(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ステージ装置、露光装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240802BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/68 K
(21)【出願番号】P 2020113193
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 久
(72)【発明者】
【氏名】神谷 重雄
(72)【発明者】
【氏名】是永 伸茂
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-260116(JP,A)
【文献】特開2013-201801(JP,A)
【文献】特表2016-536638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を
走査露光す
る露光装置に用いら
れるステージ装置であって、
前記基板を保持して移動するステージと、
前記ステージ
を走査方向に加速させる
ための力
を発生させる第1電磁石を含む第1ユニットと、
前記ステージを前記走査方向に交差する
交差方向に加速させる
ための力
を発生させる第2電磁石を含む第2ユニットと、
前記第1ユニット及び前記第2ユニットが設けられた構造体を移動させる移動部と、を有し、
前記交差方向を法線とする平面に
おける前記第2電磁石のコアの面積
は、前記走査方向を法線とする平面に
おける前記第1電磁石のコアの面積よりも大きいことを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記交差方向を法線とする平面に
おける前記第2電磁石のコアの面積は
、前記走査方向を法線とする平面
おける前記第1電磁石のコアの面積の1.1倍以上の大きさを有することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
基板を
走査露光す
る露光装置に用いら
れるステージ装置であって、
前記基板を保持して移動するステージと、
前記ステージ
を走査方向に加速させる
ための力
を発生させる第1リニアモータを含む第1ユニットと、
前記ステージを前記走査方向に交差する
交差方向に加速させる
ための力
を発生させる第2リニアモータを含む第2ユニットと、
前記第1ユニット及び前記第2ユニットが設けられた構造体を移動させる移動部と、を有し、
前記第2リニアモータのコイル及び磁石のそれぞれの体積の総和
は、前記第1リニアモータのコイル及び磁石のそれぞれの体積の総和よりも大きいことを特徴とするステージ装置。
【請求項4】
前記第2リニアモータのコイル及び磁石のそれぞれの体積の総和は、前記第1リニアモータのコイル及び磁石のそれぞれの体積の総和の1.1倍以上であることを特徴とする請求項3に記載のステージ装置。
【請求項5】
前記ステージの加速度をSA[G]とし、前記ステージの走査速度をSV[m/s]とすると、
SA/SV > 4.5
を満たすことを特徴とする請求項1乃至
4のうちいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項6】
基板を
走査露光す
る露光装置に用いら
れるステージ装置であって、
前記基板を保持して移動するステージと、
前記ステージ
を走査方向に移動させる推力を発生する第1アクチュエータと、
前記ステージを前記走査方向に交差する
交差方向に移動させる推力を発生する第2アクチュエータと、を有し、
前記第2アクチュエータ
の可動対象の質量
である第2可動質量で
前記第2アクチュエータにて発生する最大推力を割った値は、前記第1アクチュエータ
の可動対象の質量
であり前記第2可動質量とは異なる第1可動質量で
前記第1アクチュエータにて発生する最大推力を割った値よりも大き
く、
前記第1可動質量と前記第2可動質量はそれぞれ前記ステージの質量を含む、
ことを特徴とするステージ装置。
【請求項7】
基板を
走査露光す
る露光装置に用いら
れるステージ装置であって、
前記基板を保持して移動するステージと、
前記ステージに対して、前記ステージ
を走査方向に加速させる力を与える第1ユニットと、
前記ステージに対して、前記ステージを前記走査方向に交差する
交差方向に加速させる力を与える第2ユニットと、
前記第1ユニット及び前記第2ユニットが設けられた構造体を移動させる移動部と、を有し、
前記第2ユニットのサイズは、前記第1ユニットのサイズよりも大きいことを特徴とするステージ装置。
【請求項8】
前記走査方向と前
記交差方向とは、直交していることを特徴とする請求項1乃至
7のうちいずれか1項に記載のステージ装置。
【請求項9】
基板を
走査露光す
る露光装置であって、
前記基板
を走査方向に走査する請求項1乃至
8のうちいずれか1項に記載のステージ装置と、
前記ステージ装置によって前記走査方向に走査されている前記基板
に原版のパターンを投影する投影光学系と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
露光された前記基板を現像する工程と、
現像された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置、露光装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術を用いて半導体デバイス、液晶表示デバイス、撮像デバイス、磁気ヘッドなどの物品を製造する際に、ステップ・アンド・スキャン方式(走査型)の露光装置が用いられている。かかる露光装置は、スキャナーとも呼ばれ、原版と基板とを相対的に走査(スキャン)しながら原版のパターンをショット領域に転写し、1つのショット領域の走査露光終了後、次のショット領域を走査露光するために基板をステップ移動させる。
【0003】
また、露光装置には、基板を保持して移動可能なステージ装置として、微動ステージと、粗動ステージとを含むステージ装置が備えられている(特許文献1及び2参照)。かかるステージ装置によって、走査露光中には、原版に同期して基板を第1方向に移動させ、走査露光が終了したら、基板を第1方向とは逆の第2方向にUターンさせながら第1方向及び第2方向に直交する第3方向にステップ移動させることが可能となる。また、微動ステージでは、加速を電磁石で行い、位置制御をリニアモータで行うことで、高精度な位置制御と低発熱とを両立している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-109522号公報
【文献】特開平8-130179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査型の露光装置において、高い生産性を実現するためには、1つのショット領域の走査露光終了後、基板をUターンさせている間に基板のステップ移動を終了させる必要がある。従って、ステージ装置においては、微動ステージの加速度について、走査方向に直交する方向(以下、X方向)の加速度を走査方向(以下、Y方向)の加速度よりも大きくすることが求められている。
【0006】
微動ステージの加速度は、電磁石で発生させる力(最大発生力)に依存し、電磁石の最大発生力は、電磁石の吸引面積を推力方向を法線とする平面に投影した投影面積で決まる。従って、X方向の加速度を大きくするためには、X方向に力を発生させる電磁石(X電磁石)の吸引面積の投影面積を増加させなければならない。しかしながら、従来では、X電磁石の吸引面積の投影面積とY方向に力を発生させる電磁石(Y電磁石)の吸引面積の投影面積とが等しくなるように、X電磁石及びY電磁石が構成されている。そのため、X電磁石のサイズの増加に起因して、Y電磁石のサイズも増加し、全体的な質量も増加してしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、全体的なサイズや質量を増加させることなく、走査型の露光装置の生産性を高めるのに有利なステージ装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのステージ装置は、基板を走査露光する露光装置に用いられるステージ装置であって、前記基板を保持して移動するステージと、前記ステージを走査方向に加速させるための力を発生させる第1電磁石を含む第1ユニットと、前記ステージを前記走査方向に交差する交差方向に加速させるための力を発生させる第2電磁石を含む第2ユニットと、前記第1ユニット及び前記第2ユニットが設けられた構造体を移動させる移動部と、を有し、前記交差方向を法線とする平面における前記第2電磁石のコアの面積は、前記走査方向を法線とする平面における前記第1電磁石のコアの面積よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、全体的なサイズや質量を増加させることなく、走査型の露光装置の生産性を高めるのに有利なステージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態における基板ステージの全体的な構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す微動電磁石の詳細を示す図である。
【
図4】比較例及び第1実施形態のそれぞれにおける微動電磁石の上面図である。
【
図5】第2実施形態における基板ステージの全体的な構成を示す図である。
【
図6】
図5に示す微動ステージの詳細を示す図である。
【
図7】
図5に示す微動ステージの変形例の詳細を示す図である。
【
図8】基板ステージのUターン期間におけるY速度、Y加速度、X加速度及びX位置を示す図である。
【
図9】基板ステージのY加速度と、必要な基板ステージのX加速度との関係を示す図である。
【
図10】比較例としての基板ステージの全体的な構成を示す図である。
【
図11】比較例としての基板ステージの全体的な構成を示す図である。
【
図13】
図12に示す微動YLM及び微動ZLMの詳細を示す図である。
【
図15】
図10に示すXスライダ、Yスライダ及びXYスライダの詳細を示す図である。
【
図16】
図11に示す粗動リニアモータの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一側面としての露光装置1の構成を示す概略図である。露光装置1は、例えば、半導体デバイスなどの製造工程(リソグラフィ工程)に用いられ、基板上にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置1は、原版Rを介して基板Wを露光する。露光装置1は、本実施形態では、原版Rと基板Wとを走査方向に相対的に走査しながら基板Wを露光(走査露光)して、原版Rのパターンを基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式(走査型)の露光装置(スキャナー)である。
【0014】
露光装置1は、
図1に示すように、ステージ定盤692と、基板ステージ500と、鏡筒定盤696と、ダンパ698と、投影光学系697と、照明光学系699と、原版定盤694と、原版ステージ695とを有する。本実施形態では、
図1の紙面に垂直な方向を走査方向とし、
図1の紙面内の水平方向をステップ方向とする。また、走査方向をY軸とし、走査方向に交差する方向、特に、走査方向に直交するステップ方向をX軸とし、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸とする座標系を定義する。
【0015】
ステージ定盤692は、マウント(不図示)を介して、床691に支持されている。ステージ定盤692の上には、基板ステージ500が設けられている。鏡筒定盤696は、ダンパ698を介して、床691に支持されている。鏡筒定盤696には、投影光学系697及び原版定盤694が設けられている。原版定盤694の上には、原版ステージ695が移動可能(滑動自在)に設けられている。原版ステージ695の上方には、照明光学系699が設けられている。
【0016】
露光において、光源(不図示)から発せられた光は、照明光学系699により原版Rを照明する。原版Rのパターンは、投影光学系697により基板Wに投影(結像)される。この際、原版ステージ695及び基板ステージ500のそれぞれは、原版Rと基板Wとを走査方向に相対的に走査する。露光装置1が用いる基板ステージ500は、後述するように、走査方向に直交するステップ方向の加速度を走査方向の加速度よりも大きくすることができる。従って、露光装置1は、高いスループットで経済性よくデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス、撮像デバイス、磁気ヘッドなどの物品)を提供することができる。
【0017】
以下、基板ステージ500の詳細について、第1実施形態及び第2実施形態を説明する前に、一般的な基板ステージ500Aの構成や課題を比較例として説明する。
【0018】
<比較例>
図10は、比較例としての基板ステージ500Aの全体的な構成を示す図である。ステージベース505の上には、XYスライダ504がX方向及びY方向に移動可能(滑動自在)に設けられている。XYスライダ504の上には、Xスライダ502がX方向に移動可能(滑動自在)に設けられている。Xスライダ502の上には、Yスライダ503がY方向に移動可能(滑動自在)に設けられている。また、Xスライダ502及びYスライダ503の両側には、粗動リニアモータ506が設けられている。粗動リニアモータ506は、Xスライダ502及びYスライダ503のそれぞれをX方向及びY方向に移動させる。Xスライダ502、Yスライダ503、XYスライダ504及び粗動リニアモータ506は、構造体としての微動ベース501-2を移動させる移動部として機能する。
【0019】
図11は、Y軸手前側からY軸奥側に向かう視線での基板ステージ500Aの全体的な構成を示す図である。
図12は、微動ステージ501の構成を示す概略図であって、微動天板501-1を取り外した状態を示している。微動ベース501-2は、XYスライダ504の上に設けられている。微動ベース501-2の上には、Z方向のチルトの精密位置決めを行う4つの微動ZLM(リニアモータ)501-6が設けられている。更に、微動ベース501-2の上には、X軸及びY軸周りの方向の精密位置決めを行う2つの微動XLM501-4と、Y軸及びZ軸周りの方向の精密位置決めを行う2つの微動YLM501-5とが設けられている。換言すれば、微動XLM501-4は、微動ステージ501のX方向の位置を制御するユニット(第4ユニット)として機能し、微動YLM501-5は、微動ステージ501のY方向の位置を制御するユニット(第3ユニット)として機能する。また、微動ベース501-2の中央部には、X方向及びY方向の加速力を発生させるための微動電磁石501-3が設けられている。
【0020】
図13は、微動YLM501-5及び微動ZLM501-6の詳細を示す図であって、ヨークの一部を取り外した状態を示している。微動YLM501-5は、微動YLMコイルベース501-52、微動YLMコイル501-51、微動YLM磁石501-53、微動YLMヨーク501-54及び微動LMスペーサ501-70から構成されている。かかる構成において、微動ベース501-2の上に微動YLMコイルベース501-52が固定され、微動YLMコイルベース501-52の上に微動YLMコイル501-51が固定されている。
【0021】
微動YLMコイル501-51は、鉛直方向に延在する直線部を有する長円形コイルであって、かかる直線部と対面するように、4つの微動YLM磁石501-53が空隙を介して設けられている。微動YLM磁石501-53の裏には、磁束を通すための2つの微動YLMヨーク501-54が設けられている。微動YLM磁石501-53の着磁方向はX方向であり、Y方向に隣接する微動YLM磁石501-53は逆極性を有し、X方向に配列された微動YLM磁石501-53は同極性を有する。微動LMスペーサ501-70は、一対の磁石及びヨークに働く吸引力に対抗して、それらの位置を保持するために用いられる。
【0022】
微動YLM磁石501-53、微動YLMヨーク501-54及び微動LMスペーサ501-70は、微動天板501-1に設けられている。微動YLMコイル501-51に電流を流すことによって、直線部と直交する方向、即ち、Y方向に電流に比例した力を発生させることができる。また、2つの微動YLMコイル501-51のそれぞれに対して、逆方向に電流を流すことによって、Z軸周りのモーメントを発生させることができる。
【0023】
一方、微動ZLM501-6は、微動ZLMコイルベース501-62、微動ZLMコイル501-61、微動ZLM磁石501-63、微動ZLMヨーク501-64及び微動LMスペーサ501-70から構成されている。かかる構成において、微動ベース501-2の上に微動ZLMコイルベース501-62が固定され、微動ZLMコイルベース501-62の上に微動ZLMコイル501-61が固定されている。
【0024】
微動ZLMコイル501-61は、水平方向に延在する直線部を有する長円形コイルであって、かかる直線部と対面するように、4つの微動ZLM磁石501-63が空隙を介して設けられている。微動ZLM磁石501-63の裏には、磁束を通すための2つの微動ZLMヨーク501-64が設けられている。微動ZLM磁石501-63の着磁方向はX方向であり、Z方向に隣接する微動ZLM磁石501-63は逆極性を有し、X方向に配列された微動ZLM磁石501-63は同極性を有する。微動LMスペーサ501-70は、一対の磁石及びヨークに働く吸引力に対抗して、それらの位置を保持するために用いられる。
【0025】
微動ZLM磁石501-63、微動ZLMヨーク501-64及び微動LMスペーサ501-70は、微動天板501-1に設けられている。微動ZLMコイル501-61に電流を流すことによって、直線部と直交する方向、即ち、Z方向に電流に比例した力を発生させることができる。また、微動ZLMコイル501-61は4つ設けられているため、電流方向の組み合わせによって、X軸周りのモーメント及びY軸周りのモーメントを発生させることができる。
【0026】
微動XLM501-4は、微動YLM501-5と同じ構成を有し、微動YLM501-5に対して90度回転させて配置されている。微動XLM501-4は、X方向の力とZ軸周りのモーメントとを発生させることができる。
【0027】
図14は、微動電磁石501-3の詳細を示す図である。微動電磁石501-3は、微動ステージ501に力を与える第1ユニット及び第2ユニットから構成されている。第1ユニットは、第1電磁石を含み、微動ステージ501に対して、第1電磁石で発生する力を、微動ステージ501をY方向に加速させる力として与えるユニットである。また、第2ユニットは、第2電磁石を含み、微動ステージ501に対して、第2電磁石で発生する力を、微動ステージ501をX方向に加速させる力として与えるユニットである。具体的には、微動電磁石501-3は、Eコア支持部材501-30と、Iコア支持部材501-31と、Iコア501-32とを含む。また、微動電磁石501-3は、EコアX501-33と、EコアXコイル501-34と、EコアY501-35と、EコアYコイル501-36とを含む。
【0028】
微動ベース501-2の上には、Eコア支持部材501-30が固定されている。Eコア支持部材501-30の4つの内側面に、2つのEコアX501-33、EコアXコイル501-34、2つのEコアY501-35及びEコアYコイル501-36が固定されている。これらのEコアに対して、微小空隙を介して、Iコア501-32が設けられている。Iコア501-32は、Iコア支持部材501-31を介して、微動天板501-1に設けられている。4つのEコア及びIコアは、同じサイズを有し、これらで発生可能な最大力も同じである。
【0029】
図15は、Xスライダ502、Yスライダ503及びXYスライダ504の詳細を示す図である。XYスライダ504は、XYスライダ下504-3、XYスライダ中504-2及びXYスライダ上504-1から構成されている。XYスライダ下504-3は、ステージベース505の上にX方向及びY方向に移動可能(滑動自在)に支持されている。XYスライダ下504-3の上にはXYスライダ中504-2が、XYスライダ中504-2の上にはXYスライダ上504-1が積み重なって設けられている。
【0030】
Xスライダ502は、Xビーム502-1、Xフット502-2及びXヨーガイド502-3から構成されている。2つのXヨーガイド502-3は、ステージベース505の2つの側面に固定され、2つのXフット502-2は、Xビーム502-1で連結されている。
【0031】
一方のXフット502-2は、一方のXヨーガイド502-3の側面及びステージベース505の上面に対して、空隙を介して対面し、X方向に移動可能(滑動自在)に支持されている。他方のXフット502-2は、他方のXヨーガイド502-3の側面及びステージベース505の上面に対して、空隙を介して対面し、X方向に移動可能(滑動自在)に支持されている。これにより、Xビーム502-1と2つのXフット502-2の一体物がX方向に移動可能(滑動自在)となる。また、Xビーム502-1の両側面は、XYスライダ中504-2の内側面に対して、微小空間を介して移動可能(滑動自在)に対面し、XYスライダ504をX方向及びY方向に移動可能(滑動自在)に拘束する。
【0032】
Yスライダ503は、Yビーム503-1、Yフット503-2及びYヨーガイド503-3から構成されている。2つのYヨーガイド503-3は、ステージベース505の2つの側面に固定され、2つのYフット503-2は、Yビーム503-1で連結されている。
【0033】
一方のYフット503-2は、一方のYヨーガイド503-3の側面及びステージベース505の上面に対して、空隙を介して対面し、Y方向に移動可能(滑動自在)に支持されている。他方のYフット503-2は、他方のYヨーガイド503-3の側面及びステージベース505の上面に対して、空隙を介して対面し、Y方向に移動可能(滑動自在)に支持されている。これにより、Yビーム503-1と2つのYフット503-2の一体物がY方向に移動可能(滑動自在)となる。また、Yビーム503-1の両側面は、XYスライダ上504-1の内側面に対して、微小空間を介して移動可能(滑動自在)に対面し、XYスライダ504をX方向及びY方向に移動可能(滑動自在)に拘束する。
【0034】
図16は、粗動リニアモータ506の詳細を示す図である。粗動リニアモータ506は、コイル506-1と、コイル支持板506-2と、コイル支柱506-3と、コイルベース506-4とを含む。粗動リニアモータ506は、磁石506-5と、ヨーク506-
6と、スペーサ506-7と、アーム506-8とを含む。
【0035】
コイル506-1は、隣接するコイルの位相が90度ずれた2相コイルユニットである。コイル506-1は、コイル支持板506-2に一体に固定され、コイル支柱506-3を介して、コイルベース506-4に固定されている。コイルベース506-4は、ステージ定盤692に固定してもよいし、ステージ定盤692に対して、コイル配列方向に移動可能(滑動自在)に支持してもよい。このように、コイルベース506-4を移動可能に支持することで、加速の反動を吸収することができる。
【0036】
磁石506-5は、一対の4極磁石ユニットである。磁石506-5は、空隙を介して、コイルを上下から挟むように配置され、その裏にヨーク506-6が設けられている。スペーサ506-7は、吸引力に対抗して一対の磁石の隙間を維持するために用いられている。磁石506-5、ヨーク506-6及びスペーサ506-7の一体物は、アーム506-8を介して、Xフット502-2又はYフット503-2に固定されている。これにより、Xビーム502-1と2つのXフット502-2の一体物やYビーム503-1と2つのYフット503-2の一体物に対して、X方向の推力やY方向の推力を与えることができる。また、かかる構成において、2相のコイルのうち磁石と対面しているコイルに対して位置に応じた正弦波電流を流すことで、連続的に力を発生させることができる。
【0037】
図17は、基板Wのショット配列を示す図である。基板Wには、XサイズがSx、YサイズがSyのショット領域701が配列(レイアウト)され、
図17に矢印で示すスキャン(Y方向)・ステップ(X方向)軌道に沿って走査露光が行われる。この際、基板ステージは、走査露光時には、原版ステージに同期してY方向に1/投影光学系の倍率(露光倍率)の速度で走査移動し、走査露光終了時には、次のショット領域の走査露光を行うために、Y方向にUターンしながらX方向にステップ移動する。
【0038】
図8は、基板ステージがUターンしている間(Uターン期間)におけるY方向の速度(Y速度)、Y方向の加速度(Y加速度)、X方向の加速度(X加速度)及びX方向の位置(X位置)を示す図である。
図8では、露光倍率が4倍、基板ステージのY加速度が30G、基板ステージの走査速度が5m/sである場合を示している。
図8を参照するに、基板ステージのUターン期間内でショット領域701のXサイズSxに相当する26mmのステップ移動を終了するためには、10G弱のX加速度が必要となる。10Gは、30G/露光倍率である7.5Gよりも大きく、これは、基板ステージにおいて、X加速度がY加速度よりも大きくなることを示している。
【0039】
図9は、基板ステージのY加速度を横軸に採用し、必要な基板ステージのX加速度を縦軸に採用し、それらの関係を実線で示した図である。また、
図9には、基板ステージのX加速度とY加速度とが同じである場合の関係を破線で示している。
図9を参照するに、基板ステージのY加速度が7Gを超えるあたりから、必要な基板ステージのX加速度が破線よりも上となる、即ち、基板ステージにおいて、X加速度をY加速度よりも大きくすることが求められることを示している。
【0040】
そこで、本実施形態では、全体的なサイズや質量を増加させることなく、X加速度をY加速度よりも大きくして、走査型の露光装置の生産性を高めるのに有利なステージ装置(基板ステージ500)を提供する。
【0041】
<第1実施形態>
図2、
図3及び
図4を参照して、第1実施形態における基板ステージ500を説明する。
図2は、第1実施形態における基板ステージ500の全体的な構成を示す図であって、微動天板101-1を取り外した状態を示している。
図2を参照するに、基板ステージ500の中央部に微動電磁石101-3が設けられている。第1実施形態における基板ステージ500において、微動電磁石101-3を除く構成は比較例と同じであるため、第1実施形態では、微動電磁石101-3について説明する。
【0042】
図3は、微動電磁石101-3の詳細を示す図である。微動電磁石101-3は、Eコア支持部材101-30と、Iコア支持部材101-31と、IコアX101-38と、IコアY101-37とを含む。更に、微動電磁石101-3は、EコアX101-33と、EコアXコイル101-34と、EコアY101-35と、EコアYコイル101-36とを含む。
【0043】
微動ベース101-2の上には、Eコア支持部材101-30が固定されている。Eコア支持部材101-30の4つの内側面に、2つのEコアX101-33及びEコアXコイル101-34と、2つのEコアY101-35及びEコアYコイル101-36とが固定されている。これらの4つのEコアに対して、微小空隙を介して、IコアX101-38及びIコアY101-37が設けられ、Iコア支持部材101-31を介して、微動天板101-1に固定されている。
【0044】
図4は、比較例における微動電磁石501-3及び第1実施形態における微動電磁石101-3のそれぞれの上面図である。
図4に示すように、Eコア支持部材101-30は、Eコア支持部材501-30と同じサイズ(大きさ)を有している。
【0045】
図4を参照するに、EコアX101-33は、EコアX501-33とは異なるサイズ、本実施形態では、EコアX501-33のサイズよりも大きいサイズを有する。換言すれば、EコアX101-33(の横幅)をX方向を法線とする平面に投影して得られる投影面積が、EコアX501-33をX方向を法線とする平面に投影して得られる投影面積よりも大きい。従って、本実施形態では、X方向に大きな加速力を発生させることができ、基板ステージ500のX加速度を比較例よりも大きくすることができる。
【0046】
一方、EコアY101-35は、EコアY501-35と同じサイズを有する。換言すれば、EコアY101-35(の横幅)をY方向を法線とする平面に投影して得られる投影面積は、EコアY501-35をY方向を法線とする平面に投影して得られる投影面積と同じである。従って、本実施形態では、Y方向に比較例と同じ加速力を発生させることができ、基板ステージ500のY加速度を犠牲にすることなく、基板ステージ500のX加速度を比較例よりも大きくすることができる。
【0047】
このように、本実施形態では、EコアX101-33(第2電磁石のコア)をX方向を法線とする平面に投影して得られる投影面積が、EコアY101-35(第1電磁石のコア)をY方向を法線とする平面に投影して得られる投影面積よりも大きくしている。これにより、全体的なサイズや質量を増加させることなく、基板ステージ500において、X加速度をY加速度よりも大きくすることができる。従って、露光装置1の生産性を向上させるために、基板ステージ500の走査方向(Y方向)の加速度を増加させても、基板ステージ500のUターン期間内にステップ移動(X方向への移動)を完了させることができる。
【0048】
なお、X加速度をY加速度よりも大きくするという観点では、EコアX101-33から得られる上述した投影面積は、EコアY101-35から得られる上述した投影面積の1.1倍以上の大きさを有するとよい。これにより、露光装置1の生産性を高めるのに有利となる。
【0049】
<第2実施形態>
図5、
図6及び
図7を参照して、第2実施形態における基板ステージ500を説明する。
図5は、第2実施形態における基板ステージ500の全体的な構成を示す図であって、微動天板を取り外した状態を示している。
図5を参照するに、基板ステージ500の中央部に微動ステージ201が設けられている。第2実施形態における基板ステージ500において、微動ステージ201を除く構成は比較例と同じであるため、第2実施形態では、微動ステージ201について説明する。
【0050】
図6は、微動ステージ201の詳細を示す図である。微動ステージ201は、微動天板(不図示)、微動ベース201-2、1つの微動XLM(リニアモータ)201-4、2つの微動YLM201-5及び4つの微動ZLM201-6から構成されている。本実施形態では、基板ステージ500のX方向及びY方向の加速を、電磁石ではなく、リニアモータ、即ち、微動XLM201-4及び微動YLM201-5で行う。微動XLM201-4(第2リニアモータ)は、微動ステージ201に対して、微動ステージ201をX方向に加速させる力として与える第2ユニットを構成する。また、微動YLM201-5(第1リニアモータ)は、微動ステージ201に対して、微動ステージ201をY方向に加速させる力として与える第1ユニットを構成する。また、本実施形態では、微動XLM201-4及び微動YLM201-5によって、基板ステージ500のXY面内の位置やZ軸周りの位置の制御も行われる。換言すれば、微動XLM201-4及び微動YLM201-5は、それぞれ、微動ステージ201のX方向の位置を制御する第4ユニット及び微動ステージ201のY方向の位置を制御する第3ユニットとしても機能する。
【0051】
本実施形態において、微動YLM201-5及び微動ZLM201-6の構成は、比較例と同じである。一方、微動XLM201-4においては、微動XLMコイル201-41と微動XLM磁石201-43との組み合わせがX方向に3つ並んで(3連で)設けられている。このように、本実施形態では、微動XLM201-4の微動XLMコイル201-41及び微動XLM磁石201-43のそれぞれの体積の総和が、微動YLM201-5の微動YLMコイル及び微動YLM磁石のそれぞれの体積の総和よりも大きい。これにより、全体的なサイズや質量を増加させることなく、基板ステージ500において、X加速度をY加速度よりも大きくすることができる。従って、露光装置1の生産性を向上させるために、基板ステージ500の走査方向(Y方向)の加速度を増加させても、基板ステージ500のUターン期間内にステップ移動(X方向への移動)を完了させることができる。
【0052】
なお、微動XLM201-4の微動XLMコイル201-41及び微動XLM磁石201-43のそれぞれの体積の総和は、微動YLM201-5の微動YLMコイル及び微動YLM磁石のそれぞれの体積の総和の1.1倍以上であるとよい。これにより、X加速度をY加速度よりも大きくするという観点で有利となり、露光装置1の生産性を高めることができる。また、
図7に示すように、
図6に示す微動XLM201-4をY方向に3つ並べてもよい。これにより、基板ステージ500において、X加速度を更に大きくすることができる。
【0053】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、基板ステージ500の加速度をSA[G]とし、基板ステージ500の走査速度をSV[m/s]とすると、SA/SV > 4.5を満たしている。換言すれば、このような関係が基板ステージ500の加速度と基板ステージ500の走査速度との間に成り立つ場合において、X加速度をY加速度よりも大きくすることが必要となる。
【0054】
第1実施形態及び第2実施形態においては、基板ステージ500の微動ステージの加速伝達機構を中心に説明した。但し、重要なことは、走査型の露光装置1において、基板ステージ500のUターン期間内にステップ移動を完了することである。このためには、基板ステージ500が粗微動分離型であるか粗微動一体型であるかにかわわらず、基板ステージ500において、X加速度>Y加速度を実現できればよい。換言すれば、基板ステージ500をX方向(非走査方向)に移動させる推力を与える第2アクチュエータで発生する最大推力を、基板ステージ500をY方向(走査方向)に移動させる推力を与える第1アクチュエータで発生する最大推力よりも大きくすればよい。また、X方向の最大推力をX方向の可動質量で割った値を、Y方向の最大推力をY方向の可動質量で割った値よりも大きくしてもよい。
【0055】
具体的には、X方向の粗動リニアモータの体積をY方向の粗動リニアモータの体積よりも大きくすればよい。また、X方向の粗動リニアモータの体積とY方向の粗動リニアモータの体積とが同じであれば、X方向の粗動リニアモータの数をY方向の粗動リニアモータの数よりも増やせばよい(多くすればよい)。但し、これらの場合には、可動質量が増加するため、X方向の最大推力/X方向の可動質量がY方向の最大推力/Y方向の可動質量を満たしていることを確認する必要がある。
【0056】
また、X方向の粗動リニアモータとY方向の粗動リニアモータとの間で体積も数も同じである場合には、X方向の電流ドライバの容量をY方向の電流ドライバの容量よりも大きくして、X方向の粗動リニアモータに大電流を供給できるようにしてもよい。この場合、発熱対策として、X方向の粗動リニアモータの冷却機構の冷媒流量を、Y方向の粗動リニアモータの冷却機構の冷媒流量よりも増加させるとよい。
【0057】
また、X方向の粗動リニアモータの体積をY方向の粗動リニアモータの体積よりも小さくし、X方向の電流ドライバの容量をY方向の電流ドライバの容量よりも大きくして、X方向の粗動リニアモータに大電流を供給できるようにしてもよい。なお、発熱対策として、X方向の粗動リニアモータの冷却機構の冷媒流量を、Y方向の粗動リニアモータの冷却機構の冷媒流量よりも増加させるとよい。この場合、X方向の可動質量をY方向の可動質量よりも小さくすることで、X加速度をより大きくすることができる。
【0058】
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス、液晶表示デバイス、撮像デバイス、磁気ヘッド、MEMSなどの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、上述した露光装置1を用いて感光剤が塗布された基板を露光する工程と、露光された感光剤を現像する工程とを含む。また、現像された感光剤のパターンをマスクとして基板に対してエッチング工程やイオン注入工程などを行い、基板上に回路パターンが形成される。これらの露光、現像、エッチングなどの工程を繰り返して、基板上に複数の層からなる回路パターンを形成する。後工程で、回路パターンが形成された基板に対してダイシング(加工)を行い、チップのマウンティング、ボンディング、検査工程を行う。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、レジスト剥離など)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0060】
1:露光装置 500:基板ステージ 101-3:微動電磁石 101-30:Eコア支持部材 101-31:Iコア支持部材 101-33:EコアX 101-34:EコアXコイル 101-35:EコアY 101-36:EコアYコイル 101-37:IコアY 101-38:IコアX R:原版 W:基板