(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20240731BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B60W30/16
G08G1/16 E
(21)【出願番号】P 2020572192
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004133
(87)【国際公開番号】W WO2020166433
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2019024312
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹井 裕之
(72)【発明者】
【氏名】上松 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 健
(72)【発明者】
【氏名】グエン ジュイヒン
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128178(JP,A)
【文献】特開2016-147556(JP,A)
【文献】特開2019-034628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の車間距離を維持しながら前方車両に追従して自動走行する車両であって、
前記車両の周辺に存在する移動体を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された移動体のうち、前記前方車両と前記車両との間の領域へ進入しうる進入移動体を決定し、前記進入移動体と
前記車両との位置に基づいて算出される距離に基づいて、前記車両を加速または減速させる制御部と、を有
し、
前記制御部は、
前記距離が第1閾値以上である場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離よりも小さい車間距離となるまで、前記車両を加速させ、
前記距離が前記第1閾値より小さい第2閾値未満である場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離よりも大きい車間距離となるまで、前記車両を減速させる、
車両。
【請求項2】
前記制御部は、
前記距離が前記第1閾値以上であり、かつ、前記車両に搭乗者がいる場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離よりも小さい第1車間距離となるまで、前記車両を加速させ、
前記距離が前記第1閾値以上であり、かつ、前記車両に搭乗者がいない場合、前記所定の車間距離が、前記第1車間距離よりも小さい第3車間距離となるまで、前記車両を加速させる、
請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記距離が前記第2閾値未満であり、かつ、前記車両に搭乗者がいる場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離よりも大きい第2車間距離となるまで、前記車両を減速させ、
前記距離が前記第2閾値未満であり、かつ、前記車両に搭乗者がいない場合、前記所定の車間距離が、前記第2車間距離よりも大きい第4車間距離となるまで、前記車両を減速させる、
請求項
1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御部は、
前記距離が前記第1閾値未満、前記第2閾値以上であり、前記車両に搭乗者がいる場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離より大きい車間距離となるまで、前記車両を減速させ、
前記距離が前記第1閾値未満、前記第2閾値以上であり、前記車両に搭乗者がいない場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離より小さい車間距離となるまで、前記車両を加速させる、
請求項
1に記載の車両。
【請求項5】
前記制御部は、
前記検出部によって検出された移動体のうち、前記領域へ向かって移動している移動体を、前記進入移動体に決定する、
請求項
1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、前方の車両に追従して自動走行する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、先導車両に追従して隊列走行する自動走行車両が開示されている。この自動走行車両は、走行方向に直交する方向(換言すれば、自動走行車両の車幅方向)の加速度に応じて加速または減速を行う。これにより、自動走行車両と先導車両との間で、車種が異なり、カーブにおける遠心力や走行軌跡に違いが生じる場合でも、自動走行車両は安定した走行を実現することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自動走行車両は、その自動走行車両と先導車両との間に他の移動体(例えば、人間)が進入した場合、走行を停止する。そのため、隊列が分断され、安定した隊列走行が実現されないという問題がある。
【0005】
本開示の一態様の目的は、安定した隊列走行を実現できる車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両は、所定の車間距離を維持しながら前方車両に追従して自動走行する車両であって、前記車両の周辺に存在する移動体を検出する検出部と、前記検出部によって検出された移動体のうち、前記前方車両と前記車両との間の領域へ進入しうる進入移動体を決定し、前記進入移動体と前記車両との位置に基づいて算出される距離に基づいて、前記車両を加速または減速させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記距離が第1閾値以上である場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離よりも小さい車間距離となるまで、前記車両を加速させ、前記距離が前記第1閾値より小さい第2閾値未満である場合、前記所定の車間距離が、前記所定の車間距離よりも大きい車間距離となるまで、前記車両を減速させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、安定した隊列走行を実現できる車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示の実施の形態に係る車両の上面を示す模式図
【
図1B】本開示の実施の形態に係る車両の右側面を示す模式図
【
図2】本開示の実施の形態に係る車両の構成の一例を示すブロック図
【
図3】本開示の実施の形態に係る第1設定領域および第2設定領域の一例を示す模式図
【
図4】本開示の実施の形態に係る各種車間距離の一例を示す模式図
【
図5】本開示の実施の形態に係る車両の動作の一例を示すフローチャート
【
図6】本開示の実施の形態に係る車両と進入移動体との位置関係の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する構成要素については同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0010】
まず、本実施の形態に係る車両100の構成について、
図1A、
図1B、
図2を用いて説明する。
【0011】
図1Aは、車両100の上面を示す模式図である。
図1Bは、車両100の右側面を示す模式図である。
図2は、車両100の構成の一例を示すブロック図である。
【0012】
車両100は、予め定められた車間距離(例えば、
図4に示す車間距離L)を維持しながら前方車両(例えば、
図4に示す車両200)に追従して自動走行することが可能な車両である。また、車両100は、電動式の車両である。
【0013】
車両100は、人が搭乗可能な車椅子型の構造を有する。具体的には、
図1A、
図1Bに示すように、車両100は、フレーム101、着座シート102、背もたれ部103、アームレスト104、および車輪105を備える。
【0014】
また、
図1A、
図1B、
図2に示すように、車両100は、検出部110、通信部120、駆動部130、操作部140、記憶部150、および制御部160を備える。
【0015】
検出部110は、車両100の周辺(例えば、前後左右の方向)に存在する移動体(例えば、人、他車両等)を検出する。移動体を検出できる範囲は、予め設定されており、例えば、車両100(または、車両100近傍に設定された基準点でもよい)を中心とした円形、半円形、または矩形の領域である。なお、検知部110は、隊列走行時、車両100単独での自動走行時、および停車時のいずれの場合においても、移動体の検出を行うことができる。
【0016】
また、検出部110は、移動体と車両100との間の距離、および、車両100の進行方向に対する移動体の存在方向を示す角度を測定する。
【0017】
検出部110としては、例えば、レーザセンサ、超音波センサ、またはミリ波センサなどのデバイスを用いることができるが、それらに限定されない。
【0018】
通信部120は、外部の装置と通信を行う。外部の装置としては、例えば、隊列走行時に車両100が追従する前方車両に搭載された通信部、隊列走行時に車両100が追従される後方車両に搭載された通信部、または、前方車両の位置情報を送信する端末装置などが挙げられる。
【0019】
通信部120が受信する情報としては、例えば、前方車両および後方車両それぞれの速度情報や位置情報などが挙げられる。また、通信部120が送信する情報としては、例えば、車両100の速度情報や位置情報などが挙げられる。なお、通信部120は、隊列走行時、車両100単独での自動走行時、および停車時のいずれの場合においても、外部の装置と通信を行うことができる。
【0020】
通信部120による通信方法としては、例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ミリ波などの無線通信、赤外線などの光通信、または超音波通信などを用いることができるが、それらに限定されない。
【0021】
駆動部130は、制御部160の制御により、車輪105を回転させたり、車輪105を転舵させたりして、車両100を走行させる。
【0022】
操作部140は、ユーザによる操作を受け付ける。この操作としては、例えば、隊列走行または自律走行の実行を指示する操作や、車両100における搭乗者の有無を設定する操作などが挙げられる。なお、操作部140は、車両100における必須の構成要素ではない。
【0023】
記憶部150は、例えば、予め定められた各種領域(
図3参照)を示す情報、および、予め定められた各種車間距離(
図4参照)を示す情報を記憶する。各種領域および各種車間距離の詳細については、後述する。
【0024】
制御部160は、操作部140が受け付けた操作内容や検出部110の検出結果に応じて、適宜記憶部150から情報を読み出し、その情報に基づいて処理を行い、通信部120や駆動部130を制御する。この制御部160の動作の詳細については、後述する。
【0025】
なお、
図1A、
図1B、および
図2では図示を省略しているが、制御部160は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路等のハードウェアを有する。後述する制御部160の各機能は、例えば、CPUが、メモリに格納された制御プログラムを読み出して実行することにより、実現される。
【0026】
以上、車両100の構成について説明した。
【0027】
次に、
図3を用いて、予め定められた第1設定領域A1および第2設定領域A2について説明する。
【0028】
図3は、第1設定領域A1および第2設定領域A2の一例を示す模式図である。
図3は、車両100の前方を走行する車両200(前方車両の一例)と、その車両200に追従して隊列走行している車両100とを真上から見た状態を示している。また、
図3は、車両200および車両100が、図中の左から右へ走行している場合を示している。
【0029】
第1設定領域A1および第2設定領域A2は、車両100を基準として予め設定された領域である。第2設定領域A2は、車両200と車両100との間の領域である。第1設定領域A1は、第2設定領域A2を除いた領域である。
【0030】
制御部160は、車両100が車両200に追従して隊列走行しているときに、検出部110により検出された移動体(図示略)のうち、第1設定領域A1内に存在する移動体を、進入移動体に決定する。進入移動体とは、第2設定領域A2内へ進入するおそれがある移動体である。
【0031】
また、制御部160は、車両100が車両200に追従して隊列走行しているときに、検出部110により検出された移動体(図示略)が第2設定領域A2内に進入した場合、車両100の走行を停止するように駆動部130を制御する。
【0032】
なお、第1設定領域A1および第2設定領域A2の大きさおよび形状は、
図3に示す大きさおよび形状に限定されない。また、第1設定領域A1は、検出部110が移動体を検出できる範囲と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
以上、第1設定領域A1および第2設定領域A2について説明した。
【0034】
次に、
図4を用いて、予め定められた車間距離L、第1車間距離L1、第2車間距離L2、第3車間距離L3、および第4車間距離L4について説明する。
【0035】
図4は、車間距離L、第1車間距離L1、第2車間距離L2、第3車間距離L3、および第4車間距離L4の一例を示す模式図である。
図4は、車両200と、その車両200に追従して隊列走行している車両100とを真上から見た状態を示している。また、
図4は、車両200および車両100が、図中の左から右へ走行している場合を示している。
【0036】
車間距離Lは、車両100が車両200に追従して隊列走行する際に維持される車間距離である。
【0037】
第1車間距離L1、第2車間距離L2、第3車間距離L3、および第4車間距離L4は、車両100が車両200に追従して隊列走行しているときに、進入移動体が検出された場合に、車間距離Lから変更される車間距離である。車間距離Lは、例えば、
図3に示した第2設定領域A2の長手方向の長さと同じである。
【0038】
第1車間距離L1および第3車間距離L3は、車間距離Lより小さい(短い)。また、第3車間距離L3は、第1車間距離L1より小さい。
【0039】
また、第1車間距離L1は、例えば、車両100の搭乗者に、車両100が車両200に追突するのではないかという不安を生じさせない距離である。
【0040】
第2車間距離L2および第4車間距離L4は、車間距離Lより大きい(長い)。また、第4車間距離L4は、第2車間距離L2より大きい。
【0041】
また、第2車間距離L2は、例えば、車両100の搭乗者に、車両100が車両200へ追従せずに取り残されるのではないかという不安を生じさせない距離である。
【0042】
以上、車間距離L、第1車間距離L1、第2車間距離L2、第3車間距離L3、および第4車間距離L4について説明した。
【0043】
次に、車両100の動作について、
図5を用いて説明する。
【0044】
図5は、車両100の動作の一例を示すフローチャートである。
図5に示す動作は、例えば、車両100の操作部140において隊列走行の実行を指示する操作が行われ、車両100が車両200(
図3、
図4参照)に追従して隊列走行を開始した場合に開始される。
【0045】
まず、制御部160は、検出部110により検出された移動体のうち、第1設定領域A1(
図3参照)内に移動体が存在するか否かを判定する(ステップS1)。
【0046】
第1設定領域A1内に移動体が存在しない場合(ステップS1:NO)、フローはステップS1へ戻る。
【0047】
一方、第1設定領域A1内に移動体が存在する場合(ステップS1:YES)、制御部160は、第1設定領域A1内の移動体を、進入移動体に決定する(ステップS2)。進入移動体とは、上述したとおり、第2設定領域A2(
図3参照)へ進入するおそれがある移動体である。
【0048】
次に、制御部160は、進入移動体と第2設定領域A2との間の距離を算出する(ステップS3)。
【0049】
ここで、ステップS3の算出処理について、
図6を用いて説明する。
図6は、車両100と進入移動体Xとの位置関係の一例を示す模式図である。
図6は、車両200と、その車両200に追従して隊列走行している車両100と、進入移動体Xとを真上から見た状態を示している。また、
図6は、車両200および車両100が、図中の左から右へ走行している場合を示している。
【0050】
図6において、中心点aは、車両100の車幅方向(図中の上下方向)の中心点である。また、直線bは、中心点aを起点として車両100の進行方向(図中の右方向)を示す直線である。中心点aおよび直線bは、制御部160にとって既知である。
【0051】
また、
図6において、距離cは、中心点aと進入移動体Xとの間の距離である。角度θは、車両100の進行方向(直線b)に対する進入移動体Xの存在方向を示す角度である。距離cおよび角度θは、検出部110により測定され、制御部160へ通知される。
【0052】
制御部160は、上述した中心点a、直線b、距離c、および角度θに基づいて、中心点aと交点dとの間の距離を算出する。交点dは、中心点aと進入移動体Xとを結んだ直線(距離cを示す直線)と、第2設定領域A2の外縁部分との交点である。
【0053】
そして、制御部160は、距離cから、中心点aと交点dとの間の距離を差し引いて、進入移動体Xと第2設定領域A2との間の距離(換言すれば、交点dと進入移動体Xとの間の距離)を算出する。以下では、ここで算出された進入移動体Xと第2設定領域A2との間の距離を「算出距離」という。
【0054】
以上、ステップS3の算出処理について説明した。以下、
図5の説明に戻る。
【0055】
次に、制御部160は、算出距離が第1閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0056】
算出距離が第1閾値以上である場合(ステップS4:YES)、制御部160は、車両100に搭乗者がいるか否かを判定する(ステップS5)。
【0057】
搭乗者の有無は、例えば、隊列走行の開始前にユーザの操作により設定される。例えば、ユーザは、隊列走行の実行を指示する操作を行う前に、車両100の操作部140において、搭乗者の有無を指定する操作を行う。
【0058】
車両100に搭乗者がいる場合(ステップS5:YES)、制御部160は、第1の加速制御を実行する(ステップS6)。
【0059】
第1の加速制御とは、車間距離Lが第1車間距離L1(
図4参照)となるまで、車両100を加速させる制御である。これにより、車両100と車両200との間の車間距離を詰めることができ、進入移動体が車両100と車両200との間に進入することを防止できる。よって、隊列が分断されず、車両100は、安定した隊列走行を実行できる。また、第1車間距離L1を用いるため、第1の加速制御が行われた際に、車両100の搭乗者は、車両100が車両200に追突するのではないかという不安を感じることがない。
【0060】
車両100に搭乗者がいない場合(ステップS5:NO)、制御部160は、第2の加速制御を実行する(ステップS7)。
【0061】
第2の加速制御とは、車間距離Lが第3車間距離L3(
図4参照)となるまで、車両100を加速させる制御である。これにより、車両100と車両200との間の車間距離を詰めることができ、進入移動体が車両100と車両200との間に進入することを阻害できる。よって、隊列が分断されず、車両100は、安定した隊列走行を実行できる。また、第1車間距離L1より小さい第3車間距離L3を用いるため、車両100と車両200との間への進入移動体の進入を、より効果的に阻害できる。
【0062】
一方、算出距離が第1閾値以上ではない場合(ステップS4:NO)、制御部160は、算出距離が第1閾値より小さい第2閾値未満であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0063】
算出距離が第2閾値未満である場合(ステップS8:YES)、制御部160は、車両100に搭乗者がいるか否かを判定する(ステップS9)。
【0064】
車両100に搭乗者がいる場合(ステップS9:YES)、制御部160は、第2の減速制御を実行する(ステップS11)。
【0065】
第2の減速制御とは、車間距離Lが第2車間距離L2(
図4参照)となるまで、車両100を減速させる。これにより、車両100と車両200との間の車間距離が開き、進入移動体が車両100に衝突することなく、車両100と車両200との間を通過することができる。よって、隊列が分断されず、車両100は、安定した隊列走行を実行できる。また、第2車間距離L2を用いるため、第2の減速制御が行われた際に、車両100の搭乗者は、車両100が車両200へ追従せずに取り残されるのではないかという不安を感じることがない。
【0066】
一方、車両100に搭乗者がいない場合(ステップS9:NO)、制御部160は、第1の減速制御を実行する(ステップS10)。
【0067】
第1の減速制御とは、車間距離Lが第4車間距離L4(
図4参照)となるまで、車両100を減速させる。これにより、車両100と車両200との間の車間距離が開き、進入移動体が車両100に衝突することなく、車両100と車両200との間を通過することができる。よって、隊列が分断されず、車両100は、安定した隊列走行を実行できる。また、第2車間距離L2より大きい第4車間距離L4を用いるため、より余裕をもって進入移動体を車両100と車両200との間へ通過させることができる。
【0068】
算出距離が第2閾値未満ではない場合(ステップS8:NO)、制御部160は、車両100に搭乗者がいるか否かを判定する(ステップS12)。
【0069】
車両100に搭乗者がいる場合(ステップS12:YES)、制御部160は、上述した第2の減速制御を実行する(ステップS11)。第2の減速制御による作用効果は、上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
一方、車両100に搭乗者がいない場合(ステップS12:NO)、制御部160は、上述した第2の加速制御を実行する(ステップS7)。第2の加速制御による作用効果は、上述したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
以上、車両100の動作について説明した。
【0072】
ここまで詳述したように、本実施の形態の車両100は、所定の車間距離を維持しながら車両200に追従して自動走行する車両であって、車両100の周辺において検出された移動体のうち、車両200と車両100との間の第2設定領域A2内へ進入しうる進入移動体を決定し、進入移動体と第2設定領域A2との間の距離に基づいて、車両100を加速または減速させる制御を行うことを特徴とする。車両100を加速させる制御が行われた場合、進入移動体が車両100と車両200との間に進入することを阻害でき、車両100を減速させる制御が行われた場合、進入移動体が車両100と車両200との間を通過することができるので、隊列が分断されることがない。その結果、車両100は、安定した隊列走行を実現することができる。
【0073】
また、本実施の形態の車両100では、車両100に搭乗者がいる場合、かつ、車両100を加速させる制御が行われた場合、車両100の搭乗者は、車両100が車両200に追突するのではないかという不安を感じることがない。
【0074】
また、本実施の形態の車両100では、車両100に搭乗者がいる場合、かつ、車両100を減速させる制御が行われた場合、車両100の搭乗者は、車両100が車両200へ追従せずに取り残されるのではないかという不安を感じることがない。
【0075】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下、変形例について説明する。
【0076】
[変形例1]
第1車間距離L1、第2車間距離L2、第3車間距離L3、および第4者間距離L4は、例えば、車両100が走行する場所における人混みの度合い、および/または、車両100が走行する位置において許容されている最高速度に応じて、複数用意され、選択されてもよい。また、その選択は、例えば、ユーザの操作によって行われてもよいし、制御部160によって行われてもよい。後者の場合、例えば、制御部160は、通信部120が受信した人混みの度合いを示す情報および/または許容最高速度を示す情報に基づいて、選択を行ってもよい。
【0077】
[変形例2]
実施の形態では、第1設定領域A1内に存在する移動体を進入移動体に決定する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0078】
例えば、制御部160は、検出部110によって検出された移動体(または、第1設定領域A1内の移動体)のうち、第2設定領域A2へ向かって移動している移動体を、進入移動体に決定してもよい。
【0079】
より具体的には、制御部160は、検出部110によって検出された移動体(または、第1設定領域A1内の移動体)のうち、
図6に示した直線bと、所定の単位時間において移動体が移動する方向を示すベクトルを含む線との成す角度が所定角度以上であり、かつ、所定の単位時間において上記ベクトルを含む線が
図6に示した直線bと交わる移動体を、進入移動体に決定してもよい。
【0080】
[変形例3]
実施の形態では、ユーザにより車両100における搭乗者の有無が設定される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0081】
例えば、車両100は、車両100における搭乗者の有無を検知可能なセンサ(例えば、重量センサ、赤外線センサ等)を搭載してもよい。そして、制御部160は、そのセンサの検知結果に基づいて、車両100に搭乗者がいるか否かを判定してもよい(例えば、
図5のステップS5、S9、S12)。
【0082】
[変形例4]
制御部160は、車両100と車両200との車間距離が一定値以上となった場合、車両200に対して減速または停止を指示する制御情報を送信するように通信部120を制御してもよい。この制御情報を受信した車両200は、減速または停止を行う。これにより、車両100と車両200との隊列を維持することができる。
【0083】
[変形例5]
制御部160は、車間距離Lを維持して走行するために、通信部120が車両200から受信した車両200の速度情報に基づいて、車両100の速度を制御してもよい。これにより、精度良く車両100の速度を制御でき、安定した隊列走行を実現できる。
【0084】
[変形例6]
制御部160は、車両100が走行する位置において予め定められた速度に応じて、車両100の速度を制御してもよい。この場合の具体例を以下に説明する。
【0085】
車両100は、車両100の現在位置を検出する現在位置検出部(図示略)を備える。現在位置検出部は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機でもよいし、ビーコン受信機でもよい。また、記憶部150は、場所毎に速度が定められた地図情報を記憶する。この地図情報では、例えば、多くの人が存在することが想定される場所に対して、人の歩行速度以下の速度が定められている。
【0086】
制御部160は、記憶部150から読み出した地図情報において、現在位置検出部により検出された現在位置に該当する位置を特定し、その位置に定められた速度で車両100を走行させるように駆動部130を制御する。
【0087】
なお、上記説明では、地図情報が記憶部150に記憶されている場合を例に挙げて説明したが、地図情報は、外部の装置から通信部120が受信してもよい。
【0088】
[変形例7]
制御部160は、進入移動体に向けて、車両100に搭載されたスピーカ(図示略)から警告音を出力したり、車両100に搭載された表示灯(図示略)を点灯させたりしてもよい。これにより、進入移動体に対して車両100の存在をより認識させることができる。よって、進入移動体は、第2車間距離L2への進入を容易に回避できる。
【0089】
なお、車両100は、スピーカおよび/または表示灯を、車両100の左右両側に備えることが好ましい。これにより、進入移動体に対して車両100の存在を認識させるのみならず、車両100の搭乗者が、進入移動体の存在方向を認識することができる。
【0090】
[変形例8]
操作部140は、搭乗者が車両100の進行方向および速度を指定する操作を受け付けてもよい。例えば、制御部160は、隊列走行中に操作部が上記操作を受け付けた場合、車両200への追従を中止し、指定された速度で指定された進行方向へ車両100を走行させるように駆動部130を制御する。
【0091】
これにより、例えば隊列走行中に緊急自体が発生した場合に、搭乗者の意思を反映した走行を実現でき、安全性を確保することができる。なお、上記操作が終了した場合、制御部160は、通信部120による車両200との通信に基づいて、再度、隊列走行状態に復帰するように駆動部130を制御してもよい。
【0092】
[変形例9]
制御部160は、隊列走行中の車両100に搭乗者がいる場合、その搭乗者の不安(緊張)の度合いに応じて、加速または減速の制御を行ってもよい。
【0093】
その場合、制御部160は、搭乗者の不安の度合いを、所定のセンサから取得した生体情報(例えば、搭乗者の脈拍、瞳孔の開き具合、または発汗量等を示す情報)に基づいて判定する。例えば、生体情報の値が予め定められた閾値より大きい場合、搭乗者の不安の度合いが高いと判定し、生体情報の値が予め定められた閾値以下である場合、搭乗者の不安の度合いが低いと判定する。
【0094】
搭乗者の不安の度合いが低い場合、制御部160は、
図5のステップS6において、第1の加速制御ではなく、ステップS7の第2の加速制御を行う。すなわち、制御部160は、車間距離Lが第3車間距離L3(
図4参照)となるまで、車両100を加速させる。
【0095】
また、搭乗者の不安の度合いが低い場合、制御部160は、
図5のステップS11において、第2の減速制御ではなく、ステップS10の第1の減速制御を行う。すなわち、制御部160は、車間距離Lが第4車間距離L4(
図4参照)となるまで、車両100を減速させる。
【0096】
[変形例10]
車両100は、走行開始時の隊列編成において、上述した車間距離の設定値を参照してもよい。
【0097】
具体的には、車両100は、走行開始時、例えば操作部140によって、搭乗者の有無を設定される。そして、車両100は、追従対象である車両200との車間距離Lを、搭乗者の有無に基づいて決定し、隊列編成を行う。このとき、車間距離Lは、搭乗者がいる場合、第1車間距離L1より大きく、第2車間距離L2より小さく設定されることが好ましい。また、車間距離Lは、搭乗者がいない場合、第3車間距離L3より大きく、第2車間距離L2より小さく設定されることが好ましい。さらに、車間距離Lは、搭乗者がいない場合のほうが、搭乗者がいる場合よりも小さく設定されることがより好ましい。
【0098】
2019年2月14日出願の特願2019-024312の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示の車両は、複数の人が移動する環境(例えば、屋内外の公共空間)で使用することができ、車椅子を利用する介護分野や福祉分野などにおいて有用である。
【符号の説明】
【0100】
100、200 車両
101 フレーム
102 着座シート
103 背もたれ部
104 アームレスト
105 車輪
110 検出部
120 通信部
130 駆動部
140 操作部
150 記憶部
160 制御部