、溶融する。その後、溶融した分が再凝固し、再凝固した部分の表面において上記微細な凹凸が形成される。レーザ光の照射には、たとえば、次に示すレーザ照射装置LD(図6参照)を用いる。
【0051】
図6は、レーザ照射装置LDの一例を示している。レーザ照射装置LDは、図6に示すように、レーザ発振器81、光ファイバ82およびレーザヘッド83を備えている。レーザ発振器81は、レーザ光を発振するものである。本実施形態においては、レーザ発振器81は、レーザ光としてYAGレーザ光を発振する。当該YAGレーザ光は、グリーンレーザである。レーザ発振器81が照射するレーザ光は、上記した例示に限定されない。光ファイバ82は、レーザ発振器81から発振されたレーザ光を伝送するものである。レーザヘッド83は、光ファイバ82から出射されたレーザ光を照射対象(導電体92)に導くものである。
【0052】
レーザヘッド83は、図6に示すように、コリメートレンズ831、ミラー832、ガルバノスキャナ833および集光レンズ834を備えている。コリメートレンズ831は、光ファイバ82から出射されたレーザ光をコリメートする(平行光にする)レンズである。ミラー832は、コリメートレンズ831によって平行にされたレーザ光を照射対象(導電体92)に向けて反射するものである。ガルバノスキャナ833は、照射対象(導電体92)におけるレーザ光の照射位置を変更するためのものである。ガルバノスキャナ833は、たとえば、直交する2方向に首ふり運動の可能な図示しない一対の可動ミラーを含む周知のスキャナが用いられる。集光レンズ834は、ガルバノスキャナ833から導かれたレーザ光を照射対象(導電体92)に集光する。
【0053】
本実施形態の粗化処理工程においては、上記レーザ照射装置LDを用いて、レーザ光を導電体92に照射する。このとき、レーザ光の照射位置を、所定の照射パターンに従って移動させる。図7は、本実施形態における、レーザ光の照射パターンを示している。レーザ光の照射位置の変更は、上記するように、ガルバノスキャナ833による。導電体92の搭載面92aに照射されるレーザ光のスポット径Dsはたとえば2~20μm程度である。スポット径Dsとは、レーザ照射装置LDから照射され、導電体92の搭載面92aに照射されたレーザ光のビーム径(直径)のことである。
【0054】
図7に示す照射パターンは、メッシュ格子状のパターン(太い矢印参照)である。当該メッシュ格子状のパターンは、複数の走査軌道SO1と複数の走査軌道SO2とを含んでいる。複数の走査軌道SO1は、各々が直交方向m1に沿って延びており、かつ、直交方向m2に等間隔に並んでいる。複数の走査軌道SO1の各々は、直線状であり、かつ、互いに平行である。また、複数の走査軌道SO2は、各々が直交方向m2方向に沿って延びており、かつ、直交方向m1に等間隔に並んでいる。複数の走査軌道SO2の各々は、直線状であり、かつ、互いに平行である。図7に示す走査軌道SO1,SO2はそれぞれ、レーザ光の中心位置が通る位置を示している。上記した走査軌道SO1,SO2は一例であって、これに限定されない。
【0055】
粗化処理工程においては、まず、図7に示す各走査軌道SO1に沿ってレーザ光を照射する。これにより、粗化領域95における複数の第1線状溝951が形成される。図7に示す各走査軌道SO1は、直交方向m1の一方から他方に向けて走査させる場合を示しているが、直交方向m1の、一方から他方、他方から一方に向けて交互に走査してもよい。各走査軌道SO1の間隔、すなわち、各走査軌道SO1のピッチ寸法PSO1図7参照)は、たとえば8~60μm程度である。続いて、図7に示す各走査軌道SO2に沿ってレーザ光を照射する。これにより、粗化領域95における複数の第2線状溝952が形成される。図7に示す各走査軌道SO2は、直交方向m2の一方から他方に向けて走査させる場合を示しているが、直交方向m2の、一方から他方、他方から一方に向けて交互に走査してもよい。各走査軌道SO2の間隔、すなわち、各走査軌道SO2のピッチ寸法PSO2図7参照)は、各走査軌道SO1のピッチ寸法PSO1と同じく、たとえば8~60μm程度である。各走査軌道SO1のピッチ寸法PSO1と各走査軌道SO2のピッチ寸法PSO2とは、異なる値であってもよい。また、各走査軌道SO1と各走査軌道SO2とは、第1の軸方向z0に見て、略直交している場合を示しているが、これに限定されない。
【0056】
本実施形態の粗化処理工程では、以上のように、複数の走査軌道SO1および複数の走査軌道SO2に沿って、レーザ光を照射することで、複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952を含んだ窪み950が形成され、導電体92の搭載面92aに粗化領域95が形成される。このとき、各走査軌道SO1と各走査軌道SO2とが交差する部分においては、レーザ光が2度照射されるので、各走査軌道SO1あるいは各走査軌道SO2のいずれか一方によってレーザ光が照射された部分よりも、形成される溝が深くなる。レーザ光を照射する範囲(距離Lx0および距離Ly0)は、形成する粗化領域95の範囲に基づいて、適宜変更される。また、形成する粗化領域95の範囲は、第1の軸方向z0に見た半導体素子91の大きさに基づいて、適宜変更される。
【0057】
次いで、形成した粗化領域95上に、焼結用金属ペースト材930を塗布する。焼結用金属ペースト材930は、焼結金属層93の基となるものである。焼結用金属ペースト材930として、たとえば焼結用銀ペースト材を用いる。当該焼結用銀ペースト材は、溶媒中にマイクロサイズあるいはナノサイズの銀粒子を混ぜ合わせたペースト状である。本実施形態においては、焼結用銀ペースト材の溶媒はエポキシ樹脂を含んでいない(あるいはほとんど含んでいない)。焼結用金属ペースト材930を塗布する工程(ペースト塗布工程)においては、例えば、マスクを用いたスクリーン印刷によって焼結用金属ペースト材930を塗布する。焼結用金属ペースト材930の塗布は、スクリーン印刷ではなく、ディスペンサーを用いてもよい。焼結用金属ペースト材930の塗布方法は、これらに限定されない。
【0058】
次いで、塗布した焼結用金属ペースト材930に半導体素子91を載置する。半導体素子91を載置する工程(マウント工程)においては、半導体素子91の素子裏面91bと導電体92の搭載面92aとを向かい合わせる。そして、これら素子裏面91bと搭載面92aとが向かい合った姿勢のまま、半導体素子91を、焼結用金属ペースト材930上に載置する。このとき、第1の軸方向z0に見て、半導体素子91のすべてが焼結用金属ペースト材930に重なるように載置する。これにより、粗化領域95上に塗布された焼結用金属ペースト材930上に半導体素子91が搭載される。
【0059】
次いで、熱処理によって、焼結用金属ペースト材930を焼結金属層93にする。この工程(焼結処理工程)では、たとえば、焼結用金属ペースト材930上に半導体素子91を載置した状態を維持したまま、焼結用金属ペースト材930を、所定の焼結条件で熱処理する。当該焼結条件としては、加圧の有無、加熱時間、加熱温度、環境(雰囲気)などが挙げられる。本実施形態においては、焼結条件は、たとえば200℃で2時間の熱処理を、無加圧状態かつ酸素を含んだ雰囲気中で行うものとするが、これに限定されない。上記熱処理を行うことで、焼結用金属ペースト材930の溶媒が揮発・消失し、また、焼結用金属ペースト材930中の銀粒子同士が結合し合い、多孔質な焼結金属層93が形成される。
【0060】
以上の工程を経ることによって、表面(搭載面92a)に粗化領域95を含む導電体92と、当該粗化領域95上に形成された焼結金属層93と、当該焼結金属層93を介して、導電体92に搭載された半導体素子91とを備える接合構造A1が形成される。上記した形成工程は、一例であって、これに限定されない。
【0061】
次に、第1実施形態にかかる接合構造A1およびその形成方法の作用効果について説明する。
【0062】
接合構造A1では、導電体92の搭載面92aは、粗化処理によって形成された粗化領域95を含んでいる。焼結金属層93は、当該粗化領域95上に形成されており、粗化領域95に接している。この構成をとることで、アンカー効果によって、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることができる。したがって、熱応力に対する耐性が大きくなるので、熱応力による焼結金属層93の破壊や剥離を抑制することができる。すなわち、接合構造A1は、熱に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0063】
接合構造A1では、粗化領域95には、搭載面92aから第1の軸方向z0に窪んだ窪み950が形成されている。特に、接合構造A1では、互いに交差する複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952を有する窪み950が形成されている。この構成をとることで、形成された窪み950により、粗化領域95を、搭載面92aのうち粗化処理されていない未粗化領域よりも、粗面にすることができる。
【0064】
接合構造A1では、粗化領域95において、窪み950は、複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952を有している。本願発明者は、接合構造A1において熱に対する評価のために、熱サイクル試験を行った。図8は、熱サイクル試験後の、接合構造A1の断面模式図を示している。比較のため、粗化領域95を形成しなかった場合についても、同様に熱サイクル試験を行った。図9は、この粗化領域95が形成されていない場合の、熱サイクル試験後の断面模式図を示している。熱サイクル試験においては、最低温度が-40℃、最高温度が150℃とした。
【0065】
粗化領域95を形成しなかった場合、すなわち、導電体92の搭載面92aに直接、焼結金属層93を形成した場合、図9に示すように、焼結金属層93において破断932が発生していた。破断932は、素子側面91cとフィレット部931との界面、搭載面92aと焼結金属層93との界面の一部、および、半導体素子91の素子裏面91bと焼結金属層93との界面の一部において、それぞれ生じていた。また、破断932は、さらに、焼結金属層93を、素子側面91cと素子裏面91bとの角部91dから半導体素子91下の搭載面92aまで、第1の軸方向z0に貫くように生じていた。角部91dから導電体92の搭載面92aまでの破断932は、たとえば、導電体92の搭載面92aに対して、角度αで傾くように生じていた。一方、粗化領域95を設けた場合、すなわち、粗化領域95上に焼結金属層93を形成した場合、図8に示すように、空隙のような微細なクラック933がランダムに発生していたが、上記のような破断932は生じていなかった。しかしながら、微細なクラック933による導電性および放熱性の低下は、剥離や破壊による導電性および放熱性の低下よりも小さい。接合構造A1では、定性的に熱に対する信頼性が向上している。
【0066】
接合構造A1では、複数の第1線状溝951と複数の第2線状溝952とが交差している。これにより、粗化領域95において、窪み950は、全面にわたって連続している。この構成をとることで、焼結用金属ペースト材930を塗布した際、当該焼結用金属ペースト材930が毛細管現象と同様のメカニズムによって広がる。つまり、粗化領域95は、上記した未粗化領域と比較して、親液性を高くすることができる。したがって、焼結用金属ペースト材930を、効率的に窪み950(複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952)に充填させることができる。特に、接合構造A1では、各第1線状溝951および各第2線状溝952の各線幅W951,W952が、4~20μm程度である。本願発明者が、焼結用金属ペースト材930の毛細管効果を検証したところ、ガラス管の半径がおよそ10μm以下の場合に、液面の上昇(毛細管現象)がより顕著に表れた。なお、水の毛細管効果の検証では、ガラス管の半径がおよそ30μm以下の場合に、液面の上昇がより顕著に表れた。したがって、ペースト塗布工程において、焼結用金属ペースト材930を、より効率的に窪み950に充填させることができる。
【0067】
接合構造A1では、導電体92の第1の軸方向z0の寸法が、0.4~3mm程度である。本願発明者の研究によれば、導電体92の第1の軸方向z0の寸法が大きいほど、すなわち、導電体92が厚いほど、焼結金属層93における剥離や破壊の発生が増加することが分かった。一方、導電体92を薄くしすぎると、導電体92を介した放熱性が低下する。したがって、導電体92の第1の軸方向z0の寸法を0.4~3mm程度とすることで、焼結金属層93における剥離や破壊の発生を抑制しつつ、導電体92による放熱性の低下を抑制することができる。よって、接合構造A1は、熱に対する信頼性をさらに向上させることができる。
【0068】
接合構造A1では、焼結金属層93の第1の軸方向z0の寸法が、30~120μm程度である。本願発明者の研究によれば、焼結金属層93の第1の軸方向z0の寸法が小さいほど、すなわち、焼結金属層93が薄いほど、剥離や破壊の発生が増加することが分かった。一方、焼結金属層93を厚くしすぎると、焼結金属層93の材料費の増加や焼結金属層93における導電性が低下する。したがって、焼結金属層93の第1の軸方向z0の寸法を30~120μm程度とすることで、焼結金属層93における剥離や破壊の発生を抑制しつつ、材料費の増加および導電性の低下を抑制することができる。よって、接合構造A1は、熱に対する信頼性をさらに向上させつつ、産業的により好ましい構造にすることができる。
【0069】
接合構造A1の形成方法では、粗化処理工程において、レーザ光を照射して、粗化領域95を形成した。このとき、レーザ光を直線状の走査軌道SO1および複数の走査軌道SO2に沿って移動させた。この構成をとることで、粗化領域95に、複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952を形成することができる。また、レーザ光を照射することで、各第1線状溝951および各第2線状溝952の表面に微細な凹凸が形成される。したがって、粗化処理工程において、レーザ光を照射して粗化領域95を形成することで、複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952を形成するとともに、各第1線状溝951および各第2線状溝952の表面を粗面にすることができる。これにより、窪み950(複数の第1線状溝951および複数の第2線状溝952)によって形成される凹凸によるアンカー効果だけでなく、各第1線状溝951および各第2線状溝952の表面に形成された微細な凹凸によるアンカー効果も得られる。よって、接合構造A1は、焼結金属層93と導電体92との接合強度をより高めることができる。
【0070】
第1実施形態では、レーザ光の照射によって粗化領域95を形成した場合を説明したが、たとえば、ブラスト処理によって粗化領域95を形成してもよい。本願発明者の研究によれば、ブラスト処理によって粗化領域95を形成した場合、レーザ光の照射によって粗化領域95を形成した場合よりも、焼結金属層93と導電体92との接合強度が高くなることが分かった。つまり、ブラスト処理によって粗化領域95を形成した場合であっても、焼結金属層93と導電体92との接合強度をより高めることができるので、熱に対する信頼性を向上させることができる。ただし、上記した本願発明者の研究において、ブラスト処理によって粗化領域95を形成した場合、レーザ光の照射によって粗化領域95を形成した場合よりも、焼結金属層93と導電体92との接合界面における接合強度と、焼結金属層93と半導体素子91との接合界面における接合強度との偏りが大きくなっていることも分かった。この偏りによる影響を検証するために、ブラスト処理によって粗化領域95が形成された接合構造において、熱サイクル試験を行った。この熱サイクル試験の結果、ブラスト処理によって粗化領域95を形成した場合、第1の軸方向z0に見て、半導体素子91よりも外方に位置する焼結金属層93に、部分的に、剥離が確認された。しかしながら、図9に示す破断932のような半導体素子91付近での破壊や剥離はほとんど確認されなかったため、粗化領域95を形成しなかった場合よりも、焼結金属層93を介した半導体素子91と導電体92との導電性の低下は抑制される。一方、レーザ光の照射によって粗化領域95を形成した接合構造A1においては、図8に示すように、微細なクラック933が確認されたものの、破壊や剥離はほとんど確認されていない。これは、レーザ光の照射によって粗化領域95を形成した場合、ブラスト処理によって粗化領域95を形成した場合と比べて、上記偏りが小さく、焼結金属層93における熱応力が焼結金属層93全体に分散されるからである。したがって、接合構造A1は、ブラスト処理によって粗化領域95を形成した場合よりも、熱に対する信頼性を向上させることができる。なお、図8に示す微細なクラック933は、熱応力が焼結金属層93全体に分散された場合に、発生しうる。
【0071】
第1実施形態では、各第1線状溝951が、直交方向m1に沿って延びており、各第2線状溝952が、直交方向m2に沿って延びる場合を示したが、これに限定されない。たとえば、各第1線状溝951が第2の軸方向x0に沿って延びており、各第2線状溝952が、第3の軸方向y0に沿って延びていてもよい。この場合であっても、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることができるので、熱による信頼性を向上させることが可能となる。
【0072】
第1実施形態では、各第1線状溝951および各第2線状溝952が、直線状である場合を説明したが、これに限定されない。たとえば、各第1線状溝951および各第2線状溝952が、波状あるいはクランク状であってもよい。本開示において、クランク状とは、屈曲した部分の屈曲角度が、直角であるものに限定されず、その角度が鋭角であるものも鈍角であるものも含む。この場合であっても、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めて、熱による信頼性を向上させることができる。
【0073】
次に、他の実施形態にかかる接合構造について、説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一あるいは類似の要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
図10図12は、第2実施形態にかかる接合構造を示している。第2実施形態の接合構造A2は、接合構造A1と比較して、粗化領域95の構造が異なる。図10は、接合構造A2を示す平面図であって、半導体素子91および焼結金属層93を想像線(二点鎖線)で示している。図11は、図10の領域XIを拡大した部分拡大平面図である。図12は、図11のXII-XII線に沿う断面図である。
【0075】
本実施形態の粗化領域95においては、窪み950は、図10に示すように、第1の軸方向z0に見て、ドット状のパターンに従って形成されている。本実施形態の窪み950は、複数の凹部953を有している。
【0076】
複数の凹部953の各々は、たとえば円錐状である。複数の凹部953の各々は、第1の軸方向z0に見て、略円形であるが、略楕円形であってもよい。各凹部953は、第1の軸方向z0に見た直径W953図11参照)が、たとえば20μm程度である。また、複数の凹部953の各々は、第1の軸方向z0において、搭載面92aに近いほど、第1の軸方向z0に直交する平面における断面が大きい。さらに、各凹部953の深さD953図12参照)は、たとえば4~10μm程度である。複数の凹部953のうち、最近接する2つの凹部953(直交方向m1あるいは直交方向m2に隣り合う2つの凹部953)は、第2の軸方向x0の離間距離P953x図11参照)がたとえば20μm程度であり、第3の軸方向y0の離間距離P953y図11参照)がたとえば20μm程度である。複数の凹部953の各種寸法は、上記した値に限定されない。
【0077】
複数の凹部953は、上記粗化処理工程において、レーザ光の照射パターンをドット状にすることで形成されうる。具体的には、第1実施形態のようにレーザ光を照射したまま移動させずに、レーザ光をスポット照射させる。これにより、スポット照射された部分の導電体92が昇華、溶融する。このとき、第1の軸方向z0に見たときのレーザ光の中心部がより深く溶融する。
【0078】
次に、第2実施形態にかかる接合構造A2の作用効果について説明する。
【0079】
接合構造A2では、導電体92の搭載面92aは、粗化処理によって形成された粗化領域95を含んでいる。焼結金属層93は、当該粗化領域95上に形成されている。したがって、焼結金属層93は、導電体92のうち粗面な部分に形成されている。この構成をとることで、アンカー効果によって、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることができる。したがって、接合構造A2は、第1実施形態の接合構造A1と同様に、熱に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0080】
接合構造A2では、粗化領域95には、搭載面92aから第1の軸方向z0に窪んだ窪み950が形成されている。特に、接合構造A2では、複数の凹部953を有する窪み950が形成されている。この構成をとることで、形成された窪み950により、粗化領域95を、搭載面92aのうち粗化処理されていない未粗化領域よりも、粗面にすることができる。
【0081】
図13図15は、第3実施形態にかかる接合構造を示している。第3実施形態の接合構造A3は、接合構造A1,A2と比較して、粗化領域95の構造が異なる。図13は、接合構造A3を示す平面図であって、半導体素子91および焼結金属層93を想像線(二点鎖線)で示している。図14は、図13の領域XIVを拡大した部分拡大平面図である。図15は、図14のXV-XV線に沿う断面図である。
【0082】
本実施形態の粗化領域95においては、窪み950は、図13に示すように、第1の軸方向z0に見て、ライン状のパターンに従って形成されている。本実施形態の窪み950は、複数の線状溝954を有している。複数の線状溝954は、上記粗化処理工程において、レーザ光の照射パターンをライン状にすることで形成される。
【0083】
複数の線状溝954の各々は、第1の軸方向z0に見て、y0方向に延びている。複数の線状溝954は、各々が略直線状であり、かつ、x0方向に等間隔に並んでいる。各線状溝954の線幅W954図14参照)は、たとえば4~20μm程度である。また、隣り合う2つの線状溝954の離間距離P954図14参照)は、たとえば4~40μm程度である。線幅W954と離間距離P954とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。さらに、各線状溝954の深さD954は、たとえば4~10μm程度である。複数の線状溝954の各種寸法は、上記した値に限定されるものではない。
【0084】
次に、第3実施形態にかかる接合構造A3の作用効果について説明する。
【0085】
接合構造A3では、導電体92の搭載面92aは、粗化処理によって形成された粗化領域95を含んでいる。焼結金属層93は、当該粗化領域95上に形成されている。したがって、焼結金属層93は、導電体92のうち粗面な部分に形成されている。この構成をとることで、アンカー効果によって、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることができる。したがって、接合構造A3は、第1実施形態の接合構造A1と同様に、熱に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0086】
接合構造A3では、粗化領域95には、搭載面92aから第1の軸方向z0に窪んだ窪み950が形成されている。特に、接合構造A3では、互いに略平行に配置された複数の線状溝954を有する窪み950が形成されている。この構成をとることで、形成された窪み950により、粗化領域95を、搭載面92aのうち粗化処理されていない未粗化領域よりも、粗面にすることができる。
【0087】
図16図18は、第4実施形態にかかる接合構造を示している。第4実施形態の接合構造A4は、接合構造A1~A3と比較して、粗化領域95の構造が異なる。図16は、接合構造A4を示す平面図であって、半導体素子91および焼結金属層93を想像線(二点鎖線)で示している。図17は、図16の領域XVIIを拡大した部分拡大平面図である。図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
【0088】
本実施形態の粗化領域95においては、窪み950は、図16に示すように、第1の軸方向z0に見て、同心円状のパターンに従って形成されている。本実施形態の窪み950は、複数の円環溝955を有している。複数の円環溝955は、上記粗化処理工程において、レーザ光の照射パターンを同心円状にすることで形成される。
【0089】
複数の円環溝955の各々は、第1の軸方向z0に見て円形であって、第1の軸方向z0に見た中心位置が略一致する。複数の円環溝955は同心円である。複数の円環溝955のうち、最も内側に配置された円環溝955は、平面視における直径がたとえば1μm程度である、複数の円環溝955のうち、最も外側に配置された円環溝955は、第1の軸方向z0に見て、焼結金属層93を内包している。各円環溝955の線幅W955図17参照)は、たとえば4~20μm程度である。複数の円環溝955の離間距離P955図17参照)は、たとえば4~40μm程度である。これらの線幅W955と離間距離P955とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。各円環溝955の深さD955図18参照)は、たとえば4~10μm程度である。複数の円環溝955の各種寸法は、上記した値に限定されるものではない。
【0090】
次に、第4実施形態にかかる接合構造A4の作用効果について説明する。
【0091】
接合構造A4では、導電体92の搭載面92aは、粗化処理によって形成された粗化領域95を含んでいる。焼結金属層93は、当該粗化領域95上に形成されている。したがって、焼結金属層93は、導電体92のうち粗面な部分に形成されている。この構成をとることで、アンカー効果によって、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることができる。したがって、接合構造A4は、第1実施形態の接合構造A1と同様に、熱に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0092】
接合構造A4では、粗化領域95には、搭載面92aから第1の軸方向z0に窪んだ窪み950が形成されている。特に、接合構造A4では、同心円上に配置された複数の円環溝955を有する窪み950が形成されている。この構成をとることで、形成された窪み950により、粗化領域95を、搭載面92aのうち粗化処理されていない未粗化領域よりも、粗面にすることができる。
【0093】
図19図21は、第5実施形態にかかる接合構造を示している。第5実施形態の接合構造A5は、接合構造A1~A4と比較して、粗化領域95の構造が異なる。図19は、接合構造A5を示す平面図であって、半導体素子91および焼結金属層93を想像線(二点鎖線)で示している。図20は、図19の領域XXを拡大した部分拡大平面図である。図21は、図20のXXI-XXI線に沿う断面図である。
【0094】
本実施形態の粗化領域95においては、窪み950は、図19に示すように、第1の軸方向z0に見て、放射状のパターンに従って形成されている。本実施形態の窪み950は、複数の線状溝956を有している。複数の線状溝956は、上記粗化処理工程において、レーザ光の照射パターンを放射状にすることで形成される。
【0095】
複数の線状溝956は、第1の軸方向z0に見て、基準位置956aを中心に放射状に延びている。基準位置956aは、たとえば第1の軸方向z0に見て、半導体素子91の中心位置と略一致している。周方向に隣り合う2つの線状溝956がなす角度θ(図19参照)は、たとえば5°程度である。各線状溝956の線幅W956図20参照)は、たとえば4~20μm程度である。各線状溝956の深さD956は、たとえば4~10μm程度である。複数の線状溝956の各種寸法や角度は、上記した値に限定されるものではない。
【0096】
次に、第5実施形態にかかる接合構造A5の作用効果について説明する。
【0097】
接合構造A5では、導電体92の搭載面92aは、粗化処理によって形成された粗化領域95を含んでいる。焼結金属層93は、当該粗化領域95上に形成されている。したがって、焼結金属層93は、導電体92のうち粗面な部分に形成されている。この構成をとることで、アンカー効果によって、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることができる。したがって、接合構造A5は、第1実施形態の接合構造A1と同様に、熱に対する信頼性を向上させることが可能となる。
【0098】
接合構造A5では、粗化領域95には、搭載面92aから第1の軸方向z0に窪んだ窪み950が形成されている。特に、接合構造A5では、放射状に延びた複数の線状溝956を有する窪み950が形成されている。この構成をとることで、形成された窪み950により、粗化領域95を、搭載面92aのうち粗化処理されていない未粗化領域よりも、粗面にすることができる。
【0099】
第5実施形態では、複数の線状溝956が基準位置956a部分で繋がっている場合を示したが、これに限定されず、基準位置956a部分にレーザ光を照射せず、基準位置956a付近に未加工領域(未粗化領域)を形成してもよい。
【0100】
第1実施形態ないし第5実施形態では、焼結金属層93が、粗化領域95に直接当接している場合を示したが、これに限定されない。たとえば、粗化領域95が銀めっきされた上で、焼結金属層93が形成されていてもよい。また、粗化領域95を形成する前に、導電体92に銀めっきが施されていてもよい。この銀めっきの厚さは、たとえば3μm程度である。なお、当該変形例において、上記した導電体92の厚さ(第1の軸方向z0の寸法)は、焼結金属層93に当接する部分における仕上がり寸法であって、上記めっきの厚さを含むものである。銀めっきが、粗化領域95だけでなく、導電体92の全面に施されている場合には、導電体92の、第1の軸方向z0だけでなく、第2の軸方向x0、第3の軸方向y0、表面粗度などのすべての仕上がり寸法に、銀めっきの厚さが含まれる。
【0101】
第1実施形態ないし第5実施形態では、半導体素子91が外気に曝されている場合を示したが、これに限定されず、たとえば、図22に示すように、エポキシ樹脂などによって構成された樹脂部材94で覆われていてもよい。当該樹脂部材94は、導電体92の搭載面92a上に形成され、半導体素子91および焼結金属層93を覆うように形成されている。このように樹脂部材94で覆われている場合、当該樹脂部材94によって、半導体素子91および導電体92の熱膨張が制限される。このため、焼結金属層93にかかる熱応力がより大きくなる。したがって、焼結金属層93の破壊や剥離が発生する可能性が高くなる。そのため、粗化領域95を設け、当該粗化領域95上に焼結金属層93を形成することによって、焼結金属層93と導電体92との接合強度を高めることは、熱に対する信頼性を向上させる点で、効果的である。
【0102】
次に、本開示の半導体装置について、図23図34を参照して、説明する。本開示の半導体装置B1は、絶縁基板10、複数の導電部材11、複数のスイッチング素子20、複数の導電性接合層29、2つの入力端子31,32、出力端子33、一対のゲート端子34A,34B、一対の検出端子35A,35B、複数のダミー端子36、一対の側方端子37A,37B、一対の絶縁層41A,41B、一対のゲート層42A,42B、一対の検出層43A,43B、複数の土台部44、複数の線状接続部材51、複数の板状接続部材52および封止樹脂60を備えている。複数のスイッチング素子20は、複数のスイッチング素子20Aおよび複数のスイッチング素子20Bを含む。また、半導体装置B1は、複数の導電部材11に、上記した粗化領域95が設けられており、上記した接合構造A1を備えている。
【0103】
図23は、半導体装置B1を示す斜視図である。図24は、図23に示す斜視図において、封止樹脂60を省略した図である。図25は、半導体装置B1を示す平面図である。図26は、図25に示す平面図において、封止樹脂60を想像線(二点鎖線)で示した図である。図27は、図26に示す平面図の一部を拡大した部分拡大図である。図28は、半導体装置B1を示す正面図である。図29は、半導体装置B1を示す底面図である。図30は、半導体装置B1を示す側面図(左側面図)である。図31は、半導体装置B1を示す側面図(右側面図)である。図32は、図26のXXXII-XXXII線に沿う断面図である。図33は、図26のXXXIII-XXXIII線に沿う断面図である。図34は、図33の一部を拡大した要部拡大断面図であって、スイッチング素子20の断面構造を示している。
【0104】
説明の便宜上、図23図34において、互いに直交する3つの方向を、幅方向x、奥行き方向y、厚さ方向zと定義する。厚さ方向zは、接合構造A1の第1の軸方向z0に対応する。幅方向xは、半導体装置B1の平面図(図25および図26参照)における左右方向である。幅方向xは、接合構造A1の第2の軸方向x0に対応する。奥行き方向yは、半導体装置B1の平面図(図25および図26参照)における上下方向である。奥行き方向yは、接合構造A1の第3の軸方向y0に対応する。必要に応じて、幅方向xの一方を幅方向x1、幅方向xの他方を幅方向x2とする。同様に、奥行き方向yの一方を奥行き方向y1、奥行き方向yの他方を奥行き方向y2とし、厚さ方向zの一方を厚さ方向z1、厚さ方向zの他方を厚さ方向z2とする。
【0105】
絶縁基板10は、図24図26図32および図33に示すように、複数の導電部材11が配置されている。絶縁基板10は、複数の導電部材11および複数のスイッチング素子20の支持部材をなす。絶縁基板10は、電気絶縁性を有する。絶縁基板10の構成材料は、たとえば熱伝導性に優れたセラミックスである。このようなセラミックスとしては、たとえばAlN(窒化アルミニウム)が挙げられる。本実施形態においては、絶縁基板10は、厚さ方向zに見て(以下「平面視」ともいう)、矩形状である。絶縁基板10は、図32および図33に示すように、主面101および裏面102を有する。
【0106】
主面101と裏面102とは、厚さ方向zにおいて、離間し、かつ、互いに反対側を向く。主面101は、厚さ方向zのうち複数の導電部材11が配置される側、すなわち、厚さ方向z2を向く。主面101は、複数の導電部材11および複数のスイッチング素子20とともに、封止樹脂60に覆われている。裏面102は、厚さ方向z1を向く。裏面102は、図29図32および図33に示すように、封止樹脂60から露出している。裏面102には、たとえば図示しないヒートシンクなどが接続される。なお、絶縁基板10の構成は、上記した例示に限定されず、たとえば複数の導電部材11ごとに個別に設けてもよい。
【0107】
複数の導電部材11の各々は、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCuまたはCu合金である。複数の導電部材11は、2つの入力端子31,32、出力端子33とともに、複数のスイッチング素子20との導通経路を構成している。複数の導電部材11は、絶縁基板10の主面101に配置され、互いに離間している。各導電部材11は、たとえば銀ペーストのような接合材により主面101に接合されている。導電部材11の厚さ方向z寸法は、たとえば3.0mm程度であるが、これに限定されない。複数の導電部材11は、銀めっきで覆われていてもよい。この場合、上記した導電部材11の厚さ方向z寸法は、銀めっきの厚さを含む仕上がり寸法である。各導電部材11がそれぞれ、接合構造A1における導電体92に対応する。
【0108】
複数の導電部材11は、2つの導電部材11A,11Bを含んでいる。導電部材11Aは、図24および図26に示すように、導電部材11Bよりも幅方向x2に配置されている。導電部材11Aは、複数のスイッチング素子20Aが搭載される。導電部材11Bは、複数のスイッチング素子20Bが搭載される。2つの導電部材11A,11Bはそれぞれ、たとえば、平面視矩形状である。各導電部材11A,11Bにおいて、厚さ方向z2を向く面の一部に溝が形成されていてもよい。たとえば、導電部材11Aに、平面視において複数のスイッチング素子20Aと絶縁層41A(後述)との間に奥行き方向yに延びる溝が形成されていてもよい。同様に、導電部材11Bに、平面視において複数のスイッチング素子20Bと絶縁層41B(後述)との間に奥行き方向yに延びる溝が形成されていてもよい。
【0109】
各導電部材11A,11Bは、図24図26および図27に示すように、その表面(厚さ方向z2を向く面)の一部に複数の粗化領域95A,95Bをそれぞれ含んでいる。複数の粗化領域95A,95Bはそれぞれ、たとえば、上記接合構造A1にかかる粗化領域95と同じ構成であるが、接合構造A2~A5にかかる粗化領域95と同じ構成であってもよい。複数の粗化領域95Aは、各スイッチング素子20Aを搭載する部分にそれぞれ1つずつ形成されている。各粗化領域95Aは、厚さ方向zに見て、各スイッチング素子20Aに重なる。また、複数の粗化領域95Bは、各スイッチング素子20Bを搭載する部分にそれぞれ1つずつ形成されている。各粗化領域95Bは、厚さ方向zに見て、各スイッチング素子20Bに重なる。複数の粗化領域95A,95Bの各形成範囲は、上記したものに限定されない。たとえば、導電部材11A,11Bの各上面のすべてに形成されていてもよいし、複数のスイッチング素子20A(20B)に対して、共通の粗化領域95A(95B)が形成されていてもよい。
【0110】
複数の導電部材11の構成は、上記した例示に限定されず、半導体装置B1に要求される性能に応じて適宜変更されうる。たとえば、複数のスイッチング素子20の個数および配置などに基づき、各導電部材11の形状、大きさおよび配置などが、変更されうる。
【0111】
複数のスイッチング素子20の各々は、上記接合構造A1における半導体素子91に対応するものである。本実施形態において、各スイッチング素子20は、SiC(炭化ケイ素)を主とする半導体材料を用いて構成されたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。なお、複数のスイッチング素子20は、MOSFETに限定されず、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor FET)を含む電界効果トランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなバイポーラトランジスタ、LSIなどのICチップであってもよい。本実施形態においては、各スイッチング素子20は、いずれも同一素子であり、かつ、nチャネル型のMOSFETである場合を示す。本実施形態において、各スイッチング素子20は、たとえば、平面視矩形状であるが、これに限定されない。
【0112】
複数のスイッチング素子20の各々は、図34に示すように、素子主面201および素子裏面202を有する。図34においては、スイッチング素子20Aが示されている。素子主面201および素子裏面202は、厚さ方向zにおいて離間し、かつ、互いに反対側を向く。各素子主面201は、絶縁基板10の主面101と同じ方向を向く。各素子裏面202は、絶縁基板10の主面101に対向している。
【0113】
複数のスイッチング素子20の各々は、図34に示すように、主面電極21、裏面電極22および絶縁膜23を有する。
【0114】
主面電極21は、素子主面201に設けられている。主面電極21は、上記接合構造A1の主面電極911に対応する。主面電極21は、図27に示すように、第1電極211および第2電極212を含む。第1電極211は、たとえばソース電極であって、ソース電流が流れる。第2電極212は、たとえばゲート電極であって、各スイッチング素子20を駆動させるためのゲート電圧が印加される。第1電極211は、第2電極212よりも大きい。図27に示す例示では、第1電極211は、1つの領域で構成されている場合を示すが、これに限定されず、複数の領域に分割されていてもよい。
【0115】
裏面電極22は、素子裏面202に設けられている。裏面電極22は、上記接合構造A1の裏面電極912に対応する。裏面電極22は、素子裏面202の全体にわたって形成されている。裏面電極22は、たとえばドレイン電極であって、ドレイン電流が流れる。
【0116】
絶縁膜23は、素子主面201に設けられている。絶縁膜23は、電気絶縁性を有する。絶縁膜23は、平面視において主面電極21を囲んでいる。絶縁膜23は、たとえばSiO2(二酸化ケイ素)層、SiN4(窒化ケイ素)層、ポリベンゾオキサゾール層が、素子主面201からこの順番で積層されたものである。なお、絶縁膜23においては、ポリベンゾオキサゾール層に代えてポリイミド層でもよい。
【0117】
複数のスイッチング素子20は、上記するように、複数のスイッチング素子20Aおよび複数のスイッチング素子20Bを含んでいる。半導体装置B1は、図24および図26に示すように、4つのスイッチング素子20Aおよび4つのスイッチング素子20Bを含んでいる。複数のスイッチング素子20の数は、本構成に限定されず、半導体装置B1に要求される性能に応じて適宜変更されうる。たとえば、半導体装置B1は、ハーフブリッジ型のスイッチング回路である場合、複数のスイッチング素子20Aは、半導体装置B1の上アーム回路を構成し、複数のスイッチング素子20Bは、半導体装置B1の下アーム回路を構成する。
【0118】
複数のスイッチング素子20Aの各々は、図26に示すように、導電部材11Aに搭載されている。複数のスイッチング素子20Aは、奥行き方向yに離間して並んでいる。各スイッチング素子20Aは、図34に示すように、導電性接合層29を介して、導電部材11Aに導通接合されている。各スイッチング素子20Aは、素子裏面202が導電部材11Aの上面(厚さ方向z2を向く面)に対向している。各スイッチング素子20Aの裏面電極22は、導電性接合層29を介して、導電部材11Aに導通している。
【0119】
複数のスイッチング素子20Bの各々は、図26に示すように、導電部材11Bに搭載されている。複数のスイッチング素子20Bは、奥行き方向yに離間して並んでいる。各スイッチング素子20Bは、導電性接合層29を介して、導電部材11Bに導通接合されている。各スイッチング素子20Bは、素子裏面202が導電部材11Bの上面(厚さ方向z2を向く面)に対向している。各スイッチング素子20Bの裏面電極22は、導電性接合層29を介して、導電部材11Bに導通している。
【0120】
複数の導電性接合層29の各々は、各スイッチング素子20を複数の導電部材11に導通接合している。各導電性接合層29は、上記接合構造A1における焼結金属層93と同じ構成である。したがって、導電性接合層29の構成材料は、焼結金属(たとえば焼結銀)である。複数の導電性接合層29は、複数の第1接合層29Aおよび複数の第2接合層29Bを含んでいる。
【0121】
各第1接合層29Aは、各スイッチング素子20Aと導電部材11Aとの間に介在し、これらを導通接合する。各第1接合層29Aによって、各スイッチング素子20Aが導電部材11Aに接合されている。各第1接合層29Aは、導電部材11Aの上面(厚さ方向z2を向く面)に形成された粗化領域95A上に形成されている。
【0122】
各第2接合層29Bは、各スイッチング素子20Bと導電部材11Bとの間に介在し、これらを導通接合する。各第2接合層29Bによって、各スイッチング素子20Bが導電部材11Bに接合されている。各第2接合層29Bは、導電部材11Bの上面(厚さ方向z2を向く面)に形成された粗化領域95B上に形成されている。
【0123】
2つの入力端子31,32はそれぞれ、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCuまたはCu合金である。2つの入力端子31,32はそれぞれ、厚さ方向z寸法がたとえば0.8mm程度であるが、これに限定されない。2つの入力端子31,32はそれぞれ、図28および図32に示すように、半導体装置B1において幅方向x2寄りに位置する。2つの入力端子31,32の間には、たとえば電源電圧が印加される。入力端子31,32には、図示しない電源(図示略)から直接電源電圧が印加されてもよいし、入力端子31,32を挟み込むようにバスバー(図示略)を接続し、当該バスバーを介して、印加されてもよい。また、スナバ回路などを並列に接続してもよい。入力端子31は、正極(P端子)であり、入力端子32は、負極(N端子)である。入力端子32は、厚さ方向zにおいて、入力端子31および導電部材11Aの双方に対して離間して配置されている。
【0124】
入力端子31は、図26および図32に示すように、パッド部311および端子部312を有する。
【0125】
パッド部311は、入力端子31のうち、封止樹脂60に覆われた部分である。パッド部311の幅方向x1側の端部は、櫛歯状となっており、複数の櫛歯部311aを含んでいる。複数の櫛歯部311aの各々は、導電部材11Aの表面に導通接合されている。当該接合方法は、レーザ光を用いたレーザ溶接による接合であってもよいし、超音波接合であってもよいし、導電性接合材を用いた接合であってもよい。本実施形態においては、各櫛歯部311aは、レーザ溶接によって、導電部材11Aに接合されており、平面視において、溶接痕M1(図35参照)が視認される。
【0126】
図35は、溶接痕M1の一例を示している。溶接痕M1は、レーザ溶接によって形成される溶接痕であれば、その形状や特徴は図35に示す例示に限定されない。溶接痕M1は、図35に示すように、外周縁711、複数の線状痕712およびクレータ部713を有している。
【0127】
外周縁711は、溶接痕M1の境界である。外周縁711は、平面視において、基準点P3を中心とする円環状である。図35においては、外周縁711が、真円環状である場合を示しているが、レーザ溶接によるゆがみやジグザグが生じていてもよい。
【0128】
複数の線状痕712は、図35に示すように、平面視において円弧状である。具体的には、各線状痕712は、平面視において、外周縁711の中心を基準点P3として、当該基準点P3から外周縁711に向かって延びており、かつ、外周縁711に沿う環状方向の一方に向かって膨らむように湾曲している。外周縁711が平面視円環状であるので、上記環状方向はその周方向である。図35に示す例示においては、各線状痕712は、外周縁711の周方向の反時計回り方向に膨らむように湾曲している。
【0129】
クレータ部713は、平面視円形状である。平面視において、クレータ部713の半径は、外周縁711の半径よりも小さい。平面視におけるクレータ部713の中央位置P4は、外周縁711の中心位置(基準点P3に相当)と外周縁711とを結ぶ線分の中央部分に位置する。なお、図35において、この線分の中央を結んだ線を補助線L1で示している。
【0130】
端子部312は、入力端子31のうち、封止樹脂60から露出した部分である。端子部312は、図26および図32に示すように、平面視において、封止樹脂60から幅方向x2に延びている。
【0131】
入力端子32は、図26および図33に示すように、パッド部321および端子部322を有する。
【0132】
パッド部321は、入力端子32のうち、封止樹脂60に覆われた部分である。パッド部321は、連結部321aおよび複数の延出部321bを含んでいる。連結部321aは、奥行き方向yに延びる帯状である。連結部321aは、端子部322に繋がっている。複数の延出部321bはそれぞれ、連結部321aから幅方向x1に向けて延びる帯状である。複数の延出部321bは、平面視において、奥行き方向yに並んでおり、かつ、互いに離間している。各延出部321bは、厚さ方向z1を向く面が各土台部44に接しており、当該各土台部44を介して、導電部材11Aに支持されている。
【0133】
端子部322は、入力端子32のうち、封止樹脂60から露出した部分である。端子部322は、図26および図32に示すように、平面視において、封止樹脂60から幅方向x2に延びている。端子部322は、平面視矩形状である。端子部322は、図26および図32に示すように、平面視において、入力端子31の端子部312に重なっている。端子部322は、端子部312に対して、厚さ方向z2に離間している。端子部322の形状は、たとえば端子部312の形状と同一である。
【0134】
出力端子33は、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえCuまたはCu合金である。出力端子33は、図28に示すように、半導体装置B1において幅方向x1寄りに位置する。出力端子33から複数のスイッチング素子20により電力変換された交流電力(電圧)が出力される。
【0135】
出力端子33は、図26および図32に示すように、パッド部331および端子部332を含んでいる。
【0136】
パッド部331は、出力端子33のうち、封止樹脂60に覆われた部分である。パッド部331の幅方向x2側の部分は、櫛歯状となっており、複数の櫛歯部331aを含んでいる。複数の櫛歯部331aの各々は、導電部材11Bの表面に導通接合されている。当該接合方法は、レーザ光を用いたレーザ溶接による接合であってもよいし、超音波接合であってもよいし、導電性接合材を用いた接合であってもよい。本実施形態においては、各櫛歯部331aは、レーザ溶接によって、導電部材11Bに接合されており、平面視において、溶接痕M1(図35参照)が視認される。
【0137】
端子部332は、出力端子33のうち、封止樹脂60から露出した部分である。端子部332は、図26および図32に示すように、封止樹脂60から幅方向x1に延び出ている。
【0138】
一対のゲート端子34A,34Bは、図25図27および図29に示すように、奥行き方向yにおいて、各導電部材11A,11Bの隣に位置する。ゲート端子34Aには、複数のスイッチング素子20Aを駆動させるためのゲート電圧が印加される。ゲート端子34Bには、複数のスイッチング素子20Bを駆動させるためのゲート電圧が印加される。
【0139】
一対のゲート端子34A,34Bはそれぞれ、図26および図27に示すように、パッド部341および端子部342を有する。各ゲート端子34A,34Bにおいて、パッド部341は、封止樹脂60に覆われている。これにより、各ゲート端子34A,34Bは、封止樹脂60に支持されている。各パッド部341の表面には、たとえば銀めっきが施されていてもよい。各端子部342は、各パッド部341に繋がり、かつ、封止樹脂60から露出している。各端子部342は、幅方向xに見て、L字状をなしている。
【0140】
一対の検出端子35A,35Bは、図26図28および図29に示すように、幅方向xにおいて一対のゲート端子34A,34Bの隣に位置する。検出端子35Aから、複数のスイッチング素子20Aの各主面電極21(第1電極211)に印加される電圧(ソース電流に対応した電圧)が検出される。検出端子35Bから、複数のスイッチング素子20Bの各主面電極21(第1電極211)に印加される電圧(ソース電流に対応した電圧)が検出される。
【0141】
一対の検出端子35A,35Bはそれぞれ、図26および図27に示すように、パッド部351および端子部352を有する。各検出端子35A,35Bにおいて、パッド部351は、封止樹脂60に覆われている。これにより、各検出端子35A,35Bは、封止樹脂60に支持されている。各パッド部351の表面には、たとえば銀めっきが施されていてもよい。各端子部352は、各パッド部351に繋がり、かつ、封止樹脂60から露出している。各端子部352は、幅方向xに見て、L字状をなしている。
【0142】
複数のダミー端子36は、図25図27および図29に示すように、幅方向xにおいて一対の検出端子35A,35Bに対して一対のゲート端子34A,34Bの反対側に位置する。本実施形態においては、6つのダミー端子36がある。このうち3つのダミー端子36は、幅方向xの一方側(幅方向x2)に位置する。残り3つのダミー端子36は、幅方向xの他方側(幅方向x1)に位置する。複数のダミー端子36の数は、本構成に限定されない。また、複数のダミー端子36を備えない構成としてもよい。
【0143】
複数のダミー端子36はそれぞれ、図26および図27に示すように、パッド部361および端子部362を有する。各ダミー端子36において、パッド部361は、封止樹脂60に覆われている。これにより、複数のダミー端子36は、封止樹脂60に支持されている。各パッド部361の表面には、たとえば銀めっきが施されていてもよい。各端子部362は、各パッド部361に繋がり、かつ、封止樹脂60から露出している。各端子部362は、幅方向xに見て、L字状をなしている。図23図31に示す例示においては、各端子部362の形状は、一対のゲート端子34A,34Bの各端子部342の形状、および、一対の検出端子35A,35Bの各端子部352の形状と同一である。
【0144】
一対の側方端子37A,37Bは、図25図26および図33に示すように、平面視において、封止樹脂60の奥行き方向y1側の端縁部分であり、かつ、封止樹脂60の幅方向xの各端縁部分に重なっている。側方端子37Aは、導電部材11Aに接合されており、幅方向x2を向く端面を除いて、封止樹脂60に覆われている。側方端子37Bは、導電部材11Bに接合されており、幅方向x1を向く端面を除いて封止樹脂60に覆われている。各側方端子37A,37Bは、たとえば、平面視において、そのすべてが封止樹脂60に重なる。各側方端子37A,37Bの接合方法は、レーザ溶接による接合であってもよいし、超音波接合であってもよいし、導電性接合材を用いた接合であってもよい。本実施形態においては、側方端子37Aおよび側方端子37Bはそれぞれ、レーザ溶接によって、導電部材11A,11Bに接合されており、平面視において、溶接痕M1(図35参照)が形成されている。各側方端子37A,37Bは、一部が平面視において屈曲しており、かつ、他の一部が厚さ方向zに屈曲している。各側方端子37A,37Bの構成は、上記した例示に限定されない。たとえば、平面視において、樹脂側面631,632からそれぞれ突き出るまで延びていてもよい。また、半導体装置B1が各側方端子37A,37Bを備えていなくてもよい。
【0145】
一対のゲート端子34A,34B、一対の検出端子35A,35Bおよび複数のダミー端子36は、図25図27に示すように、平面視において、幅方向xに沿って配列されている。半導体装置B1において、一対のゲート端子34A,34B、一対の検出端子35A,35B、複数のダミー端子36および一対の側方端子37A,37Bは、いずれも同一のリードフレームから形成される。
【0146】
絶縁部材39は、電気絶縁性を有しており、その構成材料は、たとえば絶縁紙などである。絶縁部材39の一部は、平板であって、図33に示すように、厚さ方向zにおいて入力端子31の端子部312と、入力端子32の端子部322とに挟まれている。平面視において、入力端子31は、その全部が絶縁部材39に重なっている。また、平面視において、入力端子32は、パッド部321の一部と端子部322の全部とが絶縁部材39に重なっている。絶縁部材39により、2つの入力端子31,32が互いに絶縁されている。絶縁部材39の一部(幅方向x1側の部分)は、封止樹脂60に覆われている。
【0147】
絶縁部材39は、図33に示すように、介在部391および延出部392を有する。介在部391は、厚さ方向zにおいて、入力端子31の端子部312と、入力端子32の端子部322との間に介在する。介在部391は、その全部が端子部312と端子部322とに挟まれている。延出部392は、介在部391から端子部312および端子部322よりもさらに、幅方向x2に向けて延びている。
【0148】
一対の絶縁層41A,41Bは、電気絶縁性を有しており、その構成材料は、たとえばガラスエポキシ樹脂である。一対の絶縁層41A,41Bはそれぞれ、図26に示すように、奥行き方向yに延びる帯状である。絶縁層41Aは、図26図27図32および図33に示すように、導電部材11Aの上面(厚さ方向z2を向く面)に接合されている。絶縁層41Aは、複数のスイッチング素子20Aよりも幅方向x2に位置する。絶縁層41Bは、図26図27図32および図33に示すように、導電部材11Bの上面(厚さ方向z2を向く面)に接合されている。絶縁層41Bは、複数のスイッチング素子20Bよりも幅方向x1に位置する。
【0149】
一対のゲート層42A,42Bは、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばCuである。一対のゲート層42A,42Bは、図26に示すように、奥行き方向yに延びる帯状である。ゲート層42Aは、図26図27図32および図33に示すように、絶縁層41A上に配置されている。ゲート層42Aは、線状接続部材51(具体的には後述するゲートワイヤ511)を介して、各スイッチング素子20Aの第2電極212(ゲート電極)に導通する。ゲート層42Bは、図26図27図32および図33に示すように、絶縁層41B上に配置されている。ゲート層42Bは、線状接続部材51(具体的には後述するゲートワイヤ511)を介して、各スイッチング素子20Bの第2電極212(ゲート電極)に導通する。
【0150】
一対の検出層43A,43Bは、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばCuである。一対の検出層43A,43Bはそれぞれ、図26に示すように、奥行き方向yに延びる帯状である。検出層43Aは、図26図27図32および図33に示すように、ゲート層42Aとともに絶縁層41A上に配置されている。検出層43Aは、絶縁層41A上において、ゲート層42Aの隣に位置し、ゲート層42Aに離間している。検出層43Aは、幅方向xにおいて、たとえばゲート層42Aよりも複数のスイッチング素子20Aの近くに配置されている。よって、検出層43Aは、ゲート層42Aの幅方向x1側に位置する。検出層43Aは、線状接続部材51(具体的には後述する検出ワイヤ512)を介して、各スイッチング素子20Aの第1電極211(ソース電極)に導通する。検出層43Bは、図26図27図32および図33に示すように、ゲート層42Bとともに絶縁層41B上に配置されている。検出層43Bは、絶縁層41B上において、ゲート層42Bの隣に位置し、ゲート層42Bに離間している。検出層43Bは、幅方向xにおいて、たとえばゲート層42Bよりも複数のスイッチング素子20Bの近くに配置されている。よって、検出層43Bは、ゲート層42Bの幅方向x2側に位置する。検出層43Bは、線状接続部材51(具体的には後述する検出ワイヤ512)を介して、各スイッチング素子20Bの第1電極211(ソース電極)に導通する。
【0151】
複数の土台部44の各々は、電気絶縁性を有しており、その構成材料は、たとえばセラミックである。各土台部44は、図24および図32に示すように、導電部材11Aの表面に接合されている。各土台部44は、たとえば、平面視矩形状である。複数の土台部44は、奥行き方向yに並んでおり、互いに離間している。各土台部44の厚さ方向z寸法は、入力端子31の厚さ方向z寸法と絶縁部材39の厚さ方向z寸法との合計と略同じである。各土台部44には、入力端子32のパッド部321の各延出部321bが接合されている。各土台部44は、入力端子32を支持している。
【0152】
複数の線状接続部材51は、いわゆるボンディングワイヤである。複数の線状接続部材51の各々は、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばAl(アルミニウム)、Au(金)、Cuのいずれかである。複数の線状接続部材51は、図26および図27に示すように、複数のゲートワイヤ511、複数の検出ワイヤ512、一対の第1接続ワイヤ513および一対の第2接続ワイヤ514を含んでいる。
【0153】
複数のゲートワイヤ511の各々は、図26および図27に示すように、その一端がスイッチング素子20の第2電極212(ゲート電極)に接合され、その他端が一対のゲート層42A,42Bのいずれかに接合されている。複数のゲートワイヤ511には、スイッチング素子20Aの第2電極212とゲート層42Aとを導通させるものと、スイッチング素子20Bの第2電極212とゲート層42Bとを導通させるものとがある。
【0154】
複数の検出ワイヤ512の各々は、図26および図27に示すように、その一端がスイッチング素子20の第1電極211(ソース電極)に接合され、その他端が一対の検出層43A,43Bのいずれかに接合されている。複数の検出ワイヤ512には、スイッチング素子20Aの第1電極211と検出層43Aとを導通させるものと、スイッチング素子20Bの第1電極211と検出層43Bとを導通させるものとがある。
【0155】
一対の第1接続ワイヤ513は、図26および図27に示すように、その一方がゲート層42Aとゲート端子34Aとを接続し、その他方がゲート層42Bとゲート端子34Bとを接続する。一方の第1接続ワイヤ513は、一端がゲート層42Aに接合され、他端がゲート端子34Aのパッド部341に接合されており、これらを導通している。他方の第1接続ワイヤ513は、一端がゲート層42Bに接合され、他端がゲート端子34Bのパッド部341に接合されており、これらを導通している。
【0156】
一対の第2接続ワイヤ514は、図26および図27に示すように、その一方が検出層43Aと検出端子35Aとを接続し、その他方が検出層43Bと検出端子35Bとを接続する。一方の第2接続ワイヤ514は、一端が検出層43Aに接合され、他端が検出端子35Aのパッド部351に接合されており、これらを導通している。他方の第2接続ワイヤ514は、一端が検出層43Bに接合され、他端が検出端子35Bのパッド部351に接合されており、これらを導通している。
【0157】
複数の板状接続部材52の各々は、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばAl、Au、Cuのいずれかである。各板状接続部材52は、板状の金属板が折り曲げられて形成されうる。複数の板状接続部材52は、図24図25および図27に示すように、複数の第1リード521および複数の第2リード522を含んでいる。半導体装置B1では、複数の板状接続部材52の代わりに、上記線状接続部材51と同等のボンディングワイヤを用いてもよい。
【0158】
複数の第1リード521の各々は、図24図26および図27に示すように、スイッチング素子20Aと導電部材11Bとを接続する。各第1リード521は、一端がスイッチング素子20Aの第1電極211(ソース電極)に接合され、他端が導電部材11Bの表面に接合されている。
【0159】
複数の第2リード522の各々は、図24図26および図27に示すように、各スイッチング素子20Bと入力端子32とを接続する。各第2リード522は、一端が各スイッチング素子20Bの第1電極211(ソース電極)に接合され、他端が入力端子32のパッド部321の各延出部321bに接合されている。各第2リード522は、たとえば銀ペーストやはんだによって接合されている。本実施形態において、各第2リード522は、厚さ方向zに屈曲している。
【0160】
封止樹脂60は、図27および図28に示すように、絶縁基板10(ただし、裏面102を除く)、複数の導電部材11、複数のスイッチング素子20、複数の線状接続部材51および複数の板状接続部材52を覆っている。封止樹脂60の構成材料は、たとえばエポキシ樹脂である。封止樹脂60は、図23図25図26および図28図31に示すように、樹脂主面61、樹脂裏面62および複数の樹脂側面63を有している。
【0161】
樹脂主面61および樹脂裏面62は、厚さ方向zにおいて、離間し、かつ、互いに反対側を向く。樹脂主面61は、厚さ方向z2を向き、樹脂裏面62は、厚さ方向z1を向く。樹脂裏面62は、図29に示すように、平面視において、絶縁基板10の裏面102を囲む枠状である。複数の樹脂側面63の各々は、樹脂主面61および樹脂裏面62の双方に繋がり、かつ、これらに挟まれている。複数の樹脂側面63には、幅方向xにおいて離間する一対の樹脂側面631,632と、奥行き方向yにおいて離間する一対の樹脂側面633,634がある。樹脂側面631は、幅方向x2を向き、樹脂側面632は、幅方向x1を向く。樹脂側面633は、奥行き方向y2を向き、樹脂側面634は、奥行き方向y1を向く。
【0162】
封止樹脂60は、図23図28および図29に示すように、各々が樹脂裏面62から厚さ方向zに窪んだ複数の凹部65を含んでいる。複数の凹部65の各々は、奥行き方向yに延びており、平面視において、樹脂裏面62の奥行き方向y1の端縁から奥行き方向y2の端縁まで繋がっている。複数の凹部65は、平面視において、幅方向xに絶縁基板10の裏面102を挟んで、それぞれ3つずつ形成されている。封止樹脂60に複数の凹部65が形成されていなくてもよい。
【0163】
次に、本開示の半導体装置B1の作用効果について説明する。
【0164】
半導体装置B1では、各スイッチング素子20Aは、各第1接合層29Aを介して、導電部材11Aに導通接合されている。導電部材11Aの表面には、粗化領域95Aが形成されている。各第1接合層29Aは、粗化領域95A上に形成されている。したがって、半導体装置B1は、半導体素子91としてのスイッチング素子20Aと、導電体92としての導電部材11Aと、焼結金属層93としての第1接合層29Aとで構成された接合構造A1を含んでいる。これにより、各第1接合層29Aによる各スイッチング素子20Aと導電部材11Aとの接合強度を高くすることができる。したがって、熱による各第1接合層29Aの破壊や剥離を抑制することができるので、半導体装置B1の導電性および放熱性の低下を抑制することができる。
【0165】
半導体装置B1では、各スイッチング素子20Bは、各第2接合層29Bを介して、導電部材11Bに導通接合されている。導電部材11Bの表面には、粗化領域95Bが形成されている。各第2接合層29Bは、粗化領域95B上に形成されている。したがって、半導体装置B1は、半導体素子91としてのスイッチング素子20Bと、導電体92としての導電部材11Bと、焼結金属層93としての第2接合層29Bとで構成された接合構造A1を含んでいる。これにより、各第2接合層29Bによる各スイッチング素子20Bと導電部材11Bとの接合強度を高くすることができる。したがって、熱による各第2接合層29Bの破壊や剥離を抑制することができるので、半導体装置B1の導電性および放熱性の低下を抑制することができる。
【0166】
次に、他の実施形態にかかる半導体装置について、図36図38を参照して、説明する。
【0167】
図36に示す半導体装置B2は、半導体装置B1と異なり、各スイッチング素子20を搭載する部分以外にも、レーザ光の照射によって粗面化された領域が設けられている。具体的には、複数の導電部材11A,11B、入力端子32、出力端子33および一対の側方端子37A,37Bのそれぞれに、粗化領域95と異なる粗化領域96が設けられている。図36は、半導体装置B2を示す斜視図であって、封止樹脂60を想像線(二点鎖線)で示している。
【0168】
粗化領域96は、図36に示すように、複数の導電部材11A,11B、入力端子32、出力端子33および一対の側方端子37A,37Bのそれぞれ一部ずつに形成されている。各粗化領域96は、平面視において、複数の導電部材11A,11B、入力端子32、出力端子33および一対の側方端子37A,37Bのそれぞれのうち、封止樹脂60の周縁部分に重なる部分に形成されている。
【0169】
粗化領域96は、粗化領域95と同様に、レーザ光を照射することで、形成されている。粗化領域96は、ライン状の照射パターンに従ってレーザ光を走査することで、形成されている。したがって、粗化領域96において、形成される窪み950は、図13に示す粗化領域95と同様に、互いに平行した複数の線状溝954を有している。レーザ光の照射パターンは、ライン状の照射パターンに限らず、メッシュ格子状の照射パターン、同心円状の照射パターン、放射状の照射パターン、ドット状の照射パターンであってもよい。メッシュ格子状の照射パターンの場合、図1および図3に示す粗化領域95と同様の構造の粗化領域96が形成され、同心円状の照射パターンの場合、図16に示す粗化領域95と同様の構造の粗化領域96が形成され、放射状の照射パターンの場合、図19に示す粗化領域95と同様の構造の粗化領域96が形成され、そして、ドット状の照射パターンの場合、図10に示す粗化領域95と同様の構造の粗化領域96が形成される。半導体装置B2において、粗化領域95と粗化領域96とは、異なる構造であってもよいし、同じ構造であってもよい。
【0170】
半導体装置B2においても、接合構造A1を備えることで、導電性接合層29の破壊や剥離を抑制して、各スイッチング素子20と各導電部材11との接合強度を高めることができる。したがって、半導体装置B2の導電性および放熱性の低下を抑制することができる。
【0171】
半導体装置B2では、複数の導電部材11A,11B、入力端子32、出力端子33および一対の側方端子37A,37Bのそれぞれ一部ずつに、粗化領域96が形成されている。封止樹脂60は、この粗化領域96に接している。これにより、封止樹脂60は、アンカー効果によって、複数の導電部材11A,11B、入力端子32、出力端子33および一対の側方端子37A,37Bとの接合強度が高くなる。したがって、封止樹脂60と粗化領域96を設けた各部材との接合強度を高めることができるので、半導体装置B2は、粗化領域95によって導電性接合層29の接合強度を高めるとともに、粗化領域96によって封止樹脂60の接合強度を高めることができる。すなわち、半導体装置B1は、導電性接合層29の破壊や剥離を抑制しつつ、かつ、封止樹脂60の剥離を抑制することができる。
【0172】
半導体装置B2において、厚さ方向zに見て、粗化領域95における溝(第1線状溝951および第2線状溝952)の幅と、粗化領域96が有する溝(線状溝954)の幅とを変えてもよい。本願発明者は、上記した焼結用金属ペースト材930の毛細管効果の検証と同様に、エポキシ樹脂の毛細管効果を検証したところ、ガラス管の半径がおよそ20μm以下の場合に、液面の上昇(毛細管現象)がより顕著に表れた。したがって、粗化領域96における溝の幅を粗化領域95における溝の幅よりも大きくしても、エポキシ樹脂に対する親液性があまり損なわれない。よって、粗化領域96における溝の幅を大きくして、レーザ光を照射する時間や手間を低減させることが可能となる。これにより、半導体装置B2の製造効率を向上させることができる。
【0173】
図37に示す半導体装置B3は、半導体装置B1と比較して、封止樹脂60の形状が異なっている。それ以外については、上記半導体装置B1と同じである。図37は、半導体装置B3を示す斜視図である。
【0174】
本実施形態の封止樹脂60は、平面視において、奥行き方向yの各端縁部分が、幅方向xに延び出ている。封止樹脂60のうち、幅方向x2に延び出た部分によって、2つの入力端子31,32および絶縁部材39の各々の一部が覆われている。また、封止樹脂60のうち、幅方向x1に延び出た部分によって、出力端子33の一部が覆われている。
【0175】
半導体装置B3においても、接合構造A1を備えることで、導電性接合層29の破壊や剥離を抑制して、各スイッチング素子20と各導電部材11との接合強度を高めることができる。したがって、半導体装置B2の導電性および放熱性の低下を抑制することができる。
【0176】
半導体装置B3は、半導体装置B1と比較して、封止樹脂60が大きく、2つの入力端子31,32、出力端子33および絶縁部材39の一部ずつをさらに覆っている。これにより、半導体装置B3は、半導体装置B1よりも、2つの入力端子31,32、出力端子33および絶縁部材39を、劣化や折れ曲がりなどから、保護することができる。
【0177】
図38に示す半導体装置B4は、半導体装置B1と異なり、1つのスイッチング素子20を備えたディスクリート半導体である。なお、スイッチング素子20の代わりに、ダイオードあるいはICなどの各種半導体素子を用いてもよい。
【0178】
半導体装置B4は、いわゆるリードフレーム構造である。半導体装置B4は、リードフレーム72を備えている。リードフレーム72の構成材料は、特に限定されないが、たとえばCuあるいはCu合金である。また、リードフレーム72の形状は、図38に示す例示に限定されない。リードフレーム72には、スイッチング素子20が搭載されている。リードフレーム72の一部、および、スイッチング素子20は、封止樹脂60によって覆われている。リードフレーム72は、上記接合構造A1の導電体92に対応する。
【0179】
半導体装置B4において、図38に示すように、リードフレーム72のうち、スイッチング素子20が搭載される面(いわゆるダイパッドの上面)には、粗化領域95が形成されている。そして、当該粗化領域95上に導電性接合層29が形成されている。よって、半導体装置B3は、半導体素子91としてのスイッチング素子20と、導電体92としてのリードフレーム72と、焼結金属層93としての導電性接合層29とで構成された接合構造A1を含んでいる。
【0180】
半導体装置B4においても、接合構造A1を備えることで、導電性接合層29の破壊や剥離を抑制して、スイッチング素子20とリードフレーム72との接合強度を高めることができる。したがって、半導体装置B4の導電性および放熱性の低下を抑制することができる。
【0181】
半導体装置B2~B4においては、接合構造A1を備えている場合を示したが、これに限定されず、接合構造A2~A5のいずれかを備えていてもよい。また、半導体装置B1~B4において、接合構造A1~A5のいずれかのみを備えているもの限定されず、各スイッチング素子20に応じて、これらを複合的に形成されていてもよい。
【0182】
本開示にかかる接合構造、半導体装置および接合構造の形成方法は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の接合構造および半導体装置の各部の具体的な構成、および、本開示の接合構造の形成方法の各工程の具体的な処理は、種々に設計変更自在である。
図1
図2
図3
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図5
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