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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240805BHJP
   C08G 63/83 20060101ALI20240805BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240805BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240805BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240805BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C08L67/00
C08G63/83
C08J5/18 CFD
C08J7/04 B
C08K3/08
C08K3/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018104592
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019094475
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2017217909
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017242611
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早野 知子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 航
(72)【発明者】
【氏名】野田 紘志
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】岡谷 祐哉
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-301094(JP,A)
【文献】特開2004-059735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸ポリエステルフィルムであって、該ポリエステル樹脂組成物に含まれるアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、3価金属元素の含有量をM3(mol/t)とするとき、M=0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)として求められるM(mol/t)と、リン元素の含有量P(mol/t)とのモル比(M/P)が2.0~2.8であり、前記アルカリ金属元素がカリウム元素であり、前記2価金属元素がマグネシウム元素であり、フィルムの固有粘度(IV)が0.60dl/g以上0.70dl/g未満、冷結晶化温度(Tcc)が150℃以上160℃未満、環状三量体の含有量が0.5重量%以下であり、前記アルカリ金属元素の含有量が2ppm以下である二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
厚みむらが3.0%以下である請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
厚みが10μm以上250μm以下である請求項1または2に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムのヘイズ値が2.0%以下である請求項1~3のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムを170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下である請求項1~4のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記二軸延伸ポリエステルフィルムを170℃3時間加熱した際の加熱前と加熱後のヘイズ値の差ΔHzが0.5%以下である請求項1~5のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項7】
ポリエチレンテレフタレートを主成分とする請求項1~6のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項8】
光学用途に使用される請求項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項9】
表面保護用途に使用される請求項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みむら、透明性に優れ、高温加熱処理後のフィルムの透明性および熱変形抑制に優れたポリエステルフィルムに関するものであり、特には光学用、表面保護用に適したフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性などに優れ、さまざまな分野で使用されている。
【0003】
特に近年では、タッチパネルや電子ペーパー等に使用されている透明導電性積層体の基材や、その導電電極の製造工程における保護フィルムとして使用されている。
【0004】
透明導電性積層体としては、ポリエステルフィルムを基材とし、その上に直接、あるいは樹脂アンカー層を介して、様々な導電性層が形成されている。その導電性層として、例えば、酸化インジウムスズや銅などの金属を基材へ蒸着密着させるスパッタリングによって形成され、その蒸着時の高温による基材の熱寸法安定性を最小に抑えるべく、事前に、基材フィルムを加熱処理し、加工されることが一般的になっている。また、保護フィルムとしては、タッチパネル用の透明電極の製造工程において、金属からなる透明導電膜が形成された透明導電性フィルムは、アニール処理や、金属の結晶化工程、レジストの印刷工程、エッジング処理工程など、多くの加熱工程や薬液処理の工程を経て、透明導電性フィルムが製造されているが、製造工程中に、透明電極の汚損、損傷が生じるのを防止するために、透明導電性フィルムの透明導電膜が形成された面と反対側に表面保護フィルムとしてポリエステルフィルムが貼り合わされに用いられている。また、一般的には、その表面保護フィルムを付したまま透明導電性フィルムの異物検査が行われている。
【0005】
前記の透明電極の製造工程では、例えば、低熱収縮率化のために130℃で熱処理を行なう(特許文献1)、あるいは導電膜の金属の結晶化のために150℃で熱処理を行う(特許文献2)等の処理があるため、透明導電性フィルム用基材フィルムおよび透明導電性フィルム用表面保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムには、耐熱変形性が求められる。また、上記、熱処理工程においてポリエステルフィルムに残存もしくは熱分解等で発生する低分子量物(オリゴマー)が表面に析出してポリエステルフィルム外観の白化、金属層表面への転写による歩留まり低下や工程の汚染、洗浄などの余分な工程を増やし、製品の生産性を大きく低下させる課題がある。特に近年では、ITOの更なる電気抵抗の低減のために前記ITOの熱処理時温度の高温化、長時間化が進み、より高度な耐熱変形性が求められ、静電容量型タッチパネルを搭載したスマートフォンやタブレットの導電回路の緻密化および外観品位に対する要望がますます高度化しており、フィルム表面のオリゴマー析出の更なる抑制が求められている。
【0006】
しかし、ポリエステルフィルムがこのような高温処理に晒されると、熱によるフィルム変形が発生し、導電性の低下や、変形による視認性の低下などが起こるため、ポリエステルフィルムを基材とした透明導電性積層体の特性は、耐熱変形性の面では十分に満足のいくものとは言えなかった。
【0007】
上述の熱変形防止策として、例えば、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂中に結晶核剤を添加して結晶性を高くすることで耐熱変形性を向上させる方法(特許文献3)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-42473号公報
【文献】特開2007-200823号公報
【文献】特開2011-213770号公報
【文献】特開2014-46503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載されている方法では、透明性が悪化しやすく、フィルム外観の白化による視認性の低下が発生しやすい。
【0010】
また、従来オリゴマーの析出を防止する方法としてコーティングなどで表面に積層膜を設け、その積層膜にオリゴマーの析出を防止する機能を持たせることが提案されているが (特許文献4)、前述の熱処理条件の過酷化により十分でない。
【0011】
このため、ポリエステルフィルムは、導電性フィルム用表面保護フィルム、および透明導電基材フィルム用途として用いるには十分に満足のいくものとは言えず、透明性や加工性との両立が求められている。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、高温での加熱処理に使用されても熱変形し難く、オリゴマーの析出にともなう透明性の悪化を抑制するポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、上記目的を達成する本発明は以下により得られる。
(1)ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂組成物からなるフィルムであって、該ポリエステル樹脂組成物に含まれるアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、3価金属元素の含有量をM3(mol/t)とするとき、M=0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)として求められるM(mol/ton)と、リン元素の含有量P(mol/ton)とのモル比(M/P)が2.0~5.4であり、フィルムの固有粘度(IV)が0.55~0.75、冷結晶化温度(Tcc)が150℃以上165℃未満、環状三量体の含有量が0.5重量%以下であるポリエステルフィルム。
(2)前記ポリエステルフィルムのヘイズ値が2.0%以下である(1)に記載のポリエステルフィルム。
(3)前記ポリエステルフィルムを170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下である(1)または(2)に記載のポリエステルフィルム。
(4)前記ポリエステルフィルムを170℃3時間加熱した際の加熱前と加熱後のヘイズ値の差ΔHzが0.5%以下である(1)~(3)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(5)ポリエチレンテレフタレートを主成分とする(1)~(4)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(6)光学用途に使用される(1)~(5)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(7)表面保護用途に使用される(1)~(5)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厚みむら、透明性に優れ、高温加熱処理後のフィルムの透明性および熱変形抑制に優れたポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリエステルフィルムを実施するための形態について、以下、説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂からなるフィルムである。ポリエステル樹脂は、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であり、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主成分とし、これら構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもよいが、中でも、品質、経済性などを総合的に考慮すると、ポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。また、これらポリエステル樹脂には、さらに他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよいが、フィルムの高温加熱処理後の平面性が低下する場合があるため、好ましくは共重合量は10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、より好ましくは共重合しないホモポリエステルであることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートを主成分とする場合、ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度Tg(℃)は、75~80℃、さらには79℃~80℃であることが好ましい。
【0017】
本発明を構成するポリエステル樹脂は、該ポリエステル樹脂組成物に含まれるアルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、3価金属元素の含有量をM3(mol/t)とするとき、M=0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)として求められるM(mol/ton)と、リン元素の含有量P(mol/ton)とのモル比(M/P)は、2.0~5.4の範囲であることが必要である。(但し、式中において、Mは、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、Pはリン元素のポリエステル10g当たりの総モル数を示す。)
本発明において、M(mol/t)は、アルカリ金属元素の含有量をM1(mol/t)、2価金属元素の含有量をM2(mol/t)、3価金属元素の含有量をM3(mol/t)とするとき、M=0.5×(M1)+M2+1.5×(M3)として求められるものである。一般的に、リン酸などのリン元素に由来する陰イオンは3価の負電荷をもつため、1価の金属元素の陽イオンとは1:3、2価の金属元素の陽イオンとは2:3、3価の金属元素の陽イオンとは1:1で相互作用すると考えられる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、リン酸などのリン化合物に由来するリン元素が2価の陰イオンとして金属元素の陽イオンと相互作用するとして求められる(M/P)(すなわち、リン元素による陰イオンが、1価の金属元素の陽イオンとは1:2、2価の金属元素の陽イオンとは1:1、3価の金属元素の陽イオンとは3:2で相互作用するとした式)のもと、M/Pが2.0以上であると、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の溶融時の体積比抵抗が低くなり、フィルム成形時に静電印加キャスト法を好適に用いることができフィルムの厚みむらの発生を抑制することができる。また、M/Pが、5.4以下であると、溶融時の環状三量体の再生や、触媒残渣がフィルム中に異物として残存することを抑制しやすくなるため、フィルム製膜後の初期ヘイズ値や加熱後のヘイズ値を低く抑えることができる。M/Pについては、さらには2.5~4.5の範囲にすることが好ましい。M/Pが高くなると、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素量が多くなりポリマーの結晶化が進みやすくなり、後述するポリエステルフィルムの冷結晶化温度(Tcc)が低くなり、加熱後のΔHz値が高くなる場合がある。M/Pが低くなると、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素量が少なく、ポリマーは結晶化しにくく、後述するポリエステルフィルムの冷結晶化温度(Tcc)が高くなり、高温加熱後の平面性に影響を与える場合がある。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムの固有粘度(IV)は、0.55dl/g以上0.75dl/g以下であることが必要である。フィルムの固有粘度(IV)が該範囲であるとフィルムの厚みむらが抑制され、安定的に製膜することができる。固有粘度(IV)が0.55dl/gを下回ると、フィルムに用いるポリエステル原料の固有粘度(IV)が低く、溶融粘度が低下し、押出し口から樹脂を溶融冷却するドラム上への樹脂の着地までに局所的な厚みむらを発生しやすくなり、固有粘度(IV)が0.75dl/gを超えると、フィルムに用いるポリエステル原料の固有粘度(IV)が高いため、フィルムの製膜時における押出し工程で押出し部位に圧力がかかり、厚みむらを発生しやすくなる。さらに好ましくは、フィルムの固有粘度(IV)は0.60dl/g以上0.70dl/g未満である。また、フィルムの厚みむらは、厚みむらが少なければ少ないほどポリエステルフィルムの夫々の面長手方向屈折率nMD、面幅方向屈折率nTD、面垂直方向屈折率nZDにおいて、屈折のバラツキを押させることができ、干渉ムラの発生を抑制しやすくなる。ポリエステルフィルムの厚みむらは、フィルムの長手方向(フィルムの製膜方向)、幅方向(フィルムの製膜方向とは垂直な方向)ともに5.0%以下であることが好ましく、さらに好ましくは、3.0%以下である。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムは、冷結晶化温度(Tcc)が150℃以上165℃未満であることが必要である。冷結晶化温度とは、後述する示差走査熱量測定により求められる2ndrunの結晶化ピークをいう。冷結晶化温度(Tcc)が150℃未満である場合、フィルムの加熱前のヘイズ値(以下、初期ヘイズ値という場合がある)と、フィルムを170℃3時間加熱した後のフィルムのヘイズ値(以下、単に加熱後のヘイズ値という場合がある)の差が大きくなりやすくなり、透明導電基材フィルム、導電性フィルム用表面保護フィルムとして用いた場合、透明性が阻害される。具体的には、フィルムを170℃3時間加熱した前後のヘイズ値の差であるΔHzが0.5%以下とすることが難しくなる場合がある。これは、フィルムの加熱時に熱結晶化が進行して、フィルムに含まれる環状オリゴマーが複数の多量体で存在し、その環状オリゴマーがフィルムの表面に析出することでフィルムのヘイズ値が悪化するものと考えられる。なお、環状オリゴマーは、環状三量体が大部分であるため、本発明では環状三量体を主に述べている。一方で、冷結晶化温度(Tcc)が165℃以上となると、フィルムの加熱後の平面性に影響が出る場合がある。より好ましくは、冷結晶化温度(Tcc)は160℃未満である。
【0020】
本発明において冷結晶化温度(Tcc)は、ポリエステルフィルムサンプルを電子天秤で5mg計量し、アルミパッキンで挟み込みセイコーインスツルメント社(株)ロボットDSC-RDC220熱示差走査計を用いて測定を行い、データ解析は同社製ディスクセッションSSC/5200を用いて、JIS-K-7121(1987年)に従って行って得られる値のことを表す。具体的な測定条件としては、25℃から300℃まで20℃/分で昇温し、その後25℃まで急冷し、再び300℃まで20℃/分で昇温した(2ndRun)際の、結晶化ピーク温度として、結晶化ピークの頂点温度として求める。2ndrunの結晶化ピークが複数観測される場合には、JIS-K-7122により求められる最大となるピーク面積を示す結晶化ピーク頂点温度を測定する。これを3回繰り返し、その平均値を冷結晶化ピーク温度(Tcc)とする。
【0021】
冷結晶化温度(Tcc)を150℃以上165℃未満とするための手段としては特に限定されないが、本発明においては、上述したM/Pを制御する方法の他、特に、ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)、粒子含有量、環状三量体含有量を制御する方法が挙げられる。
【0022】
本発明者らは、上記の方法によって冷結晶化温度(Tcc)が制御できるのは以下によるものと考えている。環状三量体含有量を制御する方法については、フィルムの製造工程における延伸や予熱、熱固定工程などにおいて、ポリエステル樹脂中に環状三量体含有量が少ない場合には、ポリマーの分子鎖の配向結晶を阻害させるものが少なくなるため、結晶化しやすく、冷結晶化温度(Tcc)が低くなる傾向にあり、環状三量体含有量が多いと、ポリマーの分子鎖の配向結晶を阻害させる成分が多くなるため結晶化しにくく、冷結晶化温度(Tcc)が高くなる傾向にあると考えている。
【0023】
また、ポリエステル樹脂原料の固有粘度(IV)については、ポリエステル樹脂原料の固有粘度(IV)が高い場合は、ポリエステルの分子鎖が平均的に長くなるので、ポリマーは結晶化しにくくなり、冷結晶化温度(Tcc)は高くなる傾向にある。一方、ポリエステル樹脂原料の固有粘度(IV)が低い場合は、ポリエステルの分子鎖が平均的に短くなるので、ポリマーは結晶化しやすくなり、冷結晶化温度(Tcc)は低くなるものと考えている。冷結晶化温度(Tcc)は、ポリエステル樹脂原料を製造する際の、固相重合の時間や液相重合(溶融重合)を終えるときの固有粘度によっても影響を受けると考えている。具体的には、固相重合の時間が長くなればなるほど、液相重合(溶融重合)を終えるときの固有粘度が高ければ高いほど、冷結晶化温度(Tcc)は高くなる傾向にある。この原料の製造条件において、ポリエステル樹脂の液相重合(溶融重合)を終えるときの固有粘度が高い状態で、固相重合の時間を長くすると、固有粘度(IV)の向上に伴いフィルムの厚みムラを悪化させる場合がある。
【0024】
次に、粒子含有量については、ポリエステル樹脂中の粒子含有量の含有量が多くなれば、粒子が核となってポリマーの結晶化が促進されフィルムの結晶化も進むため、冷結晶化温度(Tcc)は、ポリエステル層のマトリックスとなるポリエステル樹脂の冷結晶化温度(Tcc)よりも低くなり、加熱後のフィルムのヘイズ値が悪化する傾向がある。また、粒子含有量が多くなると、フィルムの初期ヘイズ値が悪化する傾向にある。ポリエステル樹脂中の粒子含有量が少なくなれば、結晶化を促進させる核が少ないことからフィルムの結晶化も抑制されるため、冷結晶化温度(Tcc)は、ポリエステル層のマトリックスとなるポリエステル樹脂の冷結晶化温度(Tcc)よりも高くなる傾向があり、加熱後のフィルムの平面性が悪化する傾向があると考えている。
【0025】
ポリエステルフィルムには、フィルムの製膜工程や後加工のための易滑性を目的にフィルム中に粒子を含有することが好ましく用いられるが、粒子の含有量によっても、冷結晶化温度(Tcc)が変動するので、加熱後のヘイズ値上昇や、フィルムの高温加熱後の平面性を維持するため、冷結晶化温度(Tcc)を調整することが重要となる。
【0026】
本発明は、フィルムとして、冷結晶化温度(Tcc)を規定することにより、高温加熱処理後のフィルムの透明性および熱変形抑制を並立することができる。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムは、ヘイズ値が2.0%以下であることが好ましい。フィルムのヘイズ値は、フィルム製膜後のヘイズ値、フィルム製膜後にある条件下で加熱等を施した後のフィルムのヘイズ値であってもよく、2.0%以下とすることで、透明性に優れたフィルムとすることができる。ヘイズ値は、好ましくは、1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。
【0028】
また、本発明のポリエステルフィルムは、加熱条件を170℃3時間とした際の加熱後のフィルムのヘイズ値が2.0%以下であることが好ましい。こうすることで、透明導電基板フィルムとして用いられる場合、加工工程における熱影響を受けても、最終的な製品である導電電極自体のフィルムの透明性を維持することができる。また導電性フィルム用表面保護フィルムとして用いられる場合においても、異物や欠点検査の際に視認性を阻害しにくい。加熱後のフィルムのヘイズ値は、好ましくは、1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。さらに、本発明のポリエステルフィルムの加熱前と170℃3時間加熱後(以下、単に加熱前後という場合がある)のヘイズ値の差ΔHzが0.5%以下であることが好ましい。ΔHz値が小さいほど、熱影響を受けても透明性に優れたフィルムとすることができ、好ましくは、0.4%以下、さらに好ましくは、0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。ΔHzが0.5%を超えると、加熱後のフィルムのヘイズ値が高くなり、透明電極基板とした場合の視認性、透明導電積層体の保護フィルムとした場合の検査視認性が低下する場合がある。
【0029】
また、ΔHzが0.5%を超えるのは、ポリエステルフィルムとした場合の環状三量体が0.5重量%を超えて含まれる場合や、フィルムの冷結晶化温度(Tcc)が150℃未満であることと関係している。ポリエステル樹脂原料の環状三量体が多く含まれる場合には、フィルムとした場合の環状三量体の含有量も多くなり、フィルム中に存在する環状三量体が加熱後にフィルム表面に析出されやすくなることによって加熱前後のフィルムのヘーズ値の差を大きくさせるものと考えている。また、フィルムの冷結晶化温度(Tcc)が150℃未満である場合には、フィルム中に存在する環状三量体が0.5重量%未満であったとしても、ポリマーが結晶化されやすいため、溶融時からポリマーの結晶化が進み、フィルムを延伸して分子鎖を配向させる際に、結晶化が局所的に進んだ部分と、配向分子鎖との間で配向の歪部分を生み出し、その歪部分から環状三量体がフィルム表面に析出されやすくなることで、加熱前後のフィルムのヘーズ値の差を大きくさせるものと考えている。他の部材と張り合わせて導電性フィルムの表面保護フィルムとした場合には、加工後に本発明のポリエステルフィルムが剥離されるが、ポリエステルフィルム表面上に析出した環状三量体が相手部材の表面に転写され、製品としての品質を悪化させる場合もある。
【0030】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムに実施的に粒子を含有せずに粒子を添加せしめた易接着層を設ける構成とするか、易接着層を設けない場合には、フィルムの製造工程や加工時における易滑性を付与するためにポリエステルフィルムに粒子を含有することが好ましい。粒子を添加する場合の粒子含有量は、ポリエステルフィルムに対して粒子含有量が0.001重量%以上0.015重量%以下である。粒子含有量を0.001重量%以上0.015重量%以下とすることで、透明性を有しながらも易滑性を付与することが出来、さらには、フィルムの透明性の指標である初期へイズ値を2.0%以下、さらには、フィルムの加熱後(170℃3時間加熱した後)の透明性も2.0%以下とすることが容易となる。また、易滑性を付与することにより、フィルムのキズの発生を抑制することができる。粒子含有量が0.001重量%未満の場合、フィルムの易滑性が低下し、粒子含有量が0.015重量%を超えると、フィルムの易滑性は向上するが、フィルムの初期ヘイズ値が2.0%を超えてしまう場合があり、また、加熱後のヘイズも高くなりやすい傾向にある。初期の透明性を悪化させる理由は、上述した溶融時の環状三量体の再生速度、触媒残渣の他、粒子による透明性の低下であるが、加熱後の透明性が悪化する理由は、溶融時に、ポリマーの結晶化が進み、フィルムを延伸して分子鎖を配向させる際に、結晶化が局所的に進んだ部分と、配向分子鎖との間で配向の歪部分を生み出し、その歪部分から環状三量体がフィルム表面に析出されやすくなることで、加熱前後のフィルムのヘーズ値の差を大きくさせるものと考えている。また、粒子は、ポリマーと相溶性を有していないことから、フィルム表面付近は、ポリエステル樹脂と粒子の界面が目立ち、その界面からもフィルム中に含まれる環状三量体が表面に析出し、フィルムの透明性が阻害されるからであると考えている。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムは、環状三量体の含有量が0.5重量%以下であることが必要である。さらには0.45重量%以下が好ましい。環状三量体の含有量が0.50重量%以下であると、フィルムの透明性の指標である初期へイズ値を2.0%以下、さらには、フィルムの加熱後(170℃3時間加熱した後)のヘイズ値が2.0%以下とすることが容易となる。環状三量体の含有量が少ないほうが、フィルム成形時やフィルム加工工程で環状三量体がフィルムの表面に析出しにくくなり、加熱後のフィルムの透明性も維持しやすくなる。
環状三量体の含有量の下限については特に限定されるものではないが、本発明においては0.01重量%以上である。0.01重量%未満の場合は、環状三量体を減少させる固相重合にかかる時間が長時間となることで、ポリエステル樹脂原料の固有粘度(IV)の上昇が大きくなり、本発明のポリエステルフィルムとした場合の固有粘度(IV)も高くなり、溶融押し出し時の負荷が大きくなり、フィルムの厚みムラを引き起こす場合がある。環状三量体が0.5重量%を超えると、フィルムの初期ヘイズ値、加熱後のヘイズ値が2.0%を越える場合があり、粒子の添加量同様に、透明電極の基材として本発明のフィルムが用いられた場合、最終的な透明電極として視認性が低下し、タッチパネル等の高度な視認性が必要とされる用途に不適当となる場合がある。本発明のポリエステルフィルムは、加熱後(170℃3時間加熱後)のヘイズ値が1.5%以下であることが好ましい。更に好ましくは1.0%以下である。
【0032】
ポリエステルフィルム中の環状三量体の含有量を0.5重量%以下とする手段は、特に限定されないが、環状三量体の含有量が少ないポリエステル樹脂を出発原料としてフィルムを製造することが特に好ましい手段である。環状三量体の含有量が少ないポリエステル樹脂の製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、上述したポリエステル樹脂の製造条件に挙げたように、例えば、ポリエステル樹脂の製造後に固相重合する方法、固相重合前の液相重合(溶融重合)を終えるときのポリエステル樹脂の固有粘度を調整する方法、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素量を調整する等が挙げられる。
【0033】
本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステル樹脂原料の末端カルボキシル基量は10当量/t以上60当量/t以下であることが好ましく、さらには15当量/t以上50当量/t以下であることが好ましく、特に20当量/t以上45当量/t以下であることが好ましい。末端カルボキシル基量が10当量/t以上であると、フィルムの製造工程における縦延伸区間、搬送区間における延伸ロールやニップロールの擦過キズを抑制しやすくなる。末端カルボキシル基量が60当量/t以下の場合は、フィルムの製造工程における環状オリゴマーの析出量が少なく、析出した環状オリゴマーによる擦過キズを抑制しやすくなる。一般的にフィルム中に粒子を添加すれば、フィルムの表面が粗面化されるため擦過キズの発生は抑制されやすくなることから、末端カルボキシル基量が低い場合には粒子を添加することは有効であるが、粒子量を0.015重量%を超えて添加すると、フィルムの透明性が損なったり、フィルムの冷結晶化温度(Tcc)が低下しやすくなり、170℃30分加熱前後のΔHzが悪化する傾向にある。一方、末端カルボキシル基量が高い場合には、擦過キズの発生原因は環状オリゴマーであるため、粒子をフィルムに添加しても擦過キズの抑制はしにくい傾向にある。
【0034】
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが10μm以上500μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みが10μm未満あるいは500μmを超える場合は、フィルムとして安定した製造が困難となる場合があり、特に、500μmを超える場合は透明性との両立が困難となる場合がある。本発明のポリエステルフィルムの厚みは、16μm以上300μm以下であることがより好ましく、18μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明を構成するポリエステルフィルムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、フィルムの構成を単層構成の他、2層構成、3層構成などの複合構成とすること、単層もしくは複合構成のフィルムの上にコーティング層を設けることが可能である。コーティング層は、フィルムの製造工程中、もしくは、フィルムを一旦製造し巻き取った後にフィルムを巻き返しながら設けることが可能である。フィルムの複合構成としては、本願発明のポリエステルフィルムを最表層として、少なくとも一方の表層に積層する2層構成もしくは3層構成にすることも可能である。また、本発明のフィルムを1層として、複数層設けた同種の層を積層した擬似複合とした単層構成(A層/A層、A層/A層/A層といった構成)とすることも可能である。
【0036】
二軸配向フィルムは一般に、二軸延伸法、すなわち、未延伸状態のシートをシート長手方向および幅方向に各々2.5~5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施し、結晶配向を完了させることにより得ることができる。また、二軸延伸法としては、逐次二軸延伸法を用いても良いし、同時二軸延伸法を用いても良い。さらには、二軸延伸を施した後に再度、フィルム長手方向あるいはフィルム幅方向に延伸を施す、再延伸法を施しても良い。
【0037】
また、本発明を構成するポリエステルフィルムは、本発明の効果を阻害しない限り、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤、架橋剤等が添加されていてもよい。
【0038】
本発明のポリエステルフィルムを、複数層の複合フィルムとする形態において、その積層方法は制限されるものではなく、例えば、未延伸状態のシートを得る際に、共押出法による積層とする方法、貼り合わせによる積層方法、これらの組み合わせによる方法等を挙げることができるが、透明性と製造安定性の観点から、共押出法を採用することが好ましく、本発明を最外層とする構成や、本発明を全ての層に適用する擬似複合フィルムにすることもできる。
【0039】
次に本発明のポリエステルフィルムの製造方法を例にして説明する。ただし、本発明のポリエステルフィルムはこれに限定されるものではない。
【0040】
まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、テレフタル酸とエチレングリコールとを原料とし、直接エステル化反応によって低重合体を得、さらにその後の重縮合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスにより製造することができる。または、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとを原料とし、エステル交換反応によって低重合体を得、さらにその後の重合反応によって高分子量ポリマーを得るプロセスにより製造することができる。本発明においては、いずれの方法も採用することができる。さらに必要に応じて耐熱安定剤、静電剤、消泡剤、酸化防止剤などを反応前、反応中に添加することができる。 アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、脂肪族カルボン酸のアンチモン塩などが挙げられる。 アンチモン化合物の添加方法としては、粉体又はエチレングリコールスラリー、エチレングリコール溶液などが挙げられるが、アンチモンの凝集による粗大化を防止でき、その結果透明性(ヘイズ値)が良好となることから、エチレングリコール溶液として添加する方法が好ましい。リン元素化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸もしくはこれらのエステル化合物などが挙げられるが、特にリン酸、リン酸エチルエステルが好ましく用いられる。
【0041】
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度は、溶融重合の終点をポリマーの攪拌トルクで判定することができ、目的とする固有粘度(IV)となるように溶融重合装置の終点判定トルクを設定すればよい。
【0042】
その後、得られた溶融ポリエチレンテレフタレートは口金よりストランド状に吐出、冷却し、カッターによってペレット化する方法により液相重合(溶融重合)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を製造できる。
【0043】
得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は、固相重合を施す前に予備結晶化することが好ましい。予備結晶化はポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に機械的衝撃を与えせん断処理を施す方法や熱風流通下で加熱処理を施す方法などを採用することができる。
【0044】
予備結晶化を終了したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は引き続いて固相重合を施す。ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を固相重合装置に仕込み、不活性ガスを流通させ、所定の温度で固相重合を施す。固相重合が終了したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物は冷却して装置内から取り出す。
【0045】
固相重合を施すポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度(IV)は0.40dl/g~0.52dl/gの範囲にあることが好ましく、さらには0.45dl/g~0.50dl/gの範囲にあることが好ましい。0.40dl/g以上であると、所定の温度または時間で環状三量体量が減少するので、生産性が良好となり好ましい。0.52dl/g以下であると、短時間で結晶化が進み、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度が上昇するまでに、環状三量体が減少するので好ましく、また熱履歴が少ないため、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の着色を抑制するので好ましい。
【0046】
不活性ガスとしては、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスや窒素ガス、炭酸ガス等を上げることができる。
【0047】
こうして得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物原料(環状三量体含有量0.01重量%~0.5重量%、固有粘度0.60dl/g~0.80dl/g、末端カルボキシル基量10~60当量/t)を真空乾燥した後、押出機に供給し260~300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10~60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製する。
この未延伸フィルムを70~100℃に加熱されたロール間でフィルムの走行方向である縦方向に2.5~5.0倍延伸する。続いて、このフィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、75~95℃の温度まで加熱を行い、引き続き連続的に90~115℃の加熱ゾーンで縦方向とは直交する横方向に3.0~5.0倍延伸し、続いて200~240℃の加熱ゾーンで5~60秒間熱処理を施し、100~200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向の完了したポリエステルフィルムを得る。
なお、上記の熱処理中に熱寸法安定性を高めるために、縦方向あるいは幅方向に3~12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸する方法は、上述した逐次延伸法のほかに、縦方向と横方向を同時に延伸するは同時二軸延伸法のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
得られたポリエステルフィルムの端部をカットし、巻き取り中間製品とし、その後、巻き取ったフィルムを巻き返しながら、スリッターを用いて所望の幅にカット後、円筒状のコアに巻き付け所望の長さのフィルムロールを得ることができる。なお、巻き取った後のフィルムの擦過キズの発生やフィルムとフィルムが張り付くブロッキングを抑制すべく、フィルムの横方向の両端部にナール処理を施し、フィルムにエンボス加工が施されていても良い。
【0048】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の目的を阻害しない範囲で、フィルムの片面、あるいはフィルムの両面に塗布層を設けても良い。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムの表面に設ける塗布層としては、公知の塗布層を設けることができ、例えば、フィルムに易滑性を付与するための粒子含有層、フィルムの表面硬度や耐擦過性を補完するためのハードコート層、別に設けるハードコート層等の機能層との接着性を補完するための易接着層、ハードコート層と基材ポリエステルフィルム間の屈折率差により生じる光の干渉ムラを抑制するための屈折率調整層、あるいは、他のフィルムとの貼り合わせを行うために設ける粘着層等が挙げられる。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムは、光学用途に好適に使用される。特には、透明導電基材フィルム用途、導電性フィルム用表面保護フィルムとして、好ましく用いることができる。
【実施例
【0051】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、各種物性の測定方法を記載する。
【0052】
(1)厚みむら
ポリエステルフィルムをソニー社製、デジタルマイクロメーターを使用し、JIS-C-2151に従って測定した。ポリエステルフィルムの長手方向および幅方向をそれぞれ、以下のように測定し、厚みむらを求め、その平均を取って評価した。
〔厚みむらの測定〕
ポリエステルフィルムを長手方向または幅方向に10点測定しその平均値を中心値Aとした。また、最大値から最小値を差し引いた値を厚みムラBとし、中心値に対する厚みムラの割合を算出した。すなわち、フィルムの厚み斑(%)=100×B/Aとし、長手方向と幅方向の平均を以下にて評価を行なった。
〔厚みむらの評価〕
×:厚みむらが5.0%を超える
△:厚みむらが3.0%を超え、5.0%以下
○:厚みむらが3.0%以下。
【0053】
(2)ヘイズ値
5cm角のフィルムを試料とし、加熱前と170℃3時間加熱後のヘイズをそれぞれJIS-K-7105(1985年)に基づいて、ヘーズメーターで測定した。(スガ試験機製“HZ-V3”)測定試料はそれぞれ3試料用意し、加熱前のヘイズの平均をもって初期ヘイズ値とし、加熱前のヘイズと加熱後のヘイズ値の平均値の差分からΔHzを求め、以下のようにΔHzを評価した。
〔ΔHzの評価〕
×:ΔHzが1.0%を超える
△:ΔHzが0.5%を超え、1.0%以下
○:ΔHzが0.1%を超え、0.5%以下
◎:ΔHzが0.1%以下。
【0054】
(3)冷結晶化温度(Tcc)
フィルムを電子天秤で5mg計量し、アルミパッキンで挟み込みセイコーインスツルメント社(株)ロボットDSC-RDC220熱示差走査計を用いて測定を行い、データ解析は同社製ディスクセッションSSC/5200を用いて、JIS-K-7121(1987年)に従って行った。25℃から300℃まで20℃/分で昇温した。その後25℃まで急冷し、再び300℃まで20℃/分で昇温した(2ndRun)。ガラス転移温度(Tg)として、中間点ガラス転移温度を求め、結晶化温度として、結晶化ピークの頂点温度を求めた。
2ndrunの結晶化ピークが複数観測される場合には、JIS-K-7122により求められる最大となるピーク面積を示す結晶化ピーク頂点温度とする。
これを3回繰り返し、平均値を冷結晶化温度(Tcc)とした。
【0055】
(4)フィルムの環状三量体の含有量
加熱前のフィルム片20mgを試料として、OCP(o-クロロフェノール)に150℃で30分間溶解し、室温で冷却した。その後、内部標準として1,4-ジフェニルベンゼンを添加後、メタノール2mLを加えて高速遠心分離機でポリマーを分離し、液層部を高速液体クロマトグラフ(島津製作所製“LC-10ADvp”)を用いて測定した。
【0056】
(5)加熱後の平面性評価(耐熱変形性)
20cm四方に切り出したフィルムをパンチングメタルの上に置いた状態で、温度を150℃に設定したオーブン中に無緊張状態で10分間保持した後、フィルムサンプルを室温で10分間冷却し、蛍光灯の反射光により、フィルムの表面に映し出された蛍光灯の反射像の状態を観察した。パンチングメタルは下記の2種を用いて評価を行ない、下記の判定基準により耐熱変形性を評価した。
【0057】
・パンチングメタルA:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304
エンボス加工 1.5t×D4.5×P7.5 60°チドリ
・パンチングメタルB:奥谷金網製作所製パンチングメタル SUS304
エンボス加工 2t×D7/H1.3×P10 60°チドリ
〔耐熱変形性の評価基準〕
○:パンチングメタルAおよびパンチングメタルBのいずれの場合においても、蛍光灯の反射像に歪みは見られなかった。
△:パンチングメタルAおよびパンチングメタルBのいずれの場合においても、フィルム表面の一部に、パンチングメタルのエンボス加工ピッチで、蛍光灯の反射像に歪みがあった。
×:パンチングメタルAおよびパンチングメタルBのいずれの場合においても、フィルム表面の全面に、パンチングメタルのエンボス加工ピッチで、蛍光灯の反射像に歪みがあった。
【0058】
(6)フィルム中の粒子含有量(重量%)
試料をメタノールで十分洗浄し、表面付着物を取り除き、水洗して乾燥した300gのサンプルにo-クロロフェノール2.7Kgを加えて撹拌しつつ100℃まで昇温させ、昇温後さらに1時間そのまま放置してポリエステル部分を溶解させる。ただし、高度に、結晶化している場合などでポリエステル部分が溶解しない場合は、一度溶解させて急冷した後に前記の溶解操作を行なう。
ついで、ポリエステル中に含有されているゴミなどの粗大不溶物をG-1ガラスフィルターでろ別し、除去し、このろ上物の重量を試料重量から差し引く。
日立製作所分離用超遠心機40p型にローターRP30を装備し、セル1個当りに前記ガラスフィルターろ別後の溶液30ccを注入後、ローターを4500rpmにて回転させ、回転異常のないことを確認後、ローター中を真空にし、30000rpmに回転数を上げ、この回転数にて粒子の遠心分離を行なう。
分離の完了はほぼ40分後であるが、この確認は必要あれば分離後の液の375mμにおける光線透過率が分離前のそれに比し、高い値の一定値になることで行なう。分離後、上澄液を傾斜法で除去し分離粒子を得る。
分離粒子には分離が不十分なことに起因するポリエステル分の混入があり得るので、採取した該粒子に常温のo-クロロフェノールを加え、ほぼ均一懸濁後、再び超遠心分離機処理を行なう。この操作は、後述の粒子を乾燥後該粒子の走差型差動熱量分析を行なって、ポリマに相当する融解ピークが検出できなくなるまで繰返す必要がある。最後に、このようにして得た分離粒子Aを120℃、16時間真空乾燥して秤量する。
これをフィルム中の粒子含有量(重量%)とした。
【0059】
(7)フィルムのキズ
得られたフィルムが巻き取られたロールからフィルムを1m巻きだし、ハロゲンライトを光源として、フィルムロールの幅方向を透過光で観察し、フィルムのキズの目立ち易さを評価した。フィルムのキズが全く見えないものを良好(◎)、うっすら確認されるが品質として問題ないものを合格(〇)、キズがはっきり確認できるものが1箇所あるものをやや不良(△)とした。
【0060】
(8)ポリエステル樹脂原料の末端カルボキシル基量 フィルムに用いるポリエステル原料を評価、ポリエステルをo-クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)に130~160℃で溶解し、アルカリで電位差測定して求めた。
【0061】
[使用したポリエステル樹脂]
(PET-A)
テレフタル酸とエチレングリコールの反応物であるエステル化反応物を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにテレフタル酸とエチレングリコールとをテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比が1.15になるようにスラリー状にしてエステル化反応槽の温度を保ちながら定量供給し、水を留出させながらエステル化反応を行い、エステル化反応物を得た。得られたエステル化反応物を、重合反応槽に移送し、リン酸を含むエチレングリコール溶液と水酸化カリウムを含むエチレングリコール溶液、酢酸マグネシウム4水和物を含むエチレングリコール溶液、三酸化アンチモンを含むエチレングリコール溶液を、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して、アルカリ金属元素(カリウム元素)として2ppm、かつカリウム元素、マグネシウム元素、リン元素のM/Pが2.8に、アンチモン元素として60ppmとなるように添加し、引き続いて重合反応槽内を除々に減圧にし、30分で0.13kPa以下とし、それと同時に除々に昇温して280℃とし、目標の固有粘度まで重合反応を実施した。その後、窒素ガスによって重縮合反応槽を常圧に戻し、口金より冷水中にストランド状に吐出し、押し出しカッターによって円柱状にペレット化し、表面結晶化装置によって予備結晶化し、固有粘度(IV)が0.50dl/gの液相重合(溶融重合)ポリエステルを得た。ここで得られた液相重合(溶融重合)ポリエステルを用いて、回転式真空乾燥装置により、0.13KPaの減圧下、露点が5℃の窒素ガス下で、215℃の温度で18時間固相重合を行い、ポリエステル樹脂(PET-A)を得た。得られたポリエステル樹脂(PET-A)の固有粘度は0.65dl/g、環状三量体含有量は0.42重量%、末端カルボキシル基量は24当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0062】
(PET-B):
液相重合(溶融重合)ポリエステルを得た後の固相重合を連続式真空乾燥装置を用いて行うとこと以外はPET-Aと同様にしてポリエステル樹脂(PET-B)を得た。得られたポリエステル樹脂(PET-B)の固有粘度は0.73dl/g、環状三量体含有量は、0.39重量%、末端カルボキシル基量は20当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0063】
(PET-C):
固相重合前の固有粘度を0.40dl/g、固相重合時間を26時間と変更する以外は,PET-Aと同様の方法で実施した。得られたポリエステル樹脂(PET-C)は、固有粘度が0.60dl/g、環状三量体が0.38重量%、末端カルボキシル基量は30当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0064】
(PET-D):
三酸化アンチモンを含むエチレングリコール溶液をアンチモン元素が300ppmとなるように添加したこと、固相重合を実施しないこと、固有粘度を変更したこと以外は、ポリエステル樹脂(PET-A)と同様の方法により、ポリエステル樹脂(PET-D)を得た。得られたポリエステル樹脂(PET-D)の固有粘度は0.70dl/g、環状三量体含有量は1.07重量%、末端カルボキシル基量は35当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0065】
(PET-E):
水酸化カリウムを添加せず三酸化アンチモンをアンチモン元素として65ppmとなるよう添加する以外は、PET-Aと同様の方法で、溶融重合反応を行い、固有粘度が0.64の液相重合(溶融重合)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得、次いで攪拌翼を有する乾燥機に仕込み、窒素ガス中で225℃の温度で8時間固相重合を行い、さらに固相重合後のポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を225℃で湿熱処理を行い、ポリエステル樹脂(PET-E)を得た。得られたポリエステル樹脂(PET-E)の固有粘度は、0.60dl/g、環状三量体含有量は0.40重量%、末端カルボキシル基量は45当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0066】
(PET-F):
固相重合時間を26時間と変更する以外は、PET-Aと同様の方法で実施し、ポリエステル樹脂(PET-F)を得た。得られたポリエステル樹脂(PET-F)の固有粘度は、0.70dl/g、環状三量体含有量は、0.38重量%、末端カルボキシル基量は20当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0067】
(PET-G):
水酸化カリウム、酢酸マグネシウム、リン酸の添加量をM/Pが1.5となるように変更する以外は、PET-Aと同様の方法で実施し、ポリエステル樹脂(PET-G)を得た。ポリエステル樹脂(PET-G)の固有粘度は、0.63dl/g、環状三量体含有量は、0.43重量%、末端カルボキシル基量は23当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0068】
(PET-H):
酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加物をM/Pが6.0となるように変更する以外は、PET-Aと同様の方法で実施し、ポリエステル樹脂(PET-H)を得た。ポリエステル樹脂(PET-H)の固有粘度は、0.67dl/g、環状三量体含有量は、0.41重量%、末端カルボキシル基量は21当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0069】
(PET-I):
酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量をM/Pが2.0となるように変更すること以外は、PET-Aと同様にして、ポリエステル樹脂(PET-I)を得た。
ポリエステル樹脂(PET-I)の固有粘度は、0.64dl/g、環状三量体含有量は、0.42重量%、末端カルボキシル基量は28当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0070】
(PET-J):
固相重合時の窒素ガスの露点を-5℃、固相重合時間を15時間とすること以外は、PET-Aと同様にして、ポリエステル樹脂(PET-J)を得た。
ポリエステル樹脂(PET-J)の固有粘度は、0.65dl/g、環状三量体含有量は、0.42重量%、末端カルボキシル基量は18当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0071】
(PET-K):
固相重合時の窒素ガスの露点を15℃、固相重合時間を30時間に変更した以外は、PET-Aと同様にして、ポリエステル樹脂(PET-K)を得た。ポリエステル樹脂(PET-K)の固有粘度は、0.65dl/g、環状三量体含有量は0.40重量%、末端カルボキシル基量は40当量/t、ガラス転移温度Tgは80℃であった。
【0072】
[使用した塗液]
(塗剤-1)
窒素ガス雰囲気下で、ジカルボン酸成分として2,6-ナフタレンジカルボン酸40モル部、テレフタル酸50モル部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム5モル部、グリコール成分としてエチレングリコール95モル部、ジエチレングリコール5モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160~240℃で5時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。その後、トリメリット酸5モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万重量部に対して100重量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220~280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル(A)を得た。その後、ポリエステル(A)を100重量部、メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”(登録商標)MW12LF:有効成分70重量%、イソプロピルアルコール17重量%含有)を50重量部(有効成分換算)、コロイダルシリカ(粒径140nm)を1.5重量部混合してなる有効成分を5.0重量部、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルを3.0重量部、水を92.0重量部混合して、塗液-1を得た。
【0073】
(塗液-2)
窒素ガス雰囲気下で、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸85モル部、5-スルホイソフタル酸ナトリウム5モル部、グリコール成分としてエチレングリコール100モル部をエステル交換反応器に仕込み、これにテトラブチルチタネート(触媒)を全ジカルボン酸成分100万重量部に対して100重量部添加して、160~240℃で5時間エステル化反応を行った後、溜出液を取り除いた。その後、1,3,5-トリメリット酸10モル部と、テトラブチルチタネートを更に全ジカルボン酸100万重量部に対して100重量部添加して、240℃で、反応物が透明になるまで溜出液を除いたのち、220~280℃の減圧下において、重縮合反応を行い、ポリエステル(B)を得た。その後、ポリエステル(A)をポリエステル(B)に変更したこと以外は、塗液-1と同様の方法により、塗液-2を得た。
【0074】
(塗液-3)
有効成分を、ポリエステル(A)を100重量部、メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”(登録商標)MW12LF:有効成分70重量%、イソプロピルアルコール17重量%含有)を40重量部(有効成分換算)、オキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製“エポクロス”(登録商標)WS500:有効成分40重量%、1-メトキシ-2-プロパノール38重量%含有)を10重量部(有効成分換算)、コロイダルシリカ(粒径140nm)を1.5重量部混合してなることに変更したこと以外は、塗液-1と同様の方法により、塗液-4を得た。
【0075】
[ポリエステルフィルムの作成]
(実施例1)
PET-A真空中160℃で4時間乾燥した後、PET-Aにシリカ粒子(平均粒子径0.45μm)をPET-Aに対して、0.01重量%添加し、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。なお、この時キャスティングドラムの反対面から温度10℃の冷風を長手方向に8段設置した間隙2mmのスリットノズルから風速20m/sでフィルムに吹き付け、両面から冷却を実施した。
【0076】
この未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向(一軸延伸)フィルムとした。
【0077】
一軸延伸フィルムをクリップで把持してオーブンに導き、温度120℃、風速20m/分の熱風にて加熱乾燥した。引き続き連続的に延伸工程に導き、温度100℃、風速15m/分の熱風にて加熱しながら幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向フィルムを引き続き連続的に温度230℃、風速20m/分の熱風にて15秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら幅方向に5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部を除去した後に巻き取り、厚み125μmのポリエステルフィルムを得た。
【0078】
ここで得られたポリエステルフィルムは、透明性、耐熱変形性、に優れ、導電性フィルム用表面保護フィルム用途および透明導電基材フィルム用途として好適に使用できるものであった。
【0079】
(実施例2)
PET-Aに粒子を添加しないこと、一軸延伸フィルムを得た後、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとし、表1に記載する塗液を上記一軸延伸フィルムの両面にバーコーターを用いて、塗布乾燥後の塗布厚みが100nmとなるように塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0080】
(実施例3)
一軸延伸フィルムを得た後、フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、フィルムの表面張力を55mN/mとし、表1に記載する塗液を上記一軸延伸フィルムの両面にバーコーターを用いて、塗布乾燥後の塗布厚みが100nmとなるように塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。塗布をした以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0081】
比較例9
PET-Aに代えて、PET-Bとすること、粒子を添加しないこと以外は実施例3と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0082】
(実施例~7、比較例10
PET-Aに代えて、表1のポリエステル樹脂を用いる以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0083】
(実施例8、9)
PET-Jに添加する粒子を表1に記載の粒子とする以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0084】
(比較例1、2)
PET-Aに添加する粒子を表1に記載の粒子にする以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0085】
(比較例3)
PET-Bに表1に記載の粒子を添加する以外は比較例9と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0086】
(比較例4)
PET-Dにすること、表1に記載の塗布材を用い、最終的に得られるフィルムの厚みが50μmとなるように押出し厚みを調整する以外は、実施例2と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0087】
(比較例5)
PET-Dにすること、表1に記載の無機粒子を添加すること、表1に記載の塗布材を用いる以外は、実施例3と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0088】
(比較例6、7)
PET-Aに代えて、表1のポリエステル樹脂を用いること以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0089】
(比較例8)
PET-Aに代えて、表1のポリエステル樹脂を用いること以外は実施例3と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0090】
【表1】